(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165024
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】研磨方法、および研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/015 20120101AFI20221024BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20221024BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20221024BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20221024BHJP
B24B 49/14 20060101ALI20221024BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B24B37/015
B24B37/005 A
B24B37/013
B24B49/04 Z
B24B49/14
H01L21/304 622R
H01L21/304 622S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070194
(22)【出願日】2021-04-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】椛沢 雅志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊光
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽一
(72)【発明者】
【氏名】八木 圭太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 夕貴
(72)【発明者】
【氏名】チャウハン ナチケタ
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA07
3C034BB73
3C034BB92
3C034BB93
3C034CA02
3C034CA19
3C034CA22
3C034CB04
3C034CB20
3C034DD07
3C034DD10
3C158AA07
3C158AB04
3C158AC02
3C158BA02
3C158BA05
3C158BA07
3C158BA08
3C158CB01
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3C158DA17
3C158EA11
3C158EA13
3C158EA23
3C158EB01
5F057AA16
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057GA02
5F057GA04
5F057GA12
5F057GB07
5F057GB40
(57)【要約】
【課題】正確な膜厚プロファイルを得ることができる研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨方法では、パッド温度調整装置5を用いて研磨パッド3の研磨面3aの温度を所定の温度に調整し、研磨パッド3に設けられた膜厚測定器7の測定値に基づいて、基板Wを研磨面3aに押し付ける研磨荷重を制御しながら基板Wを研磨する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド温度調整装置を用いて研磨パッドの研磨面の温度を所定の温度に調整し、
前記研磨パッドに設けられた膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する、研磨方法。
【請求項2】
前記基板を研磨する工程は、前記研磨面の温度が前記所定の温度に到達した直後に開始される、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記基板を研磨する工程は、前記研磨面の温度が前記所定の温度に安定した後で開始される、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項4】
前記基板を研磨する工程は、前記研磨面の温度を前記所定の温度に維持しながら行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項5】
前記所定の温度は、第1所定温度であり、
前記基板を研磨する工程は、
前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、
前記第1所定温度とは異なる第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、
前記第1研磨から前記第2研磨の切り替えは、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項6】
前記所定の温度は、第1所定温度であり、
前記基板を研磨する工程は、
前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、
前記第1所定温度から徐々に変化される第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、
前記第1研磨から前記第2研磨の切り替えは、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに行われる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項7】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付けて前記基板を研磨する研磨ヘッドと、
前記研磨面の温度を測定するパッド温度測定器と、
前記研磨面の温度を調整するパッド温度調整装置と、
前記研磨テーブルに取り付けられた膜厚測定器と、
少なくとも前記研磨ヘッドと前記パッド温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記パッド温度測定器の測定値に基づいて、前記パッド温度調整装置を用いて前記研磨面の温度を所定の温度に調整し、
前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する、研磨装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記基板の研磨を前記研磨面の温度が前記所定の温度に到達した直後に開始する、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記基板の研磨を前記研磨面の温度が前記所定の温度で安定した後に開始する、請求項7に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記研磨面の温度を前記所定の温度に維持しながら前記基板の研磨を行う、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項11】
前記所定の温度は、第1所定温度であり、
前記基板の研磨は、
前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、
前記第1所定温度とは異なる第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、
前記制御装置は、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに、前記第1研磨から前記第2研磨へ切り替える、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項12】
前記所定の温度は、第1所定温度であり、
前記基板の研磨は、
前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、
前記第1所定温度から徐々に変化される第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、
前記制御装置は、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに、前記第1研磨から前記第2研磨へ切り替える、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板を研磨パッドの研磨面に押し付けながら該基板を研磨する研磨方法および研磨装置に関し、特に、膜厚測定器の測定値に基づいて研磨荷重を調整しながら基板を研磨する研磨方法および研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置は、半導体デバイスの製造において、ウエハなどの基板の表面を研磨する工程に使用される研磨装置である。CMP装置は、基板を研磨ヘッドで保持して基板を回転させ、さらに回転する研磨テーブル上の研磨パッドに基板を押し付けて基板の表面を研磨する。研磨中、研磨パッドには研磨液(スラリー)が供給され、基板の表面は、研磨液の化学的作用と研磨液に含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0003】
CMP装置で基板の研磨を行う際に、基板の研磨終点検出や、基板の研磨条件調節のために、基板表面の状態変化を正確に検出することが重要である。例えば、目標の研磨終点に対する過研磨、研磨不足は製品不良に直結するため、研磨量を厳しく管理する必要がある。そこで、CMP装置のなかには、基板の研磨中に、基板の膜厚を測定する膜厚測定器を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。この膜厚測定器は、例えば、研磨テーブル内に設置されており、研磨テーブルが1回転するたびに、基板の複数の領域の膜厚を示す膜厚信号を生成する。膜厚信号によって示される基板の膜厚が所定の目標厚さに達したときに、CMP装置は、研磨ヘッドおよび研磨テーブルに指令を発して基板の研磨を終了させる。
【0004】
研磨ヘッドは、その下部に、基板を研磨パッドに押圧するための複数の圧力室を形成する弾性膜を有している。各圧力室に圧縮空気などの加圧流体を供給することで、弾性膜を介して流体圧により基板を研磨パッドに押圧する。各圧力室に供給される流体圧は、膜厚測定器によって測定された基板の領域毎の膜厚により決定される。例えば、各圧力室に供給される流体圧(すなわち、基板の研磨パッドに対する研磨荷重)は、研磨レートは基板を研磨パッドに押し付ける押圧力に比例するというプレストンの経験則に基づいて調整される。すなわち、研磨レートを上げる場合は、流体圧を上昇させ、研磨レートを下げる場合は、流体圧を減少させる。このような構成により、基板を研磨パッドに押圧する押圧力を基板の領域毎に調整できるので、基板の表面全体が均一な厚さに研磨される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、回転する基板を回転する研磨パッドに押し付けることで発生する摩擦熱に起因して、基板の研磨中に研磨パッドの温度が徐々に上昇していく。基板の研磨レートは、基板の研磨パッドに対する研磨荷重のみならず、研磨パッドの表面温度にも依存する。これは、基板に対する研磨液の化学的作用が温度に依存するからである。
【0007】
図20(a)は、所定の研磨荷重で基板を研磨しているときの研磨レートと研磨温度との関係の一例を示す図であり、
図20(b)は、所定の研磨荷重で基板を研磨しているときの研磨レートと研磨温度との関係の他の例を示す図である。
図20(a)および
図20(b)において、縦軸は研磨レートを表し、横軸は研磨温度(研磨パッドの表面の温度に対する)を表す。
図20(a)および
図20(b)に示すグラフは、それぞれ、一定の研磨荷重で基板を研磨しているときの研磨レートと研磨温度の関係を示すグラフであるが、基板上に形成された膜の種類と研磨液の種類が異なる。
【0008】
図20(a)に示すように、研磨荷重が一定である場合、一般に、研磨温度が上昇するにつれて、研磨レートも上昇する。そのため、基板と研磨パッドとの間に発生する摩擦熱によって研磨パッドの温度が上昇すると、研磨レートも上昇してしまう。研磨レートが上昇しすぎると、基板を正確な膜厚プロファイルで研磨することが困難になるおそれがある。さらに、研磨レートが研磨終点検出の分解能(すなわち、研磨テーブル一回転あたりの研磨量)を超えてしまうと、研磨終点を高精度に検出することができなくなり、過研磨が発生するおそれがある。
【0009】
図20(b)に示すように、研磨される膜の種類によっては、研磨温度が上昇するにつれて上昇していく研磨レートが減少に転ずるターニングポンイントTPが存在する。研磨温度がターニングポイントTPを超えると研磨レートが減少するため、CMP装置は、各圧力室に供給される流体圧を上昇させる。すると、ますます研磨パッドの表面温度が上昇し、研磨レートが低下して、その結果、研磨装置のスループットの低下につながるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、正確な膜厚プロファイルを得ることができる研磨方法を提供することを目的とする。また、本発明は、正確な膜厚プロファイルを得ることができる研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、パッド温度調整装置を用いて研磨パッドの研磨面の温度を所定の温度に調整し、前記研磨パッドに設けられた膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する、研磨方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記基板を研磨する工程は、前記研磨面の温度が前記所定の温度に到達した直後に開始される。
一態様では、前記基板を研磨する工程は、前記研磨面の温度が前記所定の温度に安定した後で開始される。
一態様では、前記基板を研磨する工程は、前記研磨面の温度を前記所定の温度に維持しながら行われる。
【0013】
一態様では、前記所定の温度は、第1所定温度であり、前記基板を研磨する工程は、前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、前記第1所定温度とは異なる第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、前記第1研磨から前記第2研磨の切り替えは、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに行われる。
一態様では、前記所定の温度は、第1所定温度であり、前記基板を研磨する工程は、前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、前記第1所定温度から徐々に変化される第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、前記第1研磨から前記第2研磨の切り替えは、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに行われる。
【0014】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、基板を前記研磨パッドの研磨面に押し付けて前記基板を研磨する研磨ヘッドと、前記研磨面の温度を測定するパッド温度測定器と、前記研磨面の温度を調整するパッド温度調整装置と、前記研磨テーブルに取り付けられた膜厚測定器と、少なくとも前記研磨ヘッドと前記パッド温度調整装置の動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記パッド温度測定器の測定値に基づいて、前記パッド温度調整装置を用いて前記研磨面の温度を所定の温度に調整し、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する、研磨装置が提供される。
【0015】
一態様では、前記制御装置は、前記基板の研磨を前記研磨面の温度が前記所定の温度に到達した直後に開始する。
一態様では、前記制御装置は、前記基板の研磨を前記研磨面の温度が前記所定の温度で安定した後に開始する。
一態様では、前記制御装置は、前記研磨面の温度を前記所定の温度に維持しながら前記基板の研磨を行う。
【0016】
一態様では、前記所定の温度は、第1所定温度であり、前記基板の研磨は、前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、前記第1所定温度とは異なる第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、前記制御装置は、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに、前記第1研磨から前記第2研磨へ切り替える。
一態様では、前記所定の温度は、第1所定温度であり、前記基板の研磨は、前記第1所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第1研磨と、前記第1所定温度から徐々に変化される第2所定温度で、前記膜厚測定器の測定値に基づいて、前記基板を前記研磨面に押し付ける研磨荷重を制御しながら前記基板を研磨する第2研磨と、を含み、前記制御装置は、前記膜厚測定器によって測定された前記基板の残膜の量が所定の量に到達したときに、前記第1研磨から前記第2研磨へ切り替える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の研磨の間、研磨パッドが所定の温度に維持されるので、膜厚測定器の測定値に基づいた所望の研磨レートで基板を研磨することが可能となる。その結果、正確な膜厚プロファイルで基板を研磨することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る熱交換器を示す水平断面図である。
【
図4】
図4は、研磨パッド上の熱交換器と研磨ヘッドとの位置関係を示す平面図である。
【
図5】
図5(a)は、ウエハの研磨中にパッド温度調整装置によって調整される研磨パッドの研磨面の温度変化の一例を示すグラフであり、
図5(b)は、ウエハの膜厚の変化を示すグラフである。
【
図6】
図6(a)は、ウエハの研磨中にパッド温度調整装置によって調整される研磨パッドの研磨面の温度変化の他の例を示すグラフであり、
図6(b)は、ウエハの膜厚の変化を示すグラフである。
【
図7】
図7は、温度切換膜厚を説明するための模式図である。
【
図8】
図8(a)は、ウエハの研磨中にパッド温度調整装置によって調整される研磨パッドの研磨面の温度変化のさらに他の例を示すグラフであり、
図8(b)は、ウエハの膜厚の変化を示すグラフである。
【
図9】
図9は、他の実施形態に係る研磨装置の概略平面図である。
【
図11】
図11は、研磨パッドの半径方向に配列された複数の赤外線ヒータを示す図である。
【
図12】
図12は、反射板を備えたパッド温度調整装置を示す図である。
【
図13】
図13は、吸引ノズルを備えたパッド温度調整装置を示す図である。
【
図14】
図14は、吸引ノズルを備えたパッド温度調整装置を示す図である。
【
図15】
図15は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図16】
図16は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図17】
図17は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図19】
図19は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
【
図20】
図20(a)は、所定の研磨荷重で基板を研磨しているときの研磨レートと研磨温度との関係の一例を示す図であり、
図20(b)は、所定の研磨荷重で基板を研磨しているときの研磨レートと研磨温度との関係の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係る研磨装置(CMP装置)を示す模式図である。
図1に示すように、研磨装置は、基板の一例であるウエハWを保持して回転させる研磨ヘッド1と、研磨パッド3を支持する研磨テーブル2と、研磨パッド3の表面に研磨液(スラリー)を供給する研磨液供給ノズル4と、研磨パッド3の研磨面3aの温度を調整するためのパッド温度調整装置5とを備えている。研磨パッド3の表面(上面)は、ウエハWを研磨する研磨面3aを構成する。
【0020】
研磨ヘッド1は鉛直方向に移動可能であり、かつその軸心を中心として矢印で示す方向に回転可能となっている。ウエハWは、研磨ヘッド1の下面に真空吸着などによって保持される。研磨テーブル2にはテーブルモータ6が連結されており、矢印で示す方向に回転可能となっている。
図1に示すように、研磨ヘッド1および研磨テーブル2は、同じ方向に回転する。研磨パッド3は、研磨テーブル2の上面に貼り付けられている。
【0021】
研磨装置は、研磨ヘッド1、テーブルモータ6、研磨液供給ノズル4、パッド温度調整装置5の動作を制御する制御装置40を備えている。制御装置40は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。制御装置40は、例えば、プログラムが格納された記憶装置110と、プログラムに含まれる命令に従って演算を行う演算装置120を備えている。演算装置120は、プログラムに含まれる命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などを含む。記憶装置110は、演算装置120がアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。
【0022】
研磨装置は、ウエハWの膜厚を測定する膜厚測定器として機能する膜厚センサ7をさらに備えている。この膜厚センサ7は、研磨テーブル2に固定されており、研磨テーブル2とともに回転する。膜厚センサ7は、ウエハWの膜厚に従って変化する膜厚信号を生成するように構成されている。膜厚センサ7は、研磨テーブル2内に設置されており、研磨テーブル2が1回転するたびに、ウエハWの中心部を含む複数の領域の膜厚を示す膜厚信号を生成する。
【0023】
膜厚センサ7の例としては、光学式センサや渦電流センサが挙げられる。渦電流センサは、ウエハWの渦電流によって形成される鎖交磁束を検出し、検出した鎖交磁束に基づいて、ウエハWの厚さを検出するセンサである。光学センサは、ウエハWに光を照射し、ウエハWから反射する干渉波を測定することによってウエハWの厚さを検出するセンサである。
【0024】
ウエハWの研磨中、膜厚センサ7は研磨テーブル2と共に回転し、ウエハWの表面を横切りながら膜厚信号を生成する。この膜厚信号は、ウエハWの膜厚を直接または間接に示す指標値であり、ウエハWの膜厚の減少に従って変化する。膜厚センサ7は制御装置40に接続されており、膜厚信号は制御装置40に送られるようになっている。制御装置40は、膜厚信号によって示されるウエハWの膜厚が所定の目標厚さに達したときに、研磨ヘッド1および研磨テーブル2に指令を発してウエハWの研磨を終了させる。
【0025】
図2は、
図1に示す研磨ヘッド1を示す断面図である。研磨ヘッド1は、円板状のキャリア25と、キャリア25の下に複数の(本実施形態では4つの)圧力室D1,D2,D3,D4を形成する円形の柔軟な弾性膜(メンブレン)26と、弾性膜26を囲むように配置され、研磨パッド3の研磨面3aを押し付けるリテーナリング28とを備えている。圧力室D1,D2,D3,D4は弾性膜26とキャリア25の下面との間に形成されている。研磨ヘッド1のキャリア25は、ヘッドシャフトの下端に固定されている。
【0026】
弾性膜26は、複数の環状の仕切り壁26aを有しており、圧力室D1,D2,D3,D4はこれら仕切り壁26aによって互いに仕切られている。中央の圧力室D1は円形であり、他の圧力室D2,D3,D4は環状である。これらの圧力室D1,D2,D3,D4は、同心円状に配列されている。圧力室の数は特に限定されず、研磨ヘッド1は4つよりも多い圧力室、または4つよりも少ない圧力室を備えてもよい。
【0027】
圧力室D1,D2,D3,D4は、流体ラインG1,G2,G3,G4に接続されており、加圧流体(例えば加圧空気)が流体ラインG1,G2,G3,G4を通じて圧力室D1,D2,D3,D4内に供給されるようになっている。流体ラインG1,G2,G3,G4には、圧力レギュレータR1,R2,R3,R4がそれぞれ取り付けられている。圧力レギュレータR1,R2,R3,R4は、圧力室D1,D2,D3,D4内の加圧流体の圧力を独立に調節することが可能である。これにより、研磨ヘッド1は、ウエハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部を同じ研磨荷重または異なる研磨荷重で研磨することができる。
【0028】
リテーナリング28とキャリア25との間には、環状の弾性膜29が配置されている。この弾性膜29の内部には環状の圧力室D5が形成されている。この圧力室D5は、流体ラインG5に接続されており、加圧流体(例えば加圧空気)が流体ラインG5を通じて圧力室D5内に供給されるようになっている。流体ラインG5には、圧力レギュレータR5が取り付けられている。圧力室D5内の加圧流体の圧力は、圧力レギュレータR5によって調節される。圧力室D5内の圧力はリテーナリング28に加わり、リテーナリング28は弾性膜(メンブレン)26とは独立して研磨パッド3の研磨面3aを直接押圧することができる。流体ラインG1,G2,G3,G4,G5には、流量計K1,K2,K3,K4,K5がそれぞれ取り付けられている。
【0029】
ウエハWの研磨中、弾性膜26はウエハWを研磨パッド3の研磨面3aに対して押し付け、リテーナリング28はウエハWの周囲で研磨パッド3の研磨面3aを押し付ける。制御装置40は、膜厚センサ7から送られた複数の領域の膜厚を示す膜厚信号に基づいて、圧力室D1,D2,D3,D4,D5に供給される加圧流体の圧力を制御する(または、決定する)。このような構成により、ウエハWを研磨パッド3に押圧する押圧力(すなわち、研磨荷重)をウエハWの領域毎に調整できるので、ウエハWの表面全体を均一な膜厚に研磨することができる。
【0030】
図1に示す実施形態では、パッド温度調整装置5は、研磨パッド3と熱交換を行うことで研磨面3aの温度を調整する熱交換器11と、温度調整された加熱流体および冷却流体を熱交換器11に供給する流体供給システム30と、熱交換器11に連結された昇降機構20を備えている。熱交換器11は、研磨テーブル2および研磨パッド3の研磨面3aの上方に位置し、熱交換器11の底面は、研磨パッド3の研磨面3aに対面している。昇降機構20は熱交換器11を上昇および下降させるように構成されている。より具体的には、昇降機構20は熱交換器11の底面を研磨パッド3の研磨面3aに近づける方向、および研磨パッド3の研磨面3aから離れる方向に移動させるように構成されている。昇降機構20は、モータまたはエアシリンダなどのアクチュエータ(図示せず)を備えている。昇降機構20の動作は制御装置40によって制御される。
【0031】
流体供給システム30は、温度調整された加熱流体を貯留する加熱流体供給源としての加熱流体供給タンク31と、加熱流体供給タンク31と熱交換器11とを連結する加熱流体供給管32および加熱流体戻り管33とを備えている。加熱流体供給管32および加熱流体戻り管33の一方の端部は加熱流体供給タンク31に接続され、他方の端部は熱交換器11に接続されている。
【0032】
温度調整された加熱流体は、加熱流体供給タンク31から加熱流体供給管32を通じて熱交換器11に供給され、熱交換器11内を流れ、そして熱交換器11から加熱流体戻り管33を通じて加熱流体供給タンク31に戻される。このように、加熱流体は、加熱流体供給タンク31と熱交換器11との間を循環する。加熱流体供給タンク31は、ヒータ(図示せず)を有しており、加熱流体はヒータにより所定の温度に加熱される。
【0033】
流体供給システム30は、加熱流体供給管32に取り付けられた第1開閉バルブ41および第1流量制御バルブ42をさらに備えている。第1流量制御バルブ42は、熱交換器11と第1開閉バルブ41との間に配置されている。第1開閉バルブ41は、流量調整機能を有しないバルブであるのに対し、第1流量制御バルブ42は、流量調整機能を有するバルブである。
【0034】
流体供給システム30は、熱交換器11に接続された冷却流体供給管51および冷却流体排出管52をさらに備えている。冷却流体供給管51は、研磨装置が設置される工場に設けられている冷却流体供給源(例えば、冷水供給源)に接続されている。冷却流体は、冷却流体供給管51を通じて熱交換器11に供給され、熱交換器11内を流れ、そして熱交換器11から冷却流体排出管52を通じて排出される。一実施形態では、熱交換器11内を流れた冷却流体を、冷却流体排出管52を通じて冷却流体供給源に戻してもよい。
【0035】
流体供給システム30は、冷却流体供給管51に取り付けられた第2開閉バルブ55および第2流量制御バルブ56をさらに備えている。第2流量制御バルブ56は、熱交換器11と第2開閉バルブ55との間に配置されている。第2開閉バルブ55は、流量調整機能を有しないバルブであるのに対し、第2流量制御バルブ56は、流量調整機能を有するバルブである。
【0036】
第1開閉バルブ41、第1流量制御バルブ42、第2開閉バルブ55、および第2流量制御バルブ56は、制御装置40に接続されており、第1開閉バルブ41、第1流量制御バルブ42、第2開閉バルブ55、および第2流量制御バルブ56の動作は、制御装置40によって制御される。
【0037】
研磨装置は、研磨パッド3の研磨面3aの温度(以下、パッド表面温度ということがある)を測定するパッド温度測定器39をさらに備えている。パッド温度測定器39は制御装置40に接続されている。制御装置40は、パッド温度測定器39により測定されたパッド表面温度に基づいて第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56を操作するように構成されている。第1開閉バルブ41および第2開閉バルブ55は、通常は開かれている。パッド温度測定器39として、非接触で研磨パッド3の研磨面3aの温度を測定することができる放射温度計を使用することができる。パッド温度測定器39は、研磨パッド3の研磨面3aの上方に配置されている。
【0038】
パッド温度測定器39は、非接触でパッド表面温度を測定し、その測定値を制御装置40に送る。パッド温度測定器39は、研磨パッド3の表面温度を測定する赤外線放射温度計または熱電対温度計であってもよく、研磨パッド3の径方向に沿った研磨パッド3の温度分布(温度プロファイル)を取得する温度分布測定器であってもよい。温度分布測定器の例としては、サーモグラフィ、サーモパイル、および赤外カメラが挙げられる。パッド温度測定器39が温度分布測定器である場合は、パッド温度測定器39は、研磨パッド3の中心と外周縁とを含む領域であって、該研磨パッド3の半径方向に延びる領域における研磨パッド3の表面温度の分布を測定するように構成される。本明細書において、温度分布(温度プロファイル)は、パッド表面温度と、ウエハW上の半径方向の位置との関係を示す。
【0039】
制御装置40は、パッド表面温度が、予め設定された目標温度に維持されるように、測定されたパッド表面温度に基づいて、第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56を操作することで、加熱流体および冷却流体の流量を制御する。第1流量制御バルブ42および第2流量制御バルブ56は、制御装置40からの制御信号に従って動作し、熱交換器11に供給される加熱流体の流量および冷却流体の流量を調整する。熱交換器11を流れる加熱流体および冷却流体と研磨パッド3との間で熱交換が行われ、これによりパッド表面温度が変化する。
【0040】
このようなフィードバック制御により、研磨パッド3の研磨面3aの温度(すなわちパッド表面温度)は、所定の目標温度に維持される。上記フィードバック制御としては、PID制御を使用することができる。研磨パッド3の目標温度は、ウエハWの表面を構成する膜の種類、または研磨プロセスに応じて決定される。決定された目標温度は、制御装置40に予め入力され、記憶装置110内に記憶される。
【0041】
パッド表面温度を所定の目標温度に維持するために、ウエハWの研磨中、熱交換器11は、研磨パッド3の表面(すなわち研磨面3a)に接触する。本明細書において、熱交換器11が研磨パッド3の研磨面3aに接触する態様には、熱交換器11が研磨パッド3の研磨面3aに直接接触する態様のみならず、熱交換器11と研磨パッド3の研磨面3aとの間に研磨液(スラリー)が存在した状態で熱交換器11が研磨パッド3の研磨面3aに接触する態様も含まれる。いずれの態様においても、熱交換器11を流れる加熱流体および冷却流体と研磨パッド3との間で熱交換が行われ、これによりパッド表面温度が制御される。
【0042】
熱交換器11に供給される加熱流体としては、温水などの加熱流体が使用される。加熱流体は、加熱流体供給タンク31のヒータ(図示せず)により、例えば約80℃に加熱される。より速やかに研磨パッド3の表面温度を上昇させる場合には、シリコーンオイルを加熱流体として使用してもよい。シリコーンオイルを加熱流体として使用する場合には、シリコーンオイルは加熱流体供給タンク31のヒータにより100℃以上(例えば、約120℃)に加熱される。
【0043】
熱交換器11に供給される冷却流体としては、冷水またはシリコーンオイルなどの冷却流体が使用される。シリコーンオイルを冷却流体として使用する場合には、冷却流体供給源としてチラーを冷却流体供給管51に接続し、シリコーンオイルを0℃以下に冷却することで、研磨パッド3を速やかに冷却することができる。冷水としては、純水を使用することができる。純水を冷却して冷水を生成するために、冷却流体供給源としてチラーを使用してもよい。この場合は、熱交換器11内を流れた冷水を、冷却流体排出管52を通じてチラーに戻してもよい。
【0044】
加熱流体供給管32および冷却流体供給管51は、完全に独立した配管である。したがって、加熱流体および冷却流体は、混合されることなく、同時に熱交換器11に供給される。加熱流体戻り管33および冷却流体排出管52も、完全に独立した配管である。したがって、加熱流体は、冷却流体と混合されることなく加熱流体供給タンク31に戻され、冷却流体は、加熱流体と混合されることなく排出されるか、または冷却流体供給源に戻される。
【0045】
次に、熱交換器11について、
図3を参照して説明する。
図3は、一実施形態に係る熱交換器11を示す水平断面図である。
図3に示すように、熱交換器11は、加熱流路61および冷却流路62が内部に形成された流路構造体71を備えている。本実施形態では、熱交換器11の全体は円形を有している。熱交換器11の底面は平坦であり、かつ円形である。熱交換器11の底面は流路構造体71の底面から構成されている。流路構造体71は、耐摩耗性に優れるとともに熱伝導率の高い材質、例えば緻密質のSiCなどのセラミックで構成されている。
【0046】
加熱流路61および冷却流路62は、互いに隣接して(互いに並んで)延びており、かつ螺旋状に延びている。さらに、加熱流路61および冷却流路62は、点対称な形状を有し、互いに同じ長さを有している。加熱流路61および冷却流路62のそれぞれは、曲率が一定の複数の円弧流路64と、これら円弧流路64を連結する複数の傾斜流路65から基本的に構成されている。隣接する2つの円弧流路64は、各傾斜流路65によって連結されている。
【0047】
このような構成によれば、加熱流路61および冷却流路62のそれぞれの最外周部を、熱交換器11の最外周部に配置することができる。つまり、熱交換器11の底面の全体は、加熱流路61および冷却流路62の下方に位置し、加熱流体および冷却流体は研磨パッド3の研磨面3aを速やかに加熱および冷却することができる。加熱流体および冷却流体と、研磨パッド3との間の熱交換は、研磨パッド3の研磨面3aと熱交換器11の底面との間にスラリーが存在した状態で行われる。ただし、加熱流路61および冷却流路62の形状は
図2に示す実施形態に限定されず、他の形状を有してもよい。
【0048】
加熱流体供給管32(
図1参照)は、加熱流路61の入口61aに接続されており、加熱流体戻り管33(
図1参照)は、加熱流路61の出口61bに接続されている。冷却流体供給管51(
図1参照)は、冷却流路62の入口62aに接続されており、冷却流体排出管52(
図1参照)は、冷却流路62の出口62bに接続されている。加熱流路61および冷却流路62の入口61a,62aは、熱交換器11の周縁部に位置しており、加熱流路61および冷却流路62の出口61b,62bは、熱交換器11の中心部に位置している。したがって、加熱流体および冷却流体は、熱交換器11の周縁部から中心部に向かって螺旋状に流れる。加熱流路61および冷却流路62は、完全に分離しており、熱交換器11内で加熱流体および冷却流体が混合されることはない。
【0049】
図4は、研磨パッド3上の熱交換器11と研磨ヘッド1との位置関係を示す平面図である。熱交換器11は、上から見たときに円形であり、熱交換器11の直径は研磨ヘッド1の直径よりも小さい。研磨パッド3の回転中心Oから熱交換器11の中心Pまでの距離は、研磨パッド3の回転中心Oから研磨ヘッド1の中心Qまでの距離と同じである。加熱流路61および冷却流路62は、互いに隣接しているので、加熱流路61および冷却流路62は、研磨パッド3の径方向のみならず、研磨パッド3の周方向に沿って並んでいる。したがって、研磨テーブル2および研磨パッド3が回転している間、研磨パッド3は、加熱流体および冷却流体の両方と熱交換を行う。
【0050】
このようなパッド温度調整装置5を有する研磨装置では、以下のようにしてウエハWの研磨が行われる。研磨されるウエハWは、研磨ヘッド1によって保持され、さらに研磨ヘッド1によって回転される。研磨テーブル2は、研磨パッド3とともにテーブルモータ6によって回転される。この状態で、研磨液(スラリー)が研磨液供給ノズル4から研磨パッド3の研磨面3aに供給される。次いで、パッド温度調整装置5の熱交換器11が研磨パッド3の研磨面3aに接触され、研磨面3aの温度が所定の温度に調整および維持される。さらに、ウエハWの表面は、研磨ヘッド1によって研磨パッド3の研磨面3aに対して押し付けられる。ウエハWの表面は、スラリーの存在下での研磨パッド3との摺接により研磨される。ウエハWの表面は、スラリーの化学的作用とスラリーに含まれる砥粒の機械的作用により平坦化される。
【0051】
図5(a)は、ウエハWの研磨中にパッド温度調整装置5によって調整される研磨パッド3の研磨面3aの温度変化の一例を示すグラフであり、
図5(b)は、ウエハWの膜厚の変化を示すグラフである。
図5(a)において、縦軸は、研磨面3aの温度を示し、横軸は経過時間を示す。
図5(b)において、縦軸は、ウエハWの膜厚を表し、横軸は経過時間を表す。
【0052】
図5(a)に示すように、本実施形態では、熱交換器11が時点Taで研磨パッド3の研磨面3aに接触され、研磨面3aの温度が所定温度T1に到達するように、該研磨面3aが加熱される。時点Taは、パッド温度調整装置5を用いた研磨面3aの温度調整が開始される時点に相当する。本実施形態では、研磨ヘッド1に保持されたウエハWが時点Taで研磨面3aに押し付けられる。このとき、圧力室D1,D2,D3,D4,D5(
図2参照)に供給される加圧流体の圧力は任意の値に設定されており、膜厚センサ(膜厚測定器)7の測定値に基づいて、ウエハWを研磨面3aに押し付ける研磨荷重を制御するウエハWの研磨は開始されていない。
【0053】
次いで、制御装置40は、パッド温度測定器39から送られた研磨面3aの温度の測定値に基づいて、研磨面3aの温度が所定温度T1で安定されたか否かを決定する。例えば、制御装置40は、所定温度T1に対して設定された許容値を予め記憶しており、研磨面3aの温度が所定の経過時間の間この許容値内に収まっているか否かを監視する。制御装置40は、研磨面3aの温度が許容値内に入っている時間が所定の経過時間に到達した時点を安定時点Tbと決定する。
【0054】
一実施形態では、制御装置40は、時点Taではなく時点Tbで、研磨ヘッド1に保持されたウエハWを研磨パッド3の研磨パッド3aに押し付けてもよい。
【0055】
次いで、研磨時間が安定時点Tbに到達すると、制御装置40は、膜厚センサ(膜厚測定器)7の測定値に基づいて、ウエハWを研磨面3aに押し付ける研磨荷重を制御するウエハWの研磨を開始する。ウエハWと研磨パッド3との間に摩擦熱が発生しても、時点Tb以降は、研磨パッド3の研磨面3aの温度はパッド温度調整装置5によって所定温度T1に維持される。したがって、研磨温度に依存して研磨レートが変化することがないので、膜厚センサ7の測定値に基づいた所望の研磨レートでウエハWを研磨することができる。すなわち、
図5(b)に示すように、膜厚が一定速度で減少していく。その結果、正確な膜厚プロファイルで基板を研磨することができる。膜厚が目標膜厚M1に到達するまでウエハWが研磨されると、制御装置40は、その時点TcでウエハWの研磨を終了する。
【0056】
本実施形態によれば、研磨される膜が
図20(b)に示すターニングポンイントTPを有する膜であっても、ウエハWの研磨中に研磨レートが変化することがないので、研磨装置のスループットが低下しない。それどころか、所定の温度T1をターニングポイントTPの研磨温度、またはその研磨温度近傍に設定することで、最大研磨レートでウエハWを研磨することができる。その結果、研磨装置のスループットを向上させることができる。
【0057】
一実施形態では、制御装置40は、時点Taから所定時間TEが経過しても時点Tbに到達しない場合、膜厚センサ7の測定値に基づいて、ウエハWを研磨面3aに押し付ける研磨荷重を制御するウエハWの研磨を開始してもよい。この場合、パッド温度調整装置5およびパッド温度測定器39を含む研磨装置の構成要素、および/またはウエハWに異常が発生している可能性があるため、制御装置40は警報を発してもよく、警報に加えて、ウエハWの研磨を停止してもよい。制御装置40は、所定時間TEを予め記憶している。
【0058】
一実施形態では、制御装置40は、膜を所定量研磨しても時点Tbに到達しない場合、膜厚センサ7の測定値に基づいて、ウエハWを研磨面3aに押し付ける研磨荷重を制御するウエハWの研磨を開始してもよい。この場合も、パッド温度調整装置5およびパッド温度測定器39を含む研磨装置の構成要素、および/またはウエハWに異常が発生している可能性があるため、制御装置40は警報を発してもよく、警報に加えて、ウエハWの研磨を停止してもよい。制御装置40は、上記所定量を予め記憶している。
【0059】
膜厚センサ7が渦電流センサである場合、渦電流センサの種類によっては、測定値が周囲の温度に影響を受けることがある。そこで、本実施形態では、制御装置40によって、渦電流センサの測定値を補正させてもよい。例えば、予め実験により、温度と渦電流センサの測定値の関係を示す関係式またはテーブルを得ておき、この関係式またはテーブルを用いて渦電流センサの測定値を補正する。
【0060】
一実施形態では、制御装置40は、研磨パッド3の研磨面3aの温度が最初に所定温度T1に到達した時点Tdの直後に、膜厚センサ7の測定値に基づいて、ウエハWを研磨面3aに押し付ける研磨荷重を制御するウエハWの研磨を開始してもよい。この場合、時点TdからTbに到達するまでの間は、研磨レートが安定しないが、時点Tb以降は、研磨レートが安定するので、最終的には、正確な膜厚プロファイルで基板を研磨することができる。一実施形態では、時点Taではなく時点Tdで、研磨ヘッド1に保持されたウエハWを研磨パッド3の研磨パッド3aに押し付けてもよい。
【0061】
上述したように、ウエハWの研磨レートは、研磨パッド3の研磨面3aの温度にも依存する。そのため、スループットの低下を抑制しつつより正確な膜厚プロファイルを取得するために、上記所定温度T1を変化させてもよい。
図6(a)および
図6(b)を参照して説明される以下の実施形態の説明、および
図8(a)および
図8(b)を参照して説明される以下の実施形態の説明では、上記所定温度T1を、「第1所定温度T1」と称し、第1所定温度から変化された研磨面3aの研磨温度を「第2所定温度T2」と称する。また、特に説明しないこれら本実施形態の構成は、
図5(a)および
図5(b)を参照して説明された実施形態と同様であるため、その重複する説明を省略する。
【0062】
図6(a)は、ウエハWの研磨中にパッド温度調整装置5によって調整される研磨パッド3の研磨面3aの温度変化の他の例を示すグラフであり、
図6(b)は、ウエハWの膜厚の変化を示すグラフである。
図6(a)において、縦軸は、研磨面3aの温度を示し、横軸は経過時間を示す。
図6(b)において、縦軸は、ウエハWの膜厚を表し、横軸は経過時間を表す。
【0063】
図6(a)および
図6(b)に示すように、制御装置40は、ウエハWの膜厚が温度切換膜厚M2に到達したときに、第1所定温度T1を第2所定温度T2に切り替える。本実施形態では、第2所定温度T2は、第1所定温度T1よりも低い温度であり、第2所定温度T2における研磨レートは、第1所定温度における研磨レートよりも低い。
【0064】
図7は、温度切換膜厚M2を説明するための模式図である。
図7は、研磨対象物であるウエハWの断面を模式的に描いている。
図7に示すように、温度切換膜厚M2は、目標膜厚M1の近傍に設定される。
【0065】
本実施形態では、制御装置40は、温度切換膜厚M2に到達するまで、研磨面3aの温度を高い研磨レート(例えば、最大研磨レート)となる第1所定温度T1に調整および維持してウエハWを研磨する。制御装置40は、膜厚が温度切換膜厚M2に到達すると、研磨面3aの温度を、研磨レートが第1所定温度T1における研磨レートよりも低い研磨レートとなる第2所定温度T2に変更する。第2所定温度T2では、ウエハWの研磨がゆっくりと進行するので、より正確な膜厚プロファイルを得ることができる。一方で、温度切換膜厚M2に到達するまでは、研磨面3aの温度は、高い研磨レートとなる第1所定温度T1に維持されるので、スループットの低下が抑制される。
【0066】
図6(a)および
図6(b)に示す例では、第2所定温度T2は、第1所定温度T1よりも低い。しかしながら、ウエハWの膜の種類、スラリーの性状、および/または研磨条件(例えば、研磨ヘッド1の回転速度、および研磨テーブル2の回転速度など)次第で、研磨面3aの温度を上昇させることによって、研磨レートが低下することがある。例えば、研磨される膜が
図20(b)に示すターニングポンイントTPを有する膜である場合、研磨面3aの温度をターニングポイントTPの研磨温度よりも高くすることで研磨レートを低下させることができる。このような場合は、第2所定温度T2を、第1所定温度T1よりも高く設定してもよい。
【0067】
本実施形態において、第2所定温度T2および温度切換膜厚M2は、研磨される膜の種類、研磨条件(例えば、研磨ヘッド1および研磨テーブル2の回転速度、およびスラリーの種類)、および研磨装置のスループットなどを考慮して設定されるのが好ましい。例えば、研磨装置のスループットの低下を抑制したい場合は、研磨される膜の種類、および研磨条件を考慮しつつ、温度切換膜厚M2を目標膜厚M1に出来るだけ近い値に設定してもよいし、第2所定温度T2を出来るだけ高い(または、低い)温度に設定してもよい。
【0068】
図8(a)は、ウエハWの研磨中にパッド温度調整装置5によって調整される研磨パッド3の研磨面3aの温度変化のさらに他の例を示すグラフであり、
図8(b)は、ウエハWの膜厚の変化を示すグラフである。
図8(a)において、縦軸は、研磨面3aの温度を示し、横軸は経過時間を示す。
図8(b)において、縦軸は、ウエハWの膜厚を表し、横軸は経過時間を表す。
【0069】
図8(a)および
図8(b)に示す実施形態でも、制御装置40は、膜厚が温度切換膜厚M2に到達すると、研磨面3aの温度を、第1所定温度T1から研磨レートが第1所定温度における研磨レートよりも低い研磨レートとなる第2所定温度T2に変化させる。本実施形態では、制御装置40は、第2所定温度T2を徐々に低下させていく。このような制御を行うことで、研磨レートが徐々に減少していくので、スループットの低下を抑制しつつ、より正確な膜厚プロファイルを得ることができる。
図6(a)および
図6(b)を参照して説明した実施形態と同様に、研磨面3aの温度を上昇させることによって、研磨レートが低下する場合は、制御装置40は、第2所定温度T2を徐々に上昇させる。
【0070】
本実施形態でも、
図5(a)および
図5(b)を参照して説明された実施形態と同様に、第2所定温度T2および温度切換膜厚M2は、研磨される膜の種類、研磨条件(例えば、研磨ヘッド1および研磨テーブル2の回転速度、およびスラリーの種類)、および研磨装置のスループットなどを考慮して設定されるのが好ましい。さらに、本実施形態では、第2所定温度の変化量を調整することで、研磨装置のスループットを調整することができる。例えば、第2所定温度の変化量を高めに設定すると、研磨装置のスループットを向上させることができる。一方で、第2所定温度の変化量を低めに設定すると、より正確な膜厚プロファイルを得ることができる。
【0071】
上述した実施形態では、パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aの温度を調整する装置(すなわち、研磨面3aの加熱装置および冷却装置として機能する装置)として、研磨面3aに接触する熱交換器11を有している。すなわち、上述したパッド温度調整装置5は、熱交換器11が研磨面3aに接触する接触型のパッド温度調整装置である。しかしながら、パッド温度調整装置5は、研磨面3aに接触する構成要素を有さない非接触型のパッド温度調整装置であってもよい。
【0072】
図9は、他の実施形態に係る研磨装置(CMP装置)の概略平面図である。
図9に示す研磨装置は、パッド温度調整装置の構成のみが
図1に示す研磨装置と異なる。そのため、同一または対応する構成要素には、同一の符号を付すことにより、その重複する説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aの上方に配置された非接触型のパッド温度調整装置である。このパッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aと平行に延びる加熱装置(赤外線ヒータ)15を備えている。
【0074】
赤外線ヒータ15は、赤外線(輻射熱)を研磨パッド3の研磨面3aに放射する。本実施形態では、赤外線ヒータ15は、研磨パッド3と平行(すなわち、水平方向)に配置された円盤形状を有しているが、赤外線ヒータ15の形状は、本実施形態には限定されない。一実施形態では、赤外線ヒータ15は、研磨パッド3の半径方向に延びる長方形状を有してもよい。一実施形態では、赤外線ヒータ15は、研磨パッド3の半径方向に沿って揺動可能に構成されてもよい。
【0075】
図10は、
図9に示す赤外線ヒータ15を示す模式図である。
図10に示すように、赤外線ヒータ15は、研磨パッド3の上方に配置されている。より具体的には、赤外線ヒータ15は、研磨パッド3の研磨面3a上に供給された研磨液には付着せず、かつ研磨面3aを加熱することが可能な高さに配置される。このような配置によれば、パッド温度調整装置5のいずれの構成要素も研磨パッド3に接触しない。そのため、パッド温度調整装置5の構成要素と研磨パッド3の研磨面3aとの接触に起因したウエハWの汚染を防止することができる。
【0076】
さらに、パッド温度調整装置5のいずれかの構成要素が研磨パッド3(の研磨面3a)に接触する場合、この構成要素に必然的に研磨液が付着(または、固着)してしまう。この場合、付着した研磨液が異物として研磨パッド3の研磨面3aに落下し、その結果、ウエハWにスクラッチなどのディフェクトが生じるおそれがある。本実施形態の構成によれば、パッド温度調整装置5のいずれの構成要素も研磨パッド3に接触しないので、パッド温度調整装置5の構成要素から落下した異物によってウエハWにスクラッチなどのディフェクトが生じない。
【0077】
図9に示すように、パッド温度調整装置5は、研磨パッド3の研磨面3aを冷却する冷却装置17を備えてもよい。冷却装置17の一例として、気体を研磨面3aに噴射して冷却する冷却装置を挙げることができる。
図9に示すように、冷却装置17は、制御装置11に接続されており、制御装置11は、赤外線ヒータ15とは独立して冷却装置17を制御することができる。このような構成により、制御装置11は、研磨面3aの温度をより精度よく調整することができる。
【0078】
一実施形態では、パッド温度調整装置5は、複数の加熱装置を備えていてもよい。
図11は、研磨パッド3の半径方向に配列された複数の赤外線ヒータ15A,15B,15Cを示す図である。
図11に示すパッド温度調整装置5は、研磨パッド3の半径方向に直列的に配列された複数(本実施形態では、3つ)の赤外線ヒータ15A,15B,15Cを備えている。なお、赤外線ヒータの数は、本実施形態には限定されない。2つの赤外線ヒータが設けられてもよく、または4つ以上の赤外線ヒータが設けられてもよい。
【0079】
複数の赤外線ヒータ15A,15B,15Cのそれぞれは、制御装置11に接続されている。制御装置11は、各赤外線ヒータ15A,15B,15Cを個別的に制御可能であり、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させることができる。一実施形態では、各赤外線ヒータ15A,15B,15Cは、研磨パッド3の半径方向に沿って揺動可能に構成されてもよい。
【0080】
図12は、反射板を備えたパッド温度調整装置を示す図である。
図12に示すように、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒータ15から放射された赤外線を研磨パッド3に向けて反射する反射板16を備えてもよい。反射板16は、赤外線ヒータ15を覆うように、赤外線ヒータ15の上方に配置されている。反射板16は、その反射によって赤外線ヒータ15から放射された赤外線を効率よく、研磨パッド3の研磨面3aに反射することができる。一実施形態では、反射板16は、赤外線ヒータ15の上方のみならず、赤外線ヒータ15の側方にも配置されてもよい。
【0081】
図13および
図14は、吸引ノズルを備えたパッド温度調整装置を示す図である。
図13および
図14に示すように、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒータ15によって加熱された研磨パッド3の研磨面3a付近の熱い空気を吸引することで、雰囲気温度を下げる吸引ノズル75を備えてもよい。吸引ノズル75は、研磨面3aに隣接する、研磨面3aの上方の空気を吸い込んで、研磨面3aの温度を下げる。
【0082】
吸引ノズル75は、吸引装置76に接続されている。より具体的には、吸引ノズル75の吸引口75aは研磨面3aの上方に配置されており、吸引ノズル75の接続端75bは吸引ライン74を介して吸引装置76に接続されている。吸引ライン74には、制御弁78が接続されている。これら吸引ノズル75、吸引ライン74、制御弁78、および吸引装置76は、吸引機構70を構成している。パッド温度調整装置5は、吸引機構70を備えている。
【0083】
吸引ノズル75の吸引口75aは、研磨パッド3の研磨面3a上に供給された研磨液を吸引せず、かつ研磨面3aの熱を吸引することが可能な高さに配置されている。
図13に示す実施形態では、吸引ノズル75の吸引口75aは、赤外線ヒータ15の中央に配置されている。しかしながら、吸引口75aの配置場所は、
図13に示す実施形態には限定されない。
【0084】
図15は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図15に示すように、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒータ15に隣接して配置され、かつ研磨パッド3の研磨面3aに向かう空気の流れ(
図15の矢印参照)を形成するファン79を備えてもよい。
【0085】
図15に示す実施形態では、ファン79は、赤外線ヒータ15の上方に配置されており、赤外線ヒータ15を介して研磨パッド3の研磨面3aに対向して配置されている。一実施形態では、ファン79は、赤外線ヒータ15の下方に配置されてもよい。
【0086】
ファン79は、制御装置40に接続されており、制御装置40は、ファン79を駆動可能である。赤外線ヒータ15が駆動された状態でファン79が駆動されると、ファン79の周囲の空気は、熱風として研磨パッド3の研磨面3aに送られる。制御装置40は、ファン79によって送られる空気の流速(すなわち、風速)を、研磨パッド3上の研磨液が飛散しない程度の流速に制御する。
図15に示す実施形態では、単一のファン79が設けられているが、ファン79の数は、本実施形態には限定されない。複数のファン79が設けられてもよい。
【0087】
制御装置40は、赤外線ヒータ15およびファン79を別々に制御可能である。したがって、一実施形態では、制御装置40は、パッド温度測定器39によって測定された研磨パッド3の研磨面3aの温度に基づいて、赤外線ヒータ15を駆動せずに、ファン79のみを駆動してもよい。結果として、研磨パッド3の研磨面3aは、ファン79の回転によって送られる空気によって冷却される。
【0088】
図16および
図17は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0089】
図16および
図17に示す実施形態では、パッド温度調整装置5は、赤外線ヒータ15を備えておらず、その代わりに、加熱流体を研磨パッド3の研磨面3aに吹き付ける加熱流体ノズル80を備えている。
【0090】
パッド温度調整装置5は、加熱流体ノズル80から供給された加熱流体を吸引する吸引ノズル75を備えてもよい。吸引ノズル75は、
図13に示す実施形態に係る吸引ノズル75と同様の構成を有している。したがって、吸引ノズル75の構成の説明を省略する。
【0091】
図16および
図17に示すように、加熱流体ノズル80は、加熱流体が吸引ノズル75の吸引口75aに向かって流れるように、吸引ノズル75の吸引口75aの周囲に配置された複数の供給口80aを備えている。
【0092】
図17に示すように、加熱流体ノズル80は、加熱流体供給源82に接続されている。より具体的には、加熱流体ノズル80の供給口80aは研磨面3aの上方に配置されており、加熱流体ノズル80の接続端80bは供給ライン81を介して加熱流体供給源82に接続されている。供給ライン81には、制御弁83が接続されている。加熱流体ノズル80、供給ライン81、加熱流体供給源82、および制御弁83は、加熱機構60を構成している。パッド温度調整装置5は、加熱機構60を備えている。
【0093】
制御装置40は、制御弁83に接続されている。制御装置40が制御弁83を開くと、供給ライン81を通じて、加熱流体ノズル80の供給口80aから加熱流体が研磨パッド3の研磨面3aに向かって供給される。加熱流体の一例として、加熱された気体や加熱蒸気や過熱蒸気を挙げることができる。なお、加熱された気体の例としては、高温の空気(すなわち、熱風)が挙げられる。過熱蒸気とは、飽和蒸気をさらに加熱した高温の蒸気を意味する。
【0094】
図17に示す実施形態では、3つの供給口80aが吸引ノズル75の吸引口75aを取り囲むように、等間隔で配置されているが、供給口80aの数は本実施形態には限定されない。供給口80aの数は、2つであってもよく、または4つ以上であってもよい。複数の供給口80aは、吸引口75aを取り囲むように、不等間隔で配置されてもよい。
【0095】
図16および
図17に示すように、パッド温度調整装置5は、吸引ノズル75の吸引口75aおよび加熱流体ノズル80の供給口80aを覆う断熱カバー85を備えてもよい。
【0096】
図18は、
図16に示す実施形態に係る加熱流体ノズル80の変形例を示す図である。各供給口80aは、研磨パッド3上の研磨液が飛散しないような角度で傾斜してもよい。一実施形態では、
図18に示すように、複数(本実施形態では、3つ)の供給口80aは、加熱流体によって吸引ノズル75の吸引口75aに向かう旋回流(
図18の円弧状の矢印参照)が形成されるように、吸引ノズル75の吸引口75aに向かって所定の角度で傾斜している。
図18に示す実施形態では、各供給口80aは、断熱カバー85の円周方向に沿って延びつつ、吸引口75aに向かって所定の角度で傾斜している。
【0097】
図19は、パッド温度調整装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図19に示すように、
図13に示す実施形態と、
図16に示す実施形態と、を組み合わせてもよい。
図19に示す実施形態では、断熱カバー85の内面には、反射板16が貼り付けられている。なお、
図10に示す実施形態(すなわち、反射板16が設けられていない実施形態)と、
図16に示す実施形態と、を組み合わせてもよい。
【0098】
研磨パッド3の表面温度は、上述した実施形態で説明した構成に基づいて、変更可能である。例えば、赤外線ヒータ15に供給される電流の大きさを変更する手段、反射板16の角度を変更する手段、赤外線ヒータ15と研磨パッド3の研磨面3aとの間の距離を変更する手段、ファン79の回転速度を変更する手段、および加熱流体を研磨パッド3の研磨面3aに当てる角度を変更する手段のうちの少なくとも1つの手段を採用することによって、制御装置40は、研磨パッド3の表面温度を変更することができる。
【0099】
反射板16の角度を変更する場合、制御装置40は、反射板16の角度を変更可能なモータ(図示しない)の動作を制御してもよい。赤外線ヒータ15と研磨パッド3の研磨面3aとの間の距離を変更する場合、制御装置40は、赤外線ヒータ15の高さを調整可能なモータ(図示しない)の動作を制御してもよい。加熱流体を研磨面3aに当てる角度を変更する場合、制御装置40は、加熱流体ノズル80の角度を変更可能なモータ(図示しない)の動作を制御してもよい。
【0100】
図11に示す実施形態では、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させる一例について説明したが、以下に説明する手段によって、研磨パッド3の表面温度を部分的に変化させてもよい。例えば、反射板16の角度を変更する手段、赤外線ヒータ15の配向角を変更する手段、および加熱流体を当てる角度を変更する手段のうちの少なくとも1つの手段を採用することによって、制御装置40は、研磨パッド3の研磨面3aの温度を部分的に変化させることができる。
【0101】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0102】
1 研磨ヘッド
2 研磨テーブル
3 研磨パッド
4 研磨液供給ノズル
5 パッド温度調整装置
6 テーブルモータ
11 熱交換器
15 加熱装置(赤外線ヒータ)
15A,15B,15C 赤外線ヒータ
16 反射板
17 冷却装置
25 吸引ノズル
26 弾性膜
30 流体供給システム
39 パッド温度測定器
40 制御装置
60 加熱機構
70 吸引機構
79 ファン
80 加熱流体ノズル