(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165370
(43)【公開日】2022-10-31
(54)【発明の名称】アンモニア合成触媒、その製造方法、及びそれを用いたアンモニアの合成方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20221024BHJP
C01C 1/04 20060101ALI20221024BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20221024BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221024BHJP
【FI】
B01J23/63 M
C01C1/04 F
B01J37/04 102
B01J37/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021180347
(22)【出願日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2021070539
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊川 将嗣
(72)【発明者】
【氏名】後藤 能宏
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 満
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰倫
(72)【発明者】
【氏名】石川 茉莉江
(72)【発明者】
【氏名】難波 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 秀行
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA04A
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4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC16A
4G169BC16C
4G169BC17A
4G169BC17C
4G169BC18A
4G169BC18C
4G169BC22A
4G169BC22C
4G169BC23A
4G169BC23C
4G169BC41A
4G169BC41C
4G169BC42A
4G169BC42B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC43C
4G169BC44A
4G169BC44B
4G169BC50A
4G169BC50C
4G169BC51A
4G169BC51C
4G169BC52A
4G169BC52C
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169BD05A
4G169BD05C
4G169CB82
4G169DA06
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB05
4G169FB14
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アンモニア合成活性に優れており、アンモニアを効率よく合成することが可能なアンモニア合成触媒を提供する。
【解決手段】CeとCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物に、Ti、Zr、Hf、Al、Ga、In、Si、Ge、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素が固溶しており、式:CexA1-x-yByOd(前記式中、AはCe以外のランタノイドを表し、Bは添加金属元素を表し、xはCeのモル分率を表し、yは添加金属元素のモル分率を表し、1-x-yはCe以外のランタノイドのモル分率を表し、x及びyは、0.1≦x≦0.9、0.01≦y≦0.3、0.11≦x+y≦0.91を満たし、dは酸素原子のモル比を表し、1.5≦d≦2を満たす)で表される組成を有する複合酸化物担体と、複合酸化物担体に担持されたRuと、を含有するアンモニア合成触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム(Ce)とCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素が固溶しており、下記式:
CexA1-x-yByOd
(前記式中、Aは前記Ce以外のランタノイドを表し、Bは前記添加金属元素を表し、xはCeのモル分率を表し、yは前記添加金属元素のモル分率を表し、1-x-yは前記Ce以外のランタノイドのモル分率を表し、x及びyは、0.1≦x≦0.9、0.01≦y≦0.3、0.11≦x+y≦0.91を満たし、dは酸素原子のモル比を表し、1.5≦d≦2を満たす)
で表される組成を有する複合酸化物担体と、
該複合酸化物担体に担持されたルテニウム(Ru)と、
を含有することを特徴とするアンモニア合成触媒。
【請求項2】
前記Ce以外のランタノイドが、ランタン(La)及びプラセオジム(Pr)からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のアンモニア合成触媒。
【請求項3】
前記添加金属元素が、Ti、Zr、Al、及びSiからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンモニア合成触媒。
【請求項4】
セリウム(Ce)の塩と、Ce以外のランタノイドの塩と、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素の塩とを、Ceのモル分率をx、前記添加金属元素のモル分率をy、前記Ce以外のランタノイドのモル分率を1-x-yとした場合に、x及びyが0.1≦x≦0.9、0.01≦y≦0.3、0.11≦x+y≦0.91を満たす割合で含有する複合酸化物前駆体溶液を用いて、錯体重合法により、Ceと前記Ce以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素が固溶している複合酸化物担体を調製する工程と、
前記複合酸化物担体にルテニウム(Ru)を担持せしめて、前記複合酸化物担体にRuが担持された触媒を得る工程と、
を含むことを特徴とするアンモニア合成触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のアンモニア合成触媒に、水素と窒素とを含有するガスを接触せしめてアンモニアを合成することを特徴とするアンモニアの合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア合成触媒、その製造方法、及びそれを用いたアンモニアの合成方法に関し、より詳しくは、セリア系複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒、その製造方法、及びそれを用いたアンモニアの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素エネルギーのエネルギーキャリア等の用途に応用することが可能な成分としてアンモニアが注目されている。このようなアンモニアを合成する方法として、従来より触媒として鉄系触媒を用いたハーバーボッシュ法が工業的に利用されてきたが、近年では、ハーバーボッシュ法よりも穏やかな条件でアンモニアを合成することを目的として、様々な種類のアンモニア合成触媒の研究が進められている。
【0003】
例えば、特開平6-79177号公報(特許文献1)には、ルテニウムを希土類酸化物上に担持してなるアンモニア合成触媒が開示されており、前記希土類酸化物として、原子番号57のランタンから原子番号71のルテチウムまでの任意の元素の酸化物又はその混合物が使用できることが記載されており、中でも、酸化セリウムの使用が特に好ましいことが記載されている。
【0004】
また、Yuta Oguraら、Chemical Science、2018年、第9巻、2230~2237頁(非特許文献1)には、セリア-酸化ランタン複合酸化物にルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒(Ru/La0.5Ce0.5O1.75)が開示されており、このアンモニア合成触媒(Ru/La0.5Ce0.5O1.75)が、セリアにルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒(Ru/CeO2)、酸化ランタンにルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒(Ru/La2O3)及び酸化プラセオジムにルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒(Ru/Pr2O3)に比べて、アンモニア合成活性に優れていることも記載されている。
【0005】
さらに、LIN Jianxinら、Chinese Journal of Catalyst、2012年、第33巻、第3号、536~542頁(非特許文献2)には、プラセオジムをドープしたセリアにルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒(Ru/CeO2-PrO2)が開示されており、このアンモニア合成触媒(Ru/CeO2-PrO2)が、セリアにルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒(Ru/CeO2)に比べて、アンモニア合成活性に優れていることも記載されている。
【0006】
しかしながら、酸化セリウムと酸化ランタンや酸化プラセオジム等の他の希土類酸化物との複合酸化物担体上にルテニウムを担持せしめたアンモニア合成触媒においても、アンモニア合成活性は十分に高いものではなく、更に高いアンモニア合成活性を発現する触媒が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Yuta Oguraら、Chemical Science、2018年、第9巻、2230~2237頁
【非特許文献2】LIN Jianxinら、Chinese Journal of Catalyst、2012年、第33巻、第3号、536~542頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アンモニア合成活性に優れており、アンモニアを効率よく合成することが可能なアンモニア合成触媒、その製造方法、及びそれを用いたアンモニアの合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリウム(Ce)と、Ce以外のランタノイドと、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素とを所定のモル比で含有する複合酸化物担体を、錯体重合法で製造することによって、Ceと前記Ce以外のランタノイドを含む複合酸化物に所定量の前記添加金属元素が固溶した複合酸化物担体が得られ、この複合酸化物担体にルテニウム(Ru)を担持せしめたアンモニア合成触媒がアンモニア合成活性に優れており、このアンモニア合成触媒を用いることによってアンモニアを効率よく合成することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のアンモニア合成触媒は、セリウム(Ce)とCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素が固溶しており、下記式:
CexA1-x-yByOd
(前記式中、Aは前記Ce以外のランタノイドを表し、Bは前記添加金属元素を表し、xはCeのモル分率を表し、yは前記添加金属元素のモル分率を表し、1-x-yは前記Ce以外のランタノイドのモル分率を表し、x及びyは、0.1≦x≦0.9、0.01≦y≦0.3、0.11≦x+y≦0.91を満たし、dは酸素原子のモル比を表し、1.5≦d≦2を満たす)
で表される組成を有する複合酸化物担体と、
該複合酸化物担体に担持されたルテニウム(Ru)と、
を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明のアンモニア合成触媒においては、前記Ce以外のランタノイドが、ランタン(La)及びプラセオジム(Pr)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、また、前記添加金属元素が、Ti、Zr、Al、及びSiからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のアンモニア合成触媒の製造方法は、セリウム(Ce)の塩と、Ce以外のランタノイドの塩と、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素の塩とを、Ceのモル分率をx、前記添加金属元素のモル分率をy、前記Ce以外のランタノイドのモル分率を1-x-yとした場合に、x及びyが0.1≦x≦0.9、0.01≦y≦0.3、0.11≦x+y≦0.91を満たす割合で含有する複合酸化物前駆体溶液を用いて、錯体重合法により、Ceと前記Ce以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素が固溶している複合酸化物担体を調製する工程と、
前記複合酸化物担体にルテニウム(Ru)を担持せしめて、前記複合酸化物担体にRuが担持された触媒を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0014】
さらに、本発明のアンモニアの合成方法は、前記本発明のアンモニア合成触媒に、水素と窒素とを含有するガスを接触せしめてアンモニアを合成することを特徴とする方法である。
【0015】
なお、本発明のアンモニア合成触媒がアンモニア合成活性に優れている理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のアンモニア合成触媒は、CeとCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物に、Ti、Zr、Hf、Al、Ga、In、Si、Ge、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素が固溶した複合酸化物担体と、この複合酸化物担体に担持されたRuとを含有するものである。CeとCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物においては、前記Ce以外のランタノイドのイオン半径(La3+:1.16Å、Pr3+:1.126Å、Nd3+~Lu3+:1.109~0.977Å(以上、Shannonのイオン半径より))がCeのイオン半径(Ce4+:0.97Å)より大きいため、前記Ce以外のランタノイドの原子とCeとが共有する酸素原子は平均的にCeから距離が遠くなり、脱離しやすい状態にあると推察される。このような状態のCeとCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素を固溶させると、Ceは更に還元されやすい状態(Ce4+→Ce3+)となり、Ce3+からRuへの電子供与性が向上すると推察される。その結果、Ru上でのN2の解離が促進され、アンモニアの合成反応(3H2+N2→2NH3)が促進されるため、アンモニア合成活性が向上すると推察される。
【0016】
一方、セリアに前記添加金属元素を固溶させた場合、セリア中のCeが4価として安定するため、Ceの還元性(Ce4+→Ce3+)が本発明にかかる複合酸化物担体ほど向上せず、Ce3+からRuへの電子供与性も本発明のアンモニア合成触媒ほど向上しないと推察される。その結果、本発明のアンモニア合成触媒ほど、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニアの合成反応(3H2+N2→2NH3)も促進されないため、アンモニア合成活性は向上しないと推察される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンモニア合成活性に優れたアンモニア合成触媒を得ることができる。また、このようなアンモニア合成触媒を用いることによって、アンモニアを効率よく合成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1~17及び比較例1~7で得られたアンモニア合成触媒の反応温度400℃におけるアンモニア合成速度を示すグラフである。
【
図2】実施例4、13、14、17及び比較例1で得られたアンモニア合成触媒の反応温度400℃及び350℃におけるアンモニア合成速度を示すグラフである。
【
図3】実施例1~6及び比較例1~3で得られたアンモニア合成触媒のアンモニア合成速度を、前記アンモニア合成触媒を構成する複合酸化物担体中のチタンのモル分率に対してプロットした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
〔アンモニア合成触媒〕
先ず、本発明のアンモニア合成触媒について説明する。本発明のアンモニア合成触媒は、セリウム(Ce)とCe以外のランタノイドとを含む複合酸化物に、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素が固溶している複合酸化物担体と、該複合酸化物担体に担持されたルテニウム(Ru)とを含有するものである。
【0021】
前記Ce以外のランタノイドとしては、例えば、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられる。これらのランタノイドは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのランタノイドのうち、得られるアンモニア合成触媒において、アンモニア合成活性が向上するという観点から、La、Prが好ましく、Laがより好ましい。
【0022】
また、前記添加金属元素としては、Ti、Zr、Hf等の周期表第4族元素、Al、Ga、In等の周期表第13族元素、Si、Ge、Sn等の周期表第14族元素が挙げられる。これらの添加金属元素は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの添加金属元素のうち、カチオンが還元性雰囲気で安定であるという観点から、Ti、Zr、Al、Siが好ましい。
【0023】
本発明にかかる複合酸化物担体は、このような添加金属元素が、Ceと前記Ce以外のランタノイドを含む複合酸化物に固溶したものである。前記添加金属元素がCeと前記Ce以外のランタノイドを含む複合酸化物に固溶することによって、Ceが還元されやすい状態(Ce4+→Ce3+)となり、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上するため、Ru上でのN2の解離が促進され、アンモニア合成活性が向上する。一方、前記添加金属元素がCeと前記Ce以外のランタノイドを含む複合酸化物に固溶していない場合(例えば、Ceと前記Ce以外のランタノイドを含む複合酸化物と前記添加金属元素との混合物からなる複合酸化物担体や、Ceと前記Ce以外のランタノイドを含む複合酸化物に前記添加金属元素が担持した複合酸化物担体)においては、前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)向上効果が得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しない。
【0024】
また、前記複合酸化物担体は、下記式:
CexA1-x-yByOd
(前記式中、Aは前記Ce以外のランタノイドを表し、Bは前記添加金属元素を表し、xはCeと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量に対するCeのモル分率を表し、yはCeと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量に対する前記添加金属元素のモル分率を表し、1-x-yはCeと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量に対する前記Ce以外のランタノイドのモル分率を表し、dはCeと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量1モルに対する酸素原子のモル比を表し、カチオン(Ce、前記Ce以外のランタノイド及び前記添加金属元素)の組成及び価数から一義的に決まる値である)
で表される組成を有するものである。
【0025】
前記Ceのモル分率xは、0.1≦x≦0.9を満たすことが必要であり、0.2≦x≦0.8を満たすことが好ましく、0.3≦x≦0.7を満たすことがより好ましい。Ceのモル分率xが前記下限未満になると、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+によるRuへの電子供与量が減少し、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が低下する。他方、Ceのモル分率xが前記上限を超えると、相対的に前記Ce以外のランタノイドや前記添加金属元素の含有量が減少するため、前記Ce以外のランタノイドや前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。
【0026】
また、前記添加金属元素のモル分率yは、0.01≦y≦0.3を満たすことが必要であり、0.02≦y≦0.25を満たすことが好ましく、0.05≦y≦0.2を満たすことがより好ましい。前記添加金属元素のモル分率yが前記下限未満になると、前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。他方、前記添加金属元素のモル分率yが前記上限を超えると、相対的にCeの含有量が減少するため、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+によるRuへの電子供与量が減少し、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が低下したり、或いは、相対的に前記Ce以外のランタノイドの含有量が減少するため、前記Ce以外のランタノイドによるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。
【0027】
さらに、前記Ceのモル分率xと前記添加金属元素のモル分率yとの和(x+y)は、0.11≦x+y≦0.91を満たす(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが0.89≧1-x-y≧0.09を満たす)ことが必要であり、0.15≦x+y≦0.87を満たす(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが0.85≧1-x-y≧0.13を満たす)ことが好ましく、0.21≦x+y≦0.81を満たす(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが0.79≧1-x-y≧0.19を満たす)ことがより好ましい。x+yが前記下限未満になる(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが前記上限を超える)と、相対的にCeの含有量が減少するため、Ce3+によるRuへの電子供与量が減少し、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が低下したり、或いは、相対的に前記添加金属元素の含有量が減少するため、前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。他方、x+yが前記上限を超える(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが前記下限未満になる)と、前記Ce以外のランタノイドによるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。
【0028】
本発明にかかる複合酸化物担体は、本発明の効果を損なわない範囲において、Ce、前記Ce以外のランタノイド及び前記添加金属元素以外の他の金属元素を含有していてもよい。このような他の金属元素としては、アンモニア合成触媒に用いられる金属元素であれば特に制限はなく、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等が挙げられる。前記複合酸化物担体が、このような他の金属元素を含む場合、その含有量としては、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素と前記他の金属元素の合計量に対して、5モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましく、0.1モル%以下が特に好ましい。前記他の金属元素の含有量が前記上限を超えると、Ru上でのN2の解離が阻害され、アンモニア合成活性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明にかかる複合酸化物担体の形状としては、特に制限はなく、例えば、リング状、球状、円柱状、粒子状、ペレット状等が挙げられる。これらの形状のうち、より多くのRuを分散性の高い状態で担持できるという観点から、粒子状が好ましい。また、前記複合酸化物担体が粒子状である場合における、担体の平均粒子径としては0.1~100μmが好ましい。
【0030】
また、前記複合酸化物担体の比表面積としては、特に制限はないが、1~300m2/gが好ましく、10~200m2/gがより好ましい。前記複合酸化物担体の比表面積が前記下限未満になると、Ruの分散性が低下するため、アンモニア合成活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合酸化物担体の耐熱性が低下するため、アンモニア合成活性が低下する傾向にある。なお、このような比表面積は、前記複合酸化物担体の窒素吸着等温線を測定し、この窒素吸着等温線に基づいてBET法により求めることができる。
【0031】
本発明のアンモニア合成触媒は、このような複合酸化物担体にRuが担持されたものである。Ruの担持量としては、特に制限はないが、前記複合酸化物担体100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。Ruの担持量が前記下限未満になると、アンモニア合成活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、使用環境にもよるが、Ruのシンタリングが生じ易くなるため、活性点であるRuの分散度が低下し、Ruの担持量に相応する効果を得ることが困難となり、コスト面等で不利となる傾向にある。
【0032】
また、前記複合酸化物担体に担持されているRuの平均粒子径としては、特に制限はないが、0.5~100nmが好ましく、1~50nmがより好ましい。Ruの平均粒子径が前記下限未満になると、Ruをメタル状態で利用することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、触媒としての活性点の量が著しく減少する傾向にある。
【0033】
本発明のアンモニア合成触媒の形態としては、特に制限はなく、例えば、ハニカム形状のモノリス触媒、ペレット形状のペレット触媒等が挙げられる。また、粉末状のアンモニア合成触媒をそのまま所望の箇所に配置してもよい。
【0034】
〔アンモニア合成触媒の製造方法〕
次に、本発明のアンモニア合成触媒の製造方法について説明する。本発明のアンモニア合成触媒の製造方法は、セリウム(Ce)の塩と、Ce以外のランタノイドの塩と、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素の塩とを所定の割合で含有する複合酸化物前駆体溶液を用いて、錯体重合法により、Ceと前記Ce以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素が固溶している複合酸化物担体を調製する工程〔担体調製工程〕と、
前記複合酸化物担体に、含浸法及び蒸発乾固法により、ルテニウム(Ru)を担持せしめて、前記複合酸化物担体にRuが担持された触媒を得る工程〔ルテニウム担持工程〕と、を含む方法である。
【0035】
〔担体調製工程〕
担体調製工程においては、先ず、Ceの塩と、Ce以外のランタノイドの塩と、Ti、Zr、Hf、Al、Ga、In、Si、Ge、及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の添加金属元素の塩とを所定の割合で含有する複合酸化物前駆体溶液を調製する。具体的には、前記Ceの塩、前記Ce以外のランタノイドの塩及び前記添加金属元素の塩を溶媒に溶解することによって前記複合酸化物前駆体溶液を得る。
【0036】
前記Ceの塩としては、溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、硫酸セリウム、硝酸セリウム、塩化セリウム、酢酸セリウム、各種セリウム錯体等が挙げられる。
【0037】
前記Ce以外のランタノイドの塩としては、溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、Ce以外のランタノイドの硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、各種錯体等が挙げられる。前記Ce以外のランタノイドとしては、例えば、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が挙げられる。これらのランタノイドは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらのランタノイドのうち、得られるアンモニア合成触媒の活性が向上するという観点から、La、Prが好ましく、Laがより好ましい。
【0038】
前記添加金属元素の塩としては、溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、前記添加金属元素の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、各種錯体等が挙げられる。前記添加金属元素としては、Ti、Zr、Hf等の周期表第4族元素、Al、Ga、In等の周期表第13族元素、Si、Ge、Sn等の周期表第14族元素が挙げられる。これらの添加金属元素は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。また、これらの添加金属元素のうち、カチオンが還元性雰囲気で安定であるという観点から、Ti、Zr、Al、Siが好ましい。
【0039】
前記溶媒としては、これらの塩が溶解し、Ceイオン、前記Ce以外のランタノイドのイオン、前記添加金属元素のイオンが生成するものであれば特に制限はなく、例えば、水、アルコール等、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒のうち、コストや安全性の観点から、水が好ましい。
【0040】
前記複合酸化物前駆体溶液においては、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量に対するCeのモル分率x、前記添加金属元素のモル分率y、前記Ceのモル分率xと前記添加金属元素のモル分率yとの和x+y(言い換えれば、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-y)が下記の条件を満たすように、Ceの塩と、Ce以外のランタノイドの塩と、前記添加金属元素の塩とが前記溶媒に溶解している。
【0041】
前記Ceのモル分率xは、0.1≦x≦0.9を満たすことが必要であり、0.2≦x≦0.8を満たすことが好ましく、0.3≦x≦0.7を満たすことがより好ましい。Ceのモル分率xが前記下限未満になると、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+によるRuへの電子供与量が減少し、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が低下する。他方、Ceのモル分率xが前記上限を超えると、相対的に前記Ce以外のランタノイドや前記添加金属元素の含有量が減少するため、前記Ce以外のランタノイドや前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。
【0042】
また、前記添加金属元素のモル分率yは、0.01≦y≦0.3を満たすことが必要であり、0.02≦y≦0.25を満たすことが好ましく、0.05≦y≦0.2を満たすことがより好ましい。前記添加金属元素のモル分率yが前記下限未満になると、前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。他方、前記添加金属元素のモル分率yが前記上限を超えると、相対的にCeの含有量が減少するため、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+によるRuへの電子供与量が減少し、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が低下したり、或いは、相対的に前記Ce以外のランタノイドの含有量が減少するため、前記Ce以外のランタノイドによるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。
【0043】
さらに、前記Ceのモル分率xと前記添加金属元素のモル分率yとの和(x+y)は、0.11≦x+y≦0.91を満たす(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが0.89≧1-x-y≧0.09を満たす)ことが必要であり、0.15≦x+y≦0.87を満たす(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが0.85≧1-x-y≧0.13を満たす)ことが好ましく、0.21≦x+y≦0.81を満たす(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが0.79≧1-x-y≧0.19を満たす)ことがより好ましい。x+yが前記下限未満になる(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが前記上限を超える)と、相対的にCeの含有量が減少するため、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+によるRuへの電子供与量が減少し、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が低下したり、或いは、相対的に前記添加金属元素の含有量が減少するため、前記添加金属元素によるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。他方、x+yが前記上限を超える(すなわち、前記Ce以外のランタノイドのモル分率1-x-yが前記下限未満になる)と、前記Ce以外のランタノイドによるCeの還元性(Ce4+→Ce3+)の向上効果が十分に得られず、得られるアンモニア合成触媒において、Ce3+からRuへの電子供与性が向上しないため、Ru上でのN2の解離が促進されず、アンモニア合成活性が向上しにくい。
【0044】
また、前記複合酸化物前駆体溶液は、本発明の効果を損なわない範囲において、Ce、前記Ce以外のランタノイド及び前記添加金属元素以外の他の金属元素の塩を含有していてもよい。このような他の金属元素の塩としては前記溶媒に溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、他の金属元素の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、酢酸塩、各種錯体等が挙げられる。前記他の金属元素としては、アンモニア合成触媒に用いられる金属元素であれば特に制限はなく、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等が挙げられる。前記複合酸化物前駆体溶液が、このような他の金属元素の塩を含む場合、その含有量としては、前記他の金属元素換算で、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素と前記他の金属元素の合計量に対して、5モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましく、0.1モル%以下が特に好ましい。前記他の金属元素の塩の含有量が前記上限を超えると、Ru上でのN2の解離が阻害され、アンモニア合成活性が低下する傾向にある。
【0045】
次に、この担体調製工程においては、上記のようにして調製した前記複合酸化物前駆体溶液を用いて、錯体重合法により、Ceと前記Ce以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素が固溶している複合酸化物担体を形成する。具体的には、前記複合酸化物前駆体溶液に、オキシカルボン酸又はリン酸を添加して溶解し、さらに、グリコール又はグリセリンを添加して混合する。これにより、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素とを含む複合金属錯体が形成される。
【0046】
前記オキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸等が挙げられる。このようなオキシカルボン酸又はリン酸の添加量としては、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量に対して、0.1~50当量が好ましく、1~20当量がより好ましく、2~20当量が特に好ましい。オキシカルボン酸又はリン酸の添加量が前記下限未満になったり、前記上限を超えたりすると、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素とを含む複合金属錯体が十分に形成されず、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にある。
【0047】
また、グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。このようなグリコール又はグリセリンの添加量としては、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素との合計量に対して、0.01~50当量が好ましく、0.05~20当量がより好ましく、0.1~10当量が特に好ましい。グリコール又はグリセリンの添加量が前記下限未満になったり、前記上限を超えたりすると、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素とを含む複合金属錯体が十分に形成されず、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にある。
【0048】
次に、このようにして得られた前記複合金属錯体の水溶液を加熱することにより、オキシカルボン酸のカルボキシル基とグリコールの水酸基との間で脱水エステル反応が連鎖的に進行し、ポリエステル高分子ゲルが生成する。このようにして得られるポリエステル高分子ゲルにおいては、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素とが均一に分散しているため、このポリエステル高分子ゲルを後述するように焼成することによって、Ceと前記Ce以外のランタノイドと前記添加金属元素とが均一に分散した複合酸化物担体が得られる。
【0049】
前記複合金属錯体水溶液の加熱温度としては50~380℃が好ましく、80~350℃がより好ましく、100~300℃が特に好ましい。前記複合金属錯体水溶液の加熱温度が前記下限未満になると、脱水エステル反応が進行せず、ポリエステル高分子ゲルが十分に生成しないため、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリエステル高分子ゲルが十分に生成しないまま、後述するポリエステル高分子ゲルの焼成工程で有機物の炭化が進行するため、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にある。
【0050】
また、前記複合金属錯体水溶液の加熱時間としては30分間以上が好ましく、60分間以上がより好ましく、120分間以上が特に好ましい。前記複合金属錯体水溶液の加熱時間が前記下限未満になると、ポリエステル高分子ゲルが十分に生成しないため、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にある。なお、前記合金属錯体水溶液の加熱時間の上限については、工程の時間が長くなるものの、特に制限はない。
【0051】
次に、このようにして得られた前記ポリエステル高分子ゲルを、酸化性雰囲気下(例えば、大気中)又は不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素又はアルゴン雰囲気下)で焼成することによって、有機物が炭化して、複合酸化物前駆体粉末が得られる。
【0052】
前記ポリエステル高分子ゲルの焼成温度としては400~600℃が好ましく、425~575℃がより好ましく、450~550℃が特に好ましい。前記ポリエステル高分子ゲルの焼成温度が前記下限未満になると、有機物の炭化が十分に進行しないため、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、有機物が十分に炭化しないまま、後述する複合酸化物前駆体粉末の焼成工程で炭素成分の脱離が進行するため、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にある。
【0053】
また、前記ポリエステル高分子ゲルの焼成時間としては30分間以上が好ましく、60分間以上がより好ましく、120分間以上が特に好ましい。前記ポリエステル高分子ゲルの焼成時間が前記下限未満になると、有機物の炭化が十分に進行しないため、均一な複合酸化物担体が得られない傾向にある。なお、前記ポリエステル高分子ゲルの焼成時間の上限については、工程の時間が長くなるものの、特に制限はない。
【0054】
次に、このようにして得られた前記複合酸化物前駆体粉末を、酸化性雰囲気下(例えば、大気中)又は不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素又はアルゴン雰囲気下)で焼成することによって、炭素成分が脱離して、Ceと前記Ce以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素が固溶している複合酸化物担体が得られる。
【0055】
前記複合酸化物前駆体粉末の焼成温度としては610~900℃が好ましく、625~800℃がより好ましく、650~750℃が特に好ましい。前記複合酸化物前駆体粉末の焼成温度が前記下限未満になると、炭素成分の脱離が十分に進行しないため、得られるアンモニア合成触媒において、アンモニア合成活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合酸化物担体の比表面積が小さくなるため、得られるアンモニア合成触媒において、アンモニア合成活性が低下する傾向にある。
【0056】
また、前記複合酸化物前駆体粉末の焼成時間としては1~48時間が好ましく、2~36時間がより好ましく、3~24時間が特に好ましい。前記複合酸化物前駆体粉末の焼成時間が前記下限未満になると、炭素成分の脱離が十分に進行しないため、得られるアンモニア合成触媒において、アンモニア合成活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、複合酸化物担体の比表面積が小さくなるため、得られるアンモニア合成触媒において、アンモニア合成活性が低下する傾向にある。
【0057】
〔ルテニウム担持工程〕
次に、このようにして得られた複合酸化物担体にルテニウム(Ru)を担持させることにより、アンモニア合成触媒が得られる。具体的には、先ず、Ruの塩を含む溶液を用いて前記複合酸化物担体にRu前駆体を付着させる。
【0058】
前記Ruの塩としては特に制限はなく、例えば、Ruの酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩、塩化物、各種錯体(例えば、テトラアンミン錯体、カルボニル錯体)等が挙げられる。これらのRuの塩のうち、ドデカカルボニル三ルテニウム〔Ru3(CO)12〕、ルテニウムアセチルアセトネート、ニトロシル硝酸ルテニウム、硝酸ルテニウムが好ましい。また、Ruの塩を含む溶液に用いられる溶媒としては、Ruの塩が溶解し、Ruイオンが生成するものであれば特に制限はなく、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、水、アルコール等が挙げられる。なお、Ruの塩を含む溶液におけるRuの塩の濃度は、Ruの担持量に応じて適宜設定することができる。
【0059】
前記複合酸化物担体にRu前駆体を付着させる方法としては特に制限はなく、例えば、前記Ruの塩を含む溶液に前記複合酸化物担体を浸漬して前記複合酸化物担体に前記Ruの塩を含浸させる方法(含浸法)、前記Ruの塩を含む溶液を前記複合酸化物担体に吸着させる方法(吸着法)等が挙げられる。
【0060】
また、このルテニウム担持工程においては、前記複合酸化物担体100質量部に対するRuの担持量が好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部となるように、前記複合酸化物担体にRu前駆体を付着させることが望ましい。Ruの担持量が前記下限未満になる量のRu前駆体を付着させると、得られるアンモニア合成触媒において、アンモニア合成活性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られるアンモニア合成触媒の使用環境にもよるが、Ruのシンタリングが生じ易くなるため、活性点であるRuの分散度が低下し、Ruの担持量に相応する効果を得ることが困難となり、コスト面等で不利となる傾向にある。
【0061】
次に、このようにしてRu前駆体を付着させた前記複合酸化物担体を乾燥させた後、還元性ガス雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下で焼成することによって、Ceと前記Ce以外のランタノイドとを含む複合酸化物に前記添加金属元素が固溶している複合酸化物担体にRuが担持したアンモニア合成触媒が得られる。特に、還元性ガス雰囲気下又は不活性ガス雰囲気下(好ましくは、還元性ガス雰囲気下)で焼成するため、Ruは前記複合酸化物担体にメタル状態で担持され、アンモニア合成活性に優れたアンモニア合成触媒が得られる。
【0062】
前記複合酸化物担体の乾燥温度としては50~150℃が好ましく、75~125℃がより好ましい。また、乾燥時間としては3時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましい。
【0063】
前記還元性ガス雰囲気は、水素ガス、一酸化炭素ガス、炭化水素ガス等の還元性ガスを含有する雰囲気であり、例えば、前記還元性ガスと不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス等)との混合ガス雰囲気が挙げられる。このような混合ガス雰囲気における前記還元性ガスの濃度としては1~30容量%が好ましく、5~20容量%がより好ましい。また、前記不活性ガス雰囲気としては、例えば、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気等が挙げられる。
【0064】
乾燥後の前記複合酸化物担体の焼成温度としては200~500℃が好ましく、300~500℃がより好ましい。また、焼成時間としては0.5~10時間が好ましく、1~5時間がより好ましい。前記焼成温度や焼成時間が前記下限未満になると、すべてのRuを十分にメタル状態に還元することができず、Ruが前駆体状態が残存する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、Ruがシンタリングして、メタル状態のRuを十分に分散させた状態で前記複合酸化物担体に担持させることが困難となり、得られるアンモニア合成触媒の活性が低下する傾向にある。
【0065】
本発明のアンモニア合成触媒の製造方法においては、このようにして製造したアンモニア合成触媒を、公知の方法により、各種形態に成形してもよい。例えば、ペレット状に成形してもよいし、モノリス状基材、ペレット状基材、プレート状基材等の各種基材にコートしてもよい。
【0066】
〔アンモニアの合成方法〕
次に、本発明のアンモニアの合成方法について説明する。本発明のアンモニアの合成方法は、前記本発明のアンモニア合成触媒に、水素と窒素とを含有する混合ガスを接触せしめて、アンモニアを合成する方法である。前記アンモニア合成触媒に水素と窒素とを含有する混合ガスを接触せしめる方法としては特に制限はなく、公知のアンモニアの合成方法における方法をそのまま採用することができる。
【0067】
本発明のアンモニアの合成方法において、合成条件としては特に制限はなく、公知のアンモニアの合成方法における条件をそのまま採用することができるが、例えば、水素と窒素のモル比(H2/N2)としては、0.1/1~5/1が好ましく、0.5/1~3/1がより好ましい。また、水素と窒素とを含有する混合ガスにおいては、キャリアガスとして不活性ガス(アルゴンガス等)が含まれていてもよいが、アンモニアの生成効率の観点から、水素と窒素のみからなるガスが好ましい。
【0068】
また、反応温度としては、300~500℃が好ましく、350~450℃がより好ましい。また、反応圧力としては、0.1~10MPaが好ましく、1~8MPaがより好ましい。
【実施例0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例1)
<複合酸化物担体調製>
先ず、チタニウムテトライソプロポキシド〔Ti[(CH3)2CHO]4〕を加水分解し、得られた沈殿物を蒸留水で3回洗浄してオキシ水酸化チタン〔TiO(OH)2〕を得た。このオキシ水酸化チタンを硝酸水溶液に溶解して7Mのオキシ硝酸チタン〔TiO(NO3)2〕水溶液を調製した。また、セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.475:0.025となる量の硝酸セリウム六水和物〔Ce(NO3)3・6H2O〕及び硝酸ランタン六水和物〔La(NO3)3・6H2O〕を最少量のイオン交換水に溶解して硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した。ここで、イオン交換水の「最少量」とは、所定量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を完全に溶解することが可能なイオン交換水の最少量である(以下の実施例及び比較例においても同様)。
【0071】
次に、前記硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液に前記オキシ硝酸チタン水溶液を添加して攪拌した。得られた水溶液に、セリウムとランタンとチタンとの合計量に対して6当量のクエン酸を添加して溶解し、さらに、セリウムとランタンとチタンとの合計量に対して12当量のエチレングリコールを添加して80℃で30分間攪拌し、セリウムとランタンとチタンとを含む複合金属オキシカルボン酸錯体水溶液を得た。
【0072】
その後、この水溶液を300℃で180分間加熱してゲル化させ、得られたポリエステル高分子ゲルを大気中、500℃で5時間焼成して複合酸化物前駆体粉末を得た。この複合酸化物前駆体粉末を大気中、700℃で5時間焼成して、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.475Ti0.025O1.7625)を得た。
【0073】
<触媒調製>
複合酸化物担体100質量部に対してルテニウムの担持量が3質量部となるように、所定量のドデカカルボニル三ルテニウム〔Ru3(CO)12〕をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液に所定量の前記セリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.475Ti0.025O1.7625)を添加して5時間攪拌した。得られた分散液から、ロータリーエバポレーターを用いてTHFを減圧除去した後、得られた粉末を80℃で18時間乾燥させた。乾燥後の粉末を100%N2流通下、300℃で5時間焼成し、さらに500℃で2時間焼成して、前記セリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.475Ti0.025O1.7625、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0074】
(実施例2)
セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.45:0.05となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.45Ti0.05O1.775)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.45Ti0.05O1.775、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0075】
(実施例3)
セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.425:0.075となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.425Ti0.075O1.7875)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.425Ti0.075O1.7875、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0076】
(実施例4)
セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.4Ti0.1O1.8)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.4Ti0.1O1.8、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0077】
(実施例5)
セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.375:0.125となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.375Ti0.125O1.8125)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.375Ti0.125O1.8125、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0078】
(実施例6)
セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.25:0.25となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.25Ti0.25O1.875)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.25Ti0.25O1.875、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0079】
(実施例7)
前記オキシ硝酸チタン水溶液の代わりに、オキシ硝酸ジルコニウム二水和物〔ZrO(NO3)2・2H2O〕をイオン交換水に溶解して調製したオキシ硝酸ジルコニウム水溶液を用い、セリウムとランタンと前記オキシ硝酸ジルコニウム水溶液中のジルコニウムとのモル比がCe:La:Zr=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にジルコニウムが固溶したセリア-酸化ランタン-ジルコニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.4Zr0.1O1.8)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-ジルコニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.4Zr0.1O1.8、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0080】
(実施例8)
前記オキシ硝酸チタン水溶液の代わりに、硝酸アルミニウム九水和物〔Al(NO3)3・9H2O〕をイオン交換水に溶解して調製した硝酸アルミニウム水溶液を用い、セリウムとランタンと前記硝酸アルミニウム水溶液中のアルミニウムとのモル比がCe:La:Al=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にアルミニウムが固溶したセリア-酸化ランタン-アルミナ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.4Al0.1O1.8)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-アルミナ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.4Al0.1O1.8、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0081】
(実施例9)
<複合酸化物担体調製>
前記硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液の代わりに、セリウムとプラセオジムと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:Pr:Ti=0.5:0.45:0.05となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸プラセオジム六水和物〔Pr(NO3)3・6H2O〕を用いて硝酸セリウムと硝酸プラセオジムとが溶解した水溶液を調製し、複合酸化物前駆体粉末の大気中、700℃での焼成時間を20時間に変更した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化プラセオジム複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.45Ti0.05O2)を調製した。なお、前記組成式はプラセオジムを4価として決定した。
【0082】
<触媒調製>
複合酸化物担体100質量部に対してルテニウムの担持量が3質量部となるように、所定量のドデカカルボニル三ルテニウム〔Ru3(CO)12〕をテトラヒドロフラン(THF)に溶解した溶液に所定量の前記セリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.45Ti0.05O2)を添加して5時間攪拌した。得られた分散液から、ロータリーエバポレーターを用いてTHFを減圧除去した後、得られた粉末を80℃で12時間乾燥させた。乾燥後の粉末を4%H2/96%N2流通下、300℃で1時間焼成して、前記セリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5Pr0.45Ti0.05O2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。なお、前記組成式はプラセオジムを4価として決定した。
【0083】
(実施例10)
セリウムとプラセオジムと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:Pr:Ti=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸プラセオジム六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸プラセオジムとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例9と同様にして、セリア-酸化プラセオジム複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.4Ti0.1O2)を調製し、さらに、このセリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5Pr0.4Ti0.1O2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。なお、前記組成式はプラセオジムを4価として決定した。
【0084】
(実施例11)
セリウムとプラセオジムと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:Pr:Ti=0.5:0.3:0.2となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸プラセオジム六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸プラセオジムとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例9と同様にして、セリア-酸化プラセオジム複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.3Ti0.2O2)を調製し、さらに、このセリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5Pr0.3Ti0.2O2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。なお、前記組成式はプラセオジムを4価として決定した。
【0085】
(実施例12)
前記オキシ硝酸チタン水溶液の代わりに、硝酸アルミニウム九水和物〔Al(NO3)3・9H2O〕をイオン交換水に溶解して調製した硝酸アルミニウム水溶液を用い、セリウムとプラセオジムと前記硝酸アルミニウム水溶液中のアルミニウムとのモル比がCe:Pr:Al=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸プラセオジム六水和物〔Pr(NO3)3・6H2O〕を用いて硝酸セリウムと硝酸プラセオジムとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例9と同様にして、セリア-酸化プラセオジム複合酸化物にアルミニウムが固溶したセリア-酸化プラセオジム-アルミナ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.4Al0.1O1.95)を調製し、さらに、このセリア-酸化プラセオジム-アルミナ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5Pr0.4Al0.1O1.95、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。なお、前記組成式はプラセオジムを4価として決定した。
【0086】
(実施例13)
<複合酸化物担体調製>
前記オキシ硝酸チタン水溶液の代わりに、テトラエトキシシラン(TEOS)とエチレングリコールとの混合液に硝酸を滴下して80℃で混合して調製したTEOS溶液を用い、セリウムとランタンと前記TEOS溶液中のケイ素とのモル比がCe:La:Si=0.5:0.45:0.05となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製し、複合酸化物前駆体粉末の大気中、700℃での焼成時間を20時間に変更した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にケイ素が固溶したセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.45Si0.05O1.775)を調製した。
【0087】
<触媒調製>
前記セリア-酸化プラセオジム-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.45Ti0.05O2)の代わりに、前記セリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.45Si0.05O1.775)を用いた以外は実施例9と同様にして、前記セリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.45Si0.05O1.775、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0088】
(実施例14)
セリウムとランタンと前記TEOS溶液中のケイ素とのモル比がCe:La:Si=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例13と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にシリカが固溶したセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.4Si0.1O1.8)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.4Si0.1O1.8、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0089】
(実施例15)
セリウムとランタンと前記TEOS溶液中のケイ素とのモル比がCe:La:Si=0.5:0.3:0.2となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例13と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にシリカが固溶したセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.3Si0.2O1.85)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.3Si0.2O1.85、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0090】
(実施例16)
セリウムとランタンと前記TEOS溶液中のケイ素とのモル比がCe:La:Si=0.5:0.2:0.3となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例13と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にシリカが固溶したセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.2Si0.3O1.9)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-シリカ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.2Si0.3O1.9、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0091】
(実施例17)
前記オキシ硝酸チタン水溶液の代わりに、テトラエトキシシラン(TEOS)とエチレングリコールとの混合液に硝酸を滴下して80℃で混合して調製したTEOS溶液を用い、セリウムとプラセオジムと前記TEOS溶液中のケイ素とのモル比がCe:Pr:Si=0.5:0.4:0.1となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸プラセオジム六水和物〔Pr(NO3)3・6H2O〕を用いて硝酸セリウムと硝酸プラセオジムとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例13と同様にして、セリア-酸化プラセオジム複合酸化物にケイ素が固溶したセリア-酸化プラセオジム-シリカ複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Pr0.4Si0.1O2)を調製し、さらに、このセリア-酸化プラセオジム-シリカ複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5Pr0.4Si0.1O2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。なお、前記組成式はプラセオジムを4価として決定した。
【0092】
(比較例1)
セリウムとランタンとのモル比がCe:La=0.5:0.5となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製し、かつ、前記オキシ硝酸チタン水溶液を用いなかった以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.5O1.75)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.5O1.75、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0093】
(比較例2)
セリウムとランタンと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.125:0.375となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物にチタンが固溶したセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5La0.125Ti0.375O1.9375)を調製し、さらに、このセリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5La0.125Ti0.375O1.9375、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0094】
(比較例3)
硝酸ランタン六水和物を用いず、セリウムと前記オキシ硝酸チタン水溶液中のチタンとのモル比がCe:Ti=0.5:0.5となる量の硝酸セリウム六水和物を用いて硝酸セリウムが溶解した水溶液を調製した以外は実施例1と同様にして、セリアにチタンが固溶したセリア-チタニア複合酸化物担体(組成式:Ce0.5Ti0.5O2)を調製し、さらに、このセリア-チタニア複合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/Ce0.5Ti0.5O2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0095】
(比較例4)
<複合酸化物担体調製>
先ず、セリウムとランタンとのモル比がCe:La=0.5:0.4となる量の硝酸セリウム六水和物及び硝酸ランタン六水和物を用いて硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を調製し、かつ、前記オキシ硝酸チタン水溶液を用いなかった以外は実施例1と同様にして、セリア-酸化ランタン複合酸化物(組成式:Ce0.5La0.4O1.6)を得た。
【0096】
次に、セリウムとランタンとチタンとのモル比がCe:La:Ti=0.5:0.4:0.1となるように、実施例1と同様にして調製した7Mのオキシ硝酸チタン水溶液に前記セリア-酸化ランタン複合酸化物を浸漬して前記オキシ硝酸チタンを前記セリア-酸化ランタン複合酸化物に含浸させた。その後、得られた分散液を110℃で3時間加熱して水を除去し、さらに、得られた粉末を500℃で5時間乾燥させて、チタニアと前記セリア-酸化ランタン複合酸化物との混合酸化物(0.1TiO2-Ce0.5La0.4O1.6)担体を得た。
【0097】
<触媒調製>
前記セリア-酸化ランタン-チタニア複合酸化物担体の代わりに、このチタニアと前記セリア-酸化ランタン複合酸化物との混合酸化物担体を用いた以外は実施例1と同様にして、前記チタニアと前記セリア-酸化ランタン複合酸化物との混合酸化物担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/0.1TiO2-Ce0.5La0.4O1.6、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0098】
(比較例5)
前記硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を用いなかった以外は実施例1と同様にして、チタニア(TiO2)担体を調製し、さらに、このチタニア担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/TiO2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0099】
(比較例6)
硝酸ランタン六水和物を用いず、硝酸セリウム六水和物を用いて硝酸セリウムが溶解した水溶液を調製し、かつ、前記オキシ硝酸チタン水溶液を用いなかった以外は実施例1と同様にして、セリア(CeO2)担体を調製し、さらに、このセリア担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/CeO2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0100】
(比較例7)
前記硝酸セリウムと硝酸ランタンとが溶解した水溶液を用いなかった以外は実施例13と同様にして、シリカ(SiO2)担体を調製し、さらに、このシリカ担体にルテニウムが担持したアンモニア合成触媒(Ru/SiO2、Ru担持量:3質量部/100質量部-担体)を得た。
【0101】
〔アンモニア合成反応〕
得られたアンモニア合成触媒0.2gを反応管に充填し、これを固定床流通式反応装置に設置した。このアンモニア合成触媒に水素と窒素の混合ガス(75容量%H
2/25容量%H
2)を流量80ml/min、圧力0.1MPaで供給しながら、先ず、前記アンモニア合成触媒を600℃で30分間加熱して前処理を行い、次いで、400℃又は350℃で加熱してアンモニアの合成反応を行った。合成反応開始から1時間後、反応装置の出口に設置した赤外分光装置を用いて触媒出ガスのアンモニア濃度を測定し、触媒1g当たりのアンモニア合成速度を求めた。その結果を表1及び
図1~
図2に示す。また、実施例1~6及び比較例1~3で得られたアンモニア合成触媒について、触媒中のチタンのモル分率に対してアンモニア合成速度をプロットした。その結果を
図3に示す。
【0102】
【0103】
表1及び
図1に示したように、セリア-酸化ランタン複合酸化物に所定量のチタンが固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒(実施例1~6)は、セリア-酸化ランタン複合酸化物を担体として用いた触媒(比較例1)及びセリアを担体として用いた触媒(比較例6)に比べて、アンモニア合成速度が増大した。
【0104】
一方、セリア-酸化ランタン複合酸化物に所定量よりも多い量のチタンが固溶している複合酸化物を担体として用いた触媒(比較例2)は、セリア-酸化ランタン複合酸化物を担体として用いた触媒(比較例1)に比べて、アンモニア合成速度が低下し、また、セリアに所定量よりも多い量のチタンが固溶している複合酸化物を担体として用いた触媒(比較例3)は、セリアを担体として用いた触媒(比較例6)に比べて、アンモニア合成速度が低下した。
【0105】
また、セリウムとランタンとチタンのモル比が同じであっても、チタンがセリア-酸化ランタン複合酸化物に固溶していない触媒(比較例4)は、チタンが固溶しているアンモニア合成触媒(実施例4)に比べて、アンモニア合成速度が低下した。これは、比較例5に示したように、チタンにルテニウムが担持した触媒がアンモニア合成活性を発現しないためと考えられる。
【0106】
さらに、表1、
図1及び
図3に示したように、アンモニア合成触媒中のチタンのモル分率が所定の範囲内にあると、高いアンモニア合成速度が得られることがわかった。
【0107】
以上の結果から、チタンはセリア-酸化ランタン複合酸化物に固溶することによって初めてアンモニア合成活性を発現することがわかった。さらに、所定量のチタンをセリア-酸化ランタン複合酸化物に固溶させることによってアンモニア合成速度が向上することがわかった。
【0108】
また、表1及び
図1に示したように、セリア-酸化ランタン複合酸化物に所定量のジルコニウム(実施例7)又はアルミニウム(実施例8)が固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒においても、セリア-酸化ランタン複合酸化物を担体として用いた触媒(比較例1)に比べて、アンモニア合成速度が増大し、セリア-酸化ランタン複合酸化物に所定量のジルコニウム又はアルミニウムを固溶させることによってアンモニア合成速度が向上することがわかった。
【0109】
さらに、表1及び
図1に示したように、ランタンの代わりにプラセオジムを含有するアンモニア合成触媒(実施例9~12)においても、高いアンモニア合成速度が得られることがわかった。
【0110】
また、表1及び
図1に示したように、チタンやジルコニウム、アルミニウムの代わりにケイ素が固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒(実施例13~17)においても、高いアンモニア合成速度が得られることがわかった。
【0111】
一方、シリカを担体として用いた触媒(比較例7)は、アンモニア合成速度が極めて低くなることがわかった。
【0112】
さらに、表1及び
図2に示したように、チタンが固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒(実施例4)においては、アンモニア合成反応温度が400℃の場合の方が、350℃の場合に比べて、高いアンモニア合成速度が得られることがわかった。一方、ケイ素が固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒(実施例13、14,17)においては、アンモニア合成反応温度が350℃の場合の方が、400℃の場合に比べて、高いアンモニア合成速度が得られることがわかった。これは、ケイ素固溶させた場合の方が、チタンを固溶させた場合に比べて、活性のピークが低温化したためと考えられる。
【0113】
また、ケイ素が固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒(実施例14)においては、アンモニア合成反応温度が350℃であっても、チタンが固溶している複合酸化物を担体として用いたアンモニア合成触媒(実施例4)を用いて400℃でアンモニア合成反応を行った場合に比べて、高いアンモニア合成速度が得られることがわかった。
以上説明したように、本発明によれば、アンモニア合成活性に優れたアンモニア合成触媒を得ることが可能となる。したがって、本発明のアンモニアの合成方法は、アンモニアを効率よく合成することができるため、エネルギー効率が高く、例えば、水素エネルギーのエネルギーキャリア等として用いられるアンモニアの製造に有用である。