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特開2022-163814クローキング装置、ウィンドシールド、隠蔽方法及びビームスプリッター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163814
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】クローキング装置、ウィンドシールド、隠蔽方法及びビームスプリッター
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20221020BHJP
   G02B 27/10 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
G02B5/00
G02B27/10
G02B27/28 Z
G02B5/08
G02B5/08 D
G02B5/00 C
G02B5/04 B
G02B5/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068876
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】一色 眞誠
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA04
2H042AA10
2H042AA15
2H042AA16
2H042AA33
2H042CA06
2H042DB01
2H199AB37
2H199AB45
2H199AB48
2H199AB52
(57)【要約】
【課題】クローキング装置における映り込みを防止するための遮蔽手段の提供。
【解決手段】クローキング装置Cdは、ペリスコープ形式で配置された鏡Mr及びビームスプリッターBsを備える。可視物体Vsの手前に鏡Mrが配置される。可視物体Vsで遮られた観察者Vwの視界の死角Fbは、ビームスプリッターBs及び鏡Mrで反射する迂回光路を通じて観察者Vwに観察される。可視物体Vsから外れて開けた観察者Vwの視界Foは、ビームスプリッターBsを透過する直進光路Trを通じて観察者Vwに観察される。クローキング装置Cdは、鏡Mrから見てビームスプリッターBsの反射面Rfの背後に設けられたルーバーLvをさらに備える。ルーバーLvの有するスラットStは、鏡Mrから見てビームスプリッターBsの反射面Rfの背後からビームスプリッターBsを透過して鏡Mrに向かう光路を遮る。直進光路TrはスラットSt間の隙間を透過する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリスコープ形式で配置された鏡及びビームスプリッターを備え、
観察者から見て不可視化したい可視物体の、前記観察者から見て手前に前記鏡が配置され、
前記可視物体で遮られた前記観察者の視界の死角は、前記ビームスプリッター及び前記鏡で反射する迂回光路を通じて前記観察者に観察され、
前記可視物体から外れて開けた前記観察者の視界は、前記ビームスプリッターを透過する直進光路を通じて前記観察者に観察される、
クローキング装置であって、
前記鏡から見て前記ビームスプリッターの反射面の背後に設けられたルーバーをさらに備え、
前記ルーバーの有するスラットは、前記鏡から見て前記ビームスプリッターの前記反射面の背後から前記ビームスプリッターを透過して前記鏡に向かう光路を遮り、
前記直進光路は前記スラット間の隙間を透過する、
クローキング装置。
【請求項2】
前記ビームスプリッターは前記反射面を備えるプレートからなり、
前記ルーバーの前記スラットは前記プレート内に配置される、
請求項1に記載のクローキング装置。
【請求項3】
前記スラットは、前記反射面で屈折する前記直進光路に略平行である、
請求項2に記載のクローキング装置。
【請求項4】
前記プレートの基材を挟んで前記反射面の反対側の面に反射防止膜をさらに備える、
請求項3に記載のクローキング装置。
【請求項5】
前記ルーバーの前記スラットは前記プレートの基材を挟んで前記反射面の反対側の面から飛び出しており、この飛び出した部分は前記反対側の面で屈折する前記直進光路に略平行である、
請求項3に記載のクローキング装置。
【請求項6】
前記鏡における前記迂回光路の反射角は45度より大きい、
請求項1~5のいずれかに記載のクローキング装置。
【請求項7】
前記ビームスプリッターは、前記反射面の延在方向に沿って階段状に並んだプリズムを備えるシートであり、
前記プリズムはそれぞれ内側プリズムと外側プリズムとからなり
前記シートは前記内側プリズムの斜面と前記外側プリズムの斜面とで挟まれた基部を有し、
前記反射面は、前記基部内に位置するともに、前記内側プリズムの前記斜面に対向し、
前記内側プリズムは前記迂回光路及び前記直進光路の入口となる表面及び前記迂回光路の出口となる表面を備え、
前記外側プリズムは前記迂回光路及び前記直進光路の入口となる表面及び前記迂回光路の出口となる表面を備え、
前記スラットは、前記外側プリズムの表面に位置するとともに、前記反射面を挟んで、前記内側プリズムの前記迂回光路の出口となる前記表面の反対側に位置する。
請求項1に記載のクローキング装置。
【請求項8】
前記ビームスプリッターは偏光ビームスプリッター、以下正面PBSという、であり、
前記鏡、以下正面鏡という、に対して前記可視物体を挟んで背中合わせになった背面鏡と、
前記正面PBSに対向する背面PBSと、をさらに備え、
前記迂回光路は、前記背面鏡での非偏光の反射と、前記背面PBSでのS偏光の反射と、前記正面PBSでの前記S偏光の反射と、前記背面鏡での前記S偏光の反射とを含み、
前記直進光路は、前記背面PBSでのP偏光の透過と、前記正面PBSでの前記P偏光の透過と、を含む、
請求項1~7のいずれかに記載のクローキング装置。
【請求項9】
前記正面PBSは前記反射面を備えるプレートからなり、
前記プレートは前記観察者から見て前記正面PBSの前記反射面の手前に設けられた半波長板を備え、
前記半波長板は前記正面PBSを透過したP偏光の偏光軸を90度回転する、又は鉛直方向に変換する、
請求項8に記載のクローキング装置。
【請求項10】
前記可視物体を挟んで、前記迂回光路を成す背面鏡-背面PBS-正面PBS-正面鏡のモジュールと対向する、背面鏡-背面PBS-正面PBS-正面鏡のモジュールをさらに備える、
請求項8又は9に記載のクローキング装置。
【請求項11】
前記ビームスプリッターの前記反射面は、前記可視物体側に傾けられていることで前記鏡と平行ではなくなっている、
請求項1~7のいずれかに記載のクローキング装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のクローキング装置と前記可視物体とを備えるウィンドシールドであって、
前記可視物体から外れて開けた前記観察者の前記視界を覆う透明板をさらに備え、
前記可視物体は、ビーム形状を有するとともにその長手方向に沿って前記透明板の少なくとも一辺を担持する、
ウィンドシールド。
【請求項13】
ペリスコープ形式で鏡及びビームスプリッターを配置し、ここで観察者から見て不可視化したい可視物体の、前記観察者から見て手前に前記鏡が位置するものとし、
前記可視物体で遮られた前記観察者の視界の死角を、前記ビームスプリッター及び前記鏡で反射する迂回光路を通じて前記観察者に提示し、
前記可視物体から外れて開けた前記観察者の視界を、前記ビームスプリッターを透過する直進光路を通じて前記観察者に提示する、
ことで、可視物体を観察者から隠蔽する方法であって、
前記鏡から見て前記ビームスプリッターの反射面の背後にルーバーをさらに設け、
前記ルーバーの有するスラットで、前記鏡から見て前記ビームスプリッターの前記反射面の背後から前記ビームスプリッターを透過して前記鏡に向かう光路を遮り、
前記スラット間の隙間に前記直進光路を透過させる、
方法。
【請求項14】
クローキング装置内で鏡と共にペリスコープ形式で配置されるビームスプリッターであって、
前記クローキング装置は、観察者から見て可視物体の手前に配置された前記鏡で前記観察者から見て前記可視物体を不可視化し、この時、前記観察者は、前記ビームスプリッター及び前記鏡で反射する迂回光路を通じて前記可視物体で遮られた前記観察者の視界の死角を観察するとともに、前記ビームスプリッターを透過する直進光路を通じて前記可視物体から外れて開けた前記観察者の視界を観察し、
反射面と、前記反射面の背後に設けられたルーバーとを備え、
前記ルーバーは、前記鏡から見て前記ビームスプリッターの前記反射面の背後から前記ビームスプリッターを透過して前記鏡に向かう光路を遮るスラットを有し、
前記直進光路は、前記スラット間の隙間を透過する、
ビームスプリッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクローキング装置に関し、特に障害物を避けるためにペリスコープのように配置された、以下これをペリスコープ形式という、鏡とビームスプリッターとを有するものに関する。また本発明はクローキング装置を備えるウィンドシールドに関する。また本発明はクローキング装置用のビームスプリッターに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3及び非特許文献1は障害物によって生じる死角領域の像を映す装置を開示している。特許文献1の装置では鏡とビームスプリッターとが可視物体の周りに配置されている。特許文献2及び3並びに非特許文献1は可視物体を不可視化する装置を開示している。これらの装置ではペリスコープ形式で配置されている鏡とビームスプリッターとの組が可視物体を挟んで対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-120468号公報
【特許文献2】特開2017-161896号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2019/0310450号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H.Ichikawa, M.OURA, T.TAODA, “Invisibility cloaking based on geometrical optics for visible light”, Journal of the European Optical Society - Rapid publications, [online], Europe, Vol.8, 13057, Jun. 2013, retrieved from <https://www.jeos.org/index.php/jeos_rp/article/view/13037>, [retrieved on 2021-02-19]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び3のクローキング装置では、ペリスコープ形式で鏡とビームスプリッターとが配置されている。鏡が可視物体を遮蔽する。一方ビームスプリッターは可視物体の周囲の視界を遮らないようにする。ビームスプリッターの外側に遮蔽板を設ける。かかる遮蔽板は、視界のさらに外からビームスプリッターに向かって差し込む光を遮ることで、鏡及びビームスプリッターへの外光の映り込みを防ぐ。
【0006】
本発明は視界の障害となる可視物体を隠蔽する装置、すなわちクローキング装置を提供する。本発明に係るクローキング装置はペリスコープ形式で配置されている鏡とビームスプリッターとの組を備える。本発明は映り込みを防止するための遮蔽手段の新しい形態を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> ペリスコープ形式で配置された鏡及びビームスプリッターを備え、
観察者から見て不可視化したい可視物体の、前記観察者から見て手前に前記鏡が配置され、
前記可視物体で遮られた前記観察者の視界の死角は、前記ビームスプリッター及び前記鏡で反射する迂回光路を通じて前記観察者に観察され、
前記可視物体から外れて開けた前記観察者の視界は、前記ビームスプリッターを透過する直進光路を通じて前記観察者に観察される、
クローキング装置であって、
前記鏡から見て前記ビームスプリッターの反射面の背後に設けられたルーバーをさらに備え、
前記ルーバーの有するスラットは、前記鏡から見て前記ビームスプリッターの前記反射面の背後から前記ビームスプリッターを透過して前記鏡に向かう光路を遮り、
前記直進光路は前記スラット間の隙間を透過する、
クローキング装置。
<2> 前記ビームスプリッターは前記反射面を備えるプレートからなり、
前記ルーバーの前記スラットは前記プレート内に配置される、
<1>に記載のクローキング装置。
<3> 前記スラットは、前記反射面で屈折する前記直進光路に略平行である、
<2>に記載のクローキング装置。
<4> 前記プレートの基材を挟んで前記反射面の反対側の面に反射防止膜をさらに備える、
<3>に記載のクローキング装置。
<5> 前記ルーバーの前記スラットは前記プレートの基材を挟んで前記反射面の反対側の面から飛び出しており、この飛び出した部分は前記反対側の面で屈折する前記直進光路に略平行である、
<3>に記載のクローキング装置。
<6> 前記鏡における前記迂回光路の反射角は45度より大きい、
<1>~<5>のいずれかに記載のクローキング装置。
<7> 前記ビームスプリッターは、前記反射面の延在方向に沿って階段状に並んだプリズムを備えるシートであり、
前記プリズムはそれぞれ内側プリズムと外側プリズムとからなり
前記シートは前記内側プリズムの斜面と前記外側プリズムの斜面とで挟まれた基部を有し、
前記反射面は、前記基部内に位置するともに、前記内側プリズムの前記斜面に対向し、
前記内側プリズムは前記迂回光路及び前記直進光路の入口となる表面及び前記迂回光路の出口となる表面を備え、
前記外側プリズムは前記迂回光路及び前記直進光路の入口となる表面及び前記迂回光路の出口となる表面を備え、
前記スラットは、前記外側プリズムの表面に位置するとともに、前記反射面を挟んで、前記内側プリズムの前記迂回光路の出口となる前記表面の反対側に位置する。
<1>に記載のクローキング装置。
<8> 前記ビームスプリッターは偏光ビームスプリッター、以下正面PBSという、であり、
前記鏡、以下正面鏡という、に対して前記可視物体を挟んで背中合わせになった背面鏡と、
前記正面PBSに対向する背面PBSと、をさらに備え、
前記迂回光路は、前記背面鏡での非偏光の反射と、前記背面PBSでのS偏光の反射と、前記正面PBSでの前記S偏光の反射と、前記背面鏡での前記S偏光の反射とを含み、
前記直進光路は、前記背面PBSでのP偏光の透過と、前記正面PBSでの前記P偏光の透過と、を含む、
<1>~<7>のいずれかに記載のクローキング装置。
<9> 前記正面PBSは前記反射面を備えるプレートからなり、
前記プレートは前記観察者から見て前記正面PBSの前記反射面の手前に設けられた半波長板を備え、
前記半波長板は前記正面PBSを透過したP偏光の偏光軸を90度回転する、又は鉛直方向に変換する、
<8>に記載のクローキング装置。
<10> 前記可視物体を挟んで、前記迂回光路を成す背面鏡-背面PBS-正面PBS-正面鏡のモジュールと対向する、背面鏡-背面PBS-正面PBS-正面鏡のモジュールをさらに備える、
<8>又は<9>に記載のクローキング装置。
<11> 前記ビームスプリッターの前記反射面は、前記可視物体側に傾けられていることで前記鏡と平行ではなくなっている、
<1>~<7>のいずれかに記載のクローキング装置。
<12> <1>~<11>のいずれかに記載のクローキング装置と前記可視物体とを備えるウィンドシールドであって、
前記可視物体から外れて開けた前記観察者の前記視界を覆う透明板をさらに備え、
前記可視物体は、ビーム形状を有するとともにその長手方向に沿って前記透明板の少なくとも一辺を担持する、
ウィンドシールド。
<13> ペリスコープ形式で鏡及びビームスプリッターを配置し、ここで観察者から見て不可視化したい可視物体の、前記観察者から見て手前に前記鏡が位置するものとし、
前記可視物体で遮られた前記観察者の視界の死角を、前記ビームスプリッター及び前記鏡で反射する迂回光路を通じて前記観察者に提示し、
前記可視物体から外れて開けた前記観察者の視界を、前記ビームスプリッターを透過する直進光路を通じて前記観察者に提示する、
ことで、可視物体を観察者から隠蔽する方法であって、
前記鏡から見て前記ビームスプリッターの反射面の背後にルーバーをさらに設け、
前記ルーバーの有するスラットで、前記鏡から見て前記ビームスプリッターの前記反射面の背後から前記ビームスプリッターを透過して前記鏡に向かう光路を遮り、
前記スラット間の隙間に前記直進光路を透過させる、
方法。
<14> クローキング装置内で鏡と共にペリスコープ形式で配置されるビームスプリッターであって、
前記クローキング装置は、観察者から見て可視物体の手前に配置された前記鏡で前記観察者から見て前記可視物体を不可視化し、この時、前記観察者は、前記ビームスプリッター及び前記鏡で反射する迂回光路を通じて前記可視物体で遮られた前記観察者の視界の死角を観察するとともに、前記ビームスプリッターを透過する直進光路を通じて前記可視物体から外れて開けた前記観察者の視界を観察し、
反射面と、前記反射面の背後に設けられたルーバーとを備え、
前記ルーバーは、前記鏡から見て前記ビームスプリッターの前記反射面の背後から前記ビームスプリッターを透過して前記鏡に向かう光路を遮るスラットを有し、
前記直進光路は、前記スラット間の隙間を透過する、
ビームスプリッター。
【発明の効果】
【0008】
本発明は映り込みを防止するための遮蔽手段の新しい形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クローキング装置の斜視図。
図2】クローキング装置の平面図。
図3】双方向型のクローキング装置の平面図。
図4】プレートの平面視断面図。
図5】プレートの平面視断面図。
図6】鏡及びプレートの平面視断面図。
図7】プレートの平面視断面図。
図8】ウィンドシールドの部分断面図。
図9】ウィンドシールドの部分断面図。
図10】クローキング装置の斜視図。
図11】プリズムシートの平面視断面図。
図12】迂回光路の平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<ルーバーを備えるクローキング装置>
【0011】
図1はクローキング装置Cdの斜視図である。クローキング装置Cdはペリスコープ形式で配置された鏡Mr及びビームスプリッターBsを備える。鏡Mrの反射率はビームスプリッターBsよりも高い。一態様において鏡Mrは光を透過しない。クローキング装置Cdはペリスコープ形式で配置された鏡21b及びビームスプリッター23bをさらに備えてもよい。これらについては後述する。
【0012】
図1に示すようにクローキング装置CdはさらにルーバーLvを備える。ルーバーLvはビームスプリッターBs内に又はビームスプリッターBs上に設けられる。ルーバーLvはスラットを備える。
【0013】
図1に示すようにビームスプリッターBsは反射面Rfを備えるプレート又はシートからなる。プレートはウェッジ、いわゆる斜面を有してもよい。図と異なる態様においてビームスプリッターBsはプリズムからなる。反射面Rfは入射する光の一部を反射し、残りを透過する。反射面Rfは、ビームスプリッターBsの鏡Mrと対向する表面に設けられる。反射面Rfは、ビームスプリッターの機能を発揮する光学薄膜を有する。
【0014】
図1に示す視界Fdは観察者Vwの視界である。可視物体Vsが観察者Vwの視界Fdの一部、以下、死角Fbという、を遮っている。クローキング装置Cdは、観察者Vwから見て不可視化したい可視物体Vsを隠蔽する。観察者Vwから見て可視物体Vsの手前に鏡Mrが配置される。鏡Mrは観察者Vwに対向するとともに可視物体Vsを遮蔽している。鏡Mrの背後の死角に可視物体Vsが隠れる。
【0015】
図1に示す観察者Vwを表す瞳の形状の上下方向は、鉛直方向を表しているわけではない。他の図面においても同様である。
【0016】
図2はクローキング装置Cdの平面図である。観察者Vwは迂回光路Gaを通じて視界Fd中の死角Fbを観察する。これらの迂回光路はペリスコープ形式で配置されたビームスプリッターBs及び鏡Mrからなる。これらの迂回光路において光の少なくとも一部はビームスプリッターBsの反射面Rfで反射する。ビームスプリッターBsで反射した光は鏡Mrで反射する。観察者Vwはこれらの迂回光路を介して死角Fbを見ることができる。
【0017】
図2に示すように観察者Vwは直進光路Trを通じて視界Fd中の可視物体Vsから外れて開けた部分、以下、開放視界Foという、を観察する。直進光路Trにおいて光の少なくとも一部はビームスプリッターBsの反射面Rfを透過する。観察者Vwは直進光路Trを介して開放視界Foを見ることができる。
【0018】
図2に示す迂回光路Gaは回り込み型の光路である。迂回光路Gaは鏡Mr及びビームスプリッターBsに加えて他の光学素子を経由して可視物体Vsの周りを半周回り込む。迂回光路Gaの代わりに迂回光路Ckを用いてもよい。迂回光路Ckはクランク型の光路である。迂回光路Ckは鏡Mr及びビームスプリッターBsを経由して可視物体Vsを避ける。
【0019】
図2に示すクローキング装置Cdの一態様において回り込み型の迂回光路Gaを形成するビームスプリッターBsは偏光ビームスプリッターである。図3の説明にて詳述する。
【0020】
図2に示す一態様においてクランク型の迂回光路Ckを形成するビームスプリッターBsは特定の波長や特定の偏光軸を有する偏光を選択的に反射又は透過する。本明細書において特に言及しない限り、偏光は直線偏光である。他の態様においてビームスプリッターBsはそのような性質を有しないビームスプリッター、例えば非偏光ビームスプリッターである。
【0021】
図2に示す観察者Vwは死角Fb及び開放視界Foを含む像Imを視認する。観察者Vwはあたかも可視物体Vsが見えなくなったおかげで死角Fbが見えるようになった錯覚を覚える。
【0022】
<ルーバーによる遮蔽板の代替>
【0023】
図2に示すように外光Exは視界Fdのさらに外側からビームスプリッターBsに差し込む。何らの遮蔽を用いなければ、外光ExはビームスプリッターBsを透過して鏡Mrに向かう。そして外光Exは反射面Rfの背面及び鏡Mrの正面で反射して映り込み又は迷光、以下、映り込みという、を生じる。そこで外光Exを遮るために遮蔽部材としてルーバーLvを用いる。ここでルーバーLvは遮蔽部材の従来の形態である遮蔽板Shの機能を有する。
【0024】
図2に示すように鏡Mrから見て遮蔽板ShはビームスプリッターBsの反射面Rfよりもさらに遠くに設置される。遮蔽板Shは外光Exを遮ることで映り込みを消す。しかしながら遮蔽板Shを反射面Rfに沿って設けることはできない。遮蔽板Shが直進光路Trと交差する場合、遮蔽板Shが開放視界Foを遮るからである。したがってクローキング装置のサイズを小さくする際に遮蔽板Shはその制約となる。
【0025】
図2に示すようにクローキング装置Cdは遮蔽板Shに代わる遮蔽部材としてルーバーLvを備える。ルーバーLvは鏡Mrから見てビームスプリッターBsの反射面Rfの背後に設けられている。ルーバーLvは複数のスラットStからなる。スラットStはビームスプリッターBsの反射面Rfに沿って並んでいる。
【0026】
図2においてスラットStはビームスプリッターBsを構成するプレートの外に配置される。図と異なる態様においてスラットStはビームスプリッターBsを構成するプレートの内部に配置される。いずれにせよクローキング装置のサイズを小さくする際にルーバーLvはその制約となりにくい。
【0027】
図2において、各スラットStが外光Exを遮る。したがって外光Exは反射面Rf及び鏡Mrに映り込みを生じない。したがってルーバーLvは遮蔽板Shの機能を有する。また直進光路TrはスラットSt間の隙間を透過する。したがってルーバーLvは開放視界Foを実質的に遮らない。
【0028】
<回り込み型の迂回光路を利用するクローキング装置>
【0029】
図3は[鏡]-[ビームスプリッター]-[ビームスプリッター]-[鏡]のモジュールを備える双方向型のクローキング装置20を示す。クローキング装置20は回り込み型の迂回光路Gaを利用する。クローキング装置20はその正面及び背面のいずれの側からも可視物体Vsを隠蔽する特徴を有する。以下、クローキング装置の外光遮蔽手段及び防眩手段を説明するが、いずれも図2に示すクランク型の迂回光路Ckを利用するクローキング装置に用いることができる。
【0030】
図3に示す観察者Vwから見て視界Fdの手前に可視物体Vsがある。非偏光Ubは可視物体Vsによって生じる死角Fbより発する。もしもクローキング装置20が用いられない場合、非偏光Ubは観察者Vwに届かない。一方で非偏光Uoは開放視界Foより発する。クローキング装置20が用いられない場合でも、非偏光Uoは観察者Vwに届く。
【0031】
図3に示すクローキング装置20は、観察者Vwから見て可視物体Vsの手前に鏡21fを備える。鏡21fは図2に示す鏡Mrである。クローキング装置20はさらに、観察者Vwから見て可視物体Vsの背後に鏡21bを備える。鏡21bは鏡21fに対して可視物体Vsを挟んで背中合わせになっている。
【0032】
図3に示すクローキング装置20はさらに、観察者Vwから見て可視物体Vsから外れたところにビームスプリッター23f及びビームスプリッター23bを備える。ビームスプリッター23f及びビームスプリッター23bはいずれも偏光ビームスプリッターである。ビームスプリッター23fは観察者Vwから見てビームスプリッター23bの手前に位置する。ビームスプリッター23fは図2に示すビームスプリッターBsの一態様である。
【0033】
図3に示す鏡21bの反射率はビームスプリッター23bよりも高い。一態様において鏡21bは光を透過しない。鏡21bは視界Fdに対向する。ビームスプリッター23bは鏡21bに対向する。ビームスプリッター23fはビームスプリッター23bに対向する。鏡21fはビームスプリッター23fに対向する。
【0034】
図3に示す可視物体Vsの背後から発する非偏光Ubが鏡21bで反射する。非偏光Ubはさらにビームスプリッター23bの正面に入射する。ビームスプリッター23bは非偏光Ubを分離することでS偏光Sb及びP偏光Pbを生成する。S偏光Sbはビームスプリッター23b、ビームスプリッター23f及び鏡21fの順で反射してから観察者Vwに届く。非偏光Ub及びS偏光Sbはこのような迂回光路Gaに沿って進む。さらに鏡21fで反射したS偏光Sbを半波長板HwがP偏光に変換してもよく、又はS偏光Sbを90度回転させてもよい。
【0035】
図3に示すように、P偏光Pbはビームスプリッター23bを通過して可視物体Vsから遠ざかる。P偏光Pbはビームスプリッター23fに映り込みを生じない。
【0036】
図3に示す非偏光Uoは可視物体Vsに対して開いた場所を直進光路Trに沿って進む。非偏光Uoはビームスプリッター23bの背面に入射する。ビームスプリッター23bは非偏光Uoを分離することでS偏光So及びP偏光Poを生成する。P偏光Poはビームスプリッター23b及びビームスプリッター23fを透過してから観察者Vwに届く。非偏光Uo及びP偏光Poの光路は図2に示す直進光路Trに相当する。ビームスプリッター23fを透過したP偏光Poを半波長板HwがS偏光に変換してもよく、又はP偏光Poを90度回転させてもよい。
【0037】
図3に示すように、S偏光Soはビームスプリッター23bで反射して可視物体Vsから遠ざかる。S偏光Soは鏡21fに映り込みを生じない。
【0038】
図3に示すようにクローキング装置20は鏡21b-ビームスプリッター23b-ビームスプリッター23f-鏡21fからなるモジュール25を備える。モジュール25は迂回光路Gaを成している。一態様に係るクローキング装置20はモジュール26を備える。モジュール26は背面鏡-背面ビームスプリッター-正面ビームスプリッター-正面鏡からなる。モジュール26は可視物体Vsを挟んでモジュール25に対向する。他の態様に係るクローキング装置20はモジュール26を備えない。クローキング装置20は可視物体Vsの一部のみを隠蔽する。
【0039】
<プレート内に配置されるルーバー>
【0040】
図4図3に示すビームスプリッター23fの一態様に係るプレート30の平面視断面図である。プレート30は反射面Rfを備える。プレート30は基材36からなる。図を見やすくするために基材36のハッチングは省略している。反射面Rfは基材36上に設けられた光学薄膜35からなる。一態様において光学薄膜35は誘電体膜及び金属膜の少なくともいずれかからなる。一態様において光学薄膜35は誘電体多層膜からなる。光学薄膜35を他の基材上に形成し、係る基材を基材36に貼り付けてもよい。
【0041】
図4に示すプレート30は反射防止膜34を備える。一態様において反射防止膜34は基材36上に設けられる。一態様において反射防止膜34は基材36を挟んで反射面Rfの反対側の面、以下外表面Esという、に設けられる。反射防止膜34は外光Exが外表面Es上で鏡面反射することを防止する。
【0042】
図4に示すルーバー37は図2に示すルーバーLvの一態様である。ルーバー37は図2に示すスラットStの一態様に係るスラット39a~39dを備える。スラット39a~39dはプレート30内に配置される。スラット39a~39dは基材36内に配置される。一態様においてスラット39a~39dは基材36の反射面Rf側の表面から反射防止膜34側の表面まで存在する。一態様においてスラット39a~39dは互いに分離された部材からなる。なお、スラットStは4枚のスラット39a~39dから構成されるものに限られない。プレート30の幅又はプレート30中の遮蔽したい領域の幅と、下記に述べるスラットの間隔pとに応じて適切なスラットの枚数を選択できる。
【0043】
図4において直進光路Trの入射面と、外光Exの入射面とは同一の平面である。係る入射面は図4に表される断面と一致する。一態様においてスラット39a~39dは、反射面Rfで屈折する直進光路Trに略平行である。
【0044】
図4に示す一態様において、各スラットが直進光路Trに略平行であることは、次のように解釈する。図2に示すように直進光路Trは、開放視界Foから観察者Vwに向かう。したがって直進光路Trの方向は、クローキング装置Cdから見た観察者Vwの方角によって変化する。したがって図4に示すように、迂回光路Gaを通る光と、直進光路Trを通る光から死角Fbと開放視界Foを含む像Imが得られる時、スラット39a~39dに対して直進光路Trが平行となるような開放視界Fo及び観察者Vwの方角がある。そのような方角がある時、各スラットが直進光路Trに略平行であるものと定義する。迂回光路Gaを通る光の反射面Rfに対する入射角をθiとする。
【0045】
次に図4においてスラット39a~39dが直進光路Trに平行となり、またスラットが隙間なく外光Exを遮蔽する時の幾何学的条件を以下に示す。
【0046】
図4に示す断面において各角度はすべて同一の平面上にある。反射面Rfの法線に対するスラット39a~39dの傾きをチルトθgとする。各スラットはプレート30内の直進光路Trに略平行であるからθgは直進光路Trを通る光の反射面Rfにおける屈折角θtに等しい。さらに反射面Rfにおける屈折角θtと入射角θiとの関係は下記式Iの通り表される。nは基材36の屈折率である。
【0047】
【数1】
【0048】
図4において、外光Exは外表面Esに対して入射角θiで入射する成分である。この外光Exがプレート30を透過すると、迂回光路Gaを通る成分と略平行な光路を通るため、迷光として観察者Vwの視界に入るためである。また、この外光Exが外表面Esで反射されると、直進光路Trと略平行な光路を通るため、反射防止膜34で外表面Esでの反射を防ぐことも必要である。
【0049】
図4に示すプレート30の一態様において、スラット39a~39dの間隔pを下記式IIの通りとする。基材36の板厚をdとする。スラットの間隔がpよりも小さければ外光Exが透過するスラット間の隙間を無くすことができる。
【0050】
【数2】
【0051】
図4に示すプレート30の一態様において、基材36の屈折率nを1.5とする。また基材36の板厚dは2mmとする。スラットの間隔pは各角度とともに以下の通り表される。なお図中では入射角θiは概ね45度である。
【0052】
【表1】
【0053】
図4に示すスラット39a~39dの基材36への埋め込みは一態様において次のように行う。まずスラット39a~39dの材料からなるシートと、基材36の材料からなるシートとを交互に重ね合わせる。これにより生じた積層体を斜めに切断することでルーバーを内包した基材36を作成する。シートの厚さと切断の傾きを調節することで上記各パラメータを有するプレート30を得ることができる。上述の通りプレート30の幅又はプレート30中の遮蔽したい領域の幅と、スラットの間隔pとに応じて適切なスラットの枚数を選択できる。
【0054】
<半波長板の付加>
【0055】
図5図4に示すプレート30の一態様に係るプレート31の平面視断面図である。プレート31は半波長板33を備える。半波長板33は観察者Vwから見て反射面Rfの手前に設けられている。半波長板33は図3に示す半波長板Hwと同等の光学的機能を有する。一態様において半波長板33はプレート31の外表面Esに位置する。他の態様において半波長板33は光学薄膜35と基材36との間に位置する。半波長板33は基材36上に設けられた光学薄膜でもよい。
【0056】
図5に示すプレート31の一態様において、半波長板33の光学軸、高速軸又は低速軸とのいずれかを、反射面Rfを透過するP偏光Poの偏光軸に対して45°傾ける。P偏光Poの偏光軸が90°回転することで、これをS偏光Soに変換する。
【0057】
図5に示すプレート31の他の態様において、半波長板33はP偏光Poの偏光軸を鉛直方向に平行な方向に変換する。観察者Vwが偏光サングラスを装着していた場合を考える。偏光サングラスは一般にその左右方向の吸収軸、すなわち鉛直方向に直交する吸収軸を有する。これは水面で反射した光が水平な偏光軸を有する偏光を含むためである。これに合わせてプレート31はP偏光Poの偏光軸を回転させることで、鉛直方向に平行な偏光軸を有する偏光を生成する。
【0058】
図3に戻る。ビームスプリッター23bから見てビームスプリッター23fに対向する半波長板Hwはビームスプリッター23fよりもさらに遠くに設置される。したがってクローキング装置のサイズを小さくする際に半波長板Hwはその制約となる。これに対して図5に示すように半波長板33はプレート31内に又はプレート31上に配置される。したがってクローキング装置のサイズを小さくする際に半波長板33はその制約となりにくい。
【0059】
<鏡とビームスプリッターの傾き>
【0060】
図4では、反射面Rfにおける直進光路Trの入射角θiを45度とした。図6を参照しつつ、ビームスプリッターに対する入射角がこれに限定されないことを以下に示す。図6は鏡21fとプレート32の平面視断面図を示す。プレート32は図4に示すプレート30の一態様である。図4に示すプレート30に比べて、図6に示すプレート32は45度よりも可視物体Vs側に傾いている。他の態様においてプレート32は45度よりも可視物体Vsから離れる側に傾いていてもよい。
【0061】
図6において鏡21fにおける迂回光路Gaの反射角θrは45度より大きい。鏡21fとプレート32とは略平行であるから、プレート32の反射面Rfに対する迂回光路Gaの入射角θiも45度より大きい。入射角θiが0°<θi<90°の範囲で任意の値をとれることは表1の通りである。
【0062】
図6においてプレート32はルーバー38を備える。ルーバー38はスラット39e~39gを備える。図4及び上記式Iで示した通りスラットのチルトθgは直進光路Trを通る光の屈折角θtに等しいことが好ましい。したがって図に示すスラット39e~39gのチルトθg’も屈折角θtに等しいことが好ましい。しかしながらθg’がθtに対してずれていたとしても、その差がプラスマイナス15°の範囲であれば、直進光路Trを通じて観察される開放視界は十分に明るい。
【0063】
図6に示すように、スラット39e~39gはそのチルトθg’が上記式Iで示された最適なチルトθgよりも大きい。この場合でもスラットの間隔p‘を適切に選択することで、直進光路Trの遮蔽を最小限にしつつ外光Exを隙間なく遮蔽できる。ここでスラットの間隔p’の好ましい値は下記式IIIに基づき基材の板厚d、屈折率θt及びチルトθg’より導くことができる。さらにθg’及びスラットの間隔p’の例を表に示す。
【0064】
【数3】
【0065】
【表2】
【0066】
図6に示す基材36の板厚dは2mm、屈折率nは1.5とした。なおスラットの間隔p’を上記式から導かれる値以下とすることもできる。p’を下記式IVの範囲にとることが好ましい。当該範囲においてルーバー38は、直線光路Trに対する遮蔽を高め過ぎず、また外光Exの透過をさせない。
【0067】
【数4】
【0068】
図6と異なり、鏡21fにおける迂回光路Gaの反射角θrが45度より小さくてもよい。またこれに合わせてプレート32の反射面Rfに対する迂回光路Gaの入射角θiが45度より小さくてもよい。このようにビームスプリッター及びこれに対向する鏡の傾きは45度に限られない。スラットの所望の間隔p’に合わせて、スラットのチルトθg’を変更することでプレート32を可視物体Vs側に傾けることができる。
【0069】
<ビームスプリッターへの映り込みとルーバー>
【0070】
図7にプレート40の平面視断面図を示す。プレート40は図4に示すプレート30の一態様である。プレート40はルーバー42を備える。ルーバー42のスラットはプレート40の外表面Esから飛び出している。すなわちスラット39a~39dは露出端44a~44dをそれぞれ備える。露出端44a~44dは外表面Esで屈折する直進光路Trに略平行である。
【0071】
図7に示すように露出端44a~44dは外表面Esを覆う。露出端44a~44dは外表面Esに向かう外光Exを遮断する。露出端44a~44dは外光Exの外表面Esへの映り込みを抑制する。また外光Exが外表面Esで鏡面反射することを防止する。露出端44a~44dで覆われた部分には反射防止膜を設けなくてもよい。一態様において外表面Es全体が、反射防止膜を設けない部分となる。
【0072】
<ウィンドシールド>
【0073】
図8にクローキング装置20を備えるウィンドシールド50の部分断面図を示す。図を分かりやすくするために鏡21f及び21b並びにビームスプリッター23f及び23bにはハッチングを付していない。ウィンドシールド50はクローキング装置20とピラー51とを備える。
【0074】
図8に示すピラー51は先行する各図に示した可視物体Vsの一態様である。ピラー51はビーム形状を有する。ウィンドシールド50内の観察者Vwから見て、ピラー51の背後に死角Fbが生じている。また観察者Vwから見て、ピラー51の側方、図中では右側が開放視界Foとなっている。
【0075】
図8に示すようにウィンドシールド50は透明板52、例えば板ガラスを備える。透明板52はその背後の開放視界Foを覆う。死角Fbを挟んで開放視界Foの反対側で透明板52は折れ曲がっている。透明板52はピラー51を挟んでクローキング装置20の反対側に回り込む。ピラー51はそのビーム形状の長手方向に沿って透明板52の少なくとも一辺を担持する。ピラー51は一方の面でクローキング装置20と対向し、もう一方の面で透明板52と接合する。
【0076】
図8に示すようにビームスプリッター23fは、その有するルーバーにて外光Exを遮ることで、鏡21fへの外光Exの映り込みを防止する。
【0077】
図9にクローキング装置20を備えるウィンドシールド55の部分断面図を示す。ウィンドシールド55は図8に示すウィンドシールド50の一態様である。ウィンドシールド55は図6に示すプレート32を備える。図を分かりやすくするために鏡21f及び21b並びにビームスプリッター23f及びプレート32にはハッチングを付していない。観察者Vwから見て鏡21fの背後にピラー51の一部が隠れる。
【0078】
図9に示すように透明板52を透過した外光Exがプレート32及び鏡21fに向かって射し込む。プレート32は外光Exを遮ることで、鏡21fへの外光Exの映り込みを防止する。プレート32において迂回光路Gaの反射角は45度より大きい。したがってプレート32をピラー51と透明板52との間に寝かせた態勢で配置できる。
【0079】
一態様において乗り物が図8に示すウィンドシールド50及び図9に示すウィンドシールド55を備える。これらのウィンドシールドと同等の構造を乗り物の窓や、動かない構造物の窓又はカーテンウォールに適用できる。
【0080】
<各部材の幾何学的配置>
【0081】
図10はクローキング装置20の各部材の幾何学的配置を示す。ビームスプリッター23b上の反射面における迂回光路Gaの入射角及び反射角は、ビームスプリッター23f上の反射面における迂回光路Gaの入射角及び反射角と同じでもよく、異なっていてもよい。鏡21b及びビームスプリッター23bの組は、鏡21f及びビームスプリッター23fの組と面対称になる角度を有していてもよく、面対称になる対称な角度を有していなくてもよい。
【0082】
図10に示すクローキング装置20の一態様においてビームスプリッター23bの入射面は、ビームスプリッター23fの入射面とともに同一平面を成す。これにより迂回光路Gaより生じる死角の像の高さと、直進光路Trより生じる開放視界の像の高さを揃える。
【0083】
ここで図1に戻る。ビームスプリッターBsの反射面の延長面と、ビームスプリッター23bの反射面の延長面とが、仮想的な交線Liを生じる。ルーバーLvの各スラットは交線Liに平行である。一態様において各スラットStは鉛直方向に平行である。
【0084】
一方、図10において、ルーバー37の各スラットは、交線Liに平行ではない。直進光路Trを遮らない限りにおいて、ルーバーの各スラットの向きは制約されない。一態様においてルーバー37の各スラットは、ビームスプリッター23b及びビームスプリッター23fの入射面と直交しない、他の態様において直交する。
【0085】
図10に示すクローキング装置20の一態様においてルーバー37の各スラットは、可視物体Vsの長手方向に平行ではない。他の態様においてルーバー37の各スラットは、可視物体Vsの長手方向に略平行である。さらに主に遮りたい外光の光路に対して、スラットの表面が直角に交わることが望ましい。
【0086】
<プリズムシート型のビームスプリッター>
【0087】
図11はプリズムシート60の断面図を示す。プリズムシート60は図1に示すビームスプリッターBsの一態様である。プリズムシート60は内側プリズム61a~61d及び他の内側プリズムを備える。外側プリズム62a~62d及びその他の外側プリズムを備える。プリズムシート60はこれらのプリズムをその両面に備える。各プリズムは三角プリズムである。三角プリズムの断面は直角二等辺三角形である。各プリズムは紙面の表裏の方向に沿って延在する。
【0088】
図11に示すように内側プリズム61a~61dの各斜面と外側プリズム62a~62dの各斜面とはプリズムシート60の基部59を挟んで対向する。これらのプリズムは反射面Rfの延在方向に沿って階段状に並んでいる。これらのプリズムは基部59を通じて一つながりになっている。基部59は内側プリズム61bの断面の直角二等辺三角形の底辺に面している。基部59は外側プリズム62bの断面の直角二等辺三角形の底辺に面している。内側プリズム61a~61dおよび外側プリズム62a~62dは、基部59と一体成型されていてもよい。
【0089】
図11に示すように反射面Rfは基部59内に配置されている。反射面Rfは光学薄膜65によって形成される。反射面Rfは内側プリズム61a~61dの斜面に対向する。光学薄膜65は図4に示す光学薄膜35と同一の材料からなる。光学薄膜65の両側に、内側プリズム61a~61dからなる階段形状及び外側プリズム62a~62dからなる階段形状が形成されている。
【0090】
図11に示すように内側プリズム61bは迂回光路Ga及び直進光路Trの入口となる表面67a及び迂回光路Gaの出口となる表面67bを備える。表面67a及び表面67bは内側プリズム61bの断面の直角二等辺三角形の等辺に当たる。他の内側プリズムにおいて同様である。外側プリズム62bは直進光路Trの出口となる表面67c及び他の表面67dを有する。表面67c及び表面67dは外側プリズム62bの断面の直角二等辺三角形の等辺に当たる。他の外側プリズムにおいて同様である。一態様において迂回光路Ga及び直進光路Trを進む光は表面67a、67b及び67cに対して入射角0°で入射する。すなわちこれらの光は、これらの面で屈折しない。一態様において迂回光路Ga及び直進光路Trを進む光は反射面Rfに入射角45°で入射する。
【0091】
図11に示すようにプリズムシート60はルーバー63を備える。ルーバー63は図1に示すルーバーLvの一態様である。ルーバー63はスラット64a~64dを備える。スラット64bは外側プリズム62bの表面67dに位置する。スラット64bは反射面Rfを挟んで、内側プリズム61bの表面67bの反対側に位置する。他の内側プリズム及び外側プリズムの組において同様である。
【0092】
<ビームスプリッターの内向き化>
【0093】
図12はクローキング装置70の平面図である。クローキング装置70は図1に示す迂回光路Ckを利用するクローキング装置Cdの一態様である。クローキング装置70は鏡71及びビームスプリッター73を備える。これらはペリスコープ形式で配置されている。
【0094】
図12に示すようにクローキング装置70内で視点のずれを生じる。観察者Vwがクローキング装置70を通して観察する視界Fsの正面は、可視物体Vsの死角Fbの正面からずれている。ここで方眼の一目盛りは10cmである。視界の奥行きは2m前後である。視界の大きさは、視点のずれの大きさに比べて無限大とみなせるほど大きくはない。視点のずれに対して何の補償も行わない場合、観察者Vwは死角Fbが不連続に見える視界の像Imを受け取る。
【0095】
図12においてビームスプリッター73の反射面Rfは内向きに、すなわち可視物体Vs側に傾いている。反射面Rfは鏡Mrに対して角度Iwの分、傾いている。反射面Rfと鏡Mrとは平行ではない。このようにビームスプリッター73の向きを調節することで上述の視点のずれを解消する。観察者Vwは死角Fbが連続している視界の像を受け取る。一態様において角度Iwは0度~2度である。一態様において角度Iwは0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8及び1.9度のいずれかである。
【符号の説明】
【0096】
20 クローキング装置、 21b 鏡、 21f 鏡、 23b ビームスプリッター、 23f ビームスプリッター、 25-26 モジュール、 30-32 プレート、 33 半波長板、 34 反射防止膜、 35 光学薄膜、 36 基材、 37-38 ルーバー、 39a-f スラット、 40 プレート、 42 ルーバー、 44a-d 露出端、 50 ウィンドシールド、 51 ピラー、 52 透明板、 55 ウィンドシールド、 59 基部、 60 プリズムシート、 61a-d 外側プリズム62a-d プリズム、 63 ルーバー、 64a-d スラット、 65 光学薄膜、 70 クローキング装置、 71 鏡、 73 ビームスプリッター、 Bs ビームスプリッター、 Cd クローキング装置、 Ck 迂回光路、 Es 外表面、 Ex 外光、 Fb 死角、 Fd 視界、 Fo 開放視界、 Fs 視界、 Ga 迂回光路、 Hw 半波長板、 Im 像、 Iw 角度、 Lv ルーバー、 Mr 鏡、 Pb P偏光、 Po P偏光、 Rf 反射面、 Sb S偏光、 So S偏光、 Sh 遮蔽板、 St スラット、 Tr 直進光路、 Ub 非偏光、 Uo 非偏光、Vs 可視物体、Vw 観察者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12