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特開2022-163208ポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163208
(43)【公開日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20221018BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20221018BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/00
C08G64/18
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129984
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2019526931の分割
【原出願日】2018-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2017126706
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 康弘
(57)【要約】
【課題】優れた耐衝撃性、耐薬品性及び透明性を有するポリカーボネート系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定の繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック及び特定の繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロックを含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)0.1質量%以上100質量%以下と、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)0質量%以上99.9質量%以下とを含むポリカーボネート系樹脂(S)50質量%以上99質量%以下、及びポリエステル系樹脂(C)1質量%以上50質量%以下を含み、ポリオルガノシロキサンブロックの平均鎖長が20以上50未満であり、ポリエステル系樹脂(C)がポリエチレンテレフタレートであり、3mmプレートの全光線透過率が80%以上である、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)0.1質量%以上100質量%以下と、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)0質量%以上99.9質量%以下とを含むポリカーボネート系樹脂(S)50質量%以上99質量%以下、及びポリエステル系樹脂(C)1質量%以上50質量%以下を含み、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が20以上50未満であり、
前記ポリエステル系樹脂(C)がポリエチレンテレフタレートであり、
フタル酸及びレゾルシノール由来の単位からなる繰り返し部分を含むポリエステルブロック有するポリエステルポリカーボネートを含まず、
3mmプレートの全光線透過率が80%以上である、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項2】
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロックを含む、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【化2】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項3】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が1質量%以上12質量%以下である、請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネート系樹脂(S)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項7】
フッ素を含有する難燃助剤を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項8】
無機フィラーを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項10】
電気及び電子機器用部品の外装及び内部部品である、請求項9に記載の成形品。
【請求項11】
自動車及び建材の部品である、請求項9に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂(以下、PC樹脂と略記することがある)は、エンジニアリングプラスチックの中でも非常に高い耐衝撃性を有し、耐熱性も良好な樹脂として知られている。そのため、OA機器、情報通信機器、家庭電化機器分野など種々の分野で用いられている。しかしながら、耐薬品性に劣るという欠点を有している。
ポリカーボネート樹脂の耐薬品性を改良させる手段の1つとして、該ポリカーボネート樹脂を、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂に代表される熱可塑性ポリエステル樹脂等とポリマーアロイ化することが提案されている(特許文献1)。
特許文献1では、アロイ化したことによる物性低下を防ぐため、ホスフェート化合物を添加することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03-097752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では透明性については特に改善が図られていない。さらに耐衝撃性は未だ十分ではなく、耐薬品性についても何ら言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、より優れた耐衝撃性、耐薬品性及び透明性を有するポリカーボネート系樹脂組成物を得るべく検討した。その結果、特定のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体を含むポリカーボネート系樹脂と、ポリエステル系樹脂とを含むポリカーボネート系樹脂組成物が上記課題を解決することを見出した。
すなわち、本発明は下記[1]~[13]に関する。
[1]下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)0.1質量%以上100質量%以下と、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)0質量%以上99.9質量%以下とを含むポリカーボネート系樹脂(S)50質量%以上99質量%以下、及びポリエステル系樹脂(C)1質量%以上50質量%以下を含み、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が20以上50未満であり、
3mmプレートの全光線透過率が80%以上である、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[2]前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロックを含む、上記[1]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【化2】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
[3]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が1質量%以上12質量%以下である、上記[1]または[2]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[4]前記ポリカーボネート系樹脂(S)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[5]前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[6]前記ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[7]前記ポリエステル系樹脂(C)がポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[8]前記ポリエステル系樹脂(C)がポリエチレンテレフタレートである、上記[7]に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[9]フッ素を含有する難燃助剤を含まない、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[10]無機フィラーを含まない、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
[12]電気及び電子機器用部品の外装及び内部部品である、上記[11]に記載の成形品。
[13]自動車及び建材の部品である、上記[11]に記載の成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、より優れた耐衝撃性、耐薬品性及び透明性を有するポリカーボネート系樹脂組成物及びその成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、以下の驚くべき結果を見出した。本発明で必要とする鎖長範囲のポリオルガノシロキサンブロックを有するポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体は単独では、かかるポリオルガノシロキサンブロックを有さない一般的なポリカーボネート系樹脂と透明性は同等である。しかし、本発明において、特定の鎖長範囲を有するポリオルガノシロキサンブロックを有する前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体とポリエステル系樹脂とを含む樹脂組成物とすることで、優れた耐衝撃性、耐薬品性を有しながら、前記一般的なポリカーボネート系樹脂とポリエステル系樹脂とを含む樹脂組成物と比して、より優れた透明性をも得られることを見出した。以下、詳細に説明する。
本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。また、本明細書において、好ましいとされている規定は任意に採用することができ、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましい。
【0008】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)>
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物に含まれるポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)(以下、「PC-POS共重合体」と略記することがある)は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含み、ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が20以上50未満であることを特徴とする。
【化3】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-またはCO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【0009】
上記一般式(I)中、R1及びR2がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
1及びR2がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基(「各種」とは、直鎖状及びあらゆる分岐鎖状のものを含むことを示す。以下、明細書中同様である。)、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R1及びR2がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位として前記アルキル基を有するものが挙げられる。
【0010】
Xが表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられ、炭素数1~5のアルキレン基が好ましい。Xが表すアルキリデン基としては、エチリデン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。Xが表すシクロアルキレン基としては、シクロペンタンジイル基やシクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等が挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキレン基が好ましい。Xが表すシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、2-アダマンチリデン基等が挙げられ、炭素数5~10のシクロアルキリデン基が好ましく、炭素数5~8のシクロアルキリデン基がより好ましい。Xが表すアリールアルキレン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6~14のアリール基が挙げられ、アルキレン基としては上述したアルキレンが挙げられる。Xが表すアリールアルキリデン基のアリール部位としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基などの環形成炭素数6~14のアリール基が挙げられ、アルキリデン基としては上述したアルキリデン基を挙げることができる。
【0011】
a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、好ましくは0~2、より好ましくは0または1である。
中でも、aおよびbが0であり、Xが単結合または炭素数1~8のアルキレン基であるもの、またはaおよびbが0であり、Xが炭素数3のアルキレン基、特にイソプロピリデン基であるものが好適である。
【0012】
上記一般式(II)中、R3またはR4で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R3またはR4で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R3またはR4で示されるアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R3またはR4で示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
3及びR4としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基であり、いずれもメチル基であることがより好ましい。
【0013】
上記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は、より具体的には、下記一般式(II-I)~(II-III)で表される単位を有することが好ましい。
【化4】

[式中、R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を示し、複数のR3~R6は、互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-R7NR8-、-COO-、-S-、-R7COO-R9-O-、または-R7O-R10-O-を示し、複数のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記Rは、単結合、直鎖、分岐鎖若しくは環状アルキレン基、アリール置換アルキレン基、置換または無置換のアリーレン基、またはジアリーレン基を示す。R8は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアラルキル基を示す。R9は、ジアリーレン基を示す。R10は、直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基、またはジアリーレン基を示す。βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基、またはジカルボン酸若しくはジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示す。nはポリオルガノシロキサンの鎖長を示し、20以上50未満であることを有する。n-1、及びpとqはそれぞれポリオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示し、1以上の整数であり、pとqの和はn-2である。]
【0014】
3~R6がそれぞれ独立して示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、及び各種ヘキシル基が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R3~R6がそれぞれ独立して示すアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
3~R6としては、いずれも、好ましくは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基である。
一般式(II-I)、(II-II)及び/または(II-III)中のR3~R6がいずれもメチル基であることが好ましい。
【0015】
Yが示す-R7O-、-R7COO-、-R7NH-、-R7NR8-、-R7COO-R9-O-、または-R7O-R10-O-におけるR7が表す直鎖または分岐鎖アルキレン基としては、炭素数1~8、好ましくは炭素数1~5のアルキレン基が挙げられる。R7が表す環状アルキレン基としては、炭素数5~15、好ましくは炭素数5~10のシクロアルキレン基が挙げられる。
【0016】
7が表すアリール置換アルキレン基としては、芳香環にアルコキシ基、アルキル基のような置換基を有していてもよく、その具体的構造としては、例えば、下記の一般式(i)または(ii)の構造を示すことができる。ここで、R7がアリール置換アルキレン基を示す場合、アルキレン基がSiに結合している。
【化5】

(式中cは正の整数を示し、通常1~6の整数である)
【0017】
7、R9及びR10が示すジアリーレン基とは、二つのアリーレン基が直接、または二価の有機基を介して連結された基のことであり、具体的には-Ar1-W-Ar2-で表わされる構造を有する基である。ここで、Ar1及びAr2は、アリーレン基を示し、Wは単結合、または2価の有機基を示す。Wの示す2価の有機基は、例えばイソプロピリデン基、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基である。
7、Ar1及びAr2が表すアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントリレン基などの環形成炭素数6~14のアリーレン基が挙げられる。これらアリーレン基は、アルコキシ基、アルキル基等の任意の置換基を有していてもよい。
8が示すアルキル基としては炭素数1~8、好ましくは1~5の直鎖または分岐鎖のものである。R8が示すアルケニル基としては、炭素数2~8、好ましくは2~5の直鎖または分岐鎖のものが挙げられる。R8が示すアリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R8が示すアラルキル基としては、フェニルメチル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
10が示す直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキレン基は、R7と同様である。
【0018】
Yとしては、好ましくは-R7O-であって、R7が、アリール置換アルキレン基であって、特にアルキル基を有するフェノール系化合物の残基であり、アリルフェノール由来の有機残基やオイゲノール由来の有機残基がより好ましい。
なお、式(II-II)中のp及びqについては、p=qであることが好ましい。
また、βは、ジイソシアネート化合物由来の2価の基またはジカルボン酸またはジカルボン酸のハロゲン化物由来の2価の基を示し、例えば、以下の一般式(iii)~(vii)で表される2価の基が挙げられる。
【0019】
【化6】
【0020】
PC-POS共重合体(A)におけるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長nは20以上50未満であることを要する。式(II-I)及び(II-III)中のnが20以上50未満となり、(II-II)の場合にはpとqの和に2を足した数が上記範囲となる。該平均鎖長は核磁気共鳴(NMR)測定により算出される。ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の平均鎖長が20以上50未満であれば、最終的に得られるポリカーボネート系樹脂組成物は耐衝撃性等に優れると共に、透明性にも優れる。
ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長は、好ましくは30以上、より好ましくは35以上である。また、好ましくは49以下、より好ましくは45以下である。
【0021】
PC-POS共重合体(A)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、好ましくは1質量%以上12質量%以下であることが好ましい。PC-POS共重合体(A)中のポリオルガノシロキサン量が上記範囲内であれば、より優れた耐衝撃性及び透明性を得ることができる。
PC-POS共重合体(A)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。
【0022】
PC-POS共重合体(A)の粘度平均分子量(Mv)は、使用される用途や製品により、目的の分子量となるように分子量調節剤(末端停止剤)等を用いることにより適宜調整ことができる。PC-POS共重合体(A)の粘度平均分子量は、好ましくは9,000以上50,000以下である。粘度平均分子量が9,000以上であれば、十分な成形品の強度を得ることができる。粘度平均分子量が50,000以下であれば、熱劣化を起こさない温度で射出成形や押出成形を行うことができる。
PC-POS共重合体(A)の粘度平均分子量は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは22,000以下、最も好ましくは20,000以下である。
粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、下記Schnellの式から算出した値である。
【0023】
【数1】
【0024】
上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)は、界面重合法(ホスゲン法)、ピリジン法、エステル交換法等の公知の製造方法により製造することができる。特に界面重合法を採用した場合には、PC-POS共重合体(A)を含む有機相と未反応物や触媒残渣等を含む水相との分離工程が容易であり、アルカリ洗浄、酸洗浄、純水洗浄等の各洗浄工程におけるPC-POS共重合体(A)を含む有機相と水相との分離が容易である。そのため、効率よくPC-POS共重合体(A)が得られる。PC-POS共重合体(A)を製造する方法として、例えば、特開2014-80462号公報等に記載の方法を参照することができる。
【0025】
具体的には、後述する予め製造されたポリカーボネートオリゴマーと、ポリオルガノシロキサンとを、非水溶性有機溶媒(塩化メチレン等)に溶解させ、二価フェノール系化合物(ビスフェノールA等)のアルカリ性化合物水溶液(水酸化ナトリウム水溶液等)を加え、重合触媒として第三級アミン(トリエチルアミン等)や第四級アンモニウム塩(トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等)を用い、末端停止剤(p-tert-ブチルフェノール等の1価フェノール)の存在下、界面重縮合反応させることにより製造できる。また、PC-POS共重合体(A)は、ポリオルガノシロキサンと、二価フェノールと、ホスゲン、炭酸エステルまたはクロロホーメートとを共重合させることによっても製造できる。
【0026】
原料となるポリオルガノシロキサンとしては、以下の一般式(1)、(2)及び/または(3)に示すものを用いることができる。
【化7】

式中、R3~R6、Y、β、n-1、p及びqは上記した通りであり、具体例及び好ましいものも同様である。
Zは、水素原子またはハロゲン原子を示し、複数のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
例えば、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとしては、以下の一般式(1-1)~(1-11)の化合物が挙げられる。
【化8】
【0028】
上記一般式(1-1)~(1-11)中、R3~R6、n及びR8は上記の定義の通りであり、好ましいものも同じである。cは正の整数を示し、通常1~6の整数である。
これらの中でも、重合の容易さの観点においては、上記一般式(1-1)で表されるフェノール変性ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、入手の容易さの観点においては、上記一般式(1-2)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(o-ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、上記一般式(1-3)で表される化合物中の一種であるα,ω-ビス[3-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
その他、ポリオルガノシロキサン原料として以下の一般式(4)を有するものを用いてもよい。
【化9】

式中、R3及びR4は上述したものと同様である。一般式(4)で示されるポリオルガノシロキサンブロックの平均鎖長は(r×m)となり、(r×m)の範囲は上記nと同一である。
上記(4)をポリオルガノシロキサン原料として用いた場合には、ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は下記一般式(II-IV)で表わされる単位を有することが好ましい。
【化10】

[式中のR3、R4、r及びmは上述した通りである]
【0029】
ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)として、下記一般式(II-V)で表される構造を有していてもよい。
【化11】

[式中、R18~R21はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~13のアルキル基である。R22は炭素数1~6のアルキル基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~14のアリール基である。Q2は炭素数1~10の2価の脂肪族基である。nは平均鎖長を示し、上記の通りである。]
【0030】
一般式(II-V)中、R18~R21がそれぞれ独立して示す炭素数1~13のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、2-エチルヘキシル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ウンデシル基、各種ドデシル基、各種トリデシル基が挙げられる。中でも、R18~R21は、好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を示し、いずれもメチル基を示すことがより好ましい。
22が示す炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基が挙げられる。R22が示すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R22が示す炭素数1~6のアルコキシ基としては、アルキル基部位が前記アルキル基である場合が挙げられる。R22が示す炭素数6~14のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、及びナフチル基などが挙げられる。
上記の中でも、R22が水素原子、又は炭素数1~6のアルコキシ基を示すことが好ましく、より好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルコキシ基を、さらに好ましくは水素原子を示す。
2が示す炭素数1~10の2価の脂肪族基としては、炭素数1以上10以下の、直鎖又は分岐鎖の2価の飽和脂肪族基が好ましい。当該飽和脂肪族基の炭素数は、好ましくは1以上8以下、より好ましくは2以上6以下、さらに好ましくは3以上6以下、よりさらに好ましくは4以上6以下である。また、平均鎖長nは上記の通りである。
【0031】
構成単位(II-V)の好ましい態様としては、下記式(II-VI)で表される構造を挙げることができる。
【化12】

[式中、nは上記の通りである。]
【0032】
上記一般式(II-V)または(II-VI)で表されるポリオルガノシロキサンブロック(A-2)は、下記一般式(5)または(6)で表されるポリオルガノシロキサン原料を用いることにより得ることができる。
【化13】

[式中、R18~R22、Q2、及びnは上記した通りである。]
【化14】

[式中、nは上記した通りである。]
【0033】
前記ポリオルガノシロキサンの製造方法は特に限定されない。例えば、特開平11-217390号公報に記載の方法によれば、シクロトリシロキサンとジシロキサンとを酸性触媒存在下で反応させて、α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンを合成し、次いで、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下に、該α,ω-ジハイドロジェンオルガノペンタシロキサンにフェノール性化合物(例えば2-アリルフェノール、4-アリルフェノール、オイゲノール、2-プロペニルフェノール等)等を付加反応させることで、粗ポリオルガノシロキサンを得ることができる。また、特許第2662310号公報に記載の方法によれば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラメチルジシロキサンとを硫酸(酸性触媒)の存在下で反応させ、得られたα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを上記と同様に、ヒドロシリル化反応用触媒の存在下でフェノール性化合物等を付加反応させることで、粗ポリオルガノシロキサンを得ることができる。なお、α,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンは、その重合条件によりその鎖長nを適宜調整して用いることもできるし、市販のα,ω-ジハイドロジェンオルガノポリシロキサンを用いてもよい。具体的には、特開2016-098292号公報に記載されるものを用いることができる。
【0034】
ポリカーボネートオリゴマーは、塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等の有機溶剤中で、二価フェノールとホスゲンやトリホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することができる。なお、エステル交換法を用いてポリカーボネートオリゴマーを製造する際には、二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体との反応によって製造することもできる。
二価フェノールとしては、下記一般式(viii)で表される二価フェノールを用いることが好ましい。
【化15】

式中、R1、R2、a、b及びXは上述した通りである。
【0035】
上記一般式(viii)で表される二価フェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。二価フェノールとしてビスフェノールAを用いた場合、上記一般式(I)において、Xがイソプロピリデン基であり、且つa=b=0のPC-POS共重合体となる。
【0036】
ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えば、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、ジヒドロキシアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類、ジヒドロキシジフェニル類、ジヒドロキシジアリールフルオレン類、ジヒドロキシジアリールアダマンタン類等が挙げられる。これらの二価フェノールは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類としては、例えばビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0038】
ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類としては、例えば1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン等が挙げられる。ジヒドロキシアリールエーテル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0039】
ジヒドロキシジアリールスルフィド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホキシド類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールスルホン類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0040】
ジヒドロキシジフェニル類としては、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールフルオレン類としては、例えば9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。ジヒドロキシジアリールアダマンタン類としては、例えば1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-5,7-ジメチルアダマンタン等が挙げられる。
【0041】
上記以外の二価フェノールとしては、例えば4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスフェノール、10,10-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-9-アントロン、1,5-ビス(4-ヒドロキシフェニルチオ)-2,3-ジオキサペンタン等が挙げられる。
【0042】
得られるPC-POS共重合体の分子量を調整するために、末端停止剤(分子量調節剤)を使用することができる。末端停止剤としては、例えば、フェノール、p-クレゾール、p-tert-ブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、m-ペンタデシルフェノール及びp-tert-アミルフェノール等の一価フェノールを挙げることができる。これら一価フェノールは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記界面重縮合反応後、適宜静置して水相と有機溶媒相とに分離し[分離工程]、有機溶媒相を洗浄(好ましくは塩基性水溶液、酸性水溶液、水の順に洗浄)し[洗浄工程]、得られた有機相を濃縮[濃縮工程]、及び乾燥[乾燥工程]することによって、PC-POS共重合体(A)を得ることができる。
【0044】
<芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)>
芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)はPC-POS共重合体(A)以外のポリカーボネート系樹脂であり、好ましくは主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有する。上記ポリカーボネート系樹脂としては、特に制限はなく種々の公知のポリカーボネート系樹脂を使用できる。
【化16】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【0045】
30及びR31が示す基の具体例は、前記R1及びR2と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。R30及びR31は、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’の具体例としては、前記Xと同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。d及びeは、それぞれ独立に、好ましくは0~2、より好ましくは0又は1である。
【0046】
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)としては、具体的には、反応に不活性な有機溶媒とアルカリ水溶液との存在下で、二価フェノール系化合物及びホスゲンと反応させた後、第三級アミンもしくは第四級アンモニウム塩等の重合触媒を添加して重合させる界面重合法や、二価フェノール系化合物をピリジンまたはピリジンと不活性溶媒の混合溶液に溶解し、ホスゲンを導入し直接製造するピリジン法等、従来のポリカーボネート樹脂の製造法により得られるものを使用できる。
上記の反応に際し、必要に応じて、分子量調節剤(末端停止剤)、分岐化剤等が使用される。
なお、上記二価フェノール系化合物としては、下記一般式(III’)で表されるものが挙げられる。
【化17】

[式中、R30、R31、X’、d及びeは前記定義の通りであり、好ましいものも同じである。]
【0047】
該二価フェノール系化合物の具体例としては、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の製造方法で上述したものを挙げることができ、好ましいものも同じである。中でも、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系二価フェノールが好ましく、ビスフェノールAがより好ましい。
上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)と異なり、式(II)で表されるようなポリオルガノシロキサンブロックを有さない構造であってもよい。例えば、芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)はホモポリカーボネート系樹脂であってもよい。
【0048】
<ポリエステル系樹脂(C)>
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物に含まれるポリエステル系樹脂(C)としては、芳香族ジカルボン酸またはその反応性誘導体と、ジオール、またはそのエステル誘導体とを主成分とする縮合反応により得られる重合体または共重合体を挙げることができる。
【0049】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボン酸、2,5-アントラセンジカルボン酸、2,6-アントラセンジカルボン酸、4,4’-p-ターフェニレンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸等が挙げられ、これらの置換体(例えば、5-メチルイソフタル酸などのアルキル基置換体など)や反応性誘導体(例えばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなどのアルキルエステル誘導体など)等を用いることもできる。
これらのうち、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及びそれらのアルキルエステル誘導体がより好ましく、テレフタル酸及びそのアルキルエステル誘導体が特に好ましい。これら芳香族ジカルボン酸は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、該芳香族ジカルボン酸と共にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等の1種以上併用することも可能である。
【0050】
ポリエステル系樹脂(C)の成分であるジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等の脂肪族ジオール類;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、トランス-又はシス-2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環式ジオール類;p-キシレンジオール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)等の芳香族ジオール類等を挙げることができ、これらの置換体も使用することができる。
これらのうち、耐熱性及び寸法安定性等の点から、脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールがより好ましく、エチレングリコールが特に好ましい。ジオールは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、ジオール成分として、分子量400以上6,000以下の長鎖ジオール類、すなわちポリエチレングリコール、ポリ-1,3-プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の1種以上を上記ジオール類と併用して共重合させてもよい。
【0051】
ポリエステル系樹脂(C)には、パラヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸や、その他のカルボン酸、上記ジオール以外のアルコールを共重合させることができ、本発明ではこのような共重合樹脂を用いることもできる。しかしながら、このような共重合成分は少量であるのが好ましく、ポリエステル系樹脂(C)のうち80質量%以上、さらに90質量%以上が、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールからの成分であるのが好ましい。また芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールは、それぞれその80モル%以上、更には90モル%以上を1種類の化合物が占めるのが好ましい。
ポリエステル系樹脂(C)は少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0052】
具体的なポリエステル系樹脂(C)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレン-1,2-ビス(フェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレート等の他、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート等の共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。これらのうち、機械的性質等のバランスがとれたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートおよびこれらの混合物が好ましく使用できる。ポリエステル系樹脂(C)が材料の入手容易性の観点から、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレートであることがさらに好ましい。なお併用する場合には、その比率はPET:PBT=1:1~1:8(質量比)が好ましい。
【0053】
<その他の成分>
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を含ませることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、補強材、充填剤、耐衝撃性改良用のエラストマー、染料、顔料、帯電防止剤、ポリカーボネート系樹脂以外の樹脂等を挙げることができる。
【0054】
<ポリカーボネート系樹脂組成物>
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)0.1質量%以上100質量%以下と、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)0質量%以上99.9質量%以下とを含むポリカーボネート系樹脂(S)を50質量%以上99質量%以下、及び前記ポリエステル系樹脂(C)を1質量%以上50質量%以下含む。
【0055】
上記ポリカーボネート系樹脂組成物において、ポリカーボネート系樹脂(S)中のポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の含有量は、耐衝撃性、透明性及び耐薬品性等の所望の性質を有する樹脂組成物を得る観点から0.1質量%以上100質量%以下であることを要し、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
一方、ポリカーボネート系樹脂(S)中の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の含有量は、得られる樹脂組成物の耐衝撃性の観点から0質量%以上99.9質量%以下であることを要し、好ましくは1質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0056】
上記ポリカーボネート系樹脂(S)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。ポリカーボネート系樹脂(S)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が上記範囲にあれば、優れた耐衝撃特性を得ることができる。
ポリカーボネート系樹脂(S)中のポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率は、より好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。
【0057】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物中には上記ポリエステル系樹脂(C)が1質量%以上50質量%以下含まれる。ポリカーボネート系樹脂組成物中でのポリエステル系樹脂(C)の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上、最も好ましくは20質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
【0058】
上記PC-POS共重合体(A)と、上記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)とを含むポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量(Mv)は、使用される用途や製品により、目的の分子量となるように分子量調節剤(末端停止剤)等を用いることにより適宜調整ことができる。ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量は、好ましくは9,000以上50,000以下である。粘度平均分子量が9,000以上であれば、十分な成形品の強度を得ることができる。50,000以下であれば、熱劣化を起こさない温度で射出成形や押出成形を行うことができる。
ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量は、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは16,000以上であり、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは23,000以下、特に好ましくは21,000以下である。
なお、粘度平均分子量(Mv)は、20℃における塩化メチレン溶液の極限粘度〔η〕を測定し、下記Schnellの式から算出した値である。
【0059】
【数2】
【0060】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、前記の各成分を上記割合で、更に必要に応じて用いられる各種任意成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。
本発明の一態様において、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量は、ポリカーボネート系樹脂組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは80~100質量%、より好ましくは95~100質量%、よりさらに好ましくは97~100質量%、特に好ましくは98~100質量%、最も好ましくは99~100質量%である。
本発明の他の態様において、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び上記その他成分の合計含有量は、ポリカーボネート系樹脂組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは90~100質量%、より好ましくは95~100質量%、よりさらに好ましくは97~100質量%、特に好ましくは98~100質量%、最も好ましくは99~100質量%である。
【0061】
配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常、240℃以上320℃以下の範囲で適宜選択される。この溶融混練としては、押出機、特に、ベント式の押出機の使用が好ましい。
【0062】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、優れた耐薬品性及び耐衝撃性を有すると共に、透明性にも優れることを特徴とする。具体的には、本発明のポリカーボネート系樹脂組成物は、3mmプレートとした際の全光線透過率が80%以上であることを要する。全光線透過率は、ISO 14782:1999に準拠して測定される値である。上記全光線透過率は、好ましくは83%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上である。
【0063】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物には、フッ素を含有する難燃助剤及び/または無機フィラーを含まないことが好ましい。フッ素を含有する難燃助剤や無機フィラーを含まないことにより、より高い全光線透過率を得ることができる。
【0064】
[成形品]
上記の溶融混練した本発明のポリカーボネート系樹脂組成物、または得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。特に、溶融混練により得られたペレットを用いて、射出成形及び射出圧縮成形による射出成形体の製造に好適に用いることができる。
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物からなる成形品は、例えば、テレビ、ラジオ、カメラ、ビデオカメラ、オーディオプレーヤー、DVDプレーヤー、エアコンディショナ、携帯電話、スマートフォン、トランシーバー、ディスプレイ、コンピュータ、タブレット端末、携帯ゲーム機器、据置ゲーム機器、装着型電子機器、レジスター、電卓、複写機、プリンター、ファクシミリ、通信基地局、バッテリー、ロボット等の電気・電子機器用部品の外装及び内部部品等、並びに自動車、鉄道、船舶、航空機、宇宙産業用機器、医療機器の外装及び内部部品並びに建材の部品として好適に用いることができる。
【実施例0065】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。なお、各例における特性値、評価結果は、以下の要領に従って求めた。
【0066】
(1)ポリジメチルシロキサン鎖長および含有率
NMR測定によって、ポリジメチルシロキサンのメチル基の積分値比により算出した。なお、本明細書においては、ポリジメチルシロキサンをPDMSと略記することがある。
<ポリジメチルシロキサンの鎖長の定量方法>
1H-NMR測定条件
NMR装置:(株)JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
積算回数:256回
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.50~2.75付近に観測されるアリルフェノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
オイゲノール末端ポリジメチルシロキサンの場合
A:δ-0.02~0.5付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
B:δ2.40~2.70付近に観測されるオイゲノールのメチレン基の積分値
ポリジメチルシロキサンの鎖長=(A/6)/(B/4)
【0067】
<ポリジメチルシロキサン含有率の定量方法>
アリルフェノール末端ポリジメチルシロキサンを共重合したPTBP末端ポリカーボネート樹脂中のポリジメチルシロキサン共重合量の定量方法
NMR装置:(株)JEOL RESONANCE製 ECA-500
プローブ:50TH5AT/FG2
観測範囲:-5~15ppm
観測中心:5ppm
パルス繰り返し時間:9秒
パルス幅:45°
積算回数:256回
NMR試料管:5φ
サンプル量:30~40mg
溶媒:重クロロホルム
測定温度:室温
A:δ1.5~1.9付近に観測されるBPA部のメチル基の積分値
B:δ-0.02~0.3付近に観測されるジメチルシロキサン部のメチル基の積分値
C:δ1.2~1.4付近に観測されるp-tert-ブチルフェニル部のブチル基の積分値
a=A/6
b=B/6
c=C/9
T=a+b+c
f=a/T×100
g=b/T×100
h=c/T×100
TW=f×254+g×74.1+h×149
PDMS(wt%)=g×74.1/TW×100
【0068】
(2)粘度平均分子量
粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ型粘度計を用いて、20℃における塩化メチレン溶液の粘度を測定し、これより極限粘度[η]を求め、次式(Schnellの式)にて算出した。
【数3】
【0069】
<製造例1:ポリカーボネートオリゴマーの製造>
5.6質量%の水酸化ナトリウム水溶液に、ビスフェノールA(BPA)(後から溶解する)に対して2000ppmの亜二チオン酸ナトリウムを加えた。これにBPA濃度が13.5質量%となるようにBPAを溶解し、BPAの水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
このBPAの水酸化ナトリウム水溶液を40L/hr、塩化メチレンを15L/hr、及びホスゲンを4.0kg/hrの流量で内径6mm、管長30mの管型反応器に連続的に通した。管型反応器はジャケット部分を有しており、ジャケットに冷却水を通して反応液の温度を40℃以下に保った。管型反応器を出た反応液を、後退翼を備えた内容積40Lのバッフル付き槽型反応器へ連続的に導入し、ここにさらにBPAの水酸化ナトリウム水溶液を2.8L/hr、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を0.07L/hr、水を17L/hr、1質量%のトリエチルアミン水溶液を0.64L/hrの流量で添加して反応を行なった。槽型反応器から溢れ出る反応液を連続的に抜き出し、静置することで水相を分離除去し、塩化メチレン相を採取した。
このようにして得られたポリカーボネートオリゴマーは濃度341g/L、クロロホーメート基濃度0.71mol/Lであった。
【0070】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A1)>
邪魔板、パドル型攪拌翼及び冷却用ジャケットを備えた50L槽型反応器に、上記製造例1で製造したポリカーボネートオリゴマー溶液15L、塩化メチレン10.1L、ポリジメチルシロキサンの平均鎖長nが37であるo-アリルフェノール末端変性ポリジメチルシロキサン(PDMS)407g及びトリエチルアミン8.4mLを仕込み、攪拌下でここに水酸化ナトリウム85gを純水980mLに溶かした水酸化ナトリウム水溶液1065gを加え、20分間ポリカーボネートオリゴマーとアリルフェノール末端変性PDMSの反応を行った。
この重合液に、p-tert-ブチルフェノール(PTBP)の塩化メチレン溶液(PTBP70.4gを塩化メチレン1.0Lに溶解したもの)、ビスフェノールAの水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム618gと亜二チオン酸ナトリウム2.1gを純水9.0Lに溶解した水溶液にビスフェノールA1093gを溶解させたもの)を添加し、40分間重合反応を行った。
希釈のため塩化メチレン13Lを加え20分間攪拌した後、ポリカーボネート-ポリジメチルシロキサン共重合体(PC-PDMS共重合体)を含む有機相と過剰のビスフェノールA及び水酸化ナトリウムを含む水相に分離し、有機相を単離した。
こうして得られたPC-PDMS共重合体の塩化メチレン溶液を、その溶液に対して順次、15容積%の0.03mol/L水酸化ナトリウム水溶液、0.2モル/L塩酸で洗浄し、次いで洗浄後の水相中の電気伝導度が5μS/cm以下になるまで純水で洗浄を繰り返した。
洗浄により得られたPC-PDMS共重合体の塩化メチレン溶液を濃縮・粉砕し、得られたフレークを減圧下120℃で乾燥し、PC-PDMS共重合体(A1)を製造した。
得られたPC-PDMS共重合体(A1)のNMRにより求めたPDMSブロック部分の含有量は6.0質量%、粘度平均分子量Mvは17,700であった。
【0071】
<ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A2)>
ポリジメチルシロキサンの平均鎖長nが88であるo-アリルフェノール末端変性PDMSを用いたこと以外は、上記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A1)と同様にして、PC-PDMS共重合体(A2)を製造した。
得られたPC-PDMS共重合体(A2)の核磁気共鳴(NMR)により求めたPDMSブロック部分の含有量は6.0質量%、粘度平均分子量Mvは17,700であった。
【0072】
<芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)>
芳香族ホモポリカーボネート樹脂(B1)[出光興産(株)製,タフロンFN2500(商品名),粘度平均分子量=23,500]
芳香族ホモポリカーボネート樹脂(B2)[出光興産(株)製,タフロンFN2200(商品名),粘度平均分子量=21,300]
芳香族ホモポリカーボネート樹脂(B3)[出光興産(株)製,タフロンFN1900(商品名),粘度平均分子量=19,300]
芳香族ホモポリカーボネート樹脂(B4)[出光興産(株)製,タフロンFN1700(商品名),粘度平均分子量=17,700]
【0073】
<ポリエステル系樹脂(C)>
ポリエチレンテレフタレート(C1):「三井PET J055」[三井化学(株)製]
ポリエチレンテレフタレート(C2):「三井PET J125」[三井化学(株)製]
ポリエチレンテレフタレート(C3):「クラペット KS760K-12」[(株)クラレ製]
ポリブチレンテレフタレート(C4):「ジュラネックス 2002 EF2001」[ウィンテックポリマー(株)製]
<その他成分>
酸化防止剤:「IRGAFOS168(商品名)」[トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、BASFジャパン株式会社製]
酸化防止剤:「IRGANOX1076(商品名)」[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル,BASFジャパン株式会社製]
【0074】
実施例1~11、比較例1-1~10-2,参考例1~2
上記PC-POS共重合体(A1)および(A2)、並びにその他の各成分を表1~表3に示す配合割合で混合し、ベント式二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/hr、樹脂温度295~300℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。この評価用ペレットサンプルを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形してIzod試験を行うための試験片(63×13×3.2mm試験片2個)及びHDT試験片(126×13×3.2mm)を作成した。さらに乾燥した評価用ペレットサンプルを射出成形機(株式会社ニイガタマシンテクノ製、MD50XB、スクリュー径30mmφ)を用いて全光線透過率の測定を行うための試験片(3段プレート90mm×50mm、3mm厚部分45mm×50mm、2mm厚部分22.5mm×50mm、1mm厚部分22.5mm×50mm)を作成した
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
[評価試験]
<全光線透過率:Tt(%)>
全光線透過率は、厚み3mmの試験片について、ISO 14782:1999に準拠して測定した。測定装置としては、日本電色工業株式社製のNDH2000を用いた。試験片は、上述した透明性の評価試験用の試験片を用いた。
<ヘイズ値>
厚み3mmの試験片について、ISO 14782:1999に準拠して測定した。ヘイズ値が小さいほど透明性が高くなる。
ヘイズ(%)=Td/Tt×100
(式中、Td:拡散透過率,Tt:全光線透過率)
<YI値>
厚み3mmの試験片について、分光光度計「U-4100」(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用い、C光源、2度視野の条件でYI値を測定した。
【0079】
<流動性評価:MFR>
上記ペレットを用いて、JIS K 7210-1:2014に準拠し、300℃、1.2kgの荷重下にて、直径2.095±0.005mm、長さ8.000±0.025mmのダイから流出する溶融樹脂量(g/10分)を測定した。
<Q値(流れ値)〔単位;10-2mL/秒〕>
上記ペレットを用いて、JIS K 7210-1:2014:付属書JAに準拠し、高架式フローテスターを用いて、280℃、160kgfの圧力下にて、直径1.00mm、長さ10.00mmのノズルより流出する溶融樹脂量(10-2mL/秒)を測定した。Q値は単位時間当たりの流出量を表しており、数値が高いほど、流動性が良いことを示す。
【0080】
<耐衝撃性>
上記得られたペレットを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形してIZOD試験片(長さ63.5mm、幅12.7mm,厚さ3.2mm)を作成した。この試験片に後加工でノッチ(r=0.25mm±0.05mm)を付与した試験片を用いて、ASTM規格D-256に準拠して、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、0℃及び23℃におけるノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
【0081】
<荷重たわみ温度:HDT(単位;℃)>
上記得られたペレットを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形して試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mm)を得た。この試験片を用い、ASTM規格D-648に準拠して、昇温速度120℃/h、支点間距離100mm、1.83MPaの荷重を掛けて、エッジワイズによる試験片のたわみが0.26mmに達した時の温度を記録した。
【0082】
<酢酸イソブチルに対する耐薬品性>
長さ127mm、幅12.7mm、厚み3.2mmの試験片を成形温度280℃、金型温度80℃で射出成形し、スパン距離80mmの3点曲げ試験法にて、1.0%の歪みをかけた後、綿棒を使って酢酸イソブチルを塗付し、23℃で2分放置した後に、外観変化を確認し、次の基準に従い評価した。
外観変化がない、又は微細なクラックが表面に発生したものを「A」とした。
クラックが厚み方向にサンプルの表面から反対に達したものを「B」とした。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明で得られるポリカーボネート系樹脂組成物は、耐衝撃性に優れるため、電気・電子機器用部品の筐体等、自動車及び建材の部品等として好適に用いることができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロック(A-1)及び下記一般式(II)で表される繰り返し単位を含むポリオルガノシロキサンブロック(A-2)を含むポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)0.1質量%以上100質量%以下と、前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)以外の芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)0質量%以上99.9質量%以下とを含むポリカーボネート系樹脂(S)50質量%以上99質量%以下、及びポリエステル系樹脂(C)1質量%以上50質量%以下を含み、
前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の平均鎖長が20以上50未満であり、
前記ポリエステル系樹脂(C)がポリエチレンテレフタレートであり、
フタル酸及びレゾルシノール由来の単位からなる繰り返し部分を含むポリエステルブロック有するポリエステルポリカーボネートを含まず、
3mmプレートの全光線透過率が80%以上である、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。Xは、単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、フルオレンジイル基、炭素数7~15のアリールアルキレン基、炭素数7~15のアリールアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を示す。a及びbは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項2】
前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)は、主鎖が下記一般式(III)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネートブロックを含む、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【化2】

[式中、R30及びR31は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基を示す。X’は単結合、炭素数1~8のアルキレン基、炭素数2~8のアルキリデン基、炭素数5~15のシクロアルキレン基、炭素数5~15のシクロアルキリデン基、-S-、-SO-、-SO2-、-O-又は-CO-を示す。d及びeは、それぞれ独立に0~4の整数を示す。]
【請求項3】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が1質量%以上12質量%以下である、請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネート系樹脂(S)中の前記ポリオルガノシロキサンブロック(A-2)の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネート-ポリオルガノシロキサン共重合体(A)の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネート系樹脂(S)の粘度平均分子量(Mv)が9,000以上50,000以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項7】
フッ素を含有する難燃助剤を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項8】
無機フィラーを含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネート系樹脂(S)中の前記芳香族ポリカーボネート系樹脂(B)の含有量が、1質量%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項11】
電気及び電子機器用部品の外装及び内部部品である、請求項10に記載の成形品。
【請求項12】
自動車及び建材の部品である、請求項10に記載の成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
実施例1~10、及び参考例11、比較例1-1~10-2,参考例1~2
上記PC-POS共重合体(A1)および(A2)、並びにその他の各成分を表1~表3に示す配合割合で混合し、ベント式二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM35B)に供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量20kg/hr、樹脂温度295~300℃にて溶融混練し、評価用ペレットサンプルを得た。この評価用ペレットサンプルを100℃で8時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、NEX110、スクリュー径36mmφ)を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃にて、射出成形してIzod試験を行うための試験片(63×13×3.2mm試験片2個)及びHDT試験片(126×13×3.2mm)を作成した。さらに乾燥した評価用ペレットサンプルを射出成形機(株式会社ニイガタマシンテクノ製、MD50XB、スクリュー径30mmφ)を用いて全光線透過率の測定を行うための試験片(3段プレート90mm×50mm、3mm厚部分45mm×50mm、2mm厚部分22.5mm×50mm、1mm厚部分22.5mm×50mm)を作成した
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
【表3】