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特開2022-163465受信装置および復調のためのパラメータ生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163465
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】受信装置および復調のためのパラメータ生成方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/37 20060101AFI20221019BHJP
   H04B 7/0452 20170101ALI20221019BHJP
   H04W 28/18 20090101ALI20221019BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20221019BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20221019BHJP
【FI】
H03M13/37
H04B7/0452
H04W28/18 110
H04W28/04
H04W16/28 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068403
(22)【出願日】2021-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】村岡 一志
(72)【発明者】
【氏名】土井 隆暢
(72)【発明者】
【氏名】石井 直人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓海
(72)【発明者】
【氏名】三瓶 政一
(72)【発明者】
【氏名】衣斐 信介
【テーマコード(参考)】
5J065
5K067
【Fターム(参考)】
5J065AE06
5J065AG05
5K067AA21
5K067DD34
5K067DD45
5K067EE02
5K067EE08
5K067EE10
5K067HH25
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】機械学習ベース反復復調アルゴリズムを実装した受信機の復号器出力のビット誤り率を改善することに寄与する。
【解決手段】コンピュータシステムに実装される方法は、復調又は復調及び復号のための反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、当該ネットワークの出力から計算される対数尤度比(LLR)分布の非ガウス性を考慮する損失関数を用いた機械学習手法により訓練することを含む。当該方法は、さらに、当該反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第1のセットを生成することを含む。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムに実装される方法であって、
復調又は復調及び復号のための反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算される対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練すること、及び
前記訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第1のセットを生成すること、
を備える方法。
【請求項2】
前記第1の損失関数は、前記LLR分布の非ガウス性を測定するために前記LLR分布のネゲントロピー又は尖度を表す項を含むよう定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の損失関数は、更に、前記ネットワークの出力と教師データとの差を考慮するよう定義される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の損失関数は、前記LLR分布のネゲントロピーを表す項と前記ネットワークの出力と教師データとの間の平均二乗誤差を表す項との加重和として定義される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の損失関数は、前記LLR分布のネゲントロピーを表す項と前記ネットワークの出力と教師データとの間のクロスエントロピーを表す項との加重和として定義される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記反復アルゴリズムは反復Belief Propagation(BP)アルゴリズムであって、前記学習されたパラメータの第1のセットは、複数のスケーリング係数、複数のダンピング係数、複数のノード選択係数のうち1つ又は任意の組み合わせを含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ネットワークを、第2の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第2のセットを生成することをさらに備え、
前記第2の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、符号化率が第1の値であるとき又は変調多値数が第2の値であるときに使用され、
前記第2のセットは、前記符号化率が前記第1の値よりも低いとき、又は前記変調多値数が前記第2の値よりも大きいときに使用される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ネットワークを、第3の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第3のセットを生成することをさらに備え、
前記第3の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、信号対雑音電力(Signal to Noise Ratio(SNR))が第3の値であるときに使用され、
前記第3のセットは、前記SNRが前記第3の値よりも小さいときに使用される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ネットワークを、第4の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第4のセットを生成することをさらに備え、
前記第4の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは初送時の復調処理のために使用され、前記第4のセットは再送時の復調処理のために使用される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータシステムに読み込まれた場合に、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を前記コンピュータシステムに行わせる命令群を備えるプログラム。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法により生成された学習されたパラメータの1又はそれ以上のセットを格納するメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記1又はそれ以上のセットのいずれかを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成し、
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行う、
よう構成される、
受信装置。
【請求項12】
メモリと、
前記メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成し、
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行う、
よう構成され、
前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータのセットである、
受信装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つのプロセッサは、変調多値数及び符号化率の少なくとも一方に応じて、前記反復アルゴリズムにおいて使用するために、前記第1のセットと学習されたパラメータの第2のセットとの間で選択するよう構成される、
請求項12に記載の受信装置。
【請求項14】
前記第2のセットは、前記ネットワークを、第2の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより生成され、
前記第2の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、前記符号化率が第1の値であるとき又は前記変調多値数が第2の値であるときに使用され、
前記第2のセットは、前記符号化率が前記第1の値よりも低いとき、又は前記変調多値数が前記第2の値よりも大きいときに使用される、
請求項13に記載の受信装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサは、信号対雑音電力(Signal to Noise Ratio(SNR))に応じて、前記反復アルゴリズムにおいて使用するために、前記第1のセットと学習されたパラメータの第3のセットとの間で選択するよう構成される、
請求項12~14のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項16】
前記第3のセットは、前記ネットワークを、第3の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより生成され、
前記第3の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、前記SNRが第3の値であるときに使用され、
前記第3のセットは、前記SNRが前記第3の値よりも小さいときに使用される、
請求項15に記載の受信装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1のセットを初送時の復調処理のために使用し、学習されたパラメータの第4のセットを再送時の復調処理のために使用するよう構成される、
請求項12~16のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項18】
前記第4のセットは、前記ネットワークを、第4の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより生成され、
前記第4の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義される、
請求項17に記載の受信装置。
【請求項19】
学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成すること、及び
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うこと、
を備え、
前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータセットである、
受信装置により行われる方法。
【請求項20】
受信装置に含まれるプロセッサに方法を行わせるプログラムであって、
前記方法は、
学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成すること、及び
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うこと、
を備え、
前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータセットである、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システムに関し、特に受信信号処理に関する。
【背景技術】
【0002】
Belief Propagation(確率伝搬(伝播)又は信念伝搬(伝播))(BP)アルゴリズムは、信号検出(復調及び復号)のために使用されることができる。例えば、BPアルゴリズムは、Multi-Input Multi-Output(MIMO)受信機での信号検出のために使用されてもよい。
【0003】
BPアルゴリズムを用いる信号処理は、機械学習(又は深層学習)を用いて最適化されることができる。この手法は、BPアルゴリズムの反復(iterations)をニューラルネットワークに類似した層ごとの(layer-wise)構造に展開(unfold)し、多数の訓練可能(trainable)パラメータを導入する。このような手法は深層展開と呼ばれる。非特許文献1及び2は、大規模(又はmassive)MIMO検出のためのBPアルゴリズムの多数のパラメータを機械学習により調整し、これによりBPアルゴリズムの収束特性を改善する手法を提案している。また、非特許文献3は、軌道角運動量(Orbital Angular Momentum(OAM))を用いたOAM多重伝送システムにおいて、交互方向乗数法(Alternating Direction Method of Multipliers(ADMM))と呼ばれる反復復調アルゴリズムを用い、アルゴリズムのパラメータを機械学習により調整することでモード間干渉の除去を行う手法を提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D. Shirase, T. Takahashi, S. Ibi, K. Muraoka, N. Ishii, and S. Sampei, "A Study on Deep Unfolding-aided Gaussian Belief Propagation for Correlated Large MIMO Signal Detection," IEICE Technical Report Volume 120 Number 87, pp. 25-30, July 2020
【非特許文献2】J. Tachibana and T. Ohtsuki, "Learning and Analysis of Damping Factor in Massive MIMO Detection using BP Algorithm with Node Selection," IEICE Technical Report Volume 120 Number 29, pp. 49-54, May 2020
【非特許文献3】N. Kamiya, “Learning-Based Signal Detection for Wireless OAM-MIMO Systems With Uniform Circular Array Antennas,” IEEE Access Volume 8, pp. 219344-219354, December 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、機械学習ベース(machine-learning-based)反復復調アルゴリズム(e.g., Gaussian BPアルゴリズム)は、平均二乗誤差(mean square error(MSE))又は二値交差エントロピー(binary cross entropy(BCE))を考慮する損失関数によって最適化される。MSE規範では、復調部(つまり反復復調アルゴリズム)の出力と教師データ(つまり、送信された変調シンボル)との誤差を最小とするように反復復調アルゴリズムの多数のパラメータが調整される。一方、BCE規範では、復調部(つまり反復復調アルゴリズム)の出力から得られる対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))の相互情報量を最大化するようにパラメータが調整される。
【0006】
しかしながら、一般的な無線通信システムは、forward error correction(FEC)を使用し、受信機では復調器出力に基づく誤り訂正処理が行われる。すなわち、最終的な情報ビットの判定は、復調器出力に基づいてではなく、復号器出力に基づいて行われる。ここで注意すべきは、復調器出力のビット誤り率(bit error rate(BER))の最小化が必ずしも復号器出力のBERの最小化をもたらさないということである。無線通信システムで用いられる誤り訂正符号(e.g., low-density parity-check (LDPC) codes、Reed-Solomon (RS) codes, Viterbi codes, Turbo codes)は、通常、加法性白色ガウス雑音(additive white Gaussian noise(AWGN))チャネル上での送信のために最適化又は設計されている。したがって、復号器は、復調器出力のLLRの雑音成分がガウス分布に従うときに最大の誤り訂正能力を提供できる。
【0007】
以上のことから、復調器出力のMSEメトリック又はBCEメトリックに基づく損失関数を用いた学習は、復号器出力のBERを必ずしも最小化できないという問題がある。
【0008】
ここに開示される実施形態が達成しようとする目的の1つは、機械学習ベース反復復調アルゴリズムを実装した受信機の復号器出力のビット誤り率を改善することに寄与する装置、方法、及びプログラムを提供することである。なお、この目的は、ここに開示される複数の実施形態が達成しようとする複数の目的の1つに過ぎないことに留意されるべきである。その他の目的又は課題と新規な特徴は、本明細書の記述又は添付図面から明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様では、コンピュータシステムに実装される方法は、以下のステップを含む:
(a)復調又は復調及び復号のための反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練すること、及び
(b)前記訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第1のセットを生成すること。
【0010】
第2の態様では、受信装置は、メモリ及び少なくとも1つのプロセッサを備える。前記メモリは、第1の態様の方法により生成された学習されたパラメータの1又はそれ以上のセットを格納する。前記少なくとも1つのプロセッサは、前記1又はそれ以上のセットのいずれかを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数のLLRベクトルを生成するよう構成される。さらに、前記少なくとも1つのプロセッサは、複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うよう構成される。
【0011】
第3の態様では、受信装置は、メモリ、及び前記メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサを備える。前記少なくとも1つのプロセッサは、学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数のLLRベクトルを生成するよう構成される。ここで、前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータのセットである。さらに、前記少なくとも1つのプロセッサは、複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うよう構成される。
【0012】
第4の態様では、受信装置により行われる方法は、(a)学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数のLLRベクトルを生成すること、及び(b)複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うこと、を含む。前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータのセットである。
【0013】
第5の態様では、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、第1の態様に係る方法をコンピュータに行わせるための命令群(ソフトウェアコード)を含む。
【0014】
第6の態様では、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、第4の態様に係る方法をコンピュータに行わせるための命令群(ソフトウェアコード)を含む。
【発明の効果】
【0015】
上述の態様によれば、機械学習ベース反復復調アルゴリズムを実装した受信機の復号器出力のビット誤り率を改善することに寄与する装置、方法、及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る無線通信システムを示す図である。
図2】実施形態に係るシステムモデルを示す図である。
図3】実施形態に係る基地局の構成例を示す図である。
図4】実施形態に係る基地局のプロセッサの構成例を示す図である。
図5】実施形態に係る基地局の動作の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る復調器の構成例を示す図である。
図7】実施形態に係るBP検出器の深層展開を示す概念図である。
図8】実施形態に係るパラメータセットの一例を示す図である。
図9】実施形態に係るトレーニングシステムの構成例を示す図である。
図10】実施形態に係るトレーニングの一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態に係るコンピュータシステムの一例を示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る受信機の符号誤り率性能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0018】
以下に示される実施形態は、大規模マルチユーザMIMO受信機を主な対象として説明される。しかしながら、これらの実施形態は、機械学習ベース反復復調アルゴリズムを実装した他の受信機に適用されてもよい。例えば、以下の実施形態は、point-to-point MIMOシステムの受信機に適用されてもよいし、Line of Sight(LOS)MIMOシステムの受信機に適用されてもよい。以下の実施形態は、Non-Orthogonal Multiple Access(NOMA)システムでの反復アルゴリズムを用いたマルチユーザ検出に適用されてもよい。以下の実施形態は、光MIMOシステムの受信機に適用されてもよい。光MIMOシステムは、マルチモード光ファイバ又はマルチコア光ファイバを用いた空間分割多重(space-division multiplexing)送信システムであるということができる。限定ではなく例として、機械学習ベース反復復調アルゴリズムは、以下の実施形態で説明されるBPアルゴリズムであってもよい。しかしながら、これらの実施形態は、その他の機械学習ベース反復復調アルゴリズム(例えば、交互方向乗数法)を用いてもよい。
【0019】
また、限定ではなく例として、以下の実施形態は、復調器による復調処理と復号器による復号処理の後に情報ビットを判定する受信機アーキテクチャを説明している。これに代えて、2重に誤り訂正符号化されている通信システムの場合には、復調処理の後に第一の復号処理及び第二の復号処理が行われる受信機アーキテクチャが採用されてもよい。その場合には、反復(復調)アルゴリズムは、復調処理と第一の復号処理を行ってもよい。言い換えると、以下の実施形態で説明される受信機アーキテクチャは、復調及び第一の復号のための反復(復調)アルゴリズムの後に第二の復号が行われる受信機アーキテクチャに置き換えられることができる。さらに代わりに、以下の実施形態で説明される受信機アーキテクチャは、反復復調及び復号(Iterative Detection and Decoding)型の受信機アーキテクチャに置き換えられることができる。これは、ジョイント反復復調及び復号と呼ばれることもある。反復復調及び復号受信機は、復号器(又は復調処理、復調ステップ)で得られた符号ビットの情報を事前情報(a priori information)として復調器(又は復調処理、復調ステップ)にフィードバックし、復調及び復号を含む反復ループを繰り返す。反復復調及び復号受信機は、複数の反復アルゴリズム(又は複数の反復ループ)を実行してもよい。具体的には、反復復調及び復号受信機は、復調(e.g., MIMO検出)及び復号(e.g., LDPC復号、又はTurbo復号)の間の外側(outer)反復ループと、復調処理内の内側(inner)反復ループを含んでもよい。さらに、当業者であれば容易に理解されるように内側反復ループは、復号処理の一部(第一の復号処理)を含んでもよい。以下の実施形態で説明される機械学習を用いたパラメータ生成方法は、内側反復ループのパラメータセットを機械学習により生成するために使用されてもよいし、外側及び内側反復ループのパラメータセットを同時に機械学習により生成するために使用されてもよい。
【0020】
すなわち、本明細書で使用される「反復復調アルゴリズム」及び「反復アルゴリズム」との用語は、少なくとも復調に使用され、復調及び復号(の一部)に使用されてもよい反復アルゴリズムを参照する。また、本明細書で使用される「復調」との用語は、例えば、ソフト復調、信号検出、検出、ソフト検出、デマッピング、又はソフト・デマッピングと呼ばれてもよい。以下の実施形態は、反復復調アルゴリズムの後段に復号処理(又は第二の復号処理)が配置された受信機アーキテクチャに広く適用されることができる。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、実施形態に係る無線通信システム(i.e., マルチプルアクセス・セルラーシステム)の構成例を示している。図1を参照すると、基地局1は、複数の無線端末2に無線アクセスを提供する。基地局1は、アクセスポイント、Transmission/Reception Point (TRP)、又はその他の名称で参照されてもよい。基地局1は、例えば、5GシステムのgNB又はgNB Distributed Unit(gNB-DU)であってもよい。幾つかの実装では、無線通信システムは、複数の無線端末2から基地局1へのアップリンク送信のためにマルチユーザMIMO技術を利用してもよい。この場合、基地局1は、複数の無線端末2から参照信号を受信し、受信した参照信号を用いて複数の無線端末2と基地局1の間のMIMOチャネルを推定し、複数の無線端末からデータ信号を受信し、推定されたチャネルを用いて送信信号を検出してもよい。すなわち、基地局1は、複数の無線端末2のマルチユーザ信号を分離するためにMIMO検出を行ってもよい。
【0022】
図2は、アップリンク・マルチユーザMIMO送信のシステムモデルの一例を示している。図2では、複数の無線端末2の複数の送信機20(20-1、・・・20-M’)が、チャネル(伝搬路)30を介して基地局1の受信機10と通信する。図2の例では、M’個の送信機20の各々が1つの送信アンテナを持つ。これに代えて、各送信機20は2つ以上の送信アンテナを有してもよい。基地局1の受信機10は、N’個の受信アンテナを有する。送信アンテナの合計数M’は受信アンテナの合計数N’以下であるものとする。
【0023】
以降の説明では、簡潔化のために、各無線端末2(ユーザ)からの送信信号はシングルキャリア伝送であり、各無線端末2と基地局1との間の伝搬路はフラットフェージングであるとみなす。一方で、各ユーザからの送信信号がOrthogonal Frequency Division Multiplexing (OFDM)又はSingle Carrier-Frequency Division Multiple Access(SC-FDMA)等を使用する場合のマルチパスフェージング環境においても、適切な長さのサイクリックプリフィクスを送信信号に挿入することで、各サブキャリア単位ではフラットフェージングとみなせる。したがって、本実施形態は、OFDM及びSC-FDMAに適用されてもよい。
【0024】
複数の無線端末2の合計M’個の送信アンテナからQuadrature Amplitude Modulation(QAM)変調された送信信号が伝送され、N’個の受信アンテナを具備する基地局1において受信されることとする。このとき、等価低域表現による複素数の信号モデルは次式で表される:
【数1】
ここで、ycはN’×1(i.e., N’行1列)の複素受信信号ベクトル、HcはN’×M’の複素MIMOチャネル行列、zcはN’×1の複素雑音ベクトル、xcはM’×1の複素送信信号ベクトルである。
【0025】
QAM変調の変調シンボル数をQ’とし、例えば、Quadrature Phase shift Keying(QPSK)のときにQ’は4であり、16QAMのときにQ’は16である。変調シンボルの振幅については、I軸及びQ軸それぞれの振幅がQPSKのときに{+c,-c}であり、16QAMのときに{+c,-c,+3c,-3c}であるとする。ここで、cは以下の式で表される。Esは平均信号電力である。各受信アンテナにおける複素雑音の電力をN0とする。
【数2】
【0026】
説明の簡略化のために、複素数の等価低域表現を等価な実数の信号モデルyに置き換えた受信信号モデルは次の式で表される:
【数3】
ここで、yはN×1の等価実数受信信号ベクトルであり、HはN×Mの等価実数MIMOチャネル行列であり、zはN×1の等価実数雑音ベクトルであり、xはM×1の等価実数送信信号ベクトルである。Nは2N’に等しく、Mは2M’に等しい。各送信信号は変調シンボル数Qが√Q’(i.e., Q’の平方根)であるPulse Amplitude Modulation(PAM)変調シンボルと等価であり、平均信号電力はEs/2である。また、雑音ベクトルzの各要素に含まれる雑音電力はN0/2である。以下では、等価実数モデルを用いた受信処理を説明する。
【0027】
図3は、基地局1の構成例を示している。図3を参照すると、基地局1は、Radio Frequency(RF)トランシーバ301、ネットワークインタフェース303、プロセッサ304、及びメモリ305を含む。RFトランシーバ301は、複数の無線端末2と通信するためにアナログRF信号処理を行う。RFトランシーバ301は、複数のトランシーバを含んでもよい。RFトランシーバ301は、アンテナアレイ302及びプロセッサ304と結合される。RFトランシーバ301は、変調シンボルデータをプロセッサ304から受信し、送信RF信号を生成し、送信RF信号をアンテナアレイ302に供給する。また、RFトランシーバ301は、アンテナアレイ302によって受信された受信RF信号に基づいてベースバンド受信信号を生成し、これをプロセッサ304に供給する。RFトランシーバ301は、ビームフォーミングのためのアナログビームフォーマ回路を含んでもよい。アナログビームフォーマ回路は、例えば複数の移相器及び複数の電力増幅器を含む。
【0028】
ネットワークインタフェース303は、ネットワークノード(e.g., 他の基地局、及びコアネットワークノード)と通信するために使用される。ネットワークインタフェース303は、例えば、IEEE 802.3 seriesに準拠したネットワークインターフェースカード(NIC)を含んでもよい。
【0029】
プロセッサ304は、無線通信のためのデジタルベースバンド信号処理(データプレーン処理)とコントロールプレーン処理を行う。プロセッサ304は、複数のプロセッサを含んでもよい。例えば、プロセッサ304は、デジタルベースバンド信号処理を行うモデム・プロセッサ(e.g., Central Processing Unit(CPU)、Graphics Processing Unit(GPU)、又はDigital Signal Processor(DSP))とコントロールプレーン処理を行うプロトコルスタック・プロセッサ(e.g., Central Processing Unit(CPU)又はMicro Processing Unit(MPU))を含んでもよい。
【0030】
例えば、プロセッサ304によるデジタルベースバンド信号処理は、Service Data Adaptation Protocol(SDAP)レイヤ、Packet Data Convergence Protocol(PDCP)レイヤ、Radio Link Control(RLC)レイヤ、Medium Access Control(MAC)レイヤ、およびPhysical(PHY)レイヤの信号処理を含んでもよい。また、プロセッサ304によるコントロールプレーン処理は、Non-Access Stratum (NAS) messages、Radio Resource Control (RRC) messages、Medium Access Control (MAC) Control Elements (CEs)、及びDownlink Control Information (DCI)の処理を含んでもよい。
【0031】
プロセッサ304は、ビームフォーミングのためのデジタルビームフォーマ・モジュールを含んでもよい。デジタルビームフォーマ・モジュールは、MIMOエンコーダ及びプリコーダを含んでもよい。
【0032】
メモリ305は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。揮発性メモリは、例えば、Static Random Access Memory(SRAM)若しくはDynamic RAM(DRAM)又はこれらの組み合わせである。不揮発性メモリは、マスクRead Only Memory(MROM)、Electrically Erasable Programmable ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、若しくはハードディスクドライブ、又はこれらの任意の組合せである。メモリ305は、プロセッサ304から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ304は、ネットワークインタフェース303又はその他のI/Oインタフェースを介してメモリ305にアクセスしてもよい。
【0033】
メモリ305は、基地局1による処理の少なくとも一部を行うための命令群およびデータを含む1つ又はそれ以上のソフトウェアモジュール(コンピュータプログラム)を格納したコンピュータ読み取り可能な媒体を含んでもよい。いくつかの実装において、プロセッサ304は、当該ソフトウェアモジュールをメモリ305から読み出して実行することで、上述の実施形態で説明された基地局1による処理の少なくとも一部を行うよう構成されてもよい。
【0034】
本実施形態に従うと、プロセッサ304は、マルチユーザ検出(MIMO検出)のための受信信号処理(つまり、復調及び復号)を基地局1に行わせることができる。そのために、プロセッサ304は、図4に示される復調器470並びに1又はそれ以上の復号器480(480-1、・・・480-M)を含んでもよい。
【0035】
復調器470は、BP検出器400及びLLR生成器460を含む。BP検出器400は、N’個の受信アンテナにより得られるN個の受信信号y1~yNを受信し、マルチユーザ検出を行うために総反復回数Tの反復BPアルゴリズムを実行する。その後、BP検出器400は、分離されたM個の送信信号(送信シンボル)成分の推定値s’1 (T)~s’M (T)と、等価利得ω’1 (T) ~ω’M (T)をLLR生成器460に提供する。LLR生成器460は、M個の送信シンボルに対応するM個のLLRベクトルを生成する。各LLRベクトルは、各送信シンボルにマップされている符号ビットのLLR値(values)(LLRm,1・・・LLRm,B)を示す。符号ビットLLR値の数Bは、一つの送信シンボルに含まれるビット数に等しい。例えば、複素変調シンボルとして16QAMが使用されるなら、シンボル当たりのビット数(the number of bits per symbol)は4であり、等価実数モデルではBは2に等しい。
【0036】
各復号器480は、対応するLLRベクトルを受信して誤り訂正復号を行い、これにより、復号されたビット系列を生成する。各復号器480は、これには限定されないが例えば、LDPC復号器であってもよい。各復号器480は、他のタイプの誤り訂正符号、例えばRS符号、畳み込み符号、又はTurbo符号のための復号を行ってもよい。
【0037】
BP検出器400は、学習されたパラメータセット450をBPアルゴリズムにおいて用いる。パラメータセット450は、基地局1のメモリ305に格納されてもよい。BPアルゴリズムを使用した信号処理の性能を向上する技術(technique)に、ダンピング(damping)、スケーリング、及びノード選択がある。例えば、学習されたパラメータセット450は、複数のスケーリング係数、複数のダンピング係数、複数のノード選択係数のうち1つ又は任意の組み合わせを含んでもよい。
【0038】
一例では、学習されたパラメータセット450は、複数のスケーリング係数及び複数のダンピング係数を含む。BP検出器400は、これら複数のスケーリング係数を、BPアルゴリズムの異なる反復でそれぞれ使用する。同様に、BP検出器400は、これら複数のダンピング係数をBPアルゴリズムの異なる反復でそれぞれ使用する。したがって、複数のスケーリング係数の総数及び複数のダンピング係数の総数は、BPアルゴリズムの総反復回数と等しくてもよい。
【0039】
他の例では、学習されたパラメータセット450は、複数のスケーリング係数及び複数のノード選択係数を含む。BP検出器400は、これら複数のスケーリング係数を、BPアルゴリズムの異なる反復でそれぞれ使用する。同様に、BP検出器400は、これら複数のノード選択係数をBPアルゴリズムの異なる反復でそれぞれ使用する。なお、後述するように、BPアルゴリズムは、反復毎に複数のノード選択係数を使用してもよい。この場合、パラメータセット450は、反復毎のノード選択係数のセットを含んでもよい。
【0040】
なお、ダンピング(制振)は、過去の反復処理で生成されたビリーフと現在の反復処理で生成されたビリーフの重み付け平均を新たなビリーフとし、これにより収束不良をもたらすビリーフの振動を抑制する。ダンピング係数は、重み付け平均の重み係数(factor, coefficient)を定める。スケーリングは、反復初期におけるビリーフの信頼性が低いことを考慮し、反復が増えるにつれて徐々にビリーフの絶対値が大きくなるよう調整するパラメータ(スケーリング係数)を導入する。MIMO検出の場合、ノード選択は、フェージング空間相関(受信アンテナ間相関)への対策として用いられる。具体的には、ノード選択では、受信アンテナ素子のセットが複数のサブセットに分割される。各サブセットは、空間的に離れた(相関が低い)受信アンテナ素子から構成される。ノード選択を伴うBPアルゴリズムは、1回のBP反復で1つのサブセットのビリーフのみを更新し、続くBP反復で他のサブセットのビリーフを順次更新する。
【0041】
パラメータセット450は、BP検出器400の反復BPアルゴリズムを展開することで得られるネットワーク(又はグラフ)を機械学習手法により訓練することで生成される。この機械学習は、当該ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性(non-Gaussianity、non-Gaussian nature)を考慮する損失関数を用いる。LLR分布の非ガウス性は、LLR分布のガウス分布からのずれを表す。言い換えると、LLR分布の非ガウス性の大きさは、LLR分布がどのくらいガウス分布からずれているかを表す。損失関数は、LLR分布の非ガウス性を測定するために、LLR分布の尖度(kurtosis)又はネゲントロピー(negentropy)を表す項を含むよう定義されてもよい。言い換えると、損失関数は、LLR分布の尖度メトリック又はネゲントロピー・メトリックを表す項を含んでもよい。
【0042】
尖度は分布の尖り(peakedness)の程度を測定し、これはガウス分布の場合にのみゼロである。他の分布の尖度は、それがsuper-Gaussianである(ガウス分布よりもスパイク状である)場合は正であり、それがsub-Gaussianである(ガウス分よりもフラットである)場合は負である。したがって、尖度の絶対値又は尖度の二乗は、分布の非ガウス性を測定するために使用されることができる。ネゲントロピーは、(正規化された)微分エントロピー(differential entropy)とも呼ばれる。ある分布のネゲントロピーは、当該分布と同じ分散(variance)を持つガウス分布のエントロピーから当該分布のエントロピーを引いた値として定義される。なお、ガウス分布の重要な特性は、実軸全体に渡る全ての分布の中で最大のエントロピーを持っていることである。ネゲントロピーは分布がガウス分布で無い限りいつもゼロより大きいため、分布の非ガウス性を測定するために使用されることができる。
【0043】
独立成分分析の分野で知られているように、分布xのネゲントロピーJは以下のように近似されることができる、
【数4】
ここで、E{}は平均化操作を表し、kurt()は尖度関数を表す。尖度関数は以下のように定義される、
【数5】
分布xがゼロ平均及び単位分散を持つように標準化された分布であるなら、分布xの尖度関数は以下のように表される、
【数6】
【0044】
これに代えて、ゼロ平均及び単位分散を持つように標準化された分布xのネゲントロピーJは以下のように近似されてもよい、
【数7】
【0045】
パラメータセット450を得るための学習過程では、ネットワークの出力から計算されるLLR分布は、これがゼロ平均及び単位分散を持つように標準化されてもよい。そして、標準化されたLLR分布のネゲントロピー・メトリック(又は尖度メトリック)を表す項を含む損失関数を最小化するように、ネットワーク内のパラメータが調整さてもよい。なお、誤り訂正能力を最大化するためには、LLR分布の平均値と分散値が1:2の一貫性条件を満たす必要があることが知られている。これを用いて、LLR分布の分散は、LLR分布の平均値の2倍を求めることで計算されてもよい。
【0046】
上述の学習されたパラメータセット450を用いることで、復調器470は、復調処理後のLLR出力(i.e., LLR生成器460の出力)をガウス分布に近づけることができる。言い換えると、復調器470は、後段の復号処理(又は第二の復号処理)に入力されるLLRの分布をガウス分布に近づけることができ、誤り訂正復号に適したLLRを各復号器480に提供できる。結果として、本実施形態の受信機10は、復号器出力のBERを改善できる。
【0047】
続いて以下では、パラメータセット450の学習で使用される損失関数の幾つかの例が説明される。第1の例では、損失関数は以下のように定義されてもよい、
【数8】
ここで、J0はビット0に対応するLLR分布のネゲントロピーであり、J1はビット1に対応するLLR分布のネゲントロピーである。ただし、この損失関数はLLR分布をガウス分布に近づけることに寄与するものの、これは真値(送信信号)との誤差を大きくするかもしれない。この問題を避けるため、損失関数は、以下に示すように、ネットワークの出力と教師データ(真値)との差をさらに考慮するよう定義されてもよい。
【0048】
第2の例では、損失関数は、LLR分布のネゲントロピー・メトリックを表す第1項とネットワークの出力と教師データとの間のMSEメトリックを表す第2項との加重和として定義されてもよい。具体的には、損失関数は以下のように定義されてもよい、
【数9】
ここで、LMSEはネットワークの出力と教師データ(真値)との間のMSEであり、w1は0と1の間のウエイト値である。
【0049】
第3の例では、損失関数は、LLR分布のネゲントロピー・メトリックを表す第1項とネットワークの出力と教師データとの間のクロスエントロピー・メトリックを表す第2項との加重和として定義されてもよい。具体的には、損失関数は以下のように定義されてもよい、
【数10】
ここで、LBCEはネットワークの出力と教師データ(真値)との間のBCEであり、w2は0と1の間のウエイト値である。
【0050】
上述の第2及び第3の例の損失関数は、LLR分布をガウス分布に近づけつつ、真値(送信信号)との誤差を小さく維持するようにパラメータセット450を決定することに寄与する。
【0051】
続いて以下では、BP検出器400の構成例が説明される。図6は、BP検出器400の構成例を示している。図6を参照すると、BP検出器400は、N個のソフト干渉キャンセラ(SOFT IC)610-1~610-N、ビリーフ生成器(BG)620、及びN個のソフトレプリカ生成器(SOFT RG)630-1~630-Nを含む。ソフト干渉キャンセラ610-1~610-Nは、N’個の受信アンテナにより得られるN個の受信信号y1~yNをそれぞれ受信する。例えば、ソフト干渉キャンセラ610-1は、第1アンテナの受信信号y1(第1受信信号と呼ぶ)を受信する。加えて、第t回目の反復を行うために、ソフト干渉キャンセラ610-1は、1つ前(第t-1回目)の反復で生成された全ての送信信号のソフトレプリカxハット1,1 (t-1)~xハット1,M (t-1)を受信する。ここでxハットは、文字xに上付きの^を意味する。そして、ソフト干渉キャンセラ610-1は、キャンセレーション後の受信信号yチルダ1,1 (t)~yチルダ1,M (t)を生成する。ここで、yチルダは、文字yに上付きの~を意味する。
【0052】
ビリーフ生成器620は、上述の学習されたパラメータセット450に含まれる複数のダンピング係数(又ノード選択係数の複数のセット)をメモリ305から読み出す。ビリーフ生成器620は、キャンセレーション後の受信信号yチルダ1,1 (t)~yチルダ1,M (t)をソフト干渉キャンセラ610-1から受信する。ビリーフ生成器620は、他のソフト干渉キャンセラ610-n(ここで、nは2からN)からも、同様に生成されたキャンセレーション後の受信信号yチルダn,1 (t)~yチルダn,M (t)を受信する。そして、ビリーフ生成器620は、第t回目の反復のためのダンピング係数(又ノード選択係数のセット)を使用し、第1受信信号に関連付けられたビリーフr1,1 (t)~r1,M (t)を生成する。同様に、ビリーフ生成器620は、残りの第2~第N受信信号に関連付けられたビリーフを生成する。
【0053】
ソフトレプリカ生成器630-1は、上述の学習されたパラメータセット450に含まれる複数のスケーリング係数をメモリ305から読み出す。ソフトレプリカ生成器630-1は、第1受信信号に関連付けられたビリーフr1,1 (t)~r1,M (t)をビリーフ生成器620から受信する。そして、ソフトレプリカ生成器630-1は、第t回目の反復のためのスケーリング係数を使用し、ソフトレプリカxハット1,1 (t)~xハット1,M (t)を生成し、ソフトレプリカ電力p1,1 (t)~p1,M (t)をさらに生成する。
【0054】
総反復回数TのBP処理の完了後に、ビリーフ生成器620は、分離されたM個の送信信号(送信シンボル)成分の推定値s’1 (T)~s’M (T)と、等価利得ω’1 (T)~ω’M (T)をLLR生成器460に提供する。
【0055】
以下では、ソフト干渉キャンセラ610、ビリーフ生成器620、及びソフトレプリカ生成器630により行われる処理をさらに詳細に説明する。加えて、LLR生成器460により行われる処理を説明する。
【0056】
(1)ソフト干渉キャンセラ
初回の反復では、ソフトレプリカがまだ生成されていない。したがって、ソフト干渉キャンセラ610は、キャンセル処理を行わずに、第1から第N受信信号をビリーフ生成器620に供給する。2回目以降のt回目の反復では、第n受信信号に関連付けられたソフト干渉キャンセラ610-nは、第n受信信号から第m送信信号以外のM-1個の送信信号成分をキャンセルし、キャンセル後の受信信号yチルダn,m (t)を生成する。キャンセル後の受信信号yチルダn,m (t)は以下の式で表される:
【数11】
ここで、ynは第n受信アンテナの受信信号であり、hn,jは第j送信アンテナと第n受信アンテナの間のチャネル応答であり、xハットn,j (t-1)は第(t-1)回目の反復処理で得られた第j送信アンテナの送信信号のソフトレプリカである。上述したように、基地局1は、無線端末2から送信される参照信号を用いてチャネル応答を推定できる。キャンセル処理後の受信信号yチルダn,m (t)は、ビリーフ生成器620に供給される。
【0057】
(2)ビリーフ生成器
ビリーフ生成器620は、キャンセル処理後の受信信号を用いてビリーフを生成する。まず、ビリーフ生成器620は、第n受信アンテナに関するキャンセル処理後の受信信号yチルダn,m (t)を用いて以下の式で表される処理を行い、これにより第t回目の反復における送信信号成分sn,m (t)を得る。
【数12】
ここで、ψn,m (t)は残留干渉雑音電力である。残留干渉雑音電力ψn,m (t)は、次の式に従って得られる:
【数13】
ここで、pn,j (t-1)はソフトレプリカの電力である。上述したように、ソフトレプリカ電力は、ソフトレプリカ生成器630によって生成される。
【0058】
送信信号成分sn,m (t)に含まれる真の送信信号xmに対する等価利得ωn,m (t)は次式で表され、スケーリング処理を行う際の規格化のために使用される:
【数14】
【0059】
次に、ビリーフ生成器620は、送信信号成分sn,m (t)を用いてビリーフrn,m (t)を生成する。ビリーフ生成器620は、ダンピング処理又はノード選択処理のいずれかを用いる。まず、ダンピング処理について説明する。ダンピング処理は、1つ前の第(t-1)回目の反復で得られた送信信号成分と現在の第t回目の反復で得られた送信信号成分の重み付け平均をダンピング係数η(t)を用いて以下のように計算する:
【数15】
ここで、s’n,m (t)はダンピング処理後の送信信号成分である。このダンピング処理により、s’n,m (t)に含まれる等価利得は次式で表される:
【数16】
【0060】
次にノード選択について説明する。ノード選択では、以下の式に従って、直近K回分の反復における各アンテナの送信信号成分を合成したs’n,m (t)を得る:
【数17】
ここで、ηi,t-k (t)は、t回目の反復において送信信号成分si,m (t-k)の反映度を表すノード選択係数である。既存のノード選択法ではノード選択係数ηi,t-k (t)の値は0又は1であり、ノードi(観測ノード、受信アンテナ)を考慮するか否かの二者択一であった。これとは対照的に、本実施形態では、ノード選択係数ηi,t-k (t)は、0から1の間の実数値(0以上且つ1以下の実数値)である。これにより、本実施形態のノード選択係数ηi,t-k (t)は、ノードiの送信信号成分si,m (t-k)の反映度を細かく調整でき、加えて後述するように深層学習において学習(訓練)可能である。上の式でK=tとした場合には、過去の全ての反復で得られた送信信号成分がノード選択において利用される。
【0061】
ノード選択処理により、s’n,m (t)に含まれる等価利得は次式で表される:
【数18】
【0062】
ビリーフ生成器620は、ダンピングまたはノード選択のいずれかを行って得られたs’n,m (t)をω’n,m (t)で規格化し、正規化後のビリーフrn,m (t)を生成し、これをソフトレプリカ生成器630に供給する。正規化後のビリーフrn,m (t)は以下の式で表される:
【数19】
【0063】
(3)ソフトレプリカ生成器
ソフトレプリカ生成器630は、スケーリング係数a(t)によってビリーフrn,m (t)をスケーリングし、以下の式に従ってソフトレプリカxハットn,m (t)およびソフトレプリカ電力pn,m (t)を算出する:
【数20】
ここでEs maxは取り得る最大のPAMシンボルの平均電力であり、s’はPAM変調の判定閾値である。Es maxは以下の式で表される:
【数21】
【0064】
判定閾値s’は、集合SQ’のいずれかの値を取ることができる。集合SQ’は、QPSKのときには{0}であり、16QAMのときには{0, +2c, -2c}である。tanh関数は、ハイパボリックタンジェント関数である。これらの式は、判定閾値s’の周辺におけるビリーフ情報を合成することによって、ソフトレプリカxハットn,m (t)およびソフトレプリカ電力pn,m (t)が生成されることを表している。
【0065】
(4)BP検出器の出力
T回の反復が終了すると、ビリーフ生成器620は、分離されたM個の送信信号成分の推定値s’m (T)と、等価利得ω’m (T)をLLR生成器460に供給する。推定値rm (T)は以下の数式で表される:
【数22】
【0066】
(5)LLR生成器
LLR生成器460は、M個の送信シンボルに対応するM個のLLRベクトルを生成する。各LLRベクトルは、各送信シンボルにマップされている符号語のビットLLR値(values)(LLRm,1・・・LLRm,B)を示す。LLRベクトルの生成は、特定の方法に限定されず、既に知られている様々な手法が利用されることができる。一例では、送信信号xmがB個の符号語ビットcm(1), …, cm(ns), cm(B)で構成されているとき、ns番目の符号語ビットcm(ns)に対応するビットLLRは次式で計算されてもよい:
【数23】
ただし、
【数24】
は、cm(ns)が値bであるシンボル候補点の集合を意味する。なお、このビットLLRの計算式は指数演算の和を含むため、数値的に極めて不安定である。そこで、実装に際しては、指数関数の和の対数は、ヤコビ対数(Jacobian logarithm)を用いて計算されてもよい。
【0067】
続いて以下では、パラメータセット450の学習方法が説明される。図7は、BPに基づくマルチユーザ検出のための深層展開(deep unfolding)を示す概念図である。深層展開は、反復型のアルゴリズムを反復方向に展開し、得られた処理フローグラフを深層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network (DNN))と見なし、深層学習のスキームを適用する手法である。BP検出器400を反復方向に展開すると、図7に示すBPネットワークが与えられる。各BP反復はDNNの1つの層に対応する。これにより、BPネットワークに埋め込まれたメタパラメータの学習が可能となる。例えば、図7に示されるように、学習可能(訓練可能)なパラメータは、各反復(各層)のスケーリング係数a(t)及びダンピング係数η(t)を含んでもよい。これに代えて、学習可能(訓練可能)なパラメータは、各反復(各層)のスケーリング係数a(t)及びノード選択係数のセット{ηi,t-k (t)}を含んでもよい。学習は勾配法に基づいて行われもよく、メタパラメータは損失関数が小さくなる方向に一緒に調整されてもよい。既に説明したように、当該損失関数は、ネットワーク(BPネットワーク)の出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する。これにより、メタパラメータはLLR分布の非ガウス性を小さくするように調整される。当該損失関数は、ネットワークの出力と教師データ(真値)との差をさらに考慮してもよい。当該損失関数は、LLR分布のネゲントロピー・メトリックを表す第1項とネットワークの出力と教師データとの間のMSE(又はBCE)メトリックを表す第2項との加重和として定義されてもよい。
【0068】
図8は、深層学習によって得られるパラメータセット450の例を示している。図8の例では、Modulation and Coding Scheme(MCS)ごとにパラメータセットが決定される。例えばLong Term Evolution(LTE)、LTE-Advanced、及び5Gシステムに関して知られているように、異なるMCS番号は、変調方式(又は変調多値数(変調次数)(modulation order))と符号化率(code rate)の異なる組み合わせに対応付けられる。
【0069】
図8に示された複数のパラメータセットを得るために、MCSごとの学習が行われる。異なるMCSに関する学習は、互いに異なる損失関数を使用してもよい。例えば、誤り訂正符号の符号化率に応じて、上述の式(15)又(16)で定義される目的関数のウエイト値w1又はw2の大きさが変更されてもよい。具体的には、符号化率が相対的に低い場合、すなわち復号器での誤り訂正能力が相対的に強力である場合には、損失関数がLLR分布のネゲントロピー・メトリックを優先的に考慮するようにウエイト値が決定されもよい。対照的に、符号化率が相対的に高い場合、すなわち復号器での誤り訂正能力が相対的に貧弱である場合には、損失関数がMSE(又はBCE)メトリックを優先的に考慮するようにウエイト値が決定されもよい。言い換えると、符号化率が高くなるにつれて、LLR分布のネゲントロピー・メトリックのウエイトを下げつつ、MSE(又はBCE)メトリックのウエイトを上げるように、ウエイト値が変更されてもよい。これにより、誤り訂正能力が強力な場合には復号処理を重視するようにパラメータセットを調整され、誤り訂正能力が貧弱な場合には復調処理を重視するようにパラメータセットを調整される。これにより、各符号化率でのビット誤り率特性を向上できる。
【0070】
さらに又はこれに代えて、変調方式又は変調多値数に応じて、上述の式(15)又(16)で定義される目的関数のウエイトw1又はw2の大きさが変更されてもよい。具体的には、変調多値数が相対的に大きい場合、すなわち復調器出力のLLRのガウス性が低い場合には、損失関数がLLR分布のネゲントロピー・メトリックを優先的に考慮するようにウエイト値が決定されもよい。対照的に、変調多値数が相対的に小さい場合、すなわち調器出力のLLRのガウス性が高い場合には、損失関数がMSE(又はBCE)メトリックを優先的に考慮するようにウエイト値が決定されもよい。言い換えると、変調多値数が小さくなるにつれて、LLR分布のネゲントロピー・メトリックのウエイトを下げつつ、MSE(又はBCE)メトリックのウエイトを上げるように、ウエイト値が変更されてもよい。これにより、変調多値数が大きくLLR分布のガウス性が低い場合には、LLR分布をガウス分布により近づけることで誤り訂正能力を強化できる。反対に、変調多値数が小さく復調器出力のLLR分布のガウス性が高い場合には、復調処理を重視するようにパラメータセットが調整される。これにより、各変調方式を採用した場合のビット誤り率特性を向上できる
【0071】
一例では、第1のパラメータセットを得るために第1の損失関数を用いた学習が行われ、第2のパラメータセットを得るために第2の損失関数を用いた学習が行われてもよい。第2の損失関数は、第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義される。第1及び第2の損失関数は、上述の式(15)又(16)で定義される目的関数のウエイト値w1又はw2の違いによって区別されてもよい。第1のパラメータセットは、符号化率が第1の値であるとき又は変調多値数が第2の値であるときに使用される。一方、第2のパラメータセットは、符号化率が第1の値よりも低いとき、又は変調多値数が前記第2の値よりも大きいときに使用される。
【0072】
さらに又はこれに代えて、互いに異なる信号対雑音電力(Signal to Noise Ratio(SNR))に対応付けられる複数のパラメータセットを得るために、複数の学習が行われてもよい。異なるSNRに関する学習は、互いに異なる損失関数を使用してもよい。例えば、信号対雑音電力(Signal to Noise Ratio(SNR))に応じて、上述の式(15)又(16)で定義される目的関数のウエイトw1又はw2の大きさが変更されてもよい。具体的には、SNRが小さいに場合には、復調器出力の精度が低く、復号器による誤り訂正能力の効果が相対的に大きくなるので、損失関数がLLR分布のネゲントロピー・メトリックを優先的に考慮するようにウエイト値が決定されもよい。対照的に、SNRが大きい場合には、復調器出力の精度が高くなるので、損失関数がMSE(又はBCE)メトリックを優先的に考慮するようにウエイト値が決定されもよい。言い換えると、SNRが大きくなるにつれて、LLR分布のネゲントロピー・メトリックのウエイトを下げつつ、MSE(又はBCE)メトリックのウエイトを上げるように、ウエイト値が変更されてもよい。これにより、SNRが低く復調器出力の精度が低い場合には、LLR分布をガウス分布により近づけることで誤り訂正能力を強化できる。反対に、SNRが高く場合には、復調処理を重視するようにパラメータセットが調整される。これにより、各符号化率でのビット誤り率特性を向上できる。
【0073】
一例では、第1のパラメータセットを得るために第1の損失関数を用いた学習が行われ、第3のパラメータセットを得るために第3の損失関数を用いた学習が行われてもよい。第3の損失関数は、第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義される。第1及び第3の損失関数は、上述の式(15)又(16)で定義される目的関数のウエイト値w1又はw2の違いによって区別されてもよい。第1のパラメータセットは、SNRが第3の値であるときに使用される。一方、第3のパラメータセットは、SNRが第3の値よりも小さいときに使用される。
【0074】
図9は、トレーニングシステム環境の一例を示している。トレーニングデータセット910は、送信信号データセット912及び受信信号データセット914を含む。送信信号データセット912はランダムに生成されてもよい。受信信号データセット914は、送信信号データセット912に対応し、送信信号データセット912及び与えられたチャネル行列を用いて生成される。チャネル行列は、ランダムに生成されてもよいし、3rd Generation Partnership Project(3GPP)仕様書などに規定された伝搬路モデルに基づいてもよい。これに代えて、チャネル行列は、基地局1が設置される実環境での測定結果に基づいて生成されてもよい。
【0075】
トレーニングシステム920は、復調器モジュール922及び学習モジュール924を含む。復調器モジュール922は、基地局1のプロセッサ304又は復調器470をエミュレートする。復調器モジュール922は、基地局1に実装されるBPアルゴリズムと同じBPアルゴリズムを実行することができる。学習モジュール924は、トレーニングデータセット910を用いて復調器モジュール922を訓練する。学習モジュール924は、1又はそれ以上の機械学習アルゴリズムを適用してもよい。
【0076】
学習モジュール924は、上述された損失関数、つまりLLR分布の非ガウス性を考慮する損失関数を使用する。一例では、学習モジュール924は、勾配法に従う更新アルゴリズムを用いてもよい。使用される勾配法の更新アルゴリズムは、例えば、Adaptive moment estimation (Adam) optimizerアルゴリズムであってもよい。加えて、学習モジュール924は、ミニバッチ学習を用いてもよい。学習回数は訓練データに対する過学習を考慮して適切な回数とされればよい。学習率の更新のために、学習回数に対して徐々に更新幅を狭めるStepアルゴリズムが利用されてもよい。
【0077】
学習モジュール924は、機械学習により得られた、学習された(又は訓練された)パラメータセット930を出力する。パラメータセット930は、パラメータセット450として基地局1のメモリ305に格納されてもよい。
【0078】
図10は、トレーニングシステム920の動作の一例を示している。ステップ1001では、トレーニングシステム920は、トレーニングデータセット910を受信する。ステップ1002では、トレーニングシステム920は、復調(又は復調及び復号)のための反復アルゴリズム(e.g., BPアルゴリズム)を展開することで得られるネットワークを、LLR分布の非ガウス性を考慮する損失関数を用いた機械学習により訓練する。ステップ1003では、トレーニングシステム920は、学習された(又は訓練された)パラメータセットをメモリに格納する。
【0079】
トレーニングシステム920は、図11に示されるようなコンピュータシステムであってもよい。図11は、コンピュータシステム1100の構成例を示している。コンピュータシステム1100は、命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行し、これにより例えばトレーニングシステム920のための方法を行うことができる。トレーニングシステム920は、スタンドアロンなコンピュータであってもよいし、ネットワーク化(networked)された1又はそれ以上のコンピュータを含んでもよい。コンピュータシステム1100は、サーバークライアント環境におけるサーバ若しくはクライアント又は両方であってもよい。コンピュータシステム1100は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、又はスマートフォンであってもよい。
【0080】
図11の例では、コンピュータシステム1100は、1又はそれ以上のプロセッサ1110、メモリ1120、及びマスストレージ1130を含み、これらはバス1170を介して互いに通信する。1又はそれ以上のプロセッサ1110は、例えば、Central Processing Unit(CPU)若しくはGraphics Processing Unit(GPU)又は両方を含んでもよい。コンピュータシステム1100は、1又はそれ以上の出力デバイス1140、1又はそれ以上の入力デバイス1150、及び1又はそれ以上の周辺機器(peripherals)1160といった他のデバイスを含んでもよい。1又はそれ以上の出力デバイス1140は、例えば、映像ディスプレイ、スピーカを含む。1又はそれ以上の入力デバイス1150は、例えば、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、若しくはタッチスクリーン、又はこれらの任意の組み合わせを含む。1又はそれ以上の周辺機器1160は、プリンタ、モデム、若しくはネットワークアダプタ、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0081】
メモリ1120及びマスストレージ1130の一方又は両方は、1又はそれ以上の命令セットを格納したコンピュータ読み取り可能な媒体を含む。これらの命令は、部分的に又は完全にプロセッサ1110内のメモリに配置されてもよい。これらの命令は、プロセッサ1110において実行されたときに、例えば図10を用いて説明された機械学習プロセスを行うことをプロセッサ1110に引き起こす。
【0082】
上述されたように、幾つかの実装では、基地局1が有するプロセッサ304は、本実施形態で説明されたアルゴリズムをコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。加えて、トレーニングシステム920は、本実施形態で説明された機械学習をコンピュータに行わせるための命令群を含む1又は複数のプログラムを実行する。これらのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)に格納され、コンピュータに供給されることができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0083】
図12は、本実施形態に係る受信機(復調器470及び復号器480)のビット誤り率(Bit Error Rate(BER))性能を示している。これらは、端末数をM’、受信アンテナ素子数をN’とし、(N’, M’) = (32, 32) のマルチユーザMIMO構成についてのシミュレーション結果である。さらに、誤り訂正符号はLDPC符号(符号化率1/3、符号長1024ビット)であり、変調方式は16QAMである。グラフ1210は、ネゲントロピー・メトリックをウエイト値w1=0.75で考慮する式(15)の損失関数を使用して得られたパラメータセットを用いた受信機のBERを示している。これに対して、グラフ1220は、MSEメトリックのみを考慮する損失関数(i.e., ウェイト値w1=0)を使用して得られたパラメータセットを用いた受信機のBERを示している。これら2つのグラフを比較すると、ネゲントロピーウエイトックを考慮する損失関数を用いた学習を行うことで、ビット誤り率が10-3において1dB以上の利得が得られることが分かる。
【0084】
<第2の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態で説明されたパラメータセットの学習の変形例を提供する。本実施形態に係る無線通信システム及び基地局の構成例は、第1の実施形態のそれらと同様である。
【0085】
本実施形態では、基地局1の受信機10(復調器470,BP検出器400)は、初送時の復調処理のために使用される第1のパラメータセットとは異なる第2のパラメータセットを再送時の復調処理のために使用する。第1のパラメータセットと同様に、第2のパラメータセットは、復調(又は復調及び復号)のための反復アルゴリズムを展開して得られるネットワークを機械学習手法により訓練することによって得られる。ただし、第2のパラメータセットの学習のために使用される第2の損失関数は、第1のパラメータセットの学習のために使用される第1の損失関数と異なる。第2の損失関数は、第1の損失関数よりも、復調器出力のLLR分布の非ガウス性をより深く考慮するように定義される。
【0086】
復号器出力においてビット誤りが検出された場合、受信機10は送信機20に再送を要求することができる。例えば、受信機10は、hybrid automatic repeat request(HARQ)を用いて、初送のLLRと再送のLLRを合成することができる。合成LLRの使用は誤り訂正能力の向上をもたらす。したがって、第2の損失関数は、第1の損失関数よりも、LLR分布のネゲントロピー・メトリックのウエイトを大きくするとよい。これにより、誤り訂正能力が強力である再送時には復号処理を重視するようにパラメータセットが調整される。これは、ビット誤り率特性の向上に寄与できる。
【0087】
<その他の実施形態>
既に述べたように、上述の実施形態は、マルチユーザMIMOのための無線受信機とは異なる、機械学習ベース反復復調アルゴリズムを実装した他の受信機に適用されてもよい。
【0088】
上述の実施形態で説明された復調器470の構成は一例であり、様々な変形が可能である。例えば、BP検出器410は、反復処理内にLLR生成器を含んでもよい。この場合、BP検出器410のビリーフ生成器620は、LLRを出力してもよい。復調器470と復号器480の間にデインタリーバが配置されてもよい。
【0089】
上述した実施形態は本件発明者により得られた技術思想の適用に関する例に過ぎない。すなわち、当該技術思想は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは勿論である。
【0090】
例えば、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0091】
(付記1)
コンピュータシステムに実装される方法であって、
復調又は復調及び復号のための反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算される対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練すること、及び
前記訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第1のセットを生成すること、
を備える方法。
(付記2)
前記第1の損失関数は、前記LLR分布の非ガウス性を測定するために前記LLR分布のネゲントロピー又は尖度を表す項を含むよう定義される、付記1に記載の方法。
(付記3)
前記第1の損失関数は、更に、前記ネットワークの出力と教師データとの差を考慮するよう定義される、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
前記第1の損失関数は、前記LLR分布のネゲントロピーを表す項と前記ネットワークの出力と教師データとの間の平均二乗誤差を表す項との加重和として定義される、付記3に記載の方法。
(付記5)
前記第1の損失関数は、前記LLR分布のネゲントロピーを表す項と前記ネットワークの出力と教師データとの間のクロスエントロピーを表す項との加重和として定義される、付記3に記載の方法。
(付記6)
前記反復アルゴリズムは反復Belief Propagation(BP)アルゴリズムであって、前記学習されたパラメータの第1のセットは、複数のスケーリング係数、複数のダンピング係数、複数のノード選択係数のうち1つ又は任意の組み合わせを含む、
付記1~5のいずれか1項に記載の方法。
(付記7)
前記ネットワークを、第2の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第2のセットを生成することをさらに備え、
前記第2の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、符号化率が第1の値であるとき又は変調多値数が第2の値であるときに使用され、
前記第2のセットは、前記符号化率が前記第1の値よりも低いとき、又は前記変調多値数が前記第2の値よりも大きいときに使用される、
付記1~6のいずれか1項に記載の方法。
(付記8)
前記ネットワークを、第3の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第3のセットを生成することをさらに備え、
前記第3の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、信号対雑音電力(Signal to Noise Ratio(SNR))が第3の値であるときに使用され、
前記第3のセットは、前記SNRが前記第3の値よりも小さいときに使用される、
付記1~7のいずれか1項に記載の方法。
(付記9)
前記ネットワークを、第4の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより、前記反復アルゴリズムの学習されたパラメータの第2のセットを生成することをさらに備え、
前記第4の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは初送時の復調処理のために使用され、前記第4のセットは再送時の復調処理のために使用される、
付記1~8のいずれか1項に記載の方法。
(付記10)
コンピュータシステムに読み込まれた場合に、付記1~9のいずれか1項に記載の方法を前記コンピュータシステムに行わせる命令群を備えるプログラム。
(付記11)
付記1~7のいずれか1項に記載の方法により生成された学習されたパラメータの1又はそれ以上のセットを格納するメモリと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記1又はそれ以上のセットのいずれかを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成し、
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行う、
よう構成される、
受信装置。
(付記12)
メモリと、
前記メモリに結合された少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成し、
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行う、
よう構成され、
前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータのセットである、
受信装置。
(付記13)
前記少なくとも1つのプロセッサは、変調多値数及び符号化率の少なくとも一方に応じて、前記反復アルゴリズムにおいて使用するために、前記第1のセットと学習されたパラメータの第2のセットとの間で選択するよう構成される、
付記12に記載の受信装置。
(付記14)
前記第2のセットは、前記ネットワークを、第2の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより生成され、
前記第2の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、前記符号化率が第1の値であるとき又は前記変調多値数が第2の値であるときに使用され、
前記第2のセットは、前記符号化率が前記第1の値よりも低いとき、又は前記変調多値数が前記第2の値よりも大きいときに使用される、
付記13に記載の受信装置。
(付記15)
前記少なくとも1つのプロセッサは、信号対雑音電力(Signal to Noise Ratio(SNR))に応じて、前記反復アルゴリズムにおいて使用するために、前記第1のセットと学習されたパラメータの第3のセットとの間で選択するよう構成される、
付記12~14のいずれか1項に記載の受信装置。
(付記16)
前記第3のセットは、前記ネットワークを、第3の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより生成され、
前記第3の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義され、
前記第1のセットは、前記SNRが第3の値であるときに使用され、
前記第3のセットは、前記SNRが前記第3の値よりも小さいときに使用される、
付記15に記載の受信装置。
(付記17)
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1のセットを初送時の復調処理のために使用し、学習されたパラメータの第4のセットを再送時の復調処理のために使用するよう構成される、
付記12~16のいずれか1項に記載の受信装置。
(付記18)
前記第4のセットは、前記ネットワークを、第4の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することにより生成され、
前記第4の損失関数は、前記第1の損失関数よりも、前記LLR分布の非ガウス性をより深く考慮するよう定義される、
付記17に記載の受信装置。
(付記19)
学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成すること、及び
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うこと、
を備え、
前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータセットである、
受信装置により行われる方法。
(付記20)
受信装置に含まれるプロセッサに方法を行わせるプログラムであって、
前記方法は、
学習されたパラメータの第1のセットを用いる反復アルゴリズムを複数の受信信号に対して実行し、複数の送信シンボルに対応する複数の対数尤度比(log likelihood ratio(LLR))ベクトルを生成すること、及び
複数の復号されたビット系列を生成するために前記複数のLLRベクトルを用いて誤り訂正復号を行うこと、
を備え、
前記学習されたパラメータの第1のセットは、前記反復アルゴリズムを展開することで得られるネットワークを、前記ネットワークの出力から計算されるLLR分布の非ガウス性を考慮する第1の損失関数を用いた機械学習手法により訓練することで生成されたパラメータセットである、
プログラム。
【符号の説明】
【0092】
1 基地局
2 無線端末
301 RFトランシーバ
303 ネットワークインタフェース
304 プロセッサ
305 メモリ
400 BP検出器
450 学習されたパラメータセット
460 LLR生成器
470 復調器
610 ソフト干渉キャンセラ
620 ビリーフ生成器
630 ソフトレプリカ生成器
910 トレーニングデータセット
920 トレーニングシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
復調器470は、BP検出器400及びLLR生成器460を含む。BP検出器400は、N'個の受信アンテナにより得られるN個の受信信号y1~yNを受信し、マルチユーザ検出を行うために総反復回数Tの反復BPアルゴリズムを実行する図5のステップ501)。その後、BP検出器400は、分離されたM個の送信信号(送信シンボル)成分の推定値s'1 (T)~s'M (T)と、等価利得ω'1 (T) ~ω'M (T)をLLR生成器460に提供する。LLR生成器460は、M個の送信シンボルに対応するM個のLLRベクトルを生成する図5のステップ502)。各LLRベクトルは、各送信シンボルにマップされている符号ビットのLLR値(values)(LLRm,1・・・LLRm,B)を示す。符号ビットLLR値の数Bは、一つの送信シンボルに含まれるビット数に等しい。例えば、複素変調シンボルとして16QAMが使用されるなら、シンボル当たりのビット数(the number of bits per symbol)は4であり、等価実数モデルではBは2に等しい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
各復号器480は、対応するLLRベクトルを受信して誤り訂正復号を行い、これにより、復号されたビット系列を生成する図5のステップ503)。各復号器480は、これには限定されないが例えば、LDPC復号器であってもよい。各復号器480は、他のタイプの誤り訂正符号、例えばRS符号、畳み込み符号、又はTurbo符号のための復号を行ってもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
BP検出器400は、学習されたパラメータセット450をBPアルゴリズムにおいて用いる図5のステップ501)。パラメータセット450は、基地局1のメモリ305に格納されてもよい。BPアルゴリズムを使用した信号処理の性能を向上する技術(technique)に、ダンピング(damping)、スケーリング、及びノード選択がある。例えば、学習されたパラメータセット450は、複数のスケーリング係数、複数のダンピング係数、複数のノード選択係数のうち1つ又は任意の組み合わせを含んでもよい。