IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

特開2022-165905ガラス及びその製造方法、これを用いた部材並びに装置
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165905
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ガラス及びその製造方法、これを用いた部材並びに装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/095 20060101AFI20221025BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20221025BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20221025BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20221025BHJP
   C03B 20/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C03C3/095
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03B20/00 G
C03B20/00 K
C03B20/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039937
(22)【出願日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021070929
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】新井 一喜
【テーマコード(参考)】
4G014
4G062
【Fターム(参考)】
4G014AH00
4G062AA01
4G062BB01
4G062BB02
4G062CC04
4G062DA05
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB04
4G062DB05
4G062DC01
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EA10
4G062EB01
4G062EC01
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062ED04
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EE04
4G062EF01
4G062EF02
4G062EF03
4G062EF04
4G062EG01
4G062EG02
4G062EG03
4G062EG04
4G062FA01
4G062FA10
4G062FB01
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE01
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FJ02
4G062FJ03
4G062FJ04
4G062FK01
4G062FK02
4G062FK03
4G062FK04
4G062FL01
4G062FL02
4G062FL03
4G062FL04
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062MM40
4G062NN34
4G062NN40
(57)【要約】
【課題】内部にΦ0.1mm超の気泡及びクラックを含まない、実用性に優れ、より高い耐プラズマ性を有するガラスとその製造方法、及びこのガラスからなるガラス部材、このガラス部材を備えた半導体製造装置及び液晶製造装置を提供する。
【解決手段】Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上からなり、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下であるガラス。このガラスからなるガラス部材を備えた半導体製造装置及び液晶製造装置。Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上の原料粉末を容器に入れ、混合後、減圧下で加熱溶融して溶融体を得る工程(1)、溶融体をHeガス雰囲気下で加圧する工程(2-1)、又は、溶融体をHeガス以外の不活性ガス雰囲気で加熱し、次いで前記不活性ガス雰囲気下で加圧する工程(2-2)、及び溶融体を冷却する工程(3)、を含む、ガラスの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上からなり、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下であるガラス。
【請求項2】
前記面積占有率が0.003%以下である、請求項1に記載のガラス。
【請求項3】
前記2価以上の金属元素の酸化物が、Al、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の酸化物である、請求項1又は2に記載のガラス。
【請求項4】
Si、Al、並びに、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の酸化物からなる、請求項1に記載のガラス。
【請求項5】
前記酸化物が、Siの酸化物、Alの酸化物、及び、第3族元素の酸化物からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項6】
前記第3族元素が、Y、La又はCeである、請求項3~5のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項7】
Siの含有量が、Si及び2価以上の金属元素からなる全金属元素の含有量の30原子%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項8】
Alの含有量と、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の含有量との総和が、全金属元素の含有量の25原子%以上である、請求項4~7のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項9】
Alに対する、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の原子比が、0.05以上、20以下である、請求項4~8のいずれか一項に記載のガラス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスを含むガラス部材。
【請求項11】
請求項10に記載のガラス部材を備えた半導体製造装置。
【請求項12】
請求項10に記載のガラス部材を備えた液晶製造装置。
【請求項13】
Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上の原料粉末を容器に入れ、混合後、減圧下で加熱溶融して溶融体を得る工程(1)、
溶融体をHeガス雰囲気下で加圧する工程(2-1)、又は、
溶融体をHeガス以外の不活性ガス雰囲気で加熱し、次いで前記不活性ガス雰囲気下で加圧する工程(2-2)、及び
溶融体を冷却する工程(3)、
を含む、ガラスの製造方法。
【請求項14】
工程(1)の減圧は、10Torr以下であり、加熱温度は1500℃以上である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程(2-1)におけるHeガス雰囲気下での加圧の圧力は0.05MPa以上である、請求項13又は14に記載の製造方法。
【請求項16】
工程(2-1)におけるHeガス雰囲気での加圧が、温度1500℃以上であり、かつ、2000℃以下での加圧である、請求項13~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
工程(2-2)におけるHeガス以外の不活性ガス雰囲気が、窒素ガス雰囲気及びArガス雰囲気の少なくともいずれかである、請求項13~16のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス及びその製造方法、これを用いた部材並びに装置に関する。本発明は、より詳細には、高耐久性を有する石英系のガラスとその製造方法、さらにこのガラスを用いた部材及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野や液晶製造分野において、プラズマを用いた製造装置が多用されている。近年の半導体集積回路の微細化に伴い、プラズマを用いたドライエッチング工程はその重要性を増しつつある。これらの製造工程では、弗素系ガスや塩素系ガス等のハロゲン化物ガスの使用が必須である。
【0003】
また、プラズマを用いた装置の内部を構成する部材としては、高周波透過性に優れ、かつ、比較的安価に高純度な複雑形状の部材を製造可能な部材であるため、石英ガラス部材が多用されている。しかしながら、ハロゲン化物ガス及びそのプラズマと接触する部位において、石英ガラスはその表面からエッチングが進行する。そのため、使用と共に石英ガラス部材は徐々にエッチングされ、その結果、減肉される現象が生じていた。石英ガラスの減肉現象は石英ガラス部材の寿命を低下させるだけでなく、異常放電の原因ともなりうる。
【0004】
この問題を解決するために、プラズマによるエッチング速度が石英ガラスより小さい材料として、アルミナの焼結体(特許文献1参照)、イットリウム・アルミニウム・ガーネットの焼結体(特許文献2参照)、窒化アルミニウムの焼結体(特許文献3参照)などをプラズマと接触する部位に用いることが検討されている。しかしながら、これらの材料は、減肉時の結晶粒界から粒子脱落が生じるため、半導体や液晶の歩留まりを低下させる等の問題があった。また、これらの材料を製造するための高純度の原料粉末の製造は困難であった。これに加え、アルミナ等の材料は、石英ガラスに比べ加工性が悪く、部材とする場合にコストが高くなる。
【0005】
それに対して、ハロゲン化物ガス及び/又はそのプラズマを用いる半導体製造装置または液晶製造装置の部材として充分な耐久性を有する、特定比率でSi、Al、並びに、周期律表第2A族、第3A族及び第4A族元素の1種以上を含有する酸化物である石英系のガラスが知られている(特許文献4参照)。このガラスは、内部気泡やクラックが無く、かつ、可視光に対して実質的に透明かつ高耐久性のガラスであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開平5-217946号公報
【特許文献2】日本国特開平10-236871号公報
【特許文献3】日本国特開平10-275524号公報
【特許文献4】日本国特開2004-284828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載のガラスは、高耐久性である。特に、Al及びYの添加量が比較的多いガラスは、耐プラズマ性が高かった(例えば、特許文献4の表2の試料No.42参照)。このガラスのガラス性状は「透明」と評価され、内在気泡やクラックが無いことが示されている。しかしながら、より直径(以下、「Φ」ともいう。)の小さいΦ0.1mm超の泡及びΦ0.1mm以下の泡の面積占有率については記載されていない。
【0008】
本発明の目的は、内部にΦ0.1mm超の泡及びクラックを含まない、実用性に優れ、より高い耐プラズマ性を有するガラスとその製造方法の少なくともいずれかを提供することにある。
【0009】
さらに本発明は、上記ガラスからなるガラス部材、このガラス部材を備えた半導体製造装置及び液晶製造装置、の少なくともいずれかを提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、かかる課題を解決するために検討した。その結果、Si及び2価以上の金属元素の1種または2種以上の酸化物の溶融体をHeガス雰囲気下で加圧するか、又はHeガス以外の不活性ガス雰囲気で加熱し、次いで前記不活性ガス雰囲気下で加圧することで、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下である、Si及び2価以上の金属元素の1種または2種以上の酸化物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は特許請求の範囲に記載の通りであり、また、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上からなり、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下であるガラス。
[2] 前記面積占有率が0.003%以下である、上記[1]に記載のガラス。
[3] 前記2価以上の金属元素の酸化物が、Al、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の酸化物である上記[1]又は[2]に記載のガラス。
[4] Si、Al、並びに、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の酸化物からなる、上記[1]に記載のガラス。
[5] 前記酸化物が、Siの酸化物、Alの酸化物、及び、第3族元素の酸化物からなる、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のガラス。
[6] 前記第3族元素が、Y、La又はCeである[3]~[5]に記載のガラス。
[7] Siの含有量が、Si及び2価以上の金属元素からなる全金属元素の含有量の30原子%以上である[1]~[6]のいずれか1項に記載のガラス。
[8] Alの含有量と、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の含有量との総和が、全金属元素の含有量の25原子%以上である[4]~[7]のいずれか1項に記載のガラス。
[9] Alに対する、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)の原子比が、0.05以上、20以下である[4]~[8]のいずれか1項に記載のガラス。
[10] 上記[1]~[9]のいずれか一項に記載のガラスを含むガラス部材。
[11] 上記[10]に記載のガラス部材を備えた半導体製造装置。
[12] 上記[10]に記載のガラス部材を備えた液晶製造装置。
[13] Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上の原料粉末を容器に入れ、混合後、減圧下で加熱溶融して溶融体を得る工程(1)、
溶融体をHeガス雰囲気下で加圧する工程(2-1)、又は、
溶融体をHeガス以外の不活性ガス雰囲気で加熱し、次いで前記不活性ガス雰囲気下で加圧する工程(2-2)、及び
溶融体を冷却する工程(3)、
を含む、ガラスの製造方法。
[14] 工程(1)の減圧は、10Torr以下であり、加熱温度は1500℃以上である、上記[13]に記載の製造方法。
[15] 工程(2-1)におけるHeガス雰囲気下での加圧の圧力は0.05MPa以上である上記[13]又は[14]に記載の製造方法。
[16] 工程(2-1)におけるHeガス雰囲気での加圧が、温度1500℃以上であり、かつ、2000℃以下での加圧である上記[13]~[15]のいずれか一項に記載の製造方法。
[17] 工程(2-2)におけるHeガス以外の不活性ガス雰囲気が、窒素ガス雰囲気及びArガス雰囲気の少なくともいずれかである、上記[13]~[16]のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内部にΦ0.1mm超の泡及びクラックを含まない、実用性に優れ、より高い耐プラズマ性を有するガラスを提供することができる。
このガラスは、ハロゲン化物ガスおよびそのプラズマを用いる半導体製造装置または液晶製造装置の部材として好適に使用することのできる耐久性の高いガラス部材である。さらにこのガラスは、高純度でかつ石英系のガラスの持つ良好な加工性、低発塵性も維持している。
【0013】
本発明のガラスは、内部にΦ0.1mm超の泡及びクラックを含まないことから、外観上、欠陥の少ない均質なガラスであり、エッチングにより部材が減耗され、内部気泡が表面に出て泡切れした際の発塵リスクを抑制することができ、泡切れによる表面の凹凸による異常放電を抑制することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ガラス>
本発明のガラスは、Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上からなり、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下であるガラスである。本発明は、好ましくは、Siの酸化物、及び、2価以上の金属元素の酸化物から構成され、なおかつ、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下であるガラスであり、より好ましくは、Siの酸化物、及び、Fe及びCu以外の2価以上の金属元素の酸化物から構成され、なおかつ、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下であるガラスである。なお、本発明において「泡」及び「気泡」は同じ意味で使用される。
【0015】
他の実施形態において、本発明は、Si及び2価以上の金属元素の酸化物の1種以上からなり、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.003%以下であるガラスであることが好ましく、Siの酸化物、及び、2価以上の金属元素の酸化物から構成され、なおかつ、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.003%以下であるガラスであることがより好ましく、Siの酸化物、及び、Fe及びCu以外の2価以上の金属元素の酸化物から構成され、なおかつ、直径0.1mm超の泡を含まず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.003%以下であるガラスであることが更に好ましい。
【0016】
本発明のガラスの組成は、Si及び2価以上の金属元素(以下、「多価金属元素」ともいう。)の酸化物の1種以上からなる。Siの酸化物と、1種以上の多価金属元素の酸化物とから構成されるガラスであることで、プラズマに対する耐久性が高くなりやすい。
【0017】
多価金属元素は、例えば、Al、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素が挙げられ、本発明のガラスに含まれる多価金属元素は、遷移金属元素以外の金属元素であることが好ましく、Al、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素の群から選ばれる1種以上であることがより好ましく、Al及び第3族元素の少なくともいずれかであることが更に好ましく、Al及び第3族元素であることが更により好ましい。
【0018】
第2族元素は、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raであり、好ましくはMg、Ca、Sr、Baである。本発明のガラスに含まれる第2族元素は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。さらに、イオン半径が比較的大きく、なおかつ、移動度が小さいため半導体素子に悪影響を及ぼしにくいことに加え、毒性を持たないため、本発明のガラスに含まれる第2族元素はSrであることが特に好ましい。
【0019】
第3族元素は、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luである。本発明のガラスに含まれる第3族元素は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、コストの点からはY、La、Ceなど、また更にはY、La及びCeの群から選ばれる1種以上が好ましい。さらに、可視域に吸収を持たないため、本発明のガラスに含まれる第3族元素はY及びLaであることが好ましく、Yであることがより好ましい。
【0020】
また、本発明のガラスは、Alと、Y、La、Ceとがガラスに共存することが好ましく、本実施形態のガラスは、Alの酸化物及び、Y及びLaの少なくともいずれかの酸化物を含むことが好ましい。
【0021】
第4族元素は、例えば、Ti、Zr又はHfである。本発明のガラスに含まれる第4族元素は、Ti、Zr及びHfの群から選ばれる1種以上であることが好ましく、コストの点から、Ti又はZrであることがより好ましい。
【0022】
本発明のガラスを構成する酸化物は、Si、Al、並びに、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素(M)(以下、周期表第2族元素、第3族元素及び第4族元素からなる群より選ばれる1種以上の元素をまとめて「M元素」ともいう。)の酸化物からなることが好ましい。すなわち、本発明のガラスは、少なくともSiの酸化物、Alの酸化物、及び、M元素の酸化物を含むことが好ましく、少なくともSiの酸化物、Alの酸化物、及び、第3族元素の酸化物を含むことがより好ましく、少なくともSiの酸化物、Alの酸化物、並びに、Yの酸化物及びLaの酸化物の少なくともいずれかを含むことが更に好ましく、少なくともSiの酸化物、Alの酸化物、及び、Yの酸化物を含むことが更により好ましい。さらに、本発明のガラスにおける酸化物は、Siの酸化物、Alの酸化物及びM元素の酸化物からなることが好ましく、Siの酸化物、Alの酸化物及び第3族元素の酸化物からなることがより好ましく、Siの酸化物、Alの酸化物並びに、Y及びLaの少なくともいずれかの酸化物からなることが好ましく、Siの酸化物、Alの酸化物及びYの酸化物からなることが好ましい。
【0023】
本発明のガラスを構成する酸化物のSiの含有量は、Si及び多価金属元素からなる全金属元素の含有量(すなわち、本発明のガラスのSi及び多価金属元素の合計に対するSiの原子割合)の30原子%以上、更には32原子%以上である。Siの含有量は、全金属元素の含有量の45原子%以上であることが好ましい。耐プラズマ性の観点から、Siの含有量は、全金属元素の含有量の90原子%以下、85原子%以下、80原子%以下、75原子%以下、70原子%以下、60原子%以下又は45原子%以下であることが好ましい。
【0024】
なお、本発明における「金属元素」に含まれる元素は遷移金属元素、典型金属元素及び半金属元素である。
【0025】
本発明のガラスは、Si及び多価金属元素の合計に対する、多価金属元素の合計原子割合(以下、「多価金属含有量」ともいう。)が、70原子%未満又は68原子%未満であること、また、10原子%超、40原子%超又は55原子%超であること、が好ましい。
【0026】
例えば、本発明のガラスを構成する酸化物が、Si、Al、及び、M元素の酸化物である場合、Alの含有量とM元素の含有量との総和は、全金属元素の含有量の25原子%以上であること(すなわち、多価金属含有量が25原子%以上であること)が、耐プラズマ性の観点から好ましい。Alの含有量とM元素の含有量との総和は、全金属元素の含有量の35原子%以上、更には40原子%以上であることが好ましい。
【0027】
本発明のガラスが2種以上の多価金属元素を含有する場合、Si及び多価金属元素の合計に対する各多価金属元素の含有量(以下、多価金属元素がM元素等である場合、「M元素含有量」等ともいう。)は、上記の多価金属含有量を満たす任意の含有量であればよい。例えば、本発明のガラスのAl含有量及びM元素含有量は、上述の多価金属含有量を満たし、かつ、それぞれ、以下の値であることが挙げられる。
Al含有量 :10原子%以上又は30原子%以上、かつ、
50原子%以下又は45原子%以下
M元素含有量 :5原子%以上又は20原子%以上、かつ、
40原子%以下又は30原子%以下
【0028】
本発明のガラスを構成する酸化物が、Si、Al並びにM元素の酸化物である場合、Alに対するM元素の原子比が、0.05以上、20以下であることが、耐プラズマ性の観点から好ましい。Alに対するM元素の原子比は、0.5以上、10以下であることがより好ましく、1以上、8以下であることが、さらに好ましい。
【0029】
さらに、本発明のガラスのAlに対するM元素の原子割合は、0超、0.1以上又は0.4以上であり、かつ、20以下、10以下又は1以下であることが好ましい。
【0030】
本発明のガラスは、その効果が得られる範囲であれば不純物を含んでもよいが、Si及び多価金属元素以外に金属不純物を含まないことが好ましい。例えば、本発明のガラスに含まれる不可避不純物としてNa、Fe及びCuが例示できる。しかしながら、本発明ではNa、Fe、Cu等の含有量が1ppm以下であることが好ましく、本発明のガラスのNa、Fe及びCuの含有量が1ppm以下であることが好ましい。これにより、本発明のガラスは、半導体製造プロセスにおいてより好適に使用できる。
【0031】
本発明のガラスは、直径0.1mm超の泡を含まない。直径0.1m超の泡は、ガラスをプラズマ雰囲気下にさらした場合の脱落の発生源となる。これを含まないことで、半導体製造装置の内部部材として本発明のガラスを供したとしても、半導体製造の歩留まりの低下を抑制することが期待できる。本発明において「泡」とは、ガラス中の欠陥である。このような欠陥の形状は任意であるが、通常、略円形の形状で観測される。そのため、本発明においては、該欠陥の面積を測定し、その円相当径をもって泡の直径とすればよい。
【0032】
本発明において、泡(欠陥)の存在、及び、その面積はガラスの光学顕微鏡観察により得られる顕微鏡観察図により確認すればよい。光学顕微鏡観察は、例えばデジタルマイクロスコープ(例えば、VHX-6000、キーエンス社製)を使用し、以下の条件で行うことができる。
観察倍率 :20倍
観察エリア :2.28cm2
【0033】
本発明のガラスは、泡(欠陥)を含まないことが好ましいが、その効果が損なわれない範囲であれば、直径0.1mm以下の泡(欠陥)を含んでもよい。本発明のガラスに含まれる泡(欠陥)としては、直径0.005mm以上0.1mm以下の泡、更には直径0.005mm以上0.03mm未満の泡、また更には直径0.01mm以上0.02mm以下の泡、であることが例示できる。
【0034】
本発明のガラスは、直径0.1mm以下の泡の面積占有率(以下、「面積率」ともいう。)が0.05%以下であり、0.01%以下、0.003%以下、0.002%以下、0.001%以下又は0.0007%以下であることが好ましい。本発明のガラスは泡を含まないことが好ましく、この場合面積占有率は0%となる。本発明のガラスはその効果が損なわれない範囲であれば微細な欠陥を含んでいてもよく、面積占有率が0%以上、0%超又は0.0001%以上であることが挙げられる。
【0035】
さらに、本発明のガラスは、直径0.03mm以上の泡を含まないことが好ましく、また、直径0.03mm未満の泡の面積占有率(以下、「面積率(0.03)」ともいう。)が0.01%以下であることが好ましく、0.003%以下、0.002%以下、0.001%以下又は0.0007%以下であることがより好ましい。面積率(0.03)は、0%以上又は0%超であってもよい。
【0036】
またさらに、本発明のガラスは、泡面積占有率(以下、「全面積率」ともいう。)が0.01%以下であることが好ましく、0.003%以下、0.002%以下、0.001%以下又は0.0007%以下であることがより好ましい。全面積率は、0%以上又は0%超であってもよい。
【0037】
面積率、面積率(0.03)及び全面積率は、上記の光学顕微鏡観察により得られる顕微鏡観察図を、デジタルマイクロスコープの画像処理機能を使用して解析し、観察エリアの面積(2.28cm2)に対する各直径を有する泡(欠陥)の合計面積の割合(%)から求めればよい。
【0038】
本発明のガラスは、プラズマを用いたドライエッチングにおいて耐久性を有するガラスである。例えば、本発明のガラスは、ハロゲン化物ガス及びそのプラズマによる石英ガラスの腐食速度を1としたとき、腐食速度が0.5以下又は0.1以下であることが挙げられる。このような物性を有することで、エッチング処理におけるガラスの損耗を低減することができる。
【0039】
本発明のガラスは、これを含む耐プラズマ部材として使用すること、更には装置用耐プラズマ部材として使用すること、また更には半導体製造装置用及び液晶装置用耐プラズマ部材として使用すること、また更にはプラズマを用いたドライエッチング装置の部材として使用することができる。
【0040】
本発明は、本発明のガラスを含むガラス部材、更には本発明のガラスからなるガラス部材、を包含する。
【0041】
さらに、本発明は、本発明のガラス部材を備えた半導体製造装置及び本発明のガラスからなるガラス部材を備えた液晶製造装置、を包含する。
本発明の半導体製造装置及び液晶製造装置は、その内部に本発明のガラスからなる部材として反応容器を備える装置であることが挙げられる。該反応容器は、内部にハロゲン化物ガスが導入され、これに高周波やマイクロ波が印加されてプラズマを発生させる。反応容器が本発明のガラス部材であることで、減肉が著しいドライエッチング装置であっても、エッチングによる減肉を良好に抑制することができる。
【0042】
<ガラスの製造方法>
本発明のガラスは、以下の工程を含む方法により製造することができる。
Si及び2価以上の金属元素(多価金属元素)の酸化物の1種以上の原料粉末を容器に入れ、混合後、減圧下で加熱溶融して溶融体を得る工程(1)、
溶融体をHeガス雰囲気下で加圧する工程(2-1)、又は、
溶融体をHeガス以外の不活性ガス雰囲気で加熱し、次いで前記不活性ガス雰囲気下で加圧する工程(2-2)、及び
溶融体を冷却する工程(3)、を含むガラスの製造方法。
【0043】
本発明のガラスの製造方法は、Siの酸化物、及び、1種以上の多価金属元素の酸化物を含む溶融体を不活性ガス雰囲気で加圧する工程、を有する製造方法である。さらに、本発明のガラスの製造方法は、Siの酸化物、及び、1種以上の多価金属元素の酸化物を含む溶融体をHeガス雰囲気及び窒素ガス雰囲気の少なくともいずれかで加圧する工程、を有する製造方法であることがより好ましい。また更に、本発明のガラスの製造方法は、Siの酸化物、及び、1種以上の多価金属元素の酸化物を含む溶融体をHeガス雰囲気で加圧する工程、並びに、該溶融体を窒素ガス雰囲気で加熱した後に、加圧する工程、を有する製造方法であることがより好ましい。
【0044】
<工程(1)>
工程(1)は、Si及び多価金属元素の酸化物の1種以上の原料粉末を容器に入れ、混合後、減圧下で加熱溶融して溶融体を得る工程である。
【0045】
Si及び多価金属元素の酸化物の1種以上の組成は前記ガラスで説明した本発明のガラスの組成と同じであればよい。
【0046】
原料粉末は、Siの酸化物、多価金属元素の酸化物、炭酸塩または硝酸塩などであればよい。
【0047】
Siの酸化物の原料粉末として、Siを含む酸化物、炭酸塩及び硝酸塩の少なくともいずれか、更にはSiの酸化物、また更には天然シリカ、合成シリカ、沈降法シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ゾルゲル法シリカ、石英及び水晶の群から選ばれる1以上、また更には天然シリカ、水晶及び石英の群から選ばれる1以上、また更には水晶が挙げられる。
【0048】
多価金属元素がAlである場合、Alの酸化物の原料粉末は、Alの酸化物及び硝酸塩の少なくともいずれか、更にはAlの酸化物、また更にはアルミナ(Al2O3)であることが挙げられる。
【0049】
多価金属元素がM元素である場合、M元素の酸化物の原料粉末は、M元素の酸化物、炭酸塩及び硝酸塩の群から選ばれる1種以上、更にはM元素の酸化物及び炭酸塩の少なくともいずれか、また更にはM元素の酸化物が挙げられる。
【0050】
原料粉末は、高純度であること、特に金属不純物を含まないことが好ましく、より具体的にはNa、Fe、Cu等の含有量が1ppm以下であることが好ましい。各原料粉末は、Na、Fe及びCuの合計含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0051】
工程(1)では、原料粉末を容器に入れ、混合後、減圧下で加熱溶融して溶融体を得る(1段目溶融)。
【0052】
工程(1)に供する容器は、加熱熔融に使用される公知の容器であり、例えば、カーボン製、耐熱金属製及び耐火セラミックス製の群から選ばれる1種以上からなる容器、が挙げられる。
【0053】
原料粉末の混合は、各原料粉末が均一になる公知の方法であればよい。混合方法として、例えば、乾式混合及び湿式混合の少なくともいずれかが挙げられ、乾式混合であることが好ましい。
【0054】
減圧は、例えば、15Torr以下又は10Torr以下であることが挙げられる。必要以上に真空度を高くする必要はなく、工程(1)における真空度は0.01Torr以上であることが例示できる。
【0055】
加熱温度は1500℃以上又は1525℃以上であり、また、2000℃以下又は1700℃以下であることが挙げられる。溶融体を上記条件で得ることで、本発明の方法で最終的に得られるガラスが直径0.1mm超の泡を含まず、かつ直径0.1mm以下の泡の面積占有率が0.05%以下、更には0.01%以下、また更には0.003%以下となる。減圧は0.01~10Torrの範囲であることが好ましく。加熱温度は1500℃~2000℃の範囲であることが好ましい。
【0056】
工程(1)の減圧は、10Torr以下であり、加熱温度は1500℃以上であることが好ましい。
【0057】
加熱時間は、処理に供する原料粉末の量や、使用する溶融炉の性能に合わせて適宜調整すればよいが、例えば、30分以上5時間以下、更には50分以上3時間以下が挙げられる。
【0058】
<工程(2-1)及び(2-2)>
本発明のガラスの製造方法では、工程(1)で得られた溶融体を工程(2-1)または工程(2-2)で加圧する。すなわち、本発明の製造方法は、工程(1)と、工程(2-1)又は工程(2-2)と、を有する。
【0059】
工程(2-1)では、溶融体をHeガス雰囲気下で加圧する。溶融体をHeガス雰囲気下で加圧し、その後、工程(3)で溶融体を冷却することで、本発明のガラスが得られる。
【0060】
Heガス雰囲気での加圧は、溶融体が溶融性を維持できる温度で行い、工程(1)での温度と同じであっても、異なってもよい。溶融体が溶融性を維持できる温度とすることで、溶融体中の泡、特に直径0.1mm超の泡を比較的容易に減少させることができる。工程(2-1)におけるHeガス雰囲気での加圧が、温度1500℃以上又は1700℃以上であり、かつ、2000℃以下又は1850℃以下での加圧であることが好ましい。
【0061】
Heガス雰囲気は、Heガスのみを含む雰囲気であり、例えば、Heガス流通雰囲気が挙げられる。
【0062】
工程(2-1)におけるHeガス雰囲気下での加圧の圧力は、例えば、0.05MPa以上、好ましくは0.1~1MPaの範囲(0.1MPa以上1MPa以下)である。
【0063】
Heガス雰囲気下での溶融体の加圧は、加圧の温度などにより適宜調整すればよいが、例えば、1~48時間の範囲(1時間以上48時間以下)で行うことができるが、5分以上60分以下、更には10分以上30分以下であることが好ましい。
【0064】
工程(2-2)では、溶融体をHeガス以外の不活性ガス雰囲気で加熱し、次いで前記不活性ガス雰囲気下で加圧する。
【0065】
Heガス以外の不活性ガス雰囲気は、例えば、窒素ガス、希ガス、これからの混合ガスの雰囲気であることができ、窒素ガス雰囲気及びArガス雰囲気の少なくともいずれか、更には窒素ガス雰囲気、また更には窒素ガス流通雰囲気であることが挙げられる。
【0066】
Heガス以外の不活性ガス雰囲気での加熱は、溶融体が溶融性を維持できる温度であればよく、工程(1)での加熱温度と同じであっても、異なってもよい。Heガス雰囲気以外の不活性ガス雰囲気での加熱は、温度1500℃以上又は1700℃以上であり、かつ、2000℃以下又は1800℃以下で行うことが挙げられる。
【0067】
Heガス雰囲気以外の不活性ガス雰囲気での加熱時間は、温度などにより適宜調整すればよいが、例えば、5分以上60分以下、更には10分以上30分以下であることが好ましい。
【0068】
工程(2-2)では、溶融体をHeガス雰囲気以外の不活性ガス雰囲気での加熱した後に、該不活性ガス雰囲気で加圧する。加圧の方法は公知の加圧処理であればよく、ホットプレス処理及び熱間静水圧プレス処理の少なくともいずれか、更には熱間静水圧プレス(以下、「HIP」ともいう。)処理であることが好ましい。工程(2-2)におけるHeガス雰囲気以外の不活性ガス雰囲気下での加圧の圧力は、例えば、0.05MPa以上、0.1~1MPaの範囲が挙げられる。他方、好ましい圧力として10MPa以上又は60MPa以上であり、かつ、200MPa以下又は150MPa以下が挙げられる。Heガス雰囲気以外の不活性ガス雰囲気での加圧は、温度1000℃以上又は1050℃以上であり、かつ、1500℃以下又は1300℃以下で行えばよい。
【0069】
この処理により、溶融体中の泡、特に直径0.1mm以上の泡を比較的容易に減少させることができる。
【0070】
Heガス雰囲気以外の不活性ガス雰囲気での加圧の時間は、加圧の温度及び圧力や、使用するHIP処理装置の性能などにより適宜調整すればよいが、例えば、5分以上5時間以下、更には30分以上3時間以下であることが好ましい。
【0071】
工程(2-2)における、溶融体の加熱及び加圧の合計時間は、例えば、1~48時間の範囲(1時間以上48時間以下)であることが挙げられる。
【0072】
<工程(3)>
工程(3)では、加圧後に溶融体を冷却する。冷却の間の雰囲気及び圧力は、工程(2-1)または(2-2)と同様であればよい。すなわち、工程(2-1)の場合は、Heガス雰囲気で、0.05MPa以上、更には0.1MPa以上1MPa以下で、室温まで降温することが挙げられる。また、工程(2-2)の場合は、Heガス雰囲気以外の不活性雰囲気、更には窒素雰囲気で、0.05MPa以上、更には0.1MPa以上1MPa以下で、室温まで降温することが挙げられる。これにより、本発明のガラスが得られる。
【0073】
本発明の製造方法では、工程(1)~(3)の条件を適宜設定することで、得られる本発明のガラスが含む直径0.1mm以下の泡の面積占有率を、好ましくは0.05%以下、更には0.01%以下、また更には0.003%以下の所望の値に調整することができる。
【実施例0074】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。但し、実施例は本発明の例示であって、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0075】
評価方法
(1)泡個数
作製したガラスをφ80mm×30mm厚に加工し、上下の主表面(Φ80mmの面)を研磨加工した。加工後のガラスについて、デジタルマイクロスコープ(製品名:VHX-6000、キーエンス社製)を使用して観察エリア内の泡の数[個]を計測し、1cm2のエリア内の泡の数[個/cm2]の評価を行い、泡個数とした。泡の数の計測は観察エリア(2.28cm2)内において、ガラス上面から底面までガラスの厚み方向に0.1μm毎に焦点を合わせ、観察エリア内の直径方向及び厚み方向に含まれるすべての泡を確認した。
【0076】
(2)面積占有率
デジタルマイクロスコープの画像処理機能により得られた各泡の直径と個数から泡の占める面積を算出し、1cm2のエリア内の面積占有率を算出した。すなわち、デジタルマイクロスコープの画像処理機能により得られた各泡の面積から、その円相当径(直径)を求め、これを各泡の直径とみなした。次いで、デジタルマイクロスコープでの観察エリア(2.28cm2)に対する、直径0.1mm以下の泡の合計面積[mm2]の割合を求め、1cm2の観察エリア内の面積占有率[%](以下、「面積率」ともいう。)とした。
デジタルマイクロスコープでの観察エリア(2.28cm2)に対する、直径0.03mm未満の泡の合計面積[mm2]の割合[%]を求め、これを面積率(0.03)とし、また、デジタルマイクロスコープでの観察エリア(2.28cm2)に対する、泡の合計面積[mm2]の割合を求め、これを全面積率[%]とした。
【0077】
(3)組成分析
ガラスの組成は、蛍光X線分光分析により求めた。
【0078】
実施例1
粒径5μm以下の原料酸化物と粒径220μmの水晶粉末を容器に入れ、十分撹拌・混合し、これを電気溶融炉にて溶融し、表1の条件でガラスを作製した。すなわち、粒径0.3μmのアルミナ(Al23)粉末、粒径4μmの酸化イットリウム(Y23)粉末及び粒径220μmの水晶(SiO2)粉末を、原子比で、Si:Al:Y=33.2:39.1:27.7となるように秤量した。秤量した粉末3kgを、ポリエチレン製の10Lの容器に充填し、これらが均一になるように乾式混合して混合粉末を得た。得られた混合粉末をカーボン製の容器に充填した後、これを電気溶融炉(装置名:FVPSR150/200、富士電波工業社製)に配置した。その後、真空度10Torrの真空雰囲気とし、当該雰囲気下で1550℃まで昇温速度2℃/分で昇温した後、当該温度で60分加熱することで溶融処理した(1段目溶融)。1段目溶融後、ヘリウムガスを電気溶融炉に導入しながら、1725℃まで昇温速度2℃/分で昇温し、0.05MPa、当該温度で20分間溶融処理した(2段目溶融)。2段目溶融後、室温まで降温し、電気溶融炉からガラスを回収し、本実施例のガラスを作製した。
【0079】
作製したガラスを切り出し、両面を研磨することで、直径80mm×30mm厚の円柱状とした後、泡個数、面積率、面積率(0.03)及び全面積率を測定した。
【0080】
実施例2
粒径5μm以下の原料酸化物と粒径220μmの水晶粉末を容器に入れ、十分撹拌・混合し、これを電気溶融炉にて溶融し、表1の条件でガラスを作製した。すなわち、1段目溶融後、ヘリウムガスに代わり窒素ガスを電気溶融炉に導入したこと、及び、2段目溶融において1750℃まで昇温し、該温度で溶融処理したこと(以下、「標準条件」ともいう。)以外は実施例1と同様な方法で処理した後、窒素雰囲気下、処理温度1100℃、処理圧力137.2MPaで2時間HIP処理し、本実施例のガラスを作製した。
【0081】
比較例1
粒径5μm以下の原料酸化物と粒径220μmの水晶粉末を容器に入れ、十分撹拌・混合し、これを電気溶融炉にて溶融し、表1の条件でガラスを作製した。すなわち、従来法として、標準条件により本比較例のガラスを作製した。
【0082】
表1に実施例及び比較例の結果を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例のガラスは、いずれも、直径0.1mm超の泡の個数が0個/cm2であり、クラックも確認されなかった。また、泡の最大直径は、実施例1が0.017mm及び実施例2が0.012mmであった。これに対し、比較例のガラスは、直径0.1mm超の泡の個数が24個/cm2であり、また、泡の最大直径が0.12mmであった。また、実施例のガラスのAlに対するM元素(Y)の原子割合は、0.71であり、多価金属元素の含有量(Al及びYの合計含有量)は66.9原子%であった。
【0085】
また、面積率、面積率(0.03)及び全面積率は、実施例1はいずれも0.0003%であり、また、実施例2はいずれも0.0002%であった。これに対し、比較例1は、面積率が0.06%、面積率(0.03)が0.0008%及び全面積率が0.11%であった。
【0086】
このように、比較例1(従来品)はガラス中に多数の泡(集合泡)が残っていたが、実施例1及び2のガラスは、直径0.1mm超の泡は見られず、直径0.1mm以下の泡の面積占有率(面積率)は、いずれも低かった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、プラズマを用いた半導体製造装置や液晶製造装置などの部材であるガラス材料に関する分野に有用である。