IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022164779
(43)【公開日】2022-10-27
(54)【発明の名称】皮膚洗浄用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20221020BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20221020BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20221020BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221020BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221020BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/36
A61Q19/10
A61K31/4164
A61K31/192
A61K31/05
A61P43/00 121
A61P31/04
A61P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136899
(22)【出願日】2022-08-30
(62)【分割の表示】P 2017245776の分割
【原出願日】2017-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩明
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ミコナゾール及び/又はその塩を含み且つ抗細菌活性も併せ持つことによって抗菌活性が向上した皮膚洗浄用組成物を提供することである。
【解決手段】ミコナゾール及び/又はその塩と、イソプロピルメチルフェノールと、サリチル酸とを含む皮膚洗浄用組成物は、イソプロピルメチルフェノール及びサリチル酸がそれぞれ単独でも組み合わされても十分な抗菌活性を有しないにも関わらず、ミコナゾール硝酸塩による抗真菌活性に加えて優れた抗細菌活性も具備させることによって、抗菌活性を向上させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ミコナゾール及び/又はその塩と、(B)イソプロピルメチルフェノールと、(C)サリチル酸とを含み、前記(A)成分の含有量が0.1~2重量%、前記(B)成分の含有量が0.01~0.2重量%、且つ前記(C)成分の含有量が0.01~0.2重量%である、皮膚洗浄用組成物(但し、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、天然ビタミンE、緑茶乾留エキスおよび茶エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種の抗酸化剤を含む場合を除く)。
【請求項2】
さらに(D)界面活性剤を含む、請求項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
【請求項4】
(A)ミコナゾール及び/又はその塩を含み、前記(A)成分の含有量が0.1~2重量%である皮膚洗浄用組成物(但し、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、天然ビタミンE、緑茶乾留エキスおよび茶エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種の抗酸化剤を含む場合を除く)における抗菌活性を向上させる方法であって、
皮膚洗浄用組成物に、前記(A)成分と共に、(B)イソプロピルメチルフェノールと(C)サリチル酸とを、前記(B)成分の含有量が0.01~0.2重量%、且つ前記(C)成分の含有量が0.01~0.2重量%となるように配合する、抗菌活性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚洗浄用組成物に関する。より具体的には、本発明は、ミコナゾール及び/又はその塩を含み、抗菌活性が向上した皮膚洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚には通常、多数の常在菌や通過菌が存在し、真菌の一種マラセチア菌が頭部のふけ症や脂性皮膚炎、毛包炎の原因となったり、細菌の一種アクネ菌がざ瘡を引き起こしたりなど、菌による様々な皮膚感染症が生じうる。
【0003】
ミコナゾール硝酸塩はイミダゾール系抗真菌剤の一種であり、医薬品、医薬部外品または化粧品の有効成分として広く用いられている。例えば、特許文献1には、ミコナゾール硝酸塩が配合された、抗真菌活性を有する洗浄用組成物が開示されている。
【0004】
さらに、ミコナゾール硝酸塩を含む洗浄用組成物の抗菌活性を向上させるための製剤処方が検討されており、例えば、特許文献1には、ミコナゾール硝酸塩などのアゾール系抗真菌剤および抗細菌剤が配合された洗浄用組成物が開示されており、好ましくは、当該抗細菌剤が、トリクロサン、トリクロカルバンおよびイソプロピルメチルフェノールから選ばれる少なくとも1種であることが開示されている。また、特許文献2には、ミコナゾール硝酸塩と、抗真菌活性増強成分と、所定量の界面活性剤と所定量の水と含む洗浄用組成物が開示されており、好ましくは、当該抗真菌活性増強成分メントールおよび/またはカンファー、又は、ゲラニオール、オイゲノール、チモール、カルバクロール、ボルネオールおよびカルベオールからなる群より選択される1つ以上の化合物であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-277227号公報
【特許文献2】特開2006-335768号公報
【特許文献3】特開2014-088373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された製剤処方では抗細菌剤が含まれているものの、実際に抗細菌効果が示された抗細菌剤はトリクロサン及びトリクロカルバンであり、イソプロピルメチルフェノールを配合することによる抗細菌効果は確認されていない。特許文献3に記載された製剤処方では抗真菌活性の増強によりミコナゾール硝酸塩の有する効果のうちにきび防止効果を増強することが想定されているが、細菌であるアクネ菌によるにきびに対しては効果がない。
【0007】
本発明者は、新たな処方設計によって抗真菌活性及び抗細菌活性の両面から皮膚洗浄用組成物の抗菌活性を向上させる処方を検討したところ、ミコナゾール硝酸塩を含む皮膚洗浄用組成物に、一般的に抗細菌剤として知られているイソプロピルメチルフェノールを配合しても、十分な抗細菌活性が得られない課題に直面した。そこで、本発明は、ミミコナゾール及び/又はその塩を含み且つ抗細菌活性も併せ持つことによって抗菌活性が向上した皮膚洗浄用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、一般的に抗細菌剤として知られているイソプロピルメチルフェノール及びサリチル酸がそれぞれ単独でミコナゾール硝酸塩を含む皮膚洗浄用組成物に配合された場合は十分な抗細菌活性が得られないにも関わらず、それらの両方が配合されることよって、ミコナゾール硝酸塩を含む皮膚洗浄用組成物に、ミコナゾール硝酸塩による抗真菌活性に加えて、優れた抗細菌活性も具備させることができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ミコナゾール及び/又はその塩と、(B)イソプロピルメチルフェノールと、(C)サリチル酸とを含む、皮膚洗浄用組成物。
項2. さらに(D)界面活性剤を含む、項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
項3. 前記(D)成分が、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の皮膚洗浄用組成物。
項4. (A)ミコナゾール及び/又はその塩を含む皮膚洗浄用組成物における抗菌活性を向上させる方法であって、皮膚洗浄用組成物に、前記(A)成分と共に、(B)イソプロピルメチルフェノールと(C)サリチル酸とを配合する、抗菌活性向上方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膚洗浄剤組成物によって、ミコナゾール硝酸塩による抗真菌活性に加えて、優れた抗細菌活性も具備させることができるため、抗菌活性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.皮膚洗浄用組成物
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(A)ミコナゾール及び/又はその塩(以下、(A)成分と表記することがある)と、(B)イソプロピルメチルフェノール(以下、(B)成分と表記することがある)と、(C)サリチル酸(以下、(C)成分と表記することがある)とを含むことを特徴とする。以下、本発明の皮膚洗浄用組成物について詳述する。
【0012】
(A)ミコナゾール及び/又はその塩
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(A)成分として、ミコナゾール及び/又はその塩を含有する。ミコナゾール及び/又はその塩は、真菌に対する殺菌効果を有するイミダゾール系抗真菌剤として公知の薬剤である。
【0013】
ミコナゾールは、1-[2,4-ジクロロ-β-[(2,4-ジクロロベンジル)オキシ]フェネチル]イミダゾールとも称される化合物である。ミコナゾールの塩としては、薬学的に許容されるものであれば特に限定されないが、具体的には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸の塩が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分として、ミコナゾール及びミコナゾールの塩の中から、1種を選択して使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これら(A)成分の中でも、好ましくはミコナゾールの塩が挙げられ、より好ましくはミコナゾール硝酸塩が挙げられる。
【0015】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分の含有量については特に限定されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で0.1~20重量%が挙げられる。薬効及び溶解性をより良好に得る観点から、(A)成分の含有量としては、(A)成分の総量で好ましくは0.2~5重量%、更に好ましくは0.5~2重量%が挙げられる。
【0016】
(B)イソプロピルメチルフェノール
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(B)成分として、イソプロピルメチルフェノールを含有する。イソプロピルメチルフェノールは、4-イソプロピル-3-メチルフェノールとも称さる化合物であり、抗細菌作用を有することが知られている公知の薬剤である。
【0017】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(B)成分の含有量については特に限定されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~10重量%が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用組成物における抗細菌性をより効率的に得る観点から、(B)成分の含有量としては、好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.05~1重量%、一層好ましくは0.05~0.5重量%、特に好ましくは0.05~0.2重量%が挙げられる。
【0018】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率としては特に限定されないが、抗細菌性をより効率的に得る観点から、(A)成分1重量部当たり、(B)成分が例えば0.01~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部、更に好ましくは0.1~0.2重量部が挙げられる。
【0019】
(C)サリチル酸
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(C)成分として、サリチル酸を含有する。サリチル酸は、抗真菌作用及び抗細菌作用を有することが知られている公知の薬剤である。
【0020】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(C)成分の含有量については、特に制限されず、付与すべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で、0.01~10重量%が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用組成物における抗細菌効果をより効率的に得る観点から、(C)成分の含有量としては、好ましくは0.05~5重量%、更に好ましくは0.05~1重量%が挙げられる。
【0021】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分に対する(C)成分の比率としては特に限定されないが、抗細菌効果をより効率的に得る観点から、(A)成分1重量部当たり、(C)成分が例えば0.01~1重量部、好ましくは0.05~0.5重量部、更に好ましくは
0.1~0.3重量部が挙げられる。
【0022】

本発明の皮膚洗浄用組成物は、基剤として水を含有することができる。本発明の皮膚洗浄用組成物における水の含有量については、(A)成分の溶解性及び製剤形態等に応じて適宜設定されるが、例えば、30~98重量%、好ましくは40~95重量%、更に好ましくは50~90重量%が挙げられる。
【0023】
(D)界面活性剤
本発明の皮膚洗浄用組成物は、(D)成分として界面活性剤を含有することができる。界
面活性剤としては特に限定されないが、皮膚への刺激を抑制する観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤の中から1種を単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。また、界面活性剤としては、上記の(A)成分を溶解させ易くする観点から、少なくともアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤、又は、少なくとも非イオン性界面活性剤を含むことが好ましく、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及び両面界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0024】
アニオン性界面活性剤としては、具体的には、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシカリセッケン等の脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のアルキルエーテルカルボン酸及びその塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等の高級アルコールの硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン等のN-アシルアミン酸塩;N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ脂肪酸メチルタウリンナトリウム(ココイルメチルタウリンナトリウム)、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルアミドエーテルスルホン酸ナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ロート油などの硫酸化油、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、及びカゼインナトリウム等の高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、脂肪酸アミドエーテル硫酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、スルホコハク酸塩等の硫酸エステル塩型またはスルホン酸塩型界面活性剤;エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、N-アシルイミノジ酢酸、N-アシルアミノ酸塩等のカルボン酸型界面活性剤等が挙げられる。
【0025】
これらのアニオン性界面活性剤の中でも、上記(A)成分の溶解性をより良好に得る観点から、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルアミン酸塩が好ましく挙げられる。
【0026】
これらのアニオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
非イオン性界面活性剤としては、具体的には、モノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸テトラグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;プロピレングリコールモノラウリン酸エステル、プロピレングリコールモノミリスチン酸エステル等のアルキレングリコールモノ脂肪酸エステル類;グリセリンモノドデシルエーテル、グリセリンモノセチルエーテル、グリセリンモノステアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノドデシルエーテル等のアルキル多価アルコールエーテル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン分鎖オクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン;ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;ラウリン酸メチルグルカミド、ヤシ脂肪酸メチルグルカミド等のアシルメチルグルカミド;その他アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアセチレングリコール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレスタノール、ポリオキシエチレンノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。
【0028】
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、上記(A)成分の溶解性をより良好に得る観点から、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミドが好ましく挙げられる。
【0029】
これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
両性界面活性剤としては、具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0031】
これらの両性界面活性剤の中でも、上記(A)成分の溶解性をより良好に得る観点から、ベタイン型両性界面活性剤が好ましく挙げられる。
【0032】
これらの両性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の皮膚洗浄剤組成物における(D)成分の含有量については、皮膚洗浄用組成物の形態等に応じて適宜設定すればよいが、(A)成分をより良好に溶解させる観点から、(D)成分の総量として、例えば0.1~60重量%、好ましくは0.5~50重量%、更に好ましくは1~40重量%が挙げられる。より好ましくは、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤との総量は、10~25重量%、非イオン性界面活性剤の総量は、1~10重量%が挙げられる。
【0034】
本発明の皮膚洗浄用組成物において、(A)成分に対する(D)成分の比率としては特に限定されないが、(A)成分をより良好に溶解させる観点から、(A)成分1重量部当たり、(D)成分の総量が例えば1~60重量部、好ましくは3~50重量部が挙げられる。より好ましくは、アニオン性界面活性剤と両性界面活性剤との総量は、(A)成分1重量部当たり、10~30重量部が挙げられ、非イオン性界面活性剤の総量は、(A)成分1重量部当たり、1~10重量部が挙げられる。
【0035】
他の成分
本発明の皮膚洗浄用組成物には、前述する(A)~(C)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、皮膚洗浄用組成物の形態に応じて、当該技術分野で通常使用される添加成分を含有していてもよい。このような添加成分としては、例えば、美白剤、細胞賦活剤、消炎剤、抗菌剤(上記(A)~(C)成分以外)、保湿剤、清涼化剤、無機粉体、香料、着色剤、消臭剤、増粘剤、pH調整剤、基剤、溶剤、酸化防止剤、パール剤、キレート剤等が挙げられる。
【0036】
例えば、保湿剤としては、プロピレングリコール、ジピロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール;ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、トレハロース等の糖アルコールの他、ヘパリノイド(ヘパリン類似物質)、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物、アロエ抽出物、ローヤルゼリー抽出物、大豆抽出物、海藻抽出物等が挙げられる。これらの保湿剤は、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0037】
上述の保湿剤の中でも、(A)成分の溶解性をより良好に得る観点から、多価アルコール及び糖アルコールが好ましい。本発明の皮膚洗浄用組成物において、これら多価アルコール及び糖アルコールの総量は、例えば、1~20重量%、好ましくは5~15重量%が挙げられる。また、(A)成分に対する多価アルコール及び糖アルコールの総量の比率は、(A)成分1重量部当たり、例えば1~25重量部、好ましくは5~20重量部が挙げられる。
【0038】
形態
本発明の皮膚洗浄剤組成物の形態については特に制限されず、例えば、液状、乳液状、及びクリーム状が挙げられる。本発明の皮膚洗浄用組成物の形態として、好ましくは液状及び乳液状、さらに好ましくは乳液状が挙げられる。
【0039】
用途
本発明の皮膚洗浄用組成物は、適量の水と混合して泡立てて、身体部位の洗浄に使用される。本発明の皮膚洗浄用組成物の洗浄対象となる身体部位については、特に制限されず、あらゆる身体部位の洗浄剤として使用できるが、洗顔料、ボディーソープ、ハンドソープ等として好適に使用される。また、本発明の皮膚洗浄用組成物は、抗真菌性及び抗細菌性の両方に優れているため、真菌性(具体例としてマラセチア菌(Malassezia furfur))のざ瘡と細菌性(具体例としてアクネ菌(Propionibacterium acnes))のざ瘡との両方が生じる背中や胸の中央部などを洗浄するボディーソープとして特に好適に使用される。
【0040】
製造方法
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、前述する(A)~(C)成分、及び必要に応じて配合される他の成分を混合して、所定の性状に調製することによって製造される。
【0041】
2.抗菌活性向上方法
前述するように、イソプロピルメチルフェノール及びサリチル酸は、ミコナゾール及び/又はその塩を含む皮膚洗浄用組成物において、ミコナゾール及び/又はその塩による抗真菌性に加え、良好な抗細菌性を付与することにより、抗菌活性を向上させることができる。従って、本発明は、更に、(A)成分であるミコナゾール及び/又はその塩を含む皮膚洗浄用組成物における抗菌活性を向上させる方法であって、皮膚洗浄用組成物に、前記(A)成分と共に、(B)成分であるイソプロピルメチルフェノールと(C)成分であるサリチル酸とを配合する、抗菌活性向上方法を提供する。
【0042】
なお、本発明において、抗菌活性を向上するとは、ミコナゾール及び/又はその塩を含む皮膚洗浄用組成物において、ミコナゾール及び/又はその塩による抗真菌性を発揮するとともに、イソプロピルフェノール及びサリチル酸、又はサリチル酸を含まない場合に比べてより優れた抗細菌性を発揮することをいう。
【0043】
前記抗菌活性向上方法は、(B)成分であるイソプロピルメチルフェノールと(C)成分であるサリチル酸とを利用して、(A)成分であるミコナゾール及び/又はその塩を含む皮膚洗浄用組成物における抗菌活性を向上させる方法である。
【0044】
前記抗菌活性向上方法において、使用する成分の種類や使用量、皮膚洗浄用組成物の形態等については、前記「1.皮膚洗浄用組成物」の欄に示す通りである。
【実施例0045】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
試験例
<皮膚洗浄用組成物の調製>
表1に示す組成の成分を秤量し、必要量の精製水を加え、約80℃に保温しながら攪拌した後、攪拌しながら冷却することで、均一な皮膚洗浄用組成物を得た。なお、表1において、各成分の量を示す数値の単位は、重量%である。
【0047】
<抗菌活性の評価>
1)試験菌
アクネ菌:Propionibacterium acnes (NBRC107605)
マラセチア菌:Malassezia furfur (NBRC101610)
2)菌数測定用培地及び培養条件
アクネ菌:
GAM寒天培地(日水製薬化学製)を用いた。
寒天平板塗抹法を用い、37℃±1℃で、4~5日間培養した。
アネロパック(三菱ガス化学製)に入れ、嫌気ジャー内で培養した。
マラセチア菌:
クロモアガーマラセチア/カンジダ寒天培地(関東化学株式会社)を用いた。
寒天平板塗抹法を用い、32℃±1℃で、2日間培養した。
3)試験菌液の調製
白金耳定量法により、滅菌生理食塩水に菌を懸濁し、菌液を調製した。
4)試験操作
各皮膚洗浄用組成物を滅菌精製水で10倍希釈し、試験用検体を調製した。試験用検体9.9mLに対し、菌液を0.1mL摂取し、すみやかに攪拌し、室温(25℃)で1分間静置し、殺菌試験液を得た。殺菌試験液0.1mLを菌数測定用培地に摂取し、培養した。なお、参考例においては、コントロールとして、皮膚洗浄用組成物の10倍希釈液の代わりに生理食塩水の10倍希釈液を調製し、同様の培養操作を行った。
5)評価方法
培養後の菌数測定用培地上のコロニー数(生菌数)を計測し、以下の基準に基づいて評価した。
-:菌の生育を認めなかった。
+:菌の生育を認めた(log10(生菌数)が0超2.5以下)
++:菌の生育を認めた(log10(生菌数)が2.5超)
【0048】
【表1】
【0049】
比較例6及び比較例7に示すように、(A)成分ミコナゾール硝酸塩、(B)成分イソプロピルメチルフェノール、及び(C)成分サリチル酸を含まず、(D)成分界面活性剤を含む皮膚洗浄用組成物には抗菌活性は無かった。また、比較例2に示すように、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のうち、(A)成分ミコナゾール硝酸塩を単独で含む皮膚洗浄用組成物は、マラセチア菌に対する良好な抗真菌活性は認められたが、アクネ菌に対する抗細菌活性は認められなかった。また、比較例4及び比較例5に示すように、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のうち、(B)成分イソプロピルメチルフェノールを単独で、又は(C)成分サリチル酸を単独で含む皮膚洗浄用組成物は、(B)成分及び(C)成分が抗細菌剤であるにも関わらず、アクネ菌に対する抗細菌活性は認められなかった。比較例3に示すように、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のうち、抗細菌剤である(B)成分及び(C)成分を両方含む皮膚洗浄用組成物であっても、アクネ菌に対する抗細菌活性は認められなかった。比較例1に示すように、(A)成分、(B)成分及び(C)成分のうち、(A)成分ミコナゾール硝酸塩と(B)成分イソプロピルメチルフェノールとを組み合わせても、マラセチア菌に対する良好な抗真菌活性は認められたが、やはりアクネ菌に対する抗細菌活性は認められなかった。
【0050】
これに対し、実施例1~4に示すように、(A)成分ミコナゾール硝酸塩、(B)成分イソプロピルメチルフェノール、及び(C)成分サリチル酸を含む本発明の皮膚洗浄用組成物では、(B)成分イソプロピルメチルフェノール及び(C)成分サリチル酸がそれぞれ単独ではアクネ菌に対する抗真菌作用が認められなかったにもかかわらず、(A)成分ミコナゾール硝酸塩による抗真菌活性に加えて、アクネに対する優れた抗細菌作用も認められた。従って、実施例1~4に示す本発明の皮膚洗浄用組成物によって、抗菌活性を向上させることができた。