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  • 特開-植物育成鉢 図1
  • 特開-植物育成鉢 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163816
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】植物育成鉢
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20221020BHJP
【FI】
A01G9/02 101J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068878
(22)【出願日】2021-04-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、農林水産省、原発事故からの復興のための放射性物質対策に関する実証研究委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】509298012
【氏名又は名称】公立大学法人宮城大学
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 竜太
(72)【発明者】
【氏名】山下 善道
(72)【発明者】
【氏名】星 典宏
【テーマコード(参考)】
2B327
【Fターム(参考)】
2B327NC02
2B327NC24
2B327NC55
2B327ND01
2B327RA03
2B327RA13
2B327RA22
2B327RA25
(57)【要約】
【課題】簡単に温度及び水分量を調整することができる植物育成鉢を提供する。
【解決手段】この植物育成鉢10は、植物を栽培する土壌を収納する内ポット11と、この内ポット11を内部に収納する外ポット12とを備えている。内ポット11と外ポット12との間には、内部に液体流路13Aが形成された液体流路管13が上下方向に間隔を開けて螺旋状に設けられると共に、液体流路管13により区切られて液体流路管13の間に螺旋状に形成された気体流路14が設けられている。内ポット11の少なくとも側部には、気体を内部に流入するスリット11Aが設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を栽培する土壌を収納し、少なくとも側部にスリットが設けられた内ポットと、
前記内ポットを内部に収納する外ポットと、
前記内ポットと前記外ポットとの間において、上下方向に間隔を開けて螺旋状に設けられ、内部に液体を流通させる液体流路が形成された液体流路管と、
前記内ポットと前記外ポットとの間において、前記液体流路管の間に螺旋状に設けられた気体を流通させる気体流路と
を備えたことを特徴とする植物育成鉢。
【請求項2】
前記外ポットの外側に着脱可能に配設される遮熱部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の植物育成鉢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度及び水分量を調整可能な植物育成鉢に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、寒冷地における柑橘類の栽培が検討されている。寒冷地では、冬季における気温の低さが問題であるが、それを解決する方法として、柑橘類を鉢植えとし、冬季はハウス内で栽培し、夏季は露地で栽培する試みがされている。しかし、冬季に関しては、夜間から早朝にかけて低温となり、晴天日中は温度が上昇するという極端な温度環境の変化に対応できるようにする必要があった。例えば、鉢内の土壌温度は、日中に上昇しやすい壁面付近では40℃を超えるような高温に曝されてしまい、壁面付近に伸長する細根への悪影響が懸念される。また、鉢内の中央部の中層及び深層では日射があっても午前中は10℃を下回る低温となり、根からの給水が阻害され、蒸散量が給水を上回ることにより、樹体内の水収支の不均衡が生じやすくなる。更に、夏季に関しても、日中における鉢内の土壌温度の上昇を抑制する必要があった。
【0003】
なお、特許文献1には、植物栽培用の鉢を嵌入するための孔を上板にあけた中空体よりなる支持台を栽培室内に設け、この支持台に冷風あるいは温風、又は、冷水あるいは温水を供給し、鉢内の温度を管理できるようにした植物栽培装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-84470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の植物栽培装置は装置が大掛かりであり、簡単に用いることが難しいという問題があった。特に、冬季はハウス内で栽培し、夏季は露地で栽培するという栽培方法には適していない。また、この植物栽培装置では、鉢内の水分量の調整は考えられておらず、水分量を含めた管理はできないという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、簡単に温度及び水分量を調整することができる植物育成鉢を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の植物育成鉢は、植物を栽培する土壌を収納し、少なくとも側部にスリットが設けられた内ポットと、内ポットを内部に収納する外ポットと、内ポットと外ポットとの間において、上下方向に間隔を開けて螺旋状に設けられ、内部に液体を流通させる液体流路が形成された液体流路管と、内ポットと外ポットとの間において、液体流路管の間に螺旋状に設けられた気体を流通させる気体流路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内ポットと外ポットとの間において、螺旋状に液体流路管を設けるようにしたので、温かい水又は冷たい水などの液体を流通させることにより、土壌を加熱又は冷却することができる。また、液体流路管の間に螺旋状に気体流路を設け、内ポットにスリットを設けるようにしたので、気体流路に温かい空気又は冷たい空気などの気体を流通させることにより、土壌に気体を送り込んで加熱又は冷却することができると共に、土壌に含まれる水分を気化させることにより水分量を調整することができる。よって、簡単な構成により土壌の温度及び水分量を調整することができる。
【0009】
更に、外ポットの外側に着脱可能に遮熱部材を設けるようにすれば、日差しが強い時に効果的に遮熱することができ、周縁部の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の形態に係る植物育成鉢の構成を表す部分断面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係る植物育成鉢の構成を表す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る植物育成鉢10の構成を表す部分断面図である。この植物育成鉢10は、植物を栽培する土壌を収納する内ポット11と、この内ポット11を内部に収納する外ポット12とを備えている。なお、図1では、外ポット12を断面とし、外ポット12の内部を露出させた状態を示している。内ポット11及び外ポット12を構成する材料は特に限定されないが、例えば、プラスチックにより構成されていることが好ましい。軽量で取り扱いが容易であるからである。
【0013】
内ポット11の外側面と、外ポット12の内側面との間には、間隔が設けられており、その間には、内部に液体を流通させる液体流路13Aが形成された液体流路管13が上下方向に間隔を開けて螺旋状に設けられている。液体流路13Aに温かい水等の液体を流通させることにより、内ポット11内の土壌を加熱することができると共に、冷たい水等の液体を流通させることにより、内ポット11内の土壌を冷却することができるからである。
【0014】
液体流路管13の両端部は、例えば、外ポット12の外側に導出されており、一方の端部が液体流入部13B、他方の端部が液体流出部13Cとなっている。液体流路管13は、例えば、熱伝導率の高い金属製パイプなどが好ましいが、ビニールホースなどにより構成することもできる。液体流路管13には、例えば、液体を流通させるポンプ等の図示しない流通手段を取り付けて用いることができる。液体は循環させても、循環させなくてもよい。なお、流通させる水などの液体は、加熱又は冷却することにより温かく又は冷たくしたものでもよいが、地下水などのように土壌に比べて相対的に温かい又は冷たいものを用いることもできる。
【0015】
また、内ポット11の外側面と、外ポット12の内側面との間には、液体流路管13により区切られて液体流路管13の間に螺旋状に形成された気体を流通させる気体流路14が設けられている。外ポット12の底部側には、例えば、気体流路14に気体を導入する気体導入口14Aが設けられている。気体導入口14Aには、例えば、気体を流通させるポンプ等の図示しない流通手段を取り付けて用いることができる。外ポット12と内ポット11との間の上部は、開放されていても閉鎖されていてもよく、例えば、開放されている場合には、気体流路14の上端部が気体排出口14Bとなり、閉鎖されている場合には、気体流路14の上端部に気体排出口が設けられていることが好ましい。なお、図1では外ポット12と内ポット11との間の上部が開放されている場合を示している。
【0016】
内ポット11の少なくとも側部には、気体を内部に流入するスリット11Aが設けられている。スリット11Aは、例えば、少なくとも底部側に設けられることが好ましく、周方向に間隔を開けて複数設けられていることが好ましい。内ポット11の内部全体に気体を送り込むことができるからである。また、スリット11Aは内ポット11の底部にも設けられていてもよい。スリット11Aの幅は、例えば、4mmから10mm程度が好ましい。幅が狭いと気体を吹き込むことが難しく、幅が広いと土壌が流出したり、植物の細根が隙間から伸長してしまうことがあるからである。
【0017】
また、外ポット12の底部内側には、内ポット11の底部との間に間隔を開けて内ポット11を支持する支持部12Aが設けられていてもよい。
【0018】
この植物育成鉢10は、例えば、内ポット11の中に土壌を入れ、植物を植えて用いる。例えば、土壌を温めたい場合には、液体流路13Aに温かい水等の液体を流通させ、土壌を冷却した場合には、液体流路13Aに冷たい水等の液体を流通させる。また、土壌の加温又は冷却に加えて、水分量の調整をしたい場合には、気体流路に温かい空気又は冷たい空気等の気体を流通させ、土壌に気体を吹き込む。
【0019】
このように、本実施の形態によれば、内ポット11と外ポット12との間において、螺旋状に液体流路管13を設けるようにしたので、温かい水又は冷たい水などの液体を流通させることにより、土壌を加熱又は冷却することができる。また、液体流路管13の間に螺旋状に気体流路14を設け、内ポット11にスリット11Aを設けるようにしたので、気体流路14に温かい空気又は冷たい空気などの気体を流通させることにより、土壌に気体を送り込んで土壌を加熱又は冷却することができると共に、土壌に含まれる水分を気化させることにより水分量を調整することができる。よって、簡単な構成により土壌の温度及び水分量を調整することができる。
【0020】
(第2の実施の形態)
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る植物育成鉢20の構成を表すものである。この植物育成鉢20は、外ポット12の外側に着脱可能に遮熱部材21が配設されたことを除き、他は第1の実施の形態と同一の構成を有している。よって、同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0021】
遮熱部材21は、例えば、市販の遮熱シートにより構成することができる。遮熱シートとしては、例えば、合成樹脂フィルムにアルミニウム層を蒸着したものが挙げられる。遮熱部材21は、例えば、外ポット12の少なくとも側部を覆うように設けることが好ましい。これにより、日差しが強い時に効果的に遮熱することができ、周縁部の温度上昇を抑制することができる。
【0022】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。また、各構成要素の具体的な構成は一例を示したものであり、異なっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
植物の栽培に用いることができる。
【符号の説明】
【0024】
10,20…植物育成鉢、11…内ポット、11A…スリット、12…外ポット、12A…支持部、13…液体流路管、13A…液体流路、13B…液体流入部、13C…液体流出部、14…気体流路、14A…気体導入口、14B…気体排出口、21…遮熱部材
図1
図2