(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164667
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化膜、赤外線透過フィルタ、積層体、固体撮像素子、センサ、及び、パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20221020BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20221020BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221020BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20221020BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221020BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20221020BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
C08L101/00
B32B27/20 A
G02B5/22
G02B5/28
G03F7/004 505
G03F7/027 502
G03F7/027 515
G03F7/20 501
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119984
(22)【出願日】2022-07-27
(62)【分割の表示】P 2020548299の分割
【原出願日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018176455
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019146457
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 哲志
(57)【要約】
【課題】硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制され、高湿感度に優れ、かつ、角度依存性に優れ、かつ、低背化が可能である硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】特定の赤外線吸収剤と、エポキシ基を有する化合物を含有する硬化性化合物とを含む硬化性組成物であって、特定の波長特性を有する硬化性組成物を提供すること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線吸収剤と、
硬化性化合物と、
を含む硬化性組成物であって、
前記硬化性化合物がエポキシ基を有する化合物を含有し、
前記赤外線吸収剤の、波長400nm~1,300nmにおける極大吸収波長における吸光度Xと、波長950nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yと、が下記式1を満たし、
前記硬化性組成物を0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際に、波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、
前記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、前記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である
硬化性組成物。
Y>X×0.5 式1
【請求項2】
前記硬化性化合物が酸基を有する樹脂を含有する請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
赤外線吸収剤と、
硬化性化合物と、
を含む硬化性組成物であって、
前記硬化性化合物がポリイミド樹脂を含有し、
前記赤外線吸収剤の、波長400nm~1,300nmにおける極大吸収波長における吸光度Xと、波長950nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yと、が下記式1を満たし、
前記硬化性組成物を0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際に、波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、
前記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、前記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である
硬化性組成物。
Y>X×0.5 式1
【請求項4】
波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物を更に含み、
前記波長Tbよりも150nm短波である波長をTa’とした際の、波長400nm以上前記Ta’以下の範囲の吸光度の最小値A’と、前記最大値Cとの比であるA’/Cが4.5以上である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物を2種以上含む、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物として、赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、黒色着色剤、紫色着色剤、及び、茶色着色剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、請求項4又は請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記赤外線吸収剤が、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、ジインモニウム化合物、ペリレン化合物、ピロロピロール化合物、金属錯体、及び、化合物半導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記式1を満たさない赤外線吸収剤を更に含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
光重合開始剤を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
赤外線透過フィルタの形成に用いられる、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化膜を備える赤外線透過フィルタ。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化膜又は請求項12に記載の赤外線透過フィルタと、
誘電体多層膜とを含む積層体。
【請求項14】
請求項11に記載の硬化膜、請求項12に記載の赤外線透過フィルタ、又は、請求項11に記載の積層体を備える固体撮像素子。
【請求項15】
請求項11に記載の硬化膜、請求項12に記載の赤外線透過フィルタ、又は、請求項11に記載の積層体を備えるセンサ。
【請求項16】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含む硬化性組成物層をパターン状に露光する工程と、
未露光部を除去してパターンを形成する工程と、を含む
パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性組成物、硬化膜、赤外線透過フィルタ、積層体、固体撮像素子、センサ、及び、パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スマートフォンや監視カメラ、車載カメラ、IoT(Internet of Things)用カメラ、赤外線センサなど、今後は「どこに何があるか」をAI等により認識する技術が重要となってくると考えられる。
ここで、これらのカメラ、センサ等において、赤外線を利用することが検討されている。赤外線は物体の材質等に依存した特徴的な吸収を有するため、物体の材質等の認識精度を向上させることが可能になると考えられる。
このように赤外線を利用するための赤外線透過フィルタとして、例えば特許文献1又は2に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1には、透明樹脂基板の両面に高屈折率の誘電体膜と低屈折率の誘電体膜を交互に積層された多層膜が各々形成され、波長域が420nm以上740nm以下の可視光を90%以上透過させ、波長域が770nm以上1,800nm以下の近赤外線をカットする近赤外線フィルタであって、上記透明樹脂基板の一方の面に形成された第一多層膜では短波長域の近赤外線を遮光し、他方の面に形成された第二多層膜では上記短波長域以外の長波長域の近赤外線を遮光することで、上記透明樹脂基板両面で波長域が770nm以上1,800nm以下の太陽光の積算照射量に対する近赤外線の平均透過率が15%以下となるようにカットすることを特徴とする近赤外線カットフィルタが記載されている。
【0004】
特許文献2には、赤外線透過フィルタと、近赤外線吸収フィルタとを有し、波長900nm以上1,000nm以下の光を検出することで物体を検出する赤外線センサであって、上記近赤外線吸収フィルタが、波長900nm以上1,000nm以下に極大吸収波長を有する近赤外線吸収物質を含有する赤外線センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-161731号公報
【特許文献2】国際公開第2015/166873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
赤外線吸収フィルタにおいては、可視光に由来するノイズの発生が抑制されることが求められている。
例えば、特許文献2に記載の近赤外線吸収フィルタを用いた場合、波長900nm以上1,000nm以下の比較的波長が短く、可視光に近い波長の赤外線を検出することを目的としているため、可視光に由来するノイズを抑制するという観点からは、更なる改良の余地があると考えられる。
更に、赤外線吸収フィルタにおいては、湿度への依存性が低く、高湿度環境下においても像のぼやけ等が抑制される(高湿感度に優れる)こと、入射光の角度への依存性(角度依存性)が低く、広角度の赤外線を透過できること、及び、得られるパターンの膜厚を小さくすることが可能である(パターンの低背化が可能である)ことが求められている。
特許文献1に記載の赤外線吸収フィルタは誘電体膜を積層することにより形成されており、角度依存性に劣る等の問題があった。
【0007】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制され、高湿感度に優れ、角度依存性に優れ、かつ、低背化が可能な硬化性組成物を提供することである。
また、本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記硬化性組成物を硬化してなる硬化膜、上記硬化膜を備える赤外線透過フィルタ、上記硬化膜若しくは上記赤外線透過フィルタ、及び、誘電体多層膜を含む積層体、上記硬化膜、上記赤外線透過フィルタ、若しくは、上記積層体を備える固体撮像素子若しくはセンサ、又は、上記硬化性組成物を用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 赤外線吸収剤と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物であって、上記赤外線吸収剤の、波長400nm~1,300nmにおける極大吸収波長における吸光度Xと、波長950nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yと、が下記式1を満たし、上記硬化性組成物を0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際に、波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、上記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、上記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である硬化性組成物。
Y>X×0.5 式1
<2> 波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物を更に含み、
上記波長Tbよりも150nm短波である波長をTa’とした際の、波長400nm以上上記Ta’以下の範囲の吸光度の最小値A’と、上記最大値Cとの比であるA’/Cが4.5以上である、<1>に記載の硬化性組成物。
<3> 上記波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物を2種以上含む、<2>に記載の硬化性組成物。
<4> 上記波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物として、赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、黒色着色剤、紫色着色剤、及び、茶色着色剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、<2>又は<3>に記載の硬化性組成物。
<5> 上記赤外線吸収剤が、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、ジインモニウム化合物、ペリレン化合物、ピロロピロール化合物、金属錯体、及び、化合物半導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6> 上記式1を満たさない赤外線吸収剤を更に含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<7> 光重合開始剤を更に含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<8> 赤外線透過フィルタの形成に用いられる、<1>~<7>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化膜。
<10> <9>に記載の硬化膜を備える赤外線透過フィルタ。
<11> <9>に記載の硬化膜又は<10>に記載の赤外線透過フィルタ、及び、誘電体多層膜を含む積層体。
<12> <9>に記載の硬化膜、<10>に記載の赤外線透過フィルタ、又は、<11>に記載の積層体を備える固体撮像素子。
<13> <9>に記載の硬化膜、<10>に記載の赤外線透過フィルタ、又は、<11>に記載の積層体を備えるセンサ。
<14> <1>~<8>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を含む硬化性組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を除去してパターンを形成する工程と、を含むパターン形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制され、高湿感度に優れ、角度依存性に優れ、かつ、低背化が可能な硬化性組成物を提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、上記硬化性組成物を硬化してなる硬化膜、上記硬化膜を備える赤外線透過フィルタ、上記硬化膜若しくは上記赤外線透過フィルタ、及び、誘電体多層膜を含む積層体、上記硬化膜、上記赤外線透過フィルタ、若しくは、上記積層体を備える固体撮像素子若しくはセンサ、又は、上記硬化性組成物を用いたパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る赤外線センサの一実施形態の構成を示す概略断面図である。
【
図2】本開示に係る赤外線センサの別の一実施形態の構成を示す概略断面図である。
【
図3】ピロロピロール化合物の一例における溶液中と膜中との吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
【
図4】ピロロピロール化合物PP-a~PP-hにおける溶液中の吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
【
図5】ピロロピロール化合物PP-i~PP-pにおける膜中の吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
【
図6】ピロロピロール化合物PP-q及び~PP-rの含有質量比を変化させ、J会合体の形成による吸収スペクトル変化を示す図である。
【
図7】ピロロピロール化合物PP-s及び~PP-tの含有質量比を変化させ、J会合体の形成による吸収スペクトル変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線又は放射線が挙げられる。
また、本開示における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本開示において、化学式中のMeはメチル基を、Etはエチル基を、Prはプロピル基を、Buはブチル基を、Phはフェニル基をそれぞれ示す。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本開示中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、特別な記載がない限り、波長の単位はnmとする。
特に限定しない限りにおいて、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において組成物中の各成分、又は、ポリマー中の各構成単位の量は、組成物中に各成分、又は、ポリマー中の各構成単位に該当する物質又は構成単位が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質、又は、ポリマー中に存在する該当する複数の各構成単位の合計量を意味する。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0012】
本開示で用いられる化合物の重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定でき、GPCの測定によるポリスチレン換算値として定義される。例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてTSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、6.0mmID×15.0cm)を、溶離液として10mmol/L リチウムブロミドNMP(N-メチルピロリジノン)溶液を用いることによって求めることができる。
近赤外線とは、極大吸収波長領域が波長700nm~波長2,500nmの光(電磁波)をいう。
本開示において、全固形分とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。本開示における固形分は、25℃における固形分である。
以下、本開示を詳細に説明する。
【0013】
(硬化性組成物)
本開示に係る硬化性組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、赤外線吸収剤と、硬化性化合物とを含む硬化性組成物であって、上記赤外線吸収剤の、波長400nm~1,300nmにおける極大吸収波長における吸光度Xと、波長700nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yと、が下記式1を満たし、上記硬化性組成物を0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際に、波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、上記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、上記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である。
Y>X×0.5 式1
また、本開示における硬化性組成物は、赤外線透過フィルタの形成に用いられる硬化性組成物であることが好ましい。
【0014】
本発明者は鋭意検討した結果、上記構成を採用することにより、硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制され、高湿感度に優れ、角度依存性に優れ、かつ、低背化が可能な硬化性組成物を提供することができることを見出した。
上記効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推測される。
硬化性組成物が赤外線吸収剤を含み、かつ、上述のA/Cが4.5以上であることにより、可視光領域から赤外線領域にかけての吸光度の変化が急峻となるため、可視光由来のノイズの発生が抑制されると考えられる。
また、硬化性組成物が上記式1を満たす赤外線吸収剤を含み、かつ、上述のA/Cが4.5以上であることにより、波長1,000nm~波長1,300nmの範囲内の赤外線を透過する赤外線吸収フィルタとすることができる。このような波長範囲の赤外線を用いた場合には、例えば波長1,400nm以上の赤外線を透過する赤外線吸収フィルタを用いた場合と比較して、水(水蒸気)による赤外線吸収の影響が小さくなるため、高湿感度に優れると考えられる。
更に、本開示に係る赤外線吸収剤を含む硬化性組成物の硬化膜においては、例えば誘電体多層膜のみを用いた場合と比較して、角度依存性に優れると考えられる。
加えて、本開示に係る硬化性組成物は、0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際にTbが存在するため、100μmを超える厚さで塗布した場合にTbが存在する組成物を用いた場合と比較して、低背化に優れると考えられる。
以下、本開示に係る硬化性組成物における各要件について詳細を説明する。
【0015】
<波長特性>
本開示に係る硬化性組成物は、0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際に、波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、上記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、上記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である。
本開示において、例えば「Taの波長から±50nmの範囲の波長」とは、「Ta-50nm以上Ta+50nm以下の範囲の波長」を意味する。
上記A/Cは、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
上記最小値Aは0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。
上記最大値Cは0.2以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.10以下であることが更に好ましい。
本開示において、上記Ta、上記Tb及び上記Tcにおける吸光度及び透過率は、硬化性組成物に含まれる、上記赤外線吸収剤、及び、波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物の種類及び含有量を調整することにより設計することが可能である。
【0016】
ある波長λにおける吸光度Aλは、以下の式(1)により定義される。
Aλ=-log(Tλ) ・・・(1)
Aλは、波長λにおける吸光度であり、Tλは、波長λにおける透過率である。
吸光度の値は、ガラス基板上にスピンコート等の方法により、乾燥後の膜厚が所定の膜厚となるように硬化性組成物を塗布し、硬化性組成物に応じた適切な方法(露光、加熱等)で硬化及び必要に応じて乾燥して調製した膜を用いる。膜の膜厚は、膜を有する基板に対し、触針式表面形状測定器(ULVAC社製 DEKTAK150)を用いて測定することができる。
また、ある波長における吸光度及び透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ(株)製 U-4100)を用いて測定できる。
また、特に記載のない限り、本開示における吸光度及び透過率は、いずれも25℃、相対湿度40%の条件下における値である。
【0017】
また、本開示に係る硬化性組成物の一態様として、更に、波長1,600nmにおける透過率が20%以下(好ましくは10%以下)である態様が挙げられる。
このような硬化性組成物を用いることにより、例えば波長1,000nm~波長1,300nmの光を透過し、上記範囲よりも短い波長及び長い波長を遮光する、いわゆるバンドパスフィルタを形成することも可能である。
【0018】
<赤外線吸収剤>
本開示において用いられる赤外線吸収剤は、波長400nm~1,300nmにおける極大吸収波長における吸光度Xと、波長700nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yとが下記式1を満たす化合物であり、波長400nm~1,300nmにおける極大吸収波長における吸光度Xと、波長950nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yと、が下記式1を満たす化合物であることが好ましい。
本開示において用いられる赤外線吸収剤は、上記X及び上記Yが下記式2を満たす化合物であることが好ましく、下記式3を満たす化合物であることがより好ましい。
Y>X×0.5 式1
Y>X×0.7 式2
Y>X×0.9 式3
【0019】
また、本開示において用いられる赤外線吸収剤は、波長350nm~波長1,500nmの範囲において、波長950nm~波長1,300nmの範囲内に吸収極大を有することが好ましい。
本開示において、「波長350~波長1,300nmの範囲において波長Anm~波長Bnmの範囲に吸収極大を有する」とは、波長350nm~波長1,300nmの範囲における吸収スペクトルにおいて、波長Anm~波長Bnmの範囲に最大の吸光度を示す波長を有することを意味する。
【0020】
本開示において用いられる赤外線吸収剤は、特に限定されないが、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、スクアリリウム化合物、クロコニウム化合物、ジインモニウム化合物、ペリレン化合物、ピロロピロール化合物、金属錯体、及び、化合物半導体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物ことが好ましく、シアニン化合物、及び、スクアリリウム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことよりが好ましく、シアニン化合物を含むことが更に好ましい。
【0021】
〔シアニン化合物〕
好ましいシアニン化合物としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【0023】
式(I)中、LC1はアルキレン基を表し、RC11及びRC12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、RC11及びRC12は結合して環構造を形成してもよく、RC13及びRC14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、RC13及びRC14は結合して環構造を形成してもよく、RC15はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は水素原子を表し、RC16及びRC17はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、X1は電荷の中和に必要なアニオン又はカチオンを表し、式(I)中のX1で表される構造以外の構造が電気的に中性である場合、X1は存在しなくともよい。
【0024】
式(I)中、LC1はアルキレン基を表し、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましい。上記LC1は置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましく挙げられる。
式(I)中、RC11及びRC12はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基がより好ましく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましい。
また、RC11が上記アルキル基又は上記アルコキシ基であり、RC12が水素原子であることが好ましい。
RC11及びRC12が形成する環構造としては、5員環構造又は6員環構造が好ましく、5員環構造がより好ましく、テトラヒドロフラン環構造が更に好ましい。上記環構造は置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましく挙げられる。
式(I)中、RC13及びRC14はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は一価の有機基を表し、水素原子、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、水素原子、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基がより好ましく、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又は炭素数1~4のアルコキシ基が更に好ましい。
また、RC13が上記アルキル基又は上記アルコキシ基であり、RC14が水素原子であることが好ましい。
RC13及びRC14が形成する環構造としては、5員環構造又は6員環構造が好ましく、5員環構造がより好ましく、テトラヒドロフラン環構造が更に好ましい。上記環構造は置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基が挙げられ、炭素数1~4のアルキル基が好ましく挙げられる。
式(I)中、RC15はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基又は水素原子を表し、アルキル基、アリール基又は水素原子が好ましく、アリール基又は水素原子がより好ましい。上記アルキル基としては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。上記アルケニル基としては、炭素数2~20のアルケニル基が好ましく、炭素数2~12のアルケニル基がより好ましく、炭素数2~8のアルケニル基が更に好ましい。上記アルキニル基としては、炭素数2~20のアルキニル基が好ましく、炭素数2~12のアルキニル基がより好ましく、炭素数2~8のアルキニル基が更に好ましい。
上記アラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が好ましく、炭素数7~13のアラルキル基がより好ましい。上記アリール基としては、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~12のアリール基がより好ましい。
本開示において、特別の記載がない限り、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基はそれぞれ直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環構造を有していてもよい。
式(I)中、RC16及びRC17はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、アルキル基が好ましい。これらの基の好ましい態様としては、RC15におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基の好ましい態様と同様である。また、上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基は更に置換基を有していてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられ、カルボキシ基及びスルホ基が好ましく、スルホ基が特に好ましい。カルボキシ基及びスルホ基は、水素原子が解離していてもよく、塩の状態であってもよい。
X1は電荷の中和に必要なアニオン又はカチオンを表す。
アニオンとしては、ハロゲン化物イオン(Cl-、Br-、I-)、パラトルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、PF6
-、BF4
-、ClO4
-、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CF3SO2)3C-)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CF3SO2)2N-)、テトラシアノボレートアニオン等が挙げられる。
カチオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、その他の金属イオン(アンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、グアニジニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、ジアザビシクロウンデセニウムなどが挙げられる。
【0025】
〔具体例〕
本開示において用いられる赤外線吸収剤の具体例としては、下記化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
【0027】
また、赤外線吸収剤としては市販品を用いてもよく、市販品としてはスペクトラムインフォ社製S09425、S04046、S04290、S12008、S01983等が挙げられる。
【0028】
〔含有量〕
本開示に係る組成物において、赤外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分の0.1質量%~95質量%であることが好ましい。上記含有量の上限は、75質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。上記含有量の下限は、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が更に好ましい。
【0029】
<式1を満たさない赤外線吸収剤>
本開示に係る硬化性組成物は、式1を満たさない赤外線吸収剤(以下、「他の赤外線吸収剤」ともいう。)を更に含んでもよい。他の赤外線吸収剤は、極大吸収波長における吸光度Xと、波長950nmを超え波長1,300nm以下の範囲の最大吸光度Yと、が上記式1を満たさない化合物である。
また、他の赤外線吸収剤は、波長700nm~波長950nmの波長範囲に極大吸収波長を有する化合物であることが好ましい。
【0030】
また、本開示において用いられる他の赤外線吸収剤は、波長350nm~波長1,300nmの範囲において波長700nm~波長950nmの範囲内に吸収極大を有することが好ましく、波長350nm~波長1,300nmの範囲において波長800nm~波長950nmの範囲内に吸収極大を有することがより好ましい。
さらに、他の赤外線吸収剤として、波長350~波長2,000nmの範囲において波長1,500nm~波長2,000nmの範囲内(好ましくは、波長1,600nm~波長1,900nmの範囲内)に吸収極大を有する化合物を用いることにより、本開示に係る硬化性組成物を、バンドパスフィルタの形成用に用いることも可能である。
【0031】
本開示において用いられる他の赤外線吸収剤は、特に限定されないが、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、ジイミニウム化合物、ホウ化ランタン、金属平板粒子、量子ドット、希土類原子含有セラミックなどが挙げられ、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物、及び、ジイミニウム化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましく、ピロロピロール化合物、ピリリウム化合物、スクアリリウム化合物、及び、シアニン化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0032】
〔ピロロピロール化合物〕
ピロロピロール化合物としては、特に制限はなく、公知のピロロピロール構造を有する赤外線吸収剤を用いることができる。
本開示に用いられるピロロピロール化合物は、J会合体を形成していることが好ましい。
ピロロピロール化合物が形成するJ会合体のスリップアングルは、1°~54°が好ましく、2°~45°がより好ましく、3°~40°が更に好ましい。
ピロロピロール化合物が形成するJ会合体の遷移モーメント間距離は、2.0Å~30Åが好ましく、3.0Å~25Åがより好ましい。なお、1Å=0.1nmである。
また、本開示に用いられるピロロピロール化合物は、ピロロピロール環の窒素原子上にホウ素原子を有する基を有することが好ましく、また、上記窒素原子と上記ホウ素原子とは、直接結合していることが好ましい。上記窒素原子と直接結合する上記ホウ素原子上に置換基を有することにより、分子間においてピロロピロール環構造の平面の重なりを制御する立体障害基として機能しており、好適にJ会合体が形成される。
また、J会合体は、異なる2つ以上の色素化合物(赤外線吸収剤)からなるJ会合体、すなわち、混合J会合体であってもよい。混合J会合体を形成することで、2種類の色素化合物の混合比率によって極大吸収波長(λmax)を任意に制御できるという効果がある。混合J会合体の各色素化合物の比率は、任意に選択できるが、色素A及び色素Bの2種類から成る場合、色素Aと色素Bとの比率(モル比)は、1:99~99:1であることが好ましく、10:90~90:10であることがより好ましい。
極大吸収波長(λmax)における吸光度に対する副吸収の吸光度の比(副吸収の吸光度/極大吸収波長における吸光度)は、0~0.1が好ましく、0~0.07がより好ましく、0~0.05が更に好ましい。ただし、上記副吸収の吸光度は、400nmにおける吸光度である。
極大吸収波長(λmax)の半値幅は、特に限定されないが、5nm~300nmであることが好ましい。
【0033】
図3~
図7にピロロピロール化合物の吸収スペクトルの一例を示す。なお、
図4~
図7におけるPP-a~PP-tは、いずれもピロロピロール化合物である。また、
図3~
図7における縦軸は、吸光度(Absobance Unit)を表し、横軸は、波長(nm)を表す。
図3は、ピロロピロール化合物の一例における溶液中と膜中との吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
図4は、ピロロピロール化合物PP-a~PP-hにおける溶液中の吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
図5は、ピロロピロール化合物PP-i~PP-pにおける膜中の吸収スペクトルをそれぞれ示す図である。
図6は、ピロロピロール化合物PP-q及び~PP-rの含有質量比を変化させ、J会合体の形成による吸収スペクトル変化を示す図である。
図7は、ピロロピロール化合物PP-s及び~PP-tの含有質量比を変化させ、J会合体の形成による吸収スペクトル変化を示す図である。
【0034】
また、ピロロピロール化合物としては、式(PP)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
【0036】
式(PP)中、R1a及びR1bは、各々独立にアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R2及びR3は、各々独立に水素原子又は置換基を表し、R2及びR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-BR4AR4B、又は金属原子を表し、R4は、R1a、R1b及びR3から選ばれる少なくとも一つと共有結合若しくは配位結合していてもよく、R4A及びR4Bは、各々独立に置換基を表す。式(PP)の詳細については、特開2009-263614号公報の段落番号0017~0047、特開2011-68731号公報の段落番号0011~0036、国際公開第2015/166873号の段落番号0010~0024の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0037】
式(PP)において、R1a及びR1bは、各々独立に、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基がより好ましい。また、R1a及びR1bが表すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。
【0038】
式(PP)において、R2及びR3は、各々独立に水素原子又は置換基を表す。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。R2及びR3の少なくとも一方は電子求引性基であることが好ましく、シアノ基、カルボキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、又は、アリールスルホニル基であることがより好ましく、シアノ基であることが更に好ましい。
【0039】
式(PP)において、R2は電子求引性基(好ましくはシアノ基)を表し、R3はヘテロアリール基を表すことが好ましい。ヘテロアリール基は、5員環又は6員環が好ましい。また、ヘテロアリール基は、単環又は縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~8の縮合環が好ましく、単環又は縮合数が2~4の縮合環がより好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は、1~3が好ましく、1~2がより好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が例示される。ヘテロアリール基は、窒素原子を1個以上有することが好ましい。式(PP)における2個のR2同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、式(PP)における2個のR3同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
式(PP)において、R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又は-BR4AR4Bで表される基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基又は-BR4AR4Bで表される基であることがより好ましく、-BR4AR4Bで表される基であることが更に好ましい。R4A及びR4Bが表す置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又は、ヘテロアリール基が好ましく、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基がより好ましく、アリール基が特に好ましい。これらの基は更に置換基を有していてもよい。式(PP)における2個のR4同士は同一であってもよく、異なっていてもよい。R4A及びR4Bは互いに結合して環を形成していてもよい。
【0041】
式(PP)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-68731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、ピロロピロール化合物の具体例としては、後述する実施例に記載のIP-1及びIP-2も好適に挙げられる。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
〔シアニン化合物〕
シアニン化合物は、式(C)で表される化合物が好ましい。
【0049】
【0050】
式(C)中、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、縮環してもよい5員又は6員の含窒素複素環を形成する非金属原子団であり、
R101及びR102は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基又はアリール基を表し、
L1は、奇数個のメチン基を有するメチン鎖を表し、
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、
aが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが二重結合で結合し、bが0の場合は、炭素原子と窒素原子とが単結合で結合し、
式中のCyで表される部位がカチオン部である場合、X1はアニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位がアニオン部である場合、X1はカチオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、式中のCyで表される部位の電荷が分子内で中和されている場合、cは0である。
【0051】
シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-88426号公報に記載の化合物、特開2017-031394号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0052】
〔スクアリリウム化合物〕
スクアリリウム化合物としては、下記式(SQ)で表される化合物が好ましい。
【化11】
式(SQ)中、A
1及びA
2は、それぞれ独立に、アリール基、ヘテロアリール基又は式(A-1)で表される基を表す;
【化12】
式(A-1)中、Z
1は、含窒素複素環を形成する非金属原子団を表し、R
2は、アルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を表し、dは、0又は1を表し、波線は連結手を表す。式(SQ)の詳細については、特開2011-208101号公報の段落番号0020~0049、特許第6065169号公報の段落番号0043~0062、国際公開第2016/181987号の段落番号0024~0040の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0053】
なお、式(SQ)においてカチオンは、以下のように非局在化して存在している。
【0054】
【0055】
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ-1)で表される化合物が好ましい。
【0056】
【0057】
環A及び環Bは、それぞれ独立に芳香族環を表し、
XA及びXBはそれぞれ独立に置換基を表し、
GA及びGBはそれぞれ独立に置換基を表し、
kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表し、
nA及びnBはそれぞれ環A又は環Bに置換可能な最大の整数を表し、
XAとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成してもよく、GA及びGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。
【0058】
GA及びGBが表す置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。
【0059】
XA及びXBが表す置換基としては、活性水素を有する基が好ましく、-OH、-SH、-COOH、-SO3H、-NRX1RX2、-NHCORX1、-CONRX1RX2、-NHCONRX1RX2、-NHCOORX1、-NHSO2RX1、-B(OH)2及び-PO(OH)2がより好ましく、-OH、-SH及び-NRX1RX2が更に好ましい。RX1及びRX2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表す。XA及びXBにおける置換基RX1及びRX2としてはアルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基が挙げられ、アルキル基が好ましい。
【0060】
環A及び環Bは、それぞれ独立に、芳香族環を表す。芳香族環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環の具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、及び、フェナジン環が挙げられ、ベンゼン環又はナフタレン環が好ましい。芳香族環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられる。
【0061】
XAとGA、XBとGB、XAとXBは、互いに結合して環を形成してもよく、GA及びGBがそれぞれ複数存在する場合は、互いに結合して環を形成していてもよい。環としては、5員環又は6員環が好ましい。環は単環であってもよく、縮合環であってもよい。
XAとGA、XBとGB、XAとXB、GA同士又はGB同士が結合して環を形成する場合、これらが直接結合して環を形成してもよく、アルキレン基、-CO-、-O-、-NH-、-BR-及びそれらの組み合わせからなる2価の連結基を介して結合して環を形成してもよい。Rは、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、後述する置換基Tが挙げられ、アルキル基又はアリール基が好ましい。
【0062】
kAは0~nAの整数を表し、kBは0~nBの整数を表し、nAは、環Aに置換可能な最大の整数を表し、nBは、環Bに置換可能な最大の整数を表す。kA及びkBは、それぞれ独立に0~4が好ましく、0~2がより好ましく、0~1が特に好ましい。
【0063】
スクアリリウム化合物は、下記式(SQ-10)、式(SQ-11)又は式(SQ-12)で表される化合物であることも好ましい。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
式(SQ-10)~(SQ-12)中、Xは、独立して、1つ以上の水素原子がハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい式(1)又は式(2)で示される2価の有機基である。
-(CH2)n1- ・・・(1)
式(1)中、n1は2又は3である。
-(CH2)n2-O-(CH2)n3- ・・・(2)
式(2)中、n2とn3はそれぞれ独立して0~2の整数であり、n2+n3は1又は2である。
R1及びR2は、それぞれ独立して、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては後述する置換基Tが挙げられる。
R3~R6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。
nは2又は3である。
【0068】
スクアリリウム化合物としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0040に記載の化合物、国際公開第2013/133099号に記載の化合物、国際公開第2014/088063号に記載の化合物、特開2014-126642号公報に記載の化合物、特開2016-146619号公報に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、特開2017-25311号公報に記載の化合物、国際公開第2016/154782号に記載の化合物、特許5884953号公報に記載の化合物、特許6036689号公報に記載の化合物、特許5810604号公報に記載の化合物、特開2017-068120号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0069】
【0070】
〔ピリリウム化合物〕
ピリリウム化合物としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、ピリリウム化合物としては、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57-142645号記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58-181051号公報、同58-220143号公報、同59-41363号公報、同59-84248号公報、同59-84249号公報、同59-146063号公報、同59-146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59-216146号公報記載のシアニン染料、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5-13514号公報、同5-19702号公報に記載されているピリリウム化合物などが挙げられる。
【0071】
【0072】
〔フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物〕
フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012-77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物、特許第6081771号公報に記載のバナジウムフタロシアニンが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、フタロシアニン化合物として、下記構造の化合物を用いることもできる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012-77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0073】
【0074】
本開示において、フタロシアニン化合物としては、市販品を用いることもできる。例えば、SDO-C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR-14、イーエクスカラーIR-10A、イーエクスカラーTX-EX-801B、イーエクスカラーTX-EX-805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA-8041、ShigenoxNIA-8042、ShigenoxNIA-814、ShigenoxNIA-820、ShigenoxNIA-839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV-63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO-JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK-3027、NK-5060((株)林原製)、YKR-3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0075】
〔ジイミニウム化合物〕
ジイミニウム化合物としては、下記式(Im)で表される化合物が好ましい。
【0076】
【0077】
式(Im)中、R11~R18は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、V11~V15は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基又はシアノ基を表し、Xは対アニオンを表し、cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、n1~n5は、それぞれ独立に、0~4である。
【0078】
R11~R18は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15が更に好ましく、6~12がより好ましい。アルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、以下の置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0079】
V11~V15は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基又はシアノ基を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が特に好ましい。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖が特に好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~15が更に好ましく、6~12がより好ましい。アルコキシ基の炭素数は、1~20が好ましく、1~12がより好ましく、1~8が特に好ましい。アルコキシ基は直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖又は分岐が好ましく、直鎖が特に好ましい。
【0080】
n1~n5は、それぞれ独立に、0~4である。n1~n4は、0~2が好ましく、0又は1がより好ましい。n5は、0~3が好ましく、0~2がより好ましい。
【0081】
Xは対アニオンを表す。対アニオンの例としては、ハライドイオン(Cl-、Br-、I-)、パラトルエンスルホン酸イオン、エチル硫酸イオン、SbF6
-、PF6
-、BF4
-、ClO4
-、トリス(ハロゲノアルキルスルホニル)メチドアニオン(例えば、(CF3SO2)3C-)、ジ(ハロゲノアルキルスルホニル)イミドアニオン(例えば(CF3SO2)2N-)、テトラシアノボレートアニオンなどが挙げられる。
【0082】
cは電荷のバランスを取るために必要な数を表し、例えば、2であることが好ましい。
【0083】
(置換基T)
アルキル基(好ましくは炭素数1~30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0~30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数1~30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニル基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~30)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、カルボン酸アミド基(好ましくは-NHCORA1で表される基であり、RA1は、炭化水素基又は複素環基を表す。炭化水素基及び複素環基は、更に置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。)、スルホン酸アミド基(好ましくは-NHSO2RA2で表される基である。RA2は、炭化水素基又は複素環基を表す。炭化水素基及び複素環基は、更に置換基を有してもよい。置換基としては、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。)、イミド酸基(好ましくは、-SO2NHSO2RA3、-CONHSO2RA4、-CONHCORA5又は-SO2NHCORA6で表される基である。RA3~RA6は、それぞれ独立して炭化水素基又は複素環基を表す。炭化水素基及び複素環基は、更に置換基を有してもよい。)、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1~30)。
これらの基は、更に置換可能な基である場合、更に置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0084】
ジイミニウム化合物の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。表中のλmaxは、同化合物の極大吸収波長である。また、ジイミニウム化合物の市販品としては、IRG-068(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0085】
【0086】
〔金属平板粒子〕
他の赤外線吸収剤として用いられる金属平板粒子の材料としては、銀、金、アルミニウム、銅、ロジウム、ニッケル、白金などが好ましく、銀がより好ましい。金属平板粒子としては、2つの主平面からなる粒子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、六角形状、円形状、三角形状などが挙げられる。これらの中でも、可視光透過率が高い点で、六角形状以上の多角形状~円形状であることがより好ましく、六角形状又は円形状であることが特に好ましい。金属平板粒子の厚みは20nm以下であることが好ましく、14nm以下であることがより好ましい。金属平板粒子のアスペクト比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、赤外領域(例えば、波長1,000nmを超え1,200nm以下の範囲の光)の反射率が高くなる点から、6~40が好ましく、8~30がより好ましい。前述のアスペクト比は、金属平板粒子の一次粒子の平均粒径(平均円相当径)を金属平板粒子の平均粒子厚みで除算した値を意味する。平均粒子厚みは、金属平板粒子の主平面間距離に相当し、原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。金属平板粒子の詳細については、特開2013-195563号公報の段落番号0017~0027の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0087】
〔量子ドット〕
他の赤外線吸収剤として用いられる量子ドットの材料としては、FeSi、Ge、InN、InAs、PbTe、PbSe、InSbなどが挙げられる。量子ドットの形状としては、特に限定はなく、真球状、燐片状、板状、楕円球状、不定形が挙げられる。
【0088】
〔希土類原子含有セラミック〕
他の赤外線吸収剤として用いられる希土類原子含有セラミックとしては、Yb、Ho、Tm等の希土類原子を含むセラミックが挙げられる。具体例としては、Yb及びHoを含むY2O3、Yb及びTmを含むY2O3などが挙げられる。
【0089】
〔含有量〕
本開示に係る組成物において、他の赤外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分の0.5~30質量%であることが好ましい。上記含有量の上限は、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。上記含有量の下限は、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましい。
【0090】
<波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物>
本開示に係る硬化性組成物は、波長400nm~波長700nmに極大吸収波長を有する化合物(以下、「可視光吸収化合物」ともいう。)を更に含むことが好ましい。
また、本開示に係る硬化性組成物は、可視光吸収化合物を更に含み、上記波長Tbよりも150nm短波である波長をTa’とした際の、波長400nm以上上記Ta’以下の範囲の吸光度の最小値A’と、上記最大値Cとの比であるA’/Cが4.5以上であることが好ましい。
上記A’/Cは、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。
上記最小値A’は、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.3以上であることが更に好ましい。
【0091】
〔可視光吸収化合物〕
可視光吸収化合物は、紫色から赤色の波長域の光を吸収する化合物であることが好ましい。
可視光吸収化合物は、波長450nm~波長650nm(好ましくは波長400nm~波長700nm)の波長の光を遮光する着色剤であることが好ましい。
可視光吸収化合物は、波長400nm以上波長700nm以下の範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。
可視光吸収化合物は、波長350nm~1,300nmの範囲において波長400nm~波長700nmの範囲内に吸収極大を有することが好ましい。
可視光吸収化合物は、波長1,000nm~波長1,300nmの範囲の光に対する透過性の高い化合物であることが好ましい。
本開示において、硬化性組成物は、可視光吸収化合物を2種以上含むことが好ましい。
【0092】
本開示において、可視光吸収化合物は、以下の(1)及び(2)の少なくとも一方の要件を満たすことが好ましい。
(1):2種類以上の有彩色着色剤を含む。より好ましくは、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせにより黒色を形成している。
(2):有機系黒色着色剤を含む。(2)の態様において、更に有彩色着色剤を含有することも好ましい。
なお、本開示において、有彩色着色剤とは、白色着色剤及び黒色着色剤以外の着色剤を意味する。有彩色着色剤は、波長350~波長1,300nmの範囲において、波長400nm以上波長700nm以下の範囲に吸収極大を有する着色剤が好ましい。
また、本開示において、可視光吸収化合物としての有機系黒色着色剤は、可視光線を吸収するが、赤外線の少なくとも一部は透過する材料を意味する。したがって、本開示において、可視光吸収化合物としての有機系黒色着色剤は、可視光線及び赤外線の両方を吸収する黒色着色剤、例えば、カーボンブラックやチタンブラックは含まない。有機系黒色着色剤は、波長400nm以上波長700nm以下の範囲に極大吸収波長を有する着色剤が好ましい。波長350~波長1,300nmの範囲において、波長400nm以上波長700nm以下の範囲に吸収極大を有する着色剤が好ましい。
【0093】
可視光吸収化合物は、例えば、波長450nm~波長650nmの範囲における吸光度の最小値A1と、波長1,000nm~波長1,500nmの範囲における吸光度の最大値B1との比であるA1/B1が4.5以上であることが好ましい。
【0094】
可視光吸収化合物の上記の分光特性(A1/B1)は、1種類の可視光吸収化合物で満たしていてもよく、複数の可視光吸収化合物の組み合わせで満たしていてもよい。例えば、上記(1)の態様の場合、複数の有彩色着色剤を組み合わせて上記分光特性を満たしていることが好ましい。また、上記(2)の態様の場合、有機系黒色着色剤が上記分光特性を満たしていてもよい。また、有機系黒色着色剤と有彩色着色剤との組み合わせで上記の分光特性を満たしていてもよい。
【0095】
-有彩色着色剤-
本開示において、有彩色着色剤は、赤色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤及び茶色着色剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の着色剤であることが好ましい。
【0096】
本開示において、有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。
顔料は、平均粒径(r)が、好ましくは20nm≦r≦300nm、より好ましくは25nm≦r≦250nm、特に好ましくは30nm≦r≦200nmを満たすことが好ましい。ここでいう「平均粒径」とは、顔料の一次粒子が集合した二次粒子についての平均粒径を意味し、数平均粒径を意味する。
また、使用しうる顔料の二次粒子の粒径分布(以下、単に「粒径分布」ともいう。)は、(平均粒径±100)nmに入る二次粒子が全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上であることが好ましい。なお、二次粒子の平均粒径及び粒径分布は、動的光散乱法を用いて測定することができる。
【0097】
上述した平均粒径及び粒径分布を有する顔料は、市販の顔料を、場合により使用される他の顔料(二次粒子の平均粒径は通常、300nmを超える)と共に、好ましくは樹脂及び有機溶媒と混合した顔料混合液として、例えばビーズミル、ロールミル等の粉砕機を用いて、粉砕しつつ混合及び分散することにより調製することができる。このようにして得られる顔料は、通常、顔料分散液の形態をとる。
【0098】
顔料は、有機顔料であることが好ましく、以下のものを挙げることができる。但し本開示は、これらに限定されるものではない。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279,294(キサンテン系、Organo Ultamarine,Bluish Red)等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,29,60,64,66,79,80,87(モノアゾ系),88(メチン/ポリメチン系)等(以上、青色顔料)、
これら有機顔料は、単独若しくは種々組合せて用いることができる。
【0099】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015-028144号公報、特開2015-34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0100】
2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成する場合の、有彩色着色剤の組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1)黄色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(2)黄色着色剤、青色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(3)黄色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(4)黄色着色剤及び紫色着色剤を含有する態様。
(5)緑色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(6)紫色着色剤及びオレンジ色着色剤を含有する態様。
(7)緑色着色剤、紫色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
(8)緑色着色剤及び赤色着色剤を含有する態様。
【0101】
上記(1)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6又はC.I.Pigment Blue 16と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
上記(2)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6又はC.I.Pigment Blue 16と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
上記(3)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
上記(4)の態様の具体例としては、黄色顔料としてのC.I.Pigment Yellow 139又は185と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23とを含有する態様が挙げられる。
上記(5)の態様の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7又は36と、青色顔料としてのC.I.Pigment Blue 15:6と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
上記(6)の態様の具体例としては、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、オレンジ色顔料としてのC.I.Pigment Orange71とを含有する態様が挙げられる。
上記(7)の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7又は36と、紫色顔料としてのC.I.Pigment Violet 23と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
上記(8)の具体例としては、緑色顔料としてのC.I.Pigment Green 7又は36と、赤色顔料としてのC.I.Pigment Red 254又は224とを含有する態様が挙げられる。
【0102】
各着色剤の比率(質量比)としては、例えば、以下の比率であることが好ましい。
【0103】
【0104】
上記No.1において、黄色着色剤は0.1~0.3がより好ましく、青色着色剤は0.1~0.5がより好ましく、紫色着色剤は0.01~0.2であることがより好ましく、赤色着色剤は0.1~0.5であることがより好ましい。上記No.2において、黄色着色剤は0.1~0.3がより好ましく、青色着色剤は0.1~0.5がより好ましく、赤色着色剤は0.1~0.5であることがより好ましい。
【0105】
-有機系黒色着色剤-
有機系黒色着色剤としては、例えば、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ系化合物などが挙げられ、ビスベンゾフラノン化合物、又は、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報、国際公開第2014/208348号、特表2015-525260号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1-170601号公報、特開平2-34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。
【0106】
本開示において、ビスベンゾフラノン化合物は、下記式で表される化合物及びこれらの混合物であることが好ましい。
【0107】
【0108】
式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、R3及びR4はそれぞれ独立して置換基を表し、a及びbはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、aが2以上の場合、複数のR3は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR3は結合して環を形成していてもよく、bが2以上の場合、複数のR4は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR4は結合して環を形成していてもよい。
【0109】
R1~R4が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OR301、-COR302、-COOR303、-OCOR304、-NR305R306、-NHCOR307、-CONR308R309、-NHCONR310R311、-NHCOOR312、-SR313、-SO2R314、-SO2OR315、-NHSO2R316又は-SO2NR317R318を表し、R301~R318は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0110】
ビスベンゾフラノン化合物の詳細については、特表2010-534726号公報の段落番号0014~0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0111】
本開示において、可視光吸収化合物として有機系黒色着色剤を用いる場合、有彩色着色剤と組み合わせて使用することが好ましい。有機系黒色着色剤と有彩色着色剤とを併用することで、優れた分光特性が得られ易い。有機系黒色着色剤と組み合わせて用いる有彩色着色剤としては、例えば、赤色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤などが挙げられ、赤色着色剤及び青色着色剤が好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、有彩色着色剤と有機系黒色着色剤との混合割合は、有機系黒色着色剤100質量部に対して、有彩色着色剤が10~200質量部が好ましく、15~150質量部がより好ましい。
【0112】
本開示において、可視光吸収化合物における顔料の含有量は、可視光吸収化合物の全量に対して95質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0113】
本開示に係る硬化性組成物において、可視光吸収化合物の含有量は、組成物の全固形分の10~60質量%であることが好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。下限は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。
【0114】
<硬化性化合物>
本開示に係る硬化性組成物は、硬化性化合物を含有する。
硬化性化合物としては、重合性化合物、樹脂、ゼラチンやセルロース等の天然高分子等が挙げられる。
ゼラチンとしては、その合成方法によって、酸処理ゼラチン及びアルカリ処理ゼラチン(石灰処理など)があり、いずれも好ましく用いることができる。ゼラチンの分子量は、10,000~1,000,000であることが好ましい。また、ゼラチンのアミノ基やカルボキシル基を利用して変性処理した変性ゼラチンも用いることができる(例えば、フタル化ゼラチンなど)。ゼラチンとしては、イナートゼラチン(例えば、新田ゼラチン750)、フタル化ゼラチン(例えば、新田ゼラチン801)などを用いることができる。樹脂は、非重合性の樹脂(重合性基を有さない樹脂)であってもよく、重合性の樹脂(重合性基を有する樹脂)であってもよい。重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、重合性の樹脂(重合性基を有する樹脂)は、重合性化合物でもある。
【0115】
本開示において、硬化性化合物としては、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましく、樹脂とモノマーである重合性化合物とを用いることがより好ましく、樹脂と、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマーである重合性化合物とを用いることが更に好ましい。
【0116】
本開示に係る組成物において、硬化性化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1~80質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。上限は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、40質量%以下がより一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
本開示に係る硬化性組成物に含まれる硬化性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0117】
〔重合性化合物〕
重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物等が挙げられる。
重合性化合物は、モノマーであってもよく、樹脂であってもよい。
モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマーが好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマーである重合性化合物は、ラジカル重合性化合物として好ましく用いることができる。
また、エポキシ基を有する化合物、メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物は、カチオン重合性化合物として好ましく用いることができる。
【0118】
モノマーである重合性化合物の分子量は、2,000未満であることが好ましく、100以上2,000未満であることがより好ましく、200以上2,000未満であることが更に好ましい。上限は、例えば1,500以下であることが好ましい。
樹脂である重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000であることが好ましい。上限は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。下限は、3,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましい。
【0119】
-樹脂である重合性化合物-
樹脂である重合性化合物としては、エポキシ樹脂や、重合性基を有する構成単位を含む樹脂などが挙げられる。重合性基を有する構成単位としては、下記(A2-1)~(A2-4)などが挙げられる。
【化25】
【0120】
R1は、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。R1は、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0121】
L51は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-SO2-、-NR10-(R10は水素原子あるいはアルキル基を表し、水素原子が好ましい)、又は、これらの組み合わせからなる基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。アルキレン基は、置換基を有していてもよいが、無置換が好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。また、環状のアルキレン基は、単環、多環のいずれであってもよい。アリーレン基の炭素数は、6~18が好ましく、6~14がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0122】
P1は、重合性基を表す。重合性基としては、エチレン性不飽和結合を有する基、エポキシ基、メチロール基、アルコキシメチル基などが挙げられる。
【0123】
-エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物-
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の例としては、特開2013-253224号公報の段落番号0033~0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM-35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基が、エチレングリコール残基及び/又はプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。またこれらのオリゴマータイプも使用できる。また、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、特開2012-208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)に記載の重合性モノマー等が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)も好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
例えば、RP-1040(日本化薬(株)製)などが挙げられる。また、アロニックス M-350、TO-2349(東亞合成製)を使用することもできる。
【0124】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、更に、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有していてもよい。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のアロニックスシリーズ(例えば、M-305、M-510、M-520)などが挙げられる。
【0125】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する化合物としては、特開2013-253224号公報の段落0042~0045の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
カプロラクトン構造を有する化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されている、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0126】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物として、エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物を用いることもできる。エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する基と、エチレンオキシ基及び/又はプロピレンオキシ基とを有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基とエチレンオキシ基とを有する化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基とアルキレンオキシ基を有する化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【0127】
エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物としては、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載されている分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることができる。市販品としては、UA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学(株))製などが挙げられる。
また、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物としては、特開2017-48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物を用いることもできる。
また、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物としては、8UH-1006、8UH-1012(大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
【0128】
本開示に係る組成物がエチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物を含有する場合、エチレン性不飽和結合を有する基を含む化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、50質量%以下がより一層好ましく、40質量%以下が更に一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0129】
-エポキシ基を有する化合物-
エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)としては、単官能又は多官能グリシジルエーテル化合物や、多官能脂肪族グリシジルエーテル化合物などが挙げられる。また、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ基を有する化合物を用いることもできる。
【0130】
エポキシ化合物としては、1分子にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられる。
エポキシ化合物はエポキシ基を1分子に1~100個有する化合物が好ましい。エポキシ基の数の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は2個以上が好ましい。
【0131】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量1,000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1,000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1,000以上)のいずれでもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、2,000~100,000が好ましい。重量平均分子量の上限は、10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、3,000以下が更に好ましい。
【0132】
エポキシ化合物の市販品としては、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、アデカグリシロール ED-505((株)ADEKA製、エポキシ基含有モノマー)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)などが挙げられる。また、エポキシ化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0133】
本開示に係る組成物がエポキシ化合物を含有する場合、エポキシ化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、50質量%以下がより一層好ましく、40質量%以下が更に一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0134】
-メチロール基を有する化合物、アルコキシメチル基を有する化合物-
メチロール基を有する化合物(以下、メチロール化合物ともいう)としては、メチロール基が、窒素原子又は芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。また、アルコキシメチル基を有する化合物(以下、アルコキシメチル化合物ともいう)としては、アルコキシメチル基が、窒素原子又は芳香族環を形成する炭素原子に結合している化合物が挙げられる。アルコキシメチル基又はメチロール基が、窒素原子に結合している化合物としては、アルコキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、アルコキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、アルコキシメチル化尿素及びメチロール化尿素等が好ましい。また、特開2004-295116号公報の段落0134~0147、特開2014-089408の段落0095~0126の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0135】
本開示に係る組成物がメチロール化合物を含有する場合、メチロール化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、50質量%以下がより一層好ましく、40質量%以下が更に一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0136】
本開示に係る組成物がアルコキシメチル化合物を含有する場合、アルコキシメチル化合物の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましく、50質量%以下がより一層好ましく、40質量%以下が更に一層好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
【0137】
〔樹脂〕
本開示に係る組成物は、硬化性化合物として樹脂を用いることができる。硬化性化合物は、樹脂を少なくとも含むものを用いることが好ましい。樹脂は分散剤として用いることもできる。なお、顔料などを分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。なお、重合性基を有する樹脂は、重合性化合物にも該当する。
【0138】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0139】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。
【0140】
-エポキシ樹脂-
エポキシ樹脂としては、上述した重合性化合物の欄で説明したエポキシ化合物として例示した化合物のうち樹脂である化合物が挙げられる。
【0141】
-環状オレフィン樹脂-
環状オレフィン樹脂の市販品としては、ARTON D4540、F4520(共にJSR(株)製)などが挙げられる。また、国際公開第2016/088645号の実施例に記載された樹脂、特開2017-57265号公報に記載された樹脂、特開2017-32685号公報に記載された樹脂、特開2017-075248号公報に記載された樹脂、特開2017-066240号公報に記載された樹脂を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0142】
-フルオレン骨格を有する樹脂-
また、フルオレン骨格を有する樹脂を好ましく用いることもできる。フルオレン骨格を有する樹脂としては、下記構造の樹脂が挙げられる。以下の構造式中、Aは、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物から選択されるカルボン酸二無水物の残基であり、Mはフェニル基又はベンジル基である。フルオレン骨格を有する樹脂については、米国特許出願公開第2017/0102610号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0143】
【0144】
-酸基を有する樹脂-
本開示において用いられる樹脂は、酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシ基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0145】
酸基を有する樹脂としては、側鎖にカルボキシ基を有するポリマーが好ましい。具体例としては、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂、側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、ヒドロキシ基を有するポリマーに酸無水物を付加させた樹脂が挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート及びアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等が挙げられる。また他のモノマーは、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマー、例えば、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等を用いることもできる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0146】
酸基を有する樹脂は、更に重合性基を有する構成単位を含有していてもよい。酸基を有する樹脂が、更に重合性基を有する構成単位を含有する場合、全構成単位中における重合性基を有する構成単位の含有量は、10~90モル%であることが好ましく、20~90モル%であることがより好ましく、20~85モル%であることが更に好ましい。また、全構成単位中における酸基を有する構成単位の含有量は、1~50モル%であることが好ましく、5~40モル%であることがより好ましく、5~30モル%であることが更に好ましい。
【0147】
酸基を有する樹脂としては、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。
【0148】
酸基を有する樹脂は、下記式(ED1)で示される化合物及び/又は下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分を重合してなるポリマーを含むことも好ましい。
【0149】
【0150】
式(ED1)中、R1及びR2は、各々独立に水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【0151】
【化28】
式(ED2)中、Rは、水素原子又は炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)で表される化合物の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0152】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0153】
酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0154】
【0155】
式(X)において、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R3は、水素原子又はベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0156】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、酸基を有する樹脂は市販品を用いることもできる。例えば、サイクロマーACA210β(ダイセル化学(株)製)、アクリベースFF-426(藤倉化成(株)製)などが挙げられる。
【0157】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0158】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【0159】
【0160】
-分散剤としての樹脂-
本開示に係る組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシ基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gが更に好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0161】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する構成単位を含むことが好ましい。分散剤として用いる樹脂が酸基を有する構成単位を含むことにより、フォトリソグラフィ法によりパターン形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0162】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、顔料の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、グラフト共重合体の具体例は、下記の樹脂が挙げられる。以下の樹脂は酸基を有する樹脂(アルカリ可溶性樹脂)でもある。また、グラフト共重合体としては特開2012-255128号公報の段落番号0072~0094に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0163】
【0164】
また、本開示において、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることも好ましい。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する構造単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。オリゴイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。オリゴイミン系分散剤としては、下記構造の樹脂や、特開2012-255128号公報の段落番号0168~0174に記載の樹脂を用いることができる。
【0165】
【0166】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYK2000(ビックケミージャパン(株)製)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
【0167】
本開示に係る組成物が樹脂を含有する場合、樹脂の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%が好ましい。下限は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上限は、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。また、酸基を有する樹脂の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%が好ましい。下限は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、10質量%以上が特に好ましい。上限は、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。本開示に係る組成物は、樹脂を、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0168】
本開示に係る組成物が重合性化合物(好ましくはエチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマータイプの重合性化合物)と樹脂とを含む場合、重合性化合物と、樹脂との質量比は、重合性化合物/樹脂=0.4~1.4であることが好ましい。上記質量比の下限は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。上記質量比の上限は1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。上記質量比が、上記範囲であれば、より矩形性に優れたパターンを形成することができる。
また、重合性化合物(好ましくはエチレン性不飽和結合を有する基を有するモノマである重合性化合物)と酸基を有する樹脂との質量比は、重合性化合物/酸基を有する樹脂=0.4~1.4であることが好ましい。上記質量比の下限は0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましい。上記質量比の上限は1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。上記質量比が上記範囲であれば、より矩形性に優れたパターンを形成することができる。
【0169】
<重合開始剤>
本開示に係る組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては、光重合開始剤であっても、熱重合開始剤であってもよいが、露光によるパターニングを行いやすい観点からは、光重合開始剤が好ましい。
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤などが挙げられる。重合性化合物の種類に応じて選択して用いることが好ましい。重合性化合物として、エチレン性不飽和結合を有する基を有する化合物などのラジカル重合性化合物を用いた場合においては、重合開始剤としてラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。また、重合性化合物としてカチオン重合性化合物を用いた場合においては、重合開始剤としてカチオン重合開始剤を用いることが好ましい。重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光重合開始剤が好ましい。
【0170】
重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本開示に係る組成物は、重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0171】
〔光ラジカル重合開始剤〕
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物及び3-アリール置換クマリン化合物が好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、及び、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物がより好ましく、オキシム化合物が更に好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0172】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、IRGACURE-379、及び、IRGACURE-379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、DAROCUR-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0173】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物などがあげられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられるまた、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0174】
本開示において、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0175】
本開示において、光ラジカル重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0176】
本開示において、光ラジカル重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0177】
本開示において、光ラジカル重合開始剤として、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0178】
本開示において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。
【0179】
【0180】
【0181】
オキシム化合物は、波長350nm~波長500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360nm~波長480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1,000~300,000であることがより好ましく、2,000~300,000であることが更に好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0182】
本開示は、光ラジカル重合開始剤として、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体や、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)及び化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7などが挙げられる。
【0183】
光ラジカル重合開始剤は、オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを含むことも好ましい。両者を併用することで、現像性が向上し、矩形性に優れたパターンを形成しやすい。オキシム化合物とα-アミノケトン化合物とを併用する場合、オキシム化合物100質量部に対して、α-アミノケトン化合物が50質量部~600質量部が好ましく、150質量部~400質量部がより好ましい。
【0184】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光ラジカル重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本開示に係る組成物は、光ラジカル重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0185】
〔光カチオン重合開始剤〕
光カチオン重合開始剤としては、光酸発生剤が挙げられる。光酸発生剤としては、光照射により分解して酸を発生する、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネート等のスルホネート化合物などを挙げることができる。光カチオン重合開始剤の詳細については特開2009-258603号公報の段落番号0139~0214の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0186】
光カチオン重合開始剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、1~20質量%が更に好ましい。光カチオン重合開始剤の含有量が上記範囲であれば、より良好な感度とパターン形成性が得られる。本開示に係る組成物は、光カチオン重合開始剤を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。光カチオン重合開始剤を2種類以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0187】
<多官能チオール>
本開示に係る組成物は多官能チオールを含有することができる。多官能チオールは、チオール(SH)基を2個以上有する化合物である。多官能チオールは上述の光ラジカル重合開始剤とともに使用することにより、光照射後のラジカル重合過程において、連鎖移動剤として働き、酸素による重合阻害を受けにくいチイルラジカルが発生するので、組成物の感度を高めることができる。特にSH基がメチレン、エチレン基等の脂肪族基に結合した多官能脂肪族チオールが好ましい。
【0188】
多官能チオールとしては、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4-ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4-ジメチルメルカプトベンゼン、2、4、6-トリメルカプト-s-トリアジン、2-(N,N-ジブチルアミノ)-4,6-ジメルカプト-s-トリアジンなどが挙げられる。また、下記構造の化合物も挙げられる。
【0189】
【0190】
多官能チオールの含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対し0.1質量%~20質量%が好ましく、0.1質量%~15質量%がより好ましく、0.1質量%~10質量%が更に好ましい。本開示に係る組成物は、多官能チオールを、1種のみを含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0191】
<エポキシ樹脂硬化剤>
本開示に係る組成物がエポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂硬化剤を更に含むことが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、多価カルボン酸などが挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤としては耐熱性、硬化物の透明性という観点から多価カルボン酸が好ましく、分子内に二つ以上のカルボン酸無水物基を有する化合物が最も好ましい。エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、ブタン二酸などが挙げられる。エポキシ樹脂硬化剤の詳細については、段落番号0072~0078を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0192】
エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、0.01質量部~20質量部が好ましく、0.01質量部~10質量部がより好ましく、0.1質量部~6.0質量部が更に好ましい。
【0193】
<顔料誘導体>
本開示に係る組成物は、更に顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、顔料の一部を、酸基、塩基性基、塩構造を有する基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料としては、上述の赤外線吸収剤、他の赤外線吸収剤、又は、上述の可視光吸収化合物における顔料が挙げられる。
顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。
【0194】
【0195】
式(B1)中、Pは色素構造を表し、Lは単結合又は連結基を表し、Xは酸基、塩基性基、塩構造を有する基又はフタルイミドメチル基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のL及びXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
【0196】
Pが表す色素構造としては、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造、アントラキノン色素構造、ジアントラキノン色素構造、ベンゾイソインドール色素構造、チアジンインジゴ色素構造、アゾ色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ジオキサジン色素構造、ペリレン色素構造、ペリノン色素構造、ベンゾイミダゾロン色素構造、ベンゾチアゾール色素構造、ベンゾイミダゾール色素構造及びベンゾオキサゾール色素構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造及びベンゾイミダゾロン色素構造から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール色素構造が特に好ましい。
【0197】
Lが表す連結基としては、炭化水素基、複素環基、-NR-、-SO2-、-S-、-O-、-CO-若しくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0198】
Xが表す酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、-NHCORX1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、-NHSO2RX2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、-SO2NHSO2RX3、-CONHSO2RX4、-CONHCORX5又は-SO2NHCORX6で表される基が好ましい。RX1~RX6は、それぞれ独立に、炭化水素基又は複素環基を表す。RX1~RX6が表す、炭化水素基及び複素環基は、更に置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、上述した置換基Tが挙げられ、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。Xが表す塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。Xが表す塩構造としては、上述した酸基又は塩基性基の塩が挙げられる。
【0199】
顔料誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。その他、後述する実施例に記載の可視顔料誘導体、及び、赤外誘導体を用いてもよい。また、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平1-217077号公報、特開平3-9961号公報、特開平3-26767号公報、特開平3-153780号公報、特開平3-45662号公報、特開平4-285669号公報、特開平6-145546号公報、特開平6-212088号公報、特開平6-240158号公報、特開平10-30063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094、国際公開第2017/038252号の段落番号0082等に記載の化合物、特許第5299151号公報に記載の化合物を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0200】
【0201】
本開示に係る組成物が顔料誘導体を含有する場合、顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0202】
<溶剤>
本開示に係る組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。
これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。
有機溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
本開示において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。
ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0203】
本開示においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0204】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレン又はナイロンが好ましい。
【0205】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0206】
本開示において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0207】
溶剤の含有量は、本開示に係る組成物の全量に対し、10~99質量%であることが好ましい。上限は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。下限は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、60質量%以上がより一層好ましく、70質量%以上が特に好ましい。
【0208】
<重合禁止剤>
本開示に係る組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%が好ましい。
【0209】
<シランカップリング剤>
本開示に係る組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本開示において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤は、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0210】
シランカップリング剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対して、0.01~15.0質量%が好ましく、0.05~10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0211】
<界面活性剤>
本開示に係る組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤は、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0212】
本開示において、界面活性剤は、フッ素系界面活性剤であることが好ましい。本開示に係る組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0213】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0214】
フッ素系界面活性剤として具体的には、特開2014-41318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0215】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造で、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0216】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0217】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本開示で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【0218】
【化38】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、構成単位の割合を示す%はモル%である。
【0219】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090及び段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0220】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0221】
界面活性剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対して、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0222】
<紫外線吸収剤>
本開示に係る組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、共役ジエン化合物、アミノブタジエン化合物、メチルジベンゾイル化合物、クマリン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、アゾメチン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-68814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。共役ジエン化合物の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。インドール化合物としては下記構造の化合物が挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としてはミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)を用いてもよい。
【0223】
【0224】
本開示においては、紫外線吸収剤として、式(UV-1)~式(UV-3)で表される化合物を好ましく用いることもできる。
【0225】
【0226】
式(UV-1)において、R101及びR102は、各々独立に、置換基を表し、m1及びm2は、それぞれ独立して0~4を表す。式(UV-2)において、R201及びR202は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R203及びR204は、各々独立に、置換基を表す。式(UV-3)において、R301~R303は、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R304及びR305は、各々独立に、置換基を表す。
【0227】
式(UV-1)~式(UV-3)で表される化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0228】
【0229】
紫外線吸収剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対して、0.01質量%~10質量%が好ましく、0.01質量%~5質量%がより好ましい。本開示において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0230】
<酸化防止剤>
本開示に係る組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA)などが挙げられる。また、酸化防止剤として、国際公開第17/006600号に記載された多官能ヒンダードアミン酸化防止剤を用いることもできる。
【0231】
酸化防止剤の含有量は、本開示に係る組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0232】
<その他成分>
本開示に係る組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、本開示に係る組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開2014/021023号、国際公開2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0233】
本開示に係る組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0234】
本開示に係る組成物の用途は、特に限定されない。例えば、赤外線透過フィルタなどの形成に好ましく用いることができる。
【0235】
<組成物の調製方法>
本開示に係る組成物は、上述の成分を混合して調製できる。組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解又は分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液又は分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
【0236】
また、本開示に係る組成物が顔料などの粒子を含む場合は、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセス及び分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0237】
組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
フィルタの孔径は、0.01μm~7.0μmが適しており、好ましくは0.01μm~3.0μmであり、更に好ましくは0.05μm~0.5μmである。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。
【0238】
フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NIEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、第1のフィルタと同様の素材等で形成されたものを使用することができる。
また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0239】
本開示に係る組成物の全固形分(固形分濃度)は、適用方法により変更されるが、例えば、1~50質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上がより好ましい。上限は30質量%以下がより好ましい。
【0240】
<用途>
本開示に係る組成物を用いて形成される膜は、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。例えば、本開示に係る組成物を用いて形成される膜を固体撮像素子又はセンサに組み込むことで、可視光に由来するノイズの発生を抑制することができる。
【0241】
(パターン形成方法)
次に、本開示に係る組成物を用いたパターン形成方法について説明する。本開示に係るパターン形成方法は、本開示に係る組成物を含む硬化性組成物層に対し、フォトリソグラフィ法又はドライエッチング法により、硬化性組成物層に対してパターンを形成する工程を含むことが好ましい。
また、上記パターン形成方法は、上記パターンを形成する工程の前に、パターン形成用積層体を準備する工程を更に含んでもよい。
パターン形成用積層体を準備する工程においては、本開示に係る硬化性組成物を用いて、支持体上に上記硬化性組成物層を形成する工程を更に含んでもよいし、支持体上に硬化性組成物層が形成されたパターン形成用積層体を入手してもよい。
【0242】
フォトリソグラフィ法でのパターン形成方法は、本開示に係る組成物を含む硬化性組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程と、を含むことが好ましい。
また、上記パターン形成方法は、上記パターンを形成する工程の前に、パターン形成用積層体を準備する工程を更に含んでもよい。
パターン形成用積層体を準備する工程においては、本開示に係る硬化性組成物を用いて、支持体上に上記硬化性組成物層を形成する工程を更に含んでもよいし、支持体上に硬化性組成物層が形成されたパターン形成用積層体を入手してもよい。
また、ドライエッチング法でのパターン形成方法は、本開示に係る硬化性組成物を含む硬化性組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。
また、上記パターン形成方法は、上記パターンを形成する工程の前に、パターン形成用積層体を準備する工程を更に含んでもよい。
パターン形成用積層体を準備する工程においては、本開示に係る硬化性組成物を用いて、支持体上に上記硬化性組成物層を形成する工程を更に含んでもよいし、支持体上に硬化性組成物層が形成されたパターン形成用積層体を入手してもよい。
以下、各工程について説明する。
【0243】
<硬化性組成物層を形成する工程>
硬化性組成物層を形成する工程では、本開示に係る組成物を用いて、支持体上に硬化性組成物層を形成する。
支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。
また、支持体としてInGaAs基板などを用いることも好ましい。InGaAs基板は、波長1000nmを超える光に対する感度が良好であるため、InGaAs基板上に本開示に係る膜を積層することで、感度に優れた赤外線センサが得られやすい。
また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。
また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。
また、支持体には、必要に応じて、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0244】
支持体への組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。
インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、樹脂組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0245】
支持体上に形成された硬化性組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスによりパターンを形成する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10秒~3000秒が好ましく、40秒~2500秒がより好ましく、80秒~2200秒が更に好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0246】
<フォトリソグラフィ法でパターン形成する場合>
〔露光工程〕
露光工程においては、硬化性組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、硬化性組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、硬化性組成物層をパターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく、i線がより好ましい。照射量(露光量)は、例えば、0.03J/cm2~2.5J/cm2が好ましく、0.05J/cm2~1.0J/cm2がより好ましく、0.08J/cm2~0.5J/cm2が最も好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1,000W/m2~100,000W/m2(例えば、5,000W/m2、15,000W/m2、35,000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10,000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20,000W/m2などとすることができる。
【0247】
〔現像工程〕
現像工程においては、露光後の硬化性組成物層における未露光部の硬化性組成物層を現像除去してパターンを形成する。未露光部の組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを与えない、アルカリ現像液が望ましい。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0248】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面及び安全面で好ましい。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0249】
〔硬化工程〕
本開示においては、現像工程後に、乾燥を施した後、加熱処理(ポストベーク)や後露光により硬化する硬化工程を行ってもよい。
【0250】
ポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の加熱処理である。ポストベークでの加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。また、発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサの光電変換膜を有機素材で構成した場合、加熱温度は150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、100℃以下が更に好ましく、90℃以下が特に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができる。ポストベークは、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0251】
後露光は、g線、h線、i線、KrFやArFなどのエキシマレーザ、電子線、X線等により行うことができるが、既存の高圧水銀灯で20℃~50℃の低温で行うことが好ましい。照射時間としては、10秒~180秒、好ましくは30秒~60秒である。後露光とポストベークとを併用する場合、後露光を先に実施することが好ましい。
【0252】
<ドライエッチング法でパターン形成する場合>
ドライエッチング法でのパターン形成は、支持体上の組成物層を硬化して硬化物層を形成し、次いで、この硬化物層上にパターニングされたレジスト層を形成し、次いで、パターニングされたレジスト層をマスクとして硬化物層に対してエッチングガスを用いてドライエッチングするなどの方法で行うことができる。レジスト層の形成プロセスとしては、露光後の加熱処理、現像後の加熱処理(ポストベーク処理)を実施する形態が望ましい。ドライエッチング法でのパターン形成については、特開2013-064993号公報の段落番号0010~0067の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0253】
以上説明した、各工程を行うことにより、本開示に係る特定の分光を有する膜のパターン(画素)を形成できる。
【0254】
(硬化膜)
次に、本開示に係る硬化膜について説明する。
本開示に係る硬化膜は、上述した本開示に係る組成物を硬化してなる硬化膜である。本開示に係る硬化膜は、赤外線透過フィルタとして好ましく用いることができる。例えば、本開示に係る硬化膜を赤外線センサに組み込むことで、水分を感度よく検出することができる。
本開示に係る硬化膜は、以下の(1)の分光特性を有することが好ましい。この態様によれば、波長400nm~波長1,000nmの範囲の光を遮光して、可視光線由来のノイズが少ない状態で赤外線(好ましくは、波長1,000nmを超える赤外線、より好ましくは波長100nm~波長1,300nmの赤外線)を透過可能な膜とすることができる。(1)に示す分光特性において、A/C、最小値A、及び、最大値Cの好ましい範囲は、上述の本開示に係る硬化性組成物における上記A/C、最小値A、及び、最大値Cの好ましい範囲と同様である。
【0255】
(1):波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、上記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、上記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である。
【0256】
本開示に係る硬化膜の膜厚は、特に限定はないが、0.1μm~50μmが好ましく、0.1μm~20μmがより好ましく、0.5μm~10μmが更に好ましい。
【0257】
(赤外線透過フィルタ)
本開示に係る赤外線透過フィルタは、本開示に係る硬化膜を備える。
本開示に係る赤外線透過フィルタは、支持体に積層して用いることが好ましい。支持体としては、上述したものが挙げられる。
【0258】
本開示に係る赤外線透過フィルタは、有彩色着色剤を含むカラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。カラーフィルタは、有彩色着色剤を含む着色組成物を用いて製造できる。有彩色着色剤としては、本開示に係る組成物で説明した有彩色着色剤が挙げられる。着色組成物は、樹脂、重合性化合物、光重合開始剤、界面活性剤、溶剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤などを更に含有することができる。これらの詳細については、本開示に係る組成物で説明した材料が挙げられ、それらを用いることができる。
【0259】
本開示に係る赤外線透過フィルタは、本開示に係る膜とは異なる分光特性を有する他の赤外線透過フィルタと組み合わせて用いることもできる。
【0260】
他の赤外線透過フィルタとしては、以下の(1)に記載の分光特性を満たしているフィルタなどが挙げられる。(1)に示す分光特性において、A/C、最小値A、及び、最大値Cの好ましい範囲は、上述の本開示に係る硬化性組成物における上記A/C、最小値A、及び、最大値Cの好ましい範囲と同様である。
【0261】
(1):波長1,000nm~波長1,300nmの間に透過率が50%となる波長Tbが存在し、上記波長Tbよりも200nm短波である波長をTa、上記波長Tbよりも200nm長波である波長をTcとした際の、Taの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最小値Aと、Tcの波長から±50nmの範囲の波長における吸光度の最大値Cとの比であるA/Cが4.5以上である。
【0262】
(積層体)
本開示に係る積層体は、本開示に係る硬化膜又は本開示に係る赤外線透過フィルタ、及び、誘電体多層膜を含む。
誘電体多層膜とは、屈折率の異なる誘電体が積層された膜であり、特定の波長に対する反射防止又は完全反射を目的としてレンズの表面等に形成される光学薄膜である。
誘電体多層膜は、少なくともブラッグ反射層を含むことが好ましい。
ブラッグ反射層は、層の厚さ方向に屈折率の変調を有する層である。ブラッグ反射層は、その屈折率変調に対して直交する成分を有する光が入射した際に、各屈折率界面において透過光及び反射光が生じ、これらが互いに干渉し、その結果、入射光の一部が反射される。一般に、ブラッグ反射層は、周期的な多層構造を有し、層の数を増減することで反射率を制御することができる。また、ブラッグ反射層における選択反射は一般に、多層構造における個々の層の厚みを制御することで、反射波長を選択できる。
ブラッグ反射層の一例としては、例えば、酸化ケイ素と五酸化ニオブの薄膜を交互に数十層、積層して作製することができる。また、高分子フィルムを多層積層することによっても作製することができる。市販品では、3M社製の多層反射フィルム「ESR」等を用いることができる。
誘電体多層膜としては、例えば、波長Tbnm~波長Tb+200nmの光の透過率が80%以上、かつ、波長400nm~波長Tbnmの光の透過率が10%以下のものが好ましく挙げられ、波長Tbnm~波長Tb+200nmの光の透過率が90%以上、かつ、波長400nm~波長Tbnmの光の透過率が5%以下のものがより好ましい。
本開示に係る積層体が誘電体多層膜を有することにより、可視光に由来するノイズの発生が更に抑制されると考えられる。
【0263】
(固体撮像素子)
本開示に係る固体撮像素子は、上述した本開示に係る硬化膜、本開示に係る赤外線透過フィルタ、又は、本開示に係る積層体を有する。本開示に係る固体撮像素子の構成としては、本開示に係る硬化膜、本開示に係る赤外線透過フィルタ又は本開示に係る積層体を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0264】
支持体上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオード及びポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオード及び転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面及びフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本開示に係る硬化膜、本開示に係る赤外線透過フィルタ、又は、本開示に係る積層体を有する構成である。更に、デバイス保護膜上であって、本開示に係る硬化膜、本開示に係る赤外線透過フィルタ、又は、本開示に係る積層体の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、本開示に係る硬化膜、本開示に係る赤外線透過フィルタ、又は、本開示に係る積層体に集光手段を有する構成等であってもよい。
【0265】
(センサ)
本開示に係るセンサ(光学センサ、好ましくは赤外線センサ)は、上述した本開示に係る硬化膜、本開示に係る赤外線透過フィルタ、又は、本開示に係る積層体を含む。赤外線センサの構成としては、赤外線センサとして機能する構成であれば特に限定はない。以下、本開示に係る赤外線センサの一実施形態について、図面を用いて説明する。
【0266】
図1において、符号110は、固体撮像素子である。固体撮像素子110上に設けられている撮像領域は、赤外線カットフィルタ111と、赤外線透過フィルタ114とを有する。また、赤外線カットフィルタ111上には、カラーフィルタ112が積層している。カラーフィルタ112及び赤外線透過フィルタ114の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
【0267】
赤外線カットフィルタ111は、可視光線領域の光(例えば、波長400~700nmの光)を透過し、赤外領域の光を遮蔽するフィルタである。カラーフィルタ112は、可視領域における特定波長の光を透過及び吸収する画素が形成されたカラーフィルタであって、特に限定はなく、従来公知の画素形成用のカラーフィルタを用いることができる。例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の画素が形成されたカラーフィルタなどが用いられる。例えば、特開2014-043556号公報の段落番号0214~0263の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。赤外線透過フィルタ114は、可視光線遮蔽性を有し、かつ、特定波長の赤外線を透過させるフィルタであって、上述した分光特性を有する本開示に係る膜又は積層体で構成されている。
【0268】
図1に示す赤外線センサにおいて、平坦化層116上には、赤外線カットフィルタ111とは別の赤外線カットフィルタ(他の赤外線カットフィルタ)が更に配置されていてもよい。他の赤外線カットフィルタとしては、銅を含有する層及び/又は誘電体多層膜を有するものなどが挙げられる。これらの詳細については、上述したものが挙げられる。また、他の赤外線カットフィルタとしては、デュアルバンドパスフィルタを用いてもよい。
【0269】
また、
図1に示す実施形態では、カラーフィルタ112が、赤外線カットフィルタ111よりも入射光hν側に設けられているが、赤外線カットフィルタ111と、カラーフィルタ112との順序を入れ替えて、赤外線カットフィルタ111を、カラーフィルタ112よりも入射光hν側に設けてもよい。
【0270】
また、
図1に示す実施形態では、赤外線カットフィルタ111とカラーフィルタ112は隣接して積層しているが、両フィルタは必ずしも隣接している必要はなく、間に他の層が設けられていても良い。
【0271】
また、
図1に示す実施形態において、赤外線透過フィルタ114とは異なる分光特性を有する他の赤外線透過フィルタを更に有していてもよい。
【0272】
図2に示す赤外線センサは、本開示に係る赤外線センサの他の実施形態であって、この赤外線センサは、固体撮像素子110の撮像領域に、赤外線透過フィルタ114と、赤外線透過フィルタ114とは異なる第2の赤外線透過フィルタ120とを有している。そして、赤外線透過フィルタ114及び第2の赤外線透過フィルタ120の入射光hν側には、マイクロレンズ115が配置されている。マイクロレンズ115を覆うように平坦化層116が形成されている。
図2に示す赤外線センサにおいて、第2の赤外線透過フィルタ120として、異なる分光特性を有する赤外線透過フィルタを2種類以上有していてもよい。
【0273】
(画像表示装置)
本開示に係る膜又は積層体は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置などの画像表示装置に用いることもできる。表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本開示が適用できる液晶表示装置のタイプは特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0274】
画像表示装置は、表示素子として白色有機EL素子を有する画像表示装置であってもよい。白色有機EL素子としては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)及び黄色領域(580nm-620nm)に強い極大発光ピークを有することが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有することがより好ましい。
【実施例0275】
以下、本開示を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
【0276】
(実施例1~79、及び、比較例1~6)
<可視吸収分散液、赤外吸収分散液の調製>
各実施例又は比較例において、下記表1~表29に記載の組成で可視吸収分散液及び/又は赤外吸収分散液を調製した。
例えば、実施例1においては、可視吸収分散液R1、Y1、B1、赤外吸収分散液IR1及びIR2の、計5つの分散液を調製した。
具体的には、0.3mm径のジルコニアビーズを使用して、ビーズミル(減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製))で、3時間、混合、分散して、各実施例又は比較例における可視吸収分散液及び/又は赤外吸収分散液をそれぞれ調製した。
表1~表29中、「可視顔料」の欄には使用した可視光吸収化合物の種類及び含有量を、「可視誘導体」の欄には、使用した顔料誘導体の種類及び含有量を、「分散剤」の欄には使用した分散剤の種類及び含有量を、「溶剤」の欄には使用した溶剤の種類及び含有量をそれぞれ記載した。
また、表1~表29中、「赤外顔料」の欄には使用した他の赤外線吸収剤の種類及び含有量を、「赤外誘導体」の欄には使用した顔料誘導体の種類及び含有量をそれぞれ記載した。
なお、各表中に記載の可視吸収分散液及び赤外吸収分散液における各成分の含有量は、最終的に硬化性組成物を調製した際の硬化性組成物における含有量である。
また、表1~表29中、「-」の記載は、該当する化合物を使用しなかったことを示している。
【0277】
<硬化性組成物の調製>
各実施例又は比較例において、下記表1~表29に記載の成分を、各表に記載の組成(質量部)となるように混合して硬化性組成物を調製した。
具体的には、調製した上記可視吸収分散液、上記赤外吸収分散液と、可視染料と、赤外染料(赤外線吸収剤)と、樹脂と、重合性単量体(硬化性化合物)と、重合開始剤と、添加剤と、重禁剤(重合禁止剤)と、界面活性剤と、溶剤と、を混合することにより調製した。
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
【0294】
【0295】
【0296】
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【0306】
【0307】
表1~表29中、符号で記載された化合物の詳細は下記の通りである。
【0308】
〔可視顔料(可視光吸収化合物)〕
VP-1:C.I.ピグメントレッド254
VP-2:C.I.ピグメントレッド122
VP-3:C.I.ピグメントイエロー139
VP-4:C.I.ピグメントイエロー185
VP-5:C.I.ピグメントブルー15:6
VP-6:C.I.ピグメントブルー16
VP-7:C.I.ピグメントバイオレット23
VP-8:Irgaphor Black X11(BASF社製)
VP-9:C.I.ピグメントブラック32
VP-10:Si単体粒子
VP-11:C.I.ピグメントブラック 7
【0309】
〔可視誘導体(顔料誘導体)〕
VS-1:C.I.ピグメントレッド254-SO3H誘導体
VS-2:C.I.ピグメントイエロー139-SO3H誘導体
VS-3:C.I.ピグメントブルー15:6-SO3H誘導体
VS-4:C.I.ピグメントレッド254-NH2誘導体
VS-5:C.I.ピグメントイエロー139-NH2誘導体
VS-6:C.I.ピグメントブルー15:6-NH2誘導体
【0310】
〔分散剤〕
D-1:下記構造の化合物
D-2:下記構造の化合物
【0311】
【0312】
〔溶剤〕
S-1:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
S-2:PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)
S-3:Cyclopentanone
【0313】
〔可視染料(可視光吸収化合物)〕
VD-1:RDW-K01(富士フイルム和光純薬(株))
【0314】
〔赤外顔料(他の赤外線吸収剤)〕
IP-1:下記構造の化合物
IP-2:下記構造の化合物
IP-3:下記構造の化合物
IP-4:下記構造の化合物
IP-5:下記構造の化合物
【0315】
【0316】
【0317】
【0318】
〔赤外誘導体(顔料誘導体)〕
IS-1:下記構造の化合物
IS-2:下記構造の化合物
IS-3:下記構造の化合物
IS-4:下記構造の化合物
IS-5:下記構造の化合物
IS-6:下記構造の化合物
IS-7:下記構造の化合物
【0319】
【0320】
【0321】
【0322】
【0323】
【0324】
【0325】
〔赤外染料(赤外線吸収剤)〕
ID-1:下記構造の化合物(極大吸収波長:902nm)
ID-2:下記構造の化合物(極大吸収波長:1,007nm)
ID-3:下記構造の化合物(極大吸収波長:1,104nm)
ID-4:下記構造の化合物(極大吸収波長:1,156nm)
ID-5:下記構造の化合物(極大吸収波長:1,176nm)
ID-6:下記構造の化合物(極大吸収波長:1,311nm)
ID-7:ST7/4 (Syntech社製)
ID-8:CIR-RL (日本カーリット(株)製)(極大吸収波長:1,104nm)
【0326】
【0327】
【0328】
〔樹脂〕
B-1:下記構造の化合物
B-2:下記構造の化合物
B-3:ARTON F4520(JSR(株)製)
B-4:ARTON D4540(JSR(株)製)
B-5:ネオプリム S-200(三菱ガス化学(株)製)
【0329】
【0330】
〔重合性単量体(硬化性化合物)〕
M-1:下記構造の化合物
M-2:下記構造の化合物
M-3:A-DPH(新中村化学工業(株)製)
M-4:A-BPE-10(新中村化学工業(株)製)
【0331】
【0332】
〔重合性開始剤〕
I-1:IRGACURE OXE01 (BASF社製)
I-2:IRGACURE 369 (BASF社製)
I-3:NCI-930 ((株)ADEKA製)
【0333】
〔添加剤〕
A-1:下記構造の化合物
A-2:AO-80 ((株)ADEKA製)
A-3:LA-82 ((株)ADEKA製)
A-4:オグソールPG-100(大阪ガスケミカル(株)製)
【0334】
【0335】
〔重禁剤(重合禁止剤)〕
In-1:p-メトキシフェノール
In-2:1,2-ジメトキシフェノール
【0336】
〔重禁剤(重合禁止剤)〕
Su-1:Megafac F-781F(DIC(株)製)
Su-2:Megafac F-554F(DIC(株)製)
【0337】
(評価)
<硬化膜の作製>
各実施例又は比較例において行った硬化膜の作製方法の一例を以下に示すが、本開示に係る硬化膜はこれに限定されるものではない。
例えば、実施例69~71を除く各実施例又は比較例において得られた硬化性組成物を、下記の成膜方法によって成膜した。
ポストベーク後の膜厚が上記表に記載の目標膜厚(単位:μm)の値となるように、各組成物を支持体上にスピンコートし、次いでホットプレートを用いて、100℃、120秒間加熱した。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(キヤノン(株)製)を使用して、任意のサイズのフォトマスクを用いて、所望のパターンサイズとなる露光量にて塗布後の硬化性組成物(塗布膜)に対して露光を行った。
その後、露光された塗布膜が形成されている基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD-2060(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行い、硬化膜を形成した。
硬化膜のパターンが形成された基板を純水でリンス処理を行い、その後スピン乾燥した。更に、200℃のホットプレートを用いて300秒間加熱処理(ポストベーク)を行い、硬化膜を製造した。
【0338】
実施例69~71に関しては、同様の方法で塗布・加熱を行った後、ホットプレートを用いて220℃で300秒間加熱処理を行うことで、硬化物層を形成した。
次いで、硬化物層の上に、ポジ型フォトレジスト「FHi622BC」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を塗布し、110℃で1分間プリベークを行い、膜厚3.0μmのフォトレジスト層を形成した。
続いて、フォトレジスト層に対し、i線ステッパー(キャノン(株)製)を用いて200mJ/cm2の露光量でパターン露光し、次いで、フォトレジスト層の温度又は雰囲気温度が90℃となる温度で1分間加熱処理を行なった。その後、現像液「FHD-5」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を用いて1分間の現像処理を行い、更に110℃で1分間のポストベーク処理を実施して、レジストパターンを形成した。
次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、硬化物層のドライエッチングを以下の手順で行った。
ドライエッチング装置(日立ハイテクノロジーズ社製、U-621)にて、RFパワー:800W、アンテナバイアス:400W、ウエハバイアス:200W、チャンバーの内部圧力:4.0Pa、基板温度:50℃、混合ガスのガス種及び流量を、CF4:80mL/min、O2:40mL/min、Ar:800mL/minとして、80秒の第1段階のエッチング処理を実施した。
次いで、同一のエッチングチャンバーにて、RFパワー:600W、アンテナバイアス:100W、ウエハバイアス:250W、チャンバーの内部圧力:2.0Pa、基板温度:50℃、混合ガスのガス種及び流量をN2:500mL/min、O2:50mL/min、Ar:500mL/minとし(N2/O2/Ar=10/1/10)、28秒の第2段階エッチング処理、オーバーエッチング処理を実施した。
上記条件でドライエッチングを行った後、フォトレジスト剥離液「MS230C」(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を使用して120秒間、剥離処理を実施してレジストを除去し、更に純水による洗浄、スピン乾燥を実施した。その後、100℃で2分間の脱水ベーク処理を行い、所望のパターニングが施された硬化膜を製造した。
【0339】
上記成膜法を用いて、国際公開第2017/159130号の実施例1の基板11とレンズ17の間に硬化膜を作製し、硬化膜付きセンサを作製した。
「誘電体」の欄に「あり」と記載された実施例に関しては、基板11上に誘電体多層膜を蒸着し、更に上記成膜法にて硬化膜を作製し、レンズ17を形成し、センサを作製した。
【0340】
<半値波長、吸光度比及び遮蔽度の測定>
各実施例又は比較例において、得られた硬化膜に対し、半値波長、吸光度比及び遮蔽度の測定を行った。
具体的には、各実施例又は比較例において得られた硬化膜に対し、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ(株)製U-4100)を用いて半値波長(上述の波長Tb)、吸光度比(上述のA/C)、及び、遮蔽度(上述のA’/C)の測定を行った。
測定結果は表1~表29にそれぞれ記載した。
【0341】
<可視光に由来するノイズの測定>
暗室中に、波長400nm~波長2,000nmの範囲で均等な光拡散能を持つ白色拡散板を2つ設置した。
一方の白色拡散板に、AM1.5G条件の波長300nm~波長400nm域と波長800nmより長波域を遮蔽した光を当て、別の一方に1.0μW/cm2の発光面強度と所定の波長を有する赤外LED(light emitting diode)光源から発した光を照射した。赤外LED光源の波長は、具体的には、実施例21~24が1300nmであり、実施例79が1100nmであり、その他が1200nmである。
その後、作製した撮像素子を用いて両方の拡散板を撮影しながら、AM1.5G条件からスペクトル形状を変えないまま減光板を挟むことで発光強度を下げていった。
両拡散板の信号強度を比較し、AM1.5G側の強度Ivが赤外LED側の強度Iの1/10に達した減光率を記録し、下記評価基準により評価した。評価結果は表1~表29の「外光」の欄に記載した。
【0342】
〔評価基準〕
5:減光率0%で達した
4:減光率90%で達した
3:減光率99%で達した
2:減光率99.9%で達した
1:減光率99.9%でも達しなかった
上記試験結果は、数値(1~5)が大きいほど、結果が良好であると言える。
本試験結果が良好である組成物は、例えば太陽光の存在下であっても可視光に由来するノイズ(外光ノイズ)の少ない赤外線画像が取得可能であると考えられる。
【0343】
<高湿感度の評価>
上述の「硬化膜の作製」において作製された実施例に係る硬化性組成物を用いたセンサ(本開示に係る硬化膜を備えるセンサ)は、温度20℃/相対湿度95%の空間で300m先の目的波長の目標の撮影像と、温度20℃/相対湿度10%の空間で300m先の目標の撮影像が同等であった(A判定)。
対して、比較例3の組成物を用いたセンサでは、高湿度下で像のぼやけが顕著に見られた(B判定)。具体的には、比較例3の組成物を用いたセンサでは、温度20℃/相対湿度95%の空間で300m先の目的波長の目標の撮影像が、温度20℃/相対湿度10%の空間で300m先の目標の撮影像と比較してぼやけが顕著であった。
本試験結果が良好である(A判定)硬化性組成物を用いたセンサは、湿度に依存しにくく良好な画像が取得可能である。
【0344】
<角度依存性の評価>
上述の「硬化膜の作製」において作製された各実施例又は比較例におけるセンサの受光面の法線方向から、0度と30度から波長400nm~波長1,800nmの波長の光を照射し、入射角度ごとの信号を取得した。
上記信号に対し、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクノロジーズ(株)製 U-4100)を用いて半値幅を測定し、半値幅の変化(0度における半値幅と30度における半値幅の差の絶対値)を得た。下記評価基準に従って角度依存性を評価し、評価結果は表1~表29に記載した。
【0345】
〔評価基準〕
5:半値幅が全く変化しない
4:半値幅の変化が10nm未満である
3:半値幅の変化が10nm~20nmである
2:半値幅の変化が20nm~30nmである
1:半値幅の変化が30nm超である
上記試験結果は、数値(1~5)が大きいほど、結果が良好であると言える。
本試験が良好である組成物は、画像の中心部と端部で感度差が生じにくく、良好な画像が取得可能である。
【0346】
<低背化の評価>
各実施例又は比較例において、ガラス基板上に上記方法で各組成物膜(硬化膜)を作製し、これらの膜のパターンが存在する部位としない部位に関して、下記の触覚による評価を行った。
試験者は5名以上の20代であり、試験者は提示された膜を目視することなく利き腕の人差し指で触れた。試験者はなぞり動作をせずに、刺激片に対して鉛直方向にのみ力をかけるようにするよう指示された。印加している力は液晶モニタ上に常時表示され、試験者自らが印加する力を1Nとなるように調節した。
試験者は接触表面に凹凸があるか否かを強制2択で回答した。熱の移動が凹凸知覚の手がかりにならないよう、各実験試行の前に基板を恒温プレート(日伸理化製 NHP-45N)上で32℃に保温した。試行は各基板を10回ずつ行った。下記評価基準に従って低背化を評価し、評価結果は表1~表29に記載した。
【0347】
〔評価基準〕
A:凹凸が存在するという回答率が50%以下である
B:凹凸が存在するという回答率が50%を超えた
本試験が良好(A)である組成物膜は、センサに導入されても有意な高背化を及ぼしにくいと考えられる。
【0348】
<耐光性の評価>
各実施例又は比較例において、ガラス基板上に上記方法にて硬化膜を形成し、耐光試験機(照度1万Lx、温度50℃、相対湿度50%)に6ヶ月入れ、耐光性評価を実施した。
耐光性評価前後の膜について、波長400nm~波長1,300nmの光の透過率T%を測定し、その差分であるΔT%=|T%(耐光性試験前)-T%(耐光性試験後)|を求めて耐光性を評価した。下記評価基準に従って耐光性を評価し、評価結果は表1~表29に記載した。
【0349】
〔評価基準〕
5:ΔT%<3%
4:3%≦ΔT%<5%
3:5%≦ΔT%<10%
2:10%≦ΔT%<20%
1:20%≦ΔT%
【0350】
表1~表29に記載の結果から、本開示に係る硬化性組成物は、硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制され、高湿感度に優れ、角度依存性に優れ、かつ、低背化が可能であることがわかる。
なお、実施例1において、重禁剤を添加しない場合、界面活性剤を添加しない場合、いずれも実施例1と同様の結果であった。
比較例1に係る硬化性組成物は、上述の式1(Y>X×0.5)を満たす赤外線吸収剤を含有しないため、硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制されていないことがわかる。
比較例2に係る硬化性組成物は、上述の式1(Y>X×0.5)を満たす赤外線吸収剤を含有せず、誘電体多層膜のみを有するため、可視光に由来するノイズの発生は抑制されるものの、角度依存性に劣ることがわかる。
比較例3に記載の硬化性組成物は、上述の式1(Y>X×0.5)を満たす赤外線吸収剤を含有しないため、硬化後の硬化膜において、高湿感度に劣ることがわかる。
比較例4に記載の硬化性組成物は、上述のA/Cの値が4.5未満であるため、硬化後の硬化膜において、可視光に由来するノイズの発生が抑制されていないことがわかる。
比較例5に記載の硬化性組成物は、上述の波長Tbが波長1,000nm~波長1,300nmの間に存在せず、硬化後の硬化膜において赤外線を透過しにくいため、赤外線画像を取得できていないことがわかる。
比較例6に記載の硬化性組成物は、上述の波長Tbが波長1,000nm~波長1,300nmの間に存在しないため、上記硬化性組成物を0.1μm~100μmのいずれかの厚さで塗布した際に、Tbが存在せず、低背化に劣ることがわかる。
110:固体撮像素子、111:赤外線カットフィルタ、112:カラーフィルタ、114:赤外線透過フィルタ、115:マイクロレンズ、116:平坦化層、120:第2の赤外線透過フィルタ