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特開2022-165929野菜用油脂組成物、調理野菜の製造方法、野菜の前処理方法、及び調理野菜の離水抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165929
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】野菜用油脂組成物、調理野菜の製造方法、野菜の前処理方法、及び調理野菜の離水抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/013 20060101AFI20221025BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20221025BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20221025BHJP
【FI】
A23D9/013
A23D9/00 506
A23L19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067294
(22)【出願日】2022-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2021071207
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100169317
【弁理士】
【氏名又は名称】濱野 愛
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 妙子
(72)【発明者】
【氏名】地引 由美子
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 美由希
【テーマコード(参考)】
4B016
4B026
【Fターム(参考)】
4B016LG10
4B016LK05
4B016LK06
4B016LP04
4B016LP05
4B026DG04
4B026DK02
4B026DK05
4B026DK10
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、調理野菜の離水を抑制できる、乳化剤含有油脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、野菜用油脂組成物であって、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、野菜用油脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜用油脂組成物であって、
前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
野菜用油脂組成物。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上2.0質量%以下である、請求項1に記載の野菜用油脂組成物。
【請求項3】
さらに、前記脂肪酸エステル系乳化剤以外のその他の乳化剤を含み、前記その他の乳化剤の含有量が以下の[1]及び[2]のいずれか、又は両方を満たす、請求項1又は2に記載の野菜用油脂組成物。
[1]前記その他の乳化剤の含有量が、前記油脂組成物に対して1.0質量%以下である。
[2]前記その他の乳化剤の含有量が、前記脂肪酸エステル系乳化剤の含有量に対して等倍量(質量割合)以下である。
【請求項4】
さらに、レシチンを含み、
前記レシチンの含有量が、前記油脂組成物に対して0.6質量%以下である、
請求項1又は2に記載の野菜用油脂組成物。
【請求項5】
前記野菜用油脂組成物が、加熱調理用油脂組成物、又は非加熱調理用油脂組成物である、請求項1又は2に記載の野菜用油脂組成物。
【請求項6】
野菜を油脂組成物とともに調理する工程を含み、
前記油脂組成物は、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
調理野菜の製造方法。
【請求項7】
野菜に油脂組成物を付着させる工程を含み、
前記油脂組成物は、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
野菜の前処理方法。
【請求項8】
野菜を油脂組成物とともに調理する工程を含み、
前記油脂組成物は、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
調理野菜の離水抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜用油脂組成物、調理野菜の製造方法、野菜の前処理方法、及び調理野菜の離水抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜は、主要な食材であり、様々な方法によって調理されて食事として供される。
例えば、野菜炒めは、各種野菜等を油脂とともに炒めたものであり、基本的な料理として知られる。
【0003】
他方で、野菜は水分が多いことから、調理の際に野菜から水分がしみだし、料理の外観や食感等を損ないやすい。このような水分のしみだしは、「離水」(ドリップ等とも呼ばれる。)として知られる。
【0004】
調理された野菜(調理野菜)の離水を抑制するため、各種離水抑制剤が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-28255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、野菜の調理(野菜炒め等)の際に、油の飛び跳ね、焦げ、外観の低下等を防止する目的で、レシチン等の乳化剤が配合されることがある。
【0007】
しかし、本発明者らは、このような乳化剤が、調理野菜の離水を促進し得るという問題を見出した。
【0008】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、調理野菜の離水を抑制できる、乳化剤含有油脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の脂肪酸エステル系乳化剤を所定量配合された油脂組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0010】
(1) 野菜用油脂組成物であって、
前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
野菜用油脂組成物。
【0011】
(2) 前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上2.0質量%以下である、(1)に記載の野菜用油脂組成物。
【0012】
(3) さらに、前記脂肪酸エステル系乳化剤以外のその他の乳化剤を含み、前記その他の乳化剤の含有量が以下の[1]及び[2]のいずれか、又は両方を満たす、(1)又は(2)に記載の野菜用油脂組成物。
[1]前記その他の乳化剤の含有量が、前記油脂組成物に対して1.0質量%以下である。
[2]前記その他の乳化剤の含有量が、前記脂肪酸エステル系乳化剤の含有量に対して等倍量(質量割合)以下である。
【0013】
(4) さらに、レシチンを含み、
前記レシチンの含有量が、前記油脂組成物に対して0.6質量%以下である、
(1)から(3)のいずれかに記載の野菜用油脂組成物。
【0014】
(5) 前記野菜用油脂組成物が、加熱調理用油脂組成物、又は非加熱調理用油脂組成物である、(1)から(4)のいずれかに記載の野菜用油脂組成物。
【0015】
(6) 野菜を油脂組成物とともに調理する工程を含み、
前記油脂組成物は、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
調理野菜の製造方法。
【0016】
(7) 野菜に油脂組成物を付着させる工程を含み、
前記油脂組成物は、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
野菜の前処理方法。
【0017】
(8) 野菜を油脂組成物とともに調理する工程を含み、
前記油脂組成物は、前記油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含み、
前記乳化剤が、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、及びプロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択される1以上の脂肪酸エステル系乳化剤を含み、
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸である、
調理野菜の離水抑制方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、調理野菜の離水を抑制できる、乳化剤含有油脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
<野菜用油脂組成物>
本発明の野菜用油脂組成物(以下、「本発明の油脂組成物」ともいう。)は、油脂組成物に対して0.2~5.0質量%の乳化剤を含み、かつ、該乳化剤が、以下の3種類の脂肪酸エステル系乳化剤のうちいずれか1以上を含む。
(1)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル
(2)ポリグリセリン脂肪酸エステル(構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸であるもの)
(3)プロピレングリコール脂肪酸エステル
【0021】
料理に用いられ得る乳化剤としては多様なものが知られる。
しかし、本発明者らの検討の結果、上記の3種類の脂肪酸エステル系乳化剤は、調理野菜の離水を抑制できること、さらには、調理野菜の外観(艶等)を向上させ得るという新規な知見を見出した。
なお、このような離水抑制効果は、レシチン等のその他の乳化剤には認められがたかった。
【0022】
本発明において「野菜用油脂組成物」とは、野菜の調理や、調理の前処理において使用される油脂組成物を包含する。
【0023】
本発明において「調理野菜」とは、任意の調理方法によって得られた野菜の調理品(食事として供されるもの)を意味する。
【0024】
本発明において「野菜の調理」とは、加熱調理、及び非加熱調理のいずれも包含する。ただし、いずれの調理方法においても、本発明の油脂組成物は、野菜の表面(野菜の切断面等)に付着するように使用される。
【0025】
本発明において「加熱調理」とは、60℃以上の加熱工程を含む調理(炒め調理、揚げ調理、レンジ加熱調理、遠赤外線加熱調理、煮込み調理、茹で調理、焼き調理、蒸し調理等)を包含する。
【0026】
本発明において「非加熱調理」とは、60℃以上の加熱工程を含まない調理(和え、ねかし、野菜のカット等)を包含する。
【0027】
本発明において「調理野菜の離水が抑制されている」とは、同量かつ同種の材料を用いて同一の方法で野菜を調理し、同条件で離水量又は離水率を特定した場合、本発明の要件を満たす油脂組成物によって調理された野菜の離水量又は離水率のほうが、本発明の要件を満たさない油脂組成物(例えば、精製菜種油)によって調理された野菜の離水量又は離水率よりも低いことを意味する。
【0028】
本発明において「調理野菜の離水」とは、野菜を調理した後に、野菜の表面や断面等から野菜に含まれる水分がしみだすことを意味する。
【0029】
本発明において「調理野菜の離水量」とは、野菜を調理した後に、経時的に、調理品の野菜の表面や断面等からしみだす水分量を意味する。
【0030】
本発明において「調理野菜の離水率」とは、調理野菜の総量に対する、経時的に(例えば、調理野菜の作製直後から1時間の間に)生じた離水量の割合を意味する。
【0031】
本発明の油脂組成物によれば、作製から長時間(例えば、5℃で12時間以上)経過した調理野菜であっても、離水が抑制され得る。
【0032】
本発明によれば、調理野菜に良好な外観を付与することもでき得る。
本発明において「調理野菜の外観」とは、例えば、調理野菜の艶、水分のしみだし等を包含する。
調理野菜の外観は、実施例に示した方法で評価できる。
【0033】
以下、本発明の油脂組成物の詳細について説明する。
【0034】
(脂肪酸エステル系乳化剤の種類)
本発明の油脂組成物は、以下の3種類の脂肪酸エステル系乳化剤(以下、「本発明における脂肪酸エステル系乳化剤」ともいう。)のうちいずれか1以上を含む。
これらの脂肪酸エステル系乳化剤は、単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
(1)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル
(2)ポリグリセリン脂肪酸エステル(構成脂肪酸のうち50質量%以上が炭素数16~22の直鎖飽和脂肪酸であるもの)
(3)プロピレングリコール脂肪酸エステル
【0035】
[用語]
脂肪酸エステル系乳化剤について、以下の説明中で使用される用語の定義は、下記のとおりである。
【0036】
本発明において「HLB」とは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略記であり、乳化剤の疎水性と親水性のバランスを表す。HLBは、0以上20以下の数値で表される。HLBの値が小さいほど、親油性が強いことを示す。
【0037】
本発明において、HLB値の算出はアトラス法に基づく下記式から算出される。
「HLB」=20×(1-S/A)
(式中、S=けん化価、A=エステル中の脂肪酸の中和価)
上記式から算出されるHLB値は、算術平均である。そのため、本明細書に示されるHLB値は、平均HLBを意味する。
【0038】
本発明において「けん化価」は、基準油脂分析試験法(日本油化学会制定「2.3.2.1-2013 けん化価」)に準じて測定できる。
【0039】
本発明において「エステル中の脂肪酸の中和価」は、脂肪酸エステル系乳化剤の原材料の脂肪酸を基準油脂分析試験法(日本油化学会制定「3.3.1-2013 中和価」)に準じて測定することで特定できる。
【0040】
(1)ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルとしては任意のものを使用できる。
本発明におけるポリグリセリン縮合リシノール酸エステルは、例えば、トリグリセリン縮合リシノール酸エステル等を包含する。
【0041】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのHLBの下限は特に限定されないが、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上である。
【0042】
ポリグリセリン縮合リシノール酸エステルのHLBの上限は特に限定されないが、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
【0043】
(2)ポリグリセリン脂肪酸エステル
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ポリグリセリン脂肪酸エステルにおいて、その構成脂肪酸のうち50質量%以上が、炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸であるものであれば特に限定されない。
【0044】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸中、炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸の含有量の下限は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0045】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸中、炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸の含有量の上限は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは93質量%以下である。
【0046】
炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸としては、特に限定されないが、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。これらのうち、少なくともステアリン酸、ベヘン酸が含まれることが好ましい。
炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸は1種又は2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
【0047】
炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸が複数含まれる場合、好ましい組み合わせは、ステアリン酸、ベヘン酸である。この組み合わせにおいて、各脂肪酸の好ましい質量比は、ステアリン酸:ベヘン酸=85~30:15~70である。
【0048】
ポリグリセリン脂肪酸エステルにおける構成脂肪酸としては、炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸以外の脂肪酸が含まれていてもよい。このような脂肪酸としては、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0049】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBの下限は特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。
【0050】
ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBの上限は特に限定されないが、好ましくは7以下、より好ましくは4以下である。
【0051】
(3)プロピレングリコール脂肪酸エステル
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては任意のものを使用できる。
本発明におけるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、例えば、モノオレイン酸プロピレングリコール等を包含する。
【0052】
プロピレングリコール脂肪酸エステルのHLBの下限は特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。
【0053】
プロピレングリコール脂肪酸エステルのHLBの上限は特に限定されないが、好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。
【0054】
(脂肪酸エステル系乳化剤の含有量)
本発明の油脂組成物は、油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の乳化剤を含む。
したがって、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤の油脂組成物中の含有量は、その総量が、油脂組成物に対して0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲内である。
【0055】
本発明における脂肪酸エステル系乳化剤の油脂組成物中の含有量(総量)の下限は、本発明の効果を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0056】
本発明における脂肪酸エステル系乳化剤のうち、ポリグリセリン脂肪酸エステルの油脂組成物中の含有量は、油脂組成物に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0057】
一般的に、長期に油脂組成物を開放系で保管した場合に、乳化剤量が多いと大気中の水分を吸湿して、水分を多く含む乳化剤成分が油脂組成物から分離することがある。
そのため、保管時の管理が簡便であるという観点から、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤の油脂組成物中の含有量(総量)の上限は、油脂組成物に対して、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下である。
【0058】
(その他の乳化剤)
本発明の油脂組成物には、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤が含まれていてもよいが、含まれていなくともよい。
本発明の効果を奏しやすいという観点から、本発明の油脂組成物には、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤が含まれないことが好ましい(つまり、本発明の油脂組成物に含まれる乳化剤は、好ましくは、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤のみからなる。)。
【0059】
本発明における脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤としては、食品等に配合し得る任意の乳化剤が挙げられる。
このような乳化剤として、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ただし、構成脂肪酸のうち50質量%未満が炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸であるもの)、ソルビタン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド、ポリソルベート、レシチン等が挙げられる。
【0060】
本発明の油脂組成物に、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤が含まれる場合、その含有量の上限は、本発明の効果を奏しやすいという観点から、以下のいずれか、又は両方の態様を満たすことが好ましい。
(態様1)脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤の含有量が、油脂組成物に対して、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
(態様2)脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤の含有量が、脂肪酸エステル系乳化剤の含有量に対して、好ましくは等倍量(質量割合)以下、より好ましくは1/2量(質量割合)以下である。
【0061】
油脂組成物の長期保管時の管理が簡便であるという観点から、脂肪酸エステル系乳化剤とそれ以外の乳化剤との合計含有量の上限は、油脂組成物に対して、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下である。
【0062】
従来知られる代表的な乳化剤として、レシチン(卵黄レシチン、植物由来のレシチン等)が挙げられる。レシチンは、加熱調理(野菜炒め等)時の焦げ付き防止(外観向上)等を目的として配合される。
他方で、本発明によれば、レシチンを配合しなくとも調理野菜の外観を損ないにくいうえ、調理野菜の離水をも抑制できるという、レシチンからは得られにくい効果を奏する。
ただし、本発明において、レシチンが配合される態様は排除されない。
【0063】
本発明の油脂組成物に、レシチンが含まれる場合、その含有量の上限は、本発明の効果を奏しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0064】
本発明の油脂組成物に、レシチンが含まれる場合、その含有量の下限は、本発明の効果を奏しやすいという観点から低いほど好ましいが、焦げ付き防止等の効果を得る観点から、油脂組成物に対して、好ましくは0.1質量%以上である。
【0065】
本発明において、レシチン含有量は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 4.3.1-2013 アセトン不溶物」で測定されるアセトン不溶物の量に基づき特定され得る。
この測定方法は、通常、レシチン高含有試料(レシチン製剤等)に含まれる原材料のレシチンの量(正味のレシチン量)を測定するために用いられ、アセトン不溶物が5質量%以下である試料の測定には適さない。
そのため、レシチンの配合量が不明な油脂組成物中のレシチン含有量は、リン含有量の測定値から換算して特定してもよい。
かかる場合、リンを含む油脂組成物について、高周波誘導結合プラズマ(ICP)を光源とする発光分光分析法(ICP発光分析装置)によりリン含有量を定量し、リンの原子量とレシチンの分子量比が概ね1:25であることに基づき、リン含有量を25倍した値をレシチンの含有量として特定できる。
【0066】
(油脂)
本発明の油脂組成物は油脂を含む。油脂としては、調理野菜に通常用いられる任意の油脂を配合し得る。
【0067】
油脂としては、動植物油脂、グリセリン及び脂肪酸から合成した油脂、並びにこれらの分別油、エステル交換油、水素添加油等が挙げられる。
これらの油脂は、単独で配合してもよく、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0068】
動植物油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、コーン油、綿実油、米油、ゴマ油、エゴマ油、亜麻仁油、落花生油、グレープシード油、牛脂、乳脂、魚油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。
これらのうち、例えば、高オレイン酸油として知られるもの(例えば、大豆油、菜種油、ひまわり油等)を好適に用いることができる。
【0069】
グリセリン及び脂肪酸から合成した油脂としては、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、中・長鎖脂肪酸(MLCT)等が挙げられる。
【0070】
「中鎖脂肪酸トリグリセリド」とは、グリセリドの構成脂肪酸が全て炭素数6以上10以下の直鎖飽和脂肪酸(カプロン酸、カプリン酸、カプリル酸等)であるグリセリドである。
本発明における中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、構成脂肪酸が全て炭素数8以上10以下の直鎖飽和脂肪酸(カプリン酸、カプリル酸等)であるグリセリドが特に好ましい。
【0071】
「中・長鎖脂肪酸トリグリセリド」とは、グリセリドの構成脂肪酸が、炭素数6以上10以下の直鎖飽和脂肪酸、及び、炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸からなるグリセリドである。
中・長鎖脂肪酸トリグリセリドは、エステル交換等によって製造できる。
【0072】
中・長鎖脂肪酸トリグリセリドを構成する炭素数16以上22以下の直鎖飽和脂肪酸としては、20℃で液状の動植物油脂の構成脂肪酸として知られるものが好ましい。このような構成脂肪酸として、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0073】
分別油としては、パーム油の分別油(パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクション等)等が挙げられる。
【0074】
エステル交換油としては、パーム油又はパーム油の分別油と他の液状油脂とのエステル交換油、MCTと植物油等とのエステル交換油(中・長鎖脂肪酸トリグリセリド)等が挙げられる。
【0075】
油脂としては、油脂全体として、室温(25~30℃程度)で流動性を有するものが好ましい。このような油脂を用いることで、室温で流動性を失いにくく、油脂組成物のハンドリングが良好となりやすい。
【0076】
油脂の含有量の上限は特に限定されないが、充分量の乳化剤を配合しやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.2質量%以下である。
【0077】
油脂の含有量の下限は特に限定されないが、野菜の調理に用いやすいという観点から、油脂組成物に対して、好ましくは95.0質量%以上、より好ましくは97.0質量%以上である。
【0078】
(その他の成分)
本発明の油脂組成物には、上述の成分にくわえて、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、適宜、他の成分を配合してもよく、配合しなくともよい。
このような成分としては、酸化防止剤、香味成分、シリコーン等が挙げられる。これらの成分の種類や配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定できる。
【0079】
(野菜用油脂組成物の用途)
本発明の油脂組成物は、任意の調理野菜の製造や、調理の前処理のために使用できる。
【0080】
本発明において「野菜の調理」は、加熱調理、及び非加熱調理のいずれも包含するため、本発明の油脂組成物は、加熱調理用油脂組成物、又は非加熱調理用油脂組成物であり得る。
ただし、調理野菜の調理方法は、1種以上の加熱調理、及び、1種以上の非加熱調理の組み合わせであってもよい。
【0081】
いずれの調理方法においても、野菜の形状や大きさ等は特に限定されず、任意の方法で切られたものを使用できる。例えば、カット野菜を使用してもよい。
【0082】
(1)加熱調理における使用
採用する加熱調理方法に応じて、任意の野菜とともに本発明の油脂組成物を調理することで、離水が抑制された加熱調理野菜が得られる。
加熱調理野菜としては、加熱調理方法に応じた任意の調理野菜が包含され、野菜炒め、揚げ野菜、レンジ加熱野菜、煮込み野菜、茹で野菜、焼き野菜、蒸し野菜等が挙げられる。
【0083】
例えば、加熱調理野菜が野菜炒めである場合、任意の野菜、及び、必要に応じて肉や調味料(塩、胡椒等)等を、本発明の油脂組成物で炒め調理することで、離水が抑制された野菜炒めが得られる。
【0084】
加熱調理方法は2種類以上を組み合わせてもよい。例えば、揚げ野菜を冷凍保存後、レンジ加熱によって解凍してもよい。
【0085】
加熱調理に用いる野菜の種類、組み合わせ、使用量等は特に限定されない。
具体的な野菜としては、葉菜類、果菜類、マメ類、根菜類等が挙げられる。
ただし、本発明の効果が奏されやすいという観点から、切断面からの水分流出量が比較的多い野菜が好ましい。このような野菜として、例えば、可食部の水分含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、かつ/又は、可食部の炭水化物量が20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である野菜が挙げられる。
【0086】
葉菜類としては、キャベツ、ハクサイ、レタス、タイサイ、コマツナ、タカナ、ホウレンソウ、キクナ、ネギ等が挙げられる。
【0087】
果菜類としては、キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、カボチャ等が挙げられる。
【0088】
マメ類としては、大豆、えんどう豆等のほか、発芽野菜(もやし等)等が挙げられる。
【0089】
根菜類としては、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等が挙げられる。
【0090】
本発明によれば離水を抑制できるため、水分量の多い野菜(例えば、葉菜類、もやし等)の加熱調理において特に好適に使用できる。
【0091】
加熱調理の条件としては特に限定されず、通常の調理器具(フライパン等)を用いた加熱条件を採用できる。
【0092】
加熱調理において用いる本発明の油脂組成物の量は特に限定されず、例えば、調理しようとする材料の総量に対して、1質量%以上12質量%以下であってもよい。
【0093】
(2)非加熱調理における使用
採用する非加熱調理方法に応じて、任意の生野菜(例えば、60℃以上の温度にさらされていない野菜)とともに本発明の油脂組成物を調理することで、離水が抑制された非加熱調理野菜が得られる。
非加熱調理野菜としては、非加熱調理方法に応じた任意の調理野菜が包含され、和え野菜、生野菜(カット生野菜等)サラダ等が挙げられる。
【0094】
例えば、非加熱調理野菜が和え野菜である場合、任意の生野菜、及び、必要に応じて調味料(塩、胡椒等)等を、本発明の油脂組成物とともに、常温(例えば、5~40℃)、又は低温(例えば、0~5℃)で和えることで、離水が抑制された和え野菜が得られる。
【0095】
非加熱調理に用いる野菜の種類、組み合わせ、使用量等は特に限定されない。
具体的な野菜としては、生食されるもの(葉茎菜類、果菜類、根菜類等)が挙げられる。
ただし、本発明の効果が奏されやすいという観点から、切断面からの水分流出量が比較的多い野菜が好ましい。このような野菜として、例えば、可食部の水分含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上であり、かつ/又は、可食部の炭水化物量が20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である野菜が挙げられる。
【0096】
葉茎菜類としては、キャベツ、ハクサイ、レタス、タイサイ、コマツナ、タカナ、ホウレンソウ、キクナ、ネギ、玉ネギ等が挙げられる。
【0097】
果菜類としては、キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、カボチャ等が挙げられる。
【0098】
本発明によれば離水を抑制できるため、水分量の多い野菜(例えば、葉茎菜類、もやし等)の非加熱調理において特に好適に使用できる。
【0099】
非加熱調理の条件としては特に限定されず、例えば、刃物による切断、調理容器(ボウル等)を用いた混合等が挙げられる。
【0100】
非加熱調理において用いる本発明の油脂組成物の量は特に限定されず、例えば、調理しようとする材料の総量に対して、1質量%以上12質量%以下であってもよい。
【0101】
(3)調理の前処理における使用
本発明の油脂組成物は、野菜の前処理(下ごしらえ)にも使用することができる。
例えば、調理しようとする野菜(カット野菜等)の切断面に、本発明の油脂組成物を付着させた後、該野菜を加熱調理や非加熱調理に供することができる。
【0102】
野菜に本発明の油脂組成物を付着させる方法としては、例えば、野菜の表面(特に、野菜の切断面)に本発明の油脂組成物を塗布する方法等が挙げられる。
【0103】
調理の前処理において用いる本発明の油脂組成物の量は特に限定されず、例えば、調理しようとする材料の総量に対して、1質量%以上12質量%以下であってもよい。
【0104】
<調理野菜の製造方法>
本発明は、野菜を、本発明の油脂組成物とともに調理する工程を含む、調理野菜の製造方法を包含する。
【0105】
<野菜の前処理方法>
本発明は、野菜に、本発明の油脂組成物を付着させる工程を含む、野菜の前処理方法を包含する。
【0106】
<調理野菜の離水抑制方法>
本発明は、野菜を、本発明の油脂組成物とともに調理する工程を含む、調理野菜の離水抑制方法を包含する。
【実施例0107】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
<野菜用油脂組成物の作製>
表1乃至6に示す割合で油脂及び乳化剤を配合した野菜用油脂組成物を作製した。
なお、「参考例」以外は、油脂及び乳化剤が均一になるまで60℃で加熱混合した。
【0109】
用いた材料は以下のとおりである。
【0110】
(油脂)
精製菜種(キャノーラ)油:商品名「日清キャノーラ油」、日清オイリオグループ株式会社製
【0111】
(乳化剤)
乳化剤1:レシチン製剤、日清オイリオグループ株式会社製、アセトン不溶分60質量%
乳化剤2:トリグリセリン縮合リシノール酸エステル(「ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル」に相当する。HLB=1.5)
乳化剤3:ポリグリセリン脂肪酸エステル(ベヘン酸44%、ステアリン酸45%、オレイン酸7%、HLB=3)
乳化剤4:モノオレイン酸プロピレングリコール(「プロピレングリコール脂肪酸エステル」に相当する。HLB=3)
乳化剤5:テトラオレイン酸ペンタグリセリン(HLB=5.5)
乳化剤6:ペンタオレイン酸デカグリセリン(HLB=7)
乳化剤7:クエン酸モノオレイン酸グリセリン(HLB=7)
乳化剤8:モノオレイン酸ソルビタン(HLB=5.1)
【0112】
なお、上記乳化剤のうち、「乳化剤2」、「乳化剤3」、及び「乳化剤4」が、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤に相当する。
【0113】
表中、「乳化剤1」の含有量において、正味のレシチン量を下段の括弧内に示した。
なお、正味のレシチン量は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法 4.3.1-2013 アセトン不溶物」に基づく「乳化剤1」中のアセトン不溶物量の測定値から換算した。
【0114】
<調理野菜の作製及び評価-1>
上記で得られた野菜用油脂組成物を用いて、下記の方法で野菜炒めを作製し、その外観評価を行った。
本例における野菜用油脂組成物は、加熱調理用油脂組成物(野菜炒め用油脂組成物)に相当する。
【0115】
(野菜炒めの作製)
各野菜炒め用油脂組成物(8質量部)を、フライパンに入れ、中火で180℃に加熱した。
次いで、加熱したフライパンに、細断したキャベツ(80質量部)を入れ、かき混ぜながら30秒炒めた。塩(0.64質量部)、胡椒(0.04質量部)を添加し、かき混ぜながら30秒間さらに炒めた。
得られた野菜炒めをトレーに入れ、下記の外観評価及び離水量測定に供した。
【0116】
(野菜炒めの外観評価)
野菜炒めの作製直後、及び、保管(5℃、24時間)後の各時点で、野菜炒めの艶、及び離水の有無や程度について、下記の方法及び基準に基づき評価した。
その結果を、表1乃至4中の「作製直後外観評価」、及び「24時間保管後外観評価(艶)」の項に示す。
【0117】
[艶の評価方法]
実施例及び比較例の野菜炒めの艶を、作製直後及び24時間保管後の各時点で評価した。評価においては、「参考例」の作製直後の野菜炒め、及び24時間保管後の野菜炒めをあわせて用意した。
実施例及び比較例の野菜炒めの艶を、対応する各時点での「参考例」の野菜炒めの艶を比較対象として、パネラー(5名)の合議により、下記評価基準に基づき評価した。
【0118】
[艶の評価基準]
◎:作製直後の「参考例」よりも艶が良い。
〇:作製直後の「参考例」と同等の艶がある。
△:作製直後の「参考例」よりも艶が劣るが、24時間保管後の「参考例」と同等の艶がある。
×:24時間保管後の「参考例」よりも艶が劣る。
【0119】
[離水の評価方法]
パネラー(5名)の合議により、各野菜炒めの離水の有無や程度を下記評価基準に基づき評価した。
【0120】
[離水の評価基準]
◎:離水がない。
〇:離水がほとんどないか、又は、調理直後の「参考例」の離水と同等である。
△:離水がややみられる。
×:離水が多い。
【0121】
(野菜炒めの離水量測定)
野菜炒めの保管(5℃、24時間)後、野菜炒めの離水量を下記の方法に基づき測定した。
その結果を、表1乃至4中の「24時間保管後離水量(g)(離水率(%))」の項に示す。なお、この項目において、上段の数値は「離水量(g)」を意味し、下段の数値は「離水率(%)」を意味する。
【0122】
[離水の測定方法]
各野菜炒めについて、作製直後の質量(「保管前の野菜炒め量」に相当する。単位:g)を測定した。
次いで、各野菜炒めをトレーの上で保管(5℃、24時間)後、トレー上から残存水分をスポイトで回収し、該残存水分の質量(「離水量」に相当する。単位:g)を測定した。
「保管前の野菜炒め量」及び「離水量」の測定値から、下記式に基づき離水率を算出した。
「離水率」(単位:%)=「離水量」/「保管前の野菜炒め量」×100
【0123】
なお、離水率が2.5%以下であれば、離水が抑制されているものと判断した。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
上記表に示されるとおり、本発明の要件を満たす油脂組成物によれば、野菜炒めの離水が抑制されていた。このような離水抑制効果は、野菜炒めを24時間保管した後であっても維持されていた。
【0129】
また、離水抑制効果は、本発明の要件を満たしつつ、本発明における脂肪酸エステル系乳化剤以外の乳化剤(乳化剤1、5乃至8)が含まれていないか、又は、その含有量が少ないほど良好である傾向にあった。
【0130】
さらに、本発明の要件を満たす油脂組成物によれば、野菜炒めに対し良好な艶も付与することができた。このような艶は、野菜炒めを24時間保管した後であっても維持されていた。
【0131】
<調理野菜の作製及び評価-2>
上記で得られた野菜用油脂組成物を用いて、下記の方法で揚げ野菜を作製し、その外観評価を行った。
本例における野菜用油脂組成物は、加熱調理用油脂組成物(揚げ野菜用油脂組成物)に相当する。
【0132】
(揚げ野菜の作製)
野菜用油脂組成物(1000質量部)をフライヤーで180℃まで加熱した。
次いで、加熱された野菜用油脂組成物へ、9等分に乱切りしたナス(100質量部)を入れ、1分間揚げた。
得られた揚げ野菜を、油切りをしてからトレーに入れ、-30℃で急速冷凍し、-20℃で72時間保管した。
保管後、電子レンジ(600W、2分)で加熱して解凍した揚げ野菜を、下記の外観評価及び離水量測定に供した。
【0133】
(揚げ野菜の外観評価)
揚げ野菜の作製直後、並びに、保管(-20℃、72時間)及び解凍後の各時点で、揚げ野菜の艶、及び離水の有無や程度について、下記の方法及び基準に基づき評価した。
その結果を、表5中の「作製直後外観評価」、及び「保管及び解凍後外観評価(艶)」の項に示す。
【0134】
[艶の評価方法]
実施例の揚げ野菜の艶を、作製直後、並びに、保管及び解凍後の各時点で評価した。評価においては、「参考例」の作製直後の揚げ野菜、並びに、保管及び解凍後の揚げ野菜をあわせて用意した。
実施例の揚げ野菜の艶を、対応する各時点での「参考例」の揚げ野菜の艶を比較対象として、パネラー(5名)の合議により、下記評価基準に基づき評価した。
【0135】
[艶の評価基準]
◎:「参考例」よりも艶が良い。
〇:「参考例」と同等の艶がある。
×:「参考例」よりも艶が劣る。
【0136】
(揚げ野菜の離水量測定)
揚げ野菜の冷凍保管(-20℃、72時間)及び解凍に際し、揚げ野菜の離水量を下記の方法に基づき測定した。
その結果を、表5中の「保管及び解凍後離水量(g)(離水率(%))」の項に示す。なお、この項目において、上段の数値は「離水量(g)」を意味し、下段の数値は「離水率(%)」を意味する。
【0137】
[離水の測定方法]
各揚げ野菜について、冷凍保管後(-20℃、72時間)の質量(「冷凍保管後の揚げ野菜量」に相当する。単位:g)を測定した。
次いで、各揚げ野菜をトレーに入れ、次いで電子レンジ(600W、2分)で加熱し、トレー上の残存水分をスポイトで回収し、該残存水分の質量(「離水量」に相当する。単位:g)を測定した。
「冷凍保管後の揚げ野菜量」及び「離水量」の測定値から、下記式に基づき離水率を算出した。
「離水率」(単位:%)=「離水量」/「冷凍保管後の揚げ野菜量」×100
【0138】
なお、離水率が2.5%未満であれば、離水が抑制されているものと判断した。
【0139】
【表5】
【0140】
上記表に示されるとおり、本発明の要件を満たす油脂組成物によれば、揚げ野菜の離水が抑制されていた。このような離水抑制効果は、揚げ野菜を冷凍保管及び解凍した後であっても維持されていた。
【0141】
さらに、本発明の要件を満たす油脂組成物によれば、揚げ野菜に対し良好な艶も付与することができた。このような艶は、揚げ野菜を冷凍保管及び解凍した後であっても維持されていた。
【0142】
<調理野菜の作製及び評価-3>
上記で得られた野菜用油脂組成物を用いて、下記の方法でレタスサラダを作製し、その外観評価を行った。
本例における野菜用油脂組成物は、非加熱調理用油脂組成物(カット生野菜用油脂組成物)に相当する。
【0143】
(レタスサラダの作製)
プラスチックビーカーに、約2cm角に切ったレタス(非加熱、50質量部)を測り入れた。
次いで、レタスへ野菜用油脂組成物(2.5質量部)を添加し、10回かき混ぜて充分に和えた。塩(0.3質量部)を添加し、さらに20回和えた。
レタスと野菜用油脂組成物とを和える際、レタスの切り口全体に野菜用油脂組成物が付着するよう留意した。
得られたレタスサラダを下記の外観評価及び離水量測定に供した。
【0144】
(レタスサラダの外観評価)
レタスサラダの作製直後、及び、保管(5℃、24時間)後の各時点で、レタスサラダの艶、及び離水の有無や程度について、下記の方法及び基準に基づき評価した。
その結果を、表6中の「作製直後外観評価」、及び「24時間保管後外観評価(艶)」の項に示す。
【0145】
[艶の評価方法]
実施例のレタスサラダの艶を、作製直後、及び24時間保管後の各時点で評価した。評価においては、「参考例」の作製直後のレタスサラダ、及び24時間保管後のレタスサラダをあわせて用意した。
実施例のレタスサラダの艶を、「参考例」のレタスサラダの艶を比較対象として、パネラー(5名)の合議により、下記評価基準に基づき評価した。
【0146】
[艶の評価基準]
◎:作製直後の「参考例」よりも艶が良い。
〇:作製直後の「参考例」と同等の艶がある。
×:作製直後の「参考例」よりも艶が劣る。
【0147】
[離水の評価方法]
パネラー(5名)の合議により、各レタスサラダの離水の有無や程度を下記評価基準に基づき評価した。
【0148】
[離水の評価基準]
◎:離水がない。
〇:離水がほとんどないか、又は、作製直後の「参考例」の離水と同等である。
△:離水がややみられる。
×:離水が多い。
【0149】
(レタスサラダの離水量測定)
レタスサラダの保管(5℃、24時間)後、レタスサラダの離水量を下記の方法に基づき測定した。
その結果を、表6中の「24時間保管後離水量(g)(離水率(%))」の項に示す。なお、この項目において、上段の数値は「離水量(g)」を意味し、下段の数値は「離水率(%)」を意味する。
【0150】
[離水の測定方法]
各レタスサラダについて、作製直後の質量(「保管前のレタスサラダ量」に相当する。単位:g)を測定した。
次いで、各レタスサラダをプラスチックビーカーの上で保管(5℃、24時間)後、プラスチックビーカーの底に溜まった残存水分をスポイトで回収し、該残存水分の質量(「離水量」に相当する。単位:g)を測定した。
「保管前のレタスサラダ量」及び「離水量」の測定値から、下記式に基づき離水率を算出した。
「離水率」(単位:%)=「離水量」/「保管前のレタスサラダ量」×100
【0151】
なお、離水率が2.5%以下であれば、離水が抑制されているものと判断した。
【0152】
【表6】
【0153】
上記表に示されるとおり、本発明の要件を満たす油脂組成物によれば、レタスサラダの離水が抑制されていた。このような離水抑制効果は、レタスサラダの保管後であっても維持されていた。
【0154】
さらに、本発明の要件を満たす油脂組成物によれば、レタスサラダに対し良好な艶も付与することができた。このような艶は、レタスサラダの保管後であっても維持されていた。