(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165837
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】色素組成物、膜、光学フィルタ、画像表示装置、赤外線センサ及び指紋認証用センサ
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20221025BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20221025BHJP
C09B 67/22 20060101ALI20221025BHJP
C09B 57/00 20060101ALI20221025BHJP
C09B 57/10 20060101ALI20221025BHJP
C09B 23/14 20060101ALI20221025BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20221025BHJP
H01L 27/144 20060101ALI20221025BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20221025BHJP
A61B 5/1172 20160101ALI20221025BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C09B67/20 F
G02B5/22
C09B67/22 Z
C09B57/00 X
C09B57/10
C09B23/14
G01J1/02 H
H01L27/144 K
H01L27/146 D
A61B5/1172
G02F1/1335 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071373
(22)【出願日】2021-04-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 済
(72)【発明者】
【氏名】田中 由紀
【テーマコード(参考)】
2G065
2H148
2H291
4C038
4M118
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065BA14
2G065BB26
2G065CA08
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA19
2H291FA02X
2H291FA10X
2H291FA10Y
2H291FA10Z
2H291FB02
2H291LA21
2H291LA40
4C038FF01
4C038FF05
4C038FG01
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA10
4M118BA14
4M118CA02
4M118GA10
4M118GB03
4M118GB07
4M118GB11
4M118GC11
4M118GC20
4M118GD04
(57)【要約】
【課題】 波長680~1000nmの近赤外線の遮蔽性と可視領域における透過性が両
立可能である近赤外線カットフィルタを形成可能な、色素組成物を提供すること。
【解決手段】 下記一般式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム系化合物(
a)を含有し、
ジチオレート錯体化合物及び/又はシアニン化合物を含有し、
前記ジチオレート錯体化合物及び前記シアニン化合物が波長900~1200nmに吸
収極大を有する色素組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム系化合物(a)を含有し
、
ジチオレート錯体化合物及び/又はシアニン化合物を含有し、
前記ジチオレート錯体化合物及び前記シアニン化合物が波長900~1200nmに吸
収極大を有する色素組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有して
いてもよい芳香族環基を表す。
式(1)中のナフタレン環は、任意の置換基を有していてもよく、さらに縮合環を形成
していてもよい。
Aは置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。)
【請求項2】
前記ジチオレート錯体化合物が第10族元素、第11族元素及び第12族元素からなる
群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むジチオレート錯体化合物である請求項1に記
載の色素組成物。
【請求項3】
前記ジチオレート錯体化合物が、ニッケルジチオレート錯体化合物である請求項1又は
2に記載の色素組成物。
【請求項4】
前記ニッケルジチオレート錯体化合物が、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表
される化学構造を有する請求項3に記載の色素組成物。
【化2】
【化3】
(式(2)、式(3)中、X
1、X
2、X
3、X
4は各々独立に、置換基を有していても
よい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
X
1とX
2、X
3とX
4は各々独立して、連結基を介して環を形成していてもよい。)
【請求項5】
前記シアニン化合物が、下記一般式(4)で表される化学構造を有する請求項1~4の
いずれか1項に記載の色素組成物。
【化4】
(式(4)中、R
9、R
11は各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい脂肪族
炭化水素基を表す。R
12、R
13は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有して
いてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有し
ていてもよいアミノ基を表す。
R
8、R
10、R
14は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素
基、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
R
8とR
14、R
13とR
10は各々独立に、結合して窒素を含む複素環を形成していてもよ
い。
X
-はアニオンを表す。
nは3以上の整数である。)
【請求項6】
前記スクアリリウム系化合物(a)以外のスクアリリウム系化合物(b)を含有する請
求項1~5のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項7】
前記スクアリリウム系化合物(b)が波長680nm~900nmに吸収極大を有し、
前記吸収極大におけるモル吸光係数が1.0×105以上である請求項6に記載の色素組
成物。
【請求項8】
樹脂を含有する請求項1~7のいずれか1項に記載の色素組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の色素組成物を用いて形成した膜。
【請求項10】
請求項9に記載の膜を有する光学フィルタ。
【請求項11】
請求項9に記載の膜を有する画像表示装置。
【請求項12】
請求項9に記載の膜を有する赤外線センサ。
【請求項13】
CMOSセンサと組み合わせて用いられる請求項10に記載の光学フィルタ。
【請求項14】
請求項10に記載の光学フィルタと、CMOSセンサを備える指紋認証用センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素組成物、膜、光学フィルタ、画像表示装置、赤外線センサ及び指紋認証
用センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などには、カラー画像
の固体撮像素子である、CCD(電荷結合素子)や、CMOS(相補型金属酸化膜半導体
)が用いられている。これら固体撮像素子は、その受光部において赤外線に感度を有する
シリコンフォトダイオードを使用している。
このため、固体撮像素子においては、近赤外線カットフィルタを使用して視感度補正を
行うことがある。近赤外線カットフィルタは、例えば、赤外線吸収剤を含む組成物を用い
て製造されている。
【0003】
赤外線吸収剤としては、スクアリリウム系化合物などが知られている(例えば、特許文
献1参照)。
一方で、特許文献2には、プラズマディスプレイにおけるネオンオレンジ光の遮蔽用途
で特定のスクアリリウム系化合物を用いることが記載されており、特許文献3には光劣化
を抑制するために、スクアリリウム系化合物と特定の溶剤を併用することが記載されてい
る。また、特許文献4の28~32頁には、電子写真記録素子における光導電性層中の増
感剤として、スクアリリウム系化合物(I-98~I-117)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/104283号
【特許文献2】特開2002-363434号公報
【特許文献3】特開2016-180058号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第3740421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CMOSを用いた個体撮像素子(CMOSセンサ)に使用される近赤外線カットフィル
タとしては、近赤外領域(波長650~1100nm)の遮蔽性及び可視領域の透過性が
高いものが求められており、特に近年においては、近赤外領域の全領域において、バラン
スよく遮蔽することが求められている。
本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載されているスクアリリウム系化合物は
副吸収が大きく、可視領域の透過性が不十分であることが見出された。
【0006】
特許文献2に記載されているスクアリリウム系化合物は、吸収極大が波長550~61
0nmの範囲に存在し、近赤外領域の吸収が不十分であることが見出された。
特許文献4に記載されているスクアリリウム系化合物は、スクアリリウム系化合物とし
て最も長波長に吸収を持つものとして市販されているものの、さらに強い電子供与性部位
を有さないことから、これ以上に吸収波長が長波長化されたスクアリリウム系化合物を得
ることは困難と考えられてきた。
【0007】
また、波長680~900nmに吸収極大をもつ近赤外色素としてはニッケルジチオレ
ート錯体がある。しかし、これだけでは、近赤外領域でのモル吸光係数が低いため、近赤
外線を遮蔽するために濃度を上げる必要があるが、濃度を上げると可視領域、特に波長4
00nm付近の副吸収が可視領域の透過率を阻害するため、可視領域の透過率を維持しつ
つ、近赤外線の遮蔽性を確保するという機能の両立が充分でなかった。
【0008】
そこで本発明は、波長680~1000nmの近赤外線の遮蔽性と可視領域における透
過性が両立可能である近赤外線カットフィルタを形成可能な、色素組成物を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の化学構造を有す
るスクアリリウム系化合物と、ジチオレート錯体化合物及び/又はシアニン化合物を組み
あわせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
【0010】
[1] 下記一般式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム系化合物(a)を
含有し、
ジチオレート錯体化合物及び/又はシアニン化合物を含有し、
前記ジチオレート錯体化合物及び前記シアニン化合物が波長900~1200nmに吸
収極大を有する色素組成物。
【0011】
【0012】
(式(1)中、R1は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有し
ていてもよい芳香族環基を表す。
式(1)中のナフタレン環は、任意の置換基を有していてもよく、さらに縮合環を形成
していてもよい。
Aは置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。)
【0013】
[2] 前記ジチオレート錯体化合物が第10族元素、第11族元素及び第12族元素か
らなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むジチオレート錯体化合物である[1]
の色素組成物。
[3] 前記ジチオレート錯体化合物が、ニッケルジチオレート錯体化合物である[1]
又は[2]の色素組成物。
[4] 前記ニッケルジチオレート錯体化合物が、下記一般式(2)又は下記一般式(3
)で表される化学構造を有する[3]の色素組成物。
【0014】
【0015】
【0016】
(式(2)、式(3)中、X1、X2、X3、X4は各々独立に、置換基を有していても
よい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
X1とX2、X3とX4は各々独立して、連結基を介して環を形成していてもよい。)
[5] 前記シアニン化合物が、下記一般式(4)で表される化学構造を有する[1]~
[4]いずれかの色素組成物。
【0017】
【0018】
(式(4)中、R9、R11は各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい脂肪族
炭化水素基を表す。R12、R13は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有して
いてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有し
ていてもよいアミノ基を表す。
R8、R10、R14は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素
基、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0019】
R8とR14、R13とR10は各々独立に、結合して窒素を含む複素環を形成していてもよ
い。
X-はアニオンを表す。
nは3以上の整数である。)
【0020】
[6] 前記スクアリリウム系化合物(a)以外のスクアリリウム系化合物(b)を含有
する[1]~[5]いずれかの色素組成物。
[7] 前記スクアリリウム系化合物(b)が波長680nm~900nmに吸収極大を
有し、前記吸収極大におけるモル吸光係数が1.0×105以上である[6]の色素組成
物。
[8] 樹脂を含有する[1]~[7]いずれかの色素組成物。
【0021】
[9] [1]~[8]いずれかの色素組成物を用いて形成した膜。
[10] [9]の膜を有する光学フィルタ。
[11] [9]に記載の膜を有する画像表示装置。
[12] 請求項9に記載の膜を有する赤外線センサ。
[13] CMOSセンサと組み合わせて用いられる[10]の光学フィルタ。
[14] [10]の光学フィルタと、CMOSセンサを備える指紋認証用センサ。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、波長680~1000nmの近赤外線の遮蔽性と可視領域における透
過性が両立可能である近赤外線カットフィルタを形成可能な、色素組成物を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例及び比較例の近赤外線カットフィルタの透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定
されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
本発明において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味
し、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
本発明において「全固形分」とは、色素組成物中に含まれる、溶剤以外の全成分を意味
する。溶剤以外の成分が常温で液体であっても、その成分は溶剤には含めず、全固形分に
含める。
【0025】
本発明において、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を意味する。
本発明において、「近赤外領域」とは波長650~1100nmの波長領域を意味し、
「近赤外線」とは近赤外領域の波長の光を意味する。
本発明において、「シアニン化合物」とはポリメチン骨格の両末端に窒素を含む置換基
を有する化合物を意味する。
【0026】
[1]色素組成物
本発明の色素組成物は、前記一般式(1)で表されるスクアリリウム系化合物(a)を
含有し、ジチオレート錯体化合物及び/又はシアニン化合物を含有し、前記ジチオレート
錯体化合物及び前記シアニン化合物が波長900~1200nmに吸収極大を有する。
本発明の色素組成物は、前記スクアリリウム系化合物(a)、並びにジチオレート錯体
化合物及び/又はシアニン化合物を含有することで、波長680~1000nmでのモル
吸光係数が大きいため、可視領域の副吸収が抑えられ、波長680~1000nmの近赤
外線の遮蔽性と可視領域における透過性が両立可能である近赤外線カットフィルタが形成
可能となる。
【0027】
<スクアリリウム系化合物(a)>
本発明の色素組成物は、下記一般式(1)で表される化学構造を有するスクアリリウム
系化合物(a)(以下、「スクアリリウム系化合物(a)」と称する。)を含有する。
【0028】
【0029】
式(1)中、R1は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有して
いてもよい芳香族環基を表す。
式(1)中のナフタレン環は、任意の置換基を有していてもよく、さらに縮合環を形成
していてもよい。
Aは置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0030】
スクアリリウム系化合物(a)は、インドレニル基から誘導される特定の基を有するこ
とで吸収ピークが長波長化し、近赤外領域の遮蔽性が良好になると考えられ、また、色素
構造の共役系を増やすことでH会合も強くなり、分子内の自由回転が制約されることとな
って、可視領域の透過性が良好になると考えられる。
また、スクアリリウム系化合物(a)は、Aとして置換基を有していてもよい芳香族環
を有するものであるが、芳香族環による共役拡張による電子過剰官能基として働くことで
、Aに由来する吸収極大を近赤外に有するものとなると考えられる。特に、前記Aが、ア
ミノ基を有する芳香族環基、置換基を有していてもよいアミノ基を有するインドレニル基
、置換基を有していてもよい七員環以上の非ベンゼノイド基、縮合芳香族環基などの場合
には、窒素原子による電子供与性の効果や特定の芳香族環の共役拡張による電子過剰官能
基としての働きによって、Aに由来する吸収極大を近赤外領域の所望の波長域に有するも
のとなると考えられる。
【0031】
スクアリリウム系化合物(a)は、前記特定の基に由来する吸収極大と、前記Aに由来
する吸収極大とを有することで、それらによって近赤外領域における吸収帯が幅広で吸光
度の高いものとなると考えられる。例えば近赤外線カットフィルタにおいて、このスクア
リリウム系化合物(a)を用いることで、近赤外領域の全領域を遮蔽するのに必要なスク
アリリウム系化合物の種類数を減らすことができ、それによってスクアリリウム系化合物
の含有割合も低減され、近赤外領域の遮蔽性と可視領域の透過性を両立可能な近赤外線カ
ットフィルタを得ることができると考えられる。
【0032】
(R1)
前記式(1)中、R1は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有
していてもよい芳香族環基を表す。
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらを組み合わせたもの
のいずれでもよく、四角酸部との立体障害を避ける観点から直鎖状のものであることが好
ましい。
【0033】
脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好
ましく、3以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましく、また、10以下が好ましく、
8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで単離がし
やすくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで有機溶媒への溶解性が良好と
なる傾向がある。
【0034】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げ
られる。安定性及び溶解性の観点からはアルキル基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロ
ピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-へキシル基、1-オクチル基が挙げられる
。インドレニル基から誘導される特定の基の安定性の観点から、炭素数4~6のアルキル
基が好ましく、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基がより好ましく、1-ブ
チル基がさらに好ましい。
【0035】
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、ジアルキルア
ミノ基、アルコキシ基、エチレングリコール基、フッ素原子が挙げられる。インドレニル
基から誘導される特定の基の安定性の観点から無置換であることが好ましい。
一方で、芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基や芳香族複素環基が挙げられ、可視
領域の副吸収を抑える観点から芳香族炭化水素環基が好ましい。
【0036】
芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、5以上が好ましく、6以上がより好ましく
、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましい。前記下
限値以上とすることでスクアリリウム系化合物の安定性が良好となる傾向があり、また、
前記上限値以下とすることで近赤外領域の極大吸収波長を所望なものにできる傾向がある
。
【0037】
芳香族炭化水素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収
を抑える観点からは単環が好ましい。
芳香族炭化水素環基としては、としては、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナ
フタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環
、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環
、フルオレン環が挙げられる。可視領域の副吸収を抑える観点から1個の遊離原子価を有
するベンゼン環が好ましい。
【0038】
芳香族複素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑
える観点からは単環が好ましい。
芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、ピラゾー
ル環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、イソオキ
サゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピロール
環、チエノピロール環、フロピロール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイソオキサゾー
ル環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリ
ダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環が挙げられる。近
赤外の吸収極大を調整できる観点から、1個の遊離原子価を有するピロール環、チオフェ
ン環が好ましい。
【0039】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、水酸基
、ジロリジン環基、アルコキシ基、アルキル基、フッ素原子が挙げられる。近赤外領域の
極大吸収波長を所望なものにできるとの観点から無置換であることが好ましい。
【0040】
(ナフタレン環が有していてもよい任意の置換基)
前記式(1)中のナフタレン環は、任意の置換基を有していてもよく、さらに縮合環を
形成していてもよい。
この任意の置換基としては、例えば、アルキル基、ジアルキルアミノ基、水酸基、アル
コキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。合成容易性やスクアリリウム系化合物の安定性の
観点から無置換が好ましい。
また、任意の置換基と縮合環を形成した場合、例えば、下記一般式(1’)で表される
ものが挙げられる。
【0041】
【0042】
(式(1’)中、R1及びAは前記一般式(1’)と同義である。)
【0043】
(A)
前記式(1)中、Aは置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基や芳香族複素環基が挙げられ、スクアリリウ
ム系化合物の安定性の観点から芳香族炭化水素環基が好ましい。
芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、5以上が好ましく、6以上がより好ましく
、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましい。前記下
限値以上とすることで極大吸収波長が長波長化する傾向があり、また、前記上限値以下と
することで溶解性が良好となる傾向がある。
【0044】
芳香族炭化水素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収
を抑える観点からは単環が好ましい。
芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフ
タレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、
ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、
フルオレン環、アズレン環が挙げられる。溶解性の観点から1個の遊離原子価を有するベ
ンゼン環や1個の遊離原子価を有するアズレン環が好ましい。
【0045】
芳香族複素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑
える観点からは単環が好ましい。
芳香族複素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、チオフェ
ン環、ピラゾール環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾー
ル環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピロロイミダゾール環、
ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾ
イソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピ
ラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、
が挙げられる。電子供与性の高さの観点から1個の遊離原子価を有するピリジン環、1個
の遊離原子価を有するチオフェン環が好ましい。
【0046】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、アルコ
キシ基、水酸基、アルキル基、ジロリジン環基、非ベンゼノイド芳香族環基、ハロゲン原
子などが挙げられ、これらの中でも可視領域における副吸収を抑える観点からジアルキル
アミノ基、アルキル基、ジロリジン環基、非ベンゼノイド芳香族環基であることが好まし
い。これらの置換基の中でもジアルキルアミノ基、ジロリジン環基、非ベンゼノイド芳香
族環基のような、平面性が高く、電子リッチな置換基であれば、近赤外領域の遮蔽性が良
好で、可視領域の副吸収が抑えられる効果が高くなる傾向があり好ましい。
【0047】
前記式(1)におけるAは、置換基を有していてもよい芳香族環基であるが、長波長化
の観点から、該置換基のHammett定数のσp値がゼロより小さい値であることが好
ましい。
Hammett定数σpとしては、Chem.Rev.91巻、165-195頁(1
991年)に掲載されている値を用い、置換位置に関わらず、前記文献中のσpのデータ
を用いて定義する。
【0048】
前記置換基のHammett定数のσp値は、-0.40以下が好ましく、-0.50
以下がより好ましく、-0.55以下がさらに好ましく、また、-0.90以上が好まし
く、-0.87以上がより好ましく、-0.85以上がさらに好ましい。前記下限値以上
とすることで所望の長波長化できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで近赤
外領域の吸収の位置のチューニングができる傾向がある。
【0049】
前記置換基としては、例えば、以下のものが挙げられる。( )内の数値はHamme
tt定数のσp値を表す。メチルアミノ基(-0.70)、エチルアミノ基(-0.61
)などの炭素数1~12のモノアルキルアミノ基;フェニルアミノ基(-0.56)など
の炭素数6~15のモノアリールアミノ基;ジメチルアミノ基(-0.83)、ジエチル
アミノ基(-0.72)などの炭素数2~20のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ
基(-0.67)などの炭素数12~30のジアリールアミノ基。
【0050】
<スクアリリウム系化合物(a1)>
スクアリリウム系化合物(a)の中でも、近赤外領域を少ない種類のスクアリリウム系
化合物で遮蔽する観点から、下記一般式(2)で表される化学構造を有するスクアリリウ
ム系化合物(以下、「スクアリリウム系化合物(a1)」と称する場合がある。)が好ま
しい。
【0051】
【0052】
式(1A)中、R1は前記一般式(1A)のものと同義である。
R2~R5は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、又は
置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。R2~R5のうち少なくともいずれか2つが
結合して環を形成していてもよい。
R6及びR7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は水酸基を表す。
【0053】
(R2~R5)
前記式(1A)中、R2~R5は各々独立に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素
基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
脂肪族炭化水素基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらを組み合わせたもの
のいずれでもよく、四角酸部との立体障害を避ける観点から直鎖状のものであることが好
ましい。
【0054】
脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されないが、1以上が好ましく、2以上がより好
ましく、3以上がさらに好ましく、4以上が特に好ましく、また、10以下が好ましく、
8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで単離がし
やすくなる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで有機溶媒への溶解性が良好と
なる傾向がある。
【0055】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニルが挙げら
れる。溶解性の観点からはアルキル基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロ
ピル基、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-へキシル基、1-オクチル基が挙げられる
。インドレニル基から誘導される特定の基の安定性の観点から炭素数3~6のアルキル基
が好ましく、1-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基がより好ましく、1-ブチ
ル基がさらに好ましい。
【0056】
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基、ジアルキルア
ミノ基、アルコキシ基、エチレングリコール基、フッ素原子が挙げられる。安定性の観点
から無置換であることが好ましい。
一方で、芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基や芳香族複素環基が挙げられ、可視
領域の副吸収を抑える観点から芳香族炭化水素環基が好ましい。
【0057】
芳香族環基の炭素数は特に限定されないが、5以上が好ましく、6以上がより好ましく
、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、7以下がさらに好ましい。前記下
限値以上とすることでスクアリリウム系化合物の安定性が良好となる傾向があり、また、
前記上限値以下とすることで近赤外領域の極大吸収波長を所望なものにできる傾向がある
。
【0058】
芳香族炭化水素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収
を抑える観点からは単環が好ましい。
芳香族炭化水素環基としては、例えば、1個の遊離原子価を有する、ベンゼン環、ナフ
タレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、
ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、
フルオレン環が挙げられる。可視領域の副吸収を抑える観点から1個の遊離原子価を有す
るベンゼン環が好ましい。
【0059】
芳香族複素環基における環としては、単環でも縮合環でもよく、可視領域の副吸収を抑
える観点からは単環が好ましい。
芳香族複素環基としては例えば、1個の遊離原子価を有する、ピロール環、ピラゾール
環、イミダゾール環、インドール環、オキサジアゾール環、オキサゾール環、イソオキサ
ゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピロール環
、チエノピロール環、フロピロール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾイソオキサゾール
環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダ
ジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環などの基が挙げられ
る。これらの中でも近赤外領域の吸収極大を調整できる観点から1個の遊離原子価を有す
るピロール環、チオフェン環が好ましい。
【0060】
芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、水酸基
、ジロリジン環基、アルコキシ基、アルキル基、フッ素原子が挙げられる。近赤外領域の
極大吸収波長を所望なものにできるとの観点から無置換であることが好ましい。
R2~R5のうち少なくともいずれか2つが結合して環を形成していてもよく、例えば、
以下のものが挙げられる。
【0061】
【0062】
(R6及びR7)
前記式(1A)中、R6及びR7は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は水酸基を
表す。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げ
られる。四角酸上の水酸基との水素結合の観点からはフッ素原子が好ましい。
【0063】
R6及びR7としては、前記式(1A)の平面性を保ち、効果的に吸収領域を長波長化す
る観点から、水素原子又は水酸基が好ましい。
以下にスクアリリウム系化合物(a)の具体例を挙げる。スクアリリウム系化合物(a
)は以下のように共鳴構造を複数書くことができるが、これらは特に断らない限り同義で
ある。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
スクアリリウム系化合物(a)が有する吸収極大の極大吸収波長は特に限定されないが
、680nm以上が好ましく、700nm以上がより好ましく、710nm以上がさらに
好ましく、720nm以上が特に好ましく、また、950nm以下が好ましく、920n
m以下がより好ましく、900nm以下がさらに好ましく、880nm以下がよりさらに
好ましく、860nm以下がことさらに好ましく、840nm以下が特に好ましい。前記
下限値以上とすることで必要な近赤外領域の長波長領域を遮蔽できる傾向があり、また、
前記上限値以下とすることで近赤外領域の短波長領域を遮蔽できる傾向がある。
【0068】
スクアリリウム系化合物(a)の吸収極大におけるモル吸光係数は、好ましくは,8.
0×104以上、より好ましくは、8.5×104以上、特に好ましくは、9.0×10
4以上であり、上限は特に限定されないが、通常、2.0×105以下である。
スクアリリウム系化合物(a)が吸収極大を2つ以上有する場合、その各吸収極大の極
大吸収波長の差は15nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上
がさらに好ましく、また、200nm以下が好ましく、180nm以下がより好ましく、
150nm以下がさらに好ましく、120nm以下がよりさらに好ましく、100nm以
下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで、複数の吸収極大を活かした色素配合が
可能となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで近赤外領域を遮蔽するのに必
要な色素数を減らすことができる傾向がある。
【0069】
スクアリリウム系化合物(a)が吸収極大を2つ以上有する場合、最も短波長側の吸収
極大の極大吸収波長は特に限定されないが、670nm以上が好ましく、680nm以上
がより好ましく、700nm以上がさらに好ましく、720nm以上が特に好ましく、ま
た、800nm以下が好ましく、770nm以下がより好ましく、750nm以下がさら
に好ましい。前記下限値以上とすることで短波長側の近赤外領域を遮蔽できる傾向があり
、また、前記上限値以下とすることで可視領域における副吸収を抑制できる傾向がある。
【0070】
スクアリリウム系化合物が吸収極大を2つ以上有する場合、最も長波長側の吸収極大の
極大吸収波長は特に限定されないが、800nm以上が好ましく、850nm以上がより
好ましく、870nm以上がさらに好ましく、また、950nm以下が好ましく、930
nm以下がより好ましく、920nm以下がさらに好ましく、900nm以下がよりさら
に好ましく、880nm以下が特に好ましい。前記下限値以上とすることで長波長側の近
赤外領域を遮蔽できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで近赤外領域を遮蔽
するのに必要な色素数を減らすことができる傾向がある。
【0071】
スクアリリウム系化合物が吸収極大を2つ以上有する場合、近赤外領域の全領域を遮蔽
する観点から、前記吸収極大同士の少なくとも一部が互いに重なっていることが好ましい
。
スクアリリウム系化合物(a)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせ
て用いてもよいが、波長680~900nmの近赤外線の透過率を下げる観点から、2種
類以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0072】
スクアリリウム系化合物(a)は、公知の方法で製造することができる。例えばTop
.Heterocycl.Chem.14,133-181(2008)に記載の方法に
準じて製造することができる。
【0073】
<スクアリリウム系化合物(b)>
本発明の色素組成物は、前記スクアリリウム系化合物(a)以外のスクアリリウム系化
合物(b)を含有してもよい。
近赤外領域を効率的に遮蔽する観点から、前記スクアリリウム系化合物(b)は、波長
680~900nmに吸収極大を有し、前記吸収極大におけるモル吸光係数が1.0×1
05以上であることが好ましい。
【0074】
近赤外領域の波長帯は広いため、前記スクアリリウム系化合物(a)と、波長680~
900nmに吸収極大を有し、前記吸収極大におけるモル吸光係数が1.0×105以上
であるスクアリリウム系化合物(b)を組み合わせて用いることにより、可視領域の透過
率を維持しつつ、波長680~900nmの近赤外線の遮蔽性をより良好なものとするこ
とが可能となる。
【0075】
スクアリリウム系化合物は、分子間会合(J会合)することでシャープな発色が発現す
ることから、スクアリリウム系化合物同士の混合が好ましい。
可視領域の透過率を上げる観点から、スクアリリウム系化合物(b)の、波長680~
900nmに有する吸収極大におけるモル吸光係数は、通常、1.0×105以上であり
、1.7×105以上が好ましく、1.75×105以上がより好ましく、1.8×10
5以上がさらに好ましい。また、上限値は特に限定されないが、通常、4.0×105以
下である。
【0076】
スクアリリウム系化合物(b)が波長680~900nmに吸収極大を有し、前記吸収
極大におけるモル吸光係数を1.0×105以上とするためには、例えば、該スクアリリ
ウム系化合物(b)の骨格構造に、縮合環からなる強い電子供与性基を有させることが挙
げられる。縮合環からなる強い電子供与性基を付与することにより、スクアリリウム系化
合物(b)の骨格構造における置換基の分子内振動が抑えられ、スクアリリウム系化合物
(b)のモル吸光係数を上げることが可能となる。
【0077】
スクアリリウム系化合物(b)としては、例えば、以下のスクアリリウム系化合物が挙
げられる。
【0078】
【0079】
【0080】
スクアリリウム系化合物(b)としては、例えば、王子化学社製:SK01、SK01
C、SI-14、東京化成社製:B4649が挙げられる。
スクアリリウム系化合物(b)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせ
て用いてもよいが、波長680~900nmの近赤外線を遮蔽する観点から、2種類以上
を組み合わせて用いることが好ましい。
【0081】
スクアリリウム系化合物(b)を2種類以上組み合わせて用いる場合、例えば、スクア
リリウム系化合物(b)に該当するスクアリリウム系化合物(b1)と、スクアリリウム
系化合物(b1)以外のスクアリリウム系化合物(b)(以下、スクアリリウム系化合物
(b2)と称する。)を組みあわせて用いることが好ましく、吸収極大が異なる波長領域
に存在するスクアリリウム系化合物(b1)及びスクアリリウム系化合物(b2)を組み
合わせて用いることがより好ましく、例えば、吸収極大を波長840~900nmの範囲
に有するスクアリリウム系化合物(b1)と、吸収極大を波長680~740nmの範囲
に有するスクアリリウム系化合物(b2)を併用することが特に好ましい。
【0082】
<スクアリリウム系化合物(c)>
本発明の色素組成物は、前記スクアリリウム系化合物(a)及び前記スクアリリウム系
化合物(b)以外のスクアリリウム系化合物(c)を含んでもよく、前記スクアリリウム
系化合物(c)は波長650~680nmに吸収極大を有し、前記吸収極大におけるモル
吸光係数は1.5×105以上であることが好ましい。
【0083】
本発明の色素組成物はスクアリリウム系化合物(c)を含むことにより、波長600n
m未満の可視領域の透過率を損なうことなく、波長600nm以上の可視領域を遮蔽する
ことができる傾向がある。
スクアリリウム系化合物(c)の前記吸収極大におけるモル吸光係数は、波長600n
m未満の可視領域の透過性の観点から、1.0×105以上がより好ましく、1.5×1
05以上がさらに好ましい。また、上限値は特に限定されないが、通常、4.0×105
以下である。
【0084】
スクアリリウム系化合物(c)が波長650~680nmに吸収極大を有し、前記吸収
極大におけるモル吸光係数を1.5×105以上とするためには、例えば、スクアリリウ
ム系化合物(c)の骨格構造に、シアノ基、ニトロ基などの強い電子吸引性基をもつ縮合
環芳香族複素環を有させる、又は、置換基を有していてもよいアミノ基をもつ芳香族炭化
水素環を有させることが挙げられる。
【0085】
スクアリリウム系化合物(c)としては、例えば、以下のスクアリリウム系化合物が挙
げられる。
【0086】
【0087】
スクアリリウム系化合物(c)としては、例えば、王子化学社製:SN08、東京化成
社製:B4342が挙げられる。
スクアリリウム系化合物(c)は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせ
て用いてもよい。
本発明の色素組成物におけるスクアリリウム系化合物(a)の含有割合は特に限定され
ないが、色素組成物の全固形分中に0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がよ
り好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また、8質量%以下が好ましく、7質
量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで
色素組成物中での色素の安定性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすること
で色素析出が起こりにくい傾向がある。
【0088】
本発明の色素組成物におけるスクアリリウム系化合物(b)の含有割合は特に限定され
ないが、色素組成物の全固形分中に0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がよ
り好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また、8質量%以下が好ましく、7質
量%以下がより好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで
色素組成物中での色素の安定性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすること
で色素析出が起こりにくい傾向がある。
【0089】
本発明の色素組成物におけるスクアリリウム系化合物(a)に対するスクアリリウム系
化合物(b)の配合割合は特に限定されないが、スクアリリウム系化合物(a)100質
量部に対して、スクアリリウム系化合物(b)は10質量部以上が好ましく、20質量部
以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、また、200質量部以下が好ま
しく、180質量部以下がより好ましく、170質量部以下がさらに好ましい。前記下限
値以上とすることで吸収スペクトルのバランスがとれる傾向があり、また、前記上限値以
下とすることで近赤外領域において必要な吸収が得られる傾向がある。
【0090】
本発明の色素組成物がスクアリリウム系化合物(b1)を含む場合、スクアリリウム系
化合物(b1)の含有割合は特に限定されないが、色素組成物の全固形分中に0.1質量
%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好まし
く、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下
がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで色素組成物中での色素の安定性が向上す
る傾向があり、また、前記上限値以下とすることで色素析出が起こりにくい傾向がある。
【0091】
本発明の色素組成物がスクアリリウム系化合物(b2)を含む場合、スクアリリウム系
化合物(b2)の含有割合は特に限定されないが、色素組成物の全固形分中に0.1質量
%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好まし
く、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下
がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで色素組成物中での色素の安定性が向上す
る傾向があり、また、前記上限値以下とすることで色素析出が起こりにくい傾向がある。
【0092】
本発明の色素組成物がスクアリリウム系化合物(c)を含む場合、スクアリリウム系化
合物(c)の含有割合は特に限定されないが、色素組成物の全固形分中に0.1質量%以
上が好ましく、0.15質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましく
、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が
さらに好ましい。前記下限値以上とすることで色素組成物中での色素の安定性が向上する
傾向があり、また、前記上限値以下とすることで色素析出が起こりにくい傾向がある。
【0093】
<その他のスクアリリウム系化合物>
本発明の色素組成物は、スクアリリウム系化合物(a)、スクアリリウム系化合物(b
)及びスクアリリウム系化合物(c)以外のスクアリリウム系化合物(以下「その他のス
クアリリウム系化合物」と称する。)をさらに含んでいてもよい。
その他のスクアリリウム系化合物が有する極大吸収波長は特に限定されないが、700
nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、730nm以上がさらに好ましく
、また、870nm以下が好ましく、850nm以下がより好ましく、830nm以下が
さらに好ましい。前記下限値以上とすることでスクアリリウム系化合物(a)、スクアリ
リウム系化合物(b)、スクアリリウム系化合物(c)だけでは十分に遮蔽できない領域
の遮蔽性が良好となる傾向があり、また、前記上限値以下とすることで近赤外領域を遮蔽
するのに必要な色素の種類数を減らすことができる傾向がある。
【0094】
本発明の色素組成物がその他のスクアリリウム系化合物を含有する場合、その含有割合
は特に限定されないが、色素組成物の全固形分中に0.1質量%以上が好ましく、0.2
質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、また、10質量%以下
が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。前記下限値
以上とすることで色素組成物中での色素の安定性が向上する傾向があり、また、前記上限
値以下とすることで色素析出が起きにくい傾向がある。
【0095】
<ジチオレート錯体化合物>
本発明の色素組成物は、ジチオレート錯体化合物及び/又はシアニン化合物を含有する
。
ジチオレート錯体化合物としては、波長900~1200nmに吸収極大を有するもの
であれば、特に限定されないが、この波長領域に吸収極大をもたせる観点から第10族元
素、第11族元素及び第12族元素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む
ことが好ましい。
【0096】
第10族元素、第11族元素、第12族元素としては、例えば、Ni、Pd、Pt、C
u、Ag、Au、Znが挙げられるが、溶解性の観点から、Ni、Cu、Pd、Znが好
ましく、Ni、Cuがより好ましく、Niがさらに好ましい。
ジチオレート錯体化合物としては、上記の通り、溶解性の観点から、ニッケルジチオレ
ート錯体化合物が好ましい。
【0097】
また、ニッケルジチオレート錯体化合物は、波長950~1100nmに十分な極大吸
収を持たせる観点から下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される化学構造を有す
ることが好ましい。
【0098】
【0099】
【0100】
式(2)、式(3)中、X1、X2、X3、X4は各々独立に、置換基を有していても
よい脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
X1とX2、X3とX4は各々独立して、連結基を介して環を形成していてもよい。
【0101】
(X1、X2、X3、X4)
X1、X2、X3、X4は各々独立に、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。これ
らの中でも溶解性の観点からは、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0102】
その炭素数は通常1以上であり、3以上が好ましく、4以上がより好ましく、また、1
0以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。例えば、3~10
、好ましくは3~8、より好ましくは4~6である。前記下限値以上とすることで分岐鎖
を作ることができ、また、前記上限値以下とすることで熱安定性が確保できる傾向がある
。
【0103】
直鎖状脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピ
ル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基が挙げられる。これらの中でも溶
解性の観点から、n-ブチル基が好ましい。
分岐鎖状脂肪族炭化水素基の具体例としては、例えば、前述の直鎖状脂肪族炭化水素基
に、側鎖としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル
基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基を有する構造が挙げられ
る。
【0104】
環状脂肪族炭化水素基が有する環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロヘプタ
ン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、ノルボルナン環、イソボルナン環、アダマン
タン環、シクロドデカン環の環から水素原子を1つ除した基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ
基等の炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基が挙げ
られる。溶解性の観点から、アルコキシ基が好ましい。
【0105】
前記芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であっ
てもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペ
リレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、
アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が挙げられる。
【0106】
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であって
もよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロ
ール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾ
ール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロー
ル環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイ
ソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラ
ジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シ
ノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環
、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環が挙げられる。これらの中でも溶解性の観
点から、単環が好ましい。
【0107】
また、芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、
プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基
、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシ基が挙
げられる。溶解性の観点から、メタ位への置換基が好ましく、特にアルキル基が好ましい
。
【0108】
X1とX2、X3とX4は各々独立して、連結基を介して環を形成していてもよい。連
結基としては、例えば、以下が挙げられる。
【0109】
【0110】
以下にジチオレート錯体化合物の具体例を挙げる。
以下の具体例では、錯体として中心元素をNiで示しているが、中心元素はNiに限定
されるものではない。
【0111】
【0112】
ジチオレート錯体化合物としては、例えば、富士フィルム和光純薬社製:024-11
811、東京化成工業社製:T1272が挙げられる。
ジチオレート錯体化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用い
てもよい。
本発明の色素組成物がジチオレート錯体化合物を含有する場合、その含有割合は特に限
定されないが、色素組成物の全固形分中に1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより
好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また、10質量%以下が好ましく、8質量%
以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで、近
赤外光線の遮蔽性が確保できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでバインダ
ー樹脂への溶解性が確保できる傾向がある。
【0113】
本発明の色素組成物に含まれるジチオレート錯体化合物は波長900~1200nmに
吸収極大を有するが、波長900~1100nmの近赤外線を効果的に遮蔽する観点から
、ジチオレート錯体化合物の吸収極大波長は950nm以上が好ましく、1000nm以
上がより好ましい。また、1150nm以下が好ましい。
ジチオレート錯体化合物の分子量は、熱安定性の観点から、1000以下が好ましく、
800以下がより好ましい。また、溶解性を確保する観点から、400以上が好ましく、
500以上がより好ましい。
【0114】
<シアニン化合物>
シアニン化合物としては、波長900~1200nmに吸収極大を有するものであれば
、特に限定されないが、溶解性の観点から、下記一般式(4)で表される化学構造を有す
ることが好ましい。下記一般式(4)で表される化学構造において、二重結合は共鳴構造
をとっていてもよい。
【0115】
【0116】
式(4)中、R9、R11は各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよい脂肪族
炭化水素基を表す。R12、R13は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有して
いてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有し
ていてもよいアミノ基を表す。
R8、R10、R14は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素
基、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
【0117】
R8とR14、R13とR10は各々独立に、結合して窒素を含む複素環を形成していてもよ
い。
X-はアニオンを表す。
nは3以上の整数である。
【0118】
(R9、R11)
上記一般式(4)においてR9、R11は各々独立に、水素原子又は置換基を有していて
もよい脂肪族炭化水素基を表す。
脂肪族炭化水素基の炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ま
しく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。例
えば、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6である。
【0119】
具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-
ヘキシル基、n-ヘプチル基が挙げられる。これらの中でも熱分解温度を維持する観点か
ら、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基が好ましく、特にn-ブチル基が好ましい
。
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ
基等の炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基が挙げ
られる。溶解性の観点から、無置換が好ましい。
【0120】
(R12、R13)
R12、R13は各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい脂肪族
炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族環基、又は置換基を有していてもよいアミ
ノ基を表す。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げ
られる。合成容易性の観点からは塩素原子が好ましい。
【0121】
脂肪族炭化水素基の炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ま
しく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。例
えば、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6である。
具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-
ヘキシル基、n-ヘプチル基が挙げられる。
【0122】
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ
基等の炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基が挙げ
られる。
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であっ
てもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペ
リレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、
アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が挙げられる可視領域での副吸収を抑
える観点からはベンゼン環が好ましい。
【0123】
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であって
もよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロ
ール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾ
ール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロー
ル環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイ
ソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラ
ジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シ
ノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環
、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環が挙げられる。これらの中でも溶解性の観
点から、単環が好ましい。
【0124】
また、芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、
プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基
、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシ基が挙
げられる。溶解性の観点から、メトキシ基が好ましい。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、-NH2で表されるアミノ基のほか、上
記脂肪族炭化水素基、上記芳香族環基を置換基として有するアミノ基が挙げられる。具体
的には、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、(2-エチルヘキシル)アミノ
基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。吸収極大波長を好ましい範囲とする観点から、ジ
フェニルアミノ基が好ましい。
【0125】
これらの中でも、R12、R13としては、水素原子、ハロゲン原子、フェニル基、メトキ
シフェニル基、ジフェニルアミノ基が好ましく、特に、水素、メトキシフェニル基が好ま
しい。
【0126】
(R8、R10、R14)
R8、R10、R14は各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素
基、置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。
脂肪族炭化水素基の炭素数は通常1以上であり、2以上が好ましく、3以上がより好ま
しく、また、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。例
えば、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは3~6である。
【0127】
具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-
ヘキシル基、n-ヘプチル基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ
基等の炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基が挙げ
られる。
【0128】
芳香族環基としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。
芳香族炭化水素環基における芳香族炭化水素環としては、単環であっても縮合環であっ
てもよく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペ
リレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、
アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環が挙げられる。
【0129】
また、芳香族複素環基における芳香族複素環としては、単環であっても縮合環であって
もよく、例えば、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロ
ール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾ
ール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロー
ル環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイ
ソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラ
ジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シ
ノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環
、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環が挙げられる。
【0130】
また、芳香族環基が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、
プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、クロロ基、ブロモ基、フルオロ基、ヒドロキシ基
、アミノ基、エポキシ基、オリゴエチレングリコール基、フェニル基、カルボキシ基が挙
げられる。
R8とR14、R13とR10は各々独立に、結合して窒素を含む複素環を形成していてもよ
い。
【0131】
窒素を含む複素環であれば特に限定されないが、5員環、6員環であることが好ましい
。
窒素を含む複素環としては、例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オ
キサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラ
ゾール環、ピロロピロール環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベ
ンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジ
ン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環
、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、1-置換-2
-メチルベンゾ[cd] インドリウム塩が挙げられる。吸収領域の長波長化の観点から、
縮合環が好ましく、特に1-置換-2-メチルベンゾ[cd] インドリウム塩が好ましい
。
【0132】
一般式(4)におけるX-はアニオンを表し、前記アニオンとしては、例えば、塩素ア
ニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素
酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化
アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸
アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフ
ェニルアミン-4-スルホン酸アニオン、2-アミノ-4-メチル-5-クロロベンゼン
スルホン酸アニオン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸アニオン等の有機スル
ホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン
酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン等の有機リン酸系
アニオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオン、ビスパーフルオロブタン
スルホニルイミドアニオン、パーフルオロ-4-エチルシクロヘキサンスルホネートアニオ
ン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、トリス(フルオロアルキルス
ルホニル)カルボアニオンが挙げられる。
【0133】
汎用性の観点から、トルエンスルホン酸アニオン、四フッ化ホウ素アニオンが好ましく
、四フッ化ホウ素アニオンが特に好ましい。
一般式(4)におけるnは3以上の整数である。上限値は特に限定されないが、好まし
くは8以下、より好ましくは6以下である。前記上限値以下であれば、所望の波長範囲に
吸収極大を有する傾向がある。
以下にシアニン化合物の具体例を挙げる。
【0134】
【0135】
シアニン化合物としては、例えば、SPECTRUM INFO社製:S01259、
S01445、S09427、S01966、S01446が挙げられる。
シアニン化合物は、1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい
。
本発明の色素組成物がシアニン化合物を含有する場合、その含有割合は特に限定されな
いが、色素組成物の全固形分中に1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく
、3質量%以上がさらに好ましく、また、8質量%以下が好ましく、7質量%以下がより
好ましく、6質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで近赤外光線の遮
蔽性が確保できる傾向があり、また、前記上限値以下とすることでバインダー樹脂への溶
解性が確保できる傾向がある。
【0136】
本発明の色素組成物に含まれるシアニン化合物は波長900~1200nmに吸収極大
を有するが、波長900~1100nmの近赤外線を効果的に遮蔽する観点から、シアニ
ン化合物の吸収極大波長は950nm以上が好ましく、1000nm以上がより好ましい
。また、1150nm以下が好ましい。
シアニン化合物の極大吸収波長におけるモル吸光係数は、1.5×105以上が好まし
く、2.0×105以上がより好ましい。上限は特に限定されないが、通常、4.0×1
05以下である。
【0137】
シアニン化合物の分子量は、溶解性の観点から、1500以下が好ましく、1000以
下がより好ましい。また、熱安定性の観点から、400以上が好ましく、500以上がよ
り好ましい。
本発明の色素組成物は、前記スクアリリウム系化合物、ジチオレート錯体化合物及び/
又はシアニン系化合物以外に、必要に応じてさらに他の成分を含有していてもよい。他の
成分としては、例えば、その他の色素、樹脂、溶剤等が挙げられる。
【0138】
<樹脂>
本発明の色素組成物は、樹脂を含有してもよい。樹脂としては、特に限定されるもので
はないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂(PMMA等)、ポリアミド系樹脂、ポリウ
レタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。色素組成物
中での色素の安定性の観点から、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0139】
本発明の色素組成物が樹脂を含有する場合、樹脂の含有割合は特に限定されないが、全
固形分中に90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、97質量%以上
がさらに好ましく、また、99.99質量%以下が好ましく、99.9質量%以下がより
好ましく、99.5質量%以下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで成膜性が
向上する傾向があり、また、前記上限値以下とすることで信頼性が向上する傾向がある。
【0140】
<溶剤>
本発明の色素組成物は、溶剤を含有していてもよい。溶剤としては、特に限定されるも
のではないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のアルカン
類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアル
カン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、ヘ
プタノール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ジアセトンアルコール、フル
フリルアルコール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロ
ソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ類;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、
プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルア
セテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール
モノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレ
ングリコール類;アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等
のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸アミル
、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒ
ドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシ
プロピオン酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン
等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメ
チルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の高極性溶剤類が挙
げられる。
【0141】
本発明の色素組成物が溶剤を含有する場合、溶剤の含有割合は特に限定されないが、7
0質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ま
しく、また、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、92質量%以
下がさらに好ましい。前記下限値以上とすることで溶液安定性が良好となる傾向があり、
また、前記上限値以下とすることで塗膜の性能が向上する傾向がある。
【0142】
[2]膜
次に、本発明の膜について説明する。本発明の膜は、上述した本発明の色素組成物を用
いて形成したものである。
本発明の膜は、近赤外領域の遮蔽性と可視領域の透過性に優れるので、近赤外線カット
フィルタとして好ましく用いることができる。また、本発明の膜は、赤外線透過フィルタ
や熱線遮蔽フィルタとして用いることもできる。本発明の膜は、パターンを有していても
よく、パターンを有さない膜(平坦膜)であってもよい。また、本発明の膜は、支持体上
に積層して用いてもよく、支持体から剥離して用いてもよい。
【0143】
本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、25μm以下が好ましく
、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、1μm
以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。前記下限値
以上であれば、信頼性が向上する傾向があり、また、前記上限値以下であれば、色素析出
が起きにくい傾向がある。
【0144】
本発明の膜は、カラーフィルタと組み合わせて用いることもできる。
本発明において、近赤外線カットフィルタとは、可視領域の波長の光(可視光)を透過
させ、近赤外領域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を遮光するフィルタを意味す
る。近赤外線カットフィルタは、可視領域の波長の光をすべて透過するものであってもよ
く、可視領域の波長の光のうち、特定の波長領域の光を通過させ、特定の波長領域の光を
遮光するものであってもよい。また、本発明において、カラーフィルタとは、可視領域の
波長の光のうち、特定の波長領域の光を通過させ、特定の波長領域の光を遮光するフィル
タを意味する。また、赤外線透過フィルタとは、可視領域の波長の光を遮光し、近赤外領
域の波長の光(近赤外線)の少なくとも一部を透過させるフィルタを意味する。
【0145】
本発明の膜を、近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜は、波長650
~1500nmの範囲に極大吸収波長を有することが好ましい。また、近赤外線カットフ
ィルタの近赤外線遮蔽性の好ましい範囲は用途によって異なるが、波長650~1500
nmの範囲の少なくとも1点での透過率が20%以下であることが好ましく、15%以下
がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。
【0146】
本発明の膜を、近赤外線カットフィルタとして用いる場合、波長380~600nmの
平均透過率が30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、
40%以上であることがさらに好ましい。上限は特に限定されないが、通常は100%以
下である。
本発明の膜を、近赤外線カットフィルタとして用いる場合、波長680~900nmの
平均透過率が13%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
下限は特に限定されないが、通常0%以上である。
【0147】
本発明の膜を近赤外線カットフィルタとして用いる場合、本発明の膜の他に、更に、銅
を含有する層、誘電体多層膜、紫外線吸収層などを有していてもよい。
本発明の膜を、近赤外線カットフィルタまたは赤外線透過フィルタとして用いる場合、
近赤外線カットフィルタと赤外線透過フィルタとを組み合わせて用いることもできる。近
赤外線カットフィルタと、赤外線透過フィルタとを組み合わせて用いることで、特定波長
の赤外線を検出する赤外線センサの用途に好ましく用いることができる。両者のフィルタ
を組み合わせて用いる場合、近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過フィルタの両方を
本発明の色素組成物を用いて形成することもでき、いずれか一方のみを、本発明の色素組
成物を用いて形成することもできる。
【0148】
本発明の膜は、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの
固体撮像素子や、赤外線センサ、画像表示装置などの各種装置に用いることができる。
【0149】
[3]光学フィルタ
次に、本発明の光学フィルタについて説明する。本発明の光学フィルタは、上述した本
発明の膜を有する。本発明の光学フィルタは、近赤外線カットフィルタおよび赤外線透過
フィルタから選ばれる少なくとも1種として好ましく用いることができる。
本発明の光学フィルタは、波長680~1000nmの近赤外線の遮蔽性と可視領域に
おける透過性が両立可能であり、CMOSセンサと好適に組み合わせることができる。
【0150】
[4]積層体
本発明の積層体は、本発明の膜と、カラーフィルタとを有する。本発明の積層体は、本
発明の膜と、カラーフィルタとが厚み方向で隣接していてもよく、隣接していなくてもよ
い。本発明の膜と、カラーフィルタとが厚み方向で隣接していない場合は、カラーフィル
タが形成された基材とは別の基材に本発明の膜が形成されていてもよく、本発明の膜とカ
ラーフィルタとの間に、固体撮像素子を構成する他の部材(例えば、マイクロレンズ、平
坦化層など)が介在していてもよい。
【0151】
[5]固体撮像素子
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。本発明の固体撮像素子の構成
としては、本発明の膜を有する構成であり、固体撮像素子として機能する構成であれば特
に限定はない。例えば、以下のような構成が挙げられる。
支持体上に、固体撮像素子の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリ
シリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオ
ードの受光部のみ開口したタングステン等からなる遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面
およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス
保護膜を有し、デバイス保護膜上に、本発明の膜を有する構成である。さらに、デバイス
保護膜上であって、本発明の膜の下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレ
ンズ等。以下同じ)を有する構成や、本発明の膜上に集光手段を有する構成等であっても
よい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各色画素
を形成する硬化膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各色画素に
対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置としては、例え
ば、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装
置が挙げられる。
【0152】
[6]画像表示装置
本発明の膜は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置な
どの画像表示装置に用いることもできる。例えば、本発明の膜を、画像表示装置のバック
ライト(例えば白色発光ダイオード(白色LED))に含まれる赤外光を遮断する目的、
周辺機器の誤作動を防止する目的、各着色画素に加えて赤外の画素を形成する目的で用い
ることができる。
【0153】
画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著
、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産
業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、
例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年
発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば
、前記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に
適用できる。
【0154】
画像表示装置は、白色有機EL素子を有するものであってもよい。白色有機EL素子と
しては、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、
開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・
高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年
などに記載されている。有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(43
0nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)及び黄色領域(580nm
-620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加
え更に赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有するものがより好まし
い。
【0155】
[7]赤外線センサ
本発明の赤外線センサは、上述した本発明の膜を有する。本発明の赤外線センサの構成
としては、本発明の膜を有する構成であり、赤外線センサとして機能する構成であれば特
に限定はない。例えば、特開2018-45011号公報の[0201]~[0207]
に記載の態様が挙げられる。
【0156】
[8]指紋認証用センサ
本発明の指紋認証用センサは、上述した本発明の膜を有する。本発明の指紋認証用セン
サの構成としては、本発明の膜を有する構成であり、指紋認証用センサとして機能する構
成であれば特に限定はない。例えば、中国特許公開第111066032号、特開202
0-009397号公報の段落[0081]~[0098]、[
図7]~[
図9]に記載
の態様が挙げられる。
【0157】
本発明の膜は波長680~1000nmの近赤外線の遮蔽性と可視領域における透過性
が両立可能であり、CMOSセンサと組み合わせることで、例えば、感度の良い指紋認証
用センサを得ることが出来る。
【実施例0158】
以下、本発明の色素組成物について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はそ
の要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1:化合物3の合成)
【0159】
【0160】
化合物1(5.0g)と化合物2(4.39g)にトルエン500mLを加え、3時間
110℃で還流した。50℃以下まで冷却した後、減圧濃縮し、得られた粗生成物に酢酸
80mL、水80mL、12N濃塩酸4mLを加え、110℃で2時間激しく撹拌した。
室温まで冷却した後、一晩放置し、得られた沈殿をクロロホルム洗浄した後、減圧乾燥さ
せ、化合物3を4.6g得た。
【0161】
(合成例2:化合物5の合成)
【0162】
【0163】
化合物1の代わりに化合物4を用いた以外は合成例1と同様にして、化合物5を3.8
g得た。
【0164】
(合成例3:スクアリリウム系化合物(a)-1の合成)
【0165】
【0166】
化合物3(200mg)と化合物18(250mg)をトルエン20mLとn―ブタノ
ール20mLの混合溶媒に加え、125℃でディーンスターク法により3時間加熱撹拌し
た。加熱の途中に、3回、トルエン20mLを添加した。室温まで冷却した後、得られた
固体をエーテルで洗浄し、乾燥した後、スクアリリウム系化合物(a)-1を195mg
で得た。
【0167】
(合成例4:スクアリリウム系化合物(a)-2の合成)
【0168】
【0169】
化合物3の代わりに化合物5を用いた以外は合成例3と同様にして、スクアリリウム系
化合物(a)-2を202mg得た。
【0170】
<スクアリリウム系化合物(b)>
SK01C:王子化学社製「SK01C」(波長680~900nmにおける吸収極大
のモル吸光係数が1.9×105)
【0171】
<スクアリリウム系化合物(c)>
SN08:王子化学社製「SN08」(波長650~680nmにおける吸収極大のモ
ル吸光係数が3.6×105)
【0172】
<ジチオレート錯体化合物1>
富士フィルム和光純薬社製:024-11811を用いた。下記式で表される化学構造
を有する。極大吸収波長は1001nmである。
【0173】
【0174】
<シアニン化合物1>
SPECTRUM INFO社製:S01445を用いた。下記式で表される化学構造
を有する。極大吸収波長は985nmである。
【0175】
【0176】
<ナフタロシアニン化合物1>
山田化学社製:FDN-010を用いた。極大吸収波長1014nmである。
【0177】
<モル吸光係数の測定>
各化合物の吸収極大波長、吸収極大におけるモル吸光係数はJIS K 0115(2
004)に準拠し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、JASCO V-770
)を用いて、25℃、クロロホルム溶媒中で測定し、算出した。
【0178】
<スクアリリウム系化合物(a)-1、(a)-2の光学特性の評価>
スクアリリウム系化合物(a)-1、(a)-2について、紫外可視近赤外分光光度計
(日本分光社製、JASCO V-770)を使用し、最大吸収波長での吸光度が1にな
るように溶液調整したテトラヒドロフラン溶液を作製し、吸収スペクトルを測定した。吸
収スペクトルから読み取った吸収極大の数と、各吸収極大の極大吸収波長の結果を表1に
示す。
【0179】
【0180】
<色素組成物及び近赤外線カットフィルタの作製>
トルエンと1-メトキシー2-プロパノールを質量比5:5の割合で混合した溶液85
gにダイヤナールBR-80(三菱ケミカル社製)15gを溶解させ、表2に記載の化合
物を添加してよく攪拌し、実施例1、実施例2及び比較例1の各色素組成物を作製した。
得られた各色素組成物をポリエチレンテレフタレート製フィルム上に塗布し、90℃で
2分間乾燥し、厚さ10μmの膜を形成し、近赤外線カットフィルタを作製した。
【0181】
【0182】
次に、作製した近赤外線カットフィルタを分光光度計(日立ハイテクサイエンス社製、
U4100)で波長400~1200nmの範囲の透過率スペクトルを測定した。実施例
1、実施例2及び比較例1の測定スペクトルを
図1に示す。
次に、実施例1、実施例2及び比較例1について、得られた透過率スペクトルから、以
下に定義されるT(680-1000nm)、T(450-600nm)の透過率の結果
を表3に示した。
【0183】
T(680-1000nm):波長680~1000nmの1nm刻みの透過率の平均
値。
T(450-600nm):波長450~600nmの1nm刻みの透過率の平均値。
【0184】
【0185】
表3から明らかなように、T(680-1000nm)の値から、近赤外線の遮蔽性は
比較例1に対して実施例1、実施例2が優れており、T(450-600nm)の値から
、可視領域の透過性も実施例1、実施例2が優れている。このように、実施例1及び実施
例2の近赤外線カットフィルタは、波長680~1000nmの近赤外線の遮蔽性と可視
領域における透過性が両立可能であることが分かる。
【0186】
実施例1及び実施例2の近赤外線カットフィルタは、スクアリリウム系化合物(a)と
、ジチオレート錯体化合物又はシアニン化合物を含有し、前記ジチオレート錯体化合物及
び前記シアニン化合物が波長900~1200nmに吸収極大を有する。
スクアリリウム系化合物(a)は近赤外領域に強い吸収を示すユニットである、芳香族
環基と、インドレニル基から誘導される特定の基を持つことで、それぞれのユニットに由
来する吸収極大を近赤外領域に有する、つまり、近赤外領域において吸光度が高く幅広な
吸収帯を有するものとなることから、近赤外領域の全領域を遮蔽するのに必要な色素の種
類数を3種又は4種で構築できたと考えられる。さらに近赤外領域のモル吸光係数が大き
いことで、添加量を抑制でき、可視領域の光透過率に影響する不溶解物や不純物の混入が
抑制できたため、可視領域の光線透過率が高くなったと考えられる。
【0187】
図1に示すように、実施例1、2では波長900~1200nmに吸収極大を有する、
ジチオレート錯体化合物又はシアニン化合物を用いることで、可視領域の透過性が高く、
波長1000nm程度の近赤外線も遮蔽することが可能となった。
一方、比較例1のように、ナフタロシアニン化合物を用いた場合、可視領域の透過性が
低く、波長1000nm程度の近赤外線の遮蔽性も劣る結果となった。