IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人秋田県立大学の特許一覧 ▶ 大学共同利用機関法人自然科学研究機構の特許一覧

特開2022-164411光ファイバーおよびファイバーセンサ
<>
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図1
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図2
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図3
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図4
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図5
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図6
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図7
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図8
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図9
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図10
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図11
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図12
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図13
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図14
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図15
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図16
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図17
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図18
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図19
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図20
  • 特開-光ファイバーおよびファイバーセンサ 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164411
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】光ファイバーおよびファイバーセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20221020BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20221020BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20221020BHJP
   G01N 21/35 20140101ALI20221020BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G02B6/02 A
G02B6/02 376B
G02B6/42
G01N21/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069885
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100181593
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 寿晃
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】合谷 賢治
(72)【発明者】
【氏名】上原 日和
【テーマコード(参考)】
2G059
2H137
2H250
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB01
2G059BB04
2G059EE01
2G059EE04
2G059EE12
2G059GG02
2G059GG07
2G059HH01
2G059JJ17
2G059KK03
2G059LL01
2G059MM03
2G059NN07
2H137AA14
2H137AB05
2H137AB06
2H137BA02
2H137BA03
2H137BA04
2H137BB02
2H137BB09
2H137BB12
2H137BC02
2H137BC53
2H137BC73
2H137DB01
2H137EA02
2H137FA06
2H250AB02
2H250AB29
2H250AE71
2H250AH38
(57)【要約】
【課題】耐久性に優れる光ファイバーおよびファイバーセンサを提供する。
【解決手段】光ファイバー20は、コア22とコア22を被覆するクラッド23とを有し、検出部21を備える。検出部21は、光ファイバー20の経路に設けられ、検出部21が形成された部分以外のクラッド23より薄く形成されたクラッドを有する。ファイバーセンサ100は、光ファイバー20と、光ファイバー20に光を照射する光源10と、光ファイバー20から放射された光を検出する検出器30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと前記コアを被覆するクラッドとを有する光ファイバーであって、
前記光ファイバーの経路に形成された検出部を備え、
前記検出部は、前記検出部が形成された部分以外の前記クラッドより薄く形成された前記クラッドを有する、
ことを特徴とする光ファイバー。
【請求項2】
前記検出部における前記クラッドの最も薄い部分の厚みは、前記検出部以外のクラッドの厚みの0倍超3分の2以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー。
【請求項3】
前記検出部における前記クラッドの最も薄い部分の厚みは、0μm超20μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー。
【請求項4】
コアと前記コアを被覆するクラッドとを有する光ファイバーであって、
前記クラッドが露出した部分を有する検出部を備える、
ことを特徴とする光ファイバー。
【請求項5】
前記コアは、中赤外線領域の光を透過する、
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光ファイバー。
【請求項6】
前記コアおよび前記クラッドは、フッ化物を含む、
ことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光ファイバー。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の光ファイバーと、
前記光ファイバーに光を照射する光源と、
前記光ファイバーから放射された光を検出する検出器と、
を備えることを特徴とするファイバーセンサ。
【請求項8】
前記光源は、中赤外線領域の光を前記光ファイバーに照射し、
前記検出器は、前記光ファイバーを透過した中赤外線領域の光のスペクトを検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載のファイバーセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーおよびファイバーセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
気体または液体に含まれる成分またはその濃度を検出するため、光ファイバーを用いたファイバーセンサが用いられている。具体的には、ファイバーセンサは、ガスの漏洩検知またはモニタリング等に用いられている。
【0003】
特許文献1は、光ファイバーコアと、当該光ファイバーコアの表面を被覆し、疎水性物質と親水性物質とを含む湿度応答層とを有し、少なくとも疎水性物質は網目状のマトリクス層を形成し、湿度応答層は、気体中の水分量に応じて、光ファイバーコアの一端から入射した光の他端への到達量を変化させることを特徴とする呼気センサ用光ファイバーを開示する。
【0004】
特許文献2は、第1の光ファイバーと、当該第1の光ファイバーの両端に第1の光ファイバーの外周に光が漏洩するように接続された第2の光ファイバーと、第1の光ファイバーの外周に形成された、表面プラズモン共鳴または局在表面プラズモン共鳴を励起することが可能な金属の膜と、当該金属の膜の外周に形成された誘電体の膜と、当該誘電体の膜の外周に形成された水素吸蔵金属の膜とを具備し、誘電体の膜は、水素吸蔵金属の膜の誘電関数を調整する役割を果たす、水素センサを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-143906号公報
【特許文献2】特開2014-059300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献1に開示された呼気センサ用光ファイバーは、湿度応答層を有する。湿度応答層は、経時劣化するため、呼気センサ用光ファイバーの使用可能期間は湿度応答層の寿命に依存する。同様に、引用文献2に開示された水素センサは、第1の光ファイバーの外周に形成された、金属の膜、誘電体の膜等を有する。金属の膜、誘電体の膜等は、経時劣化するため、水素センサの使用可能期間は、金属の膜、誘電体の膜等の寿命に依存する。このため、センサに用いられる光ファイバーには、耐久性が求められている。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、耐久性に優れる光ファイバーおよびファイバーセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するため、本発明の第1の側面に係る光ファイバーの一様態は、
コアと前記コアを被覆するクラッドとを有する光ファイバーであって、
前記光ファイバーの経路に形成された検出部を備え、
前記検出部は、前記検出部が形成された部分以外の前記クラッドより薄く形成された前記クラッドを有する、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の目的を達成するため、本発明の第2の側面に係る光ファイバーの一様態は、
コアと前記コアを被覆するクラッドとを有する光ファイバーであって、
前記クラッドが露出した部分を有する検出部を備える、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の目的を達成するため、本発明の第3の側面に係るファイバーセンサの一様態は、
前記光ファイバーと、
前記光ファイバーに光を照射する光源と、
前記光ファイバーから放射された光を検出する検出器と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐久性に優れる光ファイバーおよびファイバーセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るファイバーセンサを示す図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】実施の形態1に係るファイバーセンサの製造方法を説明する図である。
図5】実施の形態1に係るファイバーセンサの製造方法を説明する図である。
図6】実施の形態1に係るファイバーセンサの原理を説明する図である。
図7】実施の形態2に係るファイバーセンサを示す図である。
図8】実施の形態3に係るファイバーセンサを示す図である。
図9】実施の形態4に係る光ファイバーを示す光軸に垂直な面で切断した断面図である。
図10】実施の形態5に係る光ファイバーを示す光軸に垂直な面で切断した断面図である。
図11図10のXI-XI断面図である
図12】実施の形態6に係る光ファイバーを示す光軸に垂直な面で切断した断面図である。
図13図12のXIII-XIII断面図である。
図14】実施の形態7に係る光ファイバーを示す光軸に垂直な面で切断した断面図である。
図15図14のXV-XV断面図である。
図16】実施例に係るファイバーセンサが検出したグリセリンのスペクトルである。
図17】実施例に係るファイバーセンサが検出したグリセリンの補正後のスペクトルである。
図18】実施例に係るファイバーセンサが検出したグリセリンの濃度と水由来の吸収との関係を示す図である。
図19】実施例に係るファイバーセンサが検出したグリセリンの濃度とグリセリン由来の吸収との関係を示す図である。
図20】実施例に係るファイバーセンサが検出したメタンガスのスペクトルである。
図21】実施例に係るファイバーセンサが検出した空気と純水のスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態に係る光ファイバーおよびファイバーセンサについて図面を参照しながら説明する。
【0014】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るファイバーセンサ100は、図1に示すように、光源10と、光ファイバー20と、検出器30と、レンズ41、42と、を備える。光ファイバー20は、検出部21を有する。これにより、光源10から放射された光Lは、光ファイバー20を透過する際に、検出対象Rにより光Lが検出部21で吸収される。ファイバーセンサ100は、光ファイバー20を透過した光Lのスペクトルを検出器30により検出して、検出部21に接触した検出対象Rの成分または濃度を検出するものである。検出対象Rとしては、特に限定されないが、気体または液体を含む流体であり、例えば、中赤外線領域に共鳴線を有する炭化水素系の各種分子、炭酸ガス、アンモニア、水蒸気等を含む。
【0015】
光源10は、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを光ファイバー20の一端部20aに照射するものであり、ASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を用いることが好ましい。ASE光源は、励起用光源から照射された励起光を吸収した希土類金属イオンなどの広帯域な自然放出光が誘導放出によって増幅するものであり、光共振器による波長選択機構がない点において、レーザーと異なるものである。
【0016】
光ファイバー20は、検出部21とコア22とコア22を被覆するクラッド23とを有し、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを透過するフッ化物系光ファイバーまたはカルコゲナイド系光ファイバーである。光ファイバー20の長さは、特に限定されず、検出部21が配置される場所に応じて選択される。
【0017】
検出部21は、図2および図3に示すように、光ファイバー20の経路に形成され、検出部21が形成された部分以外のクラッド23より薄く形成されたクラッド23を有する。言い換えると、検出部21は、クラッド23に凹部が形成された部分である。検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、検出部21におけるクラッド23の最も薄い部分であり、好ましくは、検出部21以外のクラッド23の厚みT2の3分の2以下、より好ましくは、厚みT2の5分の3以下、さらに好ましくは、厚みT2の2分の1以下である。具体的には、検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、好ましくは、20μm以下、より好ましくは、15μm以下である。また、検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、好ましくは、0倍超であり、より好ましくは、厚みT2の3分の1以上であり、さらに好ましくは、厚みT2の5分の2以上である。具体的には、検出部21におけるクラッド23の厚みT1は、好ましくは、0μm超であり、より好ましくは、5μm以上である。検出部21におけるクラッド23の厚みT1が上記値であることで、検出対象Rの成分または濃度を感度よく測定することが可能である。また、光ファイバー20の光軸方向における検出部21の長さL1の下限値は、特に限定されないが、好ましくは、0.5mm、より好ましくは、1mmである。また、検出部21の長さL1の上限値は、特に限定されないが、好ましくは、5mm、より好ましくは、3mmである。
【0018】
コア22は、光源10から放出された光Lが通過する部分であり、2.5μm~3.8μmの波長領域の光を透過するものであればよい。例えば、コア22は、ZBLAN(ZrF-BaF-LaF-AlF-NaF)ガラス、ZBYA(ZrF-BaF-YF-AlF)ガラス、AlF系ガラス、InF系ガラスなどのフッ化物ガラス、Ge-Se系、As-Se系、As-S系、Ge-As系などのカルコゲナイドガラスであってもよく、これらの混合物であってもよい。これらの中で、母材は、ZBLANガラスであることが好ましい。また、コア22の直径D1は、例えば、150μmである。この場合、光ファイバー20は、中赤外波長の光Lが複数のモードで伝送されるマルチモードファイバーである。なお、光ファイバー20として、シングルモードファイバーを用いてもよい。
【0019】
クラッド23は、コア22より低い屈折率を有する。クラッド23は、コア22と同様の材料から作成される。また、クラッド23の直径D2は、例えば、200μmである。また、検出部21以外のクラッド23の厚みT2は、例えば、25μmである。
【0020】
検出器30は、図1に示すように、光ファイバー20の他端部20bから照射された光Lを検出する位置に配置され、光ファイバー20を透過した、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の光Lのスペクトを検出するものである。検出したスペクトルを分析することで、検出部21に接触した検出対象Rの成分の種類または検出対象Rの濃度を検出することができる。
【0021】
レンズ41は、光源10から照射された光Lを光ファイバー20の一端部20aのコア22に集光するものである。レンズ42は、光ファイバー20の他端部20bから照射された光Lを検出器30のセンサ部にコリメートもしくは集光するものである。
【0022】
つぎに、上記構成を有する光ファイバー20の製造方法について説明する。
【0023】
まず、光ファイバー20を準備する。光ファイバー20としては、上述したように、好ましくは、フッ化物系光ファイバーを用いる。つぎに、図4に示すように、光ファイバー20のクラッド23を削る研磨棒200を準備する。研磨棒200は、好ましくは、円筒径の形状を有し、表面に研磨材が塗布されているものである。つぎに、光ファイバー20の経路における検出部21を形成する場所に、研磨棒200の軸を光ファイバー20の光軸方向と垂直にして研磨棒200を配置する。
【0024】
つぎに、研磨棒200を回転させながら、光ファイバー20の経路における検出部21を形成する場所に押し当てる。そのとき、研磨棒200により、光ファイバー20のクラッド23が削られる。図5に示すように、研磨棒200を光ファイバー20の光軸方向に移動しながら、予め決められた厚みT1にクラッド23を削ると、クラッド23に凹部が形成され、検出部21が形成された光ファイバー20が得られる。
【0025】
つぎに、以上の構成を有するファイバーセンサ100が、検出部21に接触した検出対象Rを検出する原理について説明する。
【0026】
光源10から光ファイバー20のコア22に光Lを照射すると、図6に示すように、コア22の屈折率がクラッド23の屈折率より高いため、入射角θが臨界角以上であると、光は全反射して、光軸方向に導かれる。このとき、光Lの一部は、エバネッセント光ELとして、クラッド23に浸透すると考えられる。
【0027】
検出部21に検出対象Rが接触している場合、検出対象Rの共鳴線に対応する波長の光Lが、エバネッセント光ELを介して、検出部21で吸収されると考えられる。
【0028】
つぎに、図1に示す検出器30は、光ファイバー20から照射された光Lのスペクトルを検出する。スペクトルは、検出対象Rが有する共鳴線に対応する波長において、吸収されると考えられるので、吸収された波長および吸収強度に基づいて、検出対象Rの種類および濃度を検出することができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態の光ファイバー20およびファイバーセンサ100は、クラッド23の一部に薄い部分が形成された検出部21を備えることで、耐久性に優れる。これは、検出部21が、クラッド23の一部を薄く成型されているのみであり、従来のファイバーセンサに設けられた感応層を有していないため、感応層が劣化することによる耐久性が劣るという欠点を改善できるためである。また、光ファイバー20およびファイバーセンサ100は、経路上にて、既存の赤外分光計測と同様に中赤外線領域に吸収を有する検出対象Rの分光計測が可能であり、リアルタイムに安定して計測が可能である。また、検出部21は、検出対象Rに依存した感応層を必要としないため、カスタマイズを要せず、気体、液体を問わず複数の種類の検出対象Rを計測することが可能である。また、本実施の形態の本実施の形態の光ファイバー20およびファイバーセンサ100は、分子の指紋領域と呼ばれている中赤外線領域の光を用いることで、検出対象Rとして中赤外線領域に共鳴線を有する炭化水素系の各種分子、炭酸ガス、アンモニア、水蒸気など多くの分子を検出することが可能である。また、検出部21は、クラッド23の一部を薄く削るのみで作成することが可能であり、特殊なファイバー加工を必要としないため、再現性良く、低コストのセンサーシステムの構築が容易である。
【0030】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るファイバーセンサ100は、実施の形態1に係るファイバーセンサ100が備える光ファイバー20に1つの検出部21が形成されているのに対して、図7に示すように、光ファイバー20に複数の検出部21a、21b、21cが形成されている点で異なる。実施の形態2の光源10、光ファイバー20、検出器30およびレンズ41、42は、実施の形態1と同様のものを用いる。
【0031】
このファイバーセンサ100では、光源10が連続発光する光を放射する場合、検出部21a、21b、21cのそれぞれに接触している検出対象R1、R2、R3の成分またはその平均濃度を検出することが可能である。この場合、チャンバー内等に存在する複数箇所の検出対象R1、R2、R3の成分またはその平均濃度を知ることができ、1箇所で測定する場合に比べて、高い精度で、検出対象Rを検出することができる。
【0032】
また、光源10がパルス発光する光を放射する場合、検出部21a、21b、21cと光ファイバーの他端部20bとの距離に応じて、検出部21a、21b、21cで吸収された光Lが検出器30に到達する時間が異なることを利用して、それぞれの検出部21a、21b、21cに接触する検出対象R1、R2、R3の成分またはその濃度をそれぞれ独立して検出することができる。これにより、このファイバーセンサ100では、容易に多点計測が可能となる。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態3に係るファイバーセンサ100は、実施の形態1および2に係るファイバーセンサ100に加えて、図8に示すように、光源10から放射された光の強度を測定するリファレンス検出器31と、ハーフミラー43と、を備える。実施の形態3の光源10、光ファイバー20、検出器30およびレンズ41、42は、実施の形態1および2と同様のものを用いる。
【0034】
ハーフミラー43は、光源10と光ファイバー20の一端部20aとの間に配置され、光源10から放射された光Lの一部をリファレンス検出器31に反射し、光源10から放射された残りの光Lを透過するものである。
【0035】
リファレンス検出器31は、ハーフミラー43で反射された光の強度を測定するものである。リファレンス検出器31で光Lの強度を測定することで、光源10から放射される光Lの強度に変化があったとしても、ハーフミラー43に反射された光の強度で補正することが可能となる。このため、光源10から放射される光の強度に変化が生じる場合であっても、精度を向上させることが可能となる。その他の効果は、実施の形態1および2と同様である。
【0036】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る光ファイバー20は、実施の形態1から3に係る光ファイバー20に加えて、図9に示すように、クラッド23を保護する保護層24をさらに備える。保護層24は、合成樹脂または光硬化樹脂を含む樹脂により作成される。検出部21に設けられた保護層24の厚みT3は、好ましくは、5μm未満、より好ましくは1μm未満である。また、厚みT3は、好ましくは、0μm超であり、より好ましくは、0.1μm以上である。厚みT3が上記値であることで、検出部21で検出対象Rを検出する感度を小さくすることなく、検出部21を保護できる。実施の形態4の検出部21、コア22およびクラッド23は、光ファイバー20、検出器30およびレンズ41、42は、実施の形態1から3と同様のものを用いる。クラッド23を保護する保護層24をさらに備えることで、光ファイバー20に外部から力が加えられても、光ファイバー20および検出部21に傷がつくことを防止できる。
【0037】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る光ファイバー20は、実施の形態1から4に係る光ファイバー20がクラッド23の一部に他の部分より薄い部分を有する検出部21を備えているのに対して、図10および図11に示すように、コア22が露出した検出部25を備える。このようにすることで、コア22が検出対象Rに直接接触するため、検出対象Rの種類によっては、高い感度で検出対象Rを検出することが可能である。
【0038】
(実施の形態6)
実施の形態6に係る光ファイバー20は、実施の形態5に係る光ファイバー20がコア22が露出した検出部25を備えるのに対して、図12および図13に示すように、コア22が露出し、さらに、コア22の一部に凹み部を有する検出部26を備える。このようにすることで、より広い範囲でコア22に検出対象Rに接触するため、検出対象Rの種類によっては、より高い感度で検出対象Rを検出することが可能である。
【0039】
(実施の形態7)
実施の形態7に係る光ファイバー20は、実施の形態5および6に係る光ファイバー20がコア22が露出した検出部25、26を備えるのに対して、図14および図15に示すように、コア22の全周が露出した検出部27を備える。このようにすることで、さらに広い範囲でコア22に検出対象Rに接触するため、検出対象Rの種類によっては、より高い感度で検出対象Rを検出することが可能である。実施の形態7に係る光ファイバー20は、クラッドの全周を研磨して除去することにより作成されてもよく、コアレスファイバーの両端にコアとクラッドを有する伝送用光ファイバーを溶融接続して作成されてもよい。
【0040】
(変形例)
また、上述の実施の形態では、光源10が、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを照射する例について説明した。光源10は、光ファイバー20を透過できる波長域であればよく、紫外線、可視光線または近赤外線であってもよい。この場合、光ファイバー20は、光源10が照射する光の波長域の光を透過するものを用いる。また、上述の実施の形態では、光源10は、ASE光源を用いる例について説明したが、光源10は、光Lを照射できるものであればよく、発光ダイオード、ハロゲンランプ、量子カスケードレーザー、固体レーザー、ファイバーレーザー、またはスーパーコンティニウム光源等の光源であってもよい。光源10から照射される光Lの波長に対応する共鳴線を有する検出対象Rを検出することが可能である。
【実施例0041】
以下、ファイバーセンサ100の効果を実施例により実証した。この実施例は、本開示の一実施態様を示すものであり、本開示は何らこれらに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
実施例1において、図1に示す、光源10と、光ファイバー20と、検出器30と、を備えるファイバーセンサ100を用いた。光源10として、2.5μm~3.8μmの中赤外線領域の波長領域の光Lを照射するものを用いた。光ファイバー20として、ZBLANで作成され、クラッド23の一部に他の部分より薄い部分を有する検出部21を備えるものを用いた。詳細には、図3に示す検出部21におけるクラッド23の厚みT1が10μm、検出部21の長さL1が2mmである光ファイバー20を用いた。
【0043】
上記ファイバーセンサ100を用いて、液体である、グリセリンと水の混合液と、ジエチレングリコールと、をそれぞれ光ファイバー20の検出部21に接触させて、検出器30でスペクトルを測定した。グリセリンと水の混合液は、グリセリンが0.0wt%、20.3wt%、41.6wt%、59.3wt%、80.8wt%、99.5wt%のものを測定した。測定したスペクトルを図16に示す。このスペクトルは、空気による吸収が含まれるので、空気による吸収の影響を除去したスペクトルを図17に示す。このスペクトルは、水由来の吸収波長である2899nmにおいて、グリセリンの濃度が大きくなるにつれて吸収量が小さくなっていることがわかった。また、グリセリンと水の混合液は、3000nm付近の吸収では、ジエチレングリコールより大きくなっていた。また、ジエチレングリコール由来の吸収波長である、2997nm、3421nm、3484nmでは、ジエチレングリコールの吸収がグリセリンと水の混合液に対して大きくなっていた。この結果から、ファイバーセンサ100は、スペクトルを分析することにより、検出対象Rの成分の種類を特定できることがわかった。
【0044】
つぎに、上記スペクトルをさらに定量的に検証した。水由来の吸収波長である2899nmにおいて、グリセリンの濃度と、透過率との関係を図18に示す。グリセリンの含有率が大きくなると、水の含有率が小さくなるため、水由来の吸収波長である2899nmでは、グリセリンの含有率が大きくなるにつれて、2899nmでの光Lの透過率が大きくなることがわかった。
【0045】
また、グリセリン由来の吸収波長である3409nmにおいて、グリセリン濃度と、透過率と、の関係を図19に示す。グリセリン由来の吸収である3409nmでは、グリセリンの含有率が大きくなるにつれて、3409nmでの透過率が小さくなることがわかった。以上のように、ファイバーセンサ100は、定量分析に用いることが可能であることがわかった。
【0046】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で用いたファイバーセンサ100を用いて、気体であるメタンガスを検出できるか検証した。
【0047】
この例では、1%のメタンガスと、5%のメタンガスと、を光ファイバー20の検出部21に接触させ、ファイバーセンサ100を用いて、図20に示すスペクトルを得た。このスペクトルでは、メタンの吸収線に応じた波長の光Lが吸収されており、気体においても検出対象Rの種類を特定できることがわかった。また、1%のメタンガスより5%のメタンガスの方が透過率が小さくなっており、気体である検出対象Rであっても濃度の検出できることがわかった。
【0048】
(実施例3)
実施例3では、図12および図13に示す検出部26を有する光ファイバー20を備えるファイバーセンサ100を用いた。実施例1および2では、クラッド23の一部に他の部分より薄い部分を有する検出部21により測定したが、実施例3では、コア22が露出し、さらに、コア22の一部に凹み部を有する検出部26により測定した。実施例3で用いた光源10および検出器30は、実施例1および2で用いたものと同じものを用いた。光ファイバー20は、ZBLANで作成されたものを用いた。検出部26の軸方向の長さは2mmであった。
【0049】
この例では、空気と、純粋と、を光ファイバー20の検出部26に接触させ、ファイバーセンサ100を用いて、図21に示すスペクトルを得た。クラッド23の一部に他の部分より薄い部分を有する検出部21との違いは、コア22が露出した検出部26では、外界の屈折率変化に対して感応するため、空気と水との屈折率差によって、伝搬光の光強度変化が発生すると考えられる。この効果は3200nm付近でスペクトルが交差していることから確認できたと解される。これは、全反射が発生する条件である臨界角で説明できると考えられる。詳細には、外界が空気の場合の臨界角は40°以下であるのに対して、純水の場合には臨界角が50°程度になるためである。光ファイバー20の伝搬光のうち、大きな入射角で伝搬する光は屈折率の低い空気(屈折率1.000292)の場合には漏洩するが、外界が水(屈折率1.3334)であると、臨界角が大きいため、漏洩していた光がコアを伝搬するようになると考えられる。以上のように、コア22が露出した検出部26を有するファイバーセンサ100であっても、空気と、純粋と、の違いを検出できることがわかった。
【0050】
以上のように、本実施例のファイバーセンサ100は、液体および気体を含む流体の検出対象Rの成分または濃度を検出できることがわかった。また、検出部21は、検出対象Rに依存した感応層を必要としないため、カスタマイズを要せず、気体、液体を問わず複数の検出対象Rを計測することが可能であることもわかった。また、本実施の形態の光ファイバー20およびファイバーセンサ100は、中赤外線領域の光Lを用いることで、検出対象Rとして中赤外線領域に共鳴線を有する水、グリセリン、ジエチレングリコール、メタンガスを検出することが可能であることがわかった。検出対象Rとしては、上記以外に中赤外線領域に共鳴線を有する分子等であれば、検出することが可能であると考えられる。また、検出部26は、検出対象Rとして空気および純水を検出できることがわかった。
【0051】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0052】
10…光源、20…光ファイバー、20a…一端部、20b…他端部、21、21a、21b、21c、25、26、27…検出部、22…コア、23…クラッド、24…保護層、30…検出器、31…リファレンス検出器、41、42…レンズ、43…ハーフミラー、100…ファイバーセンサ、200…研磨棒、D1、D2…直径、T1、T2…厚み、L1…長さ、L…光、EL…エバネッセント光、R、R1、R2、R3…検出対象
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21