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特開2022-165800ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物及びネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法
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  • 特開-ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物及びネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165800
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物及びネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/02 20060101AFI20221025BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20221025BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C12N5/02
C12N5/071
A61K45/00
A61P35/00
A61P15/00
A61K31/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071308
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一昭
(72)【発明者】
【氏名】モハメド エルバダウィー
(72)【発明者】
【氏名】山本 晴
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BA22
4B065BB04
4B065BB19
4B065CA43
4B065CA46
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C206AA02
4C206JB16
4C206KA01
4C206NA20
4C206ZA81
4C206ZB26
(57)【要約】
【課題】ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの培養に最適な培地組成物を提供する。
【解決手段】上記組成物は、GF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物。
【請求項2】
更にWntアゴニスト、BMP阻害剤、EGF及びTGFβ阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする請求項1記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物。
【請求項3】
上記成分はFGF10であることを特徴とする請求項1記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物。
【請求項4】
FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地。
【請求項5】
更にWntアゴニスト、BMP阻害剤、EGF及びTGFβ阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする請求項4記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地。
【請求項6】
上記成分はFGF10であることを特徴とする請求項4記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地。
【請求項7】
ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを、請求項4乃至6いずれか一項記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地に培養する、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法。
【請求項8】
上記ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを、乳腺癌罹患ネコから採取した乳腺組織から作製する工程を更に含むことを特徴とする請求項7記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法。
【請求項9】
乳腺癌に罹患したネコから採取した乳腺からネコ乳腺腫瘍オルガノイドを作製する工程と、
請求項4乃至6いずれか一項記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地にて、上記ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する工程と、
培養で得られたネコ乳腺腫瘍オルガノイドを薬剤の存在下で更に培養し、薬剤感受性を測定する工程とを含む、
乳腺癌罹患ネコの治療方法。
【請求項10】
上記薬剤感受性を測定した結果、薬剤感受性の高かった薬剤を乳腺癌罹患ネコに投薬する工程を更に含む請求項9記載の治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、猫の乳腺腫瘍から作製されたオルガノイドを培養するための培地組成物及び当該培地組成物を用いたネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元オルガノイド培養法(非特許文献1:Sato et al., Nature, 2009)は、様々な臓器から単離した上皮細胞をマトリゲルと混合し、Wnt, Noggin, R-spondinなどの幹細胞性を高める因子を含む特殊な培地で培養することで三次元の上皮組織構造を培養ディッシュ上で再現できる方法として開発された。近年、ヒトの大腸がんや膵臓がんなど患者の手術検体を用いたオルガノイド培養法が確立され、摘出直後の組織との構造の類似性、遺伝子変異の相関が示され(非特許文献2:Wetering et al., Cell, 2015及び非特許文献3:Boj et al., Cell, 2015)、個別化医療にとって有用なツールとなることも期待されている。
【0003】
また、膀胱がん罹患犬の尿サンプルを用いて非侵襲的に膀胱がんオルガノイドを培養する技術が開発され、作製したオルガノイドが生体内の膀胱がんの特徴を三次元的に再現し、免疫不全マウス体内での腫瘍の再形成能試験や、患畜個々の抗がん剤感受性試験へ応用可能であることが明らかにされている(非特許文献4:Elbadawy and Usui et al., Cancer Sci. 2019)。
【0004】
ところで、乳腺腫瘍は、猫の腫瘍の中でも約17%を占め3番目に多く、また高悪性度と低生存率の悪性腫瘍として知られている。乳腺腫瘍は再発率も高いため、治療が長期にわたり患者への身体的負担及び飼い主における経済的な負担が問題になっている。現在、猫の乳腺腫瘍における治療法は、外科療法が第1選択であり、悪性度の高い症例や外科手術が不適応な症例、緩和ケアに化学療法が用いられるが、前述のように再発率も高いことから、外科的摘出後の抗がん剤療法が推奨されている。
【0005】
抗がん剤は獣医師が経験的に選択することが多く、確立された治療プロトコルは存在していない。一方で、ネコの乳腺腫瘍について市販の培養細胞がないため、新たな治療法につながるような研究は足踏みをしている状態であり、有効な抗がん剤治療法の確立が喫緊の課題となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sato et al., Nature, 459(7244):262-5, 2009
【非特許文献2】Wetering et al., Cell, 161(4):933-45, 2015
【非特許文献3】Boj et al., Cell, 160(1-2):324-38, 2015
【非特許文献4】Elbadawy and Usui et al., Cancer Sci. 110(9):2806-2821, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、着目されているオルガノイド培養法とは、ゲルと幹細胞を刺激して増殖を促進するような培養液を使用することで、細胞の多様性や幹細胞性を維持して生体内の微小環境を再現できる方法である。本方法を適用して得られるがんオルガノイドを、がんの基礎や臨床研究に利用することが近年注目されているが、猫の乳腺腫瘍においてオルガノイド培養法は確立されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、乳腺腫瘍罹患ネコの手術によって摘出された乳腺腫瘍組織を用いてネコ乳腺腫瘍オルガノイドを作製し、当該ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの培養に最適な培地組成物、当該ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明者らが鋭意検討した結果、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する際に特定の成分が存在する場合に増殖速度が著しく向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明は以下を包含する。
【0010】
[1]FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物。
[2]更にWntアゴニスト、BMP阻害剤、EGF及びTGFβ阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする[1]記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物。
[3]上記成分はFGF10であることを特徴とする[1]記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物。
[4]FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地。
[5]更にWntアゴニスト、BMP阻害剤、EGF及びTGFβ阻害剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含むことを特徴とする[4]記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地。
[6]上記成分はFGF10であることを特徴とする[4]記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地。
[7]ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを、[4]乃至[6]いずれか記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地に培養する、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法。
[8]上記ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを、乳腺癌罹患ネコから採取した乳腺組織から作製する工程を更に含むことを特徴とする[7]記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法。
[9]乳腺癌に罹患したネコから採取した乳腺からネコ乳腺腫瘍オルガノイドを作製する工程と、
[4]乃至[6]いずれか記載のネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地にて、上記ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する工程と、培養で得られたネコ乳腺腫瘍オルガノイドを薬剤の存在下で更に培養し、薬剤感受性を測定する工程とを含む、乳腺癌罹患ネコの治療方法。
[10]上記薬剤感受性を測定した結果、薬剤感受性の高かった薬剤を乳腺癌罹患ネコに投薬する工程を更に含む[9]記載の治療方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物は、特定の成分を含むことで、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの細胞増殖率を大幅に向上させることができる。したがって、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物を利用することで、ネコ乳腺腫瘍の基礎研究や、乳腺腫瘍罹患ネコの治療に利用できるネコ乳腺腫瘍オルガノイドを効率よく製造することができる。
【0012】
また、本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法は、特定の成分を含む培地を使用するため、優れた細胞培養効率でネコ乳腺腫瘍オルガノイドを増殖することができる。したがって、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの製造方法を利用することで、ネコ乳腺腫瘍の基礎研究や、乳腺腫瘍罹患ネコの治療に利用できるネコ乳腺腫瘍オルガノイドを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例で作製した3種類のネコ乳腺腫瘍オルガノイドを撮像した写真である。
図2】ネコ乳腺腫瘍オルガノイドと腫瘍組織のHE染色写真である。
図3】ネコ乳腺腫瘍オルガノイドと腫瘍組織についてホルモンレセプター(HER2、ER及びPR)の発現パターンを示す疫組織化学染色の写真である。
図4】実施例で作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイドを特定の培地成分の存在下で培養した時の写真である。
図5】実施例で作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイドを特定の培地成分の存在下で培養した時の細胞増殖効率を測定した結果を示す特性図である。
図6】実施例で作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイドにおける抗がん剤感受性試験の結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物は、FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分を含む。これらFGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αは、それぞれネコ乳腺腫瘍オルガノイドの増殖効率を大幅に向上させることができる。すなわち、これらFGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分は、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する培地に利用される。なお、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドは、特に限定されず、例えば、Sato et al., Nature, 2009やSato T et al., Gastroenterology. 2011 Nov;141(5):1762-72等を参照した方法により得ることができる。本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物は、当該方法により得られたネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する培地に利用される。
【0015】
本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物は、後述するネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する培地成分の一部又は全部を更に含む構成であっても良い。本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物が、後述するネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する培地成分の一部を含む場合、当該培地成分の残りとともにネコ乳腺腫瘍オルガノイド用培地として使用することができる。また、本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物が、後述するネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する培地成分の全部を含む場合、そのままネコ乳腺腫瘍オルガノイド用培地として使用することができる。
【0016】
本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物において、FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αからなる群から選ばれる少なくとも1つの成分の濃度は、特に限定されず、培地として使用される際の希釈倍率に応じて適宜規定することができる。また、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物にネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する培地成分の一部又は全部を更に含む場合、これら培地成分の濃度についても、特に限定されず、培地として使用される際の希釈倍率に応じて適宜規定することができる。
【0017】
FGF2は、非グリコシル化ペパリン結合増殖因子として知られる塩基性繊維芽細胞成長因子である。FGF2としては、特に限定されず、如何なる動物由来のFGF2を使用することができる。例えば、ヒトのFGF2、マウスFGF2又はラットFGF2など市販されている各種動物由来のFGF2を使用することもできるし、ネコにおけるFGF2遺伝子を単離し、組換え体として作製したネコFGF2を使用してもよい。
【0018】
培地に含まれるFGF2濃度は、特に限定されないが、例えば、2ng/mL~500ng/mLとすることができ、5ng/mL~500ng/mLとすることが好ましく、5ng/mL~400ng/mLとすることがより好ましく、5ng/mL~300ng/mLとすることがより好ましく、5ng/mL~200ng/mLとすることがより好ましく、5ng/mL~100ng/mLとすることがより好ましく、5ng/mL~50ng/mLとすることがより好ましい。より具体的に、培地に含まれるFGF2の濃度は10ng/mLとすることができる。
【0019】
FGF7は、ケラチノサイト増殖因子(KGF:keratinocyte growth factor)とも呼ばれる繊維芽細胞成長因子である。FGF7としては、特に限定されず、如何なる動物由来のFGF7を使用することができる。例えば、ヒトのFGF7、マウスFGF7又はラットFGF7など市販されている各種動物由来のFGF7を使用することもできるし、ネコにおけるFGF7遺伝子を単離し、組換え体として作製したネコFGF7を使用してもよい。
【0020】
培地に含まれるFGF7濃度は、特に限定されないが、例えば、0.4ng/mL~100ng/mLとすることができ、1ng/mL~100ng/mLとすることが好ましく、1ng/mL~80ng/mLとすることがより好ましく、1ng/mL~60ng/mLとすることがより好ましく、1ng/mL~40ng/mLとすることがより好ましく、1ng/mL~20ng/mLとすることがより好ましく、1ng/mL~10ng/mLとすることがより好ましい。より具体的に、培地に含まれるFGF7の濃度は5ng/mLとすることができる。
【0021】
FGF10は、ヘパリン結合性成長因子として知られる繊維芽細胞成長因子である。FGF10としては、特に限定されず、如何なる動物由来のFGF10を使用することができる。例えば、ヒトのFGF10、マウスFGF10又はラットFGF10など市販されている各種動物由来のFGF10を使用することもできるし、ネコにおけるFGF10遺伝子を単離し、組換え体として作製したネコFGF10を使用してもよい。
【0022】
培地に含まれるFGF10濃度は、特に限定されないが、例えば、4ng/mL~1000ng/mLとすることができ、10ng/mL~1000ng/mLとすることが好ましく、10ng/mL~800ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~600ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~400ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~200ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~100ng/mLとすることがより好ましい。より具体的に、培地に含まれるFGF10の濃度は20ng/mLとすることができる。
【0023】
TGF-αは、単球、ケラチノサイト(角化細胞)や種々の腫瘍細胞で産生されるサイトカインとして知られるトランスフォーミング増殖因子-α(或いは形質転換成長因子-α)である。TGF-αとしては、特に限定されず、如何なる動物由来のTGF-αを使用することができる。例えば、ヒトのTGF-α、マウスTGF-α又はラットTGF-αなど市販されている各種動物由来のTGF-αを使用することもできるし、ネコにおけるTGF-α遺伝子を単離し、組換え体として作製したネコTGF-αを使用してもよい。
【0024】
培地に含まれるTGF-α濃度は、特に限定されないが、例えば、4ng/mL~1000ng/mLとすることができ、10ng/mL~1000ng/mLとすることが好ましく、10ng/mL~800ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~600ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~400ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~200ng/mLとすることがより好ましく、10ng/mL~100ng/mLとすることがより好ましい。より具体的に、培地に含まれるTGF-αの濃度は20ng/mLとすることができる。
【0025】
本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物とともに使用される培地成分は、通常の三次元オルガノイドを培養する培地に含まれる成分を挙げることができる。具体的に、通常の三次元オルガノイドを培養する培地としては、特に限定されないが、無血清の細胞培養基本培地を使用することができる。無血清の細胞培養基本培地としては、例えば、炭酸系の緩衝液でpH7.0~7.6程度とされた合成培地等が挙げられる。より具体的には、グルタミン、インスリン、ペニシリン又はストレプトマイシン、及びトランスフェリンが補充されたダルベッコ改変イーグル培地/ハムF-12混合培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12;DMEM/F12)が挙げられる。また、グルタミン、インスリン、ペニシリン又はストレプトマイシン、及びトランスフェリンが補充されたRPMI1640培地(Roswell Park Memorial Institute 1640 medium)も挙げられる。また、グルタミン及びペニシリン又はストレプトマイシンが補充されたアドバンスト-DMEM/F12、並びに、グルタミン及びペニシリン又はストレプトマイシンが補充されたアドバンストRPMI培地等も挙げられる。
【0026】
また、無血清の細胞培養基本培地は、更に精製された、天然、半合成又は合成の増殖因子が補充されていてもよい。増殖因子としては、例えば、B-27 Supplement(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製)、N-アセチル-L-システイン(Sigma社製)、N-2 Supplement(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製)等が挙げられる。
【0027】
また、オルガノイドの培地には、これら基本培地に加えて、Wntシグナルを活性化するWntアゴニスト、BMPシグナルを阻害するBMP阻害剤、上皮成長因子(Epidermal Growth Factor; EGF)及びTGFβ阻害剤を含むことができる。これらオルガノイド作製用培地を使用し、細胞外マトリックス等の足場支持体に包埋された幹細胞を培養することで作製される。三次元オルガノイドを作製する際に使用される足場支持体としては、コラーゲンやアガロース等の水を吸収及び保持できる重合体、多孔質ポリスチレン等のスポンジ様メンブレンを挙げることができる。より具体的に、足場支持体としては、コラーゲンを含むマトリゲル(コーニングライフサイエンス社製)を使用することができる。
【0028】
Wntアゴニストとしては、例えば、Wnt、Wnt-3a、Noggin、GSK阻害剤、R-スポンジン1、R-スポンジン2、R-スポンジン3及びR-スポンジン4等のR-スポンジンを挙げることができる。
【0029】
BMP阻害剤としては、ノギン(Noggin)、コーディン(Chordin)、コーディンドメインを含むコーディン様タンパク質、ホリスタチン(Follistatin)、ホリスタチンドメインを含むホリスタチン関連タンパク質、DAN、DANシステイン-ノットドメインを含むDAN様タンパク質、スクレロスチン/SOST、デコリン及びα-2マクログロブリン等を挙げることができる。
【0030】
EGFは、53アミノ酸残基及び3つの分子内ジスルフィド結合から成る6045Daのタンパク質であり、細胞表面に存在する上皮成長因子受容体(EGFR)にリガンドとして結合する。培地に含まれるEGFの濃度は、特に限定されないが、例えば、2ng/mL~500ng/mLとすることができ、5ng/mL~500ng/mLとすることが好ましく、10ng/mL~400ng/mLとすることがより好ましく、20ng/mL~300ng/mLとすることがより好ましく、30ng/mL~200ng/mLとすることがより好ましく、40ng/mL~100ng/mLとすることがより好ましい。より具体的に、EGFの濃度は50ng/mLとすることができる。
【0031】
TGFβ(transforming growth factor β)阻害剤としては、例えば、A83-01(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1-フェニルチオカルバモイル-4-キノリン-4-イルピラゾール)、ALK5 Inhibitor I(3-(ピリジン-2-イル)-4-(4-キノニル)-1H-ピラゾール)、LDN193189(4-(6-(4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)キノリン)、SB431542(4-[4-(1,3-ベンゾジオキソール-5-イル)-5-ピリジン-2-イル-1H-イミダゾール-2-イル]ベンズアミド)、SB-505124(2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-tert-ブチル-3H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジン塩酸塩水和物)、SD-208((2-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)プテリジン-4-イル)ピリジン-4-イル-アミン)、SB-525334(6-[2-(1,1-ジメチルエチル)-5-(6-メチル-2-ピリジニル)-1H-イミダゾール-4-イル]キノキサリン)、LY-364947(4-[3-(2-ピリジニル)-1H-ピラゾール-4-イル]-キノリン)、LY2157299(4-[2-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-5,6-ジヒドロ-4H-ピロロ[1,2-b]ピラゾール-3-イル]-キノリン-6-カルボン酸アミド)、TGF-β RI Kinase Inhibitor II 616452(2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン)、TGF-β RI Kinase Inhibitor III 616453(2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-4-イル-2-tert-ブチル-1H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジン, HCl)、TGF-β RI Kinase Inhibitor IX 616463(4-((4-((2,6-ジメチルピリジン-3-イル)オキシ)ピリジン-2-イル)アミノ)ベンゼンスルホンアミド)、TGF-β RI Kinase Inhibitor VII 616458(1-2-((6,7-ジメトキシ-4-キノリル)オキシ)-(4,5-ジメチルフェニル)-1-エタノン)、ナフチリジン(6-(2-tert-ブチル-5-(6-メチル-ピリジン-2-イル)-1H-イミダゾール-4-イル)-キノキサリン)、AP12009(TGF-β2アンチセンス化合物“Trabedersen”)、Belagenpumatucel-L(TGF-β2アンチセンス遺伝子修飾同種異系腫瘍細胞ワクチン)、CAT-152(Glaucoma-lerdelimumab(抗-TGF-β-2モノクローナル抗体))、CAT-192(Metelimumab(TGFβ1を中和するヒトIgG4モノクローナル抗体))、GC-1008(抗TGF-βモノクローナル抗体)等が挙げられる。
【0032】
培地に含まれるTGF-β阻害剤の濃度は、その種類によって異なり、特に限定されるものではない。例えば、TGF-β阻害剤としてA83-01を使用する場合、0.1μM~5μMとすることができ、0.2μM~3μMとすることが好ましく、0.3μM~1μMとすることがより好ましく、0.4μM~0.8μMとすることがより好ましい。より具体的に、A83-01の濃度は0.5μMとすることができる。
【0033】
ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの培養条件等については、特に限定されず、例えば、Sato et al., Nature, 2009やSato T et al., Gastroenterology. 2011 Nov;141(5):1762-72等を参照することができる。これらを参考としてネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養する際、その培養温度は30~40℃とすることができ、37℃程度が最も好ましい。
【0034】
本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物を利用することで、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを通常の培養方法と比較して効率的に培養することができる。言い換えると、本発明に係るネコ乳腺腫瘍オルガノイド培地用組成物を利用することで、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの増殖速度を通常の培養方法と比較して高めることができる。このように、本発明を適用することでネコ乳腺腫瘍オルガノイドの継代培養に要する時間が短くて済み、通常の培養培地を使用する場合と比べて効率的に取得することができる。
【0035】
培養後のネコ乳腺腫瘍オルガノイドは、特に限定されず、種々のバイオアッセイに使用することができる。例えば、培養されたネコ乳腺腫瘍オルガノイドを用いて抗がん剤の効果を確認するバイオアッセイを実施することができる。特に、本発明を適用することによって、乳腺癌に罹患したネコから採取した乳腺腫瘍からオルガノイドを作製し、培養後のネコ乳腺腫瘍オルガノイドを利用して当該オルガノイドする抗がん剤の効果(薬剤感受性)を検証し、当該ネコの治療に有効な抗がん剤を適切に選択することができる。これにより、乳腺癌に罹患したネコに対する最適な治療を迅速に決定することができる。
【0036】
また、本発明を適用することで、ネコ乳腺癌に対する新規治療薬(抗がん剤)の開発に利用できるネコ乳腺腫瘍オルガノイドを迅速に供給することができる。
【実施例0037】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
[ネコ乳腺腫瘍オルガノイドの作製]
乳腺腫瘍に罹患したネコから腫瘍部位の外科的切除を行った(3例)。それぞれFMT20001、FMT20002及びFMT20003とした。その後、以下の方法に従って、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを作製した。すなわち、先ず、採材された組織を、組織の乾燥を防ぐために2mlのPBSを入れた10cmディッシュに移した。そして外科剪刀を用いて、ディッシュ内で約1cm四方の組織片に切り出した。得られた組織片を別の10cmディッシュに移し、付着した血液成分を落とすためにPBS2mlで3回洗った。その後、ディッシュごと氷上に移し、眼科剪刀を用いて粘稠性を持つまで組織片を切った。その組織片をLiberase TH 1.25mg/ml(sigma)を500μl、Advanced DMEM培地(gibco)を450μl入れた15mlチューブに移し、1mlピペットマンを用いて10回ピペッティングを行った。そしてチューブを37℃に温めた恒温槽に差し込み15分間振盪させた。15分後、いったんチューブを取り出し1mlピペットマンを用いて10回ピペッティングを行い、さらに15分間振盪させた。チューブを取り出して再度ピペッティングを10回行い、細胞混濁液が半透明様の状態になっていることを確認し、それを100μmのセルストレーナーに通した。30分間の振盪でも組織片が視認できる場合は、600×g、3分間の遠心分離を行ったのちに上清を取り除き、TrypLE(gibco)を1ml加え5分間恒温槽に置いた。チューブを取り出し、前述と同様にピペッティング後にセルストレーナーに通した。濾過した細胞液を600×g、3分間の遠心分離を行った。そして上清を取り除いたのちに8mlのPBSを加えて1mlピペットマンを用いて10回ピペッティングを行った。この作業を計3回行った。上清を取り除き、細胞沈査の量に応じて、24wellプレートの1wellあたり40μlのマトリゲル(Corning)を加え、200μlピペットマンを用いて数回に分けて静かに混ぜ合わせた。細胞成分の入ったマトリゲルを40μlずつ播種し、30分間、37℃のインキュベーターに置いた。その後、37度に温めた培地を500μl/1well加え培養を始めた。
【0039】
以上の方法により3種類のネコ乳腺腫瘍オルガノイドを作製した(図1)。図1に示したように、本実施例で作製した3種類のネコ乳腺腫瘍オルガノイドは、それぞれ異なる形態であることが観察された
【0040】
[ネコ乳腺腫瘍オルガノイドと摘出組織との相同性の評価]
上記のように作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイドについて定法に従ってHE染色を行った。また、上記のように摘出した腫瘍組織FMT20001及びFMT20002についても定法に従ってそれぞれHE染色を行った。ネコ乳腺腫瘍オルガノイドのHE染色画像と、それぞれ元となった腫瘍組織FMT20001及びFMT20002のHE染色画像とを図2に示した。図2に示したように、ネコ乳腺腫瘍オルガノイドと元となった腫瘍組織とは、病理学的構造が非常に類似していることが分かった。
【0041】
[ネコ乳腺腫瘍オルガノイドと腫瘍組織とのホルモンレセプター発現の比較]
上記のように作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイド及び元となった腫瘍組織FMT20001について、以下の方法に従ってホルモンレセプターの発現の類似性を評価した。なお、本例では、ホルモンレセプターとして、HER2(human epidermal receptor 2:上皮成長因子受容体2)、ER(estrogen receptor:エストロゲン受容体)及びPR(progesterone receptor:プロジェステロン受容体)の発現を評価した。
【0042】
先ず、オルガノイドと摘出した組織から凍結切片を作製した。スライドグラスPBSで5分間振盪させながら洗った。PBSから取り出したのち水気を払い、1.5% normal goat serum(NGS)を1切片につき50μl加えて湿潤ボックス内に室温で30分静置した。NGSをおとしたあと、1次抗体をPBSで1:100に希釈し前述と同様に1切片につき50μlを入れ、4度で一晩静置した。翌日、PBSで5分間ずつ3回洗い、蛍光2次抗体とHexstをそれぞれPBSで希釈し1切片当たり50μl載せて遮光下で60分間置いた。その後遮光しながらPBSで5分間ずつ3回洗い、水気を払ったのちにカバーガラスで封入して乾燥させたのちに共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss)を用いて観察を行った。
【0043】
ネコ乳腺腫瘍オルガノイド及び元となった腫瘍組織FMT20001について、HER2、ER及びPRの免疫化学染色実験の結果を図3に示した。図3に示すように、ネコ乳腺腫瘍オルガノイド及び元となった腫瘍組織FMT20001については、HER2及びERの発現パターンが類似していることが分かった(PRについてはオルガノイド及び腫瘍組織ともに発現が観察されなかた)。
【0044】
[ネコ乳腺腫瘍オルガノイド培養における最適なサプリメントの検討]
上記のように作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイドを培養するにあたって、細胞増殖・オルガノイド形成がより促進されるような培地成分の探索を行った。具体的には、表1に示した培地組成に対して各種培地成分を添加した培養液を準備し、コントロールを100%として、培養成分の添加による細胞増殖速度を比較解析した。
【0045】
【表1】
【0046】
本実施例で検討した培地成分を表2に示した。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示した培地成分をそれぞれ添加した培養液を用いてネコ乳腺腫瘍オルガノイド(腫瘍組織FMT20001由来)を7日間培養した。培養後のオルガノイドを撮像した結果を図4に示し、細胞増殖率を測定した結果を図5に示した。なお、細胞増殖率は以下のように算出した。すなわち、表1に示した培地組成に対して、表2に示した各種培地成分を添加した培養液を準備した。プレートリーダー(TECAN)で蛍光強度を測定し、表1の培地組成のみのコントロール群を100%として他の培養液成分の細胞増殖率の比較を行った。
【0049】
図4及び5に示すように、WntアゴニストであるWnt-3A、EGFといった三次元オルガノイドの製造に使用されている公知の培地成分以外では、FGF2、FGF7、FGF10及びTGF-αがネコ乳腺腫瘍オルガノイドに対する増殖亢進効果を有していた。特に、FGF7については、Wnt-3AやEGFと比較しても優れた増殖亢進効果を有することがわかった。
【0050】
[ネコ乳腺腫瘍オルガノイドを用いた抗がん剤感受性試験]
本実施例で作製したネコ乳腺腫瘍オルガノイドは、元となったネコ乳腺腫瘍組織と構造的にもホルモンレセプターの発現パターンについても高い類似性を示すことが明らかになった。そこで、一般的にネコ乳腺腫瘍で用いられる抗がん剤であるカルボプラチン及びドキソルビシンの各薬剤単剤使用におけるオルガノイドの細胞生存率の比較を行うことで、抗がん剤の反応性の評価を行った。
【0051】
先ず、培地をアスピレーターで完全に除去し、500μl/1wellのPBSを加えた。PBSをアスピレートしたあとEDTA/PBSを500μl/1well加え、氷上に30分間静置した。そして1mlピペットマンを用いて固着しているマトリゲルを剥がし再び氷上に60分間静置した。剥がしたマトリゲルをEDTA/PBSとともに1mlピペットマンを用いて15mlチューブにすべて移し、600×g、3分間で遠心分離を行った。上清をアスピレーターで取り除き、PBSを1ml加えて、1mlピペットマンを用いて10回ピペッティングを行い同様に遠心分離を行った。上清を取り除き、37度に温めたTrypLE(gibco)を1ml加えて10回ピペッティングを行い、37℃の恒温槽で5分間静置した。チューブを取り出し改めて10回ピペッティングを行い、100μlのFBSが入った50mlチューブに70μlのセルストレーナーを取り付け、細胞混濁液の濾過を行った。作製した細胞液から10μl取り出し、それを用いて細胞数を計算した。96wellプレートに細胞を播種するにあたっての必要な溶液量を作製した細胞液から取り出し、1.5mlチューブに移し、600×g、3分間で遠心分離を行った。上清を取り除き、96wellプレートの1wellあたり10μlのマトリゲルを加え200μlピペットマンを用いて数回に分けて静かに混ぜ合わせた。細胞成分の入ったマトリゲルを10μlずつ播種し、30分間、37℃のインキュベーターに置いた。その後、37℃に温めた培地を100μl/1well加え培養を行った。翌日にカルボプラチンおよびドキソルビシンを添加した。入っている培地をアスピレートしたのち、培地で希釈した4濃度の抗がん剤溶解液を用意し100μl/1well添加した。Control群には抗がん剤の代替にDMSOを利用した。3日後に細胞生存率の測定を行った。10μl/1wellのPrestoBlue試薬(invitrogen)を加え37℃でインキュベートした。3~4時間後にプレートリーダー(TECAN)で、Gain45の条件で蛍光強度を測定し、各抗がん剤に対する感受性を調べた。
【0052】
上記で作製した3つのネコ乳腺腫瘍オルガノイド(FMT20001、FMT20002及びFMT20003由来)のカルボプラチン及びドキソルビシンに対する感受性を図6に示した。図6に示したように、使用した3つのネコ乳腺腫瘍オルガノイドは、それぞれカルボプラチン及びドキソルビシンに対して異なる感受性を示すことが明らかとなった。特に、カルボプラチンに対する感受性は、使用した3つのネコ乳腺腫瘍オルガノイドのうちFMT20001由来及びFMT20003由来のものが極めて高いことが示された。この結果より、FMT20001及びFMT20003の乳腺癌罹患ネコに対してはカルボプラチンによる治療が望ましいことが示唆された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6