(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164463
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】車両用合わせガラス、車両
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20221020BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20221020BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C03C27/12 F
C03C27/12 D
B60J1/00 J
B32B17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021069964
(22)【出願日】2021-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坪井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 慶治
(72)【発明者】
【氏名】三輪 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】平田 泰
(72)【発明者】
【氏名】山田 麗未
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AG00A
4F100AG00E
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK23C
4F100AK25B
4F100AK42D
4F100AK53B
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4F100CA04C
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4F100EJ17
4F100EJ42
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4F100GB32
4F100JK07B
4F100JK07D
4F100YY00A
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4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
4G061AA04
4G061BA02
4G061CB16
4G061CB18
4G061CD03
4G061CD18
4G061DA02
4G061DA22
4G061DA29
(57)【要約】
【課題】ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む中間膜を有する車両用合わせガラスにおいて、耐チッピング性を向上すること。
【解決手段】本車両用合わせガラスは、対向する2枚のガラス板の間に中間膜を有する車両用合わせガラスであって、前記中間膜は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体及び硬化剤を含む、第1中間層と、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む、第2中間層と、を含み、かつ前記第1中間層及び前記第2中間層の間にセパレート層を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2枚のガラス板の間に中間膜を有する車両用合わせガラスであって、
前記中間膜は、
エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体及び硬化剤を含む、第1中間層と、
ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む、第2中間層と、を含み、かつ
前記第1中間層及び前記第2中間層の間にセパレート層を備えることを特徴とする車両用合わせガラス。
【請求項2】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位を、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体の質量を基準にして5質量%~50質量%含む、請求項1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項3】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位が、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含む、請求項1又は2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項4】
前記硬化剤が、酸無水物化合物を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項5】
前記酸無水物化合物の含有量が、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.5質量部~30質量部である、請求項4に記載の車両用合わせガラス。
【請求項6】
前記中間膜の厚さは、0.1mm以上1mm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項7】
前記セパレート層は、第1中間層及び第2中間層よりも20℃における貯蔵弾性率が大きい、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項8】
前記第2中間層の20℃における貯蔵弾性率に対する、前記第1中間層の20℃における貯蔵弾性率の比が、2以上である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項9】
前記セパレート層は、PETフィルムを含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の車両用合わせガラスを含む、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用合わせガラス、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行時の飛び石などの飛散物の衝突に対する耐性、すなわち耐チッピング性に優れた車両用合わせガラスが求められている。車両用合わせガラスの耐チッピング性は、使用するガラスを厚くすることで向上できるが、車両用合わせガラスの重量が増加する。車両用合わせガラスの耐チッピング性は、強化ガラス等のように強度の高いガラスを使用することでも向上できるが、強化ガラスは、破損時に小さな小片状の傷がガラス全面に広がるため、運転者の視界が低下する。
【0003】
また、ポリビニルアセタール樹脂のような柔らかい樹脂及び可塑剤を含む中間膜を有する車両用合わせガラスは、耐チッピング性に劣ることが分かっている。一方で、耐チッピング性に優れた中間膜も検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この中間膜とポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む中間膜とを組み合わせて使用する場合、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む中間膜から該耐チッピング性に優れた中間膜へ可塑剤が移行することで狙いのチッピング性能が出ないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む中間膜を有する車両用合わせガラスにおいて、耐チッピング性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本車両用合わせガラスは、対向する2枚のガラス板の間に中間膜を有する車両用合わせガラスであって、前記中間膜は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体及び硬化剤を含む、第1中間層と、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む、第2中間層と、を含み、かつ前記第1中間層及び前記第2中間層の間にセパレート層を備える。
【発明の効果】
【0007】
開示の一実施態様によれば、ポリビニルアセタール樹脂及び可塑剤を含む中間膜を有する車両用合わせガラスにおいて、耐チッピング性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態にかかる車両用合わせガラスを例示する図である。
【
図2】本実施形態にかかる車両用合わせガラスを搭載可能な車両を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本発明の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張している場合がある。
【0010】
なお、車両とは、代表的には自動車であるが、電車、船舶、航空機等を含む、車両用合わせガラスを有する移動体を指すものとする。
【0011】
また、平面視とは車両用合わせガラスの所定領域を車両用合わせガラスの車内側の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは車両用合わせガラスの所定領域を車両用合わせガラスの車内側の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又はそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」又はそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0013】
図1は、本実施形態にかかる車両用合わせガラスを例示する図であり、
図1(a)は平面図、
図1(b)は
図1(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0014】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、車両用合わせガラス10は、ガラス板11と、ガラス板12と、第1中間層13と、第2中間層14と、セパレート層15とを有する。ガラス板11は、車両用合わせガラス10を車両に取り付けたときに車外側となる第1の側に配置されており、ガラス板12は、車両用合わせガラス10を車両に取り付けたときに車内側となる第2の側に配置されている。
【0015】
ガラス板11とガラス板12とは、対向して配置されている。第1中間層13及び第2中間層14は、対向するガラス板11及び12の間に配置されている。第1中間層13は、第2中間層14よりも車外側に配置される。また、セパレート層15は、対向する第1中間層13及び第2中間層14の間に配置されている。なお、第1中間層13と第2中間層14とを合わせて、中間膜と称する場合がある。
【0016】
例えば、第1中間層13の車外側の面はガラス板11の車内側の面に接し、第1中間層13の車内側の面はセパレート層15の車外側の面に接する。また、第2中間層14の車外側の面はセパレート層15の車内側の面に接し、第2中間層14の車内側の面はガラス板12の車外側の面に接する。
【0017】
なお、
図1(a)及び
図1(b)では、セパレート層15の外周が平面視でガラス板11及び12の外周と同位置にあるが、セパレート層15の外周は平面視でガラス板11及び12の外周よりも内側に位置することが好ましい。このようにすることで、セパレート層15にしわが生じにくくなる。
【0018】
車両用合わせガラス10は、遮蔽層18を有してもよい。遮蔽層18は、例えば、車両用合わせガラス10の周縁領域に帯状に設けられる。遮蔽層18は、不透明な層であり、例えば、車両用合わせガラス10の周縁部に沿って帯状に設けられる。遮蔽層18は、例えば、不透明な着色セラミック層である。遮蔽層18の色は任意であるが、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色が好ましく、黒色がより好ましい。遮蔽層18は、遮光性を持つ着色中間膜や着色フィルム、着色中間膜と着色セラミック層の組み合わせ、調光機能を有する層でもよい。着色フィルムは赤外線反射フィルム等と一体化されてもよい。
【0019】
平面視における遮蔽層の幅は、例えば、10mm~200mm程度である。車両用合わせガラス10に不透明な遮蔽層が存在することで、車両用合わせガラス10の周縁部を車体に保持するウレタン等の樹脂からなる接着剤が紫外線により劣化することを抑制できる。又、セパレート層15がバスバーや電極を有する場合、セパレート層15と電気的に接続されるバスバーや電極を車外側及び/又は車内側から視認しにくいように隠蔽できる。また、セパレート層15の外周は、平面視で遮蔽層18と重複してもよい。こうすることで、セパレート層15の外周部で生じる歪が視認されなくなる。
【0020】
遮蔽層18は、例えば、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、焼成することで形成できるが、これには限定されない。遮蔽層は、例えば、黒色又は濃色顔料を含有する有機インクをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させて形成してもよい。
【0021】
図1(a)及び
図1(b)では、遮蔽層18は、ガラス板12の車内側の面に設けられている。しかし、遮蔽層18は、必要に応じ、ガラス板11の車内側の面に設けてもよいし、ガラス板11の車内側の面及びガラス板12の車内側の面の両方に設けてもよい。
【0022】
図1(a)及び
図1(b)では、説明の便宜上、車両用合わせガラス10を、実際の湾曲した形状を省略すると共に、外形形状を簡略化して矩形状に図示している。しかし、車両用合わせガラス10は、長手方向及び短手方向の両方に湾曲した複曲形状でもよい。或いは、車両用合わせガラス10は、長手方向のみに湾曲した単曲形状や、短手方向のみに湾曲した単曲形状でもよい。もちろん、車両用合わせガラス10は、
図1(a)及び
図1(b)のように湾曲していない平板形状でもよい。
【0023】
車両用合わせガラス10が湾曲している場合、車両用合わせガラス10は車外側(第1の側)に向けて凸となるように湾曲していることが好ましい。又、
図1(a)では、車両用合わせガラス10を矩形状としているが、車両用合わせガラス10の平面形状は矩形状には限定されず、台形状等を含む任意の形状としてかまわない。
【0024】
図2は、本実施形態にかかる車両用合わせガラスを搭載可能な車両を例示する図であり、自動車100をルーフ側から視た状態を示している。車両用合わせガラス10は、例えば、
図2に示す自動車100のフロントガラス110に適用すると好適である。ただし、これには限らず、車両用合わせガラス10は、フロントサイドガラス120R及び120L、リアサイドガラス130R及び130L、リアガラス140に適用してもよい。あるいは、車両用合わせガラス10は、これら以外の自動車用窓ガラス、例えば、ルーフガラス、フロントベンチガラス、リアクォーターガラス等に適用してもよい。
【0025】
ここで、ガラス板11、ガラス板12、第1中間層13、第2中間層14、セパレート層15について詳述する。
【0026】
〔ガラス板〕
ガラス板11及び12は、無機ガラスでも有機ガラスでもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。車両用合わせガラス10の外側に位置するガラス板11は、耐傷付き性の観点から無機ガラスが好ましく、成形性の観点からソーダライムガラスが好ましい。
【0027】
無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0028】
強化ガラスは、例えば風冷強化ガラス等の物理強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。物理強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させる等、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化できる。
【0029】
化学強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化できる。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよく、さらに、透明が好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板を用いてもよい。
【0030】
一方、有機ガラスの材料としては、特に制限はないが、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、又はハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂の中でも、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。有機ガラスの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ガラス板11及び12の形状は、特に矩形状に限定されず、種々の形状及び曲率に加工された形状でもよい。ガラス板11及び12の曲げ成形には、重力成形、プレス成形、ローラー成形等が用いられる。ガラス板11及び12の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0033】
ガラス板11の板厚は、最薄部で1.1mm以上3mm以下が好ましい。ガラス板11の板厚が1.1mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、車両用合わせガラス10の質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。ガラス板11の板厚は、最薄部で1.8mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.6mm以下がさらに好ましく、1.8mm以上2.2mm以下がさらに好ましく、1.8mm以上2.0mm以下がさらに好ましい。
【0034】
ガラス板12の板厚は、0.3mm以上2.3mm以下が好ましい。ガラス板12の板厚が0.3mm以上であるとハンドリング性がよく、2.3mm以下であると質量が大きくなり過ぎない。
【0035】
ガラス板11及び/又は12の外側に撥水、紫外線や赤外線カットの機能を有する被膜や、低反射特性、低放射特性を有する被膜を設けてもよい。又、ガラス板11及び/又は12の中間膜と接する側に、紫外線や赤外線カット、低放射特性、可視光吸収、着色等の被膜を設けてもよい。
【0036】
ガラス板11及び12が湾曲形状の無機ガラスである場合、ガラス板11及び12は、フロート法による成形の後、中間膜による接着前に、曲げ成形される。曲げ成形は、ガラスを加熱により軟化させて行われる。曲げ成形時のガラスの加熱温度は、大凡550℃~700℃の範囲で制御するとよい。
【0037】
〔第1中間層〕
第1中間層は、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(以下、(A)成分とも略す)と、(B)硬化剤(以下、(B)成分とも略す)とを含む、第1中間層用樹脂組成物の硬化物を含む。
【0038】
第1中間層は(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物から形成された樹脂層であり、単層で構成されてもよく、複数層で構成されてもよい。
【0039】
以下、第1中間層を形成するために用いることができる樹脂組成物、すなわち第1中間層用樹脂組成物について説明する。
【0040】
第1中間層用樹脂組成物は、上述の通り、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体と、(B)硬化剤とを少なくとも含む。
【0041】
(A)成分は、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位を含む。(A)成分の含有量は、例えば、第1中間層用樹脂組成物の全質量を基準として、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上である。
【0042】
(A)成分としては、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位と、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位と、場合により(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物に由来する単量体単位と、を含む共重合体が挙げられる。
【0043】
エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限はないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、又は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐チッピング性の観点から、グリシジル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。すなわち、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位は、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含むことが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
(A)成分におけるエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量)は、(A)成分の質量を基準として、5質量%~50質量%が好ましく、10質量%~40質量%がより好ましく、15質量%~35質量%がさらに好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量が5質量%以上であれば、耐チッピング性をより良好にできる。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量が50質量%以下であれば、第1中間層用樹脂組成物の保存中にエポキシ基同士の反応を抑制できるため、十分な保存安定性を得られる傾向がある。
【0045】
エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限はないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート若しくはメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート若しくはジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート:ベンジル(メタ)アクリレート若しくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート若しくはN-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
これらの中でも、コスト及び合成の容易性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、又は2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
(A)成分におけるエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーの配合量)は、(A)成分の質量を基準として、50質量%~95質量%が好ましく、60質量%~90質量%がより好ましく、65質量%~85質量%がさらに好ましい。
【0048】
エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーとして、脂肪族(メタ)アクリレートを使用する場合、(A)成分における脂肪族(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、脂肪族(メタ)アクリレートの配合量)は、(A)成分の質量を基準として、10質量%~50質量%が好ましく、15質量%~45質量%がより好ましく、20質量%~40質量%がさらに好ましい。エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーとして、脂環式(メタ)アクリレートを使用する場合、(A)成分における脂環式(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、脂環式(メタ)アクリレートの配合量)は、(A)成分の質量を基準として30質量%~80質量%が好ましく、35質量%~70質量%がより好ましく、40質量%~65質量%がさらに好ましい。
【0049】
(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、特に制限はないが、例えば、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、塩化ビニル、又は塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの中でも、第1中間層の靭性を向上させ易い観点から、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、又はN-フェニルマレイミドを使用することが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(A)成分における(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物に由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量)は、(A)成分の質量を基準として0質量%~40質量%が好ましく、5質量%~35質量%がより好ましく、10質量%~30質量%がさらに好ましい。
【0051】
(A)成分のガラス転移温度は、特に制限はないが、-30℃~150℃が好ましく、0℃~100℃がより好ましく、10℃~50℃がさらに好ましく、30℃~50℃が特に好ましい。(A)成分のガラス転移温度が-30℃以上である場合、耐チッピング性に優れる車両用合わせガラスが得られ易くなる傾向がある。(A)成分のガラス転移温度が150℃以下である場合、第1中間層の靱性が高くなり易いため、加工性に優れた第1中間層が得られ易くなる傾向がある。また、ガラス転移温度が-30℃以上であると、第1中間層の裁断時に刃に対する重合体の粘着を抑止できる傾向がある。また、ガラス転移温度が50℃以下であると、第1中間層の割れを抑止できる傾向がある。
【0052】
(A)成分のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した中間点ガラス転移温度である。具体的には、昇温速度10℃/分の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。測定温度は、ガラス転移温度を含む範囲であればよく、例えば-50℃~100℃又は-80℃~80℃であってもよい。
【0053】
(A)成分のガラス転移温度は、(A)成分を合成する共重合成分、例えば、上述のエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合割合により調整できる。
【0054】
(A)成分のエポキシ当量は、200g/eq~2000g/eqが好ましい。(A)成分のエポキシ当量が200g/eq以上であれば、第1中間層用樹脂組成物の保存中にエポキシ基同士の反応を抑制できるため、保存安定性が良好となる傾向がある。(A)成分のエポキシ当量が2000g/eq以下であれば、第1中間層を備える車両用合わせガラスが優れた耐チッピング性を有する傾向がある。エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準拠した方法によって測定した値である。
【0055】
(A)成分の重量平均分子量は、100,000~3,000,000が好ましい。(A)成分の重量平均分子量が100,000以上である場合、得られる第1中間層の靭性が向上する傾向がある。(A)成分の重量平均分子量が3,000,000以下である場合、車両用合わせガラス作製時に気泡が抜け易くなるため外観が良好になる傾向がある。(A)成分の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、重合に用いる溶媒、連鎖移動剤の添加等、常用の方法により調整できる。
【0056】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算したポリスチレン換算値である。
【0057】
(A)成分の合成方法として、特に制限はないが、例えば、上記のエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、上記のエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー、及び場合によりさらに配合する上記の(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を、適切な熱ラジカル重合開始剤を用いて、加熱しながら共重合させる方法が挙げられる。重合方法として、特に制限はないが、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、又は溶液重合法が挙げられる。必要に応じて適切な連鎖移動剤等を使用して重合してもよい。
【0058】
(B)硬化剤は、(A)成分のエポキシ基と反応して架橋構造体を形成する成分である。(B)硬化剤としては、(A)成分のエポキシ基と反応し得る官能基を有するものであればよく、フェノール化合物、酸無水物化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、トリアジン化合物、又はホスフィン化合物等が挙げられる。これらの中でも、潜在硬化性及び光学的な透明性の観点からは硬化剤が酸無水物化合物を含むことが好ましい。硬化時間を短縮する観点からは硬化剤がイミダゾール化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部~50質量部が好ましい。(B)成分の含有量が0.01質量部以上であれば、樹脂組成物から形成される第1中間層の硬化性を良好にできる。そのため、耐チッピング性の高い車両用合わせガラスを得易くなること、及び工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できる。(B)成分の含有量が50質量部以下であれば、樹脂組成物の保存安定性を良好にできる傾向がある。同様の観点から、(B)成分の含有量は、0.5質量部~30質量部がより好ましい。
【0060】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、無水フタル酸`無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、又はメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等のアルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。アルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸は、例えば、炭素数1~9のアルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸であってもよい。硬化物の光学的な透明性の観点から、硬化剤が、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、及びアルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ヘキサヒドロ無水フタル酸、及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を含むことがさらに好ましい。
【0061】
酸無水物化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5質量部~30質量部が好ましく、1質量部~25質量部がより好ましく、5質量部~20質量部がさらに好ましく、10質量部~20質量部が特に好ましい。酸無水物化合物の含有量が0.5質量部以上であれば、第1中間層用樹脂組成物から形成される第1中間層の硬化性を良好にできる。そのため、優れた耐チッピング性及び光学的に高い透明性を有する車両用合わせガラスをより得易くなること、及び工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できる。酸無水物化合物の含有量が30質量部以下であれば、第1中間層用樹脂組成物の保存安定性を良好にできる傾向がある。酸無水物化合物の含有量は、(A)成分におけるエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量100質量部に対し、40質量部~70質量部が好ましく、45質量部~65質量部がより好ましく、50質量部~60質量部がさらに好ましく、50質量部~55質量部がより好ましい。
【0062】
イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール,2-ウンデシルイミダゾール,2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール,1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1Hピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、又は1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロリド等が挙げられる。
【0063】
これらの中でも、第1中間層用樹脂組成物の保存安定性の観点から、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、又は2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールを使用することが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
イミダゾール化合物の含有量は、特に制限はないが、例えば、(A)成分100質量部に対して、1.0質量部以下、0.5質量部以下、0.3質量部以下、0.2質量部以下、又は0.03質量部以下である。イミダゾール化合物の含有量が上記の範囲内である場合、硬化温度の低温化及び硬化時間の短縮を図れると共に、硬化後の樹脂組成物が黄変することを抑制できる傾向がある。
【0065】
第1中間層用樹脂組成物は、場合により、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤の例としては、例えば、有機リン系硬化促進剤が挙げられる。イミダゾール化合物も硬化促進剤の機能を発揮できるが、本明細書では硬化剤に分類される。有機リン系硬化促進剤の例としては、トリフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタン、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5-テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、又はテトラブチルホスホニウムデカン酸塩が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
硬化促進剤の含有量は、特に制限はないが、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部~50質量部が好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であれば、第1中間層用樹脂組成物から形成される第1中間層の硬化性を良好にできる。そのため、耐チッピング性の高い車両用合わせガラスをより得易くなること、及び工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できる。硬化促進剤の含有量が50質量部以下であれば、第1中間層用樹脂組成物の保存安定性を良好にできる傾向がある。硬化促進剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0067】
第1中間層用樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、特に制限はないが、例えば、重合禁止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、無機充填剤、難燃剤、可塑剤、又はその他のポリマー等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の含有量は、例えば、第1中間層用樹脂組成物の全量に対して、0.01質量%~5質量%である。
【0068】
重合禁止剤の例としては、パラメトキシフェノールが挙げられる。シランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又はγ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランが挙げられる。界面活性剤の例としては、ポリジメチルシロキサン系化合物、又はフッ素系化合物が挙げられる。
【0069】
無機充填剤の例としては、破砕シリカ、溶融シリカ、マイカ、粘土鉱物、ガラス短繊維、又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、又は金属水和物が拳げられる。無機充填剤の含有量は、例えば、第1中間層用樹脂組成物100質量部に対して、0.01質量部~100質量部、0.05質量部~50質量部、又は0.1質量部~30質量部である。無機充填剤の含有量が0.01質量部~100質量部であると、第1中間層用樹脂組成物に関して、低収縮性、機械強度の向上、低熱膨張率等の効果が得られる傾向がある。無機充填剤は、カップリング剤等の市販の表面処理剤等で処理されてもよい。
【0070】
その他のポリマーの例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又はアイオノマー樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂又はフェノール樹脂を用いると、第1中間層の強度が高くなり易い傾向がある。ポリビニルアセタール樹脂又はアイオノマー樹脂を用いると、第1中間層とガラス板との接着力が高くなり易い傾向がある。
【0071】
第1中間層用樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤をさらに含んでもよい。有機溶剤として、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン若しくはシクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル若しくはγ-ブチロラクトン等のエステル系有機溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル若しくはジエチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、若しくはジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド若しくはN-メチルピロリドン等のアミド系有機溶剤等が添げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
第1中間層用樹脂組成物の樹脂層(すなわち第1中間層用樹脂層)は、第1中間層用樹脂組成物を膜状又は層状に形成して得られるものである。第1中間層用樹脂層は、第1中間層用樹脂組成物を硬化(架橋を含む)させて得られるものであってもよい。すなわち、第1中間層用樹脂層は、第1中間層用樹脂組成物又はその硬化物を含む樹脂層である。
【0073】
第1中間層用樹脂層は、例えば、第1中間層用樹脂組成物を支持フィルムに塗布することにより製造できる。第1中間層用樹脂組成物が有機溶剤で希釈されている場合、該樹脂組成物を支持フィルムに塗布し、加熱乾燥にて有機溶剤を除去することにより、車両用合わせガラスの作製に用いられる第1中間層用樹脂層を製造できる。この場合、支持フィルム及び第1中間層用樹脂層から構成される2層構造を有する第1中間層用フィルム材を得ることができる。
【0074】
支持フィルム上に設けられた第1中間層用樹脂層には、必要に応じて、さらに保護フィルムを貼り付けることができる。この場合、支持フィルムと第1中間層用樹脂層と保護フィルムとから構成される3層構造を有する第1中間層用フィルム材を得られる。
【0075】
第1中間層用樹脂層は、温度0℃、周波数0.5Hzにおける損失正接tanδが、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましい。tanδが0.5以下であると、外部からの衝撃による第1中間層の変形が抑制されるため、耐チッピング性に優れた車両用合わせガラスをより得易くなる傾向がある。tanδは、引張モードの動的粘弾性試験により測定した数値である。具体的には、樹脂層を厚さ0.1mmに調整したフィルム材を、150℃で2時間加熱した後、動的粘弾性試験装置(TAインスツルメント・ジャパン株式会社製、RSA-G2)を用いて、サンプル幅5mm、サンプル長さ5mm、ひずみ量0.05%、温度0℃、周波数0.5Hzの条件で測定できる。
【0076】
フィルム材を加熱する温度及び時間の条件は、樹脂組成物に含まれる(A)成分及び(B)成分の種類と量により変化するが、樹脂組成物が分解及び揮発せずに十分に架橋できる条件であれば特に制限はない。ひずみ量は、フィルム材が塑性変形しない領域で可能な限り大きな値を設定することが好ましい。
【0077】
このようにして得られた第1中間層用フィルム材は、例えばロール状に巻き取り、ロール状で保存できる。ロール状のフィルム材を好適なサイズに切り出して、シート状にして保存することもできる。
【0078】
支持フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、又はポリイミド等が挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、支持フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、又はポリイミドが好ましい。第1中間層用樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムを支持フィルムとして用いることが好ましい。
【0079】
支持フィルムの厚さは、目的とする柔軟性により適宜変え得るが、3μm~250μmが好ましい。支持フィルムの厚さが3μm以上であれば、フィルム強度が十分である傾向がある。支持フィルムの厚さが250μm以下であれば、十分な柔軟性が得られる傾向がある。このような観点から、支持フィルムの厚さは、5μm~200μmがより好ましく、7μm~150μmがさらに好ましい。
【0080】
保護フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、又はポリプロピレン等が挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、又はポリプロピレンが好ましい。第1中間層用樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムを保護フィルムとして用いることが好ましい。
【0081】
保護フィルムの厚さは、目的とする柔軟性により適宜設定できるが、10μm~250μmが好ましい。保護フィルムの厚みが10μm以上であれば、フィルム強度が十分である傾向がある。保護フィルムの厚さが250μm以下であれば、十分な柔軟性が得られる傾向がある。このような観点から、保護フィルムの厚みは、15μm~200μmがより好ましく、20μm~150μmがさらに好ましい。
【0082】
第1中間層用樹脂層の厚さは、特に限定されないが、10μm~10,000μmが好ましい。第1中間層用樹脂層の厚さが10μm以上であれば、厚さが十分であるため第1中間層用樹脂層の強度が十分になる傾向がある。第1中間層用樹脂層の厚さが10,000μm以下であれば、第1中間層用樹脂層の加工が容易となる傾向がある。このような観点から、第1中間層用樹脂層の厚さは、50μm~5,000μmがより好ましく、100μm~1,000μmがさらに好ましい。第1中間層用樹脂層は、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて含む樹脂組成物により形成されることから、第1中間層用樹脂層の厚さを厚くしても、耐チッピング性及び光学的な透明性に優れる車両用合わせガラスを形成できる。このような観点から、第1中間層用樹脂層の厚さは、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、又は400μm以上であってもよい。
【0083】
第1中間層用樹脂層は、押出成形のような溶融成形によって成膜することで形成することもできる。第1中間層用樹脂層は、車両用合わせガラスの反射防止層、防汚層、色素層、ハードコート層等の機能性を有する機能層等と組み合わせて貼り合わせるために使用してもよい。反射防止層は、可視光反射率が5%以下となる反射防止性を有している層であればよい。反射防止層は、透明なプラスチックフィルム等の透明基材に既知の反射防止方法で処理された層であってもよい。防汚層は、表面に汚れがつき難くするためのものである。色素層は、色純度を高めるための層である。色素層は、車両用合わせガラスで透過する不要な波長の光を低減するために使用される。ハードコート層は、表面硬度を高くするために設けられる。ハードコート層は、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の膜であってもよい。
【0084】
〔第2中間層〕
第2中間層は、ポリビニルブチラール樹脂及び可塑剤を含む。ポリビニルブチラール樹脂は、優れた耐貫通性を有する。また、ポリビニルブチラール樹脂は、優れた熱融着性も有する。
【0085】
第2中間層は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤又は着色剤等が挙げられる。
【0086】
第2中間層の厚さは、例えば、0.1mm~3.0mmであり、好ましくは、0.2mm~2.5mmである。第2中間層の厚さが0.1mm以上であれば、車両内側からの衝撃に対する車両用合わせガラスの耐貫通性を効果的に向上できる。第2中間層の厚さが3.0mm以下であれば、車両用合わせガラスの剛性が維持できる。
【0087】
なお、前述のように、第1中間層(第1中間層用樹脂層)の厚さは、10μm~10,000μmが好ましい。しかし、中間膜の厚さ(第1中間層の厚さと第2中間層の厚さの合計)は、0.1mm以上1mm以下であることが好ましい。これにより、耐貫通性、耐チッピング性及び加工性に優れた車両用合わせガラスが得られる。
【0088】
第2中間層用樹脂層を作製するには、例えば、ポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂組成物を、押出機を用いて加熱溶融状態で押し出し成形する。その後、押し出し成形された樹脂層を、ガラス板のサイズ・形状に合わせて、適宜伸展させることで、第2中間層用樹脂層を形成できる。第2中間層用樹脂層の形態は、好ましくは、フィルム状である。
【0089】
〔セパレート層〕
セパレート層は、第1中間層及び第2中間層の間に配置される。仮に、セパレート層が配置されていないとすると、第2中間層に含まれる可塑剤が第1中間層側へ移行して第1中間層の貯蔵弾性率が下がり、第1中間層の耐チッピング性が低下する。例えば、当初は3GPa程度あった第1中間層の貯蔵弾性率が、可塑剤の移行により時間経過と共に低下し、最終的には0.01GPa程度になる場合がある。
【0090】
第1中間層及び第2中間層の間にセパレート層を配置すると、セパレート層が第2中間層に含まれる可塑剤の第1中間層側への移行を抑制する。これにより、第1中間層は本来の高い貯蔵弾性率を維持できるため、高い耐チッピング性能を発揮できる。
【0091】
第2中間層に含まれる可塑剤の第1中間層側への移行を抑制するために、セパレート層には、第2中間層に含まれる可塑剤との相溶性が不利な樹脂フィルムが好適に用いられる。また、セパレート層は、第1中間層及び第2中間層よりも20℃における貯蔵弾性率が大きいことが好ましい。
【0092】
セパレート層に好適な上記の要件を満たす樹脂フィルムとしては、例えば、PETフィルムが挙げられる。セパレート層は、ウレタンアクリレートやエポキシアクリレート等のアクリル樹脂、エポキシ樹脂等を含む層であってもよい。
【0093】
セパレート層は、積層構造であってもよい。この場合、セパレート層は、調光機能、発光機能、又は電熱機能を有する層を有してもよい。例えば、第1基材、第1導電性薄膜、調光層、第2導電性薄膜、及び第2基材が順次積層された調光素子において、第1基材及び/又は第2基材が上記の樹脂を含む場合が挙げられる。この場合、第1中間層及び第2中間層の間にセパレート層として調光素子を配置することで、第1基材及び/又は第2基材が第2中間層に含まれる可塑剤の第1中間層側への移行を抑制する。
【0094】
第1中間層、セパレート層、第2中間層の厚さの比は、例えば、1:0.5~1.0:7~16とできる。セパレート層の厚さは、0.025mm以上0.1mm以下が好ましい。セパレート層の厚さが0.025mm以上であれば、第2中間層に含まれる可塑剤の第1中間層側への移行を抑制する効果を十分に発揮できる。セパレート層の厚さが0.1mm以下であれば、車両用合わせガラスの製造が容易である。
【0095】
なお、第1中間層が十分な耐チッピング性能を発揮するためには、第1中間層の貯蔵弾性率は1GPa以上が好ましく、2GPa以上がより好ましく、3GPa以上がさらに好ましい。また、第1中間層が十分な耐チッピング性能を発揮するためには、第2中間層の20℃における貯蔵弾性率に対する、第1中間層の20℃における貯蔵弾性率の比が、2以上であることが好ましい。
【0096】
〔車両用合わせガラス〕
車両用合わせガラス10の総厚は、2.8mm以上10mm以下が好ましい。車両用合わせガラス10の総厚が2.8mm以上であれば、十分な剛性を確保できる。又、車両用合わせガラス10の総厚が10mm以下であれば、十分な透過率が得られると共にヘイズを低減できる。
【0097】
車両用合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれは1.5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。ここで、ガラス板11とガラス板12の板ずれとは、すなわち、平面視におけるガラス板11の端部とガラス板12の端部のずれ量である。
【0098】
車両用合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.5mm以下であると、外観を損なわない点で好適である。車両用合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.0mm以下であると、外観を損なわない点でさらに好適である。
【0099】
〔車両用合わせガラスの製造方法〕
本実施形態にかかる車両用合わせガラスは、特に制限はないが、例えば、1対のガラス板の間に、第1中間層用樹脂層、セパレート層、及び第2中間層用樹脂層を配置させて積層体を形成する工程と、積層体を加熱及び加圧して車両用合わせガラスを形成する工程とを含む方法により製造できる。
【0100】
第1中間層用樹脂層は、積層体の形成工程並びに積層体の加熱及び加圧工程のうちの少なくとも1つ以上の工程の過程で、硬化され得る。2枚のガラス板及びこれらの間に配置された第1中間層、セパレート層、及び第2中間層を有する積層体は、例えば、第1中間層の上述のフィルム材、セパレート層となる樹脂フィルム、及び第2中間層の上述のフィルム材を2枚のガラス板で挟むことにより形成できる。また、第1中間層用樹脂層は、一方のガラス板上に、上述の第1中間層用樹脂組成物を塗布することにより形成してもよい。
【0101】
第1中間層用樹脂層を硬化させる工程は、特に制限はないが、作業時間を短縮させる観点及び気泡等の外観不良を低減させる観点から、2枚のガラス板並びにこれらの間に配置された第1中間層用樹脂層、セパレート層、及び第2中間層用樹脂層を有する積層体を形成させる工程で硬化又は架橋させることが好ましい。また、第1中間層用樹脂層を硬化させる工程は、特に制限はないが、気泡等の外観不良を低減させる観点からは、積層体を加熱及び加圧して車両用合わせガラスを形成させる工程で硬化又は架橋させることが好ましい。
【0102】
第1中間層を硬化させる方法は、第1中間層用樹脂組成物を硬化させることができれば、特に制限はないが、80℃~300℃の温度範囲で及び10分~5時間加熱する方法が好ましい。加熱温度は、硬化(架橋を含む)を十分に進行させる観点及びエネルギーコストを低減させる観点から、100℃~250℃がより好ましく、120℃~200℃がさらに好ましい。適切な加熱時間は、加熱温度により変化するが、加熱温度と同様の観点から20分~4時間がより好ましく、30分~2時間がさらに好ましい。
【0103】
第1中間層用樹脂組成物又は第1中間層用樹脂層は、硬化又は架橋前は優れた柔軟性及び/又は熱流動性を有することから、曲面ガラスヘの追従性及び貼合性に優れる傾向がある。また、第1中間層用樹脂組成物又は第1中間層用樹脂層は、車両用合わせガラスの貼合時又は貼合後に熱硬化又は架橋させることで優れたた機械強度を発現することから、車両用合わせガラスの耐チッピング性を向上できる。第1中間層用樹脂組成物又は第1中間層用樹脂層は熱流動性を発現する温度よりも高い温度から硬化又は架橋が緩やかに進行する潜在硬化性を有することから、貼合時に気泡及びシワが消失し易い傾向がある。第2中間層用樹脂層は熱可塑性を有するため、加熱及び加圧工程により良好に形成でき、曲面ガラスヘの追従性及び貼合性に優れる。
【0104】
なお、前述のように、第1中間層用樹脂層は、第1中間層用樹脂組成物を支持フィルムに塗布して乾燥させることにより製造できる。この場合、例えば、支持フィルムにPETフィルムを用い、乾燥後に支持フィルムを離型せず、そのままセパレート層として用いてもよい。また、支持フィルム上に設けられた第1中間層用樹脂層に保護フィルムを貼り付ける場合は、例えば、支持フィルム及び保護フィルムにPETフィルムを用い、乾燥後に支持フィルムと保護フィルムの一方を離型し、剥離しない他方をそのままセパレート層として用いてもよい。
【0105】
〈実施例〉
以下、実施例について説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されない。なお、例1は実施例、例2は比較例である。
【0106】
[例1]
(樹脂Aの作製)
アクリル酸ブチル(BA)300.0g、アクリル酸ジシクロペンタニル(FA-513AS、日立化成株式会社製)550.0g、及び、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジル(GMA)150.0gを混合して単量体混合物を得た。得られた単量体混合物に、重合開始剤として過酸化ラウロイル5.0gと、連鎖移動剤としてn-オクチルメルカプタン1.0gとを溶解させて、単量体を含む混合液を得た。冷却管、温度計、攪拌装置、及び窒素導入管が装着された反応容器に、イオン交換水2000g及びポリビニルアルコール0.3gを入れ、そこに、攪拌しながら上記混合液を加えた。形成された反応液を、窒素雰囲気下、攪拌回転数250回転/分(rpm)で攪拌しながら、60℃で5時間、次いで90℃で2時間かけて重合反応を進行させて、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む樹脂Aの粒子を形成させた。反応液から取り出した樹脂Aの粒子を、水洗及び乾燥した。
【0107】
(第1中間層用樹脂組成物、第1中間層用フィルム材の作製)
(A)成分として上記樹脂Aの粒子100.0g、(B)成分として酸無水物化合物である3又は4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(HN-5500、日立化成株式会社製)8.0g、及び、イミダゾール化合物である2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業株式会社製)0.3gをメチルエチルケトン100.0gに均一に溶解させ、樹脂ワニスとして第1中間層用樹脂組成物を得た。得られた樹脂ワニスを、支持フィルム(重剥離セパレータ)としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された表面に滴下し、バーコーターを用いて塗膜を形成し、塗膜を80℃で30分間の加熱により乾燥して、第1中間層用樹脂組成物から形成された厚み100μm(0.1mm)の樹脂層(第1中間層用樹脂層)を得た。樹脂層の上に、保護フィルム(軽剥離セパレータ)としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された面を被せ、これを1.0kgfのハンドローラーで押し付けることにより貼り付け、支持フィルム/第1中間層用樹脂層/保護フィルムの構成を有する車両用合わせガラスの第1中間層用フィルム材を得た。
【0108】
(車両用合わせガラスの作製)
縦150mm、横67mmのサイズに裁断した第1中間層用フィルム材を必要数準備した。第1中間層用フィルム材の軽剥離セパレータ及び重剥離セパレータを剥離して第1中間層用樹脂層を両面とも露出させた後、露出している第1中間層用樹脂層にセパレート層としてPETフィルム(縦:150mm、横:67mm)を4辺が重なるように積層した。次に、露出している第1中間層用樹脂層に第1ガラス板(フロートガラス、縦:150mm、横:67mm、厚さ:1.6mm)を4辺が重なるように積層した。次に、露出しているセパレート層に可塑剤を含むPVB樹脂シート(縦:150mm、横:67mm、厚さ:0.76mm)を4辺が重なるように積層した。次に、露出しているPVB樹脂シートに第2ガラス板(フロートガラス、縦:150mm、横:67mm、厚さ:1.6mm)を4辺が重なるように積層した。これにより、第1ガラス板/第1中間層/セパレート層(PETフィルム)/第2中間層(PVB樹脂層)/第2ガラス板の積層体を得た。
【0109】
次に、得られた積層体を、125℃に設定した真空ラミネータを用いて25分間加熱し、続いて150℃に設定したオートクレープを用いて、圧力115N/cm2、120分間の条件で加熱及び加圧した。これにより、第1ガラス板(1.6mm)/第1中間層(0.1mm)/セパレート層(PETフィルム0.025mm)/第2中間層(PVB樹脂層0.76mm)/第2ガラス板(1.6mm)の構成を有する車両用合わせガラスを得た。同様の操作により、車両用合わせガラスを必要枚数作製した。
【0110】
[例2]
第1中間層と第2中間層との間にセパレート層を配置しなかった以外は例1と同様にして、車両用合わせガラスを必要枚数作製した。例2の車両用合わせガラスは、第1ガラス板(1.6mm)/第1中間層(0.1mm)/第2中間層(PVB樹脂層0.76mm)/第2ガラス板(1.6mm)の構成を有する。
【0111】
[評価1:落球試験]
例1及び例2で得られた車両用合わせガラスを表面温度が23℃となるように調整した。次いで、JIS R 3212:2015の5.5耐貫通性試験に準拠して、4mの高さから質量2.26kgの鋼球を車両用合わせガラスの中心部分に第2中間層側から落下させる落球試験を実施した。
【0112】
例1で得られた車両用合わせガラス、及び例2で得られた車両用合わせガラスについて落球試験を行った結果、例1及び例2のいずれの車両用合わせガラスについても貫通しなかった。
【0113】
[評価2:貯蔵弾性率]
例1及び例2で作製した車両用合わせガラス(評価1で使用したものとは異なるサンプル)を常温常圧で1週間放置した。その後、各々の車両用合わせガラスの第1中間層の貯蔵弾性率を、ナノ動的粘弾性測定機(KLA-Tecor社製、G200型ナノインデンター)を用いて、以下の測定条件で測定した。例1の車両用合わせガラスの第1中間層の貯蔵弾性率は3GPa、例2の車両用合わせガラスの第1中間層の貯蔵弾性率は0.01GPaであった。
・測定ヘッド:高分解能DCM-IIヘッド
・圧子:フラットパンチ圧子(直径50μm)
・測定モード:粘弾性試験
・押し込み深さ:1μm
・周波数範囲:120Hz
・測定温度:25℃
・ポアソン比:0.35
・測定点数:10点(10点の測定値から平均値を算出)
[評価3:割れ率]
評価方法
例1及び例2で作製した車両用合わせガラス(横:67mm)に対し、ゴム板(横:10mm、厚さ:6mm)の一面を各々の車両用合わせガラスの横方向両端部に両面テープにて接着し、ゴム板の他面に対し、鉄板(横:67mm)を接着剤にて接着した評価用サンプルを作製した。各々の評価用サンプルをグラベロ試験機(スガ試験機 JA400LB)に取り付け、車両用合わせガラスの第1ガラス板の表面に対し、篩によって大きさを揃えた小石(0.25g)を0.5MPaの風圧にて70km/hで5秒間に240発を分散して衝突させた。前記試験を複数枚の車両用合わせガラスで実施し、第1ガラス板の第1中間層側の表面に達した亀裂の基点の総数を、衝突させた小石の総数で割り、割れ率を算出した。例1の車両用合わせガラスの割れ率は0.08%、例2の車両用合わせガラスの割れ率は0.67%であった。
【0114】
【表1】
表1は、評価1~評価3の車両用合わせガラスの構成と評価結果をまとめたものである。判定は、評価1~評価3の総合評価であり、『〇』は合格、『×』は不合格を示す、表1に示すように、例1及び例2の車両用合わせガラスは、評価1の落球試験でいずれも貫通せず、第2中間層にPVBを用いることで、優れた耐貫通性により安全性が確保できることが確認された。
【0115】
また、評価2の結果より、同材料で同厚の第1中間層を用いても、セパレート層を有しない例2の車両用合わせガラスは、セパレート層を有する例1の車両用合わせガラスと比べて、常温常圧で1週間放置後の第1中間層の貯蔵弾性率が大幅に低いことが確認された。これは、当初は例1の車両用合わせガラスの第1中間層と同程度あった例2の車両用合わせガラスの第1中間層の貯蔵弾性率が、PVBに含まれる可塑剤の移行により時間経過と共に低下したものと考えられる。評価3で例1の車両用合わせガラスの割れ率が例2の車両用合わせガラスの割れ率よりも低いのは、第1中間層が高い貯蔵弾性率を維持した結果、高い耐チッピング性能を発揮したためと考えられる。
【0116】
このように、第2中間層にPVBを用いることで、優れた耐貫通性が得られる。また、第1中間層及び第2中間層の間にセパレート層を配置することで、セパレート層が第2中間層に含まれる可塑剤の第1中間層側への移行を抑制するため、第1中間層は本来の高い貯蔵弾性率を維持し、高い耐チッピング性能を発揮できる。
【0117】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0118】
10 車両用合わせガラス
11、12 ガラス板
13 第1中間層
14 第2中間層
15 セパレート層
18 遮蔽層
100 自動車
110 フロントガラス
120R、120L フロントサイドガラス
130R、130L リアサイドガラス
140 リアガラス