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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163933
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】鉄筋保持具
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
E04C5/18 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069088
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】518082507
【氏名又は名称】株式会社サイエンス構造
(71)【出願人】
【識別番号】502306903
【氏名又は名称】八潮建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治
(72)【発明者】
【氏名】海藤 靖子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昇
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕樹
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
2E164BA33
2E164BA44
2E164BA45
2E164BA48
(57)【要約】
【課題】交差する2本の鉄筋を保持する鉄筋保持具において、各鉄筋の保持力を高める。
【解決手段】互いの先端縁を近接させ、且つ他端縁に向かう程に離間距離が漸増するように配置された2つの加圧板11、12と、各加圧板を、閉位置を維持するように弾性付勢し、且つ開放させる力が作用した時に各先端縁の拡開を許容する板バネ部13と、各加圧板の各先端寄り位置に設けた軸支部15、17により夫々回動自在に軸支される第1鉄筋係止用の2つの係止部材21、22と、を備え、各加圧板の各先端縁中央部には、第1鉄筋を同時に嵌合支持可能な嵌合凹所14、16が夫々設けられ、各嵌合凹所により嵌合支持された第1鉄筋RB1と各加圧板の各先端縁との間の挟圧空間SP内には、第1鉄筋と交差した姿勢で、且つ各加圧板を拡開させながら第2鉄筋RB2が嵌合可能であり、挟圧空間内に第2鉄筋が挟圧保持された状態において、各係止部材は第1鉄筋を係止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鉄筋と第2鉄筋とを交差させた状態で挟圧保持する鉄筋保持具であって、
互いの先端縁を近接、又は当接させると共に、該先端縁と反対側の他端縁に向かう程離間距離が漸増するように配置された第1加圧板、及び第2加圧板と、
前記第1、及び第2加圧板を、それぞれの前記先端縁が互いに近接、又は当接した閉位置を維持するように弾性付勢すると共に、該弾性付勢力に抗して開放させる力が作用した時に前記閉位置から拡開することを許容するように保持する弾性付勢部材と、
前記第1、及び第2加圧板の各先端縁寄り位置に設けた軸支部により各加圧板の板面と直交する平面と並行な軌道に沿って夫々回動自在に軸支される第1鉄筋係止用の第1係止部材、及び第2係止部材と、を備え、
前記第1、及び第2加圧板の各先端縁中央部には、各他端縁に向けて切欠き形成され、且つ前記第1鉄筋を同時に嵌合支持可能な第1嵌合凹所、及び第2嵌合凹所が夫々設けられ、
前記第1、及び第2嵌合凹所により嵌合支持された前記第1鉄筋と前記第1、及び第2加圧板の各先端縁との間の挟圧空間内には、前記第1鉄筋と交差した姿勢で、且つ前記第1、及び第2加圧板を拡開させながら前記第2鉄筋が嵌合可能であり、
前記第1、及び第2嵌合凹所内に前記第1鉄筋が跨がって挿通され、且つ前記挟圧空間内に前記第2鉄筋が挟圧保持された状態において、各係止部材は前記第1鉄筋を係止することを特徴とする鉄筋保持具。
【請求項2】
前記第1、及び第2係止部材は、先端部が前記第1鉄筋を内周側空所に係止可能な形状に折り返された鋼製線材によって作製されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋保持具。
【請求項3】
前記第1、及び第2係止部材は、前記先端部に前記第1鉄筋の直径よりも幅が狭いくびれ部を有することを特徴とする請求項2に記載の鉄筋保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造は、引っ張りに弱いコンクリートを補強するために芯材に鉄筋を用いた構造である。鉄筋コンクリート構造では、芯材として例えば主筋とせん断補強筋(帯筋、あばら筋)とを格子状に組んだものや鉄筋を格子状に組んだものが用いられている。
コンクリートの打設時において各鉄筋が所定の位置から大きくずれてしまうと設計上の強度が得られなくなる恐れがあるため、鉄筋同士が交差している箇所は互いに結束されている。鉄筋同士の結束には例えば結束用の針金(番線)が用いられるが、針金を用いた結束は手間が掛かり、熟練を要する。
鉄筋同士の結束作業を簡易化するため、例えば、特許文献1には、第1鉄筋と第1鉄筋に交差した第2鉄筋とを圧着(圧接)させる鉄筋用スペーサが開示されている。この鉄筋用スペーサは、コンクリート又はモルタルからなるスペーサ本体と、スペーサ本体に対して回動自在に取り付けられた装着金具と、を備え、スペーサ本体には第1鉄筋が嵌合される溝部が形成されている。装着金具は鋼製線材によって作製されており、溝部内の第1鉄筋と交差した第2鉄筋を、第1鉄筋側に付勢しながら保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2019/064404号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された鉄筋用スペーサでは、鋼製線材によって作製された装着金具だけによって第2鉄筋を保持しているため、装着金具に対して過剰な負荷が掛かり易く、第2鉄筋に対する保持力が低下してしまう恐れがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1鉄筋、及び第2鉄筋の保持力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、第1鉄筋と第2鉄筋とを交差させた状態で挟圧保持する鉄筋保持具であって、互いの先端縁を近接、又は当接させると共に、該先端縁と反対側の他端縁に向かう程離間距離が漸増するように配置された第1加圧板、及び第2加圧板と、前記第1、及び第2加圧板を、それぞれの前記先端縁が互いに近接、又は当接した閉位置を維持するように弾性付勢すると共に、該弾性付勢力に抗して開放させる力が作用した時に前記閉位置から拡開することを許容するように保持する弾性付勢部材と、前記第1、及び第2加圧板の各先端縁寄り位置に設けた軸支部により各加圧板の板面と直交する平面と並行な軌道に沿って夫々回動自在に軸支される第1鉄筋係止用の第1係止部材、及び第2係止部材と、を備え、前記第1、及び第2加圧板の各先端縁中央部には、各他端縁に向けて切欠き形成され、且つ前記第1鉄筋を同時に嵌合支持可能な第1嵌合凹所、及び第2嵌合凹所が夫々設けられ、前記第1、及び第2嵌合凹所により嵌合支持された前記第1鉄筋と、前記第1、及び第2加圧板の各先端縁との間の挟圧空間内には、前記第1鉄筋と交差した姿勢で、且つ前記第1、及び第2加圧板を拡開させながら前記第2鉄筋が嵌合可能であり、前記第1、及び第2嵌合凹所内に前記第1鉄筋が跨がって挿通され、且つ前記挟圧空間内に前記第2鉄筋が挟圧保持された状態において、各係止部材は前記第1鉄筋を係止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第1鉄筋、及び第2鉄筋の保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の鉄筋保持具によって第1、第2鉄筋を保持した状態を説明する斜視図である。
図2】鉄筋コンクリート構造の建物における柱、梁、スラブ、及び壁を説明する断面図である。
図3】(a)は鉄筋保持具の正面図、(b)は鉄筋保持具の左側面図、(c)は鉄筋保持具の右側面図、(d)は鉄筋保持具の背面図、(e)は鉄筋保持具の平面図、(f)は鉄筋保持具の底面図である。
図4】鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は取り付け前の状態を示す左側面図、(b)は取り付け前の状態を示す正面図である。
図5】鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は各加圧板を拡開して鉄筋保持具を基端方向の途中まで移動させた状態を示す左側面図、(b)は各加圧板を拡開して鉄筋保持具を基端方向の途中まで移動させた状態を示す正面図である。
図6】鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は各加圧板を拡開して鉄筋保持具を基端方向の最後まで移動させた状態を示す左側面図、(b)は各加圧板を拡開して鉄筋保持具を基端方向の最後まで移動させた状態を示す正面図である。
図7】鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は各係止部材の先端部によって第1鉄筋を係止した状態を説明する左側面図、(b)は各係止部材の各係止部によって第1鉄筋を係止した状態を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0009】
<鉄筋保持具1の概要>
最初に鉄筋保持具1の概要について説明する。図1は本実施形態の鉄筋保持具1によって第1、第2鉄筋RB1、RB2を保持した状態を説明する斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の鉄筋保持具1は、鉄筋コンクリート構造の芯材として用いられており、互いに交差した第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2とを交差箇所において挟圧保持する器具である。
【0010】
この鉄筋保持具1は、互いの先端縁11a、12aを近接、又は当接させると共に、各先端縁11a、12aと反対側の各基端縁11b、12b(図3(b)を参照)に向かう程離間距離が漸増するように配置された第1加圧板11、及び第2加圧板12と、各加圧板11、12を、それぞれの先端縁11a、12aが互いに近接、又は当接した閉位置(図3(b)を参照)を維持するように弾性付勢すると共に、該弾性付勢力に抗して開放させる力が作用した時に閉位置から拡開することを許容するように保持する板バネ部13(弾性付勢部材)と、各加圧板11、12の各先端縁11a、12a寄りの位置に設けた第1、第2軸支部15、17により各加圧板11、12の板面と直交する平面と並行な軌道に沿って夫々回動自在に軸支される第1鉄筋係止用の第1、第2係止部材21、22と、を備えている。
各加圧板11、12の各先端縁11a、12aの左右中央部には、各他端縁11b、12bに向けて切欠き形成され、且つ第1鉄筋RB1を同時に嵌合支持可能な第1、第2嵌合凹所14、16が夫々設けられており、各嵌合凹所14、16により嵌合支持された第1鉄筋RB1と各加圧板11、12の各先端縁11a、12aとの間の挟圧空間SP内には、第1鉄筋RB1と交差した姿勢で、且つ各加圧板11、12を拡開させながら第2鉄筋RB2が嵌合可能になっている。
さらに、各嵌合凹所14、16内に第1鉄筋RB1が跨がって挿通され、且つ挟圧空間SP内に第2鉄筋RB2が挟圧保持された状態において、各係止部材21、22は第1鉄筋RB1を係止する。
【0011】
本実施形態の鉄筋保持具1によれば、板バネ部13によって弾性付勢された各加圧板11、12が挟圧空間SP内の第2鉄筋RB2を挟圧保持して各嵌合凹所14、16内の第1鉄筋RB1に圧接させており、且つ各係止部材21、22が第1鉄筋RB1を係止していることから、各加圧板11、12と各係止部材21、22との協働によって第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2の保持力を高めることができる。
【0012】
<鉄筋保持具1の使用対象について>
鉄筋保持具1の詳細な説明に先立って、鉄筋保持具1の使用対象、具体的には鉄筋コンクリート構造の建物100について説明する。図2は鉄筋コンクリート構造の建物100における柱100、梁120、スラブ130、及び壁140を説明する断面図である。
前述したように、鉄筋保持具1は、2本の鉄筋を交差させた状態で挟圧保持する器具である。図2に示す鉄筋コンクリート構造の建物100では、引っ張りに弱いコンクリートを補強するため、芯材111、121、131、141として鉄筋を用いている。例えば、柱100や梁120では、柱100や梁120の長手方向に沿って複数本の主筋112、122を配設し、主筋112、122と交差する方向にせん断補強筋(柱100内の帯筋113、及び梁120内のあばら筋123)を配設している。また、スラブ130や壁140では、複数本の鉄筋132、133、142、143を格子状に組んだものを芯材131、141として用いている。
なお、本実施形態において、主筋112、122、及び鉄筋132、142が第1鉄筋RB1に対応し、帯筋113、あばら筋123、及び鉄筋133、143が第2鉄筋RB2に対応する。
鉄筋コンクリート構造の建物100を構築するときには、芯材111、121、131、141の周囲に型枠を設置した後、型枠内に硬化前のコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に型枠を取り外す。コンクリートの打設前に鉄筋同士が交差している箇所に鉄筋保持具1を装着することにより、コンクリートの打設中において各鉄筋の位置がずれてしまう不都合を抑制している。
【0013】
<鉄筋保持具1の構造について>
次に、鉄筋保持具1の構造について説明する。図3(a)は鉄筋保持具1の正面図、図3(b)は鉄筋保持具1の左側面図、図3(c)は鉄筋保持具1の右側面図、図3(d)は鉄筋保持具1の背面図、図3(e)は鉄筋保持具1の平面図、図3(f)は鉄筋保持具1の底面図である。
図3に示すように、鉄筋保持具1は、第1鉄筋RB1を各嵌合凹所14、16内に嵌合保持し、且つ第1鉄筋RB1と交差した第2鉄筋RB2を挟圧空間SP内にて挟圧保持する本体部10と、本体部10が有する第1、第2軸支部15、17にそれぞれ軸支され、各嵌合凹所14、16内に嵌合保持された第1鉄筋RB1を係止する係止部材20(第1係止部材21、第2係止部材22)と、を備えている。
【0014】
<本体部10について>
本体部10は、弾性を備えた薄手の鋼板、例えば0.5mm厚の鋼板から作製されている。
本体部10は、正面側に配置された第1加圧板11と、背面側に配置された第2加圧板12と、第1加圧板11の基端縁11bと第2加圧板12の基端縁12bとの間に設けられ、第1加圧板11の先端縁11aと第2加圧板12の先端縁12aとを近接、又は当接させるように各加圧板11、12を弾性付勢する板バネ部13と、第1加圧板11側に設けられ、第1係止部材21の基端21aを軸支する第1軸支部15と、第2加圧板12側に設けられ、第2係止部材22の基端22aを軸支する第2軸支部17と、を備えている。
【0015】
第1加圧板11は、例えば、横方向(左右方向)の長さが50mm、縦方向(先端基端方向)の長さが32mmの横長四角形状をしており、先端縁11aの左右中央部から基端方向に向けて第1鉄筋RB1の直径と同じ幅か僅かに広い幅に切り欠かれた第1嵌合凹所14が設けられている。第1嵌合凹所14は、例えば、幅が10mm、長さが25mmであり、内奥側の端部が半円形状とされている。
第1嵌合凹所14の左右両側には第1加圧板11の先端縁11aから連続して円筒形状の第1軸支部15が設けられている。本実施形態の第1軸支部15は、鋼板の先端部分を円筒形状に変形させることによって設けられており、その内径は例えば3mmである。
なお、第1軸支部15の内径は、第1係止部材21の基端部21aを回動自在に軸支できる大きさに定められる。また、第1軸支部15は、第1加圧板11の先端寄りの位置に設けられていればよい。
【0016】
第2加圧板12は、第1加圧板11と同じく横長四角形状をしており、先端縁12aの左右中央部から基端方向に向けて第2嵌合凹所16が設けられ、且つ第2嵌合凹所16の左右両側には円筒形状の第2軸支部17が設けられている。
本実施形態において、第2加圧板12の寸法は第1加圧板11の寸法と同じであり、第2嵌合凹所16の形状及び寸法は第1嵌合凹所14の形状及び寸法と同じであり、且つ第2軸支部17の形状及び寸法は第1軸支部15の形状及び寸法と同じであるため、詳細な説明は省略する。なお、第2加圧板12の各部形状や寸法を第1加圧板11とは異ならせてもよい。
【0017】
板バネ部13は、横方向(左右方向)の長さが各加圧板11、12の長さと同じであり、縦方向(前後方向)の長さが第2鉄筋RB2の直径よりも長い横長四角形状をしており、縦方向の中央13cが両端縁(前端縁13a、後端縁13b)に比較して先端側に向かって凹形状に湾曲している。本実施形態において、例えば、板バネ部13の横方向長さは50mm、縦方向長さは25mm、凹みの最大深さは2mmである。
板バネ部13の前端縁13aは第1加圧板11の基端縁11bと一連に形成され、後端縁13bは第2加圧板12の基端縁12bと一連に形成されている。板バネ部13と第1加圧板11との境界部分、及び板バネ部13と第2加圧板12との境界部分は夫々湾曲されており、各加圧板11、12は基端縁11b、12bから先端縁11a、12aに向かう程に離間距離が漸減するように(言い換えれば、先端縁11a、12aから基端縁11b、12bに向かう程に離間距離が漸増するように)配置されている。
【0018】
板バネ部13は、外力が加わっていない状態において、各加圧板11、12の各先端縁11a、12a同士が互いに当接した閉位置を維持するように各加圧板11、12を弾性付勢する。
なお、図3(b)(c)の例では、各加圧板11、12の閉位置において各加圧板11、12各の先端縁11a、12a同士が互いに当接しているが、各加圧板11、12の閉位置において各先端縁11a、12a同士が第2鉄筋RB2の直径未満の幅で離間していてもよい。
詳細は後述するが、本実施形態の鉄筋保持具1では、各嵌合凹所14、16内に第1鉄筋RB1が跨がって挿通され、且つ第1鉄筋RB1よりも先端側であって各加圧板11、12の内表面が区画する挟圧空間SP(図6(a)を参照)内に第2鉄筋RB2が配置される。挟圧空間SP内の第2鉄筋RB2は、各加圧板11、12によって挟圧保持される。
【0019】
<各係止部材21、22について>
本実施形態の各係止部材21、22は、鋼製線材を所定形状に屈曲することによって作製されており、各嵌合凹所14、16内に嵌合された第1鉄筋RB1を係止したり、板バネ部13の弾性付勢力に抗して各加圧板11、12に対し、各先端縁11a、12aを閉位置から拡開させる力を作用させる。本実施形態の各係止部材21、22は、例えば、直径2mmの丸鋼によって作製されており、各係止部材21、22の全長は68mmである。
【0020】
第1加圧板11側の第1係止部材21について説明する。第1係止部材21は、第1軸支部15に回動自在に軸支される基端部21aと、基端部21aとは反対の先端側部分に設けられて第1鉄筋RB1を係止する係止部21bと、基端部21aと係止部21cとの間に設けられる中間部21cと、を備えている。
基端部21aは、左右方向に沿って設けられており、その長さは第1軸支部15の長さと略同じか多少短い。基端部21aが第1軸支部15に軸支されているため、第1係止部材21は第1加圧板11の表面と直交する平面と並行な軌道に沿って回動自在に支持される。
係止部21bは、鋼製線材を略U字形状に折り返した部分であり、内周側の空所に第1鉄筋RB1が配置される。本実施形態では、係止部21bの基端の幅W21(中間部21cとの境界位置における幅)を第1鉄筋RB1の直径よりも狭くしており、第1鉄筋RB1を係止部21b内に係止するときには、係止部21bの基端を第1鉄筋RB1に押し当てることにより、係止部21bの基端を押し拡げて係止部21b内に嵌合する。
中間部21cは、基端部21aの左右内側の端部と係止部21bの基端との間を連結する部分であり、正面視で略直線形状であり、側面視で先端側部分が前方に向けて鈍角で屈曲している。
【0021】
以上の形状を備えた第1係止部材21は、係止部21bに第1鉄筋RB1の直径よりも狭い幅のくびれ部CS1が形成されている。
本実施形態では、第1係止部材21を、所定形状に折り曲げた鋼製線材によって作製しているので、容易に作製することができる。また、第1係止部材21にくびれ部CS1を形成しているため、第1鉄筋RB1の係止部21bからの脱落を抑制できる。
【0022】
次に、第2加圧板12側の第2係止部材22について説明する。第2係止部材22は、第1係止部材21と同様に、第2軸支部17に回動自在に軸支される基端部22aと、基端部22aとは反対の先端側部分に設けられて第1鉄筋RB1を係止する係止部22bと、基端部22aと係止部22bとの間に設けられる中間部22cと、を備えている。
第2係止部材22の基端部22a、係止部22b、中間部22c、及びくびれ部CS2は、第1係止部材21の基端部21a、係止部21b、中間部21c、及びくびれ部CS1と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0023】
各係止部材21、22は、各係止部21b、22b内に第1鉄筋RB1を係止する。また、各係止部材21、22は、各加圧板11、12の各先端縁11a、12a同士を、板バネ部13の弾性付勢力に抗して開放させるときに使用者によって操作される。図4、及び図5で後述するように、各係止部21b、22bが本体部10の基端側に位置するように各係止部材21、22を回動させて第1係止部21bと第2係止部22bとを近接させると、各加圧板11、12の各基端縁11b、12bが支点となって第1軸支部15、及び第2軸支部17が離間され、これに伴って第1加圧板11の先端縁11aと第2加圧板12の先端縁12aとが開放される。
【0024】
<鉄筋保持具1の取り付け手順について>
次に、鉄筋保持具1の取り付け手順について説明する。図4(a)(b)は取り付け前の状態を示す図、図5(a)(b)は各加圧板11、12を拡開して鉄筋保持具1を基端方向の途中まで移動させた状態を示す図、図6(a)(b)は各加圧板11、12を拡開して鉄筋保持具1を基端方向の最後まで移動させた状態を示す図、図7(a)(b)は各係止部材21、22の係止部21b、22bによって第1鉄筋RB1を係止した状態を説明する図である。
【0025】
図4(a)(b)に示すように、鉄筋保持具1を第1鉄筋RB1、及び第2鉄筋RB2に取り付けるときには、各係止部材21、22の各中間部21c、22cが各加圧板11、12の外表面に沿うまで各係止部材21、22を回動させる。その後、各嵌合凹所14、16内に第1鉄筋RB1が嵌合されるように鉄筋保持具1の向きを調整し、鉄筋保持具1を各鉄筋RB1、RB2に近づける。
図5(a)(b)に示すように、各嵌合凹所14、16の途中まで第1鉄筋RB1を嵌合し、各係止部材21、22の各係止部21b、22b同士を作業者の指によって近接方向に移動させて各加圧板11、12の各先端縁11a、12a同士の間隔を第2鉄筋RB2の直径よりも大きく開き、各加圧板11、12の各先端縁11a、12a同士の間に第2鉄筋RB2が配置されるように鉄筋保持具1を移動させる。
【0026】
図6(a)(b)に示すように、各嵌合凹所14、16の内奥まで第1鉄筋RB1を挿入し、各係止部材21、22の各係止部21b、22bから指を離して板バネ部13の弾性付勢力を各加圧板11、12に作用させると、挟圧空間SP内の第2鉄筋RB2が各加圧板11、12によって挟圧されて、各嵌合凹所14、16内に嵌合支持された第1鉄筋RB1に対して圧接する。
図7(a)(b)に示すように、各係止部材21、22の各基端21a、22aを中心に、各係止部材21、22の各係止部21b、22bを第1鉄筋RB1側に向けて回動させる。前述したように、各係止部21b、22bと各中間部21c、22cの境界部分(各くびれ部CS1、CS2)の幅W21、W22は第1鉄筋RB1の直径よりも狭いため、各係止部材21、22の回動は各くびれ部CS1、CS2が第1鉄筋RB1の上に載った位置で停止する。この停止位置から各係止部21b、22bを第1鉄筋RB1側に向けて押し込むと、各くびれ部CS1、CS2が第1鉄筋RB1の外周面に倣って変形し、第1鉄筋RB1が各係止部CS1、CS2の内周側に位置付けられる。この状態では、各くびれ部CS1、CS2が弾性によって元の位置に戻り、第1鉄筋RB1が各係止部CS1、CS2から容易に離脱しないように係止される。
【0027】
以上の手順によって、鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持が終了する。鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持状態では、板バネ部13によって弾性付勢された各加圧板11、12が挟圧空間SP内の第2鉄筋RB2を挟圧保持して各嵌合凹所14、16内の第1鉄筋RB1に圧接させ、且つ各係止部材21、22が第1鉄筋RB1を係止していることから、各加圧板11、12と各係止部材21、22との協働によって第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2の保持力を高めることができる。
なお、鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持状態を解くときには、上述した取り付け手順の逆の手順を行えばよい。
【0028】
<変形例について>
鉄筋保持具1が保持する鉄筋に関し、前述の実施形態では、鉄筋コンクリート構造の芯材として用いられている鉄筋を例示したが、この鉄筋に限定されない。すなわち、交差された状態で挟圧保持される2本の鉄筋であればよい。
【0029】
各係止部材21、22に関し、前述の実施形態では、先端部が第1鉄筋RB1を内周側空所に係止可能な形状に折り返された鋼製線材によって作製されたものを例示したが、この形状に限定されない。すなわち、第1鉄筋RB1を係止可能な形状に作製されていればよい。
【0030】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
〈第一の実施態様〉
本態様は、第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2とを交差させた状態で挟圧保持する鉄筋保持具1であって、互いの先端縁11a、12aを近接、又は当接させると共に、各先端縁11a、12aと反対側の各他端縁11b、12bに向かう程離間距離が漸増するように配置された第1加圧板11、及び第2加圧板12と、各加圧板11、12を、それぞれの先端縁11a、12aが互いに近接、又は当接した閉位置を維持するように弾性付勢すると共に、該弾性付勢力に抗して開放させる力が作用した時に閉位置から拡開することを許容するように保持する板バネ部13(弾性付勢部材)と、各加圧板11、12の各先端縁11a、12a寄りの位置に設けた各軸支部15、17により各加圧板11、12の板面と直交する平面と並行な軌道に沿って夫々回動自在に軸支される第1鉄筋RB1係止用の第1係止部材21、及び第2係止部材22と、を備え、各加圧板11、12の各先端縁11a、12aの中央部には、各他端縁11b、12bに向けて切欠き形成され、且つ第1鉄筋RB1を同時に嵌合支持可能な第1嵌合凹所14、及び第2嵌合凹所16が夫々設けられ、各嵌合凹所14、16により嵌合支持された第1鉄筋RB1と、各加圧板11、12の各先端縁11a、12aとの間の挟圧空間SP内には、第1鉄筋RB1と交差した姿勢で、且つ各加圧板11、12を拡開させながら第2鉄筋RB2が嵌合可能であり、各嵌合凹所14、16内に第1鉄筋RB1が跨がって挿通され、且つ挟圧空間SP内に第2鉄筋RB2が挟圧保持された状態において、各係止部材21、22は第1鉄筋RB1を係止することを特徴とする。
本態様に係る鉄筋保持具1によれば、板バネ部13によって弾性付勢された各加圧板11、12が挟圧空間SP内の第2鉄筋RB2を挟圧保持して各嵌合凹所14、16内の第1鉄筋RB1に圧接させ、且つ各係止部材21、22が第1鉄筋RB1を係止していることから、各加圧板11、12と各係止部材21、22との協働によって第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2の保持力を高めることができる。
【0031】
〈第二の実施態様〉
本態様による鉄筋保持具1において、各係止部材21、22は、各先端部(各係止部21b、22b)が第1鉄筋RB1を内周側空所に係止可能な形状に折り返された鋼製線材によって作製されていることを特徴とする。
本態様に係る鉄筋保持部によれば、各係止部材21、22を容易に作製することができる。
【0032】
〈第三の実施態様〉
本態様による鉄筋保持具1において、各係止部材21、22は、各先端部(各係止部21b、22b)に第1鉄筋RB1の直径よりも幅が狭いくびれ部(各くびれ部CS1、CS2)を有することを特徴とする。
本態様に係る鉄筋保持部によれば、くびれ部によって第1鉄筋RB1の係止部21bからの脱落を抑制できる。
【符号の説明】
【0033】
1…鉄筋保持具、10…本体部、11…第1加圧板、11a…第1加圧板の先端縁、11b…第1加圧板の基端縁、12…第2加圧板、12a…第2加圧板の先端縁、12b…第2加圧板の基端縁、13…板バネ部、14…第1嵌合凹所、15…第1軸支部、16…第2嵌合凹所、17…第2軸支部、20…係止部材、21…第1係止部材、21a…第1係止部材の基端、21b…第1係止部材の係止部、21c…第1係止部材の中間部、22…第2係止部材、22a…第2係止部材の基端、22b…第2係止部材の係止部、22c…第2係止部材の中間部、100…鉄筋コンクリート構造の建物、110…柱、120…梁、130…スラブ、140…壁、SP…挟圧空間、CS1…第1係止部材のくびれ部、CS2…第2係止部材のくびれ部
図1
図2
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図6
図7