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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164401
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】金型、鍛造装置、および鍛造方法
(51)【国際特許分類】
   B21J 13/02 20060101AFI20221020BHJP
   B21D 37/16 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
B21J13/02 Z
B21J13/02 L
B21D37/16
B21J13/02 M
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069868
(22)【出願日】2021-04-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】517036563
【氏名又は名称】ハイテン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 知哉
(72)【発明者】
【氏名】江川 峻脩
(72)【発明者】
【氏名】金野 泰幸
(72)【発明者】
【氏名】佃 市三
(72)【発明者】
【氏名】福井 清
(72)【発明者】
【氏名】四宮 徳章
【テーマコード(参考)】
4E050
4E087
【Fターム(参考)】
4E050GA05
4E087AA10
4E087CA12
4E087CA33
4E087CB01
4E087CC01
4E087EA11
4E087EC22
4E087ED04
4E087ED12
4E087ED29
4E087HA45
(57)【要約】
【課題】被加工材の加工時にケースが高温化することを抑制してケースの冷却を不要とし、成形用金型の温度を高温に保持することができる金型等を提供する。
【解決手段】金型1は、被加工材9の加工に用いられる金型であって、被加工材9を成形する主金型2と、主金型2の外周に配置され、主金型2を支持するケース30と、主金型2の径方向において主金型2とケース30との間に配置され、ケース30よりも熱伝導率が小さい断熱部40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材の加工に用いられる金型であって、
被加工材を成形する主金型と、
前記主金型の外周に配置され、前記主金型を支持するケースと、
前記主金型の径方向において前記主金型と前記ケースとの間に配置され、前記ケースよりも熱伝導率が小さい断熱部と、
を備える金型。
【請求項2】
前記断熱部は、前記主金型と前記ケースとの間に形成される断熱空間と、前記主金型と前記ケースとを連結する連結部材とを有する請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記断熱部は、前記主金型の外周面に嵌装される内径側環状部材と、前記ケースの内周面に嵌装される外径側環状部材とを有し、
前記連結部材は、前記内径側環状部材と前記外径側環状部材とに接続されている請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記断熱部においては、
前記断熱空間の熱伝導率は0.6W/m・K以下であり、且つ前記断熱部の体積に対する前記断熱空間の体積が占める割合である空隙率は80%以上である請求項2または請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを備えている請求項1~請求項4の何れか一項に記載の金型。
【請求項6】
前記成形用金型部と前記加熱用金型部とは別部材にて形成され、
前記成形用金型部は前記加熱用金型部に嵌合している請求項5に記載の金型。
【請求項7】
前記加熱用金型部は、前記加熱装置が挿入される挿入孔を有している請求項5または請求項6に記載の金型。
【請求項8】
前記ケースは、前記径方向において前記断熱部の外周に配置される外周部と、前記径方向と直交する軸線方向の一側に配置され、前記主金型を支持する支持部とを有する請求項1~請求項7の何れか一項に記載の金型。
【請求項9】
前記軸線方向において前記主金型と前記ケースの前記支持部との間に配置され、前記被加工材の加工時において前記ケースよりも高い硬さを有する耐力部を備える請求項8に記載の金型。
【請求項10】
前記被加工材を鍛造加工する際に用いられる鍛造用金型である請求項1~請求項9の何れか一項に記載の金型。
【請求項11】
前記主金型は、Niを主成分とし、Alを2~13原子%、Vを5~17原子%、およびBを0.0010~0.1000重量%含み、初析L1相と(L1+D022)共析組織とからなる2重複相組織を有するNi基金属間化合物合金からなる請求項1~請求項10の何れか一項に記載の金型。
【請求項12】
前記Ni基金属間化合物合金は、0.01~1.0原子%のC、0~5原子%のCo、0~5原子%のCr、0~5原子%のTi、0~5原子%のNb、0~5原子%のTa、および0~5原子%のWの少なくとも一つをさらに含む請求項11に記載の金型。
【請求項13】
第1金型と、前記第1金型に対向して配置され、前記第1金型に対して相対的に近接離間する方向へ移動可能な第2金型とを備え、
請求項11または請求項12に記載の前記金型を、前記第1金型および前記第2金型の少なくとも一つに用い、
前記主金型を700℃~1000℃に加熱した状態で、前記被加工材の鍛造加工を行う鍛造装置。
【請求項14】
前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを有し、
前記成形用金型部を700℃~1000℃に加熱するとともに、前記加熱用金型部を500℃以上に加熱した状態で、前記被加工材の鍛造加工を行う請求項13に記載の鍛造装置。
【請求項15】
請求項11または請求項12に記載の前記金型を用いた鍛造方法であって、
前記主金型を700℃~1000℃に加熱する主金型加熱工程と、
前記被加工材を前記主金型よりも高い温度に加熱する被加工材加熱工程と、
前記主金型加熱工程および前記被加工材加熱工程の後に、前記主金型により前記被加工材を鍛造加工する鍛造工程とを備え、
前記鍛造工程を前記主金型が700℃以上の温度にある状態で完了させる鍛造方法。
【請求項16】
前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを有し、
前記主金型加熱工程においては、前記成形用金型部を700℃~1000℃に加熱するとともに、前記加熱用金型部を500℃以上に加熱する請求項15に記載の鍛造方法。
【請求項17】
前記鍛造工程において前記被加工材を鍛造加工する際に、少なくとも前記主金型の表面に不活性ガスを吹き付ける請求項15または請求項16に記載の鍛造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型、鍛造装置、および鍛造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電用ガスタービンや航空機のジェットエンジンのブレード等には、チタン合金やニッケル合金が用いられている。チタン合金やニッケル合金は、強度が高い反面、加工が難しい材料であり、高温での熱間鍛造加工が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
このように高温下で行われる熱間鍛造においては、被加工材および被加工材を鍛造加工する成形用金型が高温に加熱されるため、成形用金型の周囲に配置され成形用金型を支持するケースも、成形用金型からの伝熱により高温になる。
【0004】
しかし、成形用金型を支持するケースは高温に加熱されると軟化が生じるため、被加工材の鍛造加工時にケースを冷却することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-148817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、被加工材の鍛造加工時にケースを冷却すると、成形用金型の温度が低下し、さらには被加工材の温度も低下して、被加工材の変形抵抗が増大するため、被加工材を適正に成形するために鍛造荷重を大きくしたり、鍛造工程を多数回繰り返して実施したりする必要があった。
【0007】
そこで、本発明においては、被加工材の加工時にケースが高温化することを抑制してケースの冷却を不要とし、成形用金型の温度を高温に保持することができる金型、鍛造装置、および鍛造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する金型、鍛造装置、および鍛造方法は、以下の特徴を有する。
【0009】
即ち、金型は、被加工材の加工に用いられる金型であって、被加工材を成形する主金型と、前記主金型の外周に配置され、前記主金型を支持するケースと、前記主金型の径方向において前記主金型と前記ケースとの間に配置され、前記ケースよりも熱伝導率が小さい断熱部と、を備える。
【0010】
また、前記断熱部は、前記主金型と前記ケースとの間に形成される断熱空間と、前記主金型と前記ケースとを連結する連結部材とを有する。
【0011】
また、前記断熱部は、前記主金型の外周面に嵌装される内径側環状部材と、前記ケースの内周面に嵌装される外径側環状部材とを有し、前記連結部材は、前記内径側環状部材と前記外径側環状部材とに接続されている。
【0012】
また、前記断熱部においては、前記断熱空間の熱伝導率は0.6W/m・K以下であり、且つ前記断熱部の体積に対する前記断熱空間の体積が占める割合である空隙率は80%以上である。
【0013】
また、前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを備えている。
【0014】
また、前記成形用金型部と前記加熱用金型部とは別部材にて形成され、前記成形用金型部は前記加熱用金型部に嵌合している。
【0015】
また、前記加熱用金型部は、前記加熱装置が挿入される挿入孔を有している。
【0016】
また、前記ケースは、前記径方向において前記断熱部の外周に配置される外周部と、前記径方向と直交する軸線方向の一側に配置され、前記主金型を支持する支持部とを有する。
【0017】
また、前記軸線方向において前記主金型と前記ケースの前記支持部との間に配置され、前記被加工材の加工時において前記ケースよりも高い硬さを有する耐力部を備える。
【0018】
また、前記金型は、前記被加工材を鍛造加工する際に用いられる鍛造用金型である。
【0019】
また、前記主金型は、Niを主成分とし、Alを2~13原子%、Vを5~17原子%、およびBを0.0010~0.1000重量%含み、初析L1 相と(L1 +D0 22)共析組織とからなる2重複相組織を有するNi基金属間化合物合金からなる。
【0020】
また、前記Ni基金属間化合物合金は、0.01~1.0原子%のC、0~5原子%のCo、0~5原子%のCr、0~5原子%のTi、0~5原子%のNb、0~5原子%のTa、および0~5原子%のWの少なくとも一つをさらに含む。
【0021】
また、鍛造装置は、第1金型と、前記第1金型に対向して配置され、前記第1金型に対して相対的に近接離間する方向へ移動可能な第2金型とを備え、請求項11または請求項12に記載の前記金型を、前記第1金型および前記第2金型の少なくとも一つに用い、前記主金型を700℃~1000℃に加熱した状態で、前記被加工材の鍛造加工を行う。
【0022】
また、前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に配置され、加熱装置を有する加熱用金型部とを有し、前記成形用金型部を700℃~1000℃に加熱するとともに、前記加熱用金型部を500℃以上に加熱した状態で、前記被加工材の鍛造加工を行う。
【0023】
また、鍛造方法は、請求項11または請求項12に記載の前記金型を用いた鍛造方法であって、前記主金型を700℃~1000℃に加熱する主金型加熱工程と、前記被加工材を前記主金型よりも高い温度に加熱する被加工材加熱工程と、前記主金型加熱工程および前記被加工材加熱工程の後に、前記主金型により前記被加工材を鍛造加工する鍛造工程とを備え、前記鍛造工程を前記主金型が700℃以上の温度にある状態で完了させる。
【0024】
また、前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に配置され、加熱装置を有する加熱用金型部とを有し、前記主金型加熱工程においては、前記成形用金型部を700℃~1000℃に加熱するとともに、前記加熱用金型部を500℃以上に加熱する。
【0025】
また、前記鍛造工程において前記被加工材を鍛造加工する際に、少なくとも前記主金型の表面に不活性ガスを吹き付ける。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、被加工材の加工時に、主金型の温度が低下することを抑制するとともに、ケースを低温に保持してケースの冷却を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】金型を示す斜視図である。
図2】金型を示す側面断面図である。
図3】Ni基金属間化合物合金および他の合金の温度とビッカース硬さとの関係を示す図である。
図4】Ni基金属間化合物合金および高強度型ニッケル超合金展伸材の温度による引張強度の変化を示す図である。
図5】主金型の成形用金型部と加熱用金型部とを一体的に形成した金型を示す斜視図である。
図6】主金型が成形用金型部のみを備え、加熱用金型部は備えていない構成の金型を示す斜視図である。
図7】連結部材を主金型とケースとに直接接続した構成の金型を示す斜視図である。
図8】鍛造装置を示す側面断面図である。
図9】被加工材を成形用金型とパンチとにより挟み込んでプレスした状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0029】
[金型]
図1図2に示す金型1は、被加工材9を熱間鍛造加工する際に用いられる熱間鍛造用金型であり、被加工材9を成形する主金型2と、主金型2の外周に配置されるケース30と、主金型2の径方向において主金型2とケース30との間に配置される断熱部40とを備えている。
【0030】
なお、熱間鍛造加工とは、再結晶温度以上に加熱した被加工材9に対して行う鍛造加工のことをいう。被加工材9としては、例えばチタン合金またはニッケル合金を用いることができる。具体的には、例えば被加工材9として、Inconel718(「INCONL」は登録商標)を用いることができる。
【0031】
(主金型)
主金型2は、被加工材9を成形するための成形用金型部10と、成形用金型部10の外周に位置する加熱用金型部20とを備えている。
【0032】
(成形用金型部)
成形用金型部10は円柱形状の金属部材により形成されている。図1図2においては、成形用金型部10は軸線Xが上下方向に沿う姿勢で配置されている。成形用金型部10は、被加工材9を成形するための凹部である成形部11と、成形部11に連続して形成され軸線X方向に貫通する貫通孔12とを有している。成形部11は、成形用金型部10の上面10a側に形成されており、貫通孔12は、成形部11から成形用金型部10の下面10bにかけて軸線X方向に沿って形成されている。
【0033】
成形用金型部10は、工具鋼、超硬合金(WC-Co)、ニッケル合金、コバルト合金、モリブデン合金、タングステン合金、またはNi基金属間化合物合金(Ni基超々合金)等の金属により形成することができる。Ni基金属間化合物合金は、初析L1相と(L1+D022)共析組織とからなる2重複相組織を有している。Ni基金属間化合物合金は、例えば11W/m・K程度の熱伝導率を有している。
【0034】
Ni基金属間化合物合金としては、例えばNiを主成分とし、Alを2~13原子%、Vを5~17原子%、およびBを0.0010~0.1000重量%含んだものを用いることができる。
【0035】
また、Ni基金属間化合物合金としては、上記成分に加えて0.01~1.0原子%のC、0~5原子%のCo、0~5原子%のCr、0~5原子%のTi、0~5原子%のNb、0~5原子%のTa、および0~5原子%のWの少なくとも一つをさらに含むものを用いることができる。
【0036】
上述のような構成のNi基金属間化合物合金は、高温での引張強度及び硬さが高い特性を有しているため、熱間鍛造加工に用いる成形用金型部10をNi基金属間化合物合金にて形成することで、成形用金型部10を高温に加熱して熱間鍛造加工を行った場合でも、成形用金型部10に割れや劣化が生じることを抑制できる。これにより、高温耐久性に優れた金型1を構成することができる。
【0037】
図3に示すように、Ni基金属間化合物合金は、例えば低温から高温にかけての全ての温度域において工具鋼(SKD61)よりも高い硬さを有しており、650℃以上の高温域において超硬合金(WC-Co)よりも高い硬さを有している。
【0038】
また、図4に示すように、Ni基金属間化合物合金は、600℃以上の高温域において、高強度型ニッケル超合金展伸材であるUdimet520(「UDIMET」は登録商標)、Waspaloy(「WASPALOY」は登録商標)、およびInconel718よりも高い引張強度を有している。
【0039】
従って、成形用金型部10を例えば650℃以上の高温に加熱した状態で熱間鍛造加工を行う場合に、Ni基金属間化合物合金にて成形用金型部10を形成することにより、被加工材9がチタン合金やニッケル合金といった難加工材であった場合でも、被加工材9を適正に成形することが容易になるとともに、成形用金型部10の寿命を長くすることが可能となる。
【0040】
(加熱用金型部)
加熱用金型部20は、円筒形状の金属部材により形成されている。加熱用金型部20は、軸線X方向に貫通する嵌合孔21と挿入孔22とを有している。嵌合孔21は成形用金型部10の外径と同様の内径を有しており、嵌合孔21には成形用金型部10が嵌合している。これにより、加熱用金型部20が成形用金型部10の外周に配置されることとなっている。
【0041】
挿入孔22は、加熱用金型部20の径方向において、嵌合孔21の内周面と加熱用金型部20の外周面との間に形成されている。加熱用金型部20においては、複数の挿入孔22が周方向に沿って等間隔に形成されている。挿入孔22には、ヒータ23が挿入されており、ヒータ23により加熱用金型部20を加熱することが可能である。挿入孔22に挿入されたヒータ23により加熱用金型部20を加熱することで、嵌合孔21に嵌合した成形用金型部10を効率的に加熱すること、および加熱された成形用金型部10の温度を効率的に保持することが可能となっている。なお、本実施形態においては、挿入孔22は、軸線X方向に沿って形成されているが、径方向に沿って形成することも可能である。
【0042】
ヒータ23は、加熱装置の一例である。ヒータ23は、例えば円柱状のカートリッジヒータにて構成されている。但し、ヒータ23は、加熱用金型部20を加熱することが可能であれば、他の種類のヒータを用いることができる。
【0043】
加熱用金型部20は、工具鋼、超硬合金(WC-Co)、ニッケル合金、コバルト合金、モリブデン合金、タングステン合金、およびNi基金属間化合物合金等の金属により形成することができる。加熱用金型部20をNi基金属間化合物合金にて形成する場合、成形用金型部10において用いられるNi基金属間化合物合金と同様のNi基金属間化合物合金を用いることができる。金型1においては、例えば成形用金型部10と加熱用金型部20とを共にNi基金属間化合物合金にて形成することが可能である。
【0044】
本実施形態においては、主金型2を構成する成形用金型部10と加熱用金型部20とは別部材にて形成され、成形用金型部10が加熱用金型部20に嵌合している構成となっている。これにより、成形用金型部10を加熱用金型部20から取り外して、単独で交換することが可能となっている。また、加熱用金型部20から取り外した成形用金型部10を単独で加熱することが可能である。
【0045】
但し、図5に示すように、主金型2の成形用金型部10と加熱用金型部20とは、一体的に形成することも可能である。また、図6に示すように、主金型2は、成形用金型部10のみを備え、加熱用金型部20は備えていない構成とすることも可能である。
【0046】
(ケース)
ケース30は、主金型2の径方向において加熱用金型部20の外周に配置される外周部31と、主金型2の径方向と直交する軸線X方向の一側に配置され、成形用金型部10および加熱用金型部20を支持する支持部32とを有している。外周部31は、円筒形状に形成されている。支持部32は、外周部31の軸線X方向における一端部を閉じる円板形状に形成されている。ケース30は、SKD61等の工具鋼により形成されている。ケース30を形成するSKD61の熱伝導率は30.5W/m・K程度である。
【0047】
ケース30が外周部31と支持部32とを有することで、ケース30により成形用金型部10の外周および下面10bを覆いつつ、成形用金型部10をケース30により支持することが可能となっている。なお、本実施形態においては、外周部31と支持部32とは一体的に形成されているが、別体に形成された外周部31と支持部32とを接合することによりケース30を構成することも可能である。
【0048】
(耐力部)
金型1は、軸線X方向において成形用金型部10および加熱用金型部20とケース30の支持部32との間に配置される耐力部60を備えている。耐力部60は、例えば軸線X方向から見て成形用金型部10および加熱用金型部20と重なる範囲に配置されている。
【0049】
耐力部60は、被加工材9の熱間鍛造加工時においてケース30よりも高い硬さを有する部材にて形成されており、被加工材9の熱間鍛造加工時に成形用金型部10にかかる軸線X方向の大きな荷重を、耐力部60により受け止めることが可能となっている。耐力部60は、例えば熱間鍛造加工が行われる高温環境下において高い強度を有するNi基金属間化合物合金にて形成することができる。
【0050】
このように、金型1においては、成形用金型部10および加熱用金型部20からなる主金型2とケース30の支持部32との間に耐力部60を配置しており、支持部32は、耐力部60を介して成形用金型部10および加熱用金型部20を支持している。これにより、被加工材9を高温で熱間鍛造加工した際に金型1に大きな衝撃が繰り返し加わったとしても、金型1に割れや劣化が生じることを抑制することができ、金型1の長寿命化を図ることが可能となる。
【0051】
(断熱部)
断熱部40は、主金型2の径方向において、主金型2とケース30との間に配置されている。具体的には、断熱部40は主金型2の径方向において、主金型2の加熱用金型部20とケース30の外周部31との間に配置されている。主金型2の径方向において、ケース30の外周部31は断熱部40の外周に位置し、主金型2の加熱用金型部20は断熱部40の内周に位置している。断熱部40は、軸線X方向において、主金型2および耐力部60が位置する範囲に形成されている。つまり、断熱部40は、主金型2の外周および耐力部60の外周に位置している。
【0052】
断熱部40は、加熱用金型部20および耐力部60の外周面に嵌装される内径側環状部材41と、ケース30における外周部31の内周面に嵌装される外径側環状部材42と、内径側環状部材41と外径側環状部材42とに接続される連結部材43と、内径側環状部材41、外径側環状部材42、および連結部材43によって囲まれた断熱空間40Aとを有している。
【0053】
連結部材43は、径方向における一端部が内径側環状部材41に接続され、径方向における他端部が外径側環状部材42に接続されている。このように、連結部材43を内径側環状部材41と外径側環状部材42とに接続することで、断熱部40を間に挟んで配置される主金型2の加熱用金型部20および耐力部60とケース30の外周部31とが、連結部材43により連結されている。
【0054】
主金型2の径方向においては、主金型2とケース30との間に断熱空間40Aが存在しているが、主金型2とケース30とを連結部材43によって連結することで、金型1を補強することが可能となっている。例えば、金型1の主金型2に軸線X方向への力がかかった場合に、加熱用金型部20の外周面を連結部材43によって支持し、加熱用金型部20が外径側に開くことを抑制することができる。
【0055】
これにより、加熱用金型部20と加熱用金型部20に嵌装される成形用金型部10との密着度合いを高めて、加熱用金型部20から成形用金型部10への熱の伝達を良好にすることが可能となっている。また、径方向における主金型2とケース30との間に連結部材43を配置することで、金型1の径方向における中心部に主金型2を位置決めすることが可能となっている。さらに、径方向における耐力部60とケース30との間に連結部材43を配置することで、金型1の径方向における中心部に耐力部60を位置決めすることが可能となっている。
【0056】
断熱空間40Aには空気層が形成されており、断熱空間40Aの熱伝導率は、成形用金型部10の熱伝導率、加熱用金型部20の熱伝導率、およびケース30の熱伝導率よりも小さくなっている。空気層が形成された断熱空間40Aは、0.6W/m・K以下の熱伝導率を有している。
【0057】
また、断熱部40においては、断熱部40の体積に対する断熱空間40Aの体積が占める割合である空隙率が80%以上となるように設定されている。つまり、断熱部40においては、断熱部40の全体の体積に対する、径側環状部材41、外径側環状部材42、および連結部材43が占める体積が20%未満となるように設定されている。
【0058】
本実施形態においては、断熱空間40Aには空気層が形成されているが、アルゴンガスもしくは窒素ガス等の不活性ガス、または他の気体が断熱空間40Aに充満した構成であってもよい。また、断熱空間40A内が減圧されて真空状態となった構成であってもよい。このように、断熱空間40Aに気体が充満した構成、および断熱空間40Aが真空状態となった構成の場合は、断熱空間40Aを密閉したうえで、断熱空間40Aに気体を充満させる、または断熱空間40Aを真空状態とすることが可能である。
【0059】
また、金型1においては、加熱用金型部20とケース30の外周部31との間に、ケース30の熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有した、耐火レンガまたはセラミックス等の個体からなる部材を全体的に充填することにより、断熱部40を構成することもできる。このように、断熱部40は、ケース30の熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有した個体層により構成することも可能である。
【0060】
径側環状部材41、外径側環状部材42、および連結部材43は、ケース30の熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有する部材にて形成されている。径側環状部材41、外径側環状部材42、および連結部材43は、例えばインコネル(「INCONEL」は登録商標)625、またはインコネル600により形成することができる。径側環状部材41、外径側環状部材42、および連結部材43を形成するインコネル625の熱伝導率は9.8W/m・K程度、インコネル600の熱伝導率は14.8W/m・K程度である。
【0061】
このように、断熱部40は、ケース30の熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有しているため、成形用金型部10の径方向において、主金型2からケース30側へ向けて熱が伝達されることを抑制することが可能となっている。また、成形用金型部10の径方向において、主金型2からの熱が耐力部60を通じてケース30側へ伝達されることを抑制することが可能である。これにより、被加工材9の熱間鍛造加工時に、高温に加熱した成形用金型部10の温度が低下することを抑制するとともに、ケース30を低温に保持してケース30の冷却を不要とすることが可能である。
【0062】
特に、断熱部40においては、断熱空間40Aの熱伝導率が0.6W/m・K以下であり、且つ空隙率が80%以上であるため、高温に加熱した成形用金型部10と、ケース30の外周面との温度差を大きく保つことが可能となっている。
【0063】
金型1においては、断熱部40を有することで、成形用金型部10を700℃以上の高温に加熱した際に、成形用金型部10とケース30との温度差が500℃以上となるように構成することができる。
【0064】
具体的には、断熱部40の断熱空間40Aの空隙率を85%に設定して、成形用金型部10を888℃に加熱した場合の、ケース30における外周部31の外周面の温度をシミュレーションにて算出すると、248℃になるとの結果を得ることができた。さらに、断熱部40の断熱空間40Aの空隙率を83.6%に設定して、成形用金型部10を882℃に加熱した場合の、ケース30における外周部31の外周面の温度をシミュレーションにて算出すると、344℃になるとの結果を得ることができた。なお、シミュレーションは、ANSYS Mechanical 2019 R1を用いて行った。
【0065】
また、金型1においては、例えば成形用金型部10を800℃に加熱した際に、ケース30の温度を300℃以下に保持することが可能である。
【0066】
本実施形態においては、連結部材43は、径方向および軸線X方向に延び、断熱空間40Aを周方向に仕切る板状部材にて形成されており、断熱部40は4つの連結部材43を有している。しかし、断熱部40は、3つ以下の連結部材43を有した構成、および5つ以上の連結部材43を有した構成とすることも可能である。なお、複数の連結部材43を金型1に設けた場合、各連結部材43は、金型1の強度バランスの観点から、周方向へ等間隔に配置することが好ましい。
【0067】
また、連結部材43は、断熱空間40Aを周方向に仕切る板状部材だけでなく、中実の棒状部材、中空のパイプ状部材、六角形状が連続するハニカム形状に形成された部材、および断熱空間40Aを軸線X方向において仕切る円板状部材等の、他の形状の部材にて形成することも可能である。
【0068】
また、連結部材43は、金型1の径方向における主金型2とケース30との間に配置されているが、軸線X方向において主金型2とケース30との間に配置することも可能である。つまり、金型1が、軸線X方向において主金型2とケース30の支持部32との間に空間を有する構成であった場合、主金型2と支持部32との間に連結部材43を配置して、主金型2を支持する構成とすることが可能である。
【0069】
本実施形態の断熱部40においては、連結部材43を内径側環状部材41と外径側環状部材42とに接続することで主金型2とケース30とを連結しているが、図7に示すように、連結部材43を主金型2とケース30とに直接接続することで、主金型2とケース30とを連結することも可能である。この場合、連結部材43の内周側の端部は、主金型2のみに接続することができ、主金型2および耐力部60の両方に接続することもできる。
【0070】
このように、連結部材43を主金型2とケース30とに直接接続した場合、内径側環状部材41および外径側環状部材42は不用となり、加熱用金型部20および耐力部60の外周面と、ケース30における外周部31の内周面と、連結部材43とによって囲まれた空間が断熱空間40Aとなる。また、内径側環状部材41および外径側環状部材42を設けない構成の場合、連結部材43は、耐力部60とケース30とに接続することも可能である。
【0071】
なお、図7に示した金型1においては、連結部材43は主金型2の加熱用金型部20とケース30の外周部31とに接続されているが、図6に示した主金型2が成形用金型部10のみを備えた構成において内径側環状部材41および外径側環状部材42を設けない場合には、連結部材43は、成形用金型部10とケース30の外周部31とに接続することができる。
【0072】
また、本実施形態においては、耐力部60の径方向の大きさは主金型2の径方向の大きさと同程度に形成されていて、耐力部60とケース30の外周部31との間に断熱部40が介在しているが、耐力部60を主金型2よりも大径に形成して、耐力部60が径方向においてケース30の外周部31まで延びた構成とすることもできる。この場合、断熱部40は、軸線X方向において、主金型2が位置する範囲のみに形成される。
【0073】
本実施形態においては、金型1を、被加工材9を熱間鍛造加工する際に用いる熱間鍛造用金型に適用した例について説明したが、金型1は、被加工材9に対して、冷間鍛造加工、温間鍛造加工、またはプレス加工等の他の加工を施す場合に用いることも可能である。
【0074】
[熱間鍛造装置]
金型1は、被加工材9を熱間鍛造加工する熱間鍛造装置8に用いることができる。図8に示すように、熱間鍛造装置8は、金型1と、金型1の上方に対向して配置され、金型1に対して軸線X方向に沿った方向へ移動可能なパンチ87とを備えている。パンチ87は、軸線X方向に沿った方向へ移動することにより、金型1に対して近接離間する。例えば、パンチ87は、軸線X方向に沿って下降させると金型1に近接し、軸線X方向に沿って上昇させると金型1から離間する。
【0075】
なお、熱間鍛造装置8においては、金型1が固定され、パンチ87が軸線X方向に沿った方向へ移動するように構成されているが、パンチ87が固定されるとともに、金型1が軸線X方向に沿った方向へ移動するように構成することも可能である。また、金型1およびパンチ87が共に軸線X方向に沿った方向へ移動するように構成することもできる。つまり、金型1とパンチ87とが、軸線X方向に沿って相対的に近接離間する構成であればよい。
【0076】
金型1は、熱間鍛造装置における第1金型の一例である。パンチ87は、第1金型に対向して配置され、第1金型に対して相対的に近接離間する方向へ移動可能な第2金型の一例である。
【0077】
熱間鍛造装置8においては、金型1を第1金型として用いている。但し、熱間鍛造装置8においては、金型1と同様の構成の金型を第2金型として用いても良く、さらには金型1と同様の構成の金型を第1金型と第2金型との両方に用いることもできる。
【0078】
熱間鍛造装置8は、装置本体に固定される下側ダイベース80と、下側ダイベース80の上方に配置され、装置本体に上下方向へ移動可能に取り付けられる上側ダイベース85とを備えている。
【0079】
下側ダイベース80の上面には冷却板81が固定され、冷却板81の上面には断熱板82が固定され、断熱板82の上面にはプレート83が固定されており、プレート83の上面に金型1が取り付けられている。
【0080】
冷却板81は冷却管81aを有しており、冷却管81a内に冷却水を循環させることにより、冷却板81を冷却することが可能となっている。断熱板82は、ケース30の熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有した部材にて形成されており、金型1からの熱が冷却板81側へ伝達されることを抑制している。プレート83は、平板状部材にて形成されている。熱間鍛造装置8に装着された状態の金型1の上端には、蓋板84が固定されており、蓋板84により断熱部40における断熱空間40Aの上方が閉塞されている。
【0081】
上側ダイベース85の下面には、パンチホルダ86が固定されており、パンチホルダ86にパンチ87、第1スペーサ88、および第2スペーサ89が支持されている。第1スペーサ88はパンチ87の上方に配置され、第2スペーサ89は第1スペーサ88の上方に配置されている。
【0082】
パンチ87は金型1と対向する位置に配置されており、上側ダイベース85とともに上下方向へ移動可能に構成されている。熱間鍛造装置8においては、上側ダイベース85によりパンチ87を下方へ移動させて、パンチ87を金型1の成形用金型部10に近接させ、成形用金型部10とパンチ87とにより被加工材9を挟み込んで成形する。
【0083】
熱間鍛造装置8により被加工材9を熱間鍛造加工する場合、まず成形用金型部10および加熱用金型部20を所定温度に加熱するとともに、被加工材9を再結晶温度以上に加熱し、加熱された被加工材9を成形用金型部10の成形部11に載置する。
【0084】
この場合、成形用金型部10および加熱用金型部20は、ヒータ23により加熱することができる。また、加熱用金型部20をヒータ23により加熱するとともに、成形用金型部10を金型1から取り外して別途の加熱装置により加熱した後に加熱用金型部20の嵌合孔21に嵌合することもできる。
【0085】
次に、パンチ87を下降させて金型1に近接させて、被加工材9を成形用金型部10とパンチ87とにより挟み込んでプレスする。このように被加工材9をプレスすると、図9に示すように、被加工材9が成形用金型部10の成形部11により成形される。
【0086】
金型1の成形用金型部10をNi基金属間化合物合金にて形成した場合は、成形用金型部10を700℃~1000℃の温度に加熱した状態で、被加工材9を熱間鍛造加工することができる。このように成形用金型部10を高温に加熱した状態で、被加工材9の熱間鍛造加工を行うことで、被加工材9がチタン合金やニッケル合金といった難加工材であった場合でも、被加工材9を適正に成形することが容易となる。
【0087】
この場合、さらに加熱用金型部20を500℃以上に加熱した状態で、被加工材9の熱間鍛造加工を行うことができる。このように、成形用金型部10の周囲に位置する加熱用金型部20を加熱した状態で被加工材9を熱間鍛造加工することで、熱間鍛造加工時に成形用金型部10の温度が低下することを抑制することができる。これにより、成形用金型部10を高い温度に保持した状態で被加工材9を熱間鍛造加工することができ、被加工材9がチタン合金やニッケル合金といった難加工材であった場合でも、被加工材9を適正に成形することが容易となる。
【0088】
また、成形用金型部10および加熱用金型部20を高温に加熱したとしても、加熱用金型部20の外周には断熱部40が配置されていて、成形用金型部10の径方向において、成形用金型部10および加熱用金型部20からの熱がケース30に伝達することが抑制されるため、ケース30を低温に保持することができる。従って、被加工材9の鍛造加工時にケース30を冷却する必要がなく、成形用金型部10の温度を高温に保持することが可能である。
【0089】
さらに、金型1においては、主金型2の軸線X方向における一側に位置する耐力部60の外周にも断熱部40が配置されているため、成形用金型部10の径方向において、成形用金型部10および加熱用金型部20からの熱が耐力部60を通じてケース30に伝達されることを抑制できる。これにより、ケース30をより低温に保持するするとともに、成形用金型部10の温度をより高温に保持することが可能である。
【0090】
また、ケース30の構成材料は高温に加熱されると軟化が生じるが、高温での熱間鍛造時においてもケース30を低温に保持することができるため、ケース30を冷却することなく、ケース30に軟化が生じることを抑制することができる。
【0091】
本実施形態においては、金型1を、被加工材9を熱間鍛造加工する熱間鍛造装置8に用いた例について説明したが、金型1は、被加工材9に対して冷間鍛造加工または温間鍛造加工等を施す、他の鍛造加工装置に用いることも可能である。
【0092】
[熱間鍛造方法]
また、金型1の成形用金型10をNi基金属間化合物合金にて形成し、熱間鍛造装置8を用いて被加工材9の鍛造加工を行う場合には、以下のような鍛造方法により鍛造加工を行うことが好ましい。
【0093】
つまり、鍛造方法は、主金型2の成形用金型部10を700℃~1000℃に加熱する主金型加熱工程と、被加工材9を成形用金型部10よりも高い温度に加熱する被加工材加熱工程と、主金型加熱工程および被加工材加熱工程の後に、前記成形用金型部10により被加工材9を鍛造加工する鍛造工程とを備え、鍛造工程を成形用金型部10が700℃以上の温度にある状態で完了させるように構成される。
【0094】
このように、成形用金型部10を700℃~1000℃の高温に加熱するとともに、被加工材9を成形用金型部10よりも高い温度に加熱した状態で被加工材9の鍛造加工を行い、被加工材9の鍛造加工を成形用金型部10が700℃以上の温度にある状態で完了させることで、成形用金型部10および被加工材9を高い温度に保持した状態で鍛造加工を完了させることができる。これにより、被加工材9がチタン合金やニッケル合金といった難加工材であった場合でも、被加工材9を適正に成形することが容易となる。
【0095】
また、主金型加熱工程においては、成形用金型部10を700℃~1000℃の高温に加熱するとともに、加熱用金型部20を500℃以上の温度に加熱することができる。
【0096】
このように、主金型加熱工程において、成形用金型部10の周囲に位置する加熱用金型部20を加熱しておくことで、鍛造工程において成形用金型部10の温度が低下することを抑制することができる。これにより、成形用金型部10を高い温度に保持した状態で鍛造加工を実施することができ、被加工材9がチタン合金やニッケル合金といった難加工材であった場合でも、被加工材9を適正に成形することが容易となる。
【0097】
また、鍛造方法においては、鍛造工程において被加工材9を鍛造加工する際に、少なくとも主金型2の表面に不活性ガスを吹き付けることが好ましい。この場合、不活性ガスは、例えば成形用金型部10のみに吹き付ける、または成形用金型部10および加熱用金型部20に吹き付けることができる。また、吹き付ける不活性ガスとしては、例えば窒素またはアルゴン等の不活性ガスを用いることができる。
【0098】
このように、鍛造工程において少なくとも主金型2の表面に不活性ガスを吹き付けることで、被加工材9に空気が接触することを抑制した状態で被加工材9の鍛造加工を行うことができ、被加工材9の表面にスケールが発生することを抑制できる。
【符号の説明】
【0099】
1 金型
2 主金型
8 熱間鍛造装置
9 被加工材
10 成形用金型部
11 成形部
20 加熱用金型部
23 ヒータ
30 ケース
31 外周部
32 支持部
40 断熱部
60 耐力部
87 パンチ
X 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材の加工に用いられる金型であって、
被加工材を成形する主金型と、
前記主金型の外周に配置され、前記主金型を支持するケースと、
前記主金型の径方向において前記主金型と前記ケースとの間に配置され、前記ケースよりも熱伝導率が小さい断熱部と、
を備え
前記断熱部は、前記主金型と前記ケースとの間に形成される断熱空間と、前記主金型の外周面に嵌装される内径側環状部材と、前記ケースの内周面に嵌装される外径側環状部材と、前記内径側環状部材と前記外径側環状部材とに接続される連結部材とを有し、
前記内径側環状部材と前記外径側環状部材とに接続された連結部材により主金型とケースとが連結されている金型。
【請求項2】
前記連結部材は、前記主金型の径方向および軸線方向に延び、前記断熱空間を周方向に仕切る板状部材にて形成される請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記内径側環状部材と、前記外径側環状部材と、前記連結部材とは、ケースの熱伝導率よりも小さな熱伝導率を有する部材にて形成されている請求項1または請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記断熱部においては、
前記断熱空間の熱伝導率は0.6W/m・K以下であり、且つ前記断熱部の体積に対する前記断熱空間の体積が占める割合である空隙率は80%以上である請求項2または請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを備えている請求項1~請求項4の何れか一項に記載の金型。
【請求項6】
前記成形用金型部と前記加熱用金型部とは別部材にて形成され、
前記成形用金型部は前記加熱用金型部に嵌合している請求項5に記載の金型。
【請求項7】
前記加熱用金型部は、主金型の軸線方向に貫通し、前記加熱装置が挿入される挿入孔を有し
前記加熱用金型部には、複数の前記挿入孔が、周方向に沿って等間隔に形成されている請求項5または請求項6に記載の金型。
【請求項8】
前記ケースは、前記径方向において前記断熱部の外周に配置される外周部と、前記径方向と直交する軸線方向の一側に配置され、前記主金型を支持する支持部とを有する請求項1~請求項7の何れか一項に記載の金型。
【請求項9】
前記軸線方向において前記主金型と前記ケースの前記支持部との間に配置され、前記被加工材の加工時において前記ケースよりも高い硬さを有する耐力部を備え
前記耐力部は、前記主金型よりも大径に形成され、径方向において前記ケースまで延びている請求項8に記載の金型。
【請求項10】
前記被加工材を鍛造加工する際に用いられる鍛造用金型である請求項1~請求項9の何れか一項に記載の金型。
【請求項11】
前記主金型は、Niを主成分とし、Alを2~13原子%、Vを5~17原子%、およびBを0.0010~0.1000重量%含み、初析L1相と(L1+D022)共析組織とからなる2重複相組織を有するNi基金属間化合物合金からなる請求項1~請求項10の何れか一項に記載の金型。
【請求項12】
前記Ni基金属間化合物合金は、0.01~1.0原子%のC、0~5原子%のCo、0~5原子%のCr、0~5原子%のTi、0~5原子%のNb、0~5原子%のTa、および0~5原子%のWの少なくとも一つをさらに含む請求項11に記載の金型。
【請求項13】
第1金型と、前記第1金型に対向して配置され、前記第1金型に対して相対的に近接離間する方向へ移動可能な第2金型とを備え、
請求項11または請求項12に記載の前記金型を、前記第1金型および前記第2金型の少なくとも一つに用い、
前記主金型を700℃~1000℃に加熱した状態で、前記被加工材の鍛造加工を行う鍛造装置。
【請求項14】
前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを有し、
前記成形用金型部を700℃~1000℃に加熱するとともに、前記加熱用金型部を500℃以上に加熱した状態で、前記被加工材の鍛造加工を行う請求項13に記載の鍛造装置。
【請求項15】
請求項11または請求項12に記載の前記金型を用いた鍛造方法であって、
前記主金型を700℃~1000℃に加熱する主金型加熱工程と、
前記被加工材を前記主金型よりも高い温度に加熱する被加工材加熱工程と、
前記主金型加熱工程および前記被加工材加熱工程の後に、前記主金型により前記被加工材を鍛造加工する鍛造工程とを備え、
前記鍛造工程を前記主金型が700℃以上の温度にある状態で完了させる鍛造方法。
【請求項16】
前記主金型は、被加工材を成形するための成形用金型部と、前記成形用金型部の外周に位置し、加熱装置を有する加熱用金型部とを有し、
前記主金型加熱工程においては、前記成形用金型部を700℃~1000℃に加熱するとともに、前記加熱用金型部を500℃以上に加熱する請求項15に記載の鍛造方法。
【請求項17】
前記鍛造工程において前記被加工材を鍛造加工する際に、少なくとも前記主金型の表面に不活性ガスを吹き付ける請求項15または請求項16に記載の鍛造方法。