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特開2022-163779精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163779
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
C07F7/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068813
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東村 直紀
(72)【発明者】
【氏名】安田 成紀
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ19
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS12
4H049VS21
4H049VU17
4H049VW02
4H049VW05
(57)【要約】
【課題】蒸留中の不均化を抑制し、高純度且つ高収率で精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを製造する方法を提供すること。
【解決手段】
下記一般式(1)
(R1OCH2mSi(OR2n3 4-m-n (1)
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、mおよびnは、1~3の整数であり、m+n≦4を満たす。)
で示される(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを、金属オルガノオキシドの存在下、蒸留釜の内温が100℃未満であり、且つ圧力が9kPa未満となるように減圧度を調整して蒸留する工程を含む精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
(R1OCH2mSi(OR2n3 4-m-n (1)
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、mおよびnは、1~3の整数であり、m+n≦4を満たす。)
で示される(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを、金属オルガノオキシドの存在下、蒸留釜の内温が100℃未満であり、且つ圧力が9kPa未満となるように減圧度を調整して蒸留する工程を含む精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法。
【請求項2】
前記精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランが、(メトキシメチル)トリメトキシシランまたは(エトキシメチル)トリエトキシシランである請求項1記載の精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(アルコキシメチル)アルコキシシランは、硬化性を速める効果があることから、シラノール基やアルコキシシリル基を有するポリシロキサンを主原料とした弾性シーラントや接着剤の架橋剤として用いられることが広く知られている。
【0003】
ここで、(アルコキシメチル)アルコキシシランは、(クロロメチル)アルコキシシランに過剰量のナトリウムアルコキシドを加えて、アルコール溶媒存在下にて反応させ、副生する塩を除去した後、蒸留精製することで得ることができる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-513734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の製造方法の場合、蒸留時の温度や減圧度に関する規定がないため、(アルコキシメチル)アルコキシシランを蒸留する際に、蒸留釜の内温が高くなればなるほど不均化を起こしやすくなる。不均化を起こすと目的物がそれぞれ低沸点不純物および高沸点不純物に変化するが、これら不純物は、沸点が互いに近いことから、主留に混入しやすく、目的物を高純度で得ることが困難となる。そればかりでなく、目的物の量が少なくなっていくため、高収率で得ることも困難となる場合があった。特に、目的物の純度が低い場合は、硬化剤等として用いた場合に、所望の効果を奏しない場合が考えられる。
一方、減圧度を高めて蒸留釜の内温が低すぎる状態で蒸留すると、沸点が低くなるため、飛散によるロスが多くなる場合もあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、蒸留中の不均化を抑制し、高純度且つ高収率で精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシラン、特に、(アルコキシメチル)アルコキシシランを蒸留する際に、蒸留釜の内温を所定の温度にし、且つ圧力を所定の圧力となるように減圧度を調整することにより、蒸留中における(アルコキシメチル)アルコキシシラン等の(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの不均化を抑制でき、高純度且つ高収率で目的物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.下記一般式(1)
(R1OCH2mSi(OR2n3 4-m-n (1)
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、非置換の炭素数1~10の1価炭化水素基であり、mおよびnは、1~3の整数であり、m+n≦4を満たす。)
で示される(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを、金属オルガノオキシドの存在下、蒸留釜の内温が100℃未満であり、且つ圧力が9kPa未満となるように減圧度を調整して蒸留する工程を含む精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法、
2.前記精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランが、(メトキシメチル)トリメトキシシランまたは(エトキシメチル)トリエトキシシランである1記載の精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシラン、特に、(アルコキシメチル)アルコキシシランの製造において、蒸留中に不均化を起こすことなく、高純度且つ高収率で精製(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシラン、特に、精製(アルコキシメチル)アルコキシシランを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、具体的に説明する。
本発明において、(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランは、下記一般式(1)で示される。
(R1OCH2mSi(OR2n3 4-m-n (1)
【0011】
一般式(1)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立して、炭素原子数1~10、好ましくは1~5、より好ましくは1~3の非置換の1価炭化水素基である。
1、R2およびR3の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル基等の分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル基等のアルケニル基;エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル基等のアルキニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0012】
一般式(1)におけるオルガノオキシメチル基とオルガノオキシ基の組合せとしては、メトキシメチル基とメトキシ基、メトキシメチル基とエトキシ基、エトキシメチル基とメトキシ基、エトキシメチル基とエトキシ基、プロポキシメチル基とプロポキシ基、ビニロキシメチル基とメトキシ基、ビニロキシメチル基とエトキシ基、フェノキシメチル基とメトキシ基、フェノキシメチル基とエトキシ基等が挙げられる。
これらの中でも好ましい組み合わせとしては、メトキシメチル基とメトキシ基、エトキシメチル基とエトキシ基である。
【0013】
一般式(1)において、mおよびnは、1~3の整数であり、m+n≦4を満たす。好ましくはmが1で、nが3である。
【0014】
一般式(1)で示される(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの具体例としては、(メトキシメチル)トリメトキシシラン、ビス(メトキシメチル)ジメトキシシラン、トリス(メトキシメチル)メトキシシラン、(メトキシメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(メトキシメチル)メチルメトキシシラン、(メトキシメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(メトキシメチル)エチルメトキシシラン、(メトキシメチル)トリエトキシシラン、ビス(メトキシメチル)ジエトキシシラン、トリス(メトキシメチル)エトキシシラン、(メトキシメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(メトキシメチル)メチルエトキシシラン、(メトキシメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(メトキシメチル)エチルエトキシシラン、(エトキシメチル)トリメトキシシラン、ビス(エトキシメチル)ジメトキシシラン、トリス(エトキシメチル)メトキシシラン、(エトキシメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(エトキシメチル)メチルメトキシシラン、(エトキシメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(エトキシメチル)エチルメトキシシラン、(エトキシメチル)トリエトキシシラン、ビス(エトキシメチル)ジエトキシシラン、トリス(エトキシメチル)エトキシシラン、(エトキシメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(エトキシメチル)メチルエトキシシラン、(エトキシメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(エトキシメチル)エチルエトキシシラン、(プロポキシメチル)トリプロポキシシラン、ビス(プロポキシメチル)ジプロポキシシラン、トリス(プロポキシメチル)プロポキシシラン、(プロポキシメチル)メチルジプロポキシシラン、ビス(プロポキシメチル)メチルプロポキシシラン、(プロポキシメチル)エチルジプロポキシシラン、ビス(プロポキシメチル)エチルプロポキシシラン、(ビニロキシメチル)トリメトキシシラン、ビス(ビニロキシメチル)ジメトキシシラン、トリス(ビニロキシメチル)メトキシシラン、(ビニロキシメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(ビニロキシメチル)メチルメトキシシラン、(ビニロキシメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(ビニロキシメチル)エチルメトキシシラン、(フェノキシメチル)トリメトキシシラン、ビス(フェノキシメチル)ジメトキシシラン、トリス(フェノキシメチル)メトキシシラン、(フェノキシメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(フェノキシメチル)メチルメトキシシラン、(フェノキシメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(フェノキシメチル)エチルメトキシシラン、(ビニロキシメチル)トリエトキシシラン、ビス(ビニロキシメチル)ジエトキシシラン、トリス(ビニロキシメチル)エトキシシラン、(ビニロキシメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(ビニロキシメチル)メチルエトキシシラン、(ビニロキシメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(ビニロキシメチル)エチルエトキシシラン、(フェノキシメチル)トリエトキシシラン、ビス(フェノキシメチル)ジエトキシシラン、トリス(フェノキシメチル)エトキシシラン、(フェノキシメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(フェノキシメチル)メチルエトキシシラン、(フェノキシメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(フェノキシメチル)エチルエトキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも特に、(メトキシメチル)トリメトキシシラン、(エトキシメチル)トリエトキシシランが好ましい。
【0015】
本発明に用いる(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランは、従来公知の方法により製造することができ、例えば(クロロメチル)アルコキシシラン等の(ハロゲン化メチル)オルガノオキシシランと、アルカリ金属アルコキシド等の金属オルガノオキシドによる置換反応により得られる。
【0016】
(ハロゲン化メチル)オルガノオキシシランの具体例としては、(クロロメチル)トリメトキシシラン、ビス(クロロメチル)ジメトキシシラン、トリス(クロロメチル)メトキシシラン、(クロロメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(クロロメチル)メチルメトキシシラン、(クロロメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(クロロメチル)エチルメトキシシラン、(クロロメチル)トリエトキシシラン、ビス(クロロメチル)ジエトキシシラン、トリス(クロロメチル)エトキシシラン、(クロロメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(クロロメチル)メチルエトキシシラン、(クロロメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(クロロメチル)エチルエトキシシラン、(クロロメチル)トリプロポキシシラン、ビス(クロロメチル)ジプロポキシシラン、トリス(クロロメチル)プロポキシシラン、(クロロメチル)メチルジプロポキシシラン、ビス(クロロメチル)メチルプロポキシシラン、(クロロメチル)エチルジプロポキシシラン、ビス(クロロメチル)エチルプロポキシシラン;(ブロモメチル)トリメトキシシラン、ビス(ブロモメチル)ジメトキシシラン、トリス(ブロモメチル)メトキシシラン、(ブロモメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(ブロモメチル)メチルメトキシシラン、(ブロモメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(ブロモメチル)エチルメトキシシラン、(ブロモメチル)トリエトキシシラン、ビス(ブロモメチル)ジエトキシシラン、トリス(ブロモメチル)エトキシシラン、(ブロモメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(ブロモメチル)メチルエトキシシラン、(ブロモメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(ブロモメチル)エチルエトキシシラン、(ブロモメチル)トリプロポキシシラン、ビス(ブロモメチル)ジプロポキシシラン、トリス(ブロモメチル)プロポキシシラン、(ブロモメチル)メチルジプロポキシシラン、ビス(ブロモメチル)メチルプロポキシシラン、(ブロモメチル)エチルジプロポキシシラン、ビス(ブロモメチル)エチルプロポキシシラン;(ヨードメチル)トリメトキシシラン、ビス(ヨードメチル)ジメトキシシラン、トリス(ヨードメチル)メトキシシラン、(ヨードメチル)メチルジメトキシシラン、ビス(ヨードメチル)メチルメトキシシラン、(ヨードメチル)エチルジメトキシシラン、ビス(ヨードメチル)エチルメトキシシラン、(ヨードメチル)トリエトキシシラン、ビス(ヨードメチル)ジエトキシシラン、トリス(ヨードメチル)エトキシシラン、(ヨードメチル)メチルジエトキシシラン、ビス(ヨードメチル)メチルエトキシシラン、(ヨードメチル)エチルジエトキシシラン、ビス(ヨードメチル)エチルエトキシシラン、(ヨードメチル)トリプロポキシシラン、ビス(ヨードメチル)ジプロポキシシラン、トリス(ヨードメチル)プロポキシシラン、(ヨードメチル)メチルジプロポキシシラン、ビス(ヨードメチル)メチルプロポキシシラン、(ヨードメチル)エチルジプロポキシシラン、ビス(ヨードメチル)エチルプロポキシシラン等が挙げられる。
これらの中でも、特に(クロロメチル)トリメトキシシラン、(クロロメチル)トリエトキシシランが好ましい。
【0017】
金属オルガノオキシドを構成する金属種としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられる。
金属オルガノオキシドの具体的としては、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムビニルオキシド、リチウムフェノキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムビニルオキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムプロポキシド、カリウムビニルオキシド、カリウムフェノキシドや、これらをメタノール、エタノール等のアルコールに溶解させたアルコール溶液等が挙げられる。
【0018】
金属オルガノオキシドの使用量は、(ハロゲン化メチル)オルガノオキシシラン1モルに対して1モルを超え5モル以下が好ましく、1モルを超え2モル以下がより好ましく、1モルを超え1.5モル以下がさらに好ましい。
上記反応では、(ハロゲン化メチル)オルガノオキシシランに対して過剰モル量の金属オルガノオキシドを用いるため、反応終了後に、金属オルガノオキシドが未反応の状態で残存する。本発明では、この残存した金属オルガノオキシドとともに(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを蒸留することで、上記金属オルガノオキシドの存在下で蒸留を行うことができる。
【0019】
上記置換反応では、必要に応じて溶媒を用いることができる。使用可能な溶媒の具体例としては、反応を阻害しないものであれば任意であり、メタノール、エタノール等のアルコール溶媒;ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒を用いる場合、添加量は、(ハロゲン化メチル)オルガノオキシシランおよび金属オルガノオキシドの合計100質量部に対して10~300質量部が好ましく、50~200質量部がより好ましい。
【0020】
反応条件は、公知の条件から適宜選定すればよく、例えば反応温度は、50~100℃が好ましく、反応時間は、1~10時間が好ましい。
【0021】
(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの製造過程で生じた塩は、残存したままでも蒸留可能であるが、蒸留後の後処理の容易さから、除去した方が好ましい。塩の除去は、(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランが有する加水分解性の観点から、ろ過、遠心分離またはそれらを組み合わせることによって行うことが好ましい。
本発明に用いる(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランは、溶媒を用いた場合、塩除去後に溶媒を除去して単離してもよいが、溶液の状態であってもよい。本発明では、残存した金属オルガノオキシドの存在下で蒸留する点から、残存した金属オルガノオキシドとともに溶媒に溶解した状態が好ましい。塩を除去した後、(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランと金属オルガノオキシドが溶解した溶液は、その後の蒸留にそのまま用いることができる。
【0022】
蒸留時における蒸留釜の内温は、100℃未満であり、好ましくは30~90℃、より好ましくは35~85℃である。100℃以上であると、蒸留中に(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの不均化が起こりやすくなり、純度や収率の低下につながる。
【0023】
蒸留時における圧力は、9kPa未満であり、好ましくは0.1~8kPa、より好ましくは0.2~7kPaである。9kPa以上であると、それに伴って蒸留釜の内温を高くする必要があり、蒸留中に(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランの不均化が起こりやすくなり、純度や収率の低下につながる。また、蒸留時において高温にするため、高エネルギー消費につながり、製造において非効率的である。
【0024】
減圧度は、例えば蒸留装置と減圧装置の間に、マノメーター等の真空度を確認できる装置およびバルブを用意し、バルブの開閉度によって調整することができる。
【0025】
蒸留方法は、単発蒸留および精留塔を用いた蒸留のいずれでも実施可能であるが、精製を目的とした観点から、精留塔を用いた蒸留が好ましい。
【0026】
本発明の製造方法においては、溶媒は無くてもよいが、上述したとおり、溶媒が蒸留前の段階で既に混ざった状態であってもよい。溶媒としては、上記と同じものを挙げることができる。
溶媒が存在する場合、例えば9kPa以上の減圧度で溶媒を予め除去した後、蒸留釜内を上述した蒸留時の減圧度および温度に調節し、目的とする(オルガノオキシメチル)オルガノオキシシランを蒸留してもよい。
【0027】
本発明によれば、精製(オルガノオキシメチル)オルガノキシシランの純度を98.0%以上、好ましくは98.5%以上、より好ましくは99.0%以上にすることができる。
【実施例0028】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0029】
[実施例1]
1Lの4つ口ガラスフラスコに、ジムロート冷却器、温度計および撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ナトリウムエトキシド21質量%エタノール溶液408.6g(ナトリウムエトキシド1.26モル)を仕込み、反応器の内温を70~85℃に温調しながら(クロロメチル)トリエトキシシラン255.4g(1.20モル)を1時間掛けて滴下し、同温下にて6時間熟成した。その後、反応液をろ過して副生した塩化ナトリウムをろ別した。
続いて、減圧装置、精留塔、冷却装置を備えた分留頭、温度計が取り付けられた蒸留用仕込み容器の1Lフラスコ(蒸留釜)に、得られたろ液559.0gを仕込み、冷却装置に常温の水を通した。14.3~51.3kPa下にて溶媒のエタノールを除去し、その後、蒸留釜の内温75~85℃を保ちながら圧力を下げていき、0.4~1.4kPaの下で主留の留出を行った。
この結果、単離収率70.7%であり、純度99.4%の精製(エトキシメチル)トリエトキシシランが得られた。
【0030】
[実施例2]
1Lの4つ口ガラスフラスコに、ジムロート冷却器、温度計および撹拌機を取り付け、内部を窒素置換した。このフラスコに、ナトリウムメトキシド28質量%メタノール溶液300.0g(ナトリウムメトキシド1.56モル)を仕込み、反応器の内温を60~70℃に温調しながら(クロロメチル)トリメトキシシラン252.9g(1.48モル)を1時間掛けて滴下し、同温下にて6時間熟成した。その後、反応液をろ過して副生した塩化ナトリウムをろ別した。
続いて、減圧装置、精留塔、冷却装置を備えた分留頭、温度計が取り付けられた蒸留用仕込み容器の1Lフラスコ(蒸留釜)に、得られたろ液440.0gを仕込み、冷却装置に常温の水を通した。14.3~51.3kPa下にて溶媒のメタノールを除去し、その後、蒸留釜の内温60~70℃を保ちながら圧力を下げていき、0.4~4.0kPaのもとで主留の留出を行った。
この結果、単離収率65.0%であり、純度99.4%の精製(メトキシメチル)トリメトキシシランが得られた。
【0031】
[比較例1]
減圧装置、精留塔、冷却装置を備えた分留頭、温度計が取り付けられた蒸留用仕込み容器の1Lフラスコ(蒸留釜)に、実施例1と同様にして得られたろ液559.6gを仕込み、冷却装置に常温の水を通した。8.0~50.8kPa下にて溶媒のエタノールを除去し、その後、蒸留釜の内温110~138℃、圧力8.0kPa下のもとで主留の留出を行った。
この結果、単離収率37.8%であり、純度97.9%の精製(エトキシメチル)トリエトキシシランが得られた。
【0032】
[比較例2]
減圧装置、精留塔、冷却装置を備えた分留頭、温度計が取り付けられた蒸留用仕込み容器の1Lフラスコ(蒸留釜)に、実施例2と同様にして得られたろ液440.0gを仕込み、冷却装置に常温の水を通した。8.0~50.8kPa下にて溶媒のメタノールを除去し、その後、蒸留釜の内温95~115℃、圧力8.0kPa下のもとで主留の留出を行った。
この結果、単離収率35.0%であり、純度97.0%の精製(メトキシメチル)トリメトキシシランが得られた。