(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022163934
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】鉄筋保持具
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
E04C5/18 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069089
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(71)【出願人】
【識別番号】518082507
【氏名又は名称】株式会社サイエンス構造
(71)【出願人】
【識別番号】502306903
【氏名又は名称】八潮建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治
(72)【発明者】
【氏名】海藤 靖子
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昇
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕樹
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
2E164BA33
2E164BA45
2E164BA48
(57)【要約】
【課題】交差する2本の鉄筋を保持する鉄筋保持具1において、各鉄筋RB1、RB2の保持力を高める。
【解決手段】鉄筋保持具1は、金属板により構成され、該金属板の一端寄りの部分を湾曲させることにより形成されて第1鉄筋RB1を保持可能な保持部11cを有する保持片11と、保持片11の先端縁11aから基端縁11bに向けて、第2鉄筋RB2が嵌合可能な幅を有し、且つ保持片11の全長よりも短い長さで切り欠いた嵌合凹所12と、を備え、保持部11cにより保持された第1鉄筋RB1は、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に対して圧接されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鉄筋と第2鉄筋とを交差させた状態で保持する鉄筋保持具であって、
金属板により構成され、該金属板の一端寄りの部分を湾曲させることにより形成されて前記第1鉄筋を保持可能な保持部を有する保持片と、
前記保持片の一端縁から他端縁に向けて切欠き形成され、前記保持片の全長よりも短い長さを有し、且つ、前記第2鉄筋が嵌合可能な幅を有した嵌合凹所と、
を備え、
前記保持部により保持された前記第1鉄筋は、前記嵌合凹所内に嵌合保持された前記第2鉄筋に対して圧接されることを特徴とする鉄筋保持具。
【請求項2】
前記保持片と連続して設けられ、前記保持片の基端縁において折り返された折り返し片を備え、
前記折り返し片における前記保持片とは反対側の端縁は、前記嵌合凹所に嵌合保持された前記第2鉄筋と当接可能であることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋保持具。
【請求項3】
前記折り返し片と連続して設けられ、且つ前記折り返し片における前記保持片とは反対側の端縁において前記保持片に向けて屈曲された屈曲片を備え、
前記屈曲片における前記第2鉄筋と対向する位置には、前記第2鉄筋の一部が嵌合可能な凹所が切り欠かれていることを特徴とする請求項2に記載の鉄筋保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造は、引っ張りに弱いコンクリートを補強するために芯材に鉄筋を用いた構造である。鉄筋コンクリート構造では、芯材として例えば主筋とせん断補強筋(帯筋、あばら筋)とを格子状に組んだものや鉄筋を格子状に組んだものが用いられている。
コンクリートの打設時において各鉄筋が所定の位置から大きくずれてしまうと設計上の強度が得られなくなる恐れがあるため、鉄筋同士が交差している箇所は互いに結束されている。鉄筋同士の結束には例えば結束用の針金(番線)が用いられるが、針金を用いた結束は手間が掛かり、熟練を要する。
【0003】
鉄筋同士の結束作業を簡易化するため、例えば、特許文献1には、第1鉄筋と第1鉄筋の下側に配置された第2鉄筋とを交差した状態で保持する鉄筋結束具であって、長方形板状の上面部と、上面部が備える一対の長辺から下向きに曲折した一対の側板と、各側板の下縁略中央から上向きに第1鉄筋が嵌合可能な幅で、且つ各側板の全長よりも短い長さで切り欠いた嵌合凹所と、を備えた鉄筋結束具が記載されている。
この鉄筋結束具では、嵌合凹所に嵌合保持された第1鉄筋の下側に第2鉄筋を交差状態配置し、且つ各側板の下縁同士の間隔(開口部の大きさ)を第2鉄筋の直径よりも狭くすることにより、第2鉄筋を上面部、及び各側板の弾発力によって保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された鉄筋結束具では、各側板の弾発力によって鉄筋を保持する構成であり、且つ各側板の下縁同士の間隔が空いていたため、鉄筋結束具内の各鉄筋に対して下向きの力が加わったときに、各鉄筋が鉄筋結束具から外れてしまう恐れがあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1鉄筋、及び第2鉄筋の保持力を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、第1鉄筋と第2鉄筋とを交差させた状態で保持する鉄筋保持具であって、金属板により構成され、該金属板の一端寄りの部分を湾曲させることにより形成されて前記第1鉄筋を保持可能な保持部を有する保持片と、前記保持片の一端縁から他端縁に向けて切欠き形成され、前記保持片の全長よりも短い長さを有し、且つ、前記第2鉄筋が嵌合可能な幅を有した嵌合凹所と、を備え、前記保持部により保持された前記第1鉄筋は、前記嵌合凹所内に嵌合保持された前記第2鉄筋に対して圧接されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1鉄筋、及び第2鉄筋の保持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の鉄筋保持具によって第1、第2鉄筋を保持した状態を説明する斜視図である。
【
図2】鉄筋コンクリート構造の建物における柱、梁、スラブ、及び壁を説明する断面図である。
【
図3】第1実施形態の鉄筋保持具を説明する図であり、(a)は鉄筋保持具の正面図、(b)は鉄筋保持具の左側面図、(c)は鉄筋保持具の右側面図、(d)は鉄筋保持具の背面図、(e)は鉄筋保持具の平面図、(f)は鉄筋保持具の底面図である。
【
図4】第1実施形態の鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は取り付け前の状態を示す左側面図、(b)は取り付け前の状態を示す正面図である。
【
図5】第1実施形態の鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は第2鉄筋を嵌合凹所内に嵌合した状態を示す左側面図、(b)は第2鉄筋を嵌合凹所内に嵌合した状態を示す正面図である。
【
図6】第1実施形態の鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は第1鉄筋を保持部内に保持した状態を示す左側面図、(b)は第1鉄筋を保持部内に保持した状態を示す正面図である。
【
図7】第2実施形態の鉄筋保持具を説明する図であり、(a)は鉄筋保持具の正面図、(b)は鉄筋保持具の左側面図、(c)は鉄筋保持具の平面図である。
【
図8】第2実施形態の鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は取り付け前の状態を示す左側面図、(b)は取り付け前の状態を示す正面図である。
【
図9】第2実施形態の鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は第1鉄筋を嵌合凹所内に嵌合した状態を示す左側面図、(b)は第1鉄筋を嵌合凹所内に嵌合した状態を示す正面図である。
【
図10】第2実施形態の鉄筋保持具の取り付け手順を説明する図であり、(a)は第2鉄筋を保持部内に保持した状態を示す左側面図、(b)は第2鉄筋を保持部内に保持した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0010】
<鉄筋保持具1の概要>
最初に鉄筋保持具1の概要について説明する。
図1は本実施形態の鉄筋保持具1によって第1、第2鉄筋RB1、RB2を保持した状態を説明する斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の鉄筋保持具1は、互いに交差した第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2とを交差箇所において圧接状態で保持する器具である。
【0011】
この鉄筋保持具1は、金属板により構成され、該金属板の一端寄りの部分を湾曲させることにより形成されて第1鉄筋RB1を保持可能な保持部11cを備えた保持片11と、保持片11の先端縁(一端縁)11aから基端縁(他端縁)11bに向けて、第2鉄筋RB2が嵌合可能な幅を有し、且つ保持片11の全長よりも短い長さで切り欠いた嵌合凹所12と、を備えており、保持部11cにより保持された第1鉄筋RB1は、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に対して圧接されることを特徴としている。
【0012】
本実施形態の鉄筋保持具1によれば、嵌合凹所12内に第2鉄筋RB2を嵌合した後、湾曲形成された保持部11cに対して第1鉄筋RB1を保持させることにより、第2鉄筋RB2に対して第1鉄筋RB1を圧接させているため、各鉄筋RB1、RB2に外力が加わっても保持部11cの弾性力によって各鉄筋RB1、RB2の圧接状態が維持される。
従って、下端に開口部を備えた従来技術と比較して、各鉄筋RB1、RB2の保持力を高めることができる。
【0013】
<鉄筋保持具1の使用対象について>
鉄筋保持具1の詳細な説明に先立って、鉄筋保持具1の使用対象、具体的には鉄筋コンクリート構造の建物100について説明する。
図2は鉄筋コンクリート構造の建物100における柱100、梁120、スラブ130、及び壁140を説明する断面図である。
前述したように、鉄筋保持具1は、2本の鉄筋RB1、RB2を交差させた状態で保持する器具である。
図2に示す鉄筋コンクリート構造の建物100では、引っ張りに弱いコンクリートを補強するため、芯材111、121、131、141として鉄筋を用いている。例えば、柱110や梁120では、柱110や梁120の長手方向に沿って複数本の主筋112、122を配設し、主筋112、122と交差する方向にせん断補強筋(柱110内の帯筋113、及び梁120内のあばら筋123)を配設している。また、スラブ130や壁140では、複数本の鉄筋132、133、142、143を格子状に組んだものを芯材131、141として用いている。
【0014】
なお、本実施形態において、主筋112、122、及び鉄筋132、142が第1鉄筋RB1に対応し、帯筋113、あばら筋123、及び鉄筋133、143が第2鉄筋RB2に対応する。
鉄筋コンクリート構造の建物100を構築するときには、芯材111、121、131、141の周囲に型枠を設置した後、型枠内に硬化前のコンクリートを打設し、コンクリートの硬化後に型枠を取り外す。コンクリートの打設前に鉄筋同士が交差している箇所に鉄筋保持具1を装着することにより、コンクリートの打設中において各鉄筋RB1、RB2の位置がずれてしまう不都合を抑制している。
【0015】
<第1実施形態の鉄筋保持具1の構造について>
次に、第1実施形態の鉄筋保持具1の構造について説明する。
図3(a)は鉄筋保持具1の正面図、
図3(b)は鉄筋保持具1の左側面図、
図3(c)は鉄筋保持具1の右側面図、
図3(d)は鉄筋保持具1の背面図、
図3(e)は鉄筋保持具1の平面図、
図3(f)は鉄筋保持具1の底面図である。
なお、以下の説明において、各部の寸法は例示であり、その寸法に限定されない。
【0016】
図3に示す鉄筋保持具1は、弾性を有した一枚の四角形状の金属板から作製されている。例えば、本実施形態では、左右方向の幅Wが約50mm、長さが約70mm、厚さが約0.7mmの弾性を有したステンレス鋼板から作製されている。
鉄筋保持具1は、第1鉄筋RB1を保持可能な保持部11cを有する保持片11を備えている。保持部11cは、保持片11における一端縁11a寄りの部分を、第1鉄筋RB1の外周に整合した曲率で湾曲させることにより形成されている。本実施形態において、保持部11cの長さL1は約15mmである。
本実施形態において、保持片11は、湾曲形状の保持部11cと、保持部11cよりも先端側に位置した平板形状の先端部11dと、保持部11cよりも基端側に位置した平板形状の基端部11eと、を備えている。先端部11dの長さL2は約7mm、基端部11eの長さL3は約18mmである。
【0017】
保持片11には、第2鉄筋RB2が嵌合される嵌合凹所12が形成されている。嵌合凹所12は、保持片11の先端縁(一端縁)11aから基端縁(他端縁)11bに向けて、第2鉄筋RB2が嵌合可能な幅を有し、且つ保持片11の全長よりも短い長さで切り欠くことによって形成されている。嵌合凹所12の幅は、第2鉄筋RB2の直径と同じか僅かに大きく定められており、本実施形態では約10mmである。嵌合凹所12の内奥部は、第1鉄筋RB1の外周に整合した半円形状をしており、嵌合凹所12の内奥端から保持片11の他端縁までの距離L4は約8mmである。
保持片11の先端縁11aから連続して第1屈曲片13が形成されている。第1屈曲片13は、嵌合凹所12の左右両側において、金属板を保持部11cとは反対の外側に屈曲させることによって形成されている。本実施形態において、第1屈曲片13は保持片11の先端部11dに対して略90度の角度で屈曲されており、高さH1は約4mmである。第1屈曲片13を設けることにより、保持片11の先端縁11aにおける強度を向上させることができる。
【0018】
鉄筋保持具1は、保持片11の基端縁11bにおいて折り返された折り返し片21を備えている。折り返し片21は平板形状であり、その長さL5は約22mmである。また、折り返し片21と保持片11の基端部11eとの間の角度θは約50度である。
折り返し片21において、保持片11側の先端縁21aとは反対側の基端縁21bには、当該基端縁21bから連続して第2屈曲片22を設けている。第2屈曲片22は、金属板を保持片11側(内側)に向けて屈曲させることにより形成されている。第2屈曲片22の左右中央の位置、言い換えれば嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2と対向する位置には、第2鉄筋RB2の外周面と整合した湾曲形状の凹所23を切り欠き形成している。
後述するように、凹所23には、鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持状態において、第2鉄筋RB2の一部が嵌合保持される。これにより、鉄筋保持具1は嵌合凹所12と凹所23の2箇所で第2鉄筋RB2を保持することになり、保持状態における第2鉄筋RB2の揺動を抑制できる。
【0019】
本実施形態において、第2屈曲片22は折り返し片21に対して略90度の角度で屈曲されており、高さH2は約4mmである。また、凹所23は第2鉄筋RB2の外表面に整合した湾曲形状に形成されている。
なお、本実施形態では第2屈曲片22に、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2の一部が嵌合する凹所23を設けたが、この構成に限定されない。例えば、第2屈曲片22を設けずに、折り返し片21の基端縁21bを第2鉄筋RB2に当接させてもよい。この構成では、折り返し片21の基端縁21bが第2鉄筋RB2に当接されているので第2鉄筋RB2の位置を規制でき、保持状態における第2鉄筋RB2の揺動を抑制できる。
【0020】
<鉄筋保持具1の取り付け手順について>
次に、第1実施形態の鉄筋保持具1の取り付け手順について説明する。
図4(a)(b)は取り付け前の状態を示す図、
図5(a)(b)は第2鉄筋RB2を嵌合凹所12内に嵌合した状態を示す図、
図6(a)(b)は第1鉄筋RB1を保持部11c内に保持した状態を示す図である。
【0021】
図4(a)(b)に示すように、鉄筋保持具1を第1鉄筋RB1及び第2鉄筋RB2に取り付けるときには、保持片11の先端縁11aを各鉄筋RB1、RB2側に向け、さらに嵌合凹所12内に第2鉄筋RB2が嵌合されるように鉄筋保持具1の向きを調整し、鉄筋保持具1を各鉄筋RB1、RB2に近づける。
図5(a)(b)に示すように、嵌合凹所12の内奥まで第2鉄筋RB2を嵌合し、その後、保持片11の先端縁11aを第1鉄筋RB1に近接させる。
図5(a)(b)の状態から保持片11の保持部11cを外側から第1鉄筋RB1に向けて押圧する。押圧によって保持部11cが拡開し、保持片11の先端縁11aは第1鉄筋RB1の外表面に沿って相対移動する。その後、保持部11c内に第1鉄筋RB1が保持される。
【0022】
図6(a)(b)に示すように、保持部11c内に第1鉄筋RB1を保持させると、第1鉄筋RB1は保持部11cや先端部11dの弾性によって、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に圧接される。また、保持片11の先端縁11aと第2鉄筋RB2との間隔S1が第1鉄筋RB1の直径よりも狭く、先端縁11aの強度が第1屈曲片13によって高められているため、第1鉄筋RB1は保持部11cから抜け落ち難くなっている。
さらに、保持部11c内に第1鉄筋RB1を保持させると、第2屈曲片22に形成した凹所23に第2鉄筋RB2の一部が嵌合する。鉄筋保持具1は、嵌合凹所12と凹所23の2箇所で第2鉄筋RB2を保持するため、第2鉄筋RB2の揺動(詳しくは第1鉄筋RB1の長手方向に沿った方向の揺動)を抑制することができる。
【0023】
以上の手順によって、鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持が終了する。鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持状態では、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に対し、保持片11の弾性力によって第1鉄筋RB1を圧接させているため、各鉄筋RB1、RB2に外力が加わっても第1鉄筋RB1が第2鉄筋RB2に圧接されている状態が維持される。従って、下端に開口部を備えた従来技術と比較して、各鉄筋RB1、RB2の保持力を高めることができる。
なお、鉄筋保持具1による各鉄筋RB1、RB2の保持状態を解くときには、上述した取り付け手順の逆の手順を行えばよい。
【0024】
<第2実施形態の鉄筋保持具1Aについて>
次に、第2実施形態の鉄筋保持具1Aの構造について説明する。
図7(a)は鉄筋保持具1Aの正面図、
図7(b)は鉄筋保持具1Aの左側面図、
図7(c)は鉄筋保持具1Aの平面図、
図8(a)(b)は取り付け前の状態を示す図、
図9(a)(b)は第2鉄筋RB2を嵌合凹所12内に嵌合した状態を示す図、
図10(a)(b)は第1鉄筋RB1を保持部11c内に保持した状態を示す図である。
【0025】
図7に示す第2実施形態の鉄筋保持具1Aは、
図3にて説明した第1実施形態の鉄筋保持具1から折り返し片21と第2屈曲片22とをなくした点が相違し、残りの部分は鉄筋保持具1と同じ構成である。
このため、第2実施形態の鉄筋保持具1Aに関しては、第1実施形態の鉄筋保持具1と同じ部分について同じ符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0026】
次に、第2実施形態の鉄筋保持具1Aの取り付け手順について説明する。第2実施形態の鉄筋保持具1Aも、第1実施形態の鉄筋保持具1と同じ手順で各鉄筋RB1、RB2に取り付けることができる。
図8(a)(b)に示すように、鉄筋保持具1Aを各鉄筋RB1、RB2に取り付けるときには、保持片11の先端縁11aを各鉄筋RB1、RB2側に向け、さらに嵌合凹所12内に第2鉄筋RB2が嵌合されるように鉄筋保持具1Aの向きを調整し、鉄筋保持具1Aを各鉄筋RB1、RB2に近づける。
図9(a)(b)に示すように、嵌合凹所12の内奥まで第2鉄筋RB2を嵌合し、その後、保持片11の先端縁11aを第1鉄筋RB1に近接させる。
図9(a)(b)の状態から保持片11の保持部11cを外側から第1鉄筋RB1に向けて押圧する。押圧によって保持部11cが拡開し、保持片11の先端縁11aは第1鉄筋RB1の外表面に沿って相対移動する。その後、保持部11c内に第1鉄筋RB1が保持される。
図10(a)(b)に示すように、保持部11c内に第1鉄筋RB1を保持させると、第1鉄筋RB1は保持部11cや先端部11dの弾性によって、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に圧接される。また、保持片11の先端縁11aと第2鉄筋RB2との間隔が第1鉄筋RB1の直径よりも狭く、先端縁の強度が第1屈曲片13によって高められているため、第1鉄筋RB1は保持部11cから抜け落ち難くなっている。
【0027】
以上の手順によって、鉄筋保持具1Aによる各鉄筋RB1、RB2の保持が終了する。鉄筋保持具1Aによる各鉄筋RB1、RB2の保持状態では、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に対し、保持片11の弾性力によって第1鉄筋RB1を圧接させているため、各鉄筋RB1、RB2の保持力を高めることができる。
【0028】
<変形例について>
鉄筋保持具1、1Aを構成する金属板として、前述の各実施形態ではステンレス鋼板を例示したが、弾性を有する金属板であればステンレス鋼板以外の金属板を用いることができる。
鉄筋保持具1、1Aが保持する鉄筋に関し、前述の各実施形態では、鉄筋コンクリート構造の芯材として用いられている鉄筋を例示したが、この鉄筋に限定されない。すなわち、交差された状態で保持される2本の鉄筋であればよい。
【0029】
〔本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ〕
〈第一の実施態様〉
本態様は、第1鉄筋RB1と第2鉄筋RB2とを交差させた状態で保持する鉄筋保持具1、1Aであって、金属板により構成され、該金属板の一端寄りの部分を湾曲させることにより形成されて第1鉄筋RB1を保持可能な保持部11cを有する保持片11と、保持片11の先端縁11a(一端縁)から基端縁11b(他端縁)に向けて切欠き形成され、保持片11の全長よりも短い長さを有し、且つ、第2鉄筋RB2が嵌合可能な幅を有した嵌合凹所12と、を備え、保持部11cにより保持された第1鉄筋RB1は、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に対して圧接されることを特徴とする。
本態様に係る鉄筋保持具1、1Aによれば、各鉄筋RB1、RB2の保持状態において、嵌合凹所12内に嵌合保持された第2鉄筋RB2に対し、保持片11の弾性力によって第1鉄筋RB1を圧接させているため、各鉄筋RB1、RB2の保持力を高めることができる。
【0030】
〈第二の実施態様〉
本態様による鉄筋保持具1は、保持片11と連続して設けられ、保持片11の基端縁11bにおいて折り返された折り返し片21を備え、折り返し片21における保持片11とは反対側の基端縁21bは、嵌合凹所12に嵌合保持された第2鉄筋RB2と当接可能であることを特徴とする。
本態様に係る鉄筋保持部11cによれば、嵌合凹所12に加えて折り返し片21の基端縁21bでも第2鉄筋RB2の位置を規制できるため、保持状態における第2鉄筋RB2の揺動を抑制できる。
【0031】
〈第三の実施態様〉
本態様による鉄筋保持具1は、折り返し片21と連続して設けられ、且つ折り返し片21における保持片11とは反対側の端縁において保持片11に向けて屈曲された第2屈曲片22を備え、第2屈曲片22における第2鉄筋RB2と対向する位置には、第2鉄筋RB2の一部が嵌合可能な凹所23が切り欠かれていることを特徴とする。
本態様に係る鉄筋保持部11cによれば、嵌合凹所12に加えて第2屈曲片22の凹所23でも第2鉄筋RB2の位置を規制できるため、保持状態における第2鉄筋RB2の揺動を抑制できる。
【符号の説明】
【0032】
1…鉄筋保持具、11…保持片、11a…保持片の先端縁、11b…保持片の基端縁、11c…保持部、11d…先端部、11e…基端部、12…嵌合凹所、13…第1屈曲片、21…折り返し片、21a…折り返し片の先端縁、21b…折り返し片の基端縁、22…第2屈曲片、23…凹所、100…鉄筋コンクリート構造の建物、110…柱、120…梁、130…スラブ、140…壁、第1鉄筋RB1、第2鉄筋RB2