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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163566
(43)【公開日】2022-10-26
(54)【発明の名称】磁束バイアス回路
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/38 20060101AFI20221019BHJP
   H03M 1/66 20060101ALI20221019BHJP
   H01L 39/22 20060101ALI20221019BHJP
   G06N 10/00 20220101ALI20221019BHJP
【FI】
G06F7/38 630
H03M1/66 Z ZAA
H01L39/22 K
G06N10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068575
(22)【出願日】2021-04-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/次世代コンピューティング技術の開発/超電導パラメトロン素子を用いた量子アニーリング技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 信行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 義仁
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
(72)【発明者】
【氏名】平山 文紀
【テーマコード(参考)】
4M113
5J022
【Fターム(参考)】
4M113AA42
4M113AC45
4M113AD03
5J022AB02
5J022BA06
5J022CE09
5J022CG02
(57)【要約】
【課題】少ない数の制御線で多数の制御対象を制御できること。
【解決手段】磁束バイアス回路は、印加磁束をデジタル値によって示す入力信号が入力される入力信号線と、入力信号に応じたクロック信号がそれぞれ入力される第1電流制御線、第2電流制御線、及び第3電流制御線と、入力信号線に入力される入力信号と、第1電流制御線、第2電流制御線、第3電流制御線それぞれに入力されるクロック信号とに基づいて、磁束量子パラメトロン回路を含む回路によって入力信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換部と、デジタルアナログ変換部から出力されるアナログ信号に基づいて印加磁束を制御対象に印加する磁束印加部と、を備える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加磁束をデジタル値によって示す入力信号が入力される入力信号線と、
前記入力信号に応じたクロック信号がそれぞれ入力される第1電流制御線、第2電流制御線、及び第3電流制御線と、
前記入力信号線に入力される前記入力信号と、前記第1電流制御線、前記第2電流制御線、前記第3電流制御線それぞれに入力される前記クロック信号とに基づいて、磁束量子パラメトロン回路を含む回路によって前記入力信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換部と、
前記デジタルアナログ変換部から出力される前記アナログ信号に基づいて印加磁束を制御対象に印加する磁束印加部と、
を備える磁束バイアス回路。
【請求項2】
前記デジタルアナログ変換部及び前記磁束印加部はそれぞれ、前記制御対象の数だけ備えられる、
請求項1に記載の磁束バイアス回路。
【請求項3】
前記デジタルアナログ変換部は、
デジタルアナログ変換器と、
磁束量子パラメトロン回路に基づくシフトレジスタ要素が接続されたシフトレジスタと
を備える
請求項1または請求項2に記載の磁束バイアス回路。
【請求項4】
前記デジタルアナログ変換部は、前記入力信号のビット数に応じた数の前記デジタルアナログ変換器を備え、
前記シフトレジスタにおいて、前記シフトレジスタ要素は前記ビット数に応じた数の複数段において接続され、
前記シフトレジスタは、前記ビット数に応じた数の複数段のそれぞれにおいて、第1シフトレジスタ要素、第2シフトレジスタ要素、第3シフトレジスタ要素、及び第4シフトレジスタ要素を備え、
前記複数段のそれぞれにおいて、前記第1シフトレジスタ要素、前記第2シフトレジスタ要素、前記第4シフトレジスタ要素は、前記第1シフトレジスタ要素、前記第2シフトレジスタ要素、前記第4シフトレジスタ要素の順に前記入力信号線によって直列に接続され、かつ前記第3シフトレジスタ要素と前記第4シフトレジスタ要素とは前記入力信号線によって並列に接続され、
前記複数段のそれぞれにおいて、前記第1シフトレジスタ要素には前記第1電流制御線から前記クロック信号が入力され、前記第2シフトレジスタ要素には前記第2電流制御線から前記クロック信号が入力され、前記第3シフトレジスタ要素及び前記第4シフトレジスタ要素には前記第3電流制御線から前記クロック信号が入力され、
前記複数段のそれぞれにおいて、前記デジタルアナログ変換器は、前記第3シフトレジスタ要素から出力される電流値に基づく前記アナログ信号を出力する
請求項3に記載の磁束バイアス回路。
【請求項5】
前記デジタルアナログ変換部が備える前記デジタルアナログ変換器の数は、前記ビット数よりも多く、
前記入力信号のビットのうち1以上のビットには、複数の前記デジタルアナログ変換器が対応づけられている
請求項4に記載の磁束バイアス回路。
【請求項6】
前記シフトレジスタから出力される電流値を保持するためのホールド信号が入力されるホールド信号線をされに備え、
前記デジタルアナログ変換器には前記ホールド信号線から前記ホールド信号が入力される
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の磁束バイアス回路。
【請求項7】
前記デジタルアナログ変換器は、入力される電圧パルスに基づいて超伝導ループ内に磁束量子を保持する単一磁束量子回路であり、
磁束量子パラメトロン回路から出力される電流を電圧パルスに変換するインターフェース回路と、
前記単一磁束量子回路が保持する磁束量子をリセットするためのリセット信号が入力されるリセット信号線と、
超伝導ループをバイアスするためのバイアス信号が入力されるバイアス信号線と
をさらに備え、
前記インターフェース回路、前記単一磁束量子回路、及び前記磁束印加部はそれぞれ、前記制御対象の数だけ備えられ、
複数の前記単一磁束量子回路はそれぞれ、複数の前記インターフェース回路それぞれから出力される前記電圧パルスに基づいて超伝導ループ内に磁束量子を保持し、
前記磁束印加部は、複数の前記単一磁束量子回路がそれぞれ保持する磁束量子に基づいて印加磁束を複数の前記制御対象それぞれに印加する
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の磁束バイアス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁束バイアス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
量子コンピュータは、多数の電子から構成される量子系をシミュレートできるため、材料設計や創薬に応用できると期待されている。量子コンピュータにおいて制御される量子ビットは、超伝導素子によって構成されるため、低温において制御される必要がある。そのため、量子コンピュータの構成は、量子ビットを低温に保つための冷凍機と、室温で動作する機器とが含まれる。室温で動作する機器は、ケーブルを介して量子ビットに制御信号を出力する。
【0003】
量子コンピュータにおいて、冷凍機中の多数の量子ビットを制御するために、大量のケーブルが必要とされている。例えば、72個の量子ビットを制御するためには、168本のケーブルが必要である。しかしながら、量子ビットを制御するためのケーブルの数には上限があるため、量子ビットの数を増加させることは困難を極めている。
【0004】
大規模な量子コンピュータを実現するためには、量子ビットと同じく低温の側で動作する制御回路が必要とされている。例えば、多数の通信線の数が制御対象のデバイスの数よりも少ない量子コンピューティングシステムが知られている(特許文献1)。また、磁束量子パラメトロンをシフトレジスタとして用いた超伝導デジタル/アナログ変換器を備えた超伝導量子プロセッサが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010-511946号公報
【特許文献2】特表2019-521546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、少ない数の制御線で多数の量子ビットなどの制御対象を制御できることが求められている。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、少ない数の制御線で多数の制御対象を制御できる磁束バイアス回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、印加磁束をデジタル値によって示す入力信号が入力される入力信号線と、前記入力信号に応じたクロック信号がそれぞれ入力される第1電流制御線、第2電流制御線、及び第3電流制御線と、前記入力信号線に入力される前記入力信号と、前記第1電流制御線、前記第2電流制御線、前記第3電流制御線それぞれに入力される前記クロック信号とに基づいて、磁束量子パラメトロン回路を含む回路によって前記入力信号をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換部と、前記デジタルアナログ変換部から出力される前記アナログ信号に基づいて印加磁束を制御対象に印加する磁束印加部と、を備える磁束バイアス回路である。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の磁束バイアス回路において、前記デジタルアナログ変換部及び前記磁束印加部はそれぞれ、前記制御対象の数だけ備えられる。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の磁束バイアス回路において、前記デジタルアナログ変換部は、デジタルアナログ変換器と、磁束量子パラメトロン回路に基づくシフトレジスタ要素が接続されたシフトレジスタとを備える。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の磁束バイアス回路において、前記デジタルアナログ変換部は、前記入力信号のビット数に応じた数の前記デジタルアナログ変換器を備え、前記シフトレジスタにおいて、前記シフトレジスタ要素は前記ビット数に応じた数の複数段において接続され、前記シフトレジスタは、前記ビット数に応じた数の複数段のそれぞれにおいて、第1シフトレジスタ要素、第2シフトレジスタ要素、第3シフトレジスタ要素、及び第4シフトレジスタ要素を備え、前記複数段のそれぞれにおいて、前記第1シフトレジスタ要素、前記第2シフトレジスタ要素、前記第4シフトレジスタ要素は、前記第1シフトレジスタ要素、前記第2シフトレジスタ要素、前記第4シフトレジスタ要素の順に前記入力信号線によって直列に接続され、かつ前記第3シフトレジスタ要素と前記第4シフトレジスタ要素とは前記入力信号線によって並列に接続され、前記複数段のそれぞれにおいて、前記第1シフトレジスタ要素には前記第1電流制御線から前記クロック信号が入力され、前記第2シフトレジスタ要素には前記第2電流制御線から前記クロック信号が入力され、前記第3シフトレジスタ要素及び前記第4シフトレジスタ要素には前記第3電流制御線から前記クロック信号が入力され、前記複数段のそれぞれにおいて、前記デジタルアナログ変換器は、前記第3シフトレジスタ要素から出力される電流値に基づく前記アナログ信号を出力する。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の磁束バイアス回路において、前記デジタルアナログ変換部が備える前記デジタルアナログ変換器の数は、前記ビット数よりも多く、前記入力信号のビットのうち1以上のビットには、複数の前記デジタルアナログ変換器が対応づけられている。
【0013】
また、本発明の一態様は、上記の磁束バイアス回路において、前記シフトレジスタから出力される電流値を保持するためのホールド信号が入力されるホールド信号線をされに備え、前記デジタルアナログ変換器には前記ホールド信号線から前記ホールド信号が入力される。
【0014】
また、本発明の一態様は、上記の磁束バイアス回路において、前記デジタルアナログ変換器は、入力される電圧パルスに基づいて超伝導ループ内に磁束量子を保持する単一磁束量子回路であり、磁束量子パラメトロン回路から出力される電流を電圧パルスに変換するインターフェース回路と、前記単一磁束量子回路が保持する磁束量子をリセットするためのリセット信号が入力されるリセット信号線と、超伝導ループをバイアスするためのバイアス信号が入力されるバイアス信号線とをさらに備え、前記インターフェース回路、前記単一磁束量子回路、及び前記磁束印加部はそれぞれ、前記制御対象の数だけ備えられ、複数の前記単一磁束量子回路はそれぞれ、複数の前記インターフェース回路それぞれから出力される前記電圧パルスに基づいて超伝導ループ内に磁束量子を保持し、前記磁束印加部は、複数の前記単一磁束量子回路がそれぞれ保持する磁束量子に基づいて印加磁束を複数の前記制御対象それぞれに印加する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少ない数の制御線で多数の制御対象を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る磁束バイアス回路に流れる各種信号の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るシフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るシフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成の一例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係るシフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成の一例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る入力信号と印加磁束との関係の一例を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る磁束バイアス回路に流れる各種信号の一例を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態に係る入力信号と印加磁束との関係の一例を示す図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図11】本発明の第3の実施形態の変形例1に係る磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図12】本発明の第3の実施形態の変形例2に係る磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図13】本発明の第4の実施形態に係る磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図14】本発明の第4の実施形態に係る磁束バイアス回路に流れる各種信号の一例を示す図である。
図15】本発明の第4の実施形態に係るQFP/SFQインターフェースの回路構成であるQFP/SFQインターフェースの一例を示す図である。
図16】本発明の第4の実施形態に係るQFP/SFQインターフェースの回路構成であるQFP/SFQインターフェースの一例を示す図である。
図17】本発明の第4の実施形態に係る磁束バイアス回路に流れる各種信号の一例を示す図である。
図18】本発明の第4の実施形態に係るシミュレーションに用いた磁束バイアス回路の構成の一例を示す図である。
図19】本発明の第4の実施形態に係る磁束バイアス回路に流れる各種信号の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1の構成の一例を示す図である。図2は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1に流れる各種信号の一例を示す図である。なお、図2では、時間に対する各種信号の値が示されている。
【0018】
磁束バイアス回路1は、制御対象9に磁束を印加するための回路である。制御対象9は、量子コンピュータの回路を構成する種々の部品である。制御対象9は、例えば、量子ビットである。
【0019】
以下に説明するように、磁束バイアス回路1は、一例として、磁束量子パラメトロン(Quantum Flux Parametron:QFP)に基づくデジタルアナログ変換器を備える。QFPは、1対のジョセフソン接合を備え、交流のバイアス電流(励起電流)によって駆動、及びクロックされる回路である。QFPでは、ジョセフソン接合が信号電流を生成する。
QFPでは、超伝導素子を用いているため直流抵抗がなく超低消費電力であることが知られている。QFPでは、ゲート当りの消費電力は数GHzの高速動作においても10pW程度である。また、QFPでは、クロック周波数が10GHz程度の高速動作が可能である。また、QFPは超低消費電力であるため、QFPを量子ビットの近くで動作させることが可能である。なお、上述したQFPの消費電力、クロック周波数それぞれの値は、一例であって、回路パラメータや回路の種類によってそれらの値は変わり得る。
【0020】
磁束バイアス回路1は、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、ホールド信号線6と、シフトレジスタ70と、デジタルアナログ変換器71と、トランス8とを備える。
【0021】
入力信号線2は、入力信号Iinが入力される制御線である。入力信号Iinは、印加磁束をデジタル値によって示す電流である。本実施形態では、入力信号Iinのビット数は、一例として、4ビットである。図1及び図2に示すように入力信号Iinは、一例として、「1110」の論理値を示す。入力信号Iinと印加磁束との関係の具体例については後述する。
【0022】
第1電流制御線3は、第1励起電流Ix1が入力される制御線である。第2電流制御線4は、第2励起電流Ix2が入力される制御線である。第3電流制御線5は、第3励起電流Ix3が入力される制御線である。第1励起電流Ix1、第2励起電流Ix2、及び第3励起電流Ix3はそれぞれ、入力信号Iinに同期されたクロック信号である。
上述したように、第1電流制御線3、第2電流制御線4、及び第3電流制御線5には、入力信号Iinに応じたクロック信号がそれぞれ入力される。
【0023】
ホールド信号線6は、ホールド信号Iholdが入力される制御線である。ホールド信号Iholdは、シフトレジスタ70から出力される出力信号の値を保持するための電流である。ここで図2に示すように、ホールド信号Iholdがハイの場合に、制御対象9に磁束が印加される。
【0024】
シフトレジスタ70は、QFPに基づくシフトレジスタである。シフトレジスタ70では、QFPに基づくシフトレジスタ要素が、入力信号Iinのビット数に応じた数の複数段において接続されている。シフトレジスタ70において、各シフトレジスタ要素はカスケード接続されているともいう。シフトレジスタ70では、シフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成は、複数のシフトレジスタ要素相互間において共通である。
【0025】
ここで図3から図5を参照し、図1に示すシフトレジスタ70に備えられるシフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成の例について説明する。図1に示したシフトレジスタ70に備えられるシフトレジスタ要素の回路構成は、例えば、図3から図5に示すQFPの回路構成のいずれかである。なお、図3から図5に示すQFPの回路構成は一例であって、図1に示したシフトレジスタ70に備えられるシフトレジスタ要素の回路構成は、図3から図5に示すQFPの回路構成以外のQFPの回路構成であってもよい。
【0026】
図3は、本実施形態に係るシフトレジスタ要素として用いられるQFP100の回路構成の一例を示す図である。QFP100は、交流バイアス電流Ixによって駆動、及びクロックされる。交流バイアス電流Ixが電源線101を流れると、電源線101に備えられるインダクタLx1、及びインダクタLx2にそれぞれ磁束が生成される。
【0027】
インダクタLx1と、回路要素103に備えられるインダクタL1とは、結合定数k1によって磁気結合されている。インダクタLx2と、回路要素102に備えられるインダクタL2とは、結合定数k2によって磁気結合されている。インダクタL1及びインダクタL2に磁束が印加されると、一対のジョセフソン接合であるジョセフソン接合J1及びジョセフソン接合J2は、入力信号線104を流れる入力信号Iinに応じて論理状態を決定するとともに、入力信号Iinを増幅して信号電流を生成する。ここでジョセフソン接合J1は、回路要素103に備えられる。ジョセフソン接合J2は、回路要素102に備えられる。
【0028】
生成された信号電流が信号電流線105を流れると、信号電流線105に備えられるインダクタLqに磁束が生成される。インダクタLqと、出力信号線106に備えられるインダクタLoutとは、結合定数koutによって磁気結合されている。インダクタLoutに発生する磁束によって、出力信号Ioutが出力信号線106を流れる。
【0029】
図4は、本実施形態に係るシフトレジスタ要素として用いられるQFP100Aの回路構成の一例を示す図である。QFP100A(図4)とQFP100(図3)とを比較すると、出力信号線106Aが異なる。ここで、他の構成要素(電源線101、回路要素102、回路要素103、入力信号線104、及び信号電流線105)はQFP100(図3)と同じである。QFP100(図3)と同じ構成の説明は省略し、図4では、QFP100(図3)と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
出力信号線106Aは、信号電流線105に、信号電流線105に備えられるインダクタLqの接地されていない側において接続されている。換言すれば、出力信号線106Aと、インダクタLqは、信号電流線105に並列に接続されている。生成された信号電流が信号電流線105を流れると、信号電流の一部が信号電流線105に備えられるインダクタLqに流れる。信号電流の残りの一部が出力信号Ioutとして出力信号線106Aを流れる。
【0031】
図5は、本実施形態に係るシフトレジスタ要素として用いられるQFP100Bの回路構成の一例を示す図である。QFP100B(図5)とQFP100A(図4)とを比較すると、
QFP100B(図5)には、QFP100A(図4)に備えられる信号電流線105、インダクタLqが備えられていない点が異なる。ここで、他の構成要素(電源線101、回路要素102、回路要素103、及び入力信号線104)はQFP100A(図4)と同じである。QFP100A(図4)と同じ機能の説明は省略し、図5ではQFP100A(図4)と異なる部分を中心に説明する。
【0032】
QFP100Bでは、インダクタL1及びインダクタL2に磁束が印加されると、一対のジョセフソン接合であるジョセフソン接合J1及びジョセフソン接合J2は、入力信号線104を流れる入力信号Iinに応じて論理状態を決定するとともに、入力信号Iinを増幅して出力信号Ioutを生成する。生成された出力信号Ioutは、出力信号線106Bから出力される。
【0033】
図1に戻って磁束バイアス回路1の構成の説明を続ける。
シフトレジスタ70は、第1シフトレジスタ要素72-1と、第2シフトレジスタ要素73-1と、第3シフトレジスタ要素74-1と、第4シフトレジスタ要素75-1と、第1シフトレジスタ要素72-2と、第2シフトレジスタ要素73-2と、第3シフトレジスタ要素74-2と、第4シフトレジスタ要素75-2と、第1シフトレジスタ要素72-3と、第2シフトレジスタ要素73-3と、第3シフトレジスタ要素74-3と、第4シフトレジスタ要素75-3と、第1シフトレジスタ要素72-4と、第2シフトレジスタ要素73-4と、第3シフトレジスタ要素74-4と、第4シフトレジスタ要素75-4とを備える。
【0034】
シフトレジスタ70は、複数段のそれぞれにおいて、第1シフトレジスタ要素、第2シフトレジスタ要素、第3シフトレジスタ要素、及び第4シフトレジスタ要素を備える。第1シフトレジスタ要素72-1、第2シフトレジスタ要素73-1、第3シフトレジスタ要素74-1、及び第4シフトレジスタ要素75-1の組は、シフトレジスタ70においてシフトレジスタ要素が接続される段の1つに対応する。第1シフトレジスタ要素72-2、第2シフトレジスタ要素73-2、第3シフトレジスタ要素74-2、及び第4シフトレジスタ要素75-2の組は、シフトレジスタ70においてシフトレジスタ要素が接続される段の1つに対応する。第1シフトレジスタ要素72-3、第2シフトレジスタ要素73-3、第3シフトレジスタ要素74-3、及び第4シフトレジスタ要素75-3の組は、シフトレジスタ70においてシフトレジスタ要素が接続される段の1つに対応する。第1シフトレジスタ要素72-4、第2シフトレジスタ要素73-4、第3シフトレジスタ要素74-4、及び第4シフトレジスタ要素75-4の組は、シフトレジスタ70においてシフトレジスタ要素が接続される段の1つに対応する。
【0035】
シフトレジスタ70では、複数段のそれぞれにおいて、第1シフトレジスタ要素、第2シフトレジスタ要素、第4シフトレジスタ要素は、第1シフトレジスタ要素、第2シフトレジスタ要素、第4シフトレジスタ要素の順に入力信号線2によって直列に接続され、かつ第3シフトレジスタ要素と第4シフトレジスタ要素とは入力信号線2によって並列に接続される。例えば、図1において下から数えて第4段目において、第1シフトレジスタ要素72-4、第2シフトレジスタ要素73-4、第4シフトレジスタ要素75-4は、入力信号線2によって直列に接続される。第3シフトレジスタ要素74-4と第4シフトレジスタ要素75-4とは入力信号線2によって並列に接続される。
【0036】
各段の第4シフトレジスタ要素と、当該段の次の段の第1シフトレジスタ要素とは直列に接続される。例えば、図1において下から数えて第4段目の第4シフトレジスタ要素75-4と、下から数えて3段目の第1シフトレジスタ要素72-3とは直列に接続される。
各段の第3シフトレジスタ要素は、デジタルアナログ変換器71と直列に接続される。例えば、下から数えて第4段目の第3シフトレジスタ要素74-4と、デジタルアナログ変換器71-4とは直列に接続される。
【0037】
複数段のそれぞれにおいて、第1シフトレジスタ要素は、第1電流制御線3によって直列に接続され、第2シフトレジスタ要素は、第2電流制御線4によって直列に接続され、第3シフトレジスタ要素及び第4シフトレジスタ要素は、第3電流制御線5によって直列に接続される。複数段のそれぞれにおいて、第1シフトレジスタ要素には、第1電流制御線3からクロック信号である第1励起電流Ix1が入力され、第2シフトレジスタ要素には第2電流制御線4からクロック信号である第2励起電流Ix2が入力され、第3シフトレジスタ要素及び第4シフトレジスタ要素には第3電流制御線5からクロック信号である第3励起電流Ix3が入力される。
【0038】
シフトレジスタ70では、シフトレジスタ要素は、入力されるクロック信号がハイの状態である場合に、入力信号の値を保持して出力する。入力信号の値を保持するとは、入力信号の値がハイである場合には、出力信号としてハイの信号を出力し、入力信号の値がローである場合には、出力信号としてローの信号を出力することである。シフトレジスタ要素は、入力されるクロック信号がローの状態である場合に、入力信号の値によらず、信号を出力しない。つまり、シフトレジスタ要素は、バッファ回路として機能する。
例えば、第1シフトレジスタ要素72-4は、入力信号線2から入力される入力信号Iinがハイの状態であり、第1電流制御線3から入力される第1励起電流Ix1がハイの状態である場合、出力信号としてハイの信号を出力する。
【0039】
シフトレジスタ70では、入力信号線2から入力される入力信号Iinの値が、直列に接続されるシフトレジスタ要素によって、値を保持したまま順に伝搬される。図2に示した第1励起電流Ix1、第2励起電流Ix2、第3励起電流Ix3はそれぞれ、入力信号Iinの値が順に伝搬されるように、入力信号Iinに同期した時期において、ハイとなっている。ここで図2に示すように、第2励起電流Ix2がハイとなる時期は、第1励起電流Ix1がハイとなる時期に対して所定の時間だけ遅れている。同様に、第3励起電流Ix3がハイとなる時期は、第2励起電流Ix2がハイとなる時期に対して所定の時間だけ遅れている。
【0040】
なお、シフトレジスタ70の構成は一例であって、図1に示す構成以外の構成であってもよい。例えば、図1に示すシフトレジスタ70の構成から第4シフトレジスタ要素は省略されてもよい。その場合は、第3シフトレジスタ要素(例えば、第3シフトレジスタ要素74-4)の出力が2つに分岐され、一方の出力はデジタルアナログ変換器(例えば、デジタルアナログ変換器71-4)へ入力され、他方の出力は、シフトレジスタ70に備えられる段のうち当該第3シフトレジスタ要素が備えられる段と隣接する段に備えられる第1シフトレジスタ要素(例えば、第1シフトレジスタ要素72-3)に入力される。
【0041】
デジタルアナログ変換器71は、入力信号Iinのビット数に応じた数だけ備えられる。上述したシフトレジスタ70に備えられる段の数は、入力信号Iinのビット数に応じた数であるため、換言すれば、デジタルアナログ変換器71は、シフトレジスタ70に備えられる段の数だけ備えられる。
【0042】
本実施形態では、入力信号Iinが4ビットであることに応じて、デジタルアナログ変換器71-1と、デジタルアナログ変換器71-2と、デジタルアナログ変換器71-3と、デジタルアナログ変換器71-4との4つのデジタルアナログ変換器71が備えられる。デジタルアナログ変換器71は、QFPに基づくデジタルアナログ変換器である。
【0043】
デジタルアナログ変換器71では、QFPの回路構成は、デジタルアナログ変換器71-1と、デジタルアナログ変換器71-2と、デジタルアナログ変換器71-3と、デジタルアナログ変換器71-4相互間において共通である。また、デジタルアナログ変換器71のQFPの回路構成は、上述したシフトレジスタ70のシフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成と同様である。なお、デジタルアナログ変換器71のQFPの回路構成は、バッファとして機能する場合は、シフトレジスタ70のシフトレジスタ要素として用いられるQFPの回路構成とは異なっていてもよい。
【0044】
デジタルアナログ変換器71-1と、デジタルアナログ変換器71-2と、デジタルアナログ変換器71-3と、デジタルアナログ変換器71-4とは、ホールド信号線6によって直列に接続される。デジタルアナログ変換器71-1、デジタルアナログ変換器71-2、デジタルアナログ変換器71-3、デジタルアナログ変換器71-4にはそれぞれ、ホールド信号線6からホールド信号Iholdが入力される。
【0045】
デジタルアナログ変換器71には、シフトレジスタ70の各段に備えられる第3シフトレジスタ要素から出力される信号が入力信号として入力される。例えば、デジタルアナログ変換器71-4には、第3シフトレジスタ要素74-4から出力される信号が入力信号として入力される。
【0046】
デジタルアナログ変換器71は、入力されるホールド信号Iholdがハイの状態である場合に、入力信号の値に応じたアナログ信号としての電流を出力する。以下の説明では、デジタルアナログ変換器71が出力するアナログ信号を、QFP出力電流という。デジタルアナログ変換器71-1、デジタルアナログ変換器71-2、デジタルアナログ変換器71-3、デジタルアナログ変換器71-4はそれぞれ、QFP出力電流Iqfp1、QFP出力電流Iqfp2、QFP出力電流Iqfp3、QFP出力電流Iqfp4をそれぞれ出力する。
つまり、シフトレジスタ70の複数段のそれぞれにおいて、デジタルアナログ変換器71は、第3シフトレジスタ要素から出力される電流値に基づくアナログ信号を出力する。
【0047】
トランス8は、デジタルアナログ変換器71から出力されるQFP出力電流に基づいて制御対象9に印加磁束を印加する。トランス8は、磁束印加部の一例である。トランス8は、入力信号Iinのビット数に応じた数だけ備えられる。本実施形態では、入力信号Iinが4ビットであることに応じて、トランス8-1と、トランス8-2と、トランス8-3と、トランス8-4との4つのトランス8が備えられる。
【0048】
ここで、シフトレジスタ70とデジタルアナログ変換器71とは、デジタルアナログ変換部7を構成する。デジタルアナログ変換部7は、入力信号線2に入力される入力信号Iinと、第1電流制御線3、第2電流制御線4、第3電流制御線5それぞれに入力されるクロック信号と、ホールド信号線6に入力されるホールド信号Iholdとに基づいて、QFPを含む回路によって入力信号Iinをアナログ信号に変換する。
【0049】
トランス8は、1対のインダクタを備える。一方のインダクタにデジタルアナログ変換器71から出力されるQFP出力電流が流れると、磁気結合によって他方のインダクタに磁束が発生する。例えば、デジタルアナログ変換器71-1から出力されるQFP出力電流Iqfp1が流れると、トランス8-1には、磁気結合によって他方のインダクタに磁束+Φが発生する。トランス8-1に発生する磁束+Φは、入力信号Iinに含まれるビット列のうち1番目のビットである「1」に応じている。
トランス8は、それぞれのトランスにおいて発生した磁束の和を印加磁束として制御対象9に印加する。トランス8は、発生した磁束を制御対象9に印加する。
【0050】
図2に示すように、トランス8-1、トランス8-2、トランス8-3、トランス8-4には、磁束+Φ、磁束+Φ、磁束+Φ、磁束-Φがそれぞれ発生する。トランス8は、印加磁束として磁束+2Φを制御対象9に印加する。
【0051】
ここで図6を参照し、入力信号Iinと印加磁束との関係について説明する。図6は、本実施形態に係る入力信号Iinと印加磁束との関係の一例を示す図である。
上述した図1または図2では、入力信号Iinは時間波形として示されており、入力のLeast significant bit(LSB)が左端に、Most significant bit(MSB)が右端にそれぞれ示されている。一方、図6では、当該入力信号Iinがデジタル値によって示されている。当該デジタル値では、図1または図2に示した入力信号IinにおけるLSBが右端に、MSBが左端に示されている。
図6では、当該入力信号Iinが磁束バイアス回路1に入力された場合について、デジタルアナログ変換部7から出力されるQFP出力電流Iqfp4、QFP出力電流Iqfp3、QFP出力電流Iqfp2、QFP出力電流Iqfp1それぞれの極性、トランス8によって生成される印加磁束が示されている。
【0052】
磁束バイアス回路1では、入力信号Iinは、印加磁束の大きさ及び極性をデジタル値によって示す。磁束バイアス回路1では、印加磁束の大きさ及び極性は、入力信号Iinのビット数に応じた分解能において制御される。磁束バイアス回路1では、入力信号Iinがmビットの場合に、m+1レベルの印加磁束を制御可能である。m+1レベルの印加磁束を制御可能とは、極性を含めてm+1通りの大きさの印加磁束を制御可能であることである。磁束バイアス回路1では、4ビットの入力信号Iinによって、印加磁束の値を、-4Φ、-2Φ、0、2Φ、4Φの5通りに制御可能である。
【0053】
上述したように、磁束バイアス回路1では、入力信号線2、第1電流制御線3、第2電流制御線4、第3電流制御線5、及びホールド信号線6の合計5本の制御線を備える。本実施形態では、制御対象9の数が1つである場合について説明したが、磁束バイアス回路1では、制御対象9の数が2以上であっても、5本の制御線によって印加磁束の制御が可能である。制御対象9の数が2以上の場合、入力信号線2に入力される入力信号Iin、第1電流制御線3に入力される第1励起電流Ix1、第2電流制御線4に入力される第2励起電流Ix2、及び第3電流制御線5に入力される第3励起電流Ix3の信号のパターンは、図2において示したパターンから入力ビット数と必要なクロック数とを増やす必要がある。なお、印加磁束の分解能を増加させる場合にも、図2において示したパターンから入力ビット数と必要なクロック数とを増やす必要がある。
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
上記第1の実施形態では、磁束バイアス回路は5本の制御線を備え、入力信号Iinがmビットの場合に、m+1レベルの印加磁束を制御可能である場合について説明をした。本実施形態では、磁束バイアス回路は5本から7本の制御線を備え、入力信号Iinがmビットの場合に、m+1レベルよりも多くのレベルの印加磁束を制御可能である場合について説明をする。
本実施形態に係る磁束バイアス回路を磁束バイアス回路1Aという。
なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
【0054】
図7は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1Aの構成の一例を示す図である。図8は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1Aに流れる各種信号の一例を示す図である。磁束バイアス回路1Aは、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、ホールド信号線6と、シフトレジスタ70と、デジタルアナログ変換器71Aと、トランス8Aとを備える。シフトレジスタ70と、デジタルアナログ変換器71Aとは、デジタルアナログ変換部7Aを構成する。なお、図7に示すシフトレジスタ70Aの構成、及びデジタルアナログ変換器71Aの構成はそれぞれ一例であって、他の構成であってもよい。
【0055】
磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinのビット列のうち1以上のビットに対してそれぞれ2つのQFP出力電流が対応づけられている。例えば、入力信号Iinのビット列「1011」のうち最初のビット列「10」に含まれるビット「1」、「0」にはそれぞれ1つのQFP出力電流が対応づけられているのに対して、最後の2つビット列「11」に含まれるビット「1」、「1」にはそれぞれ2つのQFP出力電流が対応づけられている。
これに応じて、デジタルアナログ変換器71Aは、入力信号Iinのビット数よりも多い数だけ備えられる。図7に示す例では、下から数えて3段目、及び4段目において、デジタルアナログ変換器71Aは、それぞれ2つずつ備えられる。
【0056】
磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinのビット列のうち3番目、4番目のビットそれぞれに対して2つのQFP出力電流が対応づけられている。これに応じて、4段目には、デジタルアナログ変換器711-4、及びデジタルアナログ変換器712-4が備えられる。3段目には、デジタルアナログ変換器711-3、及びデジタルアナログ変換器712-3が備えられる。
【0057】
磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinのビット列のうち3番目、4番目のビットに対応する段においてはそれぞれ、2つのデジタルアナログ変換器は、シフトレジスタ70の対応する段に備えられる第3シフトレジスタ要素に並列に接続される。当該2つのデジタルアナログ変換器にはそれぞれ、当該第3シフトレジスタ要素から出力される信号が入力信号として入力される。
例えば、デジタルアナログ変換器711-4、及びデジタルアナログ変換器712-4は、並列に備えられる。デジタルアナログ変換器711-4、及びデジタルアナログ変換器712-4はそれぞれ、第3シフトレジスタ要素74-4から出力される信号が入力信号として入力される。
【0058】
トランス8Aは、3番段目、4段目それぞれにおいて2つのデジタルアナログ変換器71Aが並列に備えられることに応じて、当該段において2つ備えられる。例えば、4段目には、トランス81-4と、トランス82-4とが備えられる。トランス81-4、及びトランス82-4は、デジタルアナログ変換器711-4から出力されるQFP出力電流Iqfp4がそれぞれ流れると、磁束+Φをそれぞれ発生させる。したがって、トランス81-4が発生させる磁束と、トランス82-4が発生させる磁束とを加算すると、+2Φの磁束となる。トランス81-4及びトランス82-4に発生する磁束+2Φは、入力信号Iinに含まれるビット列のうち4番目のビットである「1」に応じている。
【0059】
ここで図9を参照し、入力信号Iinと印加磁束との関係について説明する。図9は、本実施形態に係る入力信号Iinと印加磁束との関係の一例を示す図である。
上述した図7または図8では、入力信号Iinは時間波形として示されており、入力のLSBが左端に、MSBが右端にそれぞれ示されている。一方、図9では、当該入力信号Iinがデジタル値によって示されている。当該デジタル値では、図7または図8に示した入力信号IinにおけるLSBが右端に、MSBが左端に示されている。
図9では、当該入力信号Iinが磁束バイアス回路1Aに入力された場合について、デジタルアナログ変換部7Aから出力されるQFP出力電流Iqfp4、QFP出力電流Iqfp3、QFP出力電流Iqfp2、QFP出力電流Iqfp1それぞれの極性、トランス8Aによって生成される印加磁束が示されている。
【0060】
磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinは、印加磁束の大きさ及び極性をデジタル値によって示す。磁束バイアス回路1Aでは、印加磁束の大きさ及び極性は、入力信号Iinのビット数に応じた分解能において制御される。磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinがmビットの場合に、Mレベルの印加磁束を制御可能である。ここで数Mは、2(m/2+1)-1である。磁束バイアス回路1Aでは、例えば、4ビットの入力信号Iinによって、印加磁束の値を、-6Φ、-4Φ、-2Φ、0、2Φ、4Φ、6Φの7通りに制御可能である。
【0061】
上述したように、磁束バイアス回路1Aでは、デジタルアナログ変換部7Aが備えるデジタルアナログ変換器の数は、入力信号Iinのビット数よりも多い。また、磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinのビットのうち1以上のビットには、複数のデジタルアナログ変換器が対応づけられている。
【0062】
上述したように、磁束バイアス回路1Aでは、入力信号Iinのビット列のうち3番目、4番目のビットそれぞれに対して2つのQFP出力電流が対応づけられている。これに応じて、入力信号線2から、2本の信号線が分岐している。当該2本の信号線は、デジタルアナログ変換器712-3に第3シフトレジスタ要素74-3からの信号を入力するための信号線、及びデジタルアナログ変換器712-4に第3シフトレジスタ要素74-4からの信号を入力するための信号線である。
【0063】
磁束バイアス回路1Aでは、入力信号線2、第1電流制御線3、第2電流制御線4、第3電流制御線5、及びホールド信号線6を備える。したがって、磁束バイアス回路1Aは、合計5本の制御線を備える。本実施形態では、制御対象9の数が1つである場合について説明したが、磁束バイアス回路1Aでは、制御対象9の数が2以上であっても、5本の制御線によって印加磁束の制御が可能である。制御対象9の数が2以上の場合、入力信号線2に入力される入力信号Iin、第1電流制御線3に入力される第1励起電流Ix1、第2電流制御線4に入力される第2励起電流Ix2、及び第3電流制御線5に入力される第3励起電流Ix3の信号のパターンは、図8において示したパターンから入力ビット数と必要なクロック数とを増やす必要がある。
【0064】
(第3の実施形態)
上記第2の実施形態では、入力信号Iinが4ビットである場合について説明をした。本実施形態では、入力信号Iinがmビット(一例として、8ビット)であって、ホールド信号Iholdが三相電流である場合について説明をする。
本実施形態に係る磁束バイアス回路を磁束バイアス回路1Bという。
なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
【0065】
図10は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1Bの構成の一例を示す図である。磁束バイアス回路1Bは、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、第1ホールド信号線60と、第2ホールド信号線61と、第3ホールド信号線62と、シフトレジスタ70と、デジタルアナログ変換器71Bと、トランス8Bとを備える。シフトレジスタ70と、デジタルアナログ変換器71Bとは、デジタルアナログ変換部7Bを構成する。なお、図10に示すシフトレジスタ70の構成、及びデジタルアナログ変換器71Bの構成はそれぞれ一例であって、他の構成であってもよい。
【0066】
磁束バイアス回路1Bでは、一例として入力信号Iinのビット数は、8ビットである。
なお、図10においては、シフトレジスタ70の下から数えて1段目、2段目、及び8段目の構成のみが示されており、3段目から7段目の構成は簡単のために省略されている。
【0067】
第1ホールド信号線60は、第1ホールド信号Ihold1が入力される。第2ホールド信号線61は、第2ホールド信号Ihold2が入力される。第3ホールド信号線62は、第3ホールド信号Ihold3が入力される。
したがって、磁束バイアス回路1Bでは、ホールド信号は、第1ホールド信号Ihold1、第2ホールド信号Ihold2、及び第3ホールド信号Ihold3の三相電流である。
【0068】
デジタルアナログ変換器71Bは、デジタルアナログ変換器711、721、722、731、732、733、734、741、742、743、744、745、746、747、748、711-2、721-2、731-2、741-2、711-3、721-3、731-3、741-3を備える。
トランス8Bは、トランス831、832、833、834、835、836、837、838、トランス8-2、トランス8-1を備える。
【0069】
ここでデジタルアナログ変換器711、721、722、731、732、733、734、741、742、743、744、745、746、747、748、トランス831、832、833、834、835、836、837、838は、下から数えて8段目の構成に含まれる。デジタルアナログ変換器711-2、721-2、731-2、741-2、トランス8-2は、下から数えて2段目の構成に含まれる。デジタルアナログ変換器711-3、721-3、731-3、741-3、トランス8-1は、下から数えて1段目の構成に含まれる。
【0070】
デジタルアナログ変換器711には、第3シフトレジスタ要素74-4からの出力信号と、第1ホールド信号Ihold1とが入力される。
デジタルアナログ変換器711と、デジタルアナログ変換器711-2と、デジタルアナログ変換器711-3とはこの順に、第1ホールド信号線60によって直列に接続される。
【0071】
デジタルアナログ変換器71Bでは8段目から7段目においては、第1ホールド信号Ihold1が入力される1つのデジタルアナログ変換器には、シフトレジスタ70に備えられる第3シフトレジスタ要素からの出力信号が入力されるデジタルアナログ変換器と、当該出力信号が入力されないデジタルアナログ変換器とがある。第1ホールド信号Ihold1と第3シフトレジスタ要素からの出力信号とが入力される1つのデジタルアナログ変換器からの出力は、当該デジタルアナログ変換器に並列に接続され、かつ第2ホールド信号Ihold2が入力される2つのデジタルアナログ変換器にそれぞれ入力される。第2ホールド信号Ihold2が入力される2つのデジタルアナログ変換器は、第2ホールド信号線61によって直列に接続される。
【0072】
例えば、第1ホールド信号Ihold1が入力されるデジタルアナログ変換器711からの出力は、デジタルアナログ変換器711に並列に接続され、かつ第2ホールド信号Ihold2が入力されるデジタルアナログ変換器721と、デジタルアナログ変換器722とにそれぞれ入力される。
ここでデジタルアナログ変換器721と、デジタルアナログ変換器722と、デジタルアナログ変換器721-2と、デジタルアナログ変換器721-3とはこの順に、第2ホールド信号線61によって直列に接続される。
【0073】
なお以下の説明において、このように、第1の素子に対して、当該第1の素子に第2の素子、第3の素子が並列に接続されていることを、第2の素子、第3の素子は第1の素子から分岐して備えられるという場合がある。例えば、デジタルアナログ変換器721と、デジタルアナログ変換器722は、デジタルアナログ変換器711から分岐して備えられる。
【0074】
デジタルアナログ変換器71Bでは8段目から5段目において、第2ホールド信号Ihold2が入力される1つのデジタルアナログ変換器からの出力は、当該デジタルアナログ変換器に並列に接続され、かつ第3ホールド信号Ihold3が入力される2つのデジタルアナログ変換器にそれぞれ入力される。第3ホールド信号Ihold3が入力される2つのデジタルアナログ変換器は、第3ホールド信号線62によって直列に接続される。
【0075】
例えば、第2ホールド信号Ihold2が入力されるデジタルアナログ変換器721からの出力は、デジタルアナログ変換器721に並列に接続され、かつ第3ホールド信号Ihold3が入力されるデジタルアナログ変換器731、デジタルアナログ変換器732にそれぞれ入力される。
ここでデジタルアナログ変換器731と、デジタルアナログ変換器732と、デジタルアナログ変換器733と、デジタルアナログ変換器734と、デジタルアナログ変換器731-2と、デジタルアナログ変換器731-3とはこの順に、第3ホールド信号線62によって直列に接続される。
【0076】
デジタルアナログ変換器71Bでは8段目から3段目において、第3ホールド信号Ihold3が入力される1つのデジタルアナログ変換器からの出力は、当該デジタルアナログ変換器に並列に接続される2つのアナログ変換器にそれぞれ入力される。
【0077】
例えば、第3ホールド信号Ihold3が入力されるデジタルアナログ変換器731からの出力は、デジタルアナログ変換器731に並列に接続されるデジタルアナログ変換器741、デジタルアナログ変換器742にそれぞれ入力される。
【0078】
ここで下から数えて1段目に備えられるデジタルアナログ変換器741-3と、2段目に備えられるデジタルアナログ変換器741-2と、8段目にそれぞれ備えられるデジタルアナログ変換器748と、デジタルアナログ変換器747と、デジタルアナログ変換器746と、デジタルアナログ変換器745と、デジタルアナログ変換器744と、デジタルアナログ変換器743と、デジタルアナログ変換器742と、デジタルアナログ変換器741とはこの順に、第1ホールド信号線60によって直列に接続される。
【0079】
上述したように第1ホールド信号線60は、デジタルアナログ変換器711と、デジタルアナログ変換器711-2と、デジタルアナログ変換器711-3とを直列に接続するために用いられている。一方、第1ホールド信号線60による直列接続において、デジタルアナログ変換器741-3は、デジタルアナログ変換器711-3に接続されている。
【0080】
したがって、第1ホールド信号線60は、デジタルアナログ変換器711と、デジタルアナログ変換器711-2と、デジタルアナログ変換器711-3との直列接続と、第3ホールド信号線62によって直列に接続されるデジタルアナログ変換器731、732、733、734からそれぞれ分岐して備えられるデジタルアナログ変換器741、742、743、744、745、746、747、748、及びデジタルアナログ変換器731-2に直列に接続される741-2、デジタルアナログ変換器731-3に直列に接続される741-3との直列接続との両方に用いられている。
【0081】
つまり、磁束バイアス回路1Bでは、第1ホールド信号線60は、他のホールド信号線(第3ホールド信号線62)によって直列に接続される複数のデジタルアナログ変換器からそれぞれ分岐して備えられるデジタルアナログ変換器を直列に接続するために再利用される。
【0082】
トランス8Bは、8段目において8つのデジタルアナログ変換器が並列に備えられることに応じて、当該段において8つ備えられる。トランス831、832、833、834、835、836、837、838は、デジタルアナログ変換器741、742、743、744、745、746、747、748からそれぞれ出力されるQFP出力電流Iqfp8がそれぞれ流れると、磁束+Φをそれぞれ発生させる。したがって、トランス831、832、833、834、835、836、837、838がそれぞれ発生させる磁束を加算すると、+8Φの磁束となる。当該+8Φの磁束は、入力信号Iinに含まれるビット列のうち8番目のビットである「1」に応じている。
【0083】
上述したように、8段目においては、第2ホールド信号線61に接続される2つのデジタルアナログ変換器は、第1ホールド信号線60に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる。さらに第3ホールド信号線62に接続される2つのデジタルアナログ変換器は、第2ホールド信号線61に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる。さらに、第3ホールド信号線62に接続されるデジタルアナログ変換器から2つのデジタルアナログ変換器が分岐して備えられ、当該2つのデジタルアナログ変換器は第1ホールド信号線60が再利用されて直列に接続される。
【0084】
7段目の構成は、8段目の構成と同様である。したがって、7段目においても8段目と同様に、第3ホールド信号線62に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる8つのデジタルアナログ変換器と当該デジタルアナログ変換にそれぞれ対応する8つのトランスが並列に備えられ、対応するビットの値に応じて+8Φ、または-8Φの磁束が生成される。
【0085】
6段目、及び5段目の構成は、8段目、7段目に比べて、第2ホールド信号線61に接続されるデジタルアナログ変換器は、第1ホールド信号線60に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐していない点が異なる。つまり、6段目、及び5段目の構成では、第2ホールド信号線61に接続されるデジタルアナログ変換器は、第1ホールド信号線60に接続されるデジタルアナログ変換器に直列に接続される。6段目、及び5段目の構成では、8段目、7段目の構成と同様に、第3ホールド信号線62に接続されるデジタルアナログ変換器は、第2ホールド信号線61に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐して備えらえる。6段目、及び5段目の構成では、8段目、7段目の構成と同様に、第3ホールド信号線62に接続される2つのデジタルアナログ変換器それぞれから2つのデジタルアナログ変換器が分岐して備えられる。第3ホールド信号線62に接続される2つのデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる4つのデジタルアナログ変換器は、第1ホールド信号線60が再利用されて直列に接続される。6段目、及び5段目ではそれぞれ、第3ホールド信号線62に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる4つのデジタルアナログ変換器と当該デジタルアナログ変換にそれぞれ対応する4つのトランスが並列に備えられ、対応するビットの値に応じて+4Φ、または-4Φの磁束が生成される。
【0086】
4段目、及び3段目の構成は、6段目、及び5段目に比べて、第3ホールド信号線62に接続されるデジタルアナログ変換器は、第2ホールド信号線61に接続されるデジタルアナログ変換器から分岐していない点が異なる。つまり、4段目、及び3段目の構成では、第3ホールド信号線62に接続されるデジタルアナログ変換器は、第2ホールド信号線61に接続されるデジタルアナログ変換器に直列に接続される。4段目、及び3段目の構成では、第3ホールド信号線62に接続される1つのデジタルアナログ変換器から2つのデジタルアナログ変換器が分岐して備えられる。第3ホールド信号線62に接続される1つのデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる2つのデジタルアナログ変換器は、第1ホールド信号線60が再利用されて直列に接続される。4段目、及び3段目ではそれぞれ、第3ホールド信号線62に接続される1つのデジタルアナログ変換器から分岐して備えられる2つのデジタルアナログ変換器と当該デジタルアナログ変換にそれぞれ対応する2つのトランスが並列に備えられ、対応するビットの値に応じて+2Φ、または-2Φの磁束が生成される。
【0087】
磁束バイアス回路1Bでは、図10に示した例では、入力信号Iinが8ビットの場合の一例について説明したが、これに限られない。磁束バイアス回路1Bでは、ホールド信号が三相(第1ホールド信号Ihold1、第2ホールド信号Ihold2、第3ホールド信号Ihold3)であれば、入力信号Iinのビット数mが増えた場合であっても、分岐を増やすことによって、何段でも動作可能である。ここで入力信号Iinのビット数mが増えた場合に分岐を増やす方法の例について説明する。なお、当該方法は、以下に説明する例に限られない。
【0088】
例えば、入力信号Iinのビット数が10ビットの場合、上述した構成に加えて、第2ホールド信号線61が分岐の最下層に備えられるデジタルアナログ変換器を直列に接続するために再利用される。
例えば、入力信号Iinのビット数が12ビットの場合、10ビットの場合の構成に加えて、第3ホールド信号線62が分岐の最下層に備えられるデジタルアナログ変換器を直列に接続するために再利用される。
例えば、入力信号Iinのビット数が14ビットの場合、12ビットの場合の構成に加えて、第1ホールド信号線60が分岐の最下層に備えられるデジタルアナログ変換器を直列に接続するために再利用される。
【0089】
したがって、磁束バイアス回路1Bでは、制御対象9の数や磁束分解能によらず、ホールド信号線の数は3本のまま一定である。3本のホールド信号線とは、上述したように、第1ホールド信号線60、第2ホールド信号線61、及び第3ホールド信号線62である。したがって、磁束バイアス回路1Bでは、制御対象9の数や磁束分解能によらず、制御線の数は一定である。
【0090】
(第3の実施形態の変形例1)
本実施形態では、複数のトランス相互間において相互インダクタンスの値は共通である場合について説明した。ここで図11を参照し、複数のトランス相互間において相互インダクタンスの値が異なる場合について説明する。
本実施形態に係る磁束バイアス回路を磁束バイアス回路1Cという。
なお、上述した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
【0091】
図11は、本変形例に係る磁束バイアス回路1Cの構成の一例を示す図である。磁束バイアス回路1Cは、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、ホールド信号線6と、シフトレジスタ70Cと、デジタルアナログ変換器71Cと、トランス8Cとを備える。シフトレジスタ70Cと、デジタルアナログ変換器71Cとは、デジタルアナログ変換部7Cを構成する。なお、図11に示すシフトレジスタ70Cの構成、及びデジタルアナログ変換器71Cの構成はそれぞれ一例であって、他の構成であってもよい。
【0092】
ここで本変形例に係る磁束バイアス回路1C(図11)と第1の実施形態に係る磁束バイアス回路1(図1)とを比較すると、シフトレジスタ70Cの段数と、トランス8Cに備えられるデジタルアナログ変換器71Cの数が異なる。各段においてシフトレジスタ70C、及びトランス8Cそれぞれの構成は、磁束バイアス回路1C(図11)と磁束バイアス回路1(図1)とにおいて同じである。
【0093】
磁束バイアス回路1Cでは、一例として入力信号Iinのビット数は、8ビットである。
トランス8Cは、入力信号Iinが8ビットであることに応じて、トランス8-1と、トランス8-2と、トランス8-3と、トランス8-4と、トランス8-5と、トランス8-6と、トランス8-7と、トランス8-8との8つのトランスが備えられる。
トランス8Cでは、複数のトランス相互間において相互インダクタンスの値が異なる。例えば、トランス8-1、トランス8-2にはそれぞれ、磁束+Φまたは磁束-Φがそれぞれ発生する。トランス8-3、トランス8-4にはそれぞれ、磁束+2Φまたは磁束-2Φがそれぞれ発生する。トランス8-5、トランス8-6にはそれぞれ、磁束+4Φまたは磁束-4Φがそれぞれ発生する。トランス8-7、トランス8-8にはそれぞれ、磁束+8Φまたは磁束-8Φがそれぞれ発生する。
【0094】
トランス8Cは、それぞれのトランスにおいて発生した磁束の和を印加磁束として制御対象9に印加する。磁束バイアス回路1Cでは、複数のトランス相互間において相互インダクタンスの値を異ならせて、複数のトランスによってそれぞれ印加される印加磁束の値が入力信号Iinが示すビット列によって制御される。
【0095】
(第3の実施形態の変形例2)
ここで図12を参照し、磁束バイアス回路が3つの制御対象に磁束を印加する場合について説明する。
図12は、本変形例に係る磁束バイアス回路1Dの構成の一例を示す図である。磁束バイアス回路1Dは、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、第1ホールド信号線60と、第2ホールド信号線61と、第3ホールド信号線62と、デジタルアナログ変換部7Dと、トランス8Dとを備える。デジタルアナログ変換部7Dは、デジタルアナログ変換部7-1、デジタルアナログ変換部7-2、及びデジタルアナログ変換部7-3から構成される。トランス8Dは、トランス8-1、トランス8-2、及びトランス8-3から構成される。
【0096】
デジタルアナログ変換部7-1とトランス8-1との組、デジタルアナログ変換部7-2とトランス8-2との組、デジタルアナログ変換部7-3とトランス8-3との組はそれぞれが、図1図7図10図11それぞれに示した磁束バイアス回路に相当する。
磁束バイアス回路1Dでは、デジタルアナログ変換部7-1、デジタルアナログ変換部7-2、及びデジタルアナログ変換部7-3のそれぞれの構成は、一例として、図10に示したデジタルアナログ変換部7Bの構成と同様である。なお、デジタルアナログ変換部7-1、デジタルアナログ変換部7-2、及びデジタルアナログ変換部7-3の種類に応じて、ホールド信号線の数は3本から変更され得る。
【0097】
入力信号線2、第1電流制御線3、第2電流制御線4、第3電流制御線5、第1ホールド信号線60、第2ホールド信号線61、第3ホールド信号線62は、デジタルアナログ変換部7-1、デジタルアナログ変換部7-2、及びデジタルアナログ変換部7-3を直列に接続する。つまり、入力信号線2、第1電流制御線3、第2電流制御線4、第3電流制御線5、第1ホールド信号線60、第2ホールド信号線61、第3ホールド信号線62は、デジタルアナログ変換部7-1、デジタルアナログ変換部7-2、及びデジタルアナログ変換部7-3の3つのデジタルアナログ変換部に対して共通に用いられる。
【0098】
トランス8-1、トランス8-2、トランス8-3はそれぞれ、デジタルアナログ変換部7-1、デジタルアナログ変換部7-2、及びデジタルアナログ変換部7-3からそれぞれ出力されるアナログ信号に基づいて、印加磁束を制御対象9-1、制御対象9-2、制御対象9-3それぞれに印加する。制御対象9-1、制御対象9-2、制御対象9-3はそれぞれが、図1図7図10図11それぞれに示した制御対象9に相当する。
【0099】
磁束バイアス回路1Dでは、制御対象の数を4以上とする場合においても、図12に示した構成と同様に、デジタルアナログ変換部、トランスをそれぞれ、制御線について直列に接続して増やすことによって、それらの4以上の制御対象に磁束を印加できる。したがって、磁束バイアス回路1Dでは、制御対象の数や磁束分解能によらず、制御線の数は一定である。なお、制御対象の数、または印加磁束の分解能を増加させる場合、入力ビット数とクロック数とを増やす必要がある。
【0100】
(第4の実施形態)
上記各実施形態では、デジタルアナログ変換部としてQFPが備えられる場合の一例について説明した。本実施形態では、デジタルアナログ変換部として、QFPに単一磁束量子(Single Flux Quantum:SFQ)回路が組み合わされて用いられる場合について説明する。
【0101】
SFQ回路では、超伝導ループに蓄積される磁束量子によって情報が表現される。ジョセフソン接合を介して、磁束量子が超伝導ループ中を伝搬し、伝搬の過程において磁束量子がジョセフソン接合を通過する際に、ジョセフソン接合の両端に電圧パルスが発生する。
SFQ回路では、超伝導素子を用いているため直流抵抗がなく低消費電力であることが知られている。SFQ回路では、ゲート当りの消費電力は10μW程度である。また、SFQ回路では、クロック周波数が100GHz程度の超高速動作が可能である。なお、上述したSFQ回路の消費電力、クロック周波数それぞれの値は、一例であって、回路パラメータや回路の種類によってそれらの値は変わり得る。
【0102】
SFQ回路には様々なロジックがあり、いずれを用いてもよい。SFQ回路のロジックには、例えば、Rapid single-flux-quantum(RSFQ)、Low-voltage RSFQ(LV-RSFQ)、Energy-efficient RSFQ(ERSFQ)、Energy-efficient SFQ(eSFQ)、Reciprocal quantum logic(RQL)、Flux shuttleなどがある。以下に説明するSFQ回路では、いずれのロジックが用いられてもよい。
【0103】
本実施形態に係る磁束バイアス回路を磁束バイアス回路1Eという。
なお、上述した各実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、同一の構成及び動作についてはその説明を省略する場合がある。
【0104】
図13は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1Eの構成の一例を示す図である。図14は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1Eに流れる各種信号の一例を示す図である。
【0105】
磁束バイアス回路1Eは、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、インターフェース制御線10と、リセット信号線11と、バイアス信号線12と、シフトレジスタ70と、QFP/SFQインターフェース13と、SFQデジタルアナログ変換器14と、トランス8Eとを備える。シフトレジスタ70と、QFP/SFQインターフェース13と、SFQデジタルアナログ変換器14とは、デジタルアナログ変換部7Eを構成する。
【0106】
磁束バイアス回路1Eは、制御対象9-1、制御対象9-2、制御対象9-3の3つにそれぞれ磁束を印加する。制御対象9-1、制御対象9-2、制御対象9-3それぞれに印加される磁束の大きさは、互いに異ならせることができる。入力信号線2には、3ビット以上の入力信号Iinが入力される。
【0107】
インターフェース制御線10は、インターフェース励起電流Iqfp/sfqが入力される制御線である。インターフェース励起電流Iqfp/sfqは、QFP/SFQインターフェース13を駆動し入力に応じてSFQデジタルアナログ変換器14に磁束量子を追加するための電流である。
【0108】
リセット信号線11は、リセット信号Irstが入力される制御線である。リセット信号Irstは、SFQデジタルアナログ変換器14が保持する磁束量子をリセットするための電流である。
【0109】
バイアス信号線12は、バイアス信号Ibが入力される制御線である。バイアス信号Ibは、SFQデジタルアナログ変換器14をバイアスするための電流である。
【0110】
QFP/SFQインターフェース13は、QFPによって構成されるシフトレジスタ70と、磁束量子を蓄えるSFQデジタルアナログ変換器14とを接続するための回路である。QFP回路からは電流信号が出力されるのに対して、SFQ回路には電圧パルス信号が入力される。QFP/SFQインターフェース13は、QFPであるシフトレジスタ70から出力される電流信号に応じて、SFQデジタルアナログ変換器14に電圧パルス信号を入力し磁束量子を追加する。QFP/SFQインターフェース13は、超伝導素子を含み、QFPの構成を含む回路である。
【0111】
ここで図15及び図16を参照し、図13に示すQFP/SFQインターフェース13の回路構成の例について説明する。図13に示すQFP/SFQインターフェース13の回路構成は、例えば、図15または図16に示すQFP/SFQインターフェースの回路構成のいずれかである。なお、図15及び図16に示すQFP/SFQインターフェースの回路構成は一例であって、図13に示すQFP/SFQインターフェース13の回路構成は、図15または図16に示すQFP/SFQインターフェースの回路構成以外のQFP/SFQインターフェースの回路構成であってもよい。
【0112】
図15は、本実施形態に係るQFP/SFQインターフェース13の回路構成であるQFP/SFQインターフェース200の一例を示す図である。QFP/SFQインターフェース200は、インターフェース励起電流Iqfp/sfqによって駆動、及びクロックされる。インターフェース励起電流Iqfp/sfqが電源線201を流れると、電源線201に備えられるインダクタLx1、及びインダクタLx2にそれぞれ磁束が生成される。
【0113】
インダクタLx1と、回路要素203に備えられるインダクタL1とは、結合定数k1によって磁気結合されている。インダクタLx2と、回路要素202に備えられるインダクタL2とは、結合定数k2によって磁気結合されている。インダクタL1及びインダクタL2に磁束が印加されると、一対のジョセフソン接合であるジョセフソン接合J1及びジョセフソン接合J2は、入力信号線204を流れる入力信号Iinに応じて論理状態を決定するとともに、入力信号Iinを電圧パルス信号Voutに変換する。ここでジョセフソン接合J1は、回路要素203に備えられる。ジョセフソン接合J2は、回路要素202に備えられる。
【0114】
入力信号Iinが正(論理状態「1」)のとき、ジョセフソン接合J2がスイッチして電圧パルスを発生し、出力信号線205の出力端に電圧パルス信号Voutが出力される。一方、入力信号Iinが負(論理状態「0」)のときは、ジョセフソン接合J1がスイッチし、出力信号線205の出力端には電圧パルス信号Voutは出力されない。このようにして、QFP/SFQインターフェース200では、入力信号Iinが電圧パルス信号Voutに変換される。ここでジョセフソン接合がスイッチして発生させた電圧パルスは、抵抗Rif及びインダクタL3を介して出力信号線205の出力端から電圧パルス信号Voutとして出力される。
【0115】
図16は、本実施形態に係るQFP/SFQインターフェース13の回路構成であるQFP/SFQインターフェース200Aの一例を示す図である。QFP/SFQインターフェース200A(図16)とQFP/SFQインターフェース200(図15)とを比較すると、信号電流線205A、バイアス電流線206A、回路要素207A、回路要素208A、回路要素209Aが異なる。バイアス電流線206A、回路要素207A、回路要素208A、回路要素209Aは、QFP/SFQインターフェース200(図15)における電圧パルス信号を増幅させる。ここで、他の構成要素(電源線201、回路要素202、回路要素203、入力信号線204)はQFP/SFQインターフェース200(図15)と同じである。QFP/SFQインターフェース200(図15)と同じ構成の説明は省略し、図16では、QFP/SFQインターフェース200(図15)と異なる部分を中心に説明する。
【0116】
ジョセフソン接合J2を介して生成された電圧パルスが信号電流線205Aに備えられる抵抗Rif及びインダクタL3によって電流に変換され回路要素207Aに出力される。
【0117】
回路要素207Aには、インダクタL4、インダクタL5、インダクタL6が備えられる。インダクタL4とインダクタL5との間には、ジョセフソン接合J3が備えられる回路要素208Aが接続される。インダクタL5とインダクタL6との間には、ジョセフソン接合J4が備えられる回路要素209Aが接続される。
【0118】
回路要素207Aに、信号電流線205Aからの電流が入力されると、ジョセフソン接合J3及びジョセフソン接合J4を介して、磁束量子が超伝導ループ中を伝搬し、伝搬の過程において磁束量子がジョセフソン接合を通過する際に、ジョセフソン接合の両端に電圧パルスが発生する。ジョセフソン接合J4の両端に発生した電圧パルス信号Voutが出力信号として出力される。
【0119】
図13に戻って磁束バイアス回路1Eの構成の説明を続ける。
QFP/SFQインターフェース13は、制御対象9の数だけ備えられる。磁束バイアス回路1Eは、QFP/SFQインターフェース13-1、QFP/SFQインターフェース13-2、QFP/SFQインターフェース13-3の3つのQFP/SFQインターフェースを備える。
【0120】
SFQデジタルアナログ変換器14は、QFP/SFQインターフェース13から入力される電圧パルスに基づいて超伝導ループ内に磁束量子を保持する。SFQデジタルアナログ変換器14は、制御対象9の数だけ備えられる。SFQデジタルアナログ変換器14は、SFQデジタルアナログ変換器14-1、SFQデジタルアナログ変換器14-2、SFQデジタルアナログ変換器14-3の3つのSFQデジタルアナログ変換器を備える。
【0121】
SFQデジタルアナログ変換器14-1、SFQデジタルアナログ変換器14-2、SFQデジタルアナログ変換器14-3はそれぞれ、QFP/SFQインターフェース13-1、QFP/SFQインターフェース13-2、QFP/SFQインターフェース13-3それぞれから出力される電圧パルスに基づいて超伝導ループ内に磁束量子を保持する。ここで図14に示すように、SFQデジタルアナログ変換器14-1、SFQデジタルアナログ変換器14-2、SFQデジタルアナログ変換器14-3は、インターフェース励起電流Iqfp/sfqがハイとなる場合に、入力信号Iinに応じて磁束量子を蓄積する。磁束Φ1、Φ2、Φ3はそれぞれ、SFQデジタルアナログ変換器14-1、SFQデジタルアナログ変換器14-2、SFQデジタルアナログ変換器14-3に蓄えられている磁束を表す。磁束Φ1、Φ2、Φ3の大きさはそれぞれ、図14に示すように一例として、Φ0、2Φ0、3Φ0である。Φ0は、磁束量子を示す。つまり、磁束Φ1、Φ2、Φ3の大きさはそれぞれ、Φ0によって示される磁束量子のそれぞれ1倍、2倍、3倍の大きさである。
【0122】
トランス8Eは、制御対象9の数だけ備えられる。トランス8Eは、トランス8-1、トランス8-2、トランス8-3の3つのトランスを備える。トランス8-1、トランス8-2、トランス8-3はそれぞれ、SFQデジタルアナログ変換器14-1、SFQデジタルアナログ変換器14-2、SFQデジタルアナログ変換器14-3がそれぞれ保持する磁束Φ1、Φ2、Φ3に基づいて印加磁束を制御対象9-1、制御対象9-2、制御対象9-3それぞれに印加する。トランス8-1は、印加磁束を制御対象9-1に印加する。トランス8-2は、印加磁束を制御対象9-2に印加する。トランス8-3は、印加磁束を制御対象9-3に印加する。トランス8-1、トランス8-2、及びトランス8-3それぞれが印加する印加磁束の大きさはそれぞれ、SFQデジタルアナログ変換器14-1、SFQデジタルアナログ変換器14-2、SFQデジタルアナログ変換器14-3に蓄積される磁束Φ1、Φ2、Φ3の大きさにそれぞれ対応する。
【0123】
磁束バイアス回路1Eでは、制御線の数は、制御対象9の数によらず7本である。磁束バイアス回路1Eでは、接合数は印加磁束の分解能によらず変化しない。
磁束バイアス回路1Eでは、制御対象の数によらず制御線の数は7本であるため、制御対象の数が増えた場合であっても制御線の数(ケーブル数)が増加してしまうことを抑制できる。
【0124】
ここで図17を参照し、入力信号Iinのビット数が図14の例より大きい場合について説明する。図17は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1Eに流れる各種信号の一例を示す図である。制御対象の数をN、印加磁束の分解能をMレベルとする。
【0125】
図17に示すように、磁束バイアス回路1Eでは、シフトレジスタ70に3ビットよりも大きいビット数の入力信号Iinのうち3ビットの入力信号が入力される度に、インターフェース励起電流Iqfp/sfqをハイの状態にする回数は、1回、2回、4回と2のべき乗に従って増やされる。その結果、SFQデジタルアナログ変換器14のうち、入力として「1」が入力される全てのSFQデジタルアナログ変換器には、同時に1個以上の磁束量子が次々と追加される。このため、磁束バイアス回路1Eでは、制御対象の数Nや磁束分解能Mが大きい場合であっても、高々NlogM+Mの程度(オーダー)のステップで印加磁束を制御可能である。
【0126】
ここで図18及び図19を参照し、デジタルアナログ変換部としてQFPにSFQ回路が組み合わされる場合の磁束バイアス回路によるシミュレーションについて説明する。図18は、本実施形態に係るシミュレーションに用いた磁束バイアス回路1eの構成の一例を示す図である。図19は、本実施形態に係る磁束バイアス回路1eに流れる各種信号の一例を示す図である。
磁束バイアス回路1eは、図13に示した磁束バイアス回路1Eにおいて、シフトレジスタの段数を1段として、QFP/SFQインターフェースとして図15に示したQFP/SFQインターフェース200を用いた回路である。
【0127】
磁束バイアス回路1eは、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、インターフェース制御線10と、リセット信号線11と、バイアス信号線12と、シフトレジスタ70eと、QFP/SFQインターフェース13eと、SFQデジタルアナログ変換器14eとを備える。シフトレジスタ70eでは、シフトレジスタの段数が1段であることに応じて、シフトレジスタ要素72と、シフトレジスタ要素73と、シフトレジスタ要素74とが直列に接続されている。
【0128】
SFQデジタルアナログ変換器14eに備えられるジョセフソン接合JstrとインダクタLstrとの間には、当該ジョセフソン接合JstrとインダクタLstrとを含む超伝導ループが形成されている。ジョセフソン接合Jstrの位相差φstrは、当該超伝導ループに蓄えられている磁束量子の数を表す。
【0129】
入力信号Iinのビット列は、一例として、ビット列「101」である。図19に示すように、ビット列「101」の入力信号Iinによって5個の磁束量子がSFQデジタルアナログ変換器14eの超伝導ループに蓄えられる。SFQデジタルアナログ変換器14eへの磁束量子の書き込みが終わった後は、バイアス信号Ibの値は0とされる。超伝導ループには最終的に、5個の磁束量子を保持するための周回電流Istrが流れる。
【0130】
(各実施形態のまとめ)
【0131】
以上に説明したように、各実施形態に係る磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eは、入力信号線2と、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5と、デジタルアナログ変換部(各実施形態において、デジタルアナログ変換部7、7A、7B、7C、7D、7E)と、磁束印加部(各実施形態において、トランス8、8A、8B、8C、8D、8E)とを備える。
入力信号線2には、印加磁束をデジタル値によって示す入力信号Iinが入力される。
第1電流制御線3、第2電流制御線4、及び第3電流制御線5には、入力信号Iinに応じたクロック信号(各実施形態において、第1励起電流Ix1、第2励起電流Ix2、第3励起電流Ix3)がそれぞれ入力される。
デジタルアナログ変換部7は、入力信号線2に入力される入力信号Iinと、第1電流制御線3、第2電流制御線4、第3電流制御線5それぞれに入力されるクロック信号(各実施形態において、第1励起電流Ix1、第2励起電流Ix2、第3励起電流Ix3)とに基づいて、QFPを含む回路によって入力信号Iinをアナログ信号に変換する。
磁束印加部(各実施形態において、トランス8)は、デジタルアナログ変換部7から出力されるアナログ信号に基づいて印加磁束を制御対象9に印加する。
【0132】
この構成により、各実施形態に係る磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eでは、制御対象9の数によらず制御線の数は一定であるため、少ない数の制御線で多数の制御対象を制御できる。ここで少ない数とは、制御対象の数が増えても制御線の数を増やす必要がないことである。
【0133】
従来の磁束バイアス回路では、制御対象の数の増加に伴い、制御線の数を増やす必要があった。一方、各実施形態に係る磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eでは、制御対象の数が増えても制御線の数を増やす必要がないため、高いスケーラビリティを実現できる。
【0134】
従来の磁束バイアス回路では、複数のデジタルアナログ変換器を一つずつ制御し、各制御対象に印加する磁束の大きさを個別にプログラムしていた。一方、各実施形態に係る磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eでは、デジタルアナログ変換部に備えられる全てのデジタルアナログ変換器を同時に制御するため、各制御対象に印加する磁束の大きさを並列にプログラムする。このため、各実施形態に係る磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eでは、プログラム速度の向上が見込める。
【0135】
また、各実施形態に係る磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eでは、QFPを用いることで、消費電力を低くできる。
また、磁束バイアス回路1Eでは、磁束分解能が増えても要素回路を追加する必要がない(つまり接合数が変化しない)ため、高い面積効率が期待できる。
【0136】
なお、例えばプログラム速度を向上させるために、各実施形態に係る磁束バイアス回路を複数並列に動作させることが考えられる。その場合は、プログラム速度向上のために制御線の数を増加させる必要がある。
【0137】
なお、上述した各実施形態においては、磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eはそれぞれ、第1電流制御線3と、第2電流制御線4と、第3電流制御線5との3本の電流制御線を備える場合の一例について説明したが、これに限られない。磁束バイアス回路は、4本以上の電流制御線を備えてもよい。例えば、磁束バイアス回路が4本の電流制御線を備える場合には、当該4本の電流制御線にはそれぞれ4種類の励起電流が流れる。
また、磁束バイアス回路における電流制御線の配線は、上述した配線に限られず、他の配線であってもよい。
【0138】
また、上述した各実施形態においては、3種類の励起電流はそれぞれクロック信号である場合の一例について説明したが、これに限られない。3種類の励起電流のうち、2つの励起電流がそれぞれクロック信号であって、1つの励起電流が直流(Direct Current:DC)オフセット電流であってもよい。その場合、電流制御線の配線は、上述した配線に限られず、他の配線であってもよい。
【0139】
ここで上述したように、上述した第1、2、3の実施形態では、ホールド信号Iholdがハイの場合に、制御対象9に磁束が印加される。そのため、ホールド信号Iholdの電流は、量子ビットなどの制御対象9に影響を及ぼす場合がある。
磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1Dそれぞれにおいて、デジタルアナログ変換器71、71A、71B、71Cそれぞれにパイ接合が用いられてもよい。デジタルアナログ変換器71、71A、71B、71Cそれぞれにパイ接合が用いられる場合、上述した第1、2、3の実施形態の場合とは反対に、ホールド信号Iholdがローの場合に、制御対象9に磁束が印加される。そのため、制御対象9に磁束が印加される期間において、ホールド信号Iholdの電流値を低く抑えることができ、ホールド信号Iholdの電流が量子ビットなどの制御対象9に与える影響を抑制できる。
【0140】
なお、上述した各実施形態では、磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1DそれぞれがQFPに基づくデジタルアナログ変換器を備える場合について説明したが、これに限られない。磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1Dそれぞれは、QFPに基づくデジタルアナログ変換器に代えて、またはQFPに基づくデジタルアナログ変換器とともに、断熱磁束量子パラメトロン(Adiabatic QFP:AQFP)や直結式磁束量子パラメトロン(Directly coupled QFP:DQFP)に基づくデジタルアナログ変換器を備えてもよい。
【0141】
また、上述した各実施形態では、磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1EそれぞれがQFPに基づくシフトレジスタを備える場合の一例について説明したが、これに限られない。磁束バイアス回路1、1A、1B、1C、1D、1Eそれぞれは、QFPに基づくシフトレジスタに代えて、またはQFPに基づくシフトレジスタとともに、AQFPやDQFPに基づくシフトレジスタを備えてもよい。
【0142】
なお、上述した各実施形態において、シフトレジスタ70、70Cの構成は一例であって、各実施形態において説明した構成以外の構成であってもよい。例えば、図1に示すシフトレジスタ70の構成から第4シフトレジスタ要素は省略されてもよい。その場合は、第3シフトレジスタ要素(例えば、第3シフトレジスタ要素74-4)の出力が2つに分岐され、一方の出力はデジタルアナログ変換器(例えば、デジタルアナログ変換器71-4)へ入力され、他方の出力は、シフトレジスタ70に備えられる段のうち当該第3シフトレジスタ要素が備えられる段と隣接する段に備えられる第1シフトレジスタ要素(例えば、第1シフトレジスタ要素72-3)に入力される。
【0143】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0144】
1、1A、1B、1C、1D、1E…磁束バイアス回路、2…入力信号線、3…第1電流制御線、4…第2電流制御線、5…第3電流制御線、6…ホールド信号線、60…第1ホールド信号線、61…第2ホールド信号線、62…第3ホールド信号線、7…デジタルアナログ変換部、8…トランス、Iin…入力信号、Ix1…第1励起電流、Ix2…第2励起電流、Ix3…第3励起電流、9…制御対象
図1
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