(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165552
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】エポキシ組成物、電子部品用組成物、電子部品用材料
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20221025BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20221025BHJP
C08L 61/00 20060101ALI20221025BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20221025BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221025BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/13
C08L61/00
C08L79/04
C08K3/013
H05K1/03 610L
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021070936
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田村 典央
(72)【発明者】
【氏名】國信 隆史
(72)【発明者】
【氏名】田口 晃史
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CC022
4J002CC032
4J002CD021
4J002CD031
4J002CM023
4J002DE148
4J002DK008
4J002EF117
4J002EJ026
4J002EJ027
4J002EJ037
4J002EN027
4J002EN037
4J002EN067
4J002EN077
4J002EV217
4J002FD018
4J002FD142
4J002FD143
4J002FD147
4J002GQ01
4J002GQ05
(57)【要約】
【課題】
基板に対して分子が垂直に配向した熱伝導率の高いエポキシ材料の提供。さらにこのような材料を、様々な環境下で安定的に与える、組成物の提供。
【解決手段】
エポキシ化合物を含む組成物であり、該組成物が液晶性を示し、さらに垂直配向剤を含む組成物、この組成物を硬化させた硬化物、およびこの硬化物を用いた電子部品であり、該垂直配向剤は、例えば以下の式(1)の構造である化合物を含む。
式(1)中、R
1は水素、または炭素数1から20のアルキル等であり、
A
1、A
2、およびA
3は、独立して、単結合、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレン等であり、
mは0から3であり、
Xは独立して、単結合、-CH
2CH
2-等である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物を含む組成物であり、該組成物が液晶性を示し、さらに垂直配向剤を含む組成物。
【請求項2】
硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
垂直配向剤が、炭素数10以上50以下の炭化水素構造を持ち、構造の片末端に水酸基、アミノ、またはカルボキシを持つ化合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
垂直配向剤が、以下の式(1)の構造である化合物を含む、請求項3に記載の組成物。
式(1)中、R
1は水素、または炭素数1から20のアルキルであり、これらのアルキルの隣り合わない-CH
2-は-O-で置換されてもよく、これらのアルキルの水素はフッ素で置換されてもよく、
A
1、A
2、およびA
3は、独立して、単結合、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレンであり、フェニレン上の水素はCH
3、OH、およびNH
2で置換されていてもよく、
mは0から3であり、
Xは独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【請求項5】
垂直配向剤が、以下の式(1-1)の構造である化合物を含む、請求項4に記載の組成物。
式(1-1)中、R
1は水素、または炭素数1から20のアルキルであり、これらのアルキルの隣り合わない-CH
2-は-O-で置換されてもよく、これらのアルキルの水素はフッ素で置換されてもよく、
A
11およびA
12は、独立して、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレンであり、フェニレン上の水素はCH
3で置換されていてもよく、
m1は0から2であり、
Xは独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【請求項6】
エポキシ化合物が式(2)の構造である化合物を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
式(1)中、R
epは独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基であり、Xは独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、A
3は、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキセニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、R
2は独立して、水素、フッ素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはR
epであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH
2-は-C(=O)-で置き換えられてもよく、nは0から2である。
【請求項7】
式(2)で表されるエポキシ化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
硬化剤が、分子骨格に-OHを2つ以上持つフェノール類、または該フェノールがエステル化された化合物である、請求項2から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
硬化剤が、式(3-1)から(3-6)で表される少なくとも1つの化合物、または該化合物がエステル化された化合物である、請求項8に記載の組成物。
式(3-1)中、
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
Z
30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH
3)-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-S-、または-SO
2-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;
式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
R
10およびR
11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
Z
31は独立して単結合、-CH(CH
3)-、または-C(CH
3)
2-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
また、これら式(3-3)から式(3-6)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【請求項10】
硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ脂肪族アミンである、請求項2から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
硬化剤が、式(4-1)または(4-2)で表される少なくとも1つの化合物である、請求項10に記載の組成物。
E-Z-(L-Z)n-E (4-1)
L1-Z-E (4-2)
式(4-1)および(4-2)中、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
L1は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO2-、-CO2-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Eの少なくとも1つはアミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【請求項12】
硬化剤がシアネートエステルを含む化合物である、請求項2から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む化合物である、請求項2から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
無機フィラーをさらに含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
無機フィラーが酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【請求項17】
請求項16に記載の硬化物を用いた電子部品。
【請求項18】
式(1-3)で表される化合物。
式(1-3)中、R
3は水素、炭素数1から12のアルキルであり、X
3は独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-CH
2O-、または-C≡C-である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の内部に生じた熱を効率よく伝導する放熱部材用組成物、およびこれに用いられる液晶性を有する重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御用の半導体素子や、高速コンピューター用のCPUなどにおいて、内部の半導体の温度が高くなり過ぎないように、パッケージ材料の高熱伝導化が望まれている。すなわち半導体チップから発生した熱を効率よく外部に放出させる能力が重要になっている。
【0003】
このような放熱問題を解決する方法としては、発熱部位に高熱伝導性材料(放熱部材)を接触させて熱を外部に導き、放熱する方法が挙げられる。熱伝導性が高い材料としては、金属や金属酸化物などの無機材料が挙げられる。しかし、このような無機材料は、加工性や絶縁性などに問題があり、単独で半導体パッケージの充填材に使用することは非常に難しい。そのため、これら無機材料と樹脂を複合化し、高熱伝導化した放熱部材の開発が行われている。
【0004】
複合材の高熱伝導化は、一般的に、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの汎用樹脂に、金属充填材などの無機充填材を多量に添加することにより行われてきた。しかし、無機充填材の熱伝導率は物質固有の値であり上限が決まっている。そのため、樹脂の熱伝導率を向上させることで、複合材のこれを行う方法が広く試みられている。これを実際に行う手段としては、例えば、液晶性を示すエポキシ化合物を用い、分子の配向を制御する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
非特許文献1には、基板の表面張力を一定値以上にすることにより、該基板に対して、分子が垂直方向に配向したエポキシ材料が開示されている。分子を垂直方向に配向させる事により、該方向への熱伝導率が向上する。しかしながら、表面張力が異なる基板を使用するなど、材料製作の環境や条件が変化した際に、より安定に垂直配向するような液晶材料が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ACS Omega, 3, 3562(2018).
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2016/190260号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、基板に対して分子が垂直に配向した熱伝導率の高いエポキシ材料を提供することである。さらにこのような材料を、様々な環境下で安定的に与える、組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、エポキシ化合物を含む組成物に対して、垂直配向剤を加えることにより、上記課題を解決できることを見出し、下記[1]~[18]項に記載する発明を完成させた。
【0010】
[1] エポキシ化合物を含む組成物であり、該組成物が液晶性を示し、さらに垂直配向剤を含む組成物。
【0011】
[2] 硬化剤をさらに含む、[1]項に記載の組成物。
【0012】
[3] 垂直配向剤が、炭素数10以上50以下の炭化水素構造を持ち、構造の片末端に水酸基、アミノ、またはカルボキシを持つ化合物を含む、[1]または[2]項に記載の組成物。
【0013】
[4] 垂直配向剤が、以下の式(1)の構造である化合物を含む、[3]項に記載の組成物。
【0014】
【0015】
式(1)中、R1は水素、または炭素数1から20のアルキルであり、これらのアルキルの隣り合わない-CH2-は-O-で置換されてもよく、これらのアルキルの水素はフッ素で置換されてもよく、
A1、A2、およびA3は、独立して、単結合、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレンであり、フェニレン上の水素はCH3、OH、およびNH2で置換されていてもよく、
mは0から3であり、
Xは独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【0016】
[5] 垂直配向剤が、以下の式(1-1)の構造である化合物を含む、 [4]項に記載の組成物。
【0017】
【0018】
式(1-1)中、R1は水素、または炭素数1から20のアルキルであり、これらのアルキルの隣り合わない-CH2-は-O-で置換されてもよく、これらのアルキルの水素はフッ素で置換されてもよく、
A11およびA12は、独立して、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレンであり、フェニレン上の水素はCH3で置換されていてもよく、
m1は0から2であり、
Xは独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【0019】
[6] エポキシ化合物が式(2)の構造である化合物を含む、[1]から[5]項のいずれか1項に記載の組成物。
【0020】
【0021】
式(1)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基であり、Xは独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、A3は、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキセニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、R2は独立して、水素、フッ素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH2-は-C(=O)-で置き換えられてもよく、nは0から2である。
【0022】
[7] 式(2)で表されるエポキシ化合物において、Xが単結合または-C≡C-である、[6]項に記載の組成物。
【0023】
[8] 硬化剤が、分子骨格に-OHを2つ以上持つフェノール類、または該フェノールがエステル化された化合物である、[2]から[7]項のいずれか1項に記載の組成物。
【0024】
[9] 硬化剤が、式(3-1)から(3-6)で表される少なくとも1つの化合物、または該化合物がエステル化された化合物である、[8]項に記載の組成物。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
式(3-1)中、
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
Z30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-O-、-S-、または-SO2-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;
式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
R10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
Z31は独立して単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
また、これら式(3-3)から式(3-6)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0029】
[10] 硬化剤が、芳香族1級アミン、脂肪族1級アミン、2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ芳香族、または2級アミノを分子骨格に2つ以上持つ脂肪族アミンである、[2]から[7]項のいずれか1項に記載の組成物。
【0030】
[11] 硬化剤が、式(4-1)または(4-2)で表される少なくとも1つの化合物である、[10]項に記載の組成物。
E-Z-(L-Z)n-E (4-1)
L1-Z-E (4-2)
式(4-1)および(4-2)中、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
L1は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO2-、-CO2-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Eの少なくとも1つはアミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【0031】
[12] 硬化剤がシアネートエステルを含む化合物である、[2]から[7]項のいずれか1項に記載の組成物。
【0032】
[13] 硬化剤が、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む化合物である、[2]から[7]項のいずれか1項に記載の組成物。
【0033】
[14] 無機フィラーをさらに含む、[1]から[13]項のいずれか1項に記載の組成物。
【0034】
[15] 無機フィラーが酸化アルミニウムまたは窒化ホウ素である、[14]項に記載の組成物。
【0035】
[16] [1]から[15]項のいずれか1項に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【0036】
[17] [16]項に記載の硬化物を用いた電子部品。
【0037】
[18] 式(1-3)で表される化合物。
【0038】
【0039】
式(1-3)中、R3は水素、炭素数1から12のアルキルであり、X3は独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、または-C≡C-である。
【発明の効果】
【0040】
本発明の組成物は、液晶性を示すことから、硬化物とすることで、様々な基板や材料作製条件において、分子骨格が垂直に配向したエポキシ材料を与える。そのため高い熱伝導性を持つ。従ってこのようなエポキシ材料は、パワー半導体用などの放熱材料として、好適に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】[実施例8]におけるガラス基板上の硬化物の偏光顕微鏡写真である。
【
図2】[比較例4]におけるガラス基板上の硬化物の偏光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。また、本発明は、実施の形態に制限されるものではない。
【0043】
本発明において「環の少なくとも1つの水素は炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく」の句は、例えば1,4-フェニレンの2,3,5,6位の水素の少なくとも1つがメチル等の置換基で置き換えられた場合の態様を意味する。
「化合物(1)」は、式(1)で表される化合物を意味し、また、式(1)で表される化合物の少なくとも1種を意味することもある。
【0044】
本明細書において、組成物とは、エポキシ化合物を含み、該エポキシ化合物が加熱等による反応で、高分子量化した生成物を与えるような、混合物である。例えば、エポキシ化合物と熱酸発生剤の混合物、またはエポキシ化合物と硬化剤の混合物などである。組成物は、硬化促進剤、光重合開始剤、または界面活性剤等、その他の成分を含んでもよい。溶媒を含む上記混合物も、組成物と呼ぶ。
【0045】
本明細書において、硬化物とは、組成物が高分子量化した生成物を含む高分子材料である。組成物が硬化物となることにより、例えば流動性やタック性が喪失する。
【0046】
上記したように、本発明の組成物に、垂直配向剤を添加することにより、本発明の課題を解決することができる。本発明において、「液晶性を示す」とは、室温から200℃までの間に、液晶相を持つことをいう。溶媒を多く含む組成物は液晶性を喪失するが、加熱で溶剤が蒸発することにより、上記温度範囲に液晶性を持つような組成物も、「液晶性を示す」という。また本発明において、エポキシ化合物を含む組成物を硬化させる途中で、液晶性を示すプレポリマーを与えるような組成物も、「液晶性を示す組成物」に含まれる。
【0047】
液晶相の温度範囲は、室温から200℃の温度範囲の全てであることが好ましいが、通常、より狭い範囲に限定される。その場合、組成物中の分子を配向させ硬化物の熱伝導率を向上させるため、組成物は液晶相で硬化させることが好ましい。このような温度は、通常、70から200℃の温度範囲である。
【0048】
[垂直配向剤]
垂直配向剤とは、液晶性を示す組成物に添加し、その混合物を基板に対して垂直配向させる、またはさせやすくする化合物である。垂直配向剤の種類には特に限定は無いが、該組成物の主成分であるエポキシ化合物に対し、当モル以下の濃度で、添加される。
【0049】
垂直配向剤の一つの候補は、炭素数10以上50以下の炭化水素構造を持ち、構造の片末端に水酸基、アミノ、またはカルボキシを持つ化合物である。このような構造の化合物を選択することにより、液晶性を示すエポキシ組成物の垂直配向が惹起される。
【0050】
上記のような垂直配向剤の構造は、以下の式(1)が挙げられる。
【0051】
【0052】
式(1)中、R1は水素、または炭素数1から20のアルキルであり、これらのアルキルの隣り合わない-CH2-は-O-で置換されてもよく、これらのアルキルの水素はフッ素で置換されてもよく、
A1、A2、およびA3は、独立して、単結合、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレンであり、フェニレン上の水素はCH3、OH、およびNH2で置換されていてもよく、
mは0から3であり、
Xは独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【0053】
硬化物とした後、該硬化物から垂直配向剤が溶出し、電子部品材料を汚染することを防ぐため、垂直配向剤は硬化剤として作用する化合物を選択することが、好ましい。このような化合物としては、以下の式(1-1)で示す化合物が挙げられる。
【0054】
【0055】
式(1-1)中、R1は水素、または炭素数1から20のアルキルであり、これらのアルキルの隣り合わない-CH2-は-O-で置換されてもよく、これらのアルキルの水素はフッ素で置換されてもよく、
A11およびA12は、独立して、シクロヘキサン、シクロヘキセン、またはフェニレンであり、フェニレン上の水素はCH3で置換されていてもよく、
m1は0から2であり、
Xは独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。
【0056】
式(1-1)で表される化合物の好適な例を、以下に示す。
【0057】
【0058】
式(1-1-1)から式(1-1-4)中、R11は炭素数8から20のアルキルである。
【0059】
【0060】
【0061】
式(1-1-5)から式(1-1-18)中、R12は水素原子、または炭素数1から20のアルキルである。
【0062】
上記式(1-1-1)から式(1-1-18)の化合物の中でも、組成物の液晶性を維持または向上させることから、式(1-1-5)から式(1-1-18)の化合物を選択することが好ましく、硬化物の耐熱性を向上させるため、式(1-1-5)から式(1-1-12)、および式(1-1-16)から式(1-1-18)で表される化合物の一種を選択することが好ましい。
【0063】
上記以外の垂直配向剤においても、組成物の液晶性を維持または向上させることから、液晶性を示す化合物を選択することが好ましい。
【0064】
式(1-1)は、下記式(1-3)の構造を含む。
【0065】
【0066】
式(1-3)中、R3は水素、炭素数1から12のアルキルであり、X3は独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、または-C≡C-である。
【0067】
式(1-3)で表される化合物としては、上記の式(1-1-5)から式(1-1-8)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
垂直配向剤は、組成物の主成分であるエポキシ化合物に対し、当モル以下の濃度で、添加される。このとき、殆どの種類の垂直配向剤は、エポキシ化合物と反応しないか、または反応しても高分子とならないか、または直線状の高分子を与える。したがって、硬化物の耐熱性は低下し、硬化後に垂直配向剤が環境中に溶出する可能性がある。このような問題から、硬化剤の含有量は、組成物に垂直配向性を与える最低限の量とすることが望ましい。例えば、式(1-1)で表される化合物を垂直配向剤として使用した場合、式(1-1)で表される化合物の含有量は、エポキシ化合物の全量に対し、モル%で1%以上50%以下が好適であり、5%以上40%以下がさらに好適である。
【0069】
組成物の主成分であるエポキシ化合物と反応するような垂直配向剤を選択した場合、組成物中の硬化剤の含有量は、垂直配向剤の量に合わせて、調整することが好ましい。硬化物としたときの耐熱性を維持するため、組成物のエポキシ当量と、垂直配向剤と硬化剤のエポキシと反応する官能基の当量とを、等しくすることが好ましい。
【0070】
本発明の組成物で使用されるエポキシ化合物は、製造が容易であり、これを硬化した際の耐熱性が高いことから、棒状の液晶性化合物であることが好ましい。このような棒状の液晶性化合物に関しては、液晶温度範囲を拡大するために、液晶のコアとして芳香環を3から5個有することが、好ましい。
【0071】
上記液晶のコアとは、芳香環や脂環が、比較的コンフォメーションが定まった結合基で連結された構造を示す。このとき、該結合基の例としては単結合、エチレン、オキシメチレン、二重結合、三重結合、またはエステル等が挙げられる。
【0072】
上記の棒状の液晶性化合物とは、液晶のコアとして、芳香環や脂環が直線状に連なり、そのコアの両端にアルキル等の柔軟性のある置換基が結合した構造である。このとき上記直線は、厳密な直線である必要はなく、45度程度の角度まで屈曲してもよい。
【0073】
このような棒状の液晶性化合物においては、200℃以上の温度での分解を防ぐために、その分子構造中にエステルを含有しないことが好ましい。
【0074】
上記の棒状の液晶性化合物としては、液晶性を示す温度範囲が広く、製造が容易であることから、式(2)で表される化合物を選択することが、より好ましい。
【0075】
【0076】
式(2)中、Repは独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基であり、Xは、それぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-であり、A3は、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキセニレン、または1,4-シクロヘキシレンであり、R2は独立して、水素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepであり、これらアルキルおよびアルコキシの少なくとも1つの-CH2-は-C(=O)-で置き換えられてもよく、nは0から2である。
【0077】
式(2)の化合物において、Repは、それぞれ独立して、オキシラニルを含む炭素数2から12の基である。このとき、Repのオキシラニル以外の構造は特に制限が無いが、硬化物としたときに高い耐熱性を与えるためには、炭素数2から10のオキシラニルを含む基であることが好ましく、炭素数2から8のオキシラニルを含む基であることが特に好ましい。またこれらのオキシラニルを含む基の-CH2-は-O-で置換されてもよい。芳香環に-O-が直接結合する構造の化合物は、合成が特に容易である。
【0078】
式(2)の化合物において、連結基Xは、それぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-CH=CH-、-C≡C-、または-COO-である。これらの連結基において、結合の方向は任意である。このとき、硬化物の耐熱性を向上させるためには、Xとして単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、または-C≡C-を選択することが好ましく、化合物に広い液晶温度範囲を付与するため、単結合、または-C≡C-を選択することが特に好ましい。また合成上の容易さから、単結合を選択することが最も好ましい。
【0079】
式(2)の化合物において、A3は、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキセニレン、または1,4-シクロヘキシレンである。このとき、化合物の液晶性を高めるためには、A3として1,4-フェニレンを選択することが好ましい。またA3として1,4-シクロヘキシレンを選択する場合、上記と同様な理由から、1,4-位の置換基がいわゆるトランスの位置に配置された構造であることが、望ましい。
【0080】
式(2)の化合物において、R1はそれぞれ独立して、水素、フッ素、炭素数1から8のアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、またはRepである。またこれらのアルキルおよびアルコキシの1つの-CH2-は-CO-で置換されてもよい。このとき、化合物の液晶温度範囲を拡大することが出来ることから、これらのR1として、アルキルまたはアルコキシを選択することが好ましく、アルキルを選択することが特に好ましい。またRepやXが同一の基でない場合、同様な理由から、水素を選択することも好ましい。化合物の液晶温度範囲を拡大するためには、R1としてメチルを選択することが最も好ましい。さらに硬化物の耐熱性を向上させるためには、R1としてRepを選択することが好ましい。
【0081】
式(2)の化合物において、nは0から2である。このとき、化合物の液晶温度範囲を拡大することが出来ることから、nは1または2が好ましい。
【0082】
式(2)で表される液晶性を示すエポキシ化合物の好適な例としては、式(2-1)から式(2-36)の化合物が挙げられる。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
式(2-1)から式(2-36)中、Repは、独立して、オキシラニルを有する炭素数2から12の基を表す。
【0089】
上記式(2-1)から式(2-36)で表される化合物において、本発明の課題を解決するためには、式(2-4)から式(2-19)および式(2-23)から式(2-25)で表される化合物の1つを選択することが、好ましい。これらの化合物は、液晶温度範囲が広く、またそれが硬化に適した温度領域にある。これらの化合物の中でも、式(2-6)、式(2-9)、(2-10)、および式(2-23)から式(2-25)で表される化合物の1つを選択することが、同様な理由から、さらに好ましい。また硬化物の熱安定性をより向上させるためには、式(2-6)、式(2-9)、および(2-10)で表される化合物の1つを選択することが、最も好ましい。
【0090】
本発明の組成物は、液晶性を示すエポキシ化合物、硬化剤、および必要に応じて添加される硬化促進剤を含むことを特徴とする。このような本発明の組成物は液晶性を呈し易い。さらにこの状態を保ったまま硬化させることにより、硬化物中の分子骨格同士の絡みが緩和される。結果として、熱を効率よく伝導させる材料を与える。
【0091】
本発明の組成物は、上記式(2)で表される化合物を含むことを特徴とする。式(2)の化合物は1種類または複数を使用してもよい。また組成物の液晶性を喪失させない限りにおいては、液晶性を持たない、その他の公知のエポキシ化合物を併用することが出来る。
【0092】
また上記他のエポキシ化合物としては、式(o-7)から式(o-21)で表される非液晶性エポキシ化合物も好ましく用いられる。
【0093】
【0094】
式(o-12)において、Z10は単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-SO2-、または-C(CF3)2-を表す。
【0095】
【0096】
式(o-13)および式(o-14)において、Z11はCHまたはCCH3を表す。
【0097】
【0098】
また上記他のエポキシ化合物としては、式(o-23)から式(o-27)で表される構造の樹脂も好ましく用いられる。
【0099】
【0100】
式(o-23)中、Z12およびZ13は独立して、単結合、-CH2-、-O-、-S-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-SO2-、または-C(CF3)2-であり、n21は1以上5000以下の整数である。
式(o-24)および式(o-25)中、n21は1以上5000以下の整数であり、n22およびn23は独立して、0または1であり、n21が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
R10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
またこれら式(o-24)から式(o-25)中の芳香環上の水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0101】
【0102】
式(o-27)中、Z14は独立して、単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-である。
式(o-26)および式(o-27)中、n21は1以上5000以下の整数を表す。
またこれら式(o-26)および式(o-27)中の芳香環上の水素はメチルで置換されてもよい。
【0103】
式(2)の化合物に対する、このような公知のエポキシ化合物の含有量は、組成物またはその硬化物が所望の特性を発現する限りにおいて、特に制限は無い。すなわちエポキシ化合物の全重量に対し、0.1重量%から99.9重量%の間で使用することが出来る。このとき本発明の効果を発現させるためには、0.1重量%から70重量%の間で使用することが好ましく、0.1重量%から50重量%の間で使用することがさらに好ましい。
【0104】
[硬化剤]
本発明の組成物に併用できる、硬化剤としては、アミン、フェノール、シアネートエステル、カルボン酸、カルボン酸エステル、酸無水物、またはチオールを含む公知の化合物を使用することが出来る。
【0105】
フェノール系硬化剤としては、組成物の液晶性を大きく損なうことがなく、容易に入手出来ることから、下記式(3-1)から(3-6)で表される少なくとも1つの化合物、または該化合物のOHがエステル化された化合物であることが好ましい。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
上記式(3-1)中、
環Bは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、または9,9‐ジフェニルフルオレンであり、これら環Bにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、または炭素数1~3のアルコキシで置き換えられてもよく;
n31は2以上4以下の整数である。
【0110】
上記式(3-2)中、n32およびn33は独立して、1~3の整数であり;
Z30は、単結合、炭素数1~10のアルキレン、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-O-、-S-、または-SO2-であり、
ベンゼン環上の、少なくとも1つの水素は、炭素数1~3のアルキル、炭素数2~3のアルケニルで置き換えられてもよく;
【0111】
上記式(3-3)および式(3-4)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、n35およびn36は独立して、0または1であり、n34が2以上の場合、繰り返し毎に異なってもよく、
R10およびR11は独立して、1,4-フェニレン、4,4’-ビフェニレン、またはシクロペンタジエニレンであり、
式(3-5)中、
n34は1以上5000以下の整数であり、
式(3-6)中、
Z31は独立して単結合、-CH(CH3)-、または-C(CH3)2-であり、n34は1以上5000以下の整数である。
また、これら式(3-3)から式(3-6)中の芳香環上の少なくとも1つの水素はメチルで置き換えられてもよい。
【0112】
アミン系硬化剤としては、組成物の液晶性を大きく損なうことがなく、容易に入手出来ることから、下記式(4-1)または(4-2)で表される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
E-Z-(L-Z)n-E (4-1)
L1-Z-E (4-2)
式(4-1)および(4-2)中、
Lは独立して、単結合、シクロヘキシレン、フェニレン、またはナフタレンであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
L1は、水素、シクロヘキシル、フェニル、またはナフチルであり、これらの環の少なくとも1つの水素は、炭素数1~10のアルキルで置き換えられてもよく、
Zは独立して、単結合、-O-、-NH-、-S-、-SO2-、-CO2-、または炭素数1~12のアルキレンであり、
Eは独立して、アミノ、炭素数1~10のアルキルアミノ、水酸基、またはカルボキシであり、Eの少なくとも1つはアミノまたは炭素数1~10のアルキルアミノであり、
nは、0~7の整数である。
【0113】
このような式(4-1)で表される化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミンなどの炭素数2~12の脂肪族多価アミン、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、o-フェニレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、m-トリジン、o-トリジンなどの芳香族多価アミン、1,4-シクロヘキシルジアミン、1,3-シクロヘキシルジアミン、1,2-シクロヘキシルジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの、脂環式多価アミンが挙げられる。
【0114】
これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れることから、p-フェニレンジアミン、N-メチル-p-フェニレンジアミン、N-エチル-p-フェニレンジアミン、N-プロピル-p-フェニレンジアミン、N-ブチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミン、N-メチル-m-フェニレンジアミン、N-エチル-m-フェニレンジアミン、N-プロピル-m-フェニレンジアミン、N-ブチル-m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、および4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが特に好適である。
【0115】
式(4-2)で表される化合物としては、n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミンなどの炭素数2~12の脂肪族アミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリン、1-ナフチルアミン、1-アミノ-2-メチルナフタレンなどの芳香族アミン、シクロヘキシルアミン、2-メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式アミンが挙げられる。これらの中でも、組成物にした際の相溶性がよく、保存安定性に優れることから、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、2,4-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、2,4,6-トリメチルアニリン、2-エチルアニリンが特に好適である。
【0116】
好ましいカルボキシ含有硬化剤としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸などが挙げられる。
【0117】
[硬化促進剤]
本発明の組成物において、特にフェノール系の硬化剤を使用する場合、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、硬化促進剤を組成物に添加することが好ましい。このような硬化促進剤として、2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、および1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール系硬化促進剤、トリフェニルフォスフィンなどのリン系硬化促進剤、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、などのアミン系硬化促進剤などが挙げられる。このような硬化促進剤のうち、硬化温度が200℃以下であり硬化性が高いことから、イミダゾール系の硬化促進剤を使用することが好ましい。
【0118】
本発明の組成物における硬化促進剤の濃度は、耐熱性を向上させるため反応を効率的に進めるために、本発明組成物の固形分の重量に対し、0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましい。また硬化促進剤の昇華などによる信頼性などの悪化を避けるために、本発明組成物の固形分の重量に対し、10重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。
【0119】
[無機フィラー]
本発明の電子部品用組成物は、無機フィラーを含有してもよい。
電子部品用組成物が含有する無機フィラーは、高熱伝導性の充填材として、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素などの窒化物が挙げられる。他にも、ダイアモンド、黒鉛、炭化珪素、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材や金属充填材であってもよい。好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムである。窒化ホウ素、窒化アルミニウムは平面方向の熱伝導率が非常に高く、誘電率が低く、絶縁性が高いため好ましい。特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)や窒化アルミニウムが好ましい。
【0120】
無機フィラーの形状としては、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状、板状、四脚状などが挙げられる。無機フィラーの種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。例えば、電子部品用組成物から形成された硬化物(電子部品用材料)が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する無機フィラーであっても構わない。
【0121】
無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.1~200μmであることが好ましい。より好ましくは、1~100μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げられる。なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論及びミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
【0122】
無機フィラーの添加量は、例えば、放熱部材に用いる場合は、20~95重量%であることが好ましい。より好ましくは、50~95重量%である。20重量%以上であると熱伝導率が高くなり好ましい。また材料が脆くなることを防ぐため、無機フィラーの添加量は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがさらに好ましい。
【0123】
無機フィラーは、未修飾のものをそのまま使用してもよい。または、その表面をカップリング剤で処理したものを用いてもよい。例えば、窒化ホウ素(h-BN)をシランカップリング剤で処理する。窒化ホウ素の場合は粒子の平面に反応基がないため、その周囲のみにシランカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、電子部品用組成物中の重合性化合物との結合を形成でき、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。そのため、カップリング剤は、オキシラニル、オキセタニル、または硬化剤の有する基と反応するものが好ましい。例えば、アミン系、またはオキシラニル、オキセタニルを有するものが好ましい。具体的には、JNC(株)製では、サイラエースS310,S320,S330,S360,S510,S530などが挙げられる。
【0124】
無機フィラーは、カップリング剤で処理した後さらにエポキシなどの重合性の基を持つ化合物(重合性化合物)で表面修飾したものを用いてもよい。例えば、シランカップリング剤で処理された窒化ホウ素(h-BN)を重合性化合物で表面修飾する。重合性化合物で表面修飾された窒化ホウ素が、電子部品用組成物中の重合性化合物や硬化剤と結合を形成できると、この結合は熱伝導に寄与すると考えられる。例えば、重合性化合物は、式(1)で示す本発明重合性化合物であってもよく、それ以外の重合性化合物であってもよい。
【0125】
[その他の構成要素]
本発明の組成物において、含有することの出来るその他の構成要素としては、特に限定されない。例えばエポキシ以外の重合性基を持つ重合性化合物、非重合性化合物、重合開始剤、及び溶媒などが挙げられる。
【0126】
エポキシ以外の重合性基を持つ重合性化合物としては、本発明の電子材料の特性を低下させない限りにおいて、特に制限は無く、公知の重合性化合物を使用することが出来る。その中でも、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物が好ましく使用出来、液晶性を持つようなこれら化合物が、より好適に使用することが出来る。
重合開始剤としては、例えば熱重合開始剤、光カチオン重合開始剤、および光アニオン重合開始剤などが挙げられる。熱カチオン重合開始剤としてはスルホニウム塩系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、ジシアンアジド、有機酸ヒドラジド、トルエンスルホン酸エステルなどが挙げられる。また光カチオン開始剤としては、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、非イオン系などが知られている。さらに光アニオン開始剤としては、オキシム系、カーバメート系、グアニジウム-カルボン酸塩系、ニフェジピン系などが知られている。
【0127】
本発明組成物に、アクリル化合物やスチレン系化合物などのラジカル重合する化合物を含む場合は、ラジカル重合開始剤を使用してもよい。
【0128】
本発明の組成物は溶媒を含有してもよい。好ましい溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-エチルヘキサノール、1-プロパノール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、2-ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールが挙げられる。溶媒は1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0129】
本発明の組成物は高い重合性を有するので、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。このような安定剤としては、公知のものを制限なく使用できる。例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノール、及び3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。
【0130】
さらに、電子部品用組成物の粘度や色を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために、例えば、ガラス、カーボンファイバーなどの無機繊維や、それらのクロス、または、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの合成繊維、または、超分子などを添加してもよい。
【0131】
[電子部品用材料]
本発明の電子部品用材料は、上記第2の実施の形態に係る電子部品用組成物を硬化させた硬化物を用途に応じて成形したものである。例えば、電子部品用材料を放熱部材として適用できる。
【0132】
電子部品用材料は、本発明の組成物を重合(硬化)させることによって得られる重合体(硬化物)である。この重合体は、高い熱伝導性を有するとともに、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引っ張り強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
【0133】
本発明の組成物は、熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂は、原料となる組成物を加熱することで、組成物に含まれるモノマーを高分子化させ、さらに三次元架橋させること等により、硬化する。この際の加熱温度は、本発明の組成物が液晶相を示す温度範囲であることが好ましい。また本発明の組成物は、硬化をある程度進めることにより、液晶温度範囲が上昇する場合もある。このような場合は、上昇した液晶温度範囲において硬化させてもよい。
【0134】
硬化させる温度は、一定であってもよく、段階的に上昇または降下させてもよい。後者の場合、最初の硬化温度は、材料の放熱特性を向上させるため、組成物またはその硬化物が液晶相を示す温度が好ましい。また耐熱性を向上させるため、最初の硬化温度より高い温度で加熱することが好ましい。
【0135】
熱重合による熱硬化温度は、20℃~350℃、好ましくは20℃~250℃、より好ましくは50℃~200℃の範囲である。硬化時間は、5秒~10時間、好ましくは1分~8時間、より好ましくは5分~5時間の範囲である。重合後は、応力ひずみなどを抑制するために徐冷することが好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。
【0136】
より架橋させるために架橋剤を添加してもよい。これにより、耐薬品性及び耐熱性に極めて優れた重合体(硬化物)を得られる。このような架橋剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)などが挙げられる。
【0137】
本発明の電子部品用材料は、シート、フィルム、薄膜、繊維、成形体などの形状で使用できる。好ましい形状は、フィルム及び薄膜である。フィルム及び薄膜は、電子部品用組成物を基板に塗布した状態または基板で挟んだ状態で重合させることによって得られる。また、溶媒を含有する電子部品用組成物を、基板に塗布し溶媒を除去することによっても得られる。さらに、フィルムについては、重合体をプレス成形することによっても得られる。なお、本明細書におけるシートの膜厚は1mm以上であり、フィルムの膜厚は5μm以上、好ましくは10~900μmであり、より好ましくは20~800μmであり、薄膜の膜厚は5μm未満である。膜厚は用途に応じて適宜変更すればよい。
【0138】
本発明の電子部品用材料は、高熱伝導性に加え、化学的安定性、耐熱性、硬度及び機械的強度などの優れた特性をも有する。よって、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱塗膜、放熱接着材、放熱成形品などに有用である。
【0139】
本発明の重合性化合物から形成された電子部品用材料を上記では放熱材料として用いることを説明したが、電子部品用材料の用途は放熱材料に限られない。例えば、封止材や接着材料として用いてもよい。
【0140】
[電子部品用組成物の製造方法]
電子部品用組成物とは、本発明の組成物である放熱材料を指し、熱伝導性を高めるため無機フィラーを含有してもよく、無機フィラーに対するカップリング処理の実施は問わない。電子部品用組成物の製造例として、無機フィラーにカップリング処理を施す場合の製造方法を以下に説明する。カップリング処理は公知の方法を適用できる。
【0141】
一例として、まず無機フィラー粒子とカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、放置する。溶媒乾燥後に真空乾燥機等を用いて真空条件下で加熱処理をする。この無機フィラー粒子に溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後の無機フィラー粒子を乾燥させる。
【0142】
次にカップリング処理された無機フィラー粒子と重合性化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理及び遠心分離によって分離精製する。
【0143】
さらにアミン系硬化剤を加え、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2軸ロール等を用いて混練する。これにより、溶媒を含有しない電子部品用組成物を得られる。
【0144】
[電子部品用材料の製造方法]
一例として、溶媒を含有しない組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
【0145】
溶媒を含有しない組成物を、圧縮成形機を用いて加熱板中にはさみ、圧縮成形により成形する。重合性化合物が所定の温度、時間で重合し重合体を形成する。さらに適切な時間、温度で後硬化を施してもよい。なお、圧縮成形時の圧力は、50~500kgf/cm2が好ましく、より好ましくは70~250kgf/cm2である。硬化時の圧力は基本的には高い方が好ましい。しかし、金型の流動性や、目的とする物性(どちら向きの熱伝導率を重視するかなど)によって適宜変更し、適切な圧力を加えることが好ましい。
【0146】
なお、組成物は一部を硬化させた状態(半硬化状態)とすると、扱い易くなる。例えば、半硬化状態の組成物をシート状に形成し、好みの形に切り取り、これを好適な部材と部材の間に配置し貼りあわせてもよい。
【0147】
溶媒を含有する組成物を用いて、電子部品用材料としてのフィルムを製造する方法を以下に説明する。
【0148】
基板上に組成物を塗布し、溶媒を乾燥除去して膜厚の均一な塗膜層を形成する。塗布方法としては、例えば、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート法などが挙げられる。
【0149】
溶媒の乾燥除去は、例えば、室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどにより実施できる。溶媒除去の条件は特に限定されず、溶媒がおおむね除去され、塗膜層の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。
【0150】
[電子部品]
本発明の組成物、またはそれを硬化させた硬化物は、例えば電子部品の放熱部材として用いることができる。このような電子部品としては、例えば発熱部を有する電子デバイスが挙げられる。本発明の組成物、またはそれを硬化させた硬化物を放熱部材として用いる場合は、放熱部材を前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置する。放熱部材の形状は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。このように、放熱部材により電子デバイスに生じた熱を放熱させ、熱による故障を回避することで、電子デバイスを備える電子機器の寿命を延ばせる。
【0151】
電子デバイスとしては、半導体素子を挙げることができる。放熱部材は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のためより効率的な放熱機構を必要とする絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)に特に有効である。IGBTは半導体素子のひとつで、MOSFETをゲート部に組み込んだバイポーラトランジスタであり、電力制御の用途で使用される。IGBTを備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【0152】
[式(1)で表される化合物の合成方法]
式(1)の化合物は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。出発物質に目的の重合性基及び環構造を導入する方法は、例えば、ホーベン-ワイル(Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006-265527号公報を参照してもよい。
【実施例0153】
以下に、本発明に対して実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、実施例に記載された内容に限定されるものではない。なお温度の記載がない場合は、23℃で測定を行った。
【0154】
[化合物の相転移点測定および液晶相の同定]
偏光顕微鏡および示差走査熱量計を使用して、測定した。偏光顕微鏡は、VHX5000デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社)に、偏光板を取り付けた構成であった。これにホットステージシステムHS1(メトラー トレド社製)を用い、温度を調節した。偏光顕微鏡測定は、クロスニコル下で観察した。接眼および対物レンズの倍率は、それぞれ10x20倍であった。示差走査熱量計はPerkin Elmer社製、Diamond DSCを用いた。測定時、昇温または降温速度は、どちらも測定においても、3℃/minであった。実施例中、Cは結晶、Nはネマチック相、Iは等方性液体を示し、()はモノトロピック液晶相を示す。
【0155】
[NMR測定]
NMRは、VARIAN社製のVARIAN NMR SYSTEMで計測した。1H NMR測定での磁場強度は500MHzであり、試料はCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は室温で行った。この際、積算回数は8回である。内部標準は、テトラメチルシランである。NMRの符号のうち、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレット、brはブロードを意味する。
【0156】
[組成物の液晶性の確認]
組成物をスライドガラスに数滴滴下し、80℃で5分間保持し、溶媒を蒸発させた。このサンプルを、上記同様に偏光顕微鏡で観察した。組成物の一部の種類は、垂直配向のため、暗視野の領域が大部分を占める場合があったが、液晶状態に特徴的な配向欠陥が存在する領域で観察し、その欠陥が存在する場合、液晶性があると判断した。
【0157】
[硬化物の配向性の確認]
偏光顕微鏡およびシンテック(株)製のOPTIPRO偏光解析装置を用い、確認した。OPTIPRO偏光解析装置では、硬化物が塗布された基板に、波長が550nmの光を照射し、レタデーションを測定した。レタデーション(retardation;位相遅れ、リタデーションとも呼ばれる)はΔn×dで表される。記号Δnは光学異方性値であり、記号dは重合体フィルムの厚さである。測定光の入射角度を基板面に対して90°から減少させながら測定すると、垂直配向した液晶やその状態が硬化した材料の場合、リタデーション値は、90°でほぼ0nmとなり、角度減少に伴い漸次増大する曲線を描く。
【0158】
[熱伝導率の測定]
・樹脂のみから成るサンプル;NETZSCH(株)製、LFA467 HyperFlashを用い、サンプルの熱拡散率(α、m2/s)を求めた。熱拡散率は、サンプルの垂直方向と水平方向に対して、それぞれ測定した。サンプルの比熱(c、J/(Kg))と密度(ρ、g/m3)から、以下の式に従い、熱伝導率(W/(Km))を求めた。
κ=αxcxρ
このとき、比熱は(株)リガク製DSC型高感度示差走査熱量計Thermo Plus EVO2 DSC-8231で測定した。比重は、新光電子(株)製比電子はかり式比重計DME-220により測定した。
・フィラー入りサンプル;(株)アイフェイズ製、ai-Phase Mobile 1u熱拡散率測定装置により、サンプルの厚み方向の熱拡散率を測定した。また上記と同様にして、サンプルの比熱と密度を測定した。これらの値から、上記と同様にして、熱伝導率を求めた。
【0159】
[使用化合物]
式(1-1)で表される垂直配向剤として、下記式(1-1-8-1)で表される化合物を実施例に使用した。これらの化合物は以下に記載の通り合成した。
式(2)で表されエポキシ化合物として、下記式(2-10-1)、および式(2-10-2)で表される化合物を実施例に使用した。これらの化合物は以下に記載の通り合成した。また式(2-21-1)で表される化合物を実施例に使用した。この化合物は、ACS Omega,3,3562(2018).および該文献に記載の文献に従い合成した。
硬化剤としては、式(3-2-1)で表される化合物を使用した。この化合物は以下に記載の通り合成した。
【0160】
【0161】
【0162】
[実施例1] 式(1-1-8-1)で表される化合物の合成
【0163】
【0164】
1-ヨード-4―トランス(4-n-ペンチル)シクロヘキシルベンゼン3.30g(9.26mmol)、4-エチニル-1,2-ジメトキシベンゼン1.50g(9.25mmol)、ジクロロビストリフェニルフォスフィンパラジウム(II)130mg(0.185mmol)、およびCuI 35.2mg(0.185mmol)の混合物を、Et3N(30ml)中、N2気流下4時間還流した。反応液を冷却後、トルエン(60ml)および純水(50ml)を反応液に加え、有機層を分離した。有機層は、MgSO4で乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=10/1)および再結晶(EtOH)で精製することにより、化合物(1-1-8-1-a)を得た。収量2.72g(収率75%)。
【0165】
上記の、1-ヨード-4―トランス(4-n-ペンチル)シクロヘキシルベンゼンおよび4-エチニル-1,2-ジメトキシベンゼンは、それぞれ、J.Am.Chem.Soc.,131,6763(2009).およびJ.Org.Chem.,73,4241(2008).に従って合成した。
【0166】
化合物(1-1-8-1-a)の2.20g(5.75mmol)を、トルエン/エタノール=20/20ml中、Pd/C 320mを触媒として、オートクレーブ中で水素添加反応した。このとき、水素圧は0.7MPaであった。反応後、触媒をろ別し、溶媒を減圧留去した。残さを再結晶(EtOH)で精製することにより、化合物(1-1-8-1-b)を得た。収量1.70g(収率75%)。
【0167】
化合物(1-1-8-1-b)の1.10g(2.79mmol)のCH2Cl2(10ml)溶液に、-10℃で、BBr3のCH2Cl2溶液(1M)を5.8mlを加えた。室温で一晩撹拌後、反応液を純水中(30ml)に加えた。この混合物に、AcOEt(40ml)を加え、抽出した。有機層を純水(15ml)で2回洗浄後、MgSO4で乾燥した。溶液をろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル=1/1)および再結晶(トルエン)で精製することにより、化合物(1-1-8-1)を得た。収量870mg(収率85%)。
【0168】
相転移点(℃);C・147.4・N・161.4・I.
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.14-7.09(AA‘BB’,4H),6.78(d,1H,J=8.00Hz),6.72(d,1H,J=2.00Hz),6.64(dd,1H,J=8.00,2.00Hz),4.98,4.86(s,1H),2.84-2.79,2.48-2.39,1.89-1.84,1.49-0.88(m,25H).
【0169】
[実施例2] 式(2-10-1)で表される化合物の合成
【0170】
【0171】
4-ブロモ-o-クレゾール10.0g(53.5mmol)、5-ブロモペンテン8.70g(58.4mmol)、およびK2CO38.9g(64mmol)の混合物を、アセトン(100ml)中、窒素雰囲気下、78時間還流した。反応液を冷却後、純水(100ml)およびトルエン(120ml)を加え、有機層を分離した。有機層を、純水(50ml)で2回洗浄後、MgSO4で乾燥した。溶液をろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)で精製することにより、4-ブロモ-2-メチル-(4-ペンテニルオキシ)ベンゼンを得た。収量13.4g(収率98%)。
【0172】
Mg1.42g(58.8mmol)をTHF(15ml)に加え、ヨウ素の結晶をひとかけら加えた。この溶液に、窒素雰囲気下、上記4-ブロモ-2-メチル-(4-ペンテニルオキシ)ベンゼンのTHF(85ml)溶液を加え、グリニヤール試薬を調製した。B(OMe)37.5ml(67.1mmol)のTHF(50ml)溶液に、上記グリニヤール試薬を、-30℃を超えない速度で加え、-60℃で1時間撹拌した。反応温度を0℃にし、3N塩酸30mlを加え、室温で1時間撹拌した。この反応液に、純水(60ml)およびトルエン(200ml)を加え、有機層を分離した。有機層を純水(50ml)で2回洗浄後、MgSO4で乾燥した。溶液をろ過し、溶媒を減圧留去した。残渣を再結晶(ヘプタン)で精製することにより、4-(4-ペンテニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸を得た。収量8.12g(収率67%)。
【0173】
4-(4-ペンテニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(2-10-1-a)を用い、上記実施例4と同様な方法で、化合物(1-10-1-b)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(ヘプタン)で精製した。収量9.5g(収率82%)。
【0174】
化合物(1-10-1-b)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(2-10-1)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン:酢酸エチル=10:1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量6.6g(収率64%)。
【0175】
相転移点(℃);C・118.9・N・174.7・I
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.64-7.60(m,4H),7.57,7.43(AA’BB’,4H),7.31-7.25(m,2H),6.89(d,1H,J=8.00Hz),4.11-4.04(m,2H),3.04-2.99,2.93-2.78,2.53-2.51,1.90-1.86,1.78-1.67(m,16H)2.30(s,3H).
【0176】
[実施例3] 式(2-10-2)で表される化合物の合成
【0177】
【0178】
実施例2の4-(4-ペンテニルオキシ)-2-メチルフェニルボロン酸と同様にして合成した、4-(3-メチル-3-ブテニルオキシ)-3-メチルフェニルボロン酸および化合物(2-10-1-a)を用い、上記実施例2と同様な方法で、化合物(2-10-2-a)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(ヘプタン)で精製した。収量6.5g(収率86%)。
【0179】
化合物(2-10-2-a)を用い、上記実施例1と同様な方法で化合物(2-10-2)を合成した。生成物は、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン:酢酸エチル=10:1)および再結晶(エタノール)で精製した。収量6.9g(収率85%)。
【0180】
相転移点(℃);C・122.0・N・153.3・I
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.63-7.62(m,4H),7.57,7.29(AA’BB’,4H),7.45-7.42(m,2H),6.90(d,1H,9.00Hz),3.00-2.77,2.67-2.66,2.51-2.50(m,7H),2.29(s,3H),2.17-1.83(m,4H),1.55(s,3H).
【0181】
[実施例4] 式(3-2-1)で表される化合物の合成
【0182】
【0183】
3-ホルミル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル 2.00g(9.34mmol)、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン 4.7g(56mmol)、およびPPTS0.47g(1.9mmol)の混合物を、CH2Cl2 20ml中、室温で一晩撹拌した。反応液に飽和重曹水30mlを加え、有機層を分離した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後ろ過し、溶媒を減圧留去後、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製することにより、化合物(3-2-1-a)を得た。収量244mg(収率7.9%)。
【0184】
化合物(3-2-1-a)は、上記実施例5と同様な方法で、化合物(3-2-1-b)に誘導した。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(ヘプタン:トルエン=1:1→トルエン)で精製した。収率86%。
【0185】
化合物(3-2-1-b)は、上記実施例5と同様な方法で、化合物(3-2-1)に誘導した。粗生成物はカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=2:1)で精製した。収率100%。
【0186】
融点(℃);138.0-145.7.
1H―NMR(ppm,CDCl3);7.54(d,1H,J=2.50Hz),7.44-7.41(AA’BB’,2H),7.31(dd,1H,J=8.00,2.50Hz),6.97(dd,1H,J=17.50,10.50Hz),6.91-6.87(AA’BB’,2H),6.85(d,1H,J=8.50Hz),5.80(d,1H,J=18.00Hz),5.41(d,1H,J=11.00Hz),4.99(s,1H),4.76(s,1H).
【0187】
[実施例5] 組成物の調製および液晶性確認
実施例1で合成した式(1-1-8-1)で表される化合物0.0900g(0.2455mmol)、実施例2で合成した式(2-10-1)で表される化合物0.5000g(1.206mmol)、実施例4で合成した式(3-2-1)で表される化合物0.2050g(0.9658mmol)をサンプル瓶に入れ、シクロペンタノン(2.9ml)を加え、固形分を溶解した。この組成物をホットプレート上で偏光顕微鏡観察したところ、78から100℃の範囲でネマチック液晶性を示した。この組成物をS1とする。
【0188】
[実施例6から7] 実施例5と同様に、以下表1に示す組成物を調製した。この表1において、カッコ内はモル比を示す。実施例5も再提示する。
【0189】
【0190】
各組成物の液晶温度範囲を、表2に示す。
【0191】
【0192】
[比較例1から3] 垂直配向剤を含まない組成物の調製および液晶性確認
実施例5と同様に、以下表3に示す組成物を調製した。この表3において、カッコ内はモル%を、カッコの無い個所はモル比が100を示す。
【0193】
【0194】
[実施例8] ガラス基板上での組成物の配向確認
実施例5で調製したS1に、イミダゾール0.0380gおよびTEGOFLOW370(エボニック・ジャパン株式会社から販売)の10%シクロペンタノン溶液10μlを加えた。この組成物をS1Cとする。このS1Cを、ガラス基板(40×40mm、EagleXG、コーニング社製)にスピンコート(回転数700rpm)した。この基板を、90℃のホットプレート上に1時間静置し、組成物を硬化させた。得られた硬化物にタック性はなかった。
【0195】
この基板の偏光顕微鏡観察を行った結果、観察した全ての領域で暗視野を与えた(
図1[実施例8]の偏光顕微鏡写真)。またリタデーション測定において、この硬化物中の骨格分子は垂直配向していることを確認した。
【0196】
[実施例9および10]
S1を、S2およびS3に変更した以外は、実施例8と同様な方法で、組成物が硬化した硬化物が形成されたガラス基板を得た。この硬化物を構成する分子の配向を調べた結果を、以下表4に示す。表には実施例8も再掲する。
【0197】
【0198】
[比較例4]
組成物S1を、R1に変更した以外は、実施例8と同様な方法で、組成物が硬化した硬化物が形成されたガラス基板を得た。硬化物にタック性はなかった。この基板の偏光顕微鏡観察を行った結果、一部の観察領域で光抜けが観察された(
図2)。またリタデーション測定において、大部分の領域で垂直配向していることを確認した。
【0199】
[比較例5および6]
R1を、R2およびR3に変更した以外は、実施例8と同様な方法で、組成物が硬化物が形成されたガラス基板を得た。この硬化物を構成する分子の配向を調べた結果を、以下表5に示す。表には比較例4も再掲する。
【0200】
【0201】
上記実施例8から10および比較例4から6の比較により、組成物へ垂直配向剤を添加することにより、組成物の垂直配向性を改善できることが分かる。すなわち本発明の技術により、基板や材料作製条件が種々変化しても、分子骨格が垂直に配向したエポキシ材料を安定的に得ることが出来る。
【0202】
[実施例11] 組成物S1Cから調整した硬化物の熱伝導率の測定
組成物S1Cを、φ2.4cmのアルミ製容器に入れ、150℃の温度に加温したホットプレート上にて120分間保持し、厚みが0.6mmの円形片を取り出した。この硬化物の熱伝導率は、平面方向と垂直方向で、それぞれ1.07W/m・Kおよび0.69W/m・Kであった。
【0203】
[実施例12から13]
組成物S1Cを、S2CおよびS3Cに代えた以外は、上記実施例11と同様な方法で調製した硬化物の熱伝導率を、表6に示す。表には実施例11も再掲する。
【0204】
【0205】
[実施例14] フィラー入りサンプルの作製
組成物S1Cの0.100g、および窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製PolarTherm PTX-25)0.9000gをそれぞれ量りとってよく混ぜ、ステンレス製板中に挟み、150℃の温度に加温した圧縮成形機((株)井元製作所製IMC-19EC)にて20MPaの圧力をかけて45分間保持し、放熱部材としての厚みが683μmの四角片を取り出した。この放熱部材の熱伝導率は、12.7W/m・Kであった。
【0206】
[実施例15から実施例16]
組成物S1Cに代え、組成物S2CおよびS3Cを使用した以外は、上記実施例14に記載の方法と同様にして放熱部材を調製し、熱伝導率を測定した。結果を表7に示す。表には実施例14も再掲する。
【0207】
【0208】
上記のように、本発明に開示された技術は、高い熱伝導率を与えることが分かる。