(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164087
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20221020BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20221020BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20221020BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/53
B23K26/10
H01L21/304 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069359
(22)【出願日】2021-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 節男
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA13
4E168CB07
4E168CB22
4E168EA11
4E168HA02
4E168JA12
4E168JA13
5F057AA12
5F057AA19
5F057AA41
5F057BA01
5F057BB09
5F057BC05
5F057BC10
5F057CA02
5F057DA01
5F057DA11
5F057DA19
5F057DA22
5F057DA31
5F057EC23
5F057FA13
5F057GB02
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】SiCインゴットの検査結果の誤りを抑制することができるレーザー加工装置を提供すること。
【解決手段】レーザー加工装置1は、SiCインゴットを保持面11で保持するチャックテーブル10と、レーザー光線の集光点を第1面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置づけてレーザー光線をSiCインゴットに照射し、SiCがSiとCとに分離すると共にc面に沿ってクラックが伸長した剥離層を形成するレーザー光線照射ユニット20と、チャックテーブル10とレーザー光線照射ユニット20とを相対的に移動させる移動ユニット30と、SiCインゴットに対して透過性を有し剥離層で反射する波長の検査光41を照射し、反射した光の強度から剥離層を検査する剥離層検査ユニット40とを有し、保持面11は、検査光41を吸収する色である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCインゴットに剥離層を形成するレーザー加工装置であって、
SiCインゴットを保持面で保持するチャックテーブルと、
SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、SiCインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置づけてレーザー光線をSiCインゴットに照射し、SiCがSiとCとに分離すると共にc面に沿ってクラックが伸長した剥離層を形成する集光器を含むレーザー光線照射ユニットと、
該チャックテーブルと該レーザー光線照射ユニットとを相対的に移動させる移動ユニットと、
SiCインゴットに対して透過性を有し、該剥離層で反射する波長の検査光を照射し、反射した光の強度から該剥離層を検査する剥離層検査ユニットと、を有し、
該チャックテーブルの該保持面は、該検査光を吸収する色であるレーザー加工装置。
【請求項2】
該検査光は、可視光である請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該チャックテーブルの該保持面は、ポーラス板により形成されている請求項1または請求項2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
該ポーラス板は、ガラスポーラスで構成されている請求項3に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置の特にチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、LED、パワーデバイス等のデバイスは、Si(シリコン)やAl2O3(サファイア)、単結晶SiC(炭化ケイ素)を素材としたウエーハの表面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されて形成される。デバイスが形成されたウエーハは、切削装置、レーザー加工装置によって分割予定ラインに加工が施されて個々のデバイスに分割され、分割された各デバイスは、携帯電話やパソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
デバイスが形成されるウエーハは、一般的に円柱形状のインゴットをワイヤーソーで薄く切断することにより生成される。切断されたウエーハの表面および裏面は、研磨することにより鏡面に仕上げられる。しかし、インゴットをワイヤーソーで切断し、切断したウエーハの表面および裏面を研磨すると、インゴットの大部分(70~80%)が捨てられることになり不経済であるという問題がある。特にSiCインゴットにおいては、硬度が高くワイヤーソーでの切断が困難であり相当の時間を要するため生産性が悪いと共に、インゴットの単価が高く効率よくウエーハを生成することに課題を有している。
【0004】
そこで本出願人は、単結晶SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴットの内部に位置づけてSiCインゴットにレーザー光線を照射して切断予定面に剥離層を形成し、剥離層が形成された切断予定面に沿ってSiCインゴットからウエーハを剥離する技術を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、ウエーハの剥離を繰り返すことによってSiCインゴットの高さが減少し切断予定面の結晶構造に変化が生じると、当初の加工条件では切断予定面に沿って適正な剥離層を形成するのが困難になるという問題がある。そこで、レーザー加工中またはレーザー加工後、剥離層に検査光を照射し、その反射光の明るさから剥離層が適切に形成されているかどうかを確認する方法が考案された(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6399913号公報
【特許文献2】特開2020-205312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ただ、特許文献2に示されたウエーハの生成方法は、SiCインゴットが薄くなると特に、チャックテーブル(の保持面)に反射された検査光の影響で、撮影される画像の明るさが増加し、剥離層の検査結果が変わってしまい、各剥離層の検査結果を誤るおそれがあるという課題が有った。
【0008】
本願発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、SiCインゴットの検査結果の誤りを抑制することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、SiCインゴットに剥離層を形成するレーザー加工装置であって、SiCインゴットを保持面で保持するチャックテーブルと、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、SiCインゴットの上面から生成すべきウエーハの厚みに相当する深さに位置づけてレーザー光線をSiCインゴットに照射し、SiCがSiとCとに分離すると共にc面に沿ってクラックが伸長した剥離層を形成する集光器を含むレーザー光線照射ユニットと、該チャックテーブルと該レーザー光線照射ユニットとを相対的に移動させる移動ユニットと、SiCインゴットに対して透過性を有し、該剥離層で反射する波長の検査光を照射し、反射した光の強度から該剥離層を検査する剥離層検査ユニットと、を有し、該チャックテーブルの該保持面は、該検査光を吸収する色であることを特徴とする。
【0010】
前記レーザー加工装置において、該検査光は、可視光でも良い。
【0011】
前記レーザー加工装置において、該チャックテーブルの該保持面は、ポーラス板により形成されても良い。
【0012】
前記レーザー加工装置において、該ポーラス板は、ガラスポーラスで構成されて良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、SiCインゴットの検査結果の誤りを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置の加工対象のSiCインゴットの平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示されたSiCインゴットの側面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示されたSiCインゴットの一部分が剥離されて製造されるウエーハの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示されたレーザー加工装置のチャックテーブルを一部断面で示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示されたレーザー加工装置がSiCインゴットに剥離層を形成する状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示されたレーザー加工装置がSiCインゴットに剥離層を形成する状態の一部を示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図1に示されたレーザー加工装置がチャックテーブルに保持したSiCインゴットに検査用の剥離層を形成する状態を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1に示されたレーザー加工装置がチャックテーブルに保持したSiCインゴットに検査用の剥離層を形成する状態の一部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図1に示されたレーザー加工装置の剥離層検査ユニットがSiCインゴットに形成された検査用の剥離層を撮像する状態を模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図10に示された剥離層検査ユニットが撮像して取得した画像を模式的に示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係るレーザー加工装置の検出ユニットがSiCインゴットのFacet領域を検出する状態を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示されたレーザー加工装置の加工対象のSiCインゴットの平面図である。
図3は、
図2に示されたSiCインゴットの側面図である。
図4は、
図2に示されたSiCインゴットの一部分が剥離されて製造されるウエーハの斜視図である。
図5は、
図1に示されたレーザー加工装置のチャックテーブルを一部断面で示す側面図である。
図6は、
図1に示されたレーザー加工装置がSiCインゴットに剥離層を形成する状態を示す斜視図である。
図7は、
図1に示されたレーザー加工装置がSiCインゴットに剥離層を形成する状態の一部を示す断面図である。
【0017】
(SiCインゴット)
実施形態1に係る
図1に示すレーザー加工装置1は、
図2に示すSiCインゴット200をレーザー加工装置する加工装置である。実施形態1に係るレーザー加工装置1の加工対象である
図2及び
図3に示すSiCインゴット200は、実施形態1では、SiC(炭化ケイ素)からなり、全体として円柱状に形成されている。実施形態1において、SiCインゴット200は、六方晶単結晶SiCインゴットである。
【0018】
SiCインゴット200は、
図2及び
図3に示すように、円形状に形成されかつ上面である第1面201と、第1面201の裏面側の円形状に形成された第2面202と、第1面201の外縁と第2面202の外縁とに連なる周面203を有している。また、SiCインゴット200は、周面203に結晶方位を示す第1オリエンテーションフラット204と、第1オリエンテーションフラット204に直交する第2オリエンテーションフラット205を有している。第1オリエンテーションフラット204の長さ204-1は、第2オリエンテーションフラット205の長さ205-1より長い。
【0019】
また、SiCインゴット200は、第1面201の垂線206に対して第2オリエンテーションフラット205に向かう傾斜方向207にオフ角α傾斜したC軸208とC軸208に直交するc面209を有している。c面209は、SiCインゴット200の第1面201に対してオフ角α傾斜している。C軸208の垂線206からの傾斜方向207は、第2オリエンテーションフラット205の伸長方向に直交し、かつ第1オリエンテーションフラット204と平行である。
【0020】
c面209は、SiCインゴット200中にSiCインゴット200の分子レベルで無数に設定される。実施形態1では、オフ角αは、1°、4°又は6°に設定されているが、本発明では、オフ角αを例えば1°~6°の範囲で自由に設定してSiCインゴット200を製造することができる。
【0021】
また、SiCインゴット200は、第1面201が研削装置により研削加工された後、研磨装置により研磨加工されて、第1面201が鏡面に形成される。SiCインゴット200は、第1面201側の一部分が剥離されて、剥離された一部分が
図4に示すウエーハ220に生成されるものである。また、SiCインゴット200は、直径210が異なる複数の種類のものが存存する。
【0022】
図4に示すウエーハ220は、SiCインゴット200の第1面201を含む一部分がウエーハ220として剥離され、SiCインゴット200から剥離された剥離面221に研削加工、研磨加工等が施されて製造される。ウエーハ220は、SiCインゴット200から剥離された後、表面にデバイスが形成される。実施形態1では、デバイスは、MOSFET(Metal-oxide-semiconductor Field-effect Transistor)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)又はSBD(Schottky Barrier Diode)であるが、本発明では、デバイスは、MOSFET、MEMS及びSBDに限定されない。なお、ウエーハ220のSiCインゴット200と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
図2及び
図3に示すSiCインゴット200は、
図3に示す剥離層211が形成された後、剥離層211を起点に一部分即ち生成すべきウエーハ220が分離、剥離される。剥離層211は、実施形態1に係るレーザー加工装置1により形成される。また、SiCインゴット200は、ウエーハ220が剥離された剥離面212が研削加工、研磨加工により鏡面に形成されて、剥離面212が第1面201に形成され、再度、剥離層211が形成されウエーハ220が剥離される。このように、SiCインゴット200は、ウエーハ220の剥離に伴って厚みが薄くなり、所定の厚みになるまで剥離層211が形成されてウエーハ220が剥離される。
【0024】
(レーザー加工装置)
実施形態1に係るレーザー加工装置1は、SiCインゴット200に剥離層211を形成する加工装置である。レーザー加工装置1は、
図1に示すように、SiCインゴット200を保持するチャックテーブル10と、レーザー光線照射ユニット20と、移動ユニット30と、チャックテーブル10に保持されたSiCインゴット200に検査光41(
図1に示し、実施形態1では、可視光)を照射して剥離層211を検査する剥離層検査ユニット40と、制御ユニット100とを有する。
【0025】
チャックテーブル10は、移動ユニット30の回転移動ユニット33に設置され、SiCインゴット200を水平方向と平行な保持面11で保持するものである。チャックテーブル10は、
図1及び
図5に示すように、SiCインゴット200を吸引保持する保持面11を構成する円板状のポーラス板12と、ポーラス板12の外周を囲む基台13とを備える。
【0026】
実施形態1において、基台13は、ステンレス鋼等の金属から構成され、非通気性を有する非多孔質体であるとともに、厚手の円板状に形成されている。基台13は、移動ユニット30の回転移動ユニット33上に設置される。基台13は、
図4に示すように、外径がSiCインゴット200よりも大径に形成され、上面131の中央にポーラス板12が取り付けられる凹部132が設けられている。基台13は、凹部132内にポーラス板12が取り付けられると、上面131が保持面11と同一平面上に位置する。
【0027】
凹部132は、平面形状が円形に形成され、外径がSiCインゴット200の外径よりも大きく形成され、基台13と同軸となる位置に配置されている。凹部132は、底面34に同心円状の複数の吸引溝133と吸引溝133同士を連通する接続用吸引溝134が設けられている。これらの吸引溝133,134は、凹部132の底面から凹に形成されている。また、これら吸引溝133,134は、凹部132の底面に開口した連通路135が連通している。
【0028】
連通路135は、エジェクタ等の吸引源14に接続されかつ開閉弁136が設けられた吸引路137と接続している。基台13は、開閉弁136が開いて、吸引路137に吸引源14からの負圧が作用することで、凹部132に嵌合したポーラス板12に吸引源14からの負圧を作用させて、ポーラス板12の保持面11を吸引する。また、基台13は、回転移動ユニット33上に設置されると、吸引路137から分岐し、開閉弁138を設けた分岐吸引路139が底面に対面する。基台13は、開閉弁138が開いて、分岐吸引路139に吸引源14からの負圧が作用することで、底面が回転移動ユニット33に吸引されて、固定される。
【0029】
また、実施形態1では、基台13は、外表面(特に凹部132よりも外周側の外表面)が検査光41を吸収する色15(
図1中の粗な網掛けで示す)である。検査光41を吸収する色15とは、従来から用いられてきたチャックテーブルの外表面の色である白色、茶色及び銀色よりも検査光41の吸収率の高い色である。検査光41を吸収する色15は、無彩色の暗い灰色又は黒を含んだ明度の低い暗い有彩色である所謂暗色であることが望ましく、濃暗色であることが望ましく、黒色であることが望ましい。
【0030】
このように、検査光41を吸収する色15は、暗色、濃暗色及び黒色を含む。実施形態1では、基台13は、外表面(特に凹部132よりも外周側の外表面)が検査光41を吸収する色15である黒色に形成されている。実施形態1では、基台13は、外表面(特に凹部132よりも外周側の外表面)が検査光41を吸収する色15である黒色の塗料が塗布されている。このように、本発明では、基台13は、外表面が暗色、濃暗色又は黒色に形成されているのが望ましい。
【0031】
ポーラス板12は、外径がSiCインゴット200の外径よりも大きくかつ凹部132の内径と等しい円板状の通気性を有する多孔質体である。ポーラス板12は、凹部132内に固定され、下面が図示しない接着剤により基台13の凹部132の底面に固定される。ポーラス板12の上面は、SiCインゴット200を吸引保持する保持面11である。このために、チャックテーブル10の保持面11は、ポーラス板12により形成されている。
【0032】
ポーラス板12は、基台13に固定され、保持面11が研削されて水平方向に平行に平坦に形成される。ポーラス板12の保持面11は、基台13の上面131と同一平面上に位置する。ポーラス板12は、基台13に設けられた連通路135及び吸引路137を介して吸引源14と接続されている。ポーラス板12は、開閉弁136が開いて、吸引源14からの負圧が作用することで、保持面11にSiCインゴット200を吸引保持する。
【0033】
実施形態1において、ポーラス板12は、可視光に対して透明性を有するガラス材料であるソーダガラス(実施形態1では、ソーダ石灰ガラス)からなる複数のガラス粒を互いに連結することで構成されている。各ガラス粒は、球状であり、粒径が概ね揃っている。ガラス粒は、気泡を有していない緻密な粒であることが好ましい。この様なガラス粒は、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)により製造できる。
【0034】
スプレードライヤー(噴霧乾燥装置)は、ガラスの原液を微粒化するためのノズル又はディスクを有する。表面張力等によって球状に微粒化されたガラスの原液を乾燥室内に供給される熱風に曝すことで、微粒化された原液は固化して、球状且つ粒径の揃ったガラス粒となる。
【0035】
実施形態1では、3μm以上4mm以下の粒径を有するガラス粒が用いられている。ガラス粒の粒径は、より望ましくは5μm以上300μm以下であり、更に望ましくは30μm以上200μm以下である。
【0036】
ガラス粒の粒径は、ガウス分布に従って所定のバラつきを有するが、例えば、ガラス粒の粒径が100μm以下の所定の値の場合、標準偏差が5μm以下の粒子群を用いる。また、例えば、ガラス粒の粒径が101μm以上300μm以下の所定の値の場合、標準偏差が10μm以下の粒子群を用いる。
【0037】
ポーラス板12は、まず、円盤状の凹部を有する型枠(不図示)中に複数のガラス粒を入れ、蓋板(不図示)で封止する。そして、型枠、蓋板及びガラス粒を焼成炉に入れて、600℃以上1300℃以下の所定の温度で焼成されて、製造される。
【0038】
実施形態1では、700℃以上800℃以下の所定の温度で、約30分以上約3時間以下の所定の時間、ガラス粒を焼成する。焼成により、ガラス粒同士の隙間に気孔を残しつつ、互いに隣接する球状のガラス粒が部分的に接続された、ポーラス板12が製造される。こうして、ポーラス板12は、ガラスポーラスで構成されている。
【0039】
ガラス粒を焼成する時間が長いほど、ガラス材料が流動的になる時間が長くなるので、ガラス粒同士の接触面積が増加し、気孔率は低くなる。例えば、焼成時間が3時間のポーラス板12の気孔率は、焼成時間が30分のポーラス板12の気孔率よりも低い。
【0040】
実施形態1において、ポーラス板12の気孔率は、体積比で5%以上40%以下である。気孔率は、焼成時間に加えて、焼成時の温度、圧力、ガラス粒に付加するフリットの量等によっても、適宜調節できる。なお、フリットは、ガラス粒と同じガラス材料で形成された、ガラス粒よりも小径の粉末である。
【0041】
ポーラス板12は、凹部132に取り付けられて、基台13が回転移動ユニット33に固定された状態で、吸引源14の吸引する圧力が-92.7kPa(ゲージ圧)である場合、保持面11になにも載置されないと吸引路137内の圧力が-65kPa(ゲージ圧)以上でかつ-50kPa(ゲージ圧)以下となる。また、ポーラス板12は、凹部132に取り付けられて、基台13が回転移動ユニット33に固定された状態で、吸引源14の吸引する圧力が-92.7kPa(ゲージ圧)である場合、保持面11に直径210が4inchのSiCインゴット200が載置されると吸引路137内の圧力が-84.2kPa(ゲージ圧)となり、保持面11に直径210が6inchのSiCインゴット200が載置されると吸引路137内の圧力が-87.9kPa(ゲージ圧)となり、保持面11に直径210が8inchのSiCインゴット200が載置されると吸引路137内の圧力が-91.5kPa(ゲージ圧)となる。
【0042】
また、実施形態1において、ポーラス板12は、少なくとも保持面11が、基台13同様に、検査光41を吸収する色15(
図1中の密な網掛けで示す)である。実施形態1において、ポーラス板12は、カーボン粉等の黒色の顔料又は鉱物の粉がガラス粒等に混入されて、全体が検査光41を吸収する色15である黒色に形成されている。また、本発明では、ポーラス板12は、基台13同様に、少なくとも保持面11に検査光41を吸収する色15である黒色の塗料が塗布されても良い。
【0043】
なお、実施形態1では、検査光41を吸収する色15は、黒色であるが、本発明では、従来から用いられてきたチャックテーブルの外表面の色である白色、茶色及び銀色よりも検査光41の吸収率の高い色であれば、黒色に限定されない。このように、本発明では、チャックテーブル10の保持面11は、暗色、濃暗色又は黒色に形成されているのが望ましい。なお、本発明では、基台13の色15とポーラス板12の色15は、同じ色でも良く、異なる色でも良い。
【0044】
実施形態1では、ポーラス板12は、複数のガラス粒を互いに連結することで構成された多孔質体であるが、本発明では、例えばアルミナ等の砥粒である骨材と、骨材同士を固定するボンドとを備え、骨材とボンドの隙間に気孔を形成したポーラスセラミックス等の多孔質体であっても良い。
【0045】
前述した構成のチャックテーブル10は、吸引源14により吸引されることで、回転移動ユニット33に固定されるとともに、保持面11上に載置されたSiCインゴット200を吸引保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、SiCインゴット200の第2面202を保持面11に吸引保持する。
【0046】
また、チャックテーブル10は、移動ユニット30の回転移動ユニット33により保持面11に対して直交しかつ鉛直方向と平行なZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。チャックテーブル10は、回転移動ユニット33とともに、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向に移動されかつY軸移動ユニット32により水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動される。チャックテーブル10は、移動ユニット30によりレーザー光線照射ユニット20の下方の加工領域と、レーザー光線照射ユニット20の下方から離れてウエーハ220が搬入、搬出される搬入出領域とに亘って移動される。
【0047】
レーザー光線照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持されたSiCインゴット200に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザー光線21(
図6及び
図7に示す)の集光点22(
図7に示す)を、SiCインゴット200の第1面201から生成すべきウエーハ220の厚み222(
図4に示す)に相当する深さ213に位置付けて、レーザー光線21をSiCインゴット200に照射し、SiCがSiとCとに分離すると共に、c面209に沿ってクラック215が伸長した剥離層211を形成する集光器23を含むものである。
【0048】
なお、SiCインゴット200は、レーザー光線21に対して第2オリエンテーションフラット205に沿って相対的に移動されながら、SiCインゴット200に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザー光線21が照射されると、
図6及び
図7に示すように、パルス状のレーザー光線21の照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルス状のレーザー光線21が前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離する改質部214が、第2オリエンテーションフラット205に沿ってSiCインゴット200の内部に形成されると共に、改質部214からc面209に沿って延びるクラック215が生成される。こうして、レーザー光線照射ユニット20は、SiCインゴット200に対して透過性を有する波長のパルス状のレーザー光線21が照射されると、改質部214と、改質部214からc面209に沿って形成されるクラック215とを含む剥離層211をSiCインゴット200に形成する。
【0049】
実施形態1では、レーザー光線照射ユニット20は、
図1に示すように、装置本体2から立設した立設壁3に支持された支柱4の先端に支持されている。レーザー光線照射ユニット20は、SiCインゴット200を加工するためのパルス状のレーザー光線21を発振する発振器と、チャックテーブル10の保持面11に保持されたSiCインゴット200に発振器から発振されたレーザー光線21を集光して剥離層211を形成する集光器23とを含む。
【0050】
集光器23は、チャックテーブル10の保持面11とZ軸方向に対向する位置に配置された図示しない集光レンズを備えている。集光レンズは、発振器から発振されたレーザー光線21を透過して、レーザー光線21を集光点22に集光する。また、実施形態1では、集光器23は、図示しない集光点移動ユニットによりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0051】
移動ユニット30は、チャックテーブル10とレーザー光線照射ユニット20とをX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向と平行な軸心回りに相対的に移動させるものである。X軸方向及びY軸方向は、保持面11即ち水平方向と平行な方向である。X軸方向は、レーザー加工装置1がSiCインゴット200にレーザー加工を施す際にチャックテーブル10を加工送りする所謂加工送り方向である。Y軸方向は、X軸方向と直交し、レーザー加工装置1がSiCインゴット200にレーザー加工を施す際にチャックテーブル10を割り出し送りする所謂割り出し送り方向である。
【0052】
移動ユニット30は、チャックテーブル10をX軸方向に移動させるX軸移動ユニットであるX軸移動ユニット31と、チャックテーブル10をY軸方向に移動させるY軸移動ユニットであるY軸移動ユニット32と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33とを備える。
【0053】
Y軸移動ユニット32は、チャックテーブル10と、レーザー光線照射ユニット20とを相対的に割り出し送りするユニットである。実施形態1では、Y軸移動ユニット32は、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。Y軸移動ユニット32は、X軸移動ユニット31を支持した移動プレート5をY軸方向に移動自在に支持している。
【0054】
X軸移動ユニット31は、チャックテーブル10と、レーザー光線照射ユニット20とを相対的に加工送りするユニットである。X軸移動ユニット31は、移動プレート5上に設置されている。X軸移動ユニット31は、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット33を支持した第2移動プレート6をX軸方向に移動自在に支持している。
【0055】
X軸移動ユニット31、及びY軸移動ユニット32は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のパルスモータ、移動プレート5,6をX軸方向又はY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0056】
また、レーザー加工装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するための図示しないX軸方向位置検出ユニットと、チャックテーブル10のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、レーザー光線照射ユニット20に含まれる集光レンズのZ軸方向の位置を検出するZ軸方向位置検出ユニットとを備える。各位置検出ユニットは、検出結果を制御ユニット100に出力する。
【0057】
剥離層検査ユニット40は、SiCインゴット200に対して透過性を有し剥離層211で反射する波長の検査光41を、チャックテーブル10に保持されたSiCインゴット200に照射し、反射した光の強度から剥離層211を検査するものである。剥離層検査ユニット40は、チャックテーブル10に保持されたSiCインゴット200に形成された剥離層211に検査光41を照射する発光体42と、剥離層211を撮像するカメラ43とを備える。
【0058】
発光体42が照射した検査光41は、SiCインゴット200の第1面201を透過して剥離層211のクラック215により反射される。また、検査光41は、チャックテーブル10の保持面11からも反射される。検査光41は、SiCインゴット200の厚みが薄くなるのにしたがってチャックテーブル10の保持面11から反射される光の強度が強くなる。
【0059】
カメラ43は、剥離層211及び保持面11から反射された検査光41を撮像するCCD(Charge Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子等の撮像素子を備える。実施形態1では、剥離層検査ユニット40は、支柱4の先端に取り付けられて、レーザー光線照射ユニット20の集光器23の集光レンズとX軸方向に並ぶ位置に配置されている。剥離層検査ユニット40は、SiCインゴット200を撮像して、画像を取得し、取得した制御ユニット100に出力する。
【0060】
なお、実施形態1では、剥離層検査ユニット40が撮像して取得する画像は、検査光41の強度が複数段階の階調(例えば256階調)で規定されたグレースケール画像やカラー画像である。また、実施形態1では、発光体42がSiCインゴット200に照射する検査光41及びカメラ43が撮像する検査光41は、共に、可視光である。
【0061】
制御ユニット100は、レーザー加工装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、ウエーハ220に対する加工動作をレーザー加工装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、レーザー加工装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介してレーザー加工装置1の上述した構成要素に出力して、制御ユニット100の機能を実現する。
【0062】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット110と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0063】
次に、実施形態1に係るレーザー加工装置1の加工動作を説明する。
図8は、
図1に示されたレーザー加工装置がチャックテーブルに保持したSiCインゴットに検査用の剥離層を形成する状態を示す斜視図である。
図9は、
図1に示されたレーザー加工装置がチャックテーブルに保持したSiCインゴットに検査用の剥離層を形成する状態の一部を示す断面図である。
図10は、
図1に示されたレーザー加工装置の剥離層検査ユニットがSiCインゴットに形成された検査用の剥離層を撮像する状態を模式的に示す側面図である。
図11は、
図10に示された剥離層検査ユニットが撮像して取得した画像を模式的に示す図である。
【0064】
レーザー加工装置1は、オペレータにより、加工条件が制御ユニット100に登録され、チャックテーブル10を回転移動ユニット33に載置され、SiCインゴット200の第2面202がチャックテーブル10の保持面11に載置される。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、オペレータから加工動作の開始指示を受け付けると、開閉弁138を開いて、チャックテーブル10を回転移動ユニット33に固定し、加工動作を開始する。
【0065】
加工動作では、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、開閉弁136を開いて、
図5に示すように、チャックテーブル10の保持面11にSiCインゴット200の第2面202を吸引保持する。加工動作では、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、移動ユニット30を制御して、チャックテーブル10を剥離層検査ユニット40のカメラ43の下方に移動させ、カメラ43でSiCインゴット200を撮像させる。
【0066】
レーザー加工装置1の制御ユニット100は、カメラ43が撮像して取得したSiCインゴット200の画像に基づいて、X軸移動ユニット31及びY軸移動ユニット32でチャックテーブル10の位置を調整することにより、SiCインゴット200の外周領域(SiCインゴット200から生成されたウエーハ220におけるデバイスが形成されない外周余剰領域)をレーザー光線照射ユニット20の集光器23の直下に位置づける。また、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、回転移動ユニット33でチャックテーブル10の軸心回りの向きを調整することにより、第2オリエンテーションフラット205をX軸方向と平行にし、傾斜方向207と直交する方向をX軸方向と平行し、傾斜方向207をY軸方向と平行にする。
【0067】
次いで、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、集光点移動ユニットで集光器23のZ軸方向の位置を調整し、SiCインゴット200の第1面201から生成すべきウエーハ220の厚み222に相当する深さ213にレーザー光線21の集光点22を位置づける。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、X軸方向即ち第2オリエンテーションフラット205に沿ってX軸移動ユニット31でチャックテーブル10を所定の加工送り速度でX軸方向に沿って加工送りしながら、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線21を集光器23からSiCインゴット200に照射して検査用の剥離層216を形成する。なお、検査用の剥離層216は、SiCインゴット200の外縁から2mm程度の内周側の外周領域(デバイスが形成されない外周余剰領域)に形成されるため、SiCインゴット200から生成されたウエーハ220にデバイスを形成する際に検査用の剥離層216がデバイスの品質を低下させることはない。
【0068】
また、検査用の剥離層216を形成する際には、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、レーザー光線照射ユニット20が照射するレーザー光線21の出力を変化させつつSiCインゴット200にパルス状のレーザー光線21を照射して、レーザー光線21の出力が異なる複数の検査用の剥離層216を形成する。検査用の剥離層216は、剥離層211と同様に、パルス状のレーザー光線21の照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルス状のレーザー光線21が前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離する改質部と、改質部からc面209に沿って延びるクラックとを含む。
【0069】
実施形態1では、レーザー加工装置1は、
図8に示すように、第1の出力(実施形態1では、4W)のレーザー光線21が照射されて形成される剥離層216(以下、符号216-1で示す)と、第1の出力と異なる第2の出力(実施形態1では、5W)のレーザー光線21が照射されて形成される剥離層216(以下、符号216-2で示す)と、第1の出力と第2の出力との双方と異なる第3の出力(実施形態1では、6W)のレーザー光線21が照射されて形成される剥離層216と(以下、符号216-3で示す)、第1の出力、第2の出力及び第3の出力の全てと異なる第4の出力(実施形態1では、7W)のレーザー光線21が照射されて形成される剥離層216(以下、符号216-4で示す)とを形成している。なお、出力および剥離層216-1,216-2,216-3,216-4の数は、それぞれ任意に設定することができる。
【0070】
レーザー加工装置1の制御ユニット100は、Y軸移動ユニット32でチャックテーブル10を移動させることにより、レーザー光線照射ユニット20に対してSiCインゴット200をY軸方向即ち第1オリエンテーションフラット204に沿って所定の移動距離24、移動(以下、インデックス送りと記す)する。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、X軸移動ユニット31によるチャックテーブル10を第2オリエンテーションフラット205に沿って移動させながらのレーザー光線21の照射と、インデックス送りとを交互に所定回数繰り返し、
図9に示すように、レーザー光線21の出力が異なる複数の剥離層216-1,216-2,216-3,216-4を第2オリエンテーションフラット205沿って間隔をあけて形成するとともに、各出力のレーザー光線21が照射されて形成された複数の剥離層216-1,216-2,216-3,216-4を第1オリエンテーションフラット204に沿って間隔をあけて形成する。
【0071】
レーザー加工装置1の制御ユニット100は、
図10に示すように、発光体44から剥離層216-1,216-2,216-3,216-4に検査光41を照射して、剥離層216-1,216-2,216-3,216-4をカメラ43で撮像し、カメラ43が取得した画像300(
図11に示す)を制御ユニット100に出力する。なお、
図11に示されたカメラ43が取得した画像300では、クラックが形成された領域301(
図11中に白地で示す)により反射された検査光41の強度が、クラックが形成されていない領域302(
図11中に平行斜線で示す)及び改質部が形成された領域303(
図11中に黒地で示す)により反射された検査光41の強度よりも強い。
【0072】
なお、
図11(A)は、第1の出力のレーザー光線21が照射されて形成された剥離層216-1を撮像して取得した画像300(以下、符号300-1で示す)であり、
図11(B)は、第2の出力のレーザー光線21が照射されて形成された剥離層216-2を撮像して取得した画像300(以下、符号300-2で示す)であり、
図11(C)は、第3の出力のレーザー光線21が照射されて形成された剥離層216-3を撮像して取得した画像300(以下、符号300-3で示す)であり、
図11(D)は、第4の出力のレーザー光線21が照射されて形成された剥離層216-4を撮像して取得した画像300(以下、符号300-4で示す)である。
【0073】
図11(A)及び
図11(B)では、剥離層216-1,216-2は、傾斜方向207に互いに隣り合うクラックが間隔をあけている。また、
図11(C)及び
図11(D)では、剥離層216-3,216-4は、傾斜方向207に互いに隣り合うクラックが互いに重なっている。
【0074】
ここで、SiCインゴット200は、傾斜方向207に互いに隣り合うクラック215が互いに重なっていないと、SiCインゴット200から剥離層211を起点としてウエーハ220を剥離するのが困難となる。一方、SiCインゴット200は、傾斜方向207に互いに隣り合うクラック215が互いに重なっていると、SiCインゴット200から剥離層211を起点としてウエーハ220を容易に剥離することができる。しかしながら、SiCインゴット200は、レーザー光線21の出力が過剰に高いと、SiCインゴット200の第1面201に対して傾斜しているc面209に沿ってクラック215が過剰に生じることになり、SiCインゴット200からウエーハ220を剥離した後、SiCインゴット200の剥離面212およびウエーハ220の剥離面221を研削して平坦化する際の研削量が多くなるため、素材ロスが増大することとなる。
【0075】
実施形態1では、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、画像300-1,300-2,300-3,300-4からすべてのクラックが傾斜方向207に隣り合うクラックと重なっているものを抽出し、さらにレーザー光線21の出力が最小のものを抽出する。実施形態1では、制御ユニット100は、画像300-3を抽出する。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、抽出した画像300-3のレーザー光線21の出力をSiCインゴット200からウエーハ220を剥離するための剥離層211を形成するレーザー光線21の出力として設定する。実施形態1では、制御ユニット100は、画像300-3の剥離層216-3を形成した際のレーザー光線21の第3の出力をSiCインゴット200からウエーハ220を剥離するための剥離層211を形成するレーザー光線21の出力として設定する。
【0076】
実施形態1では、制御ユニット100が、画像300-1,300-2,300-3,300-4からすべてのクラックが傾斜方向207に隣り合うクラックと重なっているものを抽出するなどして、SiCインゴット200からウエーハ220を剥離するための剥離層211を形成するレーザー光線21の出力を設定したが、本発明では、カメラ43が撮像して取得した画像300-1,300-2,300-3,300-4の明るさが閾値内か否かによって、各剥離層216-1,216-2,216-3,216-4を形成した際のレーザー光線21の出力がクラックが適正に形成される出力であるか否かを判定しても良い。
【0077】
この場合、制御ユニット100は、カメラ43から画像300-1,300-2,300-3,300-4のデータが入力すると、各画像300-1,300-2,300-3,300-4を所定値の閾値で2値化処理する。なお、閾値は、クラックが形成された領域301により反射された検査光41の強度よりも小さく、かつクラックが形成されていない領域302及び改質部が形成された領域303により反射された検査光41の強度よりも大きいのが望ましい。
【0078】
2値化処理すると、各画像300-1,300-2,300-3,300-4は、クラックが形成されている領域301が主として白色となる一方、クラックが形成されていない領域302及び改質部が形成された領域303が主として黒色となる。制御ユニット100は、2値化処理した画像300-1,300-2,300-3,300-4において黒と白の比率が所定値内(たとえば黒の比率が30~40%であり、白の比率が60~70%)であれば、クラックが適正に形成される出力であると判定する。制御ユニット100は、クラックが適正に形成される出力のうち最小の出力をSiCインゴット200からウエーハ220を剥離するための剥離層211を形成するレーザー光線21の出力として設定する。
【0079】
加工動作では。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、レーザー光線21の出力を設定した後、カメラ43で撮像したSiCインゴット200の画像に基づいて、移動ユニット30を制御して、SiCインゴット200とレーザー光線照射ユニット20の集光器23との相対的な位置を調整して、実施形態1では、SiCインゴット200の第2オリエンテーションフラット205寄りの外縁部と集光器23とをZ軸方向に沿って対面させる。この際、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、第2オリエンテーションフラット205をX軸方向と平行にし、傾斜方向207と直交する方向をX軸方向と平行し、傾斜方向207をY軸方向と平行にする。
【0080】
加工動作では、レーザー加工装置1の制御ユニット100は、集光点移動ユニットで集光器23のZ軸方向の位置を調整し、SiCインゴット200の第1面201から生成すべきウエーハ220の厚み222に相当する深さ213にレーザー光線21の集光点22を位置づける。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、
図6に示すように、X軸方向即ち第2オリエンテーションフラット205に沿ってX軸移動ユニット31でチャックテーブル10を所定の加工送り速度で加工送りしながら、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線21を集光器23からSiCインゴット200に照射する。
【0081】
SiCインゴット200は、
図7に示すように、レーザー光線21の照射によって、SiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルス状のレーザー光線21が前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離した改質部214と、改質部214からc面209に沿って延びるクラック215とを含む剥離層211が形成される。
【0082】
レーザー加工装置1の制御ユニット100は、SiCインゴット200の第2オリエンテーションフラット205寄りの外縁部のX軸方向の全長に亘って剥離層211を形成すると、Y軸移動ユニット32でチャックテーブル10をレーザー光線照射ユニット20の集光器23がSiCインゴット200の第1面201の中央に向かう方向に所定の移動距離24、第1オリエンテーションフラット204に沿ってインデックス送りする。レーザー加工装置1の制御ユニット100は、X軸移動ユニット31によるチャックテーブル10をX軸方向に移動させながらのレーザー光線21の照射と、インデックス送りとを交互に、第1面201の下方の全体に剥離層211が形成されるまで繰り返して、加工動作を終了する。
【0083】
これにより、SiCインゴット200は、インデックス送りの移動距離26毎に、第1面201からウエーハ220の厚み222に相当する深さ213に、SiCがSiとCとに分離した改質部214とクラック215とを含む他の部分よりも強度が低下した剥離層211が形成される。SiCインゴット200は、第1面201からウエーハ220の厚み222に相当する深さ213に、第1オリエンテーションフラット204と平行な方向の全長に亘ってインデックス送りの移動距離毎に剥離層211が形成される。
【0084】
以上説明したように、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10の保持面11が検査光41を吸収する色15に形成されているので、SiCインゴット200が薄くなり剥離層211が保持面11と近づいても、保持面11が検査光41を吸収する色15のため、保持面11から反射される検査光41の強度を抑制することができる。その結果、レーザー加工装置1は、SiCインゴット200に形成された検査用の剥離層216-1,216-2,216-3,216-4の検査結果の誤りを抑制することができる。特に、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10の保持面11が検査光41を吸収する色15に形成されているので、SiCインゴット200の外周付近では、保持面11や基台13の外表面からの反射光の影響が大きいため、検査用の剥離層216-1,216-2,216-3,216-4の検査結果の誤りを効果的に抑制することができる。
【0085】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、チャックテーブル10の基台13の外表面が検査光41を吸収する色15に形成されているので、チャックテーブル10の基台13の外表面から反射される検査光41の強度を抑制することができる。
【0086】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、ポーラス板12の気孔率が体積比で5%以上40%以下であり、吸引源14の吸引する圧力が-92.7kPa(ゲージ圧)である場合、保持面11になにも載置されないと吸引路137内の圧力が-65kPa(ゲージ圧)以上でかつ-50kPa(ゲージ圧)以下となり、保持面11に直径210が4inchのSiCインゴット200が載置されると吸引路137内の圧力が-84.2kPa(ゲージ圧)となり、保持面11に直径210が6inchのSiCインゴット200が載置されると吸引路137内の圧力が-87.9kPa(ゲージ圧)となり、保持面11に直径210が8inchのSiCインゴット200が載置されると吸引路137内の圧力が-91.5kPa(ゲージ圧)となる。
【0087】
その結果、レーザー加工装置1は、種々のサイズのSiCインゴット200をレーザー加工になんら支障を生じさせることなく、保持面11に吸引保持することができる。
【0088】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るレーザー加工装置を図面に基づいて説明する。
図12は、実施形態2に係るレーザー加工装置の検出ユニットがSiCインゴットのFacet領域を検出する状態を模式的に示す側面図である。なお、
図12は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
実施形態2に係るレーザー加工装置1は、
図12に示す検出ユニット50を更に備えている。
【0090】
SiCインゴット200は、内部に、Facetと称される結晶構造が異なる領域217(以下、Facet領域と記す)が存在する場合がある。Facet領域217は、非Facet領域に比べて屈折率が高いと共にエネルギーの吸収率が高い。このため、SiCインゴット200は、Facet領域217が存在していると、レーザー光線21の照射によって内部に形成される剥離層211の位置および出来具合が不均一となり、Facet領域217と非Facet領域との間で剥離層211及び生成すべきウエーハ220に段差が生じてしまうという問題がある。
【0091】
検出ユニット50は、SiCインゴット200の第1面201から所定波長の励起光57をSiCインゴット200に照射してSiC固有の蛍光58の輝度を検出し、所定値以上の蛍光58の輝度を検出した位置を非Facet領域とし、蛍光58の輝度が所定値よりも低い領域をFacet領域217として検出するものである。
【0092】
検出ユニット50は、
図12に示すように、支柱4の先端に支持されたケース51と、SiCインゴット200にレーザー加工を施さない程度の低出力(たとえば0.1W)で且つ所定波長(たとえば370nm)の励起光57を発振する光源52と、光源52から発振された所定波長の励起光57を反射すると共に上記所定波長を含む第一の所定波長域(たとえば365nm~375nm)以外の波長の光を透過するダイクロイックミラー53と、ダイクロイックミラー53で反射した励起光57を集光してSiCインゴット200に照射する集光レンズ54と、第二の所定波長域(たとえば395nm~430nm)の光を透過させるバンドパスフィルター55と、バンドパスフィルター55を透過した光の輝度を検出するホトデテクター56とを備える。
【0093】
なお、検出ユニット50は、光源52と、ダイクロイックミラー53と、集光レンズ54と、バンドパスフィルター55とがケース51内に配置されている。また、図示していないが、検出ユニット50は、ケース51を昇降させて励起光57の集光点のZ軸方向の位置を調整する集光点位置調整手段を含み、この集光点位置調整手段が、例えば、ケース51に連結されZ軸方向に延びるボールねじと、このボールねじを回転させるモータ等を備えている。
【0094】
実施形態2に係るレーザー加工装置1の制御ユニット100は、移動ユニット30を制御して、検出ユニット50とチャックテーブル10とを相対的に移動させながらチャックテーブル10の保持面11に保持されたSiCインゴット200の第1面201に所定の間隔毎に励起光57を照射して、SiCインゴット200の第1面201の蛍光輝度を所定の間隔毎に検出する。この際、光源52から発振された励起光57は、ダイクロイックミラー53で反射して集光レンズ54に導かれ、集光レンズ54において集光されSiCインゴット200の第1面201に照射される。
【0095】
励起光57がSiCインゴット200に照射されると、励起光57の波長とは異なる波長(たとえば410nm程度)を含む蛍光(放射光)FLがSiCインゴット200から放出される。蛍光58は、集光レンズ54およびダイクロイックミラー53を透過した後、第二の所定波長域の蛍光58のみがバンドパスフィルター55を透過し、バンドパスフィルター55を透過した蛍光58の輝度がホトデテクター56によって検出される。レーザー加工装置1は、検出ユニット50が、SiCインゴット200の第1面201全体からのSiC固有の蛍光58の輝度をホトデテクター56で検出する。
【0096】
ホトデテクター56は、検出した蛍光58の輝度が所定値以上であることを示す信号、又は検出した蛍光58の輝度が所定値よりも低いことを示す信号を制御ユニット100に出力する。制御ユニット100は、X軸方向位置検出ユニットとY軸方向位置検出ユニットの検出結果に基づいて、所定値以上の蛍光58の輝度を検出した位置を非Facet領域とし、蛍光58の輝度が所定値よりも低い領域をFacet領域217として検出する。
【0097】
実施形態2に係るレーザー加工装置1は、検出したFacet領域と非Facet領域の位置に基づいて、SiCインゴット200にレーザー光線21を照射する加工条件を適切に制御して、Facet領域217と非Facet領域との間に段差のない剥離層211を形成して、ウエーハ220の段差を抑制する。
【0098】
実施形態2に係るレーザー加工装置1は、SiCインゴット200が薄くなり剥離層211が保持面11と近づいても、保持面11が検査光41を吸収する色15のため、保持面11からの蛍光58の影響を抑制することができる。その結果、レーザー加工装置1は、SiCインゴット200のFacet領域217と非Facet領域の検出結果、即ち、SiCインゴット200の検査結果の誤りを抑制することができる。
【0099】
このように、レーザー加工装置1は、保持面11が前述した色15であると従来から用いられてきたチャックテーブルに比べ測定される蛍光を抑制できる。その結果、レーザー加工装置1は、SiCインゴット200が薄くなってもFacet領域217の有無を検知する際、チャックテーブル10の蛍光の影響が少なくなる効果あり、SiCインゴット200に励起光57を照射し、SiCインゴット200の蛍光58を検知してFacet領域217を検出する際に、前述した構成のチャックテーブル10を用いても良い。
【0100】
特に、実施形態2に係るレーザー加工装置1は、SiCインゴット外周付近にFacet領域217があるSiCインゴット200もあり、Facet領域217の検出ではSiCインゴット200の外周ギリギリまで検査するので、チャックテーブル10の保持面11が検査光41を吸収する色15に形成されているので、SiCインゴット200の外周付近では、保持面11や基台13の外表面からの反射光の影響が大きいため、SiCインゴット200のFacet領域217と非Facet領域の検出結果、即ち、SiCインゴット200の検査結果の誤りを効果的に抑制することができる。
【0101】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、前述した実施形態では、チャックテーブル10の基台13をステンレス鋼等の金属により構成したが、本発明では、素ステンレス鋼等の金属に限らず、非通気性の非多孔質材であれば、基台13は、ガラス材量であるソーダガラス(ソーダ石灰ガラス)、ホウケイ酸ガラス又は石英ガラスなどの各種のガラスにより構成しても良く、セラミックスにより構成しても良い。
【符号の説明】
【0102】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
11 保持面
12 ポーラス板
15 色
20 レーザー光線照射ユニット
21 レーザー光線
22 集光点
23 集光器
30 移動ユニット
40 剥離層検査ユニット
41 検査光
200 SiCインゴット
201 第1面(上面)
211 剥離層
213 深さ
220 ウエーハ
222 厚み