(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165711
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】搬送状況表示システム及びこれを備えた原料鉱石の前処理設備
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20221025BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20221025BHJP
B65G 65/42 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B65G43/08 G
C22B1/00 101
B65G65/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071174
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】中村 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝輝
【テーマコード(参考)】
3F027
3F075
4K001
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027BA01
3F027CA07
3F027DA32
3F027EA01
3F027EA02
3F027EA09
3F027FA11
3F075AA07
3F075BA01
3F075BB01
3F075CA09
3F075CB06
3F075CB12
3F075CC01
3F075CC08
4K001AA19
4K001BA02
4K001CA49
(57)【要約】
【課題】 被搬送物の性状やヒューマンエラー等に起因してホッパー内に詰まりが生じたり、機器トラブルが生じたりしたときに現場作業員に迅速かつ確実にその状況を知らせることが可能な搬送状況表示システムを提供する。
【解決手段】 ホッパー5の下端部から供給される例えば水分率20質量%以上50質量%以下のニッケル酸化鉱石等の原料鉱石を搬送するベルトコンベア6において該原料鉱石の搬送が途切れたときにこれを検知して信号を出力する検知器10と、検知器10から出力される該信号により点灯する第1表示灯及びベルトコンベア6の稼働状況を表示する第2表示灯を有する表示部20とからなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパーの下端部から供給される原料鉱石を搬送するベルトコンベアにおいて該原料鉱石の搬送が途切れたときにこれを検知して信号を出力する検知器と、該検知器から出力される該信号により点灯する第1表示灯及び該ベルトコンベアの稼働状況を表示する第2表示灯を有する表示部とからなることを特徴とする搬送状況表示システム。
【請求項2】
前記検知器が、前記ベルトコンベアの上方であって且つ前記ホッパーの下端部の直ぐ下流側の位置において該ベルトコンベアを横切るように延在する棒状部と、該棒状部を回動可能に支持する支持部と、該棒状部から垂下する揺動自在な複数の揺動体と、該揺動体が該ベルトコンベアによって搬送される原料鉱石に当接することで傾くときの傾斜角が所定の角度未満になったことを検知して信号を出力するセンサー部とから構成されること特徴とする、請求項1に記載の搬送状況表示システム。
【請求項3】
前記揺動体の先端と、前記ベルトコンベアのコンベア表面との離間距離が30mm以上70mm以下であり、前記所定の角度が15~30°の範囲内であることを特徴とする、請求項2に記載の搬送状況表示システム。
【請求項4】
前記検知器は、前記揺動体が前記ベルトコンベアの搬送方向とは逆の方向に揺動することを防ぐ弾性体で形成されるストッパーを更に備えていることを特徴とする、請求項2又は3に記載の搬送状況表示システム。
【請求項5】
原料鉱石に含まれる粗大粒子を除去する傾斜した粗スクリーンと、該粗スクリーンを通過した原料鉱石を篩別する振動篩機と、該振動篩機を通過した原料鉱石を一時的に貯留するホッパーと、該ホッパーの下端部から排出される該原料鉱石を搬送するベルトコンベアとから構成される原料鉱石の前処理設備であって、該ベルトコンベアに請求項1~4のいずれか1項に記載の搬送状況表示システムが導入されていることを特徴とする原料鉱石の前処理設備。
【請求項6】
前記ホッパーの下端部に原料鉱石の擦り切り板が備わっており、該擦り切り板の下端部と、前記ベルトコンベアのコンベア表面との離間距離が500mm以上540mm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の原料鉱石の前処理設備。
【請求項7】
前記原料鉱石が、水分率20質量%以上50質量%以下のニッケル酸化鉱石であること特徴とする、請求項5又は6に記載の原料鉱石の前処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法等により処理される原料鉱石の搬送設備において、その搬送状況を表示する搬送状況表示システム及びこれを備えた原料鉱石の前処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル酸化鉱石の湿式製錬法として、HPAL(High Pressure Acid Leaching)法とも称する硫酸を用いた高圧酸浸出法が知られている。この湿式製錬法は、原料のニッケル酸化鉱石から製品のニッケルコバルト混合硫化物を生成するまで一貫して湿式により処理を行うので、還元工程や乾燥工程を有する従来の一般的なニッケル酸化鉱石の製錬方法である乾式製錬法に比べてエネルギー的及びコスト的に有利なプロセスである。また、湿式製錬法はニッケル品位50質量%程度の上記ニッケルコバルト混合硫化物を、ニッケル品位1%程度の低品位ニッケル鉱から効率よく生成できるという利点も有している。
【0003】
上記のHPAL法により処理を行う湿式製錬プラントにおいては、ニッケル酸化鉱石からなる原料鉱石の酸浸出処理時の反応効率を高めるため、粉砕機や篩別機等の複数台の機器をベルトコンベア等の搬送設備を介して連続的に接続した前処理設備に該原料鉱石を導入することで、粒度を段階的に細かくする前処理が行われている。この場合、各機器への原料鉱石の供給が一時的に途絶えたり、逆に過剰に供給されて過負荷状態になったりすると、前処理された鉱石原料を後段の処理工程に安定的に供給することができなくなるため、生産性が低下したり製品の品質が低下したりする。このような問題を防ぐため、ベルトコンベアの前段に被搬送物の投入ホッパーを設けて該投入ホッパー内の粉粒体のレベルを測定したり、ベルトコンベアにおいて被搬送物が搬送されていることを検知する検知器を設けたりする技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、製銑原料の搬送用の連続する2基のベルトコンベアの間に投入ホッパーが設けられた構造の搬送設備の該投入ホッパーの壁部に、収容能力の許容上限位置から斜め下方に向かって延在するバイパス管を設けると共に、このバイパス管の下端側出口の真下に、スプリングで上方に付勢された受け皿を上下方向に移動可能に設ける技術が開示されている。これにより、投入ホッパーの収容能力を超えて過剰に製銑原料が供給された場合は、この過剰な製銑原料はバイパス管を経由して受け皿に収容されるため、受け皿は重力により下方に移動する。これにより、この受け皿に設けられているリミットスイッチストライカーがリミットスイッチを作動させるので、ベルトコンベアの駆動モーターを停止することが可能になる。
【0005】
また、特許文献2には、ベルトコンベアの幅方向中央部に回動式の検知腕を設け、該検知腕が被搬送物によって搬送方向に傾けられているか否かをセンサーで検知することでベルトコンベアにおいて被搬送物が搬送されていることを検知する技術が開示されており、特許文献3には、ベルトコンベアの幅方向の両脇に投光装置と受光装置とをそれぞれ設け、これら装置間を直進する光線を被搬送物が遮るか否かによりベルトコンベアにおいて被搬送物が搬送されていることを検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭57-181718号公報
【特許文献2】特開昭54-027167号公報
【特許文献3】実開昭60-193489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、屋外でストックパイルの状態で保管されている原料鉱石のように、湿り気のある付着性の鉱石を取り扱う場合は、特許文献1の技術ではバイパス管が付着性の鉱石によって閉塞して正常に作動しないおそれがある。また、湿り気のある鉱石はコンベア表面上に均一に広がりにくいため、幅方向の端部に鉱石が偏在した場合は特許文献2の検知腕では検知することができなくなる。特許文献3の技術は湿り気のある鉱石でも検知できると考えられるが、逆に湿り気がほとんどない乾燥した鉱石が搬送されると、搬送時に鉱石から舞い上がった粉塵が投光装置や受光装置の表面に付着して正確に検知できなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記した従来の搬送設備が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、湿式製錬プラントにおいて処理されるニッケル酸化鉱石等の原料鉱石の搬送設備において、被搬送物の性状やヒューマンエラー等に起因してホッパー内に詰まりが生じたり、機器トラブルが生じたりしたときに現場作業員に迅速かつ確実にその状況を知らせることが可能な搬送状況表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る原料鉱石の搬送状況表示システムは、ホッパーの下端部から供給される原料鉱石を搬送するベルトコンベアにおいて該原料鉱石の搬送が途切れたときにこれを検知して信号を出力する検知器と、該検知器から出力される該信号により点灯する第1表示灯及び該ベルトコンベアの稼働状況を表示する第2表示灯を有する表示部とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニッケル酸化鉱石等の原料鉱石の搬送設備において、ホイールローダーの鉱石投入タイミングの遅延等のヒューマンエラーや被搬送物の性状等に起因してホッパー内に詰まりが生じたり機器トラブルが生じたりしたときに、現場作業員に迅速かつ確実にその状況を知らせることが可能になる。これにより、後段の処理工程において原料鉱石の給鉱量が低下する等の問題が及ぶのを最小限に抑えることが可能になる。また、従来必要であったホッパー内の状態を監視する作業員が不要になるので、コストを削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る原料鉱石の搬送状況表示システムを備えた前処理設備が好適に用いられるニッケル酸化鉱石の前処理工程のブロックフロー図である。
【
図2】本発明の実施形態の搬送状況表示システムを備えた前処理設備の模式的な縦断面図である。
【
図3】
図2の搬送状況表示システムを構成する検知器を示す側面図である。
【
図4】
図3の検知器をIV-IV線の矢印の方向から見た断面図である。
【
図5】ホイールローダーの運転員に原料鉱石の投入の要否を知らせるため、
図2の搬送状況表示システムにおいて第1表示部が消灯している状態(a)、及び点灯している状態(b)を示す図である。
【
図6】ホイールローダーの運転員に原料鉱石の投入の要否を知らせるため、本発明の比較例の搬送状況表示方法においてベルトコンベア稼働中の表示灯が点灯しており且つホッパーの監視員が投入許可の合図を出している状態(a)、及びベルトコンベア停止の表示灯が点灯しており且つホッパーの監視員が投入禁止の合図を出している状態(b)を示す図である。
【
図7】
図6に示す搬送状況表示方法において、ホッパーの監視員によるホッパー内部の鉱石量の誤認(a)、及びホッパーの監視員とホイールローダーの運転員との間のコミュニケーション不足(b)によってベルトコンベアが停止する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の搬送状況表示システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。この本発明の実施形態の搬送状況表示システムは、HPAL法により処理を行う湿式製錬プラントにおいて原料として使用されるニッケル酸化鉱石の搬送設備に好適に採用される。HPAL法は、ニッケル酸化鉱石からなる原料鉱石を硫酸と共にオートクレーブに装入して高温高圧下で酸浸出処理を行う浸出工程と、得られたニッケル及びコバルトを含む浸出液を中和処理することで該浸出液に含まれる不純物元素が除去された中和終液を得る中和工程と、微加圧雰囲気下で該中和終液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して亜鉛が除去されたニッケル回収母液を得る浄液工程と、加圧雰囲気下で該ニッケル回収母液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加してニッケルコバルト混合硫化物を生成する硫化工程とから一般的に構成される。
【0013】
上記の湿式製錬プラントにおいて原料として使用される原料鉱石は、酸浸出処理時の反応効率を高めるため、解砕及び分級により細かく粒度調整された後にオートクレーブに装入される。具体的には、
図1に示すように、鉱山から採掘されたニッケル酸化鉱石は、まず粗大粒子除去工程において、例えば目開き300mmの粗スクリーンにホイールローダーによって投入され、該目開き300mmの粗スクリーンを通過できない粗大粒子(300mmオーバーと称する。以下同様)が篩上側に除去されると共に、該スクリーンを通過した粒子(300mmアンダーと称する。以下同様)が篩下側に回収される。
【0014】
次に第1篩別工程において、上記の300mmアンダーは振動篩機に導入され、ここで例えば目開き150mmの第1スクリーンで篩別されることで、該第1スクリーンを通過できない150mmオーバーが篩上側に除去されると共に、該第1スクリーンを通過した150mmアンダーが篩下側に回収される。次に洗浄工程において、上記150mmアンダーはトロンメルと称する回転可能に支持されたドラム型回転式解砕機内に投入され、その回転による撹拌により解砕されながら洗浄水が吹き付けられることで洗浄される。
【0015】
次に第2篩別工程において、上記のドラム型回転式解砕機で解砕及び洗浄された鉱石は湿式の振動篩機に導入され、ここで上方から吹き付けられる工業用水等の洗浄水によって洗浄されながら例えば目開き25mmの第2スクリーンで篩別される。これにより、該第2スクリーンを通過できない25mmオーバーが篩上側に除去されると共に、該第2スクリーンを通過した25mmアンダーが鉱石スラリーの形態で篩下側に回収される。
【0016】
次に第3篩別工程において、上記の25mmアンダーを含む鉱石スラリーは湿式の振動篩機に導入され、ここで上方から吹き付けられる工業用水等の洗浄水によって洗浄されながら例えば目開き1.4mmの第3スクリーンで篩別される。これにより、該第3スクリーンを通過できない1.4mmオーバーが篩上側に除去されると共に、該第3スクリーンを通過した1.4mmアンダーが鉱石スラリーの形態で篩下側に回収される。
【0017】
次に重力沈降工程において、上記の1.4mmアンダーを含む鉱石スラリーは、略円筒形の沈降槽及びその底面に沿って回転するレーキで構成されるシックナーに凝集剤と共に導入され、ここで重力沈降により濃縮されてスラリー濃度が約40%以上の鉱石スラリーとして底部から排出される。このようにして前処理工程で調製された鉱石スラリーは、スラリーポンプで昇圧されて前述した浸出工程のオートクレーブへ送液される。
【0018】
次に、上記の前処理工程のうちの粗大粒子除去工程及び第1篩別工程が行われる前半の前処理設備について
図2を参照しながら詳細に説明する。この
図2に示す前半の前処理設備は、格子状部材又は複数の平行な棒状部材で構成される好適には目開き300mmの傾斜した粗スクリーンからなり、ホイールローダーWによって投入される原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石を分級して粗大物を除去するスタティックグリズリー1と、このスタティックグリズリー1を通過した鉱石原料を下方の機器にガイドするシュート2と、このシュート2によってガイドされた鉱石原料を例えば目開き150mmの振動する第1スクリーンによって篩別する振動篩機3と、上記第1スクリーンの篩上側から排出される150mmオーバーを受入れるオーバーサイズシュート4と、上記第1スクリーンの篩下側の150mmアンダーを一時的に貯留するホッパー5と、このホッパー5の下端部から排出される150mmアンダーを後段の図示しないドラム型回転式解砕機に向けて搬送するベルトコンベア6とから構成される。
【0019】
本発明の実施形態の搬送状況表示システムは、上記のベルトコンベア6において搬送される被搬送物としての150mmアンダーの原料鉱石の搬送が途切れたときにこれを検知して信号を出力する検知器10と、該検知器10から出力される該信号により点灯する第1表示灯及びベルトコンベア6の稼働状況を表示する第2表示灯を有する表示部20とから構成される。以下、これら検知器10及び表示部20から構成される本発明の実施形態の搬送状況表示システムについて詳細に説明する。
【0020】
本発明の実施形態の搬送状況表示システムが導入される上記前処理設備では、一般に水分率20質量%以上50質量%以下の湿り気のあるニッケル酸化鉱石からなる原料鉱石を取り扱うため、振動篩機3の第1スクリーンにおいて目詰まりが生じたり、ホッパー5内でいわゆるブリッジを形成して下端部からスムーズに排出されなかったりすることがある。また、ホッパー5内に一時的に貯留される上記原料鉱石は、底部からの高さが500~1000mmの範囲内に収まっているのが好ましいが、ホイールローダーによる原料鉱石の過剰投入等の原因により、このホッパー5内の高さが1000mmを超えるとホッパー5内で閉塞が生じるおそれがある。
【0021】
上記の振動篩機3での目詰まりやホッパー5内での閉塞が生じるとベルトコンベア6において原料鉱石が良好に搬送されなくなる。そこで、ベルトコンベア6において搬送される原料鉱石の搬送が途切れたときにこれを検知して電気信号を出力する機械式の検知器10をベルトコンベア6に設けることで、間接的に上記の振動篩機3の目詰まりやホッパー5内の閉塞の発生を現場作業員に知らせることができる。
【0022】
具体的には、
図3及び
図4に示すように、検知器10は、ベルトコンベア6の上方であって且つその搬送方向に関してホッパー5の下端部の直ぐ下流側の位置においてベルトコンベア6を横切るように延在する棒状部11と、この棒状部11の両端部を回動可能に支持する支持部12と、この棒状部11から垂下する揺動自在な複数の揺動体13と、これら複数の揺動体13がベルトコンベア6によって搬送される原料鉱石に当接することで傾くときの傾斜角θが所定の角度未満になったことを棒状部11の回動角度により検知するセンサー部14とから構成される。
【0023】
このように揺動体13を備えた棒状部11をホッパー5の下端部からできるだけ近い位置に設置することで、ベルトコンベア6による被搬送物の搬送状態に問題が生じたことを迅速に検知することができるので、後工程の浸出工程以降に問題が及ぶのを最小限に抑えることができる。上記の揺動体13の個数には特に限定はないが、棒状部11の軸方向の略中央部とその両側の計3個からなるのが好ましい。これによりベルトコンベア6上にその幅方向に関して偏って被搬送物が載って搬送される場合でも確実に検知することができる。また全体の重量を軽量化できるので被搬送物との衝撃が和らげられ、揺動体13の摩耗や変形を抑えることが可能になる。
【0024】
揺動体13を3個設ける場合は、
図4に示すように、ベルトコンベア6の有効搬送領域Aをその幅方向に略3等分した各領域A
1、A
2、及びA
3の各々において、その幅方向の略中央部に揺動体13が位置するように互いに離間して取り付けるのが好ましい。これにより、より確実に被搬送物を検知することが可能になる。揺動体13の個数が2個以下ではベルトコンベア6の幅方向の略中央部のみや端部のみに偏った状態で原料鉱石が搬送されると検知されにくくなる。逆に揺動体13の個数が3個を超えると、全体の重量が重くなるのでこれに見合った強度を有する棒状部11や支持部12にする必要があるので高コストになる。
【0025】
上記支持部12は脚部7の上端部から水平に張り出す基台部8の上面に設けられており、この脚部7はベルトコンベア6のローラ群を支持するフレーム6aに取り付けられている。この基台部8は、脚部7に対して上下方向に移動可能な構造であるのが好ましい。これは、例えば脚部7と基台部8とをボルトナットで締結する構造にし、このボルト挿通用の脚部7のボルト穴を上下方向に延在する長孔にしたり、上下方向に複数個設けたりすることで実現できる。
【0026】
このように、基台部8を上下方向に移動可能にすることによって、ベルトコンベア6で搬送される被搬送物の粒度や特性、搬送量等が変更になったときに基台部8の高さを適宜調整することで、揺動体13が被搬送物に当接して傾くときの傾斜角θを好適な角度に設定することができる。なお、この揺動体13の傾斜角θは、15~30°程度が好ましく、20°程度がより好ましい。
【0027】
図4では2個の支持部12で棒状部11の両端を支持する場合が示されているが、これに限定されるものではなく、3個以上の支持部12で棒状部11を支持してもよい。この場合は、支持部12を設ける上記基台部8にL型鋼やC型鋼等の長尺部材を使用し、これをベルトコンベア6の幅方向両側の1対の脚部7の間に架け渡すのが好ましい。これにより、被搬送物に揺動体13が接するときの衝撃で棒状部11が曲がる問題を防ぐことができる。なお、ベルトコンベア6の幅方向の両端部には、被搬送物が落下しないように、1対のサイドプレート9が設けられている。これら1対のサイドプレート9の間の領域が前述した有効搬送領域Aとなる。
【0028】
上記の揺動体13は、少なくともその先端部が、ベルトコンベア6で搬送される原料鉱石に常時接するので、容易に摩耗や変形しないように炭素鋼で形成するのが好ましい。揺動体13の形状は、
図4に示すように一定の幅及び肉厚を有する帯状でもよいが、先端に向かって徐々に幅が狭くなる形状が好ましい。いずれの場合も、揺動体13の先端部は、
図4に示すように、ベルトコンベア6のコンベア表面に対して平行であるのが好ましい。すなわち、一般的にベルトコンベア6の搬送ローラは幅方向両側の回転軸が傾斜するようにフレーム6aに回転可能に取り付けられているので、3個の揺動体13のうち両側の2個は先端部がコンベア表面に沿って傾斜しているのが好ましい。
【0029】
図3に示すように、この揺動体13が被搬送物に接することなく真下に垂れ下がっている状態のときの先端と、ベルトコンベア6のコンベア表面との離間距離D
1は、30mm以上70mm以下が好ましい。この離間距離が30mm未満ではベルトコンベア6のベルトが振動等により浮き上がったときに揺動体13の先端部に接触して変形等が生じるおそれがあり、逆に70mmを超えるとベルトコンベア6で搬送される原料鉱石を検知できなくなるおそれがある。揺動体13には、強度を高めるため、長手方向に延在する板状のリブを設けるのが好ましい。この場合、断面T字状になるように長尺の板状部材からなるリブを揺動体13の幅方向中央部に溶接することにより固定してもよいし、矩形板状部材を断面T字状に折りたたむことでリブを有する揺動体13を一体成形してもよい。
【0030】
図3に示すように、揺動体13はベルトコンベア6によって搬送される被搬送物に当接することによって1点鎖線で示すように紙面右側に傾き、被搬送物の搬送が途切れると実線で示すように真下に垂れ下がる。揺動体13がこの真下に垂れ下がる位置を超えて紙面左側に傾くと、揺動体13が変形したりセンサー部14において誤検知が生じたりするおそれがある。これを防ぐため、揺動体13がベルトコンベア6の搬送方向に関して反対側に傾かないようにストッパー15を設けるのが好ましい。これにより検知器10の信頼性を高めることができる。なお、このストッパー15の材質には特に限定はないが、ゴム等の弾性体が好ましい。
【0031】
また、
図3に示すように、ホッパー5の下端部から排出される原料鉱石によって形成されるコンベア表面上の山の高さを均一化するため、ホッパー5の下端部の少なくともベルトコンベア6の下流側に対応する位置に擦り切り板5aを備えるのが好ましい。この場合、擦り切り板5aの下端部とベルトコンベア6のコンベア表面との離間距離D
2は、500mm以上540mm以下が好ましい。この離間距離D
2が500mm未満ではホッパー5の下端部において湿った原料鉱石が堆積又は圧密しやすくなり、該下端部が閉塞するおそれがあり、逆に540mmを超えるとベルトコンベア6にその搬送能力以上の原料鉱石が積載されやすくなり、ベルトコンベア6の駆動モーターの安全装置が作動してベルトコンベア6が停止するおそれがある。
【0032】
上記のセンサー部14の検知方法には特に限定はなく、接触式や非接触式のセンサーを用いることができ、このセンサー部14から出力される信号によって、表示部20の第1表示灯のON/OFFがコントロールされる。例えばセンサー部14にリミットスイッチを用いる場合は、棒状部11の端部に設けたリミットスイッチストライカーによって、棒状部11の回動の角度に応じてリミットスイッチを作動させたりリミットスイッチから離間させたりすることが可能になる。
【0033】
すなわち、
図5(a)に示すように、ベルトコンベア6によって原料鉱石が安定的に搬送されている場合は、検知器10の揺動体13が搬送方向に傾斜角θで傾くと共に、棒状部11が同じ角度θだけ回動するので、棒状部11に設けたリミットスイッチストライカーをリミットスイッチから離間させて表示部20の第1表示灯には信号を出力させない状態を維持することができる。この場合は、第1表示灯は消灯したままである。
【0034】
一方、
図5(b)に示すように、ベルトコンベア6による原料鉱石の搬送が途切れた場合は、検知器10の揺動体13が真下に垂れ下がるので、棒状部11に設けたリミットスイッチストライカーをリミットスイッチに当接させて表示部20の第1表示灯に信号を出力させることができる。この場合は第1表示灯が点灯するので、ホイールローダーWの運転員はベルトコンベア6による原料鉱石の搬送が途切れていること、すなわちホッパー5内が空になっていることを知るので、スタティックグリズリー1への原料鉱石の投入を速やかに行うことができる。
【0035】
上記の第1表示灯のON/OFFのコントロールでは、ベルトコンベア6による原料鉱石の搬送中に第1表示灯を点灯させるものではないので、ホッパー内に原料鉱石を過剰に投入する問題を防ぐことができる。すなわち、ベルトコンベア6による原料鉱石の搬送が途切れたときに第1表示灯を消灯するようにすると、第1表示灯が故障により消灯した際にホイールローダーWの運転員が原料鉱石をスタティックグリズリー1に投入し続けるおそれがある。なお、この第1表示灯には回転灯を用いるのが好ましく、その色は後述する第2表示灯の許可表示灯や禁止表示灯の色とは異なることが望ましい。
【0036】
表示部20は、上記の第1表示灯に加えて、ベルトコンベア6の稼働状態を表示する許可表示灯及び禁止表示灯からなる第2表示灯を有している。前者の許可表示灯は、ベルトコンベア6が稼働しているときに例えば青色に点灯する表示灯である。一方、後者の禁止表示灯は、ベルトコンベア6が何らかの原因で運転停止したときに例えば赤色に点灯する表示灯である。ホイールローダーWの運転員は、下記表1に示すように、第1表示灯(回転灯)の点灯又は消灯に加えて、第2表示灯のこれら許可表示灯及び禁止表示灯の点灯状態をも参考にしてスタティックグリズリー1への原料鉱石の投入の要否を判断する。
【0037】
【0038】
上記表1に示すように、ホイールローダーWの運転員は、許可表示灯が点灯し、禁止表示灯が消灯し、回転灯が点灯しているときのモード1においてのみスタティックグリズリー1に原料鉱石を投入する。モード2は許可表示灯及び禁止表示灯はモード1と同じであるが、回転灯が消灯しているのでホッパー5がオーバーフローすることのないように投入の準備を行うだけに留める。モード3及び4は、ベルトコンベア6の稼働が何らかの原因で停止しているので、回転灯の点灯、消灯に関係なく投入作業は行わないようにする。次に、実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例0039】
(比較例)
原料鉱石に対してHPAL法により処理を行う湿式製錬プラントにおいて、ストックパイルの状態で屋外に保管されている原料鉱石のニッケル酸化鉱石を前処理設備で解砕及び分級するため、ホイールローダーを用いて前処理設備のスタティックグリズリーに投入した。その際、
図6(a)、(b)に示すように、ホッパー5の内部の状態及びベルトコンベア6上の原料鉱石の搬送状態を作業員Oによって目視にて確認させ、その確認結果に基づいてホイールローダーWの運転員に投入の許可又は禁止を指示させた。
【0040】
すなわち、
図6(a)に示すように、ベルトコンベア6による原料鉱石の搬送が途切れた場合は「投入許可」の掲示板を上げ、
図6(b)に示すようにベルトコンベア6によって原料鉱石が連続的に搬送されている場合は「投入禁止」の掲示板を上げさせた。これは、投入済みの原料鉱石が全てホッパー5から排出されてベルトコンベア6による搬出が途切れた時点でホイールローダーWの運転員に原料鉱石を投入することを指示することを意味している。
【0041】
ホイールローダーWの運転員には上記の作業員Oの「投入許可」又は「投入禁止」の合図のほか、ホッパー5の横に設置されている原料鉱石の投入許可又は投入禁止を表示する表示灯の確認をも行った上で原料鉱石の投入又は停止を判断させた。この投入許可の表示灯は、
図6(a)に示すようにベルトコンベア6の稼働中は投入許可の表示灯(青色)が点灯し、
図6(b)に示すようにベルトコンベア6の停止時は投入禁止の表示灯(赤色)が点灯するようにした。
【0042】
その結果、
図7(a)に示すように作業員Oのホッパー内部の原料鉱石の状態の目視による確認ミスや、
図7(b)に示すように作業員OとホイールローダーWの運転員との間のコミュニケーション不足等に起因するヒューマンエラーにより、ホッパー5内及びベルトコンベア6上に原料鉱石が残存する状況であるにもかかわらず更にホイールローダーWによって原料鉱石を投入したことにより、原料鉱石がホッパー5内で過剰に堆積し、その結果、ベルトコンベア6が過負荷になり安全装置が働いて停止する事態が発生した。このベルトコンベア6の再稼働のため、ホイールローダーWによる運搬を停止し、ホッパー5内の原料鉱石を人手により取り出す作業が必要になったため、後工程の浸出工程以降の処理に影響が及び、湿式製錬プラントの生産量が低下した。
【0043】
(実施例)
上記の比較例の湿式製錬プラントの前処理設備に、
図2に示すような検知器10と表示部20とからなる搬送状況表示システムを導入し、その表示部20によって表示される上記表1に示すモード1~4に基づいてホイールローダーWの運転員にスタティックグリズリー1への原料鉱石の投入を行わせた。なお、検知器10には、
図4に示すような幅50mmの炭素鋼からなる帯状の3個の揺動体13が互いに500mm離間して棒状部11から垂下する構造のものを用いた。各揺動体13の先端部とベルトコンベア6のコンベア表面とは50mm離間するように棒状部11の高さを調整し、揺動体13の傾斜角度θが20°未満になったときに表示部20に信号を出力するようにした。また、表示部20の第1表示灯にはパトライト(登録商標)を採用し、第2表示灯は比較例の投入許可又は投入禁止を表示する表示灯をそのまま採用した。
【0044】
その結果、原料鉱石の投入間隔は平均85秒となり、下記表2に示すように上記の比較例の作業員Oによる指示に基づく投入の場合の投入間隔の平均116秒に比べて約30秒短縮できた。また、ヒューマンエラーによるホッパー5への原料鉱石の過剰投入によるホッパー5の閉塞の問題が生じなくなった。なお、比較例の投入No.6では作業員Oの指示ミスにより投入間隔が50秒となり、ホッパー5が閉塞した。
【0045】