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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164004
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】清掃治具及びカバー部材の清掃方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20221020BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20221020BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
H01L21/78 W
H01L21/78 X
H01L21/68 N
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069195
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 篤
【テーマコード(参考)】
5F047
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F047FA27
5F063AA15
5F063AA29
5F063AA31
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB07
5F063CB24
5F063CB29
5F063CC26
5F063CC32
5F063DD68
5F063DD69
5F063DD75
5F063EE13
5F063EE21
5F063EE34
5F063EE73
5F131AA02
5F131AA04
5F131BA53
5F131BA54
5F131CA12
5F131EC75
(57)【要約】
【課題】フィルム状接着剤が付着したカバー部材を清掃できる清掃治具及びカバー部材の清掃方法を提供すること。
【解決手段】清掃治具1は、環状フレーム2と、環状フレーム2の該開口5に装着された粘着性を有する環状の捕獲シート3と、を含む。清掃治具1は、テープ拡張装置100において、フィルム状接着剤のウェーハからはみ出している部分が破断する際にフィルム状接着剤が飛散するのを抑えるカバー部材130に付着したフィルム状接着剤の破断された破片等の屑300を除去する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインにそって破断起点が形成されたウェーハ又は分割予定ラインに沿って個々のチップに分割されたウェーハの裏面に貼着されたフィルム状接着剤を、環状フレームの開口に装着されたエキスパンドテープに貼着した状態で、該分割予定ラインに沿って破断するテープ拡張装置であって、
該環状フレームを保持するフレーム保持ユニットと、
該フレーム保持ユニットに保持された該環状フレームに装着されている該エキスパンドテープを突き上げて該フィルム状接着剤を破断する突き上げユニットと、
該フィルム状接着剤のウェーハからはみ出している部分が破断する際に該フィルム状接着剤が飛散するのを抑えるカバー部材と、
を備えるテープ拡張装置において、該カバー部材に付着した該フィルム状接着剤の破片を除去する清掃治具であり、
該清掃治具は、
該環状フレームと、
該環状フレームの該開口に装着された粘着性を有する環状の捕獲シートと、
を含むことを特徴とする、清掃治具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃治具を用いたカバー部材の清掃方法であって、
該清掃治具の該環状フレームを該フレーム保持ユニットで保持する保持ステップと、
該突き上げユニットによって、該捕獲シートと、該カバー部材と、を、相互に離間した待機位置と、相互に接触し該カバー部材に付着した該フィルム状接着剤の屑を該捕獲シートが捕獲する接触位置と、の間で相対的に移動させる移動ステップと、
を有することを特徴とするカバー部材の清掃方法。
【請求項3】
該移動ステップでは、該突き上げユニットは、該捕獲シートと、該カバー部材と、を、該待機位置と、該接触位置との間で、速度を変更して、相対的に複数回移動させることを特徴とする請求項2に記載のカバー部材の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ拡張装置のカバー部材に付着する異物を除去する清掃治具及びカバー部材の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に複数のデバイスが形成されたウェーハは、例えば、分割予定ライン(ストリート)に沿って切削、又はレーザー加工されて、各デバイスに対応する複数のデバイスチップへと分割される。このデバイスチップを別のデバイスチップ等と重ねて固定するために、デバイスチップの裏面側に固定用の接着層を設けることがある。裏面側に設けた接着層を固定対象物に密着させて、熱や光などの外的刺激を加えることで、接着層を硬化させてデバイスチップを固定できる。接着層としては、例えば、ダイアタッチフィルム(Die Attach Film、DAF)等と呼ばれるダイボンディング用のフィルム状接着剤が用いられている。
【0003】
このフィルム状接着剤は、ウェーハの裏面全体を覆うサイズに形成されており、分割前のウェーハの裏面に貼着される。ウェーハの裏面にフィルム状接着剤を貼着してから、このフィルム状接着剤をウェーハと共に切断することで、裏面側に接着層を備えたデバイスチップを形成できる。
【0004】
ところで、ウェーハをフルカットしないDBG(Dicing Before Grinding)や、ウェーハの内部にレーザー光線を集光させて多光子吸収による改質層を形成するSDBG(Stealth Dicing Before Grinding)等の加工方法を採用すると、ウェーハと共にフィルム状接着剤を分割する工程が存在しない。そこで、フィルム状接着剤をエキスパンドテープに貼着し、十分に冷却してからエキスパンドテープを拡張するフィルム状接着剤の破断方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この破断方法では、冷却によってフィルム状接着剤の伸縮性を低下させるので、エキスパンドテープを拡張するだけでフィルム状接着剤を容易に破断できる。フィルム状接着剤が拡張される際、ウェーハより外側のフィルム状接着剤の破断屑がウェーハのデバイス(特に電極部)に付着するのを防止するため、フィルム状接着剤を上からカバーするカバー部材をテープ拡張装置に配設することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-027250号公報
【特許文献2】特開2016-012585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、カバー部材に付着したフィルム状接着剤の屑が落下し、ウェーハに付着する恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム状接着剤が付着したカバー部材を清掃できる清掃治具及びカバー部材の清掃方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の清掃治具は、分割予定ラインにそって破断起点が形成されたウェーハ又は分割予定ラインに沿って個々のチップに分割されたウェーハの裏面に貼着されたフィルム状接着剤を、環状フレームの開口に装着されたエキスパンドテープに貼着した状態で、該分割予定ラインに沿って破断するテープ拡張装置であって、該環状フレームを保持するフレーム保持ユニットと、該フレーム保持ユニットに保持された該環状フレームに装着されている該エキスパンドテープを突き上げて該フィルム状接着剤を破断する突き上げユニットと、該フィルム状接着剤のウェーハからはみ出している部分が破断する際に該フィルム状接着剤が飛散するのを抑えるカバー部材と、を備えるテープ拡張装置において、該カバー部材に付着した該フィルム状接着剤の破片を除去する清掃治具であり、該清掃治具は、該環状フレームと、該環状フレームの該開口に装着された粘着性を有する環状の捕獲シートと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のカバー部材の清掃方法は、上記の清掃治具を用いたカバー部材の清掃方法であって、該清掃治具の該環状フレームを該フレーム保持ユニットで保持する保持ステップと、該突き上げユニットによって、該捕獲シートと、該カバー部材と、を、相互に離間した待機位置と、相互に接触し該カバー部材に付着した該フィルム状接着剤の屑を該捕獲シートが捕獲する接触位置と、の間で相対的に移動させる移動ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
該移動ステップでは、該突き上げユニットは、該捕獲シートと、該カバー部材と、を、該待機位置と、該接触位置との間で、速度を変更して、相対的に複数回移動させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、フィルム状接着剤が付着したカバー部材を清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る清掃治具の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の清掃治具の作製を説明する斜視図である。
図3図3は、図1の清掃治具が使用されるテープ拡張装置の構成例を示す分解斜視図である。
図4図4は、図3のテープ拡張装置の拡張対象であるエキスパンドテープが貼着されたウェーハの構成例を示す斜視図である。
図5図5は、図3のテープ拡張装置の要部のエキスパンドテープの拡張前の状態を示す断面図である。
図6図6は、図3のテープ拡張装置の要部のエキスパンドテープの拡張中の状態を示す断面図である。
図7図7は、実施形態に係るカバー部材の清掃方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、実施形態に係るカバー部材の清掃方法を説明する断面図である。
図9図9は、実施形態に係るカバー部材の清掃方法を説明する断面図である。
図10図10は、実施形態に係るカバー部材の清掃方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る清掃治具1を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態に係る清掃治具1の構成例を示す斜視図である。図2は、図1の清掃治具1の作製を説明する斜視図である。実施形態に係る清掃治具1は、図1に示すように、環状フレーム2と、環状の捕獲シート3と、を含む。清掃治具1は、後述するテープ拡張装置100(図3等参照)のカバー部材130(図3等参照)に付着したフィルム状接着剤205(図4参照)の破片を除去するものである。
【0015】
環状フレーム2は、清掃治具1が使用されるテープ拡張装置100が拡張するエキスパンドテープ206(図4参照)にフィルム状接着剤205を介して貼着されるウェーハ200(図4参照)を支持するために使用される環状フレーム207(図4参照)と同形のものであり、図1に示すように、板状に形成されており、中央にウェーハ200の外径よりも大きい内径の円形状の開口5が形成されている。環状フレーム2は、本実施形態では金属製であり、例えば、SUS(Steel Use Stainless)製である。
【0016】
環状の捕獲シート3は、図1に示すように、一方の面に粘着性を有し、環状フレーム2の開口5に装着されている。環状の捕獲シート3は、環状フレーム2の開口5内の外周側の領域を覆う。環状の捕獲シート3は、中央にウェーハ200の外径よりも小さいもしくは同等の内径の円形状の開口6が形成されている。捕獲シート3の開口5より外周側かつ開口6より内周側の環状フレーム2が貼着されている側の上面7は、粘着性を有する面である。環状の捕獲シート3は、本実施形態では、基材層の一方の面に糊層が形成された粘着テープであるが、本発明ではこれに限定されず、エキスパンドテープ206と同様のテープであってもよいし、糊層を有さず、例えばポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、または、ポリスチレン、プロピレンとエチレンとのコポリマーや、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性樹脂の基材層のみで形成され加熱や圧着に応じて密着性を発現させるシートであってもよい。
【0017】
清掃治具1は、環状フレーム2を準備し、環状フレーム2の開口5の全面を覆うように環状フレーム2の一方の面に捕獲シート3を貼着し、貼着した捕獲シート3をカッター19等で円形に切断して開口6を形成することにより、作製される。捕獲シート3を切断する際には、切り抜き治具10が使用される。切り抜き治具10は、図2に示すように、環状フレーム2の開口5に内接する十字形部15と環状の捕獲シート3の開口6に内接する円形部16とが平板状に一体に形成された本体部11と、本体部11の一方の面側に形成された取手部12と、を備える。本体部11は、本実施形態では金属製であり、例えば、SUS製である。本体部11は、取手部12が形成された側とは反対側の面に、特殊コーティングが施されており、この特殊コーティングにより捕獲シート3に貼着されにくくなっている。清掃治具1の開口6は、環状フレーム2に捕獲シート3を貼着した後、図2に示すように、切り抜き治具10を、特殊コーティングを施した側を捕獲シート3側に向けて、十字形部15を環状フレーム2の開口5に内接する位置に配置し、円形部16の外周に沿ってカッター19を移動させて捕獲シート3を切断することにより、形成される。
【0018】
切り抜き治具10は、捕獲シート3の貼着面に接触するため、捕獲シート3との接触面積が小さい方が剥離し易く、捕獲シート3の粘着力を低下させないため好ましく、また環状フレーム2の内径基準で切り抜き位置を位置決めする必要があるため、十字形部15が位置決めの役割を担い、円形部が切り抜きラインを示している。しかし、切り抜き治具の形態はこれに限定されない。例えば、切り抜き治具は、環状の板状物であり、環状の板状物の外径が環状フレーム2の内径と接触し、環状の板状物の内径が環状の捕獲シート3の内径と同形となり、環状の板状物の内径に沿って円形に捕獲シート3を切り抜いても良い。この場合、切り抜き治具の作成は容易になるが、十字形部15と、円形部16とを有する形態よりも捕獲シート3との接着面積は大きくなるので糊層を有さない捕獲シート3を使用する場合に特に好ましい。
【0019】
次に、清掃治具1が使用されるテープ拡張装置100を図面に基づいて説明する。図3は、図1の清掃治具1が使用されるテープ拡張装置100の構成例を示す分解斜視図である。図4は、図3のテープ拡張装置100の拡張対象であるエキスパンドテープ206が貼着されたウェーハ200の構成例を示す斜視図である。図5は、図3のテープ拡張装置100の要部のエキスパンドテープ206の拡張前の状態を示す断面図である。図6は、図3のテープ拡張装置100の要部のエキスパンドテープ206の拡張中の状態を示す断面図である。テープ拡張装置100は、図3図5及び図6に示すように、筐体101と、フレーム保持ユニット110と、突き上げユニット120と、カバー部材130と、制御ユニット140と、を備える。
【0020】
本実施形態において、テープ拡張装置100が拡張するエキスパンドテープ206にフィルム状接着剤205を介して貼着されるウェーハ200は、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素、ガラスなどを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどである。ウェーハ200は、図4に示すように、表面201の格子状に形成される複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0021】
ウェーハ200は、本実施形態では、図4に示すように、さらに分割予定ライン202に沿って回転する切削ブレードにより切削加工されて、もしくはウェーハ200に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射することによりアブレーション加工されて、分割予定ライン202に沿ってデバイス203の仕上がり厚み以上の深さの加工溝210が形成された後に、表面201の裏側の裏面204を回転する研削ホイールにより研削加工されて、個々のデバイス203のチップに分割されている。なお、ウェーハ200は、本発明では加工溝210が形成されて個々のデバイス203のチップに分割されている形態に限定されず、分割予定ライン202に沿ってウェーハ200に対して透過性を有する波長のレーザー光線が照射されて、分割予定ライン202に沿って内部に破断起点である改質層が形成されていてもよい。ここで、改質層は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲のそれとは異なる状態になった領域のことを意味し、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、及びこれらの領域が混在した領域等を例示できる。改質層は、ウェーハ200の他の部分よりも機械的な強度が低い。
【0022】
ウェーハ200は、図4に示すように、裏面204にダイアタッチフィルム(Die Attach Film、DAF)等と呼ばれるダイボンディング用のウェーハ200よりも平面方向の面積が広いフィルム状接着剤205を介して、フィルム状接着剤205よりもさらに平面方向の面積が広いエキスパンドテープ(ダイシングテープ)206が貼着され、エキスパンドテープ206のフィルム状接着剤205が貼着されていない外縁部に環状フレーム207が装着されている。これにより、ウェーハ200は、環状フレーム207の開口208にフィルム状接着剤205を介してエキスパンドテープ206で支持されている。
【0023】
筐体101は、図5及び図6に示すように、フレーム保持ユニット110、突き上げユニット120、カバー部材130及び制御ユニット140を覆う。なお、筐体101は、図3では省略されている。筐体101は、テープ拡張装置100がエキスパンドテープ206を拡張する等の処理を施す処理空間102を内部に形成する。筐体101は、ウェーハ200を処理空間102に搬出入するための不図示の開口と、不図示の開口を開閉する不図示のシャッタとが形成されている。筐体101は、図5及び図6に示すように、処理空間102内に冷気を供給して処理空間102内を例えば0℃以下に冷却する冷気供給部103が形成されている。テープ拡張装置100は、冷気供給部103により冷却した処理空間102内でフィルム状接着剤205の伸縮性を低下させるので、エキスパンドテープ206を拡張するだけでエキスパンドテープ206に貼着されたフィルム状接着剤205を容易に破断できる。
【0024】
フレーム保持ユニット110は、図3図5及び図6に示すように、載置された清掃治具1の環状フレーム2やウェーハ200に貼着された環状フレーム207を下方から上面側で支持するフレーム支持部111と、環状フレーム2,207を上方から下面側で押さえるフレーム押さえ部112と、を有する。
【0025】
フレーム支持部111は、上面側が正方形状であり、中央に、環状フレーム2,207の開口5,208の内径程度の円形状の開口113が形成されている。フレーム押さえ部112は、正方形板状であり、中央に、環状フレーム2,207の開口5,208と同等の内径の円形状の開口114が形成されている。フレーム支持部111及びフレーム押さえ部112は、いずれもSUS等の金属で形成されている。フレーム押さえ部112は、不図示の昇降部により鉛直方向に平行な図3図5及び図6のZ軸方向に昇降自在である。フレーム押さえ部112は、フレーム支持部111の上方に配置されている。フレーム支持部111とフレーム押さえ部112とは、開口113と開口114とが鉛直方向に重なるような位置関係で配置されている。フレーム押さえ部112は、上面の開口114よりも外周の部分に、周方向に等間隔に配置されて、複数(図3に示す例では3本)のピン115が立設されている。
【0026】
フレーム保持ユニット110は、フレーム支持部111の開口113と環状フレーム2,207の開口5,208とが鉛直方向に重なるようにフレーム支持部111に環状フレーム2,207を載置した後に、不図示の昇降部によりフレーム押さえ部112を降下させることにより、図5等に示すように、フレーム支持部111とフレーム押さえ部112とで挟み込んで環状フレーム2,207を保持する。
【0027】
突き上げユニット120は、図5及び図6に示すように、突き上げ部材121と、コロ部材122と、昇降部123と、を有する。突き上げ部材121は、円筒形状であり、フレーム支持部111の開口113の内周かつ同軸に設けられる。コロ部材122は、突き上げ部材121の上端に、回転自在に設けられる。昇降部123は、突き上げ部材121の下方に接続して設けられ、突き上げ部材121を昇降させる。
【0028】
突き上げユニット120は、フレーム保持ユニット110に環状フレーム207が固定された状態で、図6に示すように、昇降部123により突き上げ部材121をフレーム保持ユニット110に対して相対的に鉛直方向(図6のZ軸方向)に沿って上昇させることで、ウェーハ200の外周と環状フレーム207の開口208の内周との間のエキスパンドテープ206の環状領域209を、ウェーハ200の表面201や裏面204と直交する厚み方向(図6のZ軸方向)に突き上げて、エキスパンドテープ206を面方向に拡張する。
【0029】
突き上げユニット120は、このようにエキスパンドテープ206の環状領域209を突き上げて面方向に拡張することにより、ウェーハ200が分割予定ライン202に沿って個々のデバイス203のチップに分割されている場合には、エキスパンドテープ206の特に分割予定ライン202に対応する領域を拡張するため、フィルム状接着剤205を分割予定ライン202に沿って破断する。また、突き上げユニット120は、ウェーハ200が分割予定ライン202に沿って内部に破断起点である改質層が形成されている場合には、ウェーハ200を改質層に沿って各デバイス203に分割するとともにエキスパンドテープ206の特に分割予定ライン202に対応する領域を拡張するため、フィルム状接着剤205を分割予定ライン202に沿って破断する。
【0030】
カバー部材130は、円環形状であり、中央に、フレーム押さえ部112の開口114より小さく、かつ、ウェーハ200の外径よりも少し大きいもしくは同等の内径の円形状の開口131が形成されている。カバー部材130は、平面視で開口131と同心円形状であり、かつ、中心軸方向に沿った断面視で外周に向かうに従って段階的に上方に向かう段差形状が形成されている。カバー部材130に形成されている段差形状において最も内周側で外周側に向かって水平方向から垂直方向に曲がっている角部分132は、外径がフレーム押さえ部112の開口114より少し内周側にくるように形成されている。カバー部材130は、SUS等の金属で形成されており、図5及び図6に示すように、接地されている。
【0031】
カバー部材130は、段差形状の角部分132よりも外周の部分に、周方向に等間隔に配置されて、複数(図3に示す例では3箇所)の貫通孔133が形成されている。カバー部材130は、各貫通孔133にフレーム押さえ部112のピン115がそれぞれ挿入されて、開口131がフレーム押さえ部112の開口114と同軸となる状態に規制されながら、フレーム押さえ部112に対して相対的に鉛直方向に昇降可能に配置される。カバー部材130は、重力によって鉛直方向の下方側に向けて付勢されている。カバー部材130は、貫通孔133よりも外周の部分に、周方向に等間隔に配置されて、複数(図3に示す例では3箇所)のねじ穴134が形成されている。
【0032】
カバー部材130は、フレーム保持ユニット110に環状フレーム207が固定されると、図5及び図6に示すように、開口131より外周側かつ角部分132より内周側の下面135側がフィルム状接着剤205のウェーハ200からはみ出している部分211の上方に位置付けられて、このはみ出し部分211の上方を覆う。このため、カバー部材130は、突き上げユニット120によりエキスパンドテープ206の環状領域209が突き上げられることによりフィルム状接着剤205が破断する際に、下面135がフィルム状接着剤205のはみ出し部分211の上面に接触するとともに、カバー部材130が押し上げられる状態となり、フィルム状接着剤205のはみ出し部分211が飛散するのを抑える。カバー部材130は、これにより、下面135に、飛散するのを抑えたフィルム状接着剤205のはみ出し部分211の破断された破片等の屑300(図8図9及び図10参照)が付着してしまう。
【0033】
カバー部材130の上方には、移動抑制部材136が取り付けられている。移動抑制部材136は、円環形状であり、中央に、ウェーハ200の外径よりも十分に小さい内径の円形状の開口137が形成されている。移動抑制部材136は、ポリエチレンテレフタレート(Poly Ethylene Terephthalate、PET)、ポリカーボネート等の軽量で適度な強度のある樹脂から形成されている。
【0034】
移動抑制部材136は、周方向に等間隔に配置されて、複数(図3に示す例では3箇所)の貫通孔138が形成されている。移動抑制部材136は、貫通孔138よりも外周の部分に、周方向に等間隔に配置されて、複数(図3に示す例では3箇所)の貫通孔139が形成されている。移動抑制部材136は、ねじが各貫通孔139にそれぞれ挿入されてねじ穴134にねじ止めされることにより、カバー部材130に取り付けられて、カバー部材130と一体化されている。移動抑制部材136は、各貫通孔138にフレーム押さえ部112のピン115がそれぞれ挿入されて、カバー部材130とともに、開口137がフレーム押さえ部112の開口114と同軸となる状態に規制されながら、フレーム押さえ部112に対して相対的に鉛直方向に昇降可能に支持される。
【0035】
移動抑制部材136は、中央に形成されている開口137が十分に小さいために昇降移動の際の空気抵抗が大きいので、突き上げユニット120によりエキスパンドテープ206の環状領域209が突き上げられる際の衝撃に伴うカバー部材130の上昇移動を抑制する。
【0036】
制御ユニット140は、テープ拡張装置100の各種構成要素の動作を制御して、エキスパンドテープ206を拡張することによってフィルム状接着剤205を分割する一連の処理や、実施形態に係るカバー部材の清掃方法をテープ拡張装置100に実施させる。制御ユニット140は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット140が含むコンピュータシステムは、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。制御ユニット140の機能は、本実施形態では、制御ユニット140が含むコンピュータシステムの演算処理装置が、制御ユニット140が含むコンピュータシステムの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。制御ユニット140の演算処理装置は、制御ユニット140の記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、テープ拡張装置100を制御するための制御信号を、制御ユニット140の入出力インターフェース装置を介してテープ拡張装置100の各構成要素に出力する。
【0037】
次に、本明細書は、実施形態に係るカバー部材の清掃方法を図面に基づいて説明する。実施形態に係るカバー部材の清掃方法は、実施形態に係る清掃治具1をテープ拡張装置100に使用することにより実施される。図7は、実施形態に係るカバー部材の清掃方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。図8図9及び図10は、それぞれ、実施形態に係るカバー部材の清掃方法を説明する断面図である。実施形態に係るカバー部材の清掃方法は、図7に示すように、保持ステップ1001と、移動ステップ1002と、を有する。
【0038】
保持ステップ1001は、清掃治具1の環状フレーム2をフレーム保持ユニット110で保持するステップである。保持ステップ1001では、具体的には、制御ユニット140は、不図示の搬送ユニットにより清掃治具1を処理空間102内に搬送し、フレーム保持ユニット110のフレーム支持部111の開口113と清掃治具1の環状フレーム2の開口5とが鉛直方向に重なるようにフレーム支持部111に清掃治具1の環状フレーム2を載置した後に、不図示の昇降部によりフレーム保持ユニット110のフレーム押さえ部112を降下させることにより、図8に示すように、フレーム支持部111とフレーム押さえ部112とで挟み込んで清掃治具1の環状フレーム2を保持する。
【0039】
移動ステップ1002は、保持ステップ1001後に、突き上げユニット120によって、清掃治具1の捕獲シート3と、テープ拡張装置100のカバー部材130と、を、相互に離間した待機位置21(図8及び図10参照)と、相互に接触しカバー部材130に付着したフィルム状接着剤205の屑300を捕獲シート3が捕獲する接触位置22(図9参照)と、の間で相対的に移動させるステップである。
【0040】
移動ステップ1002では、具体的には、制御ユニット140は、フレーム保持ユニット110に清掃治具1の環状フレーム2が固定された状態で、図9に示すように、昇降部123により突き上げ部材121をフレーム保持ユニット110に対して相対的に鉛直方向に沿って上昇させることで、清掃治具1の捕獲シート3を清掃治具1の厚み方向(図9のZ軸方向)に突き上げて、捕獲シート3を、捕獲シート3の上面7がカバー部材130の下面135に接触する接触位置22に位置付ける。これにより、カバー部材130の下面135に付着していたフィルム状接着剤205の屑300は、カバー部材130の下面135よりも粘着性を有する捕獲シート3の上面7に捕獲される。
【0041】
移動ステップ1002では、捕獲シート3を接触位置22に位置付けることで捕獲シート3によりカバー部材130の下面135に付着していたフィルム状接着剤205の屑300を捕獲した後、制御ユニット140は、図10に示すように、昇降部123により突き上げ部材121をフレーム保持ユニット110に対して相対的に鉛直方向に沿って降下させることで、捕獲シート3を、捕獲シート3の上面7がカバー部材130の下面135から離間した待機位置21に位置付ける。これにより、捕獲シート3によって捕獲したフィルム状接着剤205の屑300は、カバー部材130の下面135から離間して除去される。このように、清掃治具1は、捕獲シート3でカバー部材130の下面135に付着していたフィルム状接着剤205の屑300を捕獲して除去することにより、カバー部材130の下面135を清掃する。
【0042】
捕獲シート3の開口6は、カバー部材130の開口131よりも内径が小さいもしくは同等である。このため、捕獲シート3の上面7は、カバー部材130の下面135よりも径方向の幅が広いもしくは同等であるので、移動ステップ1002では、カバー部材130の下面135の全面からフィルム状接着剤205の屑300を捕獲して除去することができる。
【0043】
移動ステップ1002では、さらに、制御ユニット140は、突き上げユニット120により、捕獲シート3と、カバー部材130と、を、待機位置21と、接触位置22との間で、捕獲シート3の突き上げ速度及び降下速度を変更して、相対的に複数回移動させることが好ましい。移動ステップ1002では、突き上げユニット120による捕獲シート3の突き上げ速度や降下速度によって捕獲シート3が接触位置22にあるときの捕獲シート3の上面7がカバー部材130の下面135に接触する水平方向の位置が変化するため、捕獲シート3の複数回の移動を経て、カバー部材130の下面135を満遍なく清掃することができる。
【0044】
以上のような構成を有する実施形態に係る清掃治具1及びカバー部材の清掃方法は、清掃治具1の捕獲シート3の上面7がカバー部材130の下面135に密着してカバー部材130の下面135に付着したフィルム状接着剤205の屑300を除去することにより、フィルム状接着剤205が付着したカバー部材130の下面135を清掃できるという作用効果を奏する。
【0045】
また、実施形態に係る清掃治具1及びカバー部材の清掃方法は、テープ拡張装置100のオペレータがカバー部材130を清掃するために冷気供給部103による冷却を停止して処理空間102を長時間開放する必要がないので、効率よくフィルム状接着剤205が付着したカバー部材130の下面135を清掃できる。
【0046】
また、実施形態に係る清掃治具1及びカバー部材の清掃方法は、ウェーハ200とともにエキスパンドテープ206に貼着されて装着される環状フレーム207と同形の環状フレーム2を使用するため、搬送ユニットが搭載されているテープ拡張装置100の場合、環状フレーム207が装着されたウェーハ200の搬送と同じ要領で清掃治具1を自動で搬送し、ウェーハ200に貼着されたエキスパンドテープ206の突き上げと同じ要領で捕獲シート3を自動で突き上げることにより、自動でカバー部材の清掃方法を実施できる。
【0047】
また、実施形態に係る清掃治具1及びカバー部材の清掃方法は、捕獲シート3の中央に開口6が形成されて環状であるので、捕獲シート3が突き上げユニット120による突き上げにより上方向に持ち上がりやすく、よりカバー部材130の下面135に密着して、効率的にカバー部材130の下面135に付着したフィルム状接着剤205の屑300を除去できる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 清掃治具
2,207 環状フレーム
3 捕獲シート
5,6,131,208 開口
21 待機位置
22 接触位置
100 テープ拡張装置
110 フレーム保持ユニット
120 突き上げユニット
130 カバー部材
200 ウェーハ
202 分割予定ライン
205 フィルム状接着剤
206 エキスパンドテープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10