(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165771
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】成形体及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/56 20060101AFI20221025BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B29C43/56
B29C43/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071259
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】502391079
【氏名又は名称】久慈琥珀株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(72)【発明者】
【氏名】新田 久男
(72)【発明者】
【氏名】清水 友治
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AC01
4F204AF16
4F204FA01
4F204FB01
4F204FE30
4F204FF01
4F204FH07
4F204FN11
(57)【要約】
【課題】 異なる材質のものを用いることなく内部に一般部と異なる色部分が見えるようにし、しかも、一体性を損なうことのない成形体を提供する。
【解決手段】 樹脂の粉粒体を加熱及び加圧して成形されるとともに内部に粉粒体が成形前のレーザ光の照射により一般部Saと異なる色に変色して形成される変色部Sbを有した透光性の成形体Sであり、その製造方法は、ダイ及びパンチを備えた成形型を用い、粉粒体を所要量に分割した分割粉粒体をダイ内に順次投入する粉粒体投入工程と、先に投入された分割粉粒体の上面を構成する粉粒体の一部若しくは全部にレーザ光を照射して変色させるレーザ光照射工程と、ダイ内に投入され積層された分割粉粒体の積層体を加熱しながら加圧して一体化する加熱加圧工程とを備えた構成としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂の粉粒体を加熱及び加圧して成形される透光性の成形体において、
内部に上記粉粒体が成形前のレーザ光の照射により一般部と異なる色に変色して形成される変色部を有したことを特徴とする成形体。
【請求項2】
上記粉粒体は天然樹脂の化石である琥珀であることを特徴とする請求項1記載の成形体。
【請求項3】
樹脂の粉粒体を加熱及び加圧して成形されるとともに内部に上記粉粒体が成形前のレーザ光の照射により一般部と異なる色に変色して形成される変色部を有した透光性の成形体を製造する成形体の製造方法であって、
上記粉粒体が投入され加熱可能なダイ及び該ダイ内に挿入されて投入された粉粒体を加圧成形するパンチを備えた成形型を用い、
用いる粉粒体を所要量に分割した分割粉粒体を上記ダイ内に順次投入する粉粒体投入工程と、
上記ダイに先に投入された分割粉粒体に対して後から投入されて積層される分割粉粒体の当該後から投入される分割粉粒体の投入前に、上記先に投入された分割粉粒体の上面を構成する粉粒体の一部若しくは全部に、レーザ光を照射して変色させるレーザ光照射工程と、
上記ダイ内に投入され積層された分割粉粒体の積層体を加熱しながら加圧して一体化する加熱加圧工程とを備えたことを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項4】
上記レーザ光照射工程の前に、該レーザ光照射工程でレーザ光が照射される分割粉粒体の上面を整面する整面工程を備えたことを特徴とする請求項3記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
上記粉粒体として、その平均粒径が5mm以下のものを用いたことを特徴とする請求項3または4記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
上記粉粒体は天然樹脂の化石である琥珀であることを特徴とする請求項3乃至5何れかに記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
上記加熱加圧工程において、成形温度Tを、180℃≦T≦270℃にし、成形圧力Pを、30MPa≦P≦60MPaにしたことを特徴とする請求項6記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
上記加熱加圧工程において、加熱加圧保持時間tを、2分≦tにしたことを特徴とする請求項7記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然樹脂の化石である琥珀を含む広義の意味での樹脂の粉粒体を加熱及び加圧して成形した透明若しくは半透明の成形体及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の成形体としては、例えば、特公平6-20765号公報(特許文献1),特許第6384807号公報(特許文献2)等に掲載された琥珀の成形体が知られている。一般に、琥珀の加工において、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる切削屑や製品から分離した小片は、そのままでは製品化することがほとんどできないことから、これを、大きな塊にし、再生琥珀として再利用することを行っている。
【0003】
この再生琥珀の製造方法としては、例えば、円柱状の成形体の場合で説明すると、上記の特許文献1の技術においては、所要量の粉粒体を筒状のダイに供給し、この供給された粉粒体を加熱しながらパンチで加圧して成形し、次に、この加熱,加圧成形した成形体の上に、所定量の粉粒体を筒状のダイに供給し、この供給された粉粒体を加熱しながらパンチで加圧して成形する。即ち、この製造方法においては、所定量の粉粒体(「単位体」という)をダイに順次供給し、この供給された単位体相互を連続させつつ、先に供給した単位体から順に加熱しながら加圧して一体化し、所要長さの成形体にしている。この琥珀の成形体は、適宜切断,研磨加工するなどして、ネックレス等の身飾り品をはじめ種々の宝飾品、装飾品等として用いられる。
【0004】
ところで、この成形体においては、色相が所謂琥珀色といわれる茶系の色が主流であるが、全体に色が同じようになってしまい、装飾性に劣るという問題があった。これを解決するために、例えば、単位体と単位体の間に、琥珀とは材質の異なる、例えば、金箔,銀箔,貝,ラメ,マニキュア,ホログラムなどの飾り部材を介装して単位体同士を一体化し、成形体の内部に成形体の一般部とは異なる飾り部材の色が模様として見えるようにし、装飾性を向上させるようにすることが考えられる(例えば、特許第5069853号公報(特許文献3)等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6-20765号公報
【特許文献2】特許第6384807号公報
【特許文献3】特許第5069853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このように成形体の内部に材質の異なる飾り部材を介装する場合、逐一、別の材質のものを用意しなければならないので、部品点数が多くなって製造が煩雑になるという問題がある。また、材質の異なる部材が介装されるので、単位体と単位体との接合が不十分になって、一体性を損ね、この接合部から割れが生じるなど強度的に弱くなってしまうという問題もある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、異なる材質のものを用いることなく内部に一般部と異なる色部分が見えるようにし、しかも、一体性を損なうことのない成形体及びこれを製造する成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の成形体は、樹脂の粉粒体を加熱及び加圧して成形される透光性の成形体において、
内部に上記粉粒体が成形前のレーザ光の照射により一般部と異なる色に変色して形成される変色部を有した構成としている。
【0009】
ここで、樹脂とは、天然樹脂の化石である琥珀を含む広義の意味であり、また、加熱及び加圧成形により透明若しくは半透明になって一体化される熱可塑性の材質のものをいう。変色部は、成形前の粉粒体に対するレーザ光の照射により、粉粒体が溶融する炭化現象等の熱変性により形成され、レーザ光の照射条件によって濃淡が調整されている。変色部は、例えば、文字,図形,記号,絵,模様等として形成することができる。
【0010】
これにより、変色部は一体化される樹脂そのもので構成されるので、逐一別の材質のものを用意する必要がなく、それだけ部品点数を減らして製造を容易にすることができる。また、材質の異なる部材が介装されることがないので、一体性を損ねることがなく、強度を向上させることができる。即ち、異なる材質のものを用いることなく内部に一般部と異なる色部分が見え、しかも、一体性を損なうことのない新規な成形体を提供することができる。この成形体は、そのまま、あるいは、切削や研磨等の二次加工を施して、ネックレス等の身飾り品をはじめ種々の宝飾品、装飾品等として用いることができる。
【0011】
そして、必要に応じ、上記粉粒体は天然樹脂の化石である琥珀である構成としている。一般に、琥珀は、松柏科植物等の植物の樹脂の化石であり、その性質は、非晶質であり、約150~200℃で軟化し、300℃以上で、ガスを発生して変色して融解し、やがて燃焼する。そしてこの琥珀は、大きさや透明度、色等により、アクセサリー,置物,その他の装飾品等に夫々加工されている。ところで、一般に、琥珀の加工において、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる切削屑や製品から分離した小片は、そのままでは製品化することがほとんどできないことから、これを、大きな塊にし、再生琥珀として再利用することを行っている。本発明においては、粉粒体として、この加工の際に生じる切削屑や製品から分離した小片を用い、また、これを粉砕したものを用いることができる。粉粒体は小片も含む概念である。単に成形した再生琥珀としてではなく、付加価値のある再生琥珀として、利用の用に供することができる。
【0012】
また、上記目的を達成するための本発明の成形体の製造方法は、樹脂の粉粒体を加熱及び加圧して成形されるとともに内部に上記粉粒体が成形前のレーザ光の照射により一般部と異なる色に変色して形成される変色部を有した透光性の成形体を製造する成形体の製造方法であって、
上記粉粒体が投入され加熱可能なダイ及び該ダイ内に挿入されて投入された粉粒体を加圧成形するパンチを備えた成形型を用い、
用いる粉粒体を所要量に分割した分割粉粒体を上記ダイ内に順次投入する粉粒体投入工程と、
上記ダイに先に投入された分割粉粒体に対して後から投入されて積層される分割粉粒体の当該後から投入される分割粉粒体の投入前に、上記先に投入された分割粉粒体の上面を構成する粉粒体の一部若しくは全部に、レーザ光を照射して変色させるレーザ光照射工程と、
上記ダイ内に投入され積層された分割粉粒体の積層体を加熱しながら加圧して一体化する加熱加圧工程とを備えた構成としている。
【0013】
この構成において、変色部を一層設ける場合には、「粉粒体投入工程→レーザ光照射工程→粉粒体投入工程→加熱加圧工程」の順となる。また、変色部を複数層設ける場合には、「粉粒体投入工程→レーザ光照射工程→粉粒体投入工程→レーザ光照射工程→・・・・・・→粉粒体投入工程→加熱加圧工程」となる。即ち、変色部をn層設ける場合、粉粒体投入工程は、レーザ光照射工程を挟んで(n+1)回行われる。言い換えれば、「粉粒体投入工程→レーザ光照射工程」を変色部の層の数繰り返し行い、最後に、「粉粒体投入工程→加熱加圧工程」により全体を成形する。
【0014】
これにより成形体を製造するときは、ここでは、変色部を一層設ける場合で説明すると、先ず、粉粒体投入工程により、用いる粉粒体を所要量に分割した分割粉粒体をダイ内に投入する。次に、レーザ光照射工程により、先に投入された分割粉粒体の上面を構成する粉粒体の一部若しくは全部に、レーザ光を照射して変色させ、変色部を形成する。この際、レーザ光に照射された粉粒体は、溶融させられて炭化現象等の熱変性により変色していく。変色部は、レーザ光の照射条件によって濃淡を調整することができる。変色部は、例えば、文字,図形,記号,絵,模様等として形成することができる。この場合、変色部は粉粒体の樹脂そのもので構成されるので、逐一別の材質のものを用意する必要がなく、それだけ部品点数を減らして製造を容易にすることができる。
【0015】
次に、粉粒体投入工程により、ダイに先に投入されレーザ照射により上面に変色部が形成された分割粉粒体に対して、残りの分割粉粒体を投入して積層する。その後、加熱加圧工程で、全体を成形する。この場合、ダイに先に投入された分割粉粒体は加熱加圧成形されていないので、また、変色部も同じ材質の樹脂からなるので、後から投入される分割粉粒体と良く馴染んで一体化していく。これにより、成形体が製造される。
【0016】
このように製造された成形体においては、上述もしたように、変色部は一体化される樹脂そのもので構成され、材質の異なる別の部材が介装されることがないので、一体性を損ねることがなく、強度を向上させることができる。即ち、異なる材質のものを用いることなく内部に一般部と異なる色部分が見え、しかも、一体性を損なうことのない新規な成形体を提供することができる。この成形体は、そのまま、あるいは、切削や研磨等の二次加工を施して、ネックレス等の身飾り品をはじめ種々の宝飾品、装飾品等として用いることができる。
【0017】
そして、必要に応じ、上記レーザ光照射工程の前に、該レーザ光照射工程でレーザ光が照射される分割粉粒体の上面を整面する整面工程を備えた構成としている。整面工程は、ダイを加熱することなく、パンチで行うことができる。パンチの加圧力は、加熱加圧工程の加圧力より低くて良い。また、パンチ以外の例えばへら様のもので上面を均すようにしても良い。これにより、レーザ光の照射面である先に投入した分割粉粒体の上面をある程度平面にすることができ、レーザ光による変色部の形成を確実に行わせることができる。
【0018】
この場合、必要に応じ、上記粉粒体として、その平均粒径が5mm以下のものを用いた構成としている。2mm以下,1mm以下,500μm以下,300μm以下,200μm以下,100μm以下等、適宜設定してよい。粒子が細かくなるほどレーザ光による変色を緻密に行うことができる。
【0019】
また、必要に応じ、上記粉粒体は天然樹脂の化石である琥珀である構成としている。上述もしたように、一般に、琥珀は、松柏科植物等の植物の樹脂の化石であり、その性質は、非晶質であり、約150~200℃で軟化し、300℃以上で、ガスを発生して変色して融解し、やがて燃焼する。そしてこの琥珀は、大きさや透明度、色等により、アクセサリー,置物,その他の装飾品等に夫々加工されている。ところで、一般に、琥珀の加工において、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる切削屑や製品から分離した小片は、そのままでは製品化することがほとんどできないことから、これを、大きな塊にし、再生琥珀として再利用することを行っている。本発明においては、粉粒体として、この加工の際に生じる切削屑や製品から分離した小片を粉砕したものを用いることができ、単に成形した再生琥珀としてではなく、付加価値のある再生琥珀として、利用の用に供することができる。
【0020】
そして、必要に応じ、上記加熱加圧工程において、成形温度Tを、180℃≦T≦270℃にし、成形圧力Pを、30MPa≦P≦60MPaにした構成としている。琥珀の粉粒体を確実に強固に結合させることができる。特に、内部の変色部を、視覚的に一般部と明瞭に区別できるように一体化することができる。
【0021】
この場合、上記加熱加圧工程において、加熱加圧保持時間tを、2分≦tにした構成としている。例えば、10分,30分,60分,90分等適宜に設定することができる。2分を下回ると、粒子の結合が弱くなる。これにより、粉粒体をより一層確実に強固に結合させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、成形体において、変色部は一体化される樹脂そのもので構成されるので、逐一別の材質のものを用意する必要がなく、それだけ部品点数を減らして製造を容易にすることができる。また、材質の異なる部材が介装されることがないので、一体性を損ねることがなく、強度を向上させることができる。即ち、異なる材質のものを用いることなく内部に一般部と異なる色部分が見え、しかも、一体性を損なうことのない新規な成形体を提供することができる。この成形体は、そのまま、あるいは、切削や研磨等の二次加工を施して、ネックレス等の身飾り品をはじめ種々の宝飾品、装飾品等として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係る成形体を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る成形体の製造方法において、先の粉粒体を投入する粉粒体投入工程を示し、(a)はダイに分割粉粒体を投入する状態を示す図、(b)は分割粉粒体が投入された状態を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る成形体の製造方法を示し、(a)はレーザ光照射工程を示す図、(b)は粉粒体投入工程においてダイに後の分割粉粒体を投入する状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る成形体の製造方法を示し、(a)はダイに後の分割粉粒体が投入された状態を示す図、(b)は加熱加圧工程を示す図である。
【
図5】本発明の別の実施の形態に係る成形体の製造方法において、加熱加圧工程の状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る成形体において、変色部の態様例を示す図(a)(b)(c)(d)(e)(f)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る成形体及び成形体の製造方法について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る成形体Sは、樹脂の粉粒体F(
図2)を加熱及び加圧して成形される透光性の成形体Sであり、円盤状に形成されている。粉粒体Fは天然樹脂の化石である琥珀である。そして、この成形体Sは、内部に粉粒体Fが成形前のレーザ光の照射により一般部Saと異なる色に変色して形成される変色部Sbを一層有して形成されている。
【0025】
次に、
図2乃至
図4を用い、上記の本発明の実施の形態に係る成形体Sの製造方法について説明する。一般に、琥珀は、樹脂の化石であり、その性質は、非晶質であり、約150~200℃で軟化し、300℃以上で、ガスを発生して変色して融解し、やがて燃焼する。この琥珀からなる粉粒体Fとしては、琥珀加工において、加工に供しない小さい琥珀、あるいは、加工の際に生じる切削屑や製品から分離した小片をそのまま用い、あるいは、周知の粉砕機等を使用して粉砕したものを用いることができる。実施の形態に用いる琥珀の粉粒体Fとしては、その平均粒径が5mm以下のものを用いた構成としている。2mm以下,1mm以下,500μm以下,300μm以下,200μm以下,100μm以下等、適宜設定してよい。実施の形態では、80μm以下のものを用いた。
【0026】
実施の形態で用いる成形型Mは、粉粒体Fが投入され加熱可能に形成され成形体Sの外周を成形する上下方向に軸線を有した筒状のダイ1と、ダイ1内に挿入されて投入された粉粒体Fを加圧成形するパンチとを備えて構成されている。パンチとしては、ダイ1に対して進退動可能に挿入され成形体Sの下面を成形する下パンチ2と、ダイ1に対して進退動可能に挿入され成形体Sの上面を成形する上パンチ3とを備えて構成されている。
【0027】
また、図示しないが、この成形型Mは、下パンチ2及び上パンチ3を成形方向に相対的に押圧する例えば油圧駆動型の押圧機構を備えている。また、ダイ1を介してダイ1内の粉粒体Fを加熱するヒータが備えられている。
【0028】
実施の形態に係る製造方法は、用いる粉粒体Fを所要量に2分割しており、分割した一方の分割粉粒体F(A)をダイ1内に投入する第1粉粒体投入工程(1)と、第1粉粒体投入工程で投入された分割粉粒体Fの上面を整面する整面工程(2)と、ダイ1に先に投入された分割粉粒体F(A)の上面を構成する粉粒体Fの一部若しくは全部に、レーザ光を照射して変色させるレーザ光照射工程(3)と、分割した他方の分割粉粒体F(B)をダイ1内に投入する第2粉粒体投入工程(4)と、ダイ1内に投入され積層された分割粉粒体Fの積層体を加熱しながら加圧して一体化する加熱加圧工程(5)とを備えて構成されている。以下、各工程について詳しく説明する。
【0029】
(1)第1粉粒体投入工程
図2(a)(b)に示すように、分割した一方の分割粉粒体F(A)をダイ1内に投入する。
【0030】
(2)整面工程
図2(b)に示すように、第1粉粒体投入工程で投入された分割粉粒体F(A)の上面を整面する。ダイ1を加熱することなく、上パンチ3で行うことができる。パンチの加圧力は、加熱加圧工程の加圧力より低くて良い。また、上パンチ3以外の例えばへら様のもので上面を均すようにしても良い。これにより、レーザ光の照射面である先に投入した分割粉粒体F(A)の上面をある程度平面にすることができる。
【0031】
(3)レーザ光照射工程
図3(a)に示すように、ダイ1に先に投入された分割粉粒体Fの上面を構成する粉粒体Fの一部若しくは全部に、レーザ照射装置10からのレーザ光を照射して変色させ、変色部Sbを形成する。この際、レーザ光に照射された粉粒体Fは、溶融させられて炭化現象等の熱変性により変色していく。変色部Sbは、レーザ光の照射条件によって濃淡を調整することができる。
【0032】
レーザ照射装置10としては、適宜の装置を用いることができる。レーザ光の照射条件としては、レーザ光の出力、スキャンの速度、スキャンの回数、パルスの周波数、焦点等の設定値を適宜変えて行う。
【0033】
変色部Sbは、例えば、文字,図形,記号,絵,模様等として形成することができる。この場合、変色部Sbは粉粒体Fの樹脂そのもので構成されるので、逐一別の材質のものを用意する必要がなく、それだけ部品点数を減らして製造を容易にすることができる。また、整面工程で分割粉粒体F(A)の上面がある程度平面になっているので、レーザ光による変色部Sbの形成を確実に行わせることができる。また、粉粒体Fの平均粒径が80μm以下ということもあって、レーザ光による変色を緻密に行うことができる。
【0034】
(4)第2粉粒体投入工程
図3(b)及び
図4(a)に示すように、ダイ1に先に投入されレーザ照射により上面に変色部Sbが形成された分割粉粒体F(A)に対して、残りの分割粉粒体F(B)を投入して積層する。
【0035】
(5)加熱加圧工程
図4(b)に示すように、加熱加圧工程で、全体を成形する。この加熱加圧工程において、成形温度Tを、180℃≦T≦270℃にし、成形圧力Pを、30MPa≦P≦60MPaにしている。また、加熱加圧保持時間tを、2分≦tにした構成としている。例えば、10分,30分,60分,90分等適宜に設定することができる。2分を下回ると、粒子の結合が弱くなる。この場合、ダイ1に先に投入された分割粉粒体F(A)は加熱加圧成形されていないので、また、変色部Sbも同じ材質の樹脂からなるので、後から投入される分割粉粒体F(B)と良く馴染んで一体化していく。また、琥珀の粉粒体Fを確実に強固に結合させることができる。特に、内部の変色部Sbを、視覚的に一般部Saと明瞭に区別できるように一体化することができる。これにより、成形体Sが製造される。
【0036】
このように製造された成形体Sにおいては、
図1に示すように、変色部Sbは一体化される樹脂そのもので構成され、材質の異なる別の部材が介装されることがないので、一体性を損ねることがなく、強度を向上させることができる。即ち、異なる材質のものを用いることなく内部に一般部Saと異なる色部分が見え、しかも、一体性を損なうことのない新規な成形体Sを提供することができる。この成形体Sは、そのまま、あるいは、切削や研磨等の二次加工を施して、ネックレス等の身飾り品をはじめ種々の宝飾品、装飾品等として用いることができる。特に、成形体Sは琥珀なので、付加価値のある再生琥珀として、利用の用に供することができる。
【0037】
図5には、別の実施の形態に係る成形体S及び成形体Sの製造方法を示している。この成形体Sは、内部に変色部Sbを所定間隔を隔てて複数層(実施の形態では2層)設けたものである。その製造方法は、「粉粒体投入工程→レーザ光照射工程→粉粒体投入工程→レーザ光照射工程」の後、最後に「粉粒体投入工程→加熱加圧工程」により全体を成形する。変色部Sbの層の数はこれに限定されない。即ち、変色部Sbをn層設ける場合、粉粒体投入工程は、レーザ光照射工程を挟んで(n+1)回行い、言い換えれば、「粉粒体投入工程→レーザ光照射工程」を変色部Sbの層の数繰り返し行い、最後に、「粉粒体投入工程→加熱加圧工程」により全体を成形する。
【0038】
図6には、変色部Sbの態様例を示す。
図6(a)(b)(c)に示す変色部Sbは、夫々、同じ塗りつぶしの図形であるが、変色部Sbの濃度が異なるものを示す。
図6(a)は濃度が濃い変色部Sb、
図6(b)は
図6(a)の変色部Sbより濃度が薄い変色部Sb、
図6(c)は
図6(b)の変色部Sbより更に濃度が薄い変色部Sbを示す。
図6(d)は1つの塗りつぶしの図形であるが、濃淡(グラディエーション)を設けたものである。
図6(e)は複数の塗りつぶしの図形から構成される変色部Sbを示す。
図6(f)は1つの輪郭線だけで描いた図形から構成される変色部Sbを示す。
【0039】
尚、変色部Sbの構成は上述したものに限定されるものではなく、種々変更して差支えない。また、上記実施の形態に係る製造方法では、整面工程を設けているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、特に設けなくても良く、適宜変更して差支えない。本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
S 成形体
Sa 一般部
Sb 変色部
F 粉粒体
F(A) 一方の分割粉粒体
F(B) 他方の分割粉粒体
M 成形型
1 ダイ
2 下パンチ
3 上パンチ
10 レーザ照射装置
(1)第1粉粒体投入工程
(2)整面工程
(3)レーザ光照射工程
(4)第2粉粒体投入工程
(5)加熱加圧工程