(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164128
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】フッ素の測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20221020BHJP
【FI】
G01N27/416 351K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069422
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】谷津 愛和
(72)【発明者】
【氏名】安達 恒康
(72)【発明者】
【氏名】船岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】栃谷 智
(57)【要約】
【課題】イオン電極法によるフッ素含有水中のフッ素濃度の測定において、フッ化物イオンのみならず、非溶解性のフッ素化合物の測定も可能とし、かつ、イオン電極法による測定の妨害因子となる成分の測定系内への持ち込みを低減し、フッ素含有水中の全フッ素の総量に近い測定値を、測定誤差を抑えて確実に得る。
【解決手段】フッ素含有水をpH4~5.2にpH調整した後、フッ素イオン電極でフッ素濃度を測定するフッ素の測定方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有水中のフッ素濃度をイオン電極法により測定する方法において、該フッ素含有水をpH4~5.2にpH調整した後、フッ素イオン電極によりフッ素濃度を測定するフッ素の測定方法。
【請求項2】
前記フッ素含有水をpH調整した後、固液分離し、得られた分離水について前記フッ素イオン電極によりフッ素濃度の測定を行う請求項1に記載のフッ素の測定方法。
【請求項3】
前記フッ素含有水が鉄イオンとアルミニウムイオンを含む請求項1又は2に記載のフッ素の測定方法。
【請求項4】
前記フッ素含有水のpHが8以下又は10以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフッ素の測定方法。
【請求項5】
フッ素含有水中のフッ素濃度をイオン電極法により測定する装置において、該フッ素含有水をpH4~5.2にpH調整するpH調整手段と、pH調整されたフッ素含有水が導入されるフッ素イオン電極を備えるフッ素濃度測定手段とを有するフッ素の測定装置。
【請求項6】
前記pH調整されたフッ素含有水を固液分離する固液分離手段を更に有し、該固液分離手段の分離水が前記フッ素濃度測定手段に導入される請求項5に記載のフッ素の測定装置。
【請求項7】
前記フッ素含有水が鉄イオンとアルミニウムイオンを含む請求項5又は6に記載のフッ素の測定装置。
【請求項8】
前記フッ素含有水のpHが8以下又は10以上である請求項5ないし7のいずれか1項に記載のフッ素の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有水中のフッ素濃度の測定方法及び測定装置に係り、特に、フッ素含有水中の全フッ素を簡易なイオン電極法により的確に測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所排水やその他の雑排水等のフッ素含有排水の各種フッ素処理においては、フッ素処理剤の注入量を的確に制御して、薬品使用量の低減、汚泥発生量の削減を図った上で、排水基準を十分に満たす低フッ素濃度の処理水を得るために、排水中のフッ素濃度を測定する必要がある。また、このような排水処理以外にも、水質分析のために水中のフッ素濃度を測定する必要もある。
【0003】
従来、排水中のフッ素濃度を測定する方法として、測定範囲の広さ・変更のし易さ、測定の簡易さなどから、フッ素イオン電極を用いるイオン電極法が用いられている。
しかし、イオン電極法で測定できるフッ素の形態はフッ化物イオンに限られ、非溶解性のフッ素化合物由来のフッ素は測定できない。
また、イオン電極法では、鉄イオン、アルミニウムイオンなどの金属イオンや、SSの共存の有無、撹拌条件の変化、温度変化などが測定値に影響を及ぼし、測定誤差発生の要因となる。
したがって、イオン電極法によるフッ素濃度の測定に際しては、一般的には、夾雑物やSSを除いた後、希釈および妨害イオンに対するマスキング剤ないしはイオン強度調整剤を添加し、撹拌・温度条件を一定にして測定することが行われている(例えば、特許文献1,2)。
【0004】
図2は、従来のフッ素濃度の測定法を採用したフッ素含有排水の処理方法を説明するフロー図であり、排水貯槽1内のフッ素含有排水は、フッ素処理手段2でフッ素処理剤が添加されてフッ素除去処理された後、必要に応じて更に高度処理手段3で処理され、処理水が放流される。
排水貯槽1からフッ素処理手段2に導入されるフッ素含有排水の一部が分取され、固液分離手段4でSS等の夾雑物が除去された後、必要に応じて希釈手段5で希釈され、イオン強度調整剤やマスキング剤等が添加された後、フッ素イオン電極によるフッ素濃度測定手段6でフッ素濃度の測定が行われる。このフッ素濃度測定手段6の測定値に基づいて、フッ素処理手段2におけるフッ素処理剤の薬注制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-23960号公報
【特許文献2】特開2008-177408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のイオン電極法によるフッ素濃度の測定では、次のような問題がある。
(1) 排水中のフッ素の形態は、フッ化物イオンの他、CaF2(固体)やSSなどに吸着したフッ素などフッ化物イオン以外の形態のものも存在するが、イオン電極法では、フッ化物イオン以外のフッ素は測定できない。
これに対して、カルシウム法やアルミニウム法を用いる排水処理で処理対象とする排水中のフッ素の形態はフッ化物イオンに限定されないため、測定値と実際のフッ素濃度は不一致となり、イオン電極法に基づく薬注制御では、薬注量が不足する。
(2) フッ素濃度モニタリングのニーズは、水質変動が大きい排水ほど大きいが、妨害イオンが多い場合は、マスキング剤の定量注入では安定な測定値が得にくい。
フッ素濃度測定の前段で、凝集・固液分離により妨害イオンを除去しても、例えば、アルミニウムの水酸化物を生成させる凝集処理では、フッ素の一部が水酸化アルミニウムに吸着して水中から除去されるため、フッ素濃度の測定値は、実際の値よりも低くなる誤差を生じる。
また、鉄などの重金属イオンが含まれる場合は、イオン強度調整剤の混合により液性が中性付近になると、金属の一部が水酸化物として析出し、析出したSSがイオン電極法の妨害因子となり、フッ素濃度の測定誤差を生じたり、測定系統内の汚染や閉塞による測定精度の低下や測定の停止を招くといった問題が生じる。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するものであり、イオン電極法によるフッ素含有水中のフッ素濃度の測定において、フッ化物イオンのみならず、非溶解性のフッ素化合物の測定も可能とし、かつ、イオン電極法による測定の妨害因子となる成分の測定系内への持ち込みを低減し、フッ素含有水中の全フッ素の総量に近い測定値を、測定誤差を抑えて確実に得ることができるフッ素の測定方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、イオン電極法によりフッ素含有水中のフッ素濃度を測定するに際して、まず、フッ素含有水を所定のpHにpH調整することで、排水中のフッ素をフッ化物イオンとし、また、水酸化アルミニウムを析出させずに鉄等の重金属を水酸化物として析出させて除去することで、水酸化アルミニウムへのフッ素の吸着を抑制した上で、イオン電極法の妨害因子である鉄等の重金属を除去することができ、測定誤差を低減して、全フッ素濃度としての適正なフッ素濃度の測定値を得ることができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0009】
[1] フッ素含有水中のフッ素濃度をイオン電極法により測定する方法において、該フッ素含有水をpH4~5.2にpH調整した後、フッ素イオン電極によりフッ素濃度を測定するフッ素の測定方法。
【0010】
[2] 前記フッ素含有水をpH調整した後、固液分離し、得られた分離水について前記フッ素イオン電極によりフッ素濃度の測定を行う[1]に記載のフッ素の測定方法。
【0011】
[3] 前記フッ素含有水が鉄イオンとアルミニウムイオンを含む[1]又は[2]に記載のフッ素の測定方法。
【0012】
[4] 前記フッ素含有水のpHが8以下又は10以上である[1]ないし[3]のいずれかに記載のフッ素の測定方法。
【0013】
[5] フッ素含有水中のフッ素濃度をイオン電極法により測定する装置において、該フッ素含有水をpH4~5.2にpH調整するpH調整手段と、pH調整されたフッ素含有水が導入されるフッ素イオン電極を備えるフッ素濃度測定手段とを有するフッ素の測定装置。
【0014】
[6] 前記pH調整されたフッ素含有水を固液分離する固液分離手段を更に有し、該固液分離手段の分離水が前記フッ素濃度測定手段に導入される[5]に記載のフッ素の測定装置。
【0015】
[7] 前記フッ素含有水が鉄イオンとアルミニウムイオンを含む[5]又は[6]に記載のフッ素の測定装置。
【0016】
[8] 前記フッ素含有水のpHが8以下又は10以上である[5]ないし[7]のいずれかに記載のフッ素の測定装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、イオン電極法によるフッ素含有水中のフッ素濃度の測定において、フッ化物イオンのみならず、非溶解性のフッ素化合物の測定も可能とし、かつ、イオン電極法による測定の妨害因子となる成分の測定系内への持ち込みを低減し、フッ素含有水中の全フッ素の総量に近い測定値を、測定誤差を抑えて確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のフッ素の測定方法を適用したフッ素含有排水の処理フローを示す図である。
【
図2】従来法によるフッ素含有排水の処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明においては、フッ素含有水のフッ素濃度を、フッ素イオン電極を用いてイオン電極法で測定するに当たり、測定に先立ち、該フッ素含有水のpHをpH4~5.2にpH調整する。
【0021】
フッ素含有水をpH4~5.2にpH調整すると、水中のアルミニウムは溶解した状態のままマスキング剤と混合されるため、フッ素イオン電極によるフッ素濃度測定値の負の誤差を生じにくくなる。また、水中の鉄は水酸化物として低濃度(残留鉄イオン濃度は1mg/L以下程度)まで除去されるので、フッ素イオン電極によるフッ素濃度の測定におけるこれら金属類の妨害作用を小さくすることができる。
この限定されたpH調整値とする作用効果は、各pH値のフッ素含有水毎に以下の通りである。
酸性のフッ素含有水の場合、水中のフッ素はほとんどが水に溶解した状態で存在するため、フッ素イオン電極による測定で全フッ素濃度に近い測定値を得ることができる。ただし、酸性のフッ素含有水は通常高濃度でフッ素イオン電極の妨害因子となる金属類を溶解させている場合が多く、これらの物質を多く含む排水では、測定誤差が大きくなる。
しかし、pH4~5.2と、pH酸性であっても、pHをやや高めに調整することで、一部の金属を水酸化物として析出させて除去することで、測定誤差を小さくできる。
【0022】
中性のフッ素含有水の場合、アルミニウムを含む排水では、析出している水酸化アルミニウムにフッ素が吸着するため、イオン状フッ素濃度は全フッ素濃度よりも低くなるが、pH4~5.2の範囲のpH調整により、水酸化アルミニウムが溶解することから、これに吸着していたフッ素も遊離してイオン化する。また、溶解したアルミニウムもマスキング剤・イオン強度調整剤でマスキングされるため、測定可能となり、全フッ素濃度に近い測定値を得ることができるようになる。
【0023】
アルカリ性のフッ素含有水の場合、水中にマグネシウムを含む場合は、マグネシウム塩に吸着したフッ素が存在し、イオン状フッ素濃度は全フッ素濃度よりも低い値となるが、pH4~5.2の範囲のpH調整によりマグネシウム塩が溶解し、これに吸着していたフッ素も遊離してイオン化するため測定可能となり、全フッ素濃度に近い測定値を得ることができるようになる。
【0024】
このようなことから、本発明におけるpH調整値はpH4~5.2の範囲であり、好ましくは4以上5未満であり、より好ましくは4~4.8である。
【0025】
フッ素含有水のpH調整には、pH調整剤として塩酸、硫酸等の酸、又は水酸化ナトリウム等のアルカリを用いることができる。また、pH調整は、pH調整槽やラインミキサー等により行うことができる。
【0026】
pH調整を行ったフッ素含有水は、フッ素イオン電極でフッ素濃度の測定を行うに先立ち、固液分離を行って、pH調整水中の水酸化鉄等の金属水酸化物の析出物やSSなどの夾雑物を除去することが好ましい。この固液分離は必ずしも必要とされないが、固液分離を行うことで、配管閉塞やフッ素イオン電極の汚染等を防止して、長期的なモニタリングを安定に行うことが可能となる。
固液分離手段としては、沈殿槽、スクリーン、砂ろ過器、膜ろ過装置などを用いることができる。
【0027】
フッ素含有水のpH調整水或いはその固液分離水は、必要に応じて希釈処理、及び/又はマスキング剤・イオン強度調整剤の添加を行って、フッ素イオン電極によるフッ素濃度の測定に供する。
【0028】
マスキング剤・イオン強度調整剤としては、リン酸緩衝液やクエン酸緩衝液を用いることができる。
【0029】
フッ素濃度の測定に供するフッ素含有水としては、発電所排水、半導体、液晶などの電子部品製造排水、各種金属材料の表面処理排水、その他の雑排水が挙げられ、これらは通常、フッ素と共に、鉄イオンやアルミニウムイオン、更にはマグネシウムイオン等の金属イオンを含み、pH8以下の酸性から中性排水又はpH10以上のアルカリ性排水である。
本発明によるフッ素濃度の測定に供するフッ素含有水は、鉄イオン濃度10~200mg/L、アルミニウムイオン濃度10~200mg/L、マグネシウムイオン濃度20~500mg/Lで、pH8以下又はpH10以上のフッ素含有水であることが、本発明によるpH調整の効果が有効に発揮されるため、好適である。
【0030】
図1は、このような本発明によるフッ素濃度測定装置を適用したフッ素含有排水の処理方法の実施の形態の一例を示すフロー図である。
図1の処理フローは、固液分離手段4の前段にpH調整手段10を設けたことが、
図2に示す従来の処理フローと異なり、同一機能を奏する部材には同一符号を付してある。
【0031】
本発明は、
図1に示すように、フッ素含有排水にフッ素処理剤を添加してフッ素を除去する処理において、フッ素イオン電極によるフッ素含有排水のフッ素濃度の測定値に基づいて、フッ素処理剤の添加量制御を行う処理に好適に適用され、本発明によれば、フッ素含有排水中の全フッ素濃度に対して測定誤差の小さい測定値に基づいて、過不足のない的確な薬注制御を行うことが可能となり、薬品使用量の低減、汚泥発生量の削減を図った上で、排水基準を十分に満たす低フッ素濃度の処理水を得ることができる。
【実施例0032】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0033】
[評価排水]
以下の実施例及び比較例でフッ素濃度の測定評価を行った排水A~Cの水質は、下記表1に示す通りである。なお、表1に示す全フッ素濃度(フッ素換算濃度)はJIS K0102 34.1により測定した値である。また、SSはJIS K0102 14.1により測定した。Feイオン濃度、Alイオン濃度はそれぞれ非溶解成分を除去後ICP発光分光分析法により測定した値をイオン成分の濃度とみなしたものである。
【0034】
【0035】
[pH調整剤]
pH調整剤としては、塩酸又は水酸化ナトリウムを用いた。
【0036】
[実施例1]
排水A、B、Cを、それぞれ、前処理としてpH4.5に調整後、砂ろ過装置でろ過した。得られたろ過水のフッ素濃度をフッ素イオン電極で測定した。結果を表2に示す。
【0037】
[比較例1]
排水A、B、CのpH調整を行わずに、そのまま砂ろ過装置でろ過したこと以外は、実施例1と同様にフッ素イオン電極でフッ素濃度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0038】
[比較例2]
排水A、B、CのpH調整値をpH7としたこと以外は、実施例1と同様に(排水BについてはpH調整せず、そのまま)、砂ろ過装置のろ過水について、フッ素イオン電極でフッ素濃度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0039】
なお、表2には各例における測定値と、表1に示される各排水の比色法による全フッ素化合物(フッ素換算濃度)の測定値から、以下の式で求めた測定誤差の値を併記した。
測定誤差={(フッ素イオン電極によるフッ素濃度測定値-全フッ素濃度の測定値)/(全フッ素濃度の測定値)}×100
【0040】
【0041】
[考察]
実施例1の結果から以下のことが考えられる。
・排水Aでは、前処理で鉄が除去されたことで、測定誤差が小さくなったと考えられる。
・排水Bでは、排水中の非溶解性フッ素の一部(水酸化アルミニウムに吸着したフッ素等)が、pH調整により溶解したため、測定値が全フッ素濃度に近づいたと考えられる。
・排水Cでは、排水中の非溶解性フッ素の一部(水酸化マグネシウムに吸着したフッ素等)が、pH調整により溶解したため、測定値が全フッ素濃度に近づいたと考えられる。
【0042】
比較例1の結果から、以下のようなことが考えられる。
・排水Aでは鉄による妨害のため、フッ素濃度の測定値が低くなったと考えられる。
・排水B、排水Cでは非溶解性のフッ素が前処理で除去されてしまうため、フッ素濃度の測定値が低くなったと考えられる。
【0043】
比較例2の結果から、以下のようなことが考えられる。
・排水Aでは鉄による妨害はなくなるが、水中のフッ素の一部が前処理により析出する水酸化アルミニウムに吸着除去されるため、フッ素濃度の測定値が低くなったと考えられる。
・排水Bでは非溶解性のフッ素が前処理で除去されてしまうため、フッ素濃度測定値が低くなったと考えられる。
・排水Cでは排水中の非溶解性フッ素の一部(水酸化マグネシウムに吸着したフッ素等)が、pH調整により溶解し、吸着していたフッ素化合物が溶解してフッ化物イオンが増加する量と、前処理により析出する水酸化アルミニウムに一部吸着除去されてフッ化物イオンが低減する量が打ち消し合った結果として、フッ素濃度の測定値として低い値となったと考えられる。
【0044】
これらの結果から、例えば、排水Aのフッ素濃度の測定を行って、その結果に基づいて薬注制御を行う場合、以下の通り、本発明によれば、優れた効果を得ることができる。
排水Aの全フッ素濃度20mg/Lに対し、従来法(比較例1)では12mg/Lと測定された。この測定値に基づいてフッ素処理剤の注入を行うと、薬注量が不足する可能性があり、その場合得られる処理水は排水基準値を満たすことができない懸念が生じる。このことから、安全性をみて、薬注量を高く設定する必要があり、実際のフッ素濃度が低い場合でも過剰な薬品注入と汚泥発生量増加を招く。pH調整を行っても、このpH調整値がpH7の比較例2では、同様の結果となる。
これに対して、本発明の方法(実施例1)では、排水の全フッ素濃度20mg/Lに対し、19mg/Lという測定値が得られる。この結果、薬注量の過不足を抑制でき、薬品使用量の低減、発生汚泥量の削減が可能となる。