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特開2022-165982処理装置及び処理方法、加工方法、並びに、造形装置及び造形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022165982
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】処理装置及び処理方法、加工方法、並びに、造形装置及び造形方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/366 20210101AFI20221025BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20221025BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20221025BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20221025BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20221025BHJP
【FI】
B22F10/366
B33Y30/00
B22F10/85
B23K26/21 Z
B23K26/34
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115357
(22)【出願日】2022-07-20
(62)【分割の表示】P 2019559452の分割
【原出願日】2017-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 慧
(72)【発明者】
【氏名】白石 雅之
(72)【発明者】
【氏名】江上 茂樹
(57)【要約】
【課題】造形した造形物の表面に対して適切な処理を行う処理装置を提供する。
【手段】処理装置は、物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置において、物体の表面の少なくとも一部にエネルギビームを照射するエネルギビーム照射装置と、物体の表面におけるエネルギビームの照射位置を変更する位置変更装置とを備え、物体の形状に関する形状情報を用いてエネルギビームの照射位置を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置において、
前記物体の表面の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射するエネルギビーム照射装置と、
前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更する位置変更装置と
を備え、
前記物体の形状に関する形状情報を用いて前記エネルギビームの前記照射位置を制御する
処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置及び処理方法、加工方法、並びに、造形装置及び造形方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粉状の材料をエネルギビームで溶融した後に、溶融した材料を再固化させることで造形物を形成する造形装置が記載されている。特許文献1に記載された造形装置は、造形物を形成した後に、造形物に付着した粉状の材料を取り除いている。このような造形装置では、造形した造形物の表面に対して適切な処理を行うことが技術的課題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許公開第2017/0014909号
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置において、前記物体の表面の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射するエネルギビーム照射装置と、前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更する位置変更装置とを備え、前記物体の形状に関する形状情報を用いて前記エネルギビームの前記照射位置を制御する処理装置が提供される。
【0005】
第2の態様によれば、物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置において、前記物体の表面の第1部分と、前記第1部分と異なる方向に向けられた前記物体の表面の第2部分とに前記エネルギビームを照射するエネルギビーム照射装置と、前記エネルギビームの照射方向に対する前記物体の姿勢を変更する姿勢変更装置と、前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更する位置変更装置とを備え、前記第1部分が第1方向に向くように前記物体の姿勢を第1姿勢に設定して前記第1部分にエネルギビームを照射し、前記第2部分が第2方向に向くように前記物体の姿勢を前記第1姿勢と異なる第2姿勢に設定して前記エネルギビームを照射する処理装置が提供される。
【0006】
第3の態様によれば、部材の第1表面に造形用エネルギビームを照射して前記第1表面に溶融池を形成し前記溶融池に造形材料を供給することにより造形された造形物を処理する処理装置であって、前記部材と前記造形物とが並ぶ第1方向と交差する第2方向に向けられた前記造形物の第2表面の少なくとも一部に加工用エネルギビームを照射する処理装置が提供される。
【0007】
第4の態様によれば、エネルギビームを供給する光源と、前記光源からのエネルギビームを対象物に集光する集光光学系と、前記集光光学系を介した前記エネルギビームの集光位置に造形材料を供給する材料供給部と、前記集光位置と前記対象物との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、前記集光位置と前記対象物との相対的な位置関係を変更しつつ前記集光位置に前記造形材料を供給して造形物としての物体を造形するように前記位置変更装置を制御する制御装置とを備え、前記集光光学系を介したエネルギビームを前記物体に照射し、前記対象物に集光する前記光源からの前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路と、前記物体に照射される前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路とは同じ光路である処理装置が提供される。
【0008】
第5の態様によれば、物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理方法において、前記物体の表面の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射することと、前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更することと含み、前記物体の形状に関する形状情報を用いて前記エネルギビームの前記照射位置を変更する処理方法が提供される。
【0009】
第6の態様によれば、物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理方法において、前記物体の表面の第1部分が第1方向に向くように前記物体の姿勢を第1姿勢に設定して前記第1部分にエネルギビームを照射することと、前記第1部分と異なる方向に向けられた前記物体の表面の第2部分が第2方向に向くように前記物体の姿勢を前記第1姿勢と異なる第2姿勢に設定して、前記第2部分に前記エネルギビームを照射することとを含む処理方法が提供される。
【0010】
第7の態様によれば、部材の第1表面に造形用エネルギビームを照射して前記第1表面に溶融池を形成し前記溶融池に造形材料を供給することにより造形された造形物を処理する処理方法であって、前記部材と前記造形物とが並ぶ第1方向と交差する第2方向に向けられた前記造形物の第2表面の少なくとも一部に加工用エネルギビームを照射することとを含む処理方法が提供される。
【0011】
第8の態様によれば、部材の第1表面に造形用エネルギビームを照射して前記第1表面に溶融池を形成し前記溶融池に造形材料を供給することにより造形物を造形することと、前記部材と前記造形物とが並ぶ第1方向と交差する第2方向に向けられた前記造形物の第2表面の少なくとも一部に加工用エネルギビームを照射することとを含む処理方法が提供される。
【0012】
第9の態様によれば、エネルギビームを供給することと、集光光学系を用いて前記エネルギビームを対象物に集光することと、前記エネルギビームが集光される集光位置に造形材料を供給することと、前記集光位置と前記対象物との相対的な位置関係を変更しつつ前記集光位置に前記造形材料を供給して造形物としての物体を造形することと、前記集光光学系を介した前記エネルギビームを前記物体に照射することとを含み、前記対象物に集光する前記光源からの前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路と、前記物体に照射される前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路とは同じ光路である処理方法が提供される。
【0013】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態の造形システムの構造を示すブロック図である。
図2図2(a)及び図2(b)の夫々は、本実施形態の造形システムが備える造形装置の構造を示す側面図である(但し、説明の便宜上、一部は断面図である)。
図3図3(a)から図3(c)の夫々は、ワーク上のある領域において光を照射し且つ造形材料を供給した場合の様子を示す断面図である。
図4図4(a)から図4(c)の夫々は、3次元構造物を形成する過程を示す断面図である。
図5図5(a)は、3次元構造物の表面の少なくとも一部である研磨対象面を示す断面図であり、図5(b)は、3次元構造物の表面の少なくとも一部である研磨対象面を示す斜視図である。
図6図6(a)から図6(c)の夫々は、研磨動作が行われている過程での研磨対象面の状態を示す断面図である。
図7図7は、光強度条件を示すグラフである。
図8図8は、照射サイズ条件を満たす光を研磨対象面と関連付けて示す断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)の夫々は、照射サイズ条件が満たされないように研磨動作が行われている過程での研磨対象面の状態を示す断面図である。
図10図10は、照射サイズ条件を満たす光を研磨対象面と関連付けて示す断面図である。
図11図11は、高さが異なる複数の構造層が積層された3次元構造物を示す断面図である。
図12図12(a)から図12(b)の夫々は、光方向条件を満たす光を研磨対象面と関連付けて示す断面図である。
図13図13は、光方向条件を満たす光を研磨対象面と関連付けて示す断面図である。
図14図14は、光方向条件を満たす光を研磨対象面と関連付けて示す断面図である。
図15図15(a)から図15(c)の夫々は、面方向条件を満たす研磨対象面を示す断面図である。
図16図16(a)は、面方向条件を満たしていない研磨対象面に照射された光によって溶融した造形材料を示す断面図であり、図16(b)は、面方向条件を満たしている研磨対象面に照射された光によって溶融した造形材料を示す断面図である。
図17図17は、第1変形例の造形装置の構造を示す断面図である。
図18図18は、第2変形例の造形装置の構造を示す断面図である。
図19図19は、3次元構造物における熱が相対的に拡散されにくい領域及び熱が相対的に拡散されやすい領域の位置の一例を示す斜視図である。
図20図20は、3次元構造物の変形を抑制するように、熱の拡散度合いに基づいて制御される熱量を示すグラフである。
図21図21は、光の強度と光から伝達される熱量との関係を示すグラフである。
図22図22は、3照射領域の移動速度と光から伝達される熱量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、処理装置及び処理方法、加工方法、並びに、造形装置及び造形方法の実施形態について説明する。以下では、レーザ肉盛溶接法(LMD:Laser Metal Deposition)により、造形材料Mを用いた付加加工を行うことで3次元構造物STを形成可能な造形システム1を用いて、処理装置及び処理方法、加工方法、並びに、造形装置及び造形方法の実施形態を説明する。尚、レーザ肉盛溶接法(LMD)は、ダイレクト・メタル・デポジション、ダイレクト・エナジー・デポジション、レーザクラッディング、レーザ・エンジニアード・ネット・シェイピング、ダイレクト・ライト・ファブリケーション、レーザ・コンソリデーション、シェイプ・デポジション・マニュファクチャリング、ワイヤ-フィード・レーザ・デポジション、ガス・スルー・ワイヤ、レーザ・パウダー・フージョン、レーザ・メタル・フォーミング、セレクティブ・レーザ・パウダー・リメルティング、レーザ・ダイレクト・キャスティング、レーザ・パウダー・デポジション、レーザ・アディティブ・マニュファクチャリング、レーザ・ラピッド・フォーミングと称してもよい。
【0016】
また、以下の説明では、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸から定義されるXYZ直交座標系を用いて、造形システム1を構成する各種構成要素の位置関係について説明する。尚、以下の説明では、説明の便宜上、X軸方向及びY軸方向のそれぞれが水平方向(つまり、水平面内の所定方向)であり、Z軸方向が鉛直方向(つまり、水平面に直交する方向であり、実質的には上下方向)であるものとする。また、X軸、Y軸及びZ軸周りの回転方向(言い換えれば、傾斜方向)を、それぞれ、θX方向、θY方向及びθZ方向と称する。ここで、Z軸方向を重力方向としてもよい。また、XY平面を水平方向としてもよい。
【0017】
(1)造形システム1の構造
初めに、図1及び図2(a)から図2(b)を参照しながら、本実施形態の造形システム1の全体構造について説明する。図1は、本実施形態の造形システム1の構造の一例を示すブロック図である。図2(a)及び図2(b)の夫々は、本実施形態の造形システム1が備える造形装置4の構造を示す側面図である(但し、説明の便宜上、一部は断面図である)。
【0018】
造形システム1は、3次元構造物(つまり、3次元方向のいずれの方向においても大きさを持つ3次元の物体であり、立体物)STを形成可能である。造形システム1は、3次元構造物STを形成するための基礎(つまり、母材)となるワークW上に、3次元構造物STを形成可能である。造形システム1は、ワークWに付加加工を行うことで、3次元構造物STを形成可能である。ワークWが後述するステージ43である場合には、造形システム1は、ステージ43上に、3次元構造物STを形成可能である。ワークWがステージ43によって保持されている既存構造物である場合には、造形システム1は、既存構造物上に、3次元構造物STを形成可能である。この場合、造形システム1は、既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成してもよい。既存構造物と一体化された3次元構造物STを形成する動作は、既存構造物に新たな構造物を付加する動作と等価である。或いは、造形システム1は、既存構造物と分離可能な3次元構造物STを形成してもよい。尚、図2は、ワークWが、ステージ43によって保持されている既存構造物である例を示している。また、以下でも、ワークWがステージ43によって保持されている既存構造物である例を用いて説明を進める。
【0019】
上述したように、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成可能である。つまり、造形システム1は、積層造形技術を用いて物体を形成する3Dプリンタであるとも言える。尚、積層造形技術は、ラピッドプロトタイピング(Rapid Prototyping)、ラピッドマニュファクチャリング(Rapid Manufacturing)、又は、アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing)とも称される。
【0020】
3次元構造物STを形成するために、造形システム1は、図1に示すように、材料供給装置3と、造形装置4と、光源5と、ガス供給装置6と、制御装置7とを備える。材料供給装置3と、造形装置4と、光源5と、ガス供給装置6と、制御装置7とは、筐体C内に収容されている。図1に示す例では、造形装置4が、筐体Cの上部空間UCに収容され、材料供給装置3、光源5、ガス供給装置6及び制御装置7が、上部空間UCの下方に位置する筐体Cの下部空間LCに収容される。但し、材料供給装置3、造形装置4、光源5、ガス供給装置6及び制御装置7の夫々の筐体C内での配置位置が図1に示す配置位置に限定されることはない。
【0021】
材料供給装置3は、造形装置4に造形材料Mを供給する。材料供給装置3は、造形装置4が3次元構造物STを形成するために単位時間あたりに必要とする分量の造形材料Mが造形装置4に供給されるように、当該必要な分量に応じた所望量の造形材料Mを供給する。
【0022】
造形材料Mは、所定強度以上の光ELの照射によって溶融可能な材料である。このような造形材料Mとして、例えば、金属性の材料及び樹脂性の材料の少なくとも一方が使用可能である。但し、造形材料Mとして、金属性の材料及び樹脂性の材料とは異なるその他の材料が用いられてもよい。造形材料Mは、粉状の又は粒状の材料である。つまり、造形材料Mは、粉粒体である。但し、造形材料Mは、粉粒体でなくてもよく、例えばワイヤ状の造形材料やガス状の造形材料が用いられてもよい。
【0023】
造形装置4は、材料供給装置3から供給される造形材料Mを加工して3次元構造物STを形成する。更に、造形装置4は、形成された3次元構造物STの表面の少なくとも一部を加工する処理を行う。従って、造形装置4は、実質的には、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を加工するための加工装置(つまり、加工するための処理を行う処理装置)としても機能する。3次元構造物を形成し且つ加工するために、造形装置4は、図2(a)及び図2(b)に示すように、造形ヘッド41と、ヘッド駆動系42と、ステージ43と、ステージ駆動系44と、計測装置45とを備える。更に、造形ヘッド41は、照射系411と、材料ノズル(つまり造形材料Mを供給する供給系)412とを備えている。造形ヘッド41と、ヘッド駆動系42と、ステージ43と、ステージ駆動系44と、計測装置45とは、チャンバ46内に収容されている。
【0024】
照射系411は、射出部413から光ELを射出するための光学系(例えば、集光光学系)である。具体的には、照射系411は、光ELを発する光源5と、光ファイバやライトパイプ等の不図示の光伝送部材を介して光学的に接続されている。照射系411は、光伝送部材を介して光源5から伝搬してくる光ELを射出する。照射系411は、照射系411から下方(つまり、-Z側)に向けて光ELを照射する。照射系411の下方には、ステージ43が配置されている。ステージ43にワークWが搭載されている場合には、照射系411は、ワークWに向けて光ELを照射可能である。具体的には、照射系411は、光ELが照射される(典型的には、集光される)領域としてワークW上に設定される円形の(或いは、その他任意の形状の)照射領域EAに光ELを照射する。更に、照射系411の状態は、制御装置7の制御下で、照射領域EAに光ELを照射する状態と、照射領域EAに光ELを照射しない状態との間で切替可能である。尚、照射系411から射出される光ELの方向は真下(つまり、-Z軸方向と一致)には限定されず、例えば、Z軸に対して所定の角度だけ傾いた方向であってもよい。
【0025】
材料ノズル412は、造形材料Mを供給する供給アウトレット414を有する。材料ノズル412は、供給アウトレット414から造形材料Mを供給(具体的には、噴射、噴出、吹き付ける)する。材料ノズル412は、造形材料Mの供給源である材料供給装置3と、不図示のパイプ等の粉体伝送部材を介して物理的に接続されている。材料ノズル412は、粉体伝送部材を介して材料供給装置3から供給される造形材料Mを供給する。尚、図2(a)から図2(b)において材料ノズル412は、チューブ状に描かれているが、材料ノズル412の形状は、この形状に限定されない。材料ノズル412は、材料ノズル412から下方(つまり、-Z側)に向けて造形材料Mを供給する。材料ノズル412の下方には、ステージ43が配置されている。ステージ43にワークWが搭載されている場合には、材料ノズル412は、ワークWに向けて造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル412から供給される造形材料Mの進行方向はZ軸方向に対して所定の角度(一例として鋭角)だけ傾いた方向であるが、-Z側(つまり、真下)であってもよい。
【0026】
本実施形態では、材料ノズル412は、照射系411が光ELを照射する照射領域EAに向けて造形材料Mを供給するように、照射系411に対して位置合わせされている。つまり、材料ノズル412が造形材料Mを供給する領域としてワークW上に設定される供給領域MAと照射領域EAとが一致する(或いは、少なくとも部分的に重複する)ように、材料ノズル412と照射系411とが位置合わせされている。尚、照射系411から射出された光ELによってワークWに形成される溶融池MPに、材料ノズル412が造形材料Mを供給するように位置合わせされていてもよい。
【0027】
ヘッド駆動系42は、造形ヘッド41を移動させる。造形ヘッド41を移動させるために、ヘッド駆動系42は、ヘッド駆動系42Xと、ヘッド駆動系42Yと、ヘッド駆動系42Zとを備える。ヘッド駆動系42Xは、X軸に沿って造形ヘッド41を移動させる。ヘッド駆動系42Yは、Y軸に沿って造形ヘッド41を移動させる。ヘッド駆動系42Zは、Z軸に沿って造形ヘッド41を移動させる。つまり、ヘッド駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸の夫々に沿って造形ヘッド41を移動させる。造形ヘッド41がX軸及びY軸の夫々に沿って移動すると、照射領域EA(更には、供給領域MA)は、ワークW上をX軸及びY軸の夫々に沿って移動する。尚、ヘッド駆動系42は、造形ヘッド41をX軸回りの回転軸、Y軸回りの回転軸に沿って回転可能にしてもよい。
【0028】
ヘッド駆動系42X、ヘッド駆動系42Y及びヘッド駆動系42Zの夫々は、例えば、ボイスコイルモータを含む駆動系であるが、その他のモータ(或いは、駆動源)を含む駆動系であってもよい。ヘッド駆動系42Xは、チャンバ46の底面に空気ばね等の防振装置を介して設置される支持フレーム423に固定され且つX軸に沿って延びるXガイド部421Xと、Xガイド部421Xに固定される固定子(例えば、磁石及びコイルの一方)及び後述するYガイド部421Yに固定される可動子(例えば、磁石及びコイルの他方)を含むボイスコイルモータ422Xを備える。ヘッド駆動系42Yは、ボイスコイルモータ422Xの可動子が固定され且つY軸に沿って延びるYガイド部421Yと、Yガイド部421Yに固定される固定子(例えば、磁石及びコイルの一方)及び後述するZガイド部421Zに固定される可動子(例えば、磁石及びコイルの他方)を含むボイスコイルモータ422Yを備える。ヘッド駆動系42Zは、ボイスコイルモータ422Yの可動子が固定され且つZ軸に沿って延びるZガイド部421Zと、Zガイド部421Zに固定される固定子(例えば、磁石及びコイルの一方)及び造形ヘッド41に固定される可動子(例えば、磁石及びコイルの他方)を含むボイスコイルモータ422Zを備える。ボイスコイルモータ422Xが駆動すると、Xガイド部421Xに沿って(つまり、X軸に沿って)Yガイド部421Y(更には、Zガイド部421Zを介してYガイド部421Yに連結されている造形ヘッド41)が移動する。ボイスコイルモータ422Yが駆動すると、Yガイド部421Zに沿って(つまり、Y軸に沿って)Zガイド部421Z(更には、Zガイド部421Zに連結されている造形ヘッド41)が移動する。ボイスコイルモータ422Zが駆動すると、Zガイド部421Zに沿って(つまり、Z軸に沿って)造形ヘッド41が移動する。尚、支持フレーム423は、造形システム1が設置される床からの振動、或いは造形システム1内であってチャンバ46外からの振動を低減するための防振装置を介してチャンバに設置されているが、例えば、造形システム1内であってチャンバ46外からの振動が無視できれば、造形システム1と床との間に設けてもよく、この床の振動条件が良好(低い振動)である場合には、防振装置はなくてもよい。
【0029】
ステージ43は、ワークWを保持可能である。更に、ステージ43は、保持したワークWをリリース可能である。上述した照射系411は、ステージ43がワークWを保持している期間の少なくとも一部において光ELを照射する。更に、上述した材料ノズル412は、ステージ43がワークWを保持している期間の少なくとも一部において造形材料Mを供給する。尚、材料ノズル412が供給した造形材料Mの一部は、ワークWの表面からワークWの外部へと(例えば、ステージ43の周囲へと)散乱する又はこぼれ落ちる可能性がある。このため、造形システム1は、ステージ43の周囲に、散乱した又はこぼれ落ちた造形材料Mを回収する回収装置を備えていてもよい。尚、ステージ43は、ワークWを保持するために、機械的なチャックや真空吸着チャック等を備えていてもよい。
【0030】
ステージ駆動系44は、ステージ43を移動させる(ステージ43の姿勢を変更する)。ステージ43を移動させるために、ステージ駆動系44は、ステージ駆動系44θYと、ステージ駆動系44θZとを備える。ステージ駆動系44θYは、θY軸に沿ってステージ43を移動させる。言い換えれば、ステージ駆動系44θYは、Y軸周りにステージ43を回転させる。ステージ駆動系44θZは、θZ軸に沿ってステージ43を移動させる。言い換えれば、ステージ駆動系44θZは、Z軸周りにステージ43を回転させる。つまり、ステージ駆動系44は、θY軸及びθZ軸の夫々に沿ってステージ43を移動させる。尚、図2(a)、(b)に示した例では、θY軸がワークWを貫通するように(θY軸がステージ43の上面とほぼ一致するように)設定されているが、それに限定されず、θY軸がワークの上方或いは下方(ステージ43の上面に対して上方(+Z側)、或いはステージ43の上面に対して下方(-Z側))に設定されていてもよい。
【0031】
ステージ駆動系44θY及びステージ駆動系43θZの夫々は、例えば、回転モータを含む駆動系であるが、その他のモータ(或いは、駆動源)を含む駆動系であってもよい。ステージ駆動系44θYは、ステージ43を保持する板状の保持部材441θY、保持部材441θYの+Y側の端部及び-Y側の端部から+Z側に突き出る板状の壁部材442θYと、Y軸周りに回転可能な回転子を有する回転モータ443θYと、回転モータ443θYの回転子と壁部材442θYとを連結する連結部材444θYとを備える。回転モータ443θYは、チャンバ46の底面に空気ばね等の防振装置を介して設置される支持フレーム445に固定されている。ステージ駆動系44θZは、Z軸周りに回転可能であって且つステージ43に連結された回転子を有する回転モータ443θZを備える。回転モータ443θZは、保持部材441θYに固定されている。回転モータ443θYが駆動すると、Y軸周りに保持部材441θY(更には、保持部材441θYが保持するステージ43)が回転する。回転モータ44θZが駆動すると、Y軸周りに保持部材441θY(更には、保持部材441θYが保持するステージ43)が回転する。回転モータ443θZが駆動すると、Z軸周りにステージ43が回転する。回転モータ44θZが駆動すると、Y軸周りに保持部材441θY(更には、保持部材441θYが保持するステージ43)が回転する。尚、支持フレーム445は、造形システム1が設置される床からの振動、或いは造形システム1内であってチャンバ46外からの振動を低減するための防振装置を介してチャンバに設置されているが、例えば、造形システム1内であってチャンバ46外からの振動が無視できれば、造形システム1と床との間に設けてもよく、この床の振動条件が良好(低い振動)である場合には、防振装置はなくてもよい。
【0032】
ステージ43がθY軸及びθZ軸の夫々に沿って移動する(θY軸及びθZ軸の夫々の回りに回転する)と、照射系411に対するステージ43(更には、ステージ43が保持するワークW及び3次元造形物STの少なくとも一方)の相対的な位置が変わる。より具体的には、ステージ43がθY軸及びθZ軸の少なくとも一方に沿って移動すると、照射系411に対するステージ43(更には、ステージ43が保持するワークW及び3次元造形物STの少なくとも一方)の姿勢が変わる。照射系411からの光ELの射出方向に対するステージ43(更には、ステージ43が保持するワークW及び3次元造形物STの少なくとも一方)の姿勢が変わる。照射系411からの照射領域EAへと向かう光ELの軸線に対するステージ43(更には、ステージ43が保持するワークW及び3次元造形物STの少なくとも一方)の姿勢が変わる。
【0033】
計測装置45は、造形装置4が形成した3次元構造物STの形状を計測する。計測装置45は、例えば、3次元構造物STの表面の形状を測定する。計測装置45は、例えば、3次元構造物STの表面に光パターンを投影し、投影されたパターンの形状を計測するパターン投影法や光切断法、3次元構造物STの表面に光を投射し、投射された光が戻ってくるまでの時間から3次元構造物STまでの距離を測定し、これを3次元構造物ST上の複数の位置で行うタイム・オブ・フライト法、モアレトポグラフィ法(具体的には、格子照射法若しくは格子投影法)、ホログラフィック干渉法、オートコリメーション法、ステレオ法、非点収差法、臨界角法、又はナイフエッジ法を用いて、3次元構造物STの形状を計測してもよい。
【0034】
なお、計測装置45は、ワークWの形状(例えば、その表面の形状)を測定してもよい。
【0035】
再び図1において、光源5は、例えば、赤外光、可視光及び紫外光のうちの少なくとも一つを、光ELとして出射する。但し、光ELとして、その他の種類の光が用いられてもよい。光ELは、レーザ光である。この場合、光源5は、レーザ光源(例えば、レーザダイオード(LD:Laser Diode)等の半導体レーザを含んでいてもよい。レーザ光源としては、ファイバ・レーザやCOレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等であってもよい。但し、光ELはレーザ光でなくてもよいし、光源5は任意の光源(例えば、LED(Light Emitting Diode)及び放電ランプ等の少なくとも一つ)を含んでいてもよい。
【0036】
ガス供給装置6は、不活性ガスの供給源である。不活性ガスの一例として、窒素ガス又はアルゴンガスがあげられる。ガス供給装置6は、造形装置4のチャンバ46内に不活性ガスを供給する。その結果、チャンバ46の内部空間は、不活性ガスによってパージされた空間となる。尚、ガス供給装置6は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが格納されたボンベであってもよく、不活性ガスが窒素ガスである場合には、大気を原料として窒素ガスを発生する窒素ガス発生装置であってもよい。
【0037】
制御装置7は、造形システム1の動作を制御する。制御装置7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)や、メモリを含んでいてもよい。特に、本実施形態では、制御装置7は、照射系411による光ELの射出態様を制御する。射出態様は、例えば、光ELの強度及び光ELの射出タイミングの少なくとも一方を含む。光ELがパルス光である場合には、射出態様は、例えば、パルス光の発光時間の長さ及びパルス光の発光時間と消光時間との比(いわゆる、デューティ比)の少なくとも一方を含んでいてもよい。更に、制御装置7は、ヘッド駆動系42による造形ヘッド41の移動態様及びステージ駆動系44によるステージ43の移動態様を制御する。移動態様は、例えば、移動量、移動速度、移動方向及び移動タイミングの少なくとも一つを含む。更に、制御装置7は、材料ノズル412による造形材料Mの供給態様を制御する。供給態様は、例えば、供給量(特に、単位時間当たりの供給量)を含む。尚、制御装置7は、造形システム1の内部に設けられていなくてもよく、例えば、造形システム1外にサーバ等として設けられていてもよい。
【0038】
(2)造形システム1の動作
続いて、造形システム1の動作について説明する。本実施形態では、造形システム1は、上述したように、3次元構造物STを形成するための造形動作を行う。更に、造形システム1は、造形動作によって形成した3次元構造物STの表面の少なくとも一部を加工するための加工動作を行う。このため、以下では、造形動作及び加工動作について順に説明する。
【0039】
(2-1)造形動作
はじめに、造形動作について説明する。上述したように、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法により3次元構造物STを形成する。このため、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法に準拠した既存の造形動作を行うことで、3次元構造物STを形成してもよい。以下、レーザ肉盛溶接法による3次元構造物STの造形動作の一例について簡単に説明する。
【0040】
造形システム1は、形成するべき3次元構造物STの3次元モデルデータ(例えば、CAD(Computer Aided Design)データ)等に基づいて、ワークW上に3次元構造物STを形成する。3次元モデルデータは、3次元構造物STの形状(特に、3次元形状)を表すデータを含む。3次元モデルデータとして、造形システム1内に設けられた計測装置45で計測された立体物の計測データ、造形システム1とは別に設けられた3次元形状計測機、例えばワークに対して移動可能でワークに接触可能なプローブを有する接触型の3次元座標測定機や、非接触型の3次元計測機(一例としてパターン投影方式の3次元計測機、光切断方式の3次元計測機、タイム・オブ・フライト方式の3次元計測機、モアレトポグラフィ方式の3次元計測機、ホログラフィック干渉方式の3次元計測機、CT(Computed Tomography)方式の3次元計測機、MRI(Magnetic Resonance Imaging)方式の3次元計測機等の計測データを用いてもよい。或いは、3次元モデルデータとして、3次元構造物STの設計データを用いてもよい。尚、3次元モデルデータとしては、例えばSTL(Stereo Lithography)フォーマット、VRML(Virtual Reality Modeling Language)フォーマット、AMF(Additive Manufacturing File Format)、IGES(Initial Graphics Exchange Specification)フォーマット、VDA-FS(Association of German Automotive Manufactures-Surfaces Interface)フォーマット、HP/GL(Hewlett-Packard Graphics Language)フォーマット、ビットマップフォーマット等を用いることができる。造形システム1は、3次元構造物STを形成するために、例えば、Z軸方向に沿って並ぶ複数の層状の部分構造物(以下、“構造層”と称する)SLを順に形成していく。例えば、造形システム1は、3次元構造物STをZ軸方向に沿って輪切りにすることで得られる複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していく。その結果、複数の構造層SLが積層された積層構造体である3次元構造物STが形成される。以下、複数の構造層SLを1層ずつ順に形成していくことで3次元構造物STを形成する動作の流れについて説明する。
【0041】
まず、各構造層SLを形成する動作について説明する。造形システム1は、制御装置7の制御下で、ワークWの表面又は形成済みの構造層SLの表面に相当する造形面CS上の所望領域に照射領域EAを設定し、当該照射領域EAに対して照射系411から光ELを照射する。尚、照射系411から照射される光ELが造形面CS上に占める領域を照射領域EAと称してもよい。本実施形態においては、光ELのフォーカス位置(つまり、集光位置)が造形面CSに一致している。その結果、図3(a)に示すように、照射系411から射出された光ELによって造形面CS上の所望領域に溶融池(つまり、光ELによって溶融した金属のプール)MPが形成される。更に、造形システム1は、制御装置7の制御下で、造形面CS上の所望領域に供給領域MAを設定し、当該供給領域MAに対して材料ノズル412から造形材料Mを供給する。ここで、上述したように照射領域EAと供給領域MAとが一致しているため、供給領域MAは、溶融池MPが形成された領域に設定されている。このため、造形システム1は、図3(b)に示すように、溶融池MPに対して、材料ノズル412から造形材料Mを供給する。その結果、溶融池MPに供給された造形材料Mが溶融する。造形ヘッド41の移動に伴って溶融池MPに光ELが照射されなくなると、溶融池MPにおいて溶融した造形材料Mは、冷却されて再度固化(つまり、凝固)する。その結果、図3(c)に示すように、再固化した造形材料Mが造形面CS上に堆積される。つまり、再固化した造形材料Mの堆積物による造形物が形成される。
【0042】
このような光の照射ELによる溶融池MPの形成、溶融池MPへの造形材料Mの供給、供給された造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの再固化を含む一連の造形処理が、造形面CSに対して造形ヘッド41をXY平面に沿って相対的に移動させながら繰り返される。造形面CSに対して造形ヘッド41が相対的に移動すると、造形面CSに対して照射領域EAもまた相対的に移動する。従って、一連の造形処理が、造形面CSに対して照射領域EAをXY平面に沿って相対的に移動させながら繰り返される。この際、光ELは、造形物を形成したい領域に設定された照射領域EAに対して選択的に照射される一方で、造形物を形成したくない領域に設定された照射領域EAに対して選択的に照射されない(造形物を形成したくない領域には照射領域EAが設定されないとも言える)。つまり、造形システム1は、造形面CS上を所定の移動軌跡に沿って照射領域EAを移動させながら、造形物を形成したい領域の分布パターン(つまり、構造層SLのパターン)に応じたタイミングで光ELを造形面CSに照射する。その結果、造形面CS上に、凝固した造形材料Mによる造形物の集合体に相当する構造層SLが形成される。ここで、照射領域EAを設定領域と称してもよい。尚、上述では、造形面CSに対して照射領域EAを移動させたが、照射領域EAに対して造形面CSを移動させてもよい。
【0043】
造形システム1は、このような構造層SLを形成するための動作を、制御装置7の制御下で、3次元モデルデータに基づいて繰り返し行う。具体的には、まず、3次元モデルデータを積層ピッチでスライス処理してスライスデータを作成する。尚、造形システム1の特性に応じてこのスライスデータを一部修正したデータを用いてもよい。造形システム1は、ワークWの表面に相当する造形面CS上に1層目の構造層SL#1を形成するための動作を、構造層SL#1に対応する3次元モデルデータ、即ち構造層SL#1に対応するスライスデータに基づいて行う。その結果、造形面CS上には、図4(a)に示すように、構造層SL#1が形成される。その後、造形システム1は、構造層SL#1の表面(つまり、上面)を新たな造形面CSに設定した上で、当該新たな造形面CS上に2層目の構造層SL#2を形成する。構造層SL#2を形成するために、制御装置7は、まず、造形ヘッド41がZ軸に沿って移動するように駆動系42を制御する。具体的には、制御装置7は、駆動系42を制御して、照射領域EA及び供給領域MAが構造層SL#1の表面(つまり、新たな造形面CS)に設定されるように、+Z側に向かって造形ヘッド41を移動させる。これにより、光ELのフォーカス位置が新たな造形面CSに一致する。その後、造形システム1は、制御装置7の制御下で、構造層SL#1を形成する動作と同様の動作で、構造層SL#2に対応するスライスデータに基づいて、構造層SL#1上に構造層SL#2を形成する。その結果、図4(b)に示すように、構造層SL#2が形成される。以降、同様の動作が、ワークW上に形成するべき3次元構造物を構成する全ての構造層SLが形成されるまで繰り返される。その結果、図4(c)に示すように、Z軸に沿って(つまり、溶融池MPの底面から上面へと向かう方向に沿って)複数の構造層SLが積層された積層構造物によって、3次元構造物が形成される。
【0044】
なお、いくつかの構造層SLの形成後であって、全ての構造層SLが形成される前の3次元構造物の形状(例えば、その表面の形状)を、計測装置45を用いて計測してもよい。その場合、その後に続いて行われる構造層SLの造形に用いられるスライスデータの少なくとも一部を、計測装置45の結果に基づいて修正してもよい。
【0045】
(2-2)加工動作(研磨動作)
続いて、加工動作について説明する。造形システム1は、造形動作によって形成した3次元構造物STの表面の少なくとも一部に光ELを照射して、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を加工するための加工動作を行う。以下の説明では、加工動作の一例として、3次元構造物STの表面の少なくとも一部を研磨するための研磨動作を用いて説明を進める。以下、研磨動作によって研磨される面を、研磨対象面PSと称する。
【0046】
本実施形態では、「研磨対象面PSを研磨する研磨動作」は、「研磨動作を行う前と比較して、研磨対象面PSを滑らかにする、研磨対象面PSの平坦度を上げる(つまり、平坦にする)、及び/又は、研磨対象面PSの表面粗さを細かくする(つまり、小さくする)動作」を含む。尚、研磨対象面PSが研磨されると、研磨対象面PSが研磨される前と比較して、研磨対象面PSの色調が変わる可能性がある。従って、「研磨対象面PSを研磨する研磨動作」は、「研磨動作を行う前と比較して、研磨対象面PSの色調を変える動作」を含んでいてもよい。研磨対象面PSが研磨されると、研磨対象面PSが研磨される前と比較して、研磨対象面PSの反射率(例えば、任意の光に対する反射率)及び拡散率(例えば、任意の光に対する拡散率)の少なくとも一方が変わる可能性がある。従って、「研磨対象面PSを研磨する研磨動作」は、「研磨動作を行う前と比較して、研磨対象面PSの反射率及び拡散率の少なくとも一方を変える動作」を含んでいてもよい。
【0047】
以下、このような研磨動作が行われる研磨対象面PSについて、図5(a)及び図5(b)を参照しながら説明する。図5(a)は、3次元構造物STの断面を示す断面図であり、図5(b)は、3次元構造物の外観を示す斜視図である。
【0048】
図5(a)及び図5(b)に示すように、3次元構造物STの表面は、3次元構造物STを構成する複数の構造層SLの積層方向(つまり、Z軸方向)に沿った面(典型的には、平行な面)を含む可能性がある。この場合には、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に延びる面を含んでいてもよい。つまり、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に沿った研磨対象面PS1を含んでいてもよい。言い換えれば、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に交差する(この場合は、特に、直交する)方向を向いた研磨対象面PS1を含んでいてもよい。研磨対象面PS1は、複数の構造層SLの表面を含んでいてもよい。更に、3次元構造物STの表面は、構造層SLの積層方向に対して傾斜している(つまり、構造層SLの積層方向に対して、90度以外の角度で交差する)面を含む可能性がある。この場合には、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に対して傾斜している面を含んでいてもよい。つまり、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に対して傾斜している研磨対象面PS2を含んでいてもよい。言い換えれば、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に交差する(但し、直交しない)方向を向いた研磨対象面PS2を含んでいてもよい。研磨対象面PS2は、複数の構造層SLの表面を含んでいてもよい。更に、3次元構造物STの表面は、構造層SLの積層方向に直交する面(つまり、XY平面に沿った面)を含む可能性がある。この場合には、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に直交する面を含んでいてもよい。つまり、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向に直交する研磨対象面PS3を含んでいてもよい。言い換えれば、研磨対象面PSは、構造層SLの積層方向を向いた研磨対象面PS3を含んでいてもよい。尚、研磨対象面PS1からPS3のいずれも、平面を含む面であってもよいし、曲面を含む面であってもよい。尚、構造層SLの積層方向は、Z軸方向に対して傾斜していてもよい。この場合には、研磨対象面PS2を例に挙げると、研磨対象面PS2の面内方向であってZ方向成分を含む方向を積層方向と称してもよい。
【0049】
このような研磨対象面PSは、研磨動作によって研磨することで滑らかに(或いは、平坦に又は表面粗さを細かくする)ことが可能な相対的に粗い面(つまり、凹凸が形成されている面)となっている可能性がある。
【0050】
例えば、上述したように、本実施形態では、粉状の又は粒状の造形材料Mを溶融した後に再固化させることで3次元構造物STが形成される。このため、3次元構造物STの表面の少なくとも一部には、溶融しなかった造形材料Mが付着している可能性がある。この場合、溶融しなかった造形材料Mが付着している面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。更には、3次元構造物STの表面の少なくとも一部には、意図しなかった形状で再固化してしまった造形材料Mが付着している可能性がある。この場合、意図しなかった形状で再固化してしまった造形材料Mが付着している面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。
【0051】
例えば、上述したように、本実施形態では、各構造層SLが形成される期間中において、造形ヘッド41は、X軸及びY軸の夫々に沿って(つまり、XY平面に沿って)移動する。この場合、造形面CSに対する造形ヘッド41の相対的な移動態様によっては、XY平面に沿った構造層SLの表面(ひいては、3次元構造層STの表面)の少なくとも一部に、造形ヘッド41の移動パターン(典型的には、移動のピッチ)に応じた規則的な又は不規則な凹凸が現れる可能性がある。この場合、規則的な又は不規則な凹凸が現れる面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。
【0052】
例えば、上述したように、本実施形態では、複数の構造層SLが積層されることで3次元構造物STが形成される。この場合、3次元構造物STの表面(特に、積層方向に沿った又は傾斜した面である、構造層SLの積層方向に交差する方向を向いた面)には、複数の構造層SLの積層のピッチに応じた規則的な又は不規則な凹凸が現れる可能性がある。この場合、規則的な又は不規則な凹凸が現れる面は、研磨動作によって滑らかにすることが可能な相対的に粗い面となり得る。
【0053】
このような研磨対象面PSに対して研磨動作を行うために、造形システム1は、まずは、制御装置7の制御下で、3次元構造物STの表面の形状に関する形状情報を取得する。形状情報は、計測装置45の計測結果に関する情報を含んでいてもよい。また、形状情報は、造形システム1の外部の3次元計測装置による計測結果に関する情報を含んでいてもよい。この場合、造形動作によって3次元構造物STが形成された後に、計測装置45は、3次元構造物STの表面の形状を計測する。その後、計測装置45は、計測結果を制御装置7に出力する。或いは、形状情報は、計測装置45の計測結果に関する情報に加えて又は代えて、造形動作で用いられた(つまり、3次元構造物STを形成する際に用いられた)3次元構造物STの3次元モデルデータに関する情報を含んでいてもよい。
【0054】
形状情報を取得した後、造形システム1は、制御装置7の制御下で、研磨対象面PSを特定する。例えば、制御装置7は、3次元構造物STの表面のうち構造層SLの積層方向に沿った面の少なくとも一部を、研磨対象面SP(つまり、研磨対象面SP1)に設定してもよい。例えば、制御装置7は、3次元構造物STの表面のうち構造層SLの積層方向に対して傾斜した面の少なくとも一部を、研磨対象面SP(つまり、研磨対象面SP2)に設定してもよい。例えば、制御装置7は、3次元構造物STの表面のうち構造層SLの積層方向に直交する面の少なくとも一部を、研磨対象面SP(つまり、研磨対象面SP3)に設定してもよい。例えば、制御装置7は、3次元構造物STの表面のうちの外面(つまり、3次元構造物STの外観を構成し、外部から観察可能な面)の少なくとも一部を、研磨対象面SPに設定してもよい。この際、制御装置7は、照射系411及びステージ43の少なくとも一方に対する研磨対象面PSの相対的な位置及び姿勢の少なくとも一方を合わせて特定してもよい。
【0055】
その後、造形システム1は、制御装置7の制御下で、研磨対象面PSに光ELを照射して研磨対象面PSを研磨する。つまり、本実施形態では、光ELで研磨対象面PSを研磨する。具体的には、制御装置7は、図6(a)に示すように、形状情報に基づいて、研磨対象面PS上のある領域部分に照射領域EAを設定し、当該照射領域EAに対して照射系411から光ELを照射する。尚、図6(a)は、研磨対象面PSが、規則的な又は不規則な凹凸が現れる面である例を示している。このとき、制御装置7は、必要に応じて、造形ヘッド41及びステージ43の少なくとも一方を移動させて、所望の研磨対象面PS上の所望の領域部分に照射領域EAを設定する。照射領域EAに光ELが照射されると、図6(b)に示すように、研磨対象面PSのうち照射領域EAが設定された領域部分内の造形材料Mが、光ELによって再度溶融する。凹凸を形成するように固化していた造形材料Mが溶融すると、溶融した造形材料Mの自重及び表面張力の少なくとも一方の作用により、溶融した造形材料Mの表面(つまり、界面)が平面に近づく又は平面になる。つまり、溶融した造形材料Mの表面(つまり、界面)の滑らかさが向上する。その後、造形ヘッド41の移動に伴って溶融した造形材料Mに光ELが照射されなくなると、溶融した造形材料Mは、冷却されて再度固化(つまり、凝固)する。その結果、図6(c)に示すように、滑らかになった(或いは、平坦度が向上した、及び/又は、表面粗さが細かくなった)表面を有するように再固化した造形材料Mが、3次元構造物STの表面を構成することになる。このように、研磨動作によって研磨対象面PSが研磨される。
【0056】
制御装置7は、このような光の照射ELによる造形材料Mの溶融及び溶融した造形材料Mの再固化を含む一連の研磨処理を、形状情報に基づいて造形ヘッド41を3次元構造物STに対して相対的に移動させながら繰り返し行う。つまり、制御装置7は、一連の研磨処理を、形状情報に基づいて研磨対象面PSに対して照射領域EAを相対的に移動させながら繰り返し行う。
【0057】
但し、上述したように、3次元構造物STは、互いに非平行な(つまり、異なる方向を向いた)複数の研磨対象面PSを含んでいる可能性がある。この場合、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに沿って造形ヘッド41を移動させるだけでは、研磨対象面PSの全体に渡って光ELを照射できない可能性がある。例えば、平面である第1の研磨対象面PSに対して光ELを照射して当該第1の研磨対象面PSが研磨された後に、第1の研磨対象面PSと非平行な第2の研磨対象面PSを研磨する場合には、造形ヘッド41をX軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一方に移動させるだけでは、第2の研磨対象面PSに光ELを照射することが困難である。より具体的には、図5(a)及び図5(b)に示す例で言えば、研磨対象面PS1からPS3のいずれか一つに対して光ELを照射して当該研磨対象面PS1からPS3のいずれか一つが研磨された後に、研磨対象面PS1からPS3のいずれか他の一つを研磨する場合には、造形ヘッド41をX軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一方に移動させるだけでは、研磨対象面PS1からPS3のいずれか他の一つに光ELを照射することが可能な位置に造形ヘッド41を移動させることが困難である。
【0058】
このため、研磨動作においては、制御装置7は、造形ヘッド41を移動させることに加えて又は代えてステージ43を移動させることで、造形ヘッド41と3次元構造物STとを相対的に移動させてもよい。つまり、制御装置7は、形状情報に基づいて、研磨対象面PSに対して照射領域EAを相対的に移動させ且つ照射系411に対する3次元構造物STの姿勢を変えながら、一連の研磨処理を繰り返し行う。具体的には、図5(a)及び図5(b)に示す例で言えば、制御装置7は、3次元構造物STの姿勢が、研磨対象面PS1からPS3のいずれか一つ(例えば、研磨対象面PS1)に光ELを照射することが可能な第1方向を研磨対象面PS1が向いた状態となる第1の姿勢となるように、ステージ43を移動させる。その上で、3次元構造物STの姿勢が第1の姿勢となっている状態で、制御装置7は、形状情報に基づいて研磨対象面PS1に対して照射領域EAを相対的に移動させながら、一連の研磨処理を繰り返し行う。研磨対象面PS1の研磨が完了した後には、制御装置7は、3次元構造物STの姿勢が、研磨対象面PS1からPS3のいずれか他の一つ(例えば、研磨対象面PS2)に光ELを照射することが可能な第2方向を研磨対象面PS2が向いた状態となる第2の姿勢となるように、ステージ43を移動させる。その上で、3次元構造物STの姿勢が第2の姿勢となっている状態で、制御装置7は、形状情報に基づいて研磨対象面PS2に対して照射領域EAを相対的に移動させながら、一連の研磨処理を繰り返し行う。以降、同様の動作が、全ての研磨対象面PSの研磨が完了するまで繰り返される。その結果、どのような研磨対象面PSに対しても光ELが照射可能となる。
【0059】
(2-3)研磨動作における動作条件
本実施形態では、制御装置7は、研磨動作で用いる光ELに関する第1動作条件が満たされるように、研磨動作を行ってもよい。制御装置7は、第1動作条件に加えて又は代えて、研磨対象面PSに関する第2動作条件が満たされるように、研磨動作を行ってもよい。以下、第1動作条件及び第2動作条件について順に説明する。
【0060】
(2-3-1)光ELに関する第1動作条件
(2-3-1-1)光ELの強度に関する光強度条件
第1動作条件は、光ELの強度(特に、研磨対象面PS上における単位面積当たりの強度又は研磨対象面PS上に設定される照射領域EA内での単位面積当たりの強度、以下、特段の注記がない場合は同じ)に関する光強度条件を含んでいてもよい。ここで、光ELの強度の単位としてはフルエンス[W/cm]を用いてもよい。光強度条件は、図7に示すように、研磨動作で用いられる光ELの強度が、造形動作で用いられる光ELの強度よりも小さいという第1強度条件を含んでいてもよい。このような第1強度条件を含む強度条件が満たされるように研磨動作が行われると、光ELの照射によって造形材料Mが必要以上に溶融してしまうことがない。具体的には、光ELの照射によって、3次元構造物STの表面の形状が意図せず変わってしまうほどに相対的に多くの造形材料Mが溶融してしまうことがない。例えば、光ELの照射によって溶融した造形材料Mが下方に向かって垂れ下がってしまうほどに相対的に多く溶融してしまうことがない。このため、造形システム1は、3次元構造物STの形状を意図せず変えることなく、研磨動作を行うことができる。
【0061】
光強度条件は、研磨動作で用いられる光ELの強度が、相対的に多くの造形材料Mを溶融させてしまうことに起因して3次元構造物STの表面の形状を意図せず変えてしまうほどには高くない所定強度になるという第2強度条件を含んでいてもよい。但し、上述したように、本実施形態では、光ELの照射によって造形材料Mを溶融させることで研磨対象面PSが研磨される。このため、仮に研磨動作で用いられる光ELの強度が、造形材料Mを溶融させることすらできない強度以下になってしまうと、造形システム1は、光ELの照射によって研磨対象面PSを研磨することができなくなってしまう。このため、所定強度は、造形材料Mを溶融させることが可能な程度には高い温度となる。このような第2強度条件を含む光強度条件が満たされるように研磨動作が行われる場合も、造形システム1は、3次元構造物STの形状を意図せず変えることなく、研磨動作を行うことができる。
【0062】
尚、第2強度条件で用いられる所定強度の一例として、造形動作で用いられる光ELの強度のN1(但し、N1は0より大きい)%に相当する値があげられる。N1は、例えば、100未満であってもよい、70未満であってもよいし、50未満であってもよいし、30未満であってもよい。N1が100未満になる場合は、第2強度条件は、上述した第1強度条件の一具体例に相当する。或いは、所定強度の一例として、造形動作で用いられる光ELの強度の1/N2(但し、N2は0より大きい)に相当する値があげられる。N2は、例えば、1以上であってもよいし、2以上であってもよいし、3以上であってもよいし、4以上であってもよい。N2が1より大きくなる場合は、第2強度条件は、上述した第1強度条件の一具体例に相当する。
【0063】
また、第2強度条件は、例えば実験、あるいはシミュレーション、あるいはその両方に基づいて決めてもよい。また、第2強度条件は、造形材料Mに基づいて決めてもよい。
【0064】
光強度条件を満たすために、制御装置7は、光源5を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。例えば、制御装置7は、光源5が出射する光ELの強度を制御してもよい。
【0065】
光強度条件を満たすために、制御装置7は、照射系411を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。例えば、制御装置7は、光ELの強度を制御するために照射系411が備える光学部材を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。例えば、制御装置7は、照射領域EA内での光ELの強度分布を制御するために照射系411が備える光学部材を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。強度及び強度分布の少なくとも一方を制御するための光学部材としては、例えば、光ELの光路を横切る面内で所要の濃度分布を有するフィルタ、光ELの光路を横切る面内で所要の面形状を有する非球面な光学部材(例えば、屈折型の光学部材又は反射型の光学部材)、回折光学素子及び空間光変調器等の少なくとも一つを用いることができる。例えば、制御装置7は、光ELのフォーカス位置(言い換えれば、デフォーカス量)を制御するために照射系411が備える光学部材を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。なぜならば、フォーカス位置が研磨対象面PSから離れるほど(つまり、デフォーカス量が大きくなるほど)、研磨対象面PS上での光ELの強度が小さくなるからである。このため、制御装置7は、研磨動作でのフォーカス位置が、造形動作でのフォーカス位置とは異なるように、フォーカス位置を制御してもよい。具体的には、制御装置7は、研磨動作でのフォーカス位置の研磨対象面PSからのずれ量(つまり、デフォーカス量)が、造形動作でのフォーカス位置の造形面CSからのずれ量よりも大きくなるように、フォーカス位置を制御してもよい。尚、フォーカス位置を制御するための光学部材としては、例えば、集光光学素子等を用いることができる。
【0066】
光強度条件を満たすために、制御装置7は、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の少なくとも一方を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。具体的には、制御装置7は、研磨対象面PSに対してZ軸に沿って造形ヘッド41(特に、照射系411)が移動するように、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の少なくとも一方を制御してもよい。研磨対象面PSに対してZ軸に沿って照射系411が移動すると、研磨対象面PSと照射系411との間の間隔が変化する。研磨対象面PSと照射系411との間の間隔が変化すると、研磨対象面PSに対する光ELのフォーカス位置が変化する。このため、研磨対象面PSに対して照射系411を移動させる動作は、光ELのフォーカス位置を制御する動作と等価である。この場合、制御装置7は、研磨動作が行われている場合の研磨対象面PSと照射系411との間の間隔が、造形動作が行われている場合の造形面CSと照射系411との間の間隔よりも大きくなるように、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の少なくとも一方を制御してもよい。
【0067】
光強度条件を満たすために、制御装置7は、光ELの強度と相関を有する光ELの任意の特性を制御することで、光ELの強度を制御してもよい。このような光ELの任意の特性の一例として、研磨対象面PS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つがあげられる。なぜならば、研磨対象面PS上での照射領域EAの大きさ、形状及び位置の少なくとも一つが変わると、研磨対象面PS上での光ELの強度分布が変わり得るからである。例えば、照射領域EAが大きくなるほど、当該照射領域EA内での光の強度が小さくなる。このため、制御装置7は、研磨動作で用いられる照射領域EAが、造形動作で用いられる照射領域EAよりも大きくなるように、照射領域EAの大きさを制御してもよい。その結果、研磨動作で用いられる光ELの強度が、造形動作で用いられる光ELの強度よりも小さいという第1強度条件が満たされる。また、例えば、照射領域EAが大きくなるほど、研磨動作に費やす時間を少なくすることできる。例えば、制御装置7は、第2強度条件を満たす範囲で、造形動作で用いられる照射領域EAよりも大きい照射領域EAを設定してもよい。
【0068】
尚、研磨対象物である3次元構造物STが場所により異なる材料で造形されている場合、造形材料の特性に応じて、3次元構造物ST(研磨対象面PS)上の位置ごとに異なる光強度条件を設定してもよい。尚、3次元構造物STが1つの造形材料Mで構成されている場合においても、第2強度条件を満たす範囲内で、研磨対象面PS上の位置ごとに異なる光強度条件を設定してもよい。
【0069】
また、上述では、CWレーザ(Continuous Wave Laser)を念頭において、強度で説明したが、光源としてパルスレーザを用いる場合には、強度に代えて、1発のパルスの含まれる全エネルギで光強度条件を表してもよい。すなわち、第1動作条件を、光ELのエネルギ(研磨対象面PS上における単位面積当たりのエネルギ又は研磨対象面PS上に設定される照射領域EA内での単位面積当たりのエネルギ、以下、特段の注記がない場合は同じ)に関する光エネルギ条件であって、研磨動作で用いられる光ELのエネルギが、造形動作で用いられる光ELのエネルギよりも小さいという条件としてもよい。また、第2動作条件を、研磨動作で用いられる光ELのエネルギが造形材料Mを溶融させることができるエネルギよりも大きいという条件としてもよい。ここで、光ELのエネルギは、1パルス辺りの光ELの強度の積分値[ΣW/cm]を用いてもよい。尚、光ELがパルス光である場合には、パルス光の発光時間が長くなるほど(言い換えれば、パルス光の消光時間が短くなるほど)、照射領域EA上での光ELの強度が大きくなる。このため、光ELがパルス光である場合には、例えば、制御装置7は、光源5が出射する光ELのデューティ比を制御してもよい。
【0070】
(2-3-1-2)光ELが照射される照射領域EAのサイズに関する照射サイズ条件
第1動作条件は、光ELが照射される照射領域EAのサイズ(特に、研磨対象面PSに沿った方向におけるサイズ)に関する照射サイズ条件を含んでいてもよい。照射サイズ条件は、図8に示すように、研磨対象面PSのある領域部分に設定された照射領域EAのサイズ(具体的には、研磨対象面PSに沿った方向における照射領域EAの幅)R1が、当該領域部分に現れる凹凸のピッチR2よりも大きいという第1サイズ条件を含んでいてもよい。尚、凹凸のピッチR2は、ある凸部を挟んで隣り合う2つの凹部の間の距離(つまり、研磨対象面PSに沿った距離)又はある凹部を挟んで隣り合う2つの凸部のそれぞれの中心位置の間の距離(つまり、研磨対象面PSに沿った距離)を意味する。尚、凹凸のピッチR2は、ある凸部の研磨対象面PSに沿った幅又はある凹部の研磨対象面に沿った幅を意味していてもよい。
【0071】
ここで、仮に第1サイズ条件を含む照射サイズ条件が満たされない場合には、照射領域EAのサイズR1が、当該領域部分に現れる凹凸のピッチR2よりも小さくなる。このため、図9(a)から図9(b)に示すように、光ELの照射領域EA内にある一つの凸部の一部(或いは、ある一つの凹部の一部、以下同じ)しか含まれない。言い換えれば、光ELの照射領域EA内に複数の凸部の境界が含まれない可能性がある。この場合には、図9(a)に示すようにある一つの凸部の第1部分A1に光ELが照射されて当該第1部分A1が研磨された後に、図9(b)に示すようにある一つの凸部の第2部分A2に光ELが照射されて当該第2部分A2が研磨されることになる。その結果、同じ凸部に対して部分的な研磨が複数回行われるため、第1部分A1と第2部分A2とが同じ平面内に位置するように当該凸部が研磨されない可能性がある。つまり、研磨動作が行われた研磨対象面PSのマクロ的な滑らかさが相対的に悪化する可能性がある。但し、この場合であっても、研磨動作が行われない場合と比較すれば、研磨対象面PSがミクロ的には滑らかになっていることに変わりはない。
【0072】
しかるに、第1サイズ条件を含む照射サイズ条件が満たされるように研磨動作が行われると、図8に示すように、光ELの照射領域EA内にある一つの凸部の全体(或いは、ある一つの凹部の全体、以下同じ)が含まれることになる。言い換えれば、光ELの照射領域EA内に複数の凸部の境界が含まれることになる。このため、光ELの照射によって、照射領域EA内に位置する一つの凸部の全体がまとめて研磨されることになる(上述した図6(c)参照)。その結果、第1サイズ条件を含む照射サイズ条件が満たされないように研磨動作が行われる場合と比較して、研磨対象面PSが適切に研磨されることになる。つまり、研磨対象面PSに残存してしまう凹凸が相対的に小さくなる。従って、造形システム1は、研磨対象面PSがより滑らかな面となるように研磨対象面PSを研磨することができる。
【0073】
上述したように、研磨対象面PSには、複数の構造層SLの積層のピッチに応じた規則的な又は不規則な凹凸が現れる可能性がある(図10参照)。このような凹凸は、研磨対象面PSが、構造層SLの積層方向に交差する方向を向いた研磨対象面PS1及びPS2の少なくとも一方を含んでいる場合に現れる可能性が相対的に高い。この場合、図10に示すように、凹凸のピッチR2は、構造層SLの高さ(つまり、厚さ)Hと等価である。従って、照射サイズ条件は、研磨対象面PSのある領域部分に設定された照射領域EAのサイズR1が、当該領域部分に形成されている構造層SLの高さHよりも大きいという第2サイズ条件を含んでいてもよい。構造層SLの積層方向に交差する方向を向いた研磨対象面PS1及びPS2の少なくとも一方に対して第2サイズ条件を含む照射サイズ条件が満たされるように研磨動作が行われる場合には、図10に示すように、照射領域EAは、複数の構造層SLに跨って設定される。つまり、照射領域EAは、ある構造層SLと当該構造層SL上に形成される別の少なくとも一つの構造層SLとに跨って設定される。言い換えれば、照射領域EAは、ある構造層SLと当該構造層SL上に形成される別の少なくとも一つの構造層SLとの境界を含むように設定される。その結果、光ELの照射領域EA内に、構造層SLの側方端部に相当する一つの凸部の全体(或いは、ある一つの凹部の全体、以下同じ)が含まれることになる。つまり、ある構造層SLと当該構造層SL上に形成される別の少なくとも一つの構造層SLとの境界に光ELが照射されて、ある構造層SLと別の少なくとも一つの構造層SLとが、その境界が目立たなくなるように研磨される。その結果、第1サイズ条件を含む照射サイズ条件が満たされるように研磨動作が行われる場合と同様に、造形システム1は、研磨対象面PSがより滑らかな面となるように研磨対象面PSを研磨することができる。
【0074】
但し、3次元構造物STを構成する複数の構造層SLの高さHが常に同一になるとは限らない。具体的には、図11に示すように、3次元構造物STを構成する一の構造層SLの高さH1が、他の構造層SLの高さH2よりも低くなる可能性がある。この場合、照射領域EAのサイズR1が相対的に低い構造層SLの高さH1よりも大きいという第2サイズ条件が設定されると、場合によっては、図11に示すように、光ELの照射領域EA内に、相対的に高い構造層SLの側方端部に相当するある一つの凸部の全体(或いは、ある一つの凹部の全体、以下同じ)が含まれなくなる可能性がある。このため、照射サイズ条件は、研磨対象面PSのある領域部分に設定された照射領域EAのサイズR1が、当該領域部分に形成されている複数の構造層SLのうち最も高い構造層SLの高さH(図11に示す例では、高さH2)よりも大きいという第3サイズ条件を含んでいてもよい。この場合、造形システム1は、研磨対象面PSがより滑らかな面となるように研磨対象面PSを研磨することができる。或いは、照射サイズ条件は、研磨対象面PSのある領域部分に設定された照射領域EAのサイズR1が、当該領域部分に形成されている隣り合う2つ以上の構造層SLの中心位置(具体的には、構造層SLの積層方向に沿った中心位置)の間の間隔D1(図11参照)よりも大きいという第4サイズ条件を含んでいてもよい。言い換えれば、照射サイズ条件は、研磨対象面PSのある領域部分に設定された照射領域EAのサイズR1が、当該領域部分に形成されている隣り合う2つ以上の構造層SLの高さの平均値よりも大きいという第5サイズ条件を含んでいてもよい。図11に示す例で言えば、第5サイズ条件は、照射領域EAのサイズR1が、ある構造層SLの高さH1と当該構造層SL上に形成された構造層SLの高さH2との平均値である「(H1+H2)/2」よりも大きいという条件を含んでいてもよい。或いは、図11に示す例で言えば、第5サイズ条件は、照射領域EAのサイズR1が、ある構造層SLの高さH1と当該構造層SL上に形成された複数の(図11に示す例では、2つの)構造層SLの高さH3との平均値である「(H1+H3)/2」よりも大きいという条件を含んでいてもよい。
【0075】
照射サイズ条件を満たすために、制御装置7は、照射系411を制御してもよい。例えば、制御装置7は、照射領域EAのサイズを制御するために照射系411が備えている光学部材を制御することで、照射領域EAのサイズを制御してもよい。このような光学部材の一例として、例えば位置又は姿勢の変更により集光状態を変更し得る集光光学素子、光ELが通過可能な開口の形状及び大きさの少なくとも一方を変更可能な絞り部材、並びに、照射系411の光軸に交差する面(つまり、光ELの伝搬方向に交差する面)内において光ELが通過可能な領域と光ELを遮光可能な領域とを可変に設定可能な光成形部材等の少なくとも一つがあげられる。或いは、照射系411に対する研磨対象面PSの相対的な位置(特に、姿勢)が変わると照射領域EAのサイズもまた変わり得るがゆえに、制御装置7は、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の少なくとも一方を制御して照射系411に対する研磨対象面PSの相対的な位置(特に、姿勢)を制御することで、照射領域EAのサイズを制御してもよい。照射領域EAのサイズを制御する場合、制御装置7は、上述した形状情報に基づいて、研磨対象面PSに現れる凹凸のピッチR2を特定し、特定したピッチR2に応じて定まる照射サイズ条件が満たされるように、照射領域EAのサイズを制御してもよい。このため、上述した形状情報は、研磨対象面PSに現れる凹凸の形状に関する情報を含んでいてもよい。
【0076】
(2-3-1-3)照射領域EAに向かう光ELの方向に関する光方向条件
第1動作条件は、照射領域EAに向かう光ELの方向に関する光方向条件を含んでいてもよい。光方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVと、照射領域EAに向かう光ELの軸線とがなす角度θが、照射領域EAの位置に応じて変化しないという第1光方向条件を含んでいてもよい。例えば、図12(a)に示すように、研磨対象面PSが互いに非平行な研磨対象面PS#a、研磨対象面PS#b及び研磨対象面PS#cを含む場合には、第1光方向条件は、研磨対象面PS#aの法線NV#aと研磨対象面PS#aに照射される光ELの軸線とがなす角度θ#a、研磨対象面PS#bの法線NV#bと研磨対象面PS#bに照射される光ELの軸線とがなす角度θ#b、及び、研磨対象面PS#cの法線NV#cと研磨対象面PS#cに照射される光ELの軸線とがなす角度θ#cが全て同一になるという条件になる。例えば、図12(b)に示すように、研磨対象面PSが曲面である場合には、第1光方向条件は、研磨対象面PSの第1部分A#dの法線NV#dと第1部分A#dに照射される光ELの軸線とがなす角度θ#d、及び、研磨対象面PSの第2部分A#eの法線NV#eと第2部分A#eに照射される光ELの軸線とがなす角度θ#eが全て同一になるという条件になる。第1光方向条件を含む光方向条件が満たされるように研磨動作が行われると、第1光方向条件を含む光方向条件が満たされないように研磨動作が行われる場合と比較して、研磨対象面PS上における光ELのスポットの形状(つまり、照射領域EAの形状)が、照射領域EAの位置に応じて変化しなくなる。このため、造形システム1は、照射領域EAの位置に関わらず、研磨対象面PSを相対的に精度よく研磨するように研磨動作を行うことができる。尚、研磨対象面PSが曲面である場合の法線とは、曲面上の特定位置で当該曲面の接平面の法線とすることができる。従って、研磨対象面PSの第1部分A#dの法線NV#dは、当該第1部分A#dに接する接平面の法線とすることができ、研磨対象面PSの第2部分A#eの法線NV#eは、当該第2部分A#eに接する接平面の法線とすることができる。
【0077】
光方向条件は、図13に示すように、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVの方向と、照射領域EAに向かう光ELの軸線の方向とが、照射領域EAの位置に関わらず揃う(言い換えれば、一致する)という第2光方向条件を含んでいてもよい。言い換えれば、光方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVと照射領域EAに向かう光ELの軸線とがなす角度θが0度になるという第2光方向条件を含んでいてもよい。尚、ここで言う「角度θが0度になる」状態は、角度θが0度に完全に一致する場合のみならず、角度θが0度に一致していないものの角度θが実質的に0度であるとみなすことができる状態(つまり、角度θがほぼ0度になる状態)をも含む。第2光方向条件を含む光方向条件が満たされるように研磨動作が行われると、光ELは、研磨対象面PSに対して垂直入射することになる。従って、第2光方向条件を含む光方向条件が満たされるように研磨動作が行われると、第2光方向条件を含む光方向条件が満たされないように研磨動作が行われる場合と比較して、研磨対象面PS上における光ELのスポットの形状(つまり、照射領域EAの形状)が理想的な形状(例えば、真円)に近づく。このため、造形システム1は、研磨対象面PSを相対的に精度よく研磨するように研磨動作を行うことができる。
【0078】
光方向条件は、図14に示すように、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVと照射領域EAに向かう光ELの軸線とがなす角度θが小さくなる(つまり、0度に近づく)ように、照射系411から照射領域EAへ向かう光ELの方向(つまり、軸線の方向)が調整されるという第3光方向条件を含んでいてもよい。このような第3光方向条件を含む光方向条件が満たされるように光ELの方向を調整した上で研磨動作が行われると、光ELの方向が調整されることなく研磨動作が行われる場合と比較して、研磨対象面PS上における光ELのスポットの形状(つまり、照射領域EAの形状)が理想的な形状に相応に近づく。このため、造形システム1は、研磨対象面PSを相対的に相応に精度よく研磨するように研磨動作を行うことができる。
【0079】
光方向条件を満たすために、制御装置7は、照射系411を制御してもよい。例えば、照射系411からの光ELの射出方向が変わると、照射系411から照射領域EAへ向かう光ELの方向(つまり、軸線の方向)もまた変わり得る。このため、制御装置7は、照射系411から光ELが射出される方向を制御するために照射系411が備えている光学部材を制御することで、入射角度θを制御してもよい。このような光学部材の一例として、光ELを偏向可能な光学部材(例えば、回転ミラー)等があげられる。
【0080】
照射系411からの光ELの射出方向に対する3次元造形物STの姿勢が変わると、照射系411から照射領域EAへ向かう光ELの方向(つまり、軸線の方向)もまた変わり得る。このため、光方向条件を満たすために、制御装置7は、ステージ駆動系44を制御して光ELの射出方向に対する3次元構造物STの姿勢を変更してもよい。或いは、後述するように、ヘッド駆動系42が造形ヘッド41(特に、照射系411)をθX軸、θY軸及びθZ軸の少なくとも一つに沿って移動させることができる場合には、制御装置7は、ヘッド駆動系42を制御して光ELの射出方向に対する3次元構造物STの姿勢を変更してもよい。
【0081】
光方向条件を満たすように照射系411、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の少なくとも一つを制御する場合、制御装置7は、上述した形状情報に基づいて、照射系411と研磨対象面PSとの間の相対的な位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて照射領域EAに向かう光ELの方向が光方向条件を満たすように、照射領域EAに向かう光ELの方向を制御してもよい。このため、上述した形状情報は、研磨対象面PSの形状に関する情報の少なくとも一部として、照射系411と研磨対象面PSとの間の相対的な位置関係に関する情報を含んでいてもよい。
【0082】
尚、照射領域EAに向かう光ELの軸線の方向は、例えば光ELの主光線の方向や、光ELの進行方向での複数の断面における光ELの光量重心位置を結んだ軸線の方向としてもよい。
【0083】
(2-3-2)研磨対象面PSに関する第2動作条件
第2動作条件は、研磨対象面PSが向いている方向に関する面方向条件を含んでいてもよい。面方向条件は、図15(a)から図15(c)に示すように、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVの方向が、照射領域EAの位置に応じて変化しないという第1面方向条件を含んでいてもよい。つまり、面方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが、照射領域EAの位置に関わらずに同じ方向を向くという第1面方向条件を含んでいてもよい。例えば、図15(a)から図15(c)に示すように、研磨対象面PSが互いに非平行な研磨対象面PS#a、研磨対象面PS#b及び研磨対象面PS#cを含む場合には、第1面方向条件は、研磨対象面PS#aに照射領域EAが設定されている場合の研磨対象面PS#aの法線NV#aの方向、研磨対象面PS#bに照射領域EAが設定されている場合の研磨対象面PS#bの法線NV#bの方向及び研磨対象面PS#cに照射領域EAが設定されている場合の研磨対象面PS#cの法線NV#cの方向が全て同一になるという条件になる。図示しないものの、研磨対象面PSが曲面である場合には、第1面方向条件は、研磨対象面PSの第1部分A#dに照射領域EAが設定されている場合の第1部分A#dの法線NV#dの方向及び研磨対象面PSの第2部分A#eに照射領域EAが設定されている場合の第2部分A#eの法線NV#eの方向が全て同一になるという条件になる。
【0084】
図15(a)から図15(c)に示す例において第1面方向条件を含む光方向条件が満たされるように研磨動作が行われる場合には、制御装置7は、複数の研磨対象面PSのうちの一の研磨対象面PSの法線NVの方向が所望の方向になるようにステージ駆動系44を制御した後に一の研磨対象面PSを研磨する動作を、複数の研磨対象面PSが順次一の研磨対象面PSに設定されるように繰り返す。具体的には、制御装置7は、3次元構造物STの姿勢が、研磨対象面PS#aからPS#cのいずれか一つ(例えば、研磨対象面PS#a)が所望方向を向いた状態となる姿勢#a(例えば、図15(a)に示す姿勢)となるように、ステージ駆動系44を制御してステージ43を移動させる。その上で、3次元構造物STの姿勢が姿勢#aとなっている状態で、制御装置7は、形状情報に基づいて研磨対象面PS#aに対して照射領域EAを相対的に移動させながら、研磨対象面PS#aに対して一連の研磨処理を繰り返し行う。研磨対象面PS#aの研磨が完了した後には、制御装置7は、3次元構造物STの姿勢が、研磨対象面PS#aからPS#cのいずれか他の一つ(例えば、研磨対象面PS#b)が同じ所望方向を向いた状態となる姿勢#b(例えば、図15(b)に示す姿勢)となるように、ステージ駆動系44を制御してステージ43を移動させる。その上で、3次元構造物STの姿勢が姿勢#bとなっている状態で、制御装置7は、形状情報に基づいて研磨対象面PS#bに対して照射領域EAを相対的に移動させながら、研磨対象面PS#bに対して一連の研磨処理を繰り返し行う。研磨対象面PS#bの研磨が完了した後には、制御装置7は、3次元構造物STの姿勢が、研磨対象面PS#aからPS#cの残りの一つ(例えば、研磨対象面PS#c)が同じ所望方向を向いた状態となる姿勢#c(例えば、図15(c)に示す姿勢)となるように、ステージ駆動系44を制御してステージ43を移動させる。その上で、3次元構造物STの姿勢が姿勢#cとなっている状態で、制御装置7は、形状情報に基づいて研磨対象面PS#cに対して照射領域EAを相対的に移動させながら、研磨対象面PS#cに対して一連の研磨処理を繰り返し行う。その結果、3次元構造物STがどのような研磨対象面PSを含んでいる場合であっても、造形システム1は、当該研磨対象面PSが同じ方向を向いている状態で当該研磨対象面PSを研磨することができる。
【0085】
このように第1面方向条件を含む光方向条件が満たされるように研磨動作が行われると、第1面方向条件を含む光方向条件が満たされないように研磨動作が行われる場合と比較して、研磨対象面PS上における光ELのスポットの形状(つまり、照射領域EAの形状)が、照射領域EAの位置に応じて変化する可能性が小さくなる。このため、造形システム1は、照射領域EAの位置に関わらず、研磨対象面PSを相対的に精度よく研磨するように研磨動作を行うことができる。
【0086】
面方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVの方向が、照射領域EAの位置に関わらずに重力方向(つまり、Z軸方向)に一致するという第2面方向条件を含んでいてもよい。つまり、面方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが、照射領域EAの位置に関わらずに水平面になる(つまり、XY平面に平行になる)という第2面方向条件を含んでいてもよい。ここで言う「研磨対象面PSが水平面になる」状態は、研磨対象面PSがXY平面に対して完全に平行になる場合のみならず、研磨対象面PSがXY平面に対して完全に平行になっていないものの研磨対象面PSが実質的に水平面であるとみなすことができる状態(つまり、研磨対象面PSがほぼ水平面になる状態)をも含む。尚、図15(a)から図15(c)は、夫々、照射領域EAが設定されている研磨対象面PS#aの法線NV#aの方向、照射領域EAが設定されている研磨対象面PS#bの法線NV#bの方向及び照射領域EAが設定されている研磨対象面PS#cの法線NV#cの方向が重力方向に一致する例を示している。
【0087】
ここで、研磨対象面PSが水平面になっていないと、図16(a)に示すように、光ELの照射によって溶融した造形材料Mは、当該溶融した造形材料Mの自重によって、研磨対象面PS内において下方に偏って分布する可能性がある。つまり、光ELの照射によって溶融した造形材料Mの表面が、平坦な面にならない可能性がある。その結果、光ELの照射によって研磨された研磨対象面PSが、平坦な面にならない可能性がある。この場合であっても、研磨動作が行われない場合と比較すれば、研磨対象面PSが滑らかになっていることに変わりはない。一方で、研磨対象面PSが水平面になっていると、図16(b)に示すように、光ELの照射によって溶融した造形材料Mは、当該溶融した造形材料Mの自重及び表面張力の少なくとも一方によって、研磨対象面PS内において均等に分布する可能性が相対的に高くなる。つまり、光ELの照射によって溶融した造形材料Mの表面が、平坦な面になる可能性が相対的に高くなる。その結果、光ELの照射によって研磨された研磨対象面PSが、平坦な面になる可能性が相対的に高くなる。従って、造形システム1は、第2面方向条件を含む面方向条件が満たされるように研磨動作を行うことで、研磨対象面PSがより滑らかな面となるように研磨対象面PSを研磨することができる。尚、第2面方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの姿勢が、照射領域EAの位置に関わらずに一定になる条件であってもよい。この場合、光ELの照射によって溶融した造形材料Mの偏り具合が研磨対象面PSのいずれの位置でも同じ偏り具合になり、研磨対象面PSの研磨状態が位置によらずに一定となる。
【0088】
面方向条件は、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが鉛直上方(つまり、+Z側)を向いているという第3面方向条件を含んでいてもよい。研磨対象面PSが鉛直上方を向いていると、光ELの照射によって溶融した造形材料Mは、当該溶融した造形材料Mの自重によって、研磨対象面PS内において均等に分布する可能性が相対的に高くなる(上述した図16(b)参照)。つまり、光ELの照射によって溶融した造形材料Mの表面が、平坦な面になる可能性が相対的に高くなる。その結果、光ELの照射によって研磨された研磨対象面PSが、平坦な面になる可能性が相対的に高くなる。従って、造形システム1は、第3面方向条件を含む面方向条件が満たされるように研磨動作を行うことで、研磨対象面PSがより滑らかな面となるように研磨対象面PSを研磨することができる。
【0089】
面方向条件を満たすために、制御装置7は、ステージ駆動系44を制御してもよい。つまり、制御装置7は、面方向条件が満たされるように(つまり、研磨対象面PSが水平面になるように)、研磨対象面PSの姿勢(つまり、3次元構造物STの姿勢)を制御してもよい。言い換えれば、制御装置7は、面方向条件が満たされるように、光ELに対する研磨対象面PSの相対的な位置(つまり、光ELに対する3次元構造物STの相対的な位置)を制御してもよい。この場合、制御装置7は、上述した形状情報に基づいて、研磨対象面PSの法線NVの方向を特定し、当該特定した法線NVの方向に基づいて、面方向条件が満たされるようにステージ駆動系44を制御してもよい。このため、上述した形状情報は、研磨対象面PSの形状に関する情報の少なくとも一部として、研磨対象面PSの姿勢に関する情報を含んでいてもよい。研磨対象面PSの法線NVの方向が所望の方向(例えば、重力方向)になっていなければ、制御装置7は、研磨対象面PSの法線NVの方向が所望の方向になるようにステージ駆動系44を制御する。その後、研磨対象面PSの法線NVの方向が所望の方向になった後に、制御装置7は、研磨対象面PSの研磨を開始する。
【0090】
尚、研磨対象面PSが曲面である場合、研磨対象面PSが向いている方向は、曲面上の特定位置で当該曲面の接平面の法線の方向とすることができる。例えば、研磨対象面PSが曲面である場合において、研磨対象面PS上の第1部分が向いている方向は、当該第1部分に接する切平面の法線の方向としてもよい。
【0091】
なお、上記実施形態においては、すべての構造層SLの形成(3次元構造物STの造形)が完了した後に光ELにより加工動作を行っているが、いくつかの構造層SLの形成後であって、すべての構造層SLが形成される前の3次元構造物に光ELにより加工動作(研磨動作)を行ってもよい。
【0092】
(3)変形例
続いて、造形システム1の変形例について説明する。
【0093】
(3-1)第1変形例
はじめに、造形システム1の第1変形例について説明する。上述した説明では、造形システム1が備える造形ヘッド41は、造形動作に用いられる光EL及び研磨動作に用いられる光ELの双方を射出する。つまり、造形動作が行われている期間中の光ELの照射系411内での光路は、研磨動作が行われている期間中の光ELの照射系411内での光路と同じになる。一方で、第1変形例の造形システム1aは、造形動作に用いられる光ELを射出する造形ヘッド41とは別個に、研磨動作に用いられる光ELを射出する研磨ヘッド41aを備えている。
【0094】
具体的には、造形システム1aは、造形装置4に代えて造形装置4aを備えているという点で、造形システム1とは異なる。造形装置4aは、研磨ヘッド41a及びヘッド駆動系42aを備えているという点で、造形装置4とは異なる。造形システム1aのその他の構成要件は、造形システム1と同じであってもよい。このため、以下、図17を参照しながら、第1変形例の造形装置4aについて更に説明する。尚、造形システム1が備える構成要件と同じ構成要件については、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0095】
図17に示すように、造形装置4aは、上述した造形ヘッド41、ヘッド駆動系42、ステージ43、ステージ駆動系44及び計測装置45に加えて、研磨ヘッド41a及びヘッド駆動系42aを備えている。研磨ヘッド41aは、照射系411aを備えている。尚、図17では、図面の簡略化のために、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の記載が簡略化されている。
【0096】
照射系411aは、射出部413aから光ELaを射出するための光学系(例えば、集光光学系)である。具体的には、照射系411aは、光ELを発する光源5と、光ファイバやライトパイプ等の不図示の光伝送部材を介して光学的に接続されている。照射系411aは、光伝送部材を介して光源5から伝搬してくる光ELを、光ELaとして射出する。つまり、光源5が発した光ELは、光源5と造形装置4aとの間又は造形装置4a内に配置された光分岐器によって2つの光ELに分岐され、一方の光ELが造形ヘッド41に伝搬し、他方の光ELが研磨ヘッド41aに伝搬する。照射系411aは、照射系411aから下方(つまり、-Z側)に向けて光ELaを照射する。照射系411aの下方には、ステージ43が配置されている。ステージ43に3次元構造物STが搭載されている場合には、照射系411aは、3次元構造物STに向けて光ELaを照射する。具体的には、照射系411aは、光ELaが照射される領域として研磨対象面PS上に設定される円形の(或いは、その他任意の形状の)照射領域EAaに光ELaを照射する。更に、照射系411aの状態は、制御装置7の制御下で、照射領域EAaに光ELaを照射する状態と、照射領域EAaに光ELaを照射しない状態との間で切替可能である。
【0097】
ヘッド駆動系42aは、研磨ヘッド41aを移動させる。具体的には、ヘッド駆動系42aは、X軸、Y軸及びZ軸の夫々に沿って研磨ヘッド41aを移動させる。尚、ヘッド駆動系42aの構造は、ヘッド駆動系42の構造と同一であってもよい。従って、ヘッド駆動系42aの構造についての詳細な説明は省略する。
【0098】
研磨ヘッド41aが造形ヘッド41とは別個に用意されるため、研磨ヘッド41aは、造形ヘッド41とは異なる方向から光ELaを照射する。つまり、光ELaは、光ELの光路とは異なる光路を伝搬して研磨対象面PSに照射される。このため、研磨ヘッド41aは、造形ヘッド41が光ELを照射している期間の少なくとも一部において、光ELaを照射することができる。つまり、造形システム1aは、造形動作と研磨動作とを並行して行うことができる。言い換えると、造形システム1aは、造形動作が行われる時間帯(又は時期)と研磨動作が行われる時間帯(又は時期)とをそれらの少なくとも一部が重なった状態とすること、或いは造形動作が行われるタイミングと研磨動作が行われるタイミングとの少なくとも一部を重ねることができる。具体的には、造形システム1aは、造形ヘッド41aが光ELを造形面CSに照射することで3次元構造物STの一部を形成している期間の少なくとも一部において、既に形成済みの3次元構造物STの他の一部の表面の少なくとも一部である研磨対象面PSに光ELaを照射することで、当該研磨対象面PSを研磨することができる。その結果、3次元構造物STを形成し且つ研磨するためのスループットが向上する。つまり、第1変形例の造形システム1aは、上述した造形システム1が享受可能な効果と同様の効果を享受しつつも、研磨された3次元構造物STを形成するためのスループットを向上させることができる。
【0099】
但し、造形装置4aが造形ヘッド41とは別個に研磨ヘッド41aを備える場合であっても、造形システム1aは、造形動作によって3次元構造物STが形成された後に、研磨動作を行ってもよい。この場合であっても、第1変形例の造形システム1aは、上述した造形システム1が享受可能な効果と同様の効果を享受することができることに変わりはない。
【0100】
また、造形動作によって3次元構造物STが形成された後に、造形装置4aと研磨ヘッド41aの両方を用いて研磨動作を行ってもよい。
【0101】
なお、上記の説明では、3次元構造物STに、造形ヘッド41からの光ELと研磨ヘッド41aからの光ELaを同時に照射した場合に、光ELが照射される領域と光ELaが照射される領域とが異なるように、研磨ヘッド41aと造形ヘッド41の少なくとも一方が設定されるが、光ELと光ELaとが同じ領域に、あるいは光ELが照射される領域と光ELaが照射される領域とが一部重複するように設定されてもよい。
【0102】
(3-2)第2変形例
続いて、図18を参照しながら、造形システム1の第2変形例について説明する。上述した第1変形例では、共通の光源5が射出した光ELが造形ヘッド41及び研磨ヘッド41aに伝搬されている。一方で、第2変形例の造形システム1bは、図18に示すように、造形動作で用いられる光ELを射出する光源5とは別個に、研磨動作で用いられる光ELaを射出する光源5bを備えているという点で、第1変形例の造形システム1aとは異なる。造形システム1bのその他の構成要件は、造形システム1aと同じであってもよい。このような第2変形例の造形システム1bは、上述した第1変形例の造形システム1aが享受可能な効果と同様の効果を享受することができる。
【0103】
尚、光源5aは、光源5が射出する光ELと同じ特性(例えば、強度や、波長や、偏光等)の光ELaを射出してもよい。光源5aは、光源5が射出する光ELと異なる特性(例えば、強度や、波長や、偏光等)の光ELaを射出してもよい。光源5aは、光源5が射出する光ELとは異なる種類のエネルギビームを射出してもよい。
【0104】
(3-3)第3変形例
続いて、造形システム1の第3変形例について説明する。第3変形例の造形システム1cの構造は、上述した造形システム1の構造と同一である。第3変形例の造形システム1cは、上述した造形システム1と比較して、研磨動作を行う際に、研磨動作に起因した3次元構造物STの変形を抑制するための変形抑制動作を合わせて行うという点で異なる。以下、研磨動作に起因した3次元構造物STの変形が生ずる理由を説明した後に、当該変形を抑制するための変形抑制動作について説明する。
【0105】
(3-3-1)研磨動作に起因した3次元構造物STの変形が生ずる理由
研磨対象面PSが研磨される場合には、研磨対象面PSに光ELが照射されることは上述したとおりである。研磨対象面PSには、光ELから熱が伝達される。この熱は、研磨対象面PSを介して3次元構造物STの内部にも伝達(実質的には、拡散)される。ここで、3次元構造物STの特性(例えば、材質、形状及び密度の少なくとも1つ)によっては、3次元構造物STにおける熱の拡散度合い(つまり、拡散のしやすさ又はしにくさを示す指標)が均一であるとは限らない。つまり、光ELから伝達される熱に対する特性(ここでは、熱の拡散度合いに関する熱特性)が異なる領域が研磨対象面PSに存在する可能性がある。例えば、研磨対象面PS上には、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されにくい領域と、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されやすい領域とが存在する可能性がある。
【0106】
例えば、図19に示すように、3次元構造物STは、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSを含む表面SF1に加えて、研磨対象面PSを含まない又は照射領域EAが今は設定されていない(例えば、これから設定される又は既に設定された)研磨対象面PSを含む表面SF2を有する可能性がある。この場合、研磨対象面PS上のある領域部分と表面SF2との近接度合いに応じて、研磨対象面PS上のある領域部分に伝達された熱の拡散度合いを推定可能である。具体的には、図19に示すように、研磨対象面PS上の領域WA1は、研磨対象面PS上の領域WA2よりも表面SF2に近い。このため、領域WA1に伝達された熱の拡散経路(つまり、3次元構造物STの内部の拡散経路)は、領域WA2に伝達された熱の拡散経路よりも小さく又は少なくなる。従って、研磨対象面PS上のある領域部分と表面SF2との間の距離が短くなるほど、当該領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなる。尚、図19に示す例では、研磨対象面PS上には、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されにくい領域WA1と、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されやすい領域WA2とが存在しているとも言える。
【0107】
熱が相対的に拡散されにくい領域WA1では、熱が相対的に拡散されやすい領域WA2と比較して、熱が相対的に蓄積されやすい。その結果、領域WA1では、熱が相対的に蓄積されやすい分だけ、領域WA2よりも熱変形する可能性が高くなる。このため、熱の拡散度合いの違いを考慮することなく一連の研磨処理が研磨対象面PSに対して行われると、熱の拡散度合いの違いに応じて、研磨された3次元構造物STが意図せず変形してしまう可能性がある。
【0108】
或いは、3次元構造物STが複数の研磨対象面ST(例えば、互いに平行な又は非平行な複数の研磨対象面PS)を備えている場合には、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されにくい研磨対象面PSと、光ELから伝達された熱が相対的に拡散されやすい研磨対象面PSとが存在している可能性がある。この場合においても、熱が相対的に拡散されにくい研磨対象面PSでは、熱が相対的に拡散されやすい研磨対象面PSよりも熱変形する可能性が高くなる。このため、この場合においても、熱の拡散度合いの違いに応じて、研磨された3次元構造物STが意図せず変形してしまう可能性がある。
【0109】
そこで、第3変形例では、制御装置7(言い換えれば、制御装置7の制御下にある造形システム1)は、変形抑制動作を行うことで、研磨動作に起因した(特に、光ELからの熱の拡散度合いの違いに起因した)3次元構造物STの変形を抑制する。
【0110】
(3-3-2)変形抑制動作
制御装置7は、照射領域EAを介して光ELから研磨対象面PSに伝達される熱量を制御することで、3次元構造物STの変形を抑制する変形抑制動作を行ってもよい。具体的には、図20に示すように、制御装置7は、熱が拡散しにくくなるほど光ELから伝達される熱量が少なくなるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。つまり、制御装置7は、研磨対象面PS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。例えば、制御装置は、熱が相対的に拡散されにくい領域WA1に対して光ELから伝達される熱量が、熱が相対的に拡散されやすい領域WA2に対して光ELから伝達される熱量が少なくなるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。その結果、熱が相対的に拡散しにくい領域部分に伝達される熱量が、熱が相対的に拡散しやすい領域部分に伝達される熱量よりも少なくなる。ある領域部分に伝達される熱量が少なくなると、当該領域部分が熱変形しにくくなる。このため、熱が相対的に拡散しにくい領域部分が光ELからの熱に起因して変形することが抑制される。その結果、研磨動作に起因した(特に、光ELからの熱の拡散度合いの違いに起因した)3次元構造物STの変形が抑制される。
【0111】
制御装置7は、光ELから伝達される熱量を制御するために、照射領域EA上での光ELの強度又はエネルギ(特に、単位面積当たりの強度又はエネルギ)を制御してもよい。具体的には、図21に示すように、照射領域EA上での光ELの強度・エネルギが大きくなるほど、光ELから伝達される熱量が多くなる。このため、制御装置7は、照射領域EA上での光ELの強度を制御することで、光ELから伝達される熱量を制御することができる。つまり、制御装置7は、研磨対象面PS上での照射領域EAの位置(つまり、研磨対象面PSのうち照射領域EAが設定されている領域部分における熱の拡散度合い)に応じて照射領域EA上での光ELの強度又はエネルギを制御することで、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。この場合、制御装置7は、熱が拡散しにくくなるほど光ELの強度又はエネルギが小さくなるように、光ELの強度又はエネルギを制御してもよい。つまり、制御装置7は、研磨対象面PS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に対して照射される光ELの強度又はエネルギが小さくなるように、光ELの強度又はエネルギを制御してもよい。尚、光ELの強度又はエネルギの制御方法については、研磨動作の際に考慮される光強度条件の説明に付随して既に説明済みであるため、その詳細な説明は省略する。
【0112】
制御装置7は、光ELから伝達される熱量を制御するために、研磨対象面PSに対する照射領域EAの相対的な移動速度(つまり、3次元構造物STに対する照射領域EAの相対的な移動速度)を制御してもよい。具体的には、研磨対象面PS上のある領域部分に設定されている照射領域EAの移動速度が速くなるほど、当該領域部分に照射領域EAが設定されている時間が短くなる。言い換えると、研磨対象面PS上のある領域部分に設定されている照射領域EAの移動速度が速くなるほど、ある領域部分に光ELが照射される時間が短くなる。研磨対象面PS上のある領域部分に照射領域EAが設定されている時間が短くなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなる。つまり、図22に示すように、研磨対象面PS上のある領域部分に設定されている照射領域EAの移動速度が速くなるほど、当該領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなる。このため、制御装置7は、照射領域EAの相対的な移動速度を制御することで、光ELから伝達される熱量を制御することができる。つまり、制御装置7は、研磨対象面PS上での照射領域EAの位置(つまり、研磨対象面PSのうち照射領域EAが設定されている領域部分における熱の拡散度合い)に応じて照射領域EAの相対的な移動速度を制御することで、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。この場合、制御装置7は、熱が拡散しにくくなるほど照射領域EAの相対的な移動速度が速くなるように、照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。つまり、制御装置7は、研磨対象面PS上のある領域部分に伝達された熱が拡散されにくくなるほど、当該領域部分に設定される照射領域EAの相対的な移動速度が速くなるように、照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。
【0113】
制御装置7は、照射領域EAの移動速度を制御するために、ヘッド駆動系42及びステージ駆動系44の少なくとも一方を制御してもよい。つまり、制御装置7は、造形ヘッド41の移動速度(特に、XY平面に沿った方向の移動速度)及びステージ44の移動速度(特に、XY平面に沿った方向の移動速度)の少なくとも一方を制御することで、研磨対象面PSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。或いは、照射系411が光ELを偏向可能な光学部材(例えば、ガルバノスキャナ等)を備えている場合には、制御装置7は、光ELを偏向可能な光学部材を制御することで、研磨対象面PSに対する照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。
【0114】
尚、制御装置7は、3次元構造物ST上での照射領域EAの位置(つまり、研磨対象面PSのうち照射領域EAが設定されている領域部分における熱の拡散度合い)に関わらずに、光ELから伝達される熱量が一定になるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。特に、3次元構造物STにおける熱の拡散度合いが均一である場合には、制御装置7は、3次元構造物ST上での照射領域EAの位置に関わらずに、光ELから伝達される熱量が一定になるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。つまり、制御装置7は、ある研磨対象面PSの第1の領域に対して光ELから伝達される熱量と、同じ研磨対象面PSの第2の領域に対して光ELから伝達される熱量とが同じになるように、光ELかして光ELから伝達される熱量と、別の研磨対象面PSに対して光ELから伝達される熱量とが同じになるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。この場合、例えば、制御装置7は、研磨対象面PS上での照射領域EAの位置に関わらずに照射領域EA上での光ELの強度が一定になるように、光ELの強度を制御してもよい。例えば、制御装置7は、研磨対象面PS上での照射領域EAの位置に関わらずに研磨対象面PSに対する照射領域EAの相対的な移動速度が一定になるように、照射領域EAの相対的な移動速度を制御してもよい。
【0115】
尚、上述の変形抑制動作を、3次元構造物STの3次元モデルデータを用いて行ってもよい。例えば、3次元構造物STの3次元モデルデータを用いて熱シミュレーションを行い、熱が拡散しにくくなる領域部分を特定し、当該特定された領域部分に対して光ELから伝達される熱量が少なくなるように、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。また、3次元構造物の部分形状ごとの熱の拡散度合いをライブラリ化しておいてもよい。例えば、互いに異なる複数の形状の3次元構造物の部分について、実験或いはシミュレーションにより熱の拡散度合いを求めておき、その形状に関連づけてライブラリとして記憶させておく。そして、研磨対象物としての3次元構造物STの形状に応じて、当該ライブラリから部分ごとの熱の拡散度合いの情報を読み出し、この情報を用いて、光ELから伝達される熱量を制御してもよい。
【0116】
(3-4)その他の変形例
造形システム1は、上述した光強度条件を満たすように研磨動作を行わなくてもよい。この場合、研磨動作で用いられる光ELの強度が、造形動作で用いられる光ELの強度と同じであってもよいし、大きくてもよい。
【0117】
造形システム1は、上述した照射サイズ条件を満たすように研磨動作を行わなくてもよい。この場合、研磨対象面PSのある領域部分に設定されている照射領域EAのサイズR1が、当該領域部分に現れる凹凸のピッチR2と同じであってもよいし、大きくてもよい。
【0118】
造形システム1は、上述した光方向条件を満たすように研磨動作を行わなくてもよい。この場合、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVと、照射領域EAに向かう光ELの軸線とがなす角度θが、照射領域EAの位置に応じて変化してもよい。照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVの方向と、照射領域EAに向かう光ELの軸線の方向とが、揃っていなくてもよい(言い換えれば、一致していなくてもよい)。照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVと照射領域EAに向かう光ELの軸線とがなす角度θが小さくなるように、照射系411から照射領域EAへ向かう光ELの方向(つまり、軸線の方向)が調整されなくてもよい。
【0119】
造形システム1は、上述した面方向条件を満たすように研磨動作を行わなくてもよい。この場合、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVの方向が、照射領域EAの位置に応じて変化してもよい。照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが、照射領域EAの位置に応じた異なる方向を向いていてもよい。照射領域EAが設定されている研磨対象面PSの法線NVの方向が、重力方向(つまり、Z軸方向)に一致していなくてもよい。照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが、水平面になっていなくてもよい。照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが鉛直上方(つまり、+Z側)を向いていなくてもよい。例えば、照射領域EAが設定されている研磨対象面PSが鉛直下方(つまり、-Z側)を向いていなくてもよい。研磨対象面PSが鉛直下方を向いている場合には、光ELの照射によって溶融した造形材料Mの自重と表面張力との関係によっては、光ELの照射によって溶融した造形材料Mの表面が、平坦な面になる可能性がある。
【0120】
なお、3次元造形物STの加工動作として研磨動作を行っているが、研磨動作を省略してもよい。また、3次元造形物STの加工動作として研磨動作を行っているが、研磨動作以外の加工、例えば光EL又はELaによる除去加工を行ってもよい。
【0121】
上述した説明では、ヘッド駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸の夫々に沿って造形ヘッド41を移動させている。しかしながら、ヘッド駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸のうちの少なくとも一つに沿って造形ヘッド41を移動させなくてもよい。ヘッド駆動系42は、X軸、Y軸及びZ軸のうちの少なくとも一つに加えて又は代えて、θX軸、θY軸及びθZ軸の少なくとも一つに沿って造形ヘッド41を移動させてもよい。
【0122】
上述した説明では、ステージ駆動系44は、θY軸及びθZ軸の夫々に沿ってステージ43を移動させている。しかしながら、ステージ駆動系44は、θY軸及びθZ軸の少なくとも一方に沿ってステージ43を移動させなくてもよい。ステージ駆動系44は、θY軸及びθZ軸のうちの少なくとも一つに加えて又は代えて、θX軸、X軸、Y軸及びZ軸の少なくとも一つに沿ってステージ43を移動させてもよい。
【0123】
上述した説明では、造形装置4は、造形材料Mに光ELを照射することで、造形材料Mを溶融させている。しかしながら、造形装置4は、任意のエネルギビームを造形材料Mに照射することで、造形材料Mを溶融させてもよい。この場合、造形装置4は、照射系411に加えて又は代えて、任意のエネルギビームを照射可能なビーム照射装置を備えていてもよい。任意のエネルギビームは、限定されないが、電子ビーム、イオンビーム等の荷電粒子ビーム又は電磁波を含む。また、造形装置4は、熱を造形材料Mに伝達することで、造形材料Mを溶融させてもよい。この場合、造形装置4は、照射系411に加えて又は代えて、造形材料Mに高温の気体(一例として火炎)を加えて造形材料Mを溶融させてもよい。
【0124】
上述した説明では、造形システム1は、レーザ肉盛溶接法により造形物を形成可能である。しかしながら、造形システム1は、造形材料Mから構造層SLを形成する動作を繰り返して複数の構造層SLを積層させることで3次元構造物STを形成可能なその他の方式により造形材料Mから3次元構造物STを形成してもよい。その他の方式として、例えば、粉末焼結積層造形法(SLS:Selective Laser Sintering)等の粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion)、結合材噴射法(Binder Jetting)又は、レーザメタルフュージョン法(LMF:Laser Metal Fusion)があげられる。
【0125】
(4)付記
以上説明した実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
[付記1]
物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置において、
前記物体の表面の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射するエネルギビーム照射装置と、
前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更する位置変更装置と
を備え、
前記物体の形状に関する形状情報を用いて前記エネルギビームの前記照射位置を制御する
処理装置。
[付記2]
前記物体の形状を計測する形状計測装置を更に備え、
前記形状情報は、前記計測装置の計測結果を含む
付記1に記載の処理装置。
[付記3]
前記形状情報は、前記物体の設計情報を含む
付記1又は2に記載の処理装置。
[付記4]
前記物体の前記表面における前記照射位置に応じて、前記照射位置へ向かう前記エネルギビームの方向を変える
付記1から3のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記5]
前記照射位置における前記表面の法線と、前記照射位置へ向かう前記エネルギビームの軸線とのなす角は、前記物体の前記表面における前記照射位置に応じて変化しない
付記1から4のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記6]
前記照射位置へ向かう前記エネルギビームの軸線に対する、前記物体の姿勢を変更する姿勢変更装置を更に備える
付記1から5のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記7]
前記照射位置における前記表面の法線の方向は、前記物体の前記表面における前記照射位置に応じて変化しない
付記1から6のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記8]
前記法線の方向は、重力方向である
付記7に記載の処理装置。
[付記9]
前記物体の前記表面における前記照射位置に応じて、前記照射位置へ向かう前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギを変える
付記1から8のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記10]
前記照射位置へ向かう前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギは、前記物体の前記表面における前記照射位置に応じて変化しない
付記1から8のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記11]
前記物体は立体物である
付記1から10のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記12]
物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理装置において、
前記物体の表面の第1部分と、前記第1部分と異なる方向に向けられた前記物体の表面の第2部分とに前記エネルギビームを照射するエネルギビーム照射装置と、
前記エネルギビームの照射方向に対する前記物体の姿勢を変更する姿勢変更装置と、
前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更する位置変更装置と
を備え、
前記第1部分が第1方向に向くように前記物体の姿勢を第1姿勢に設定して前記第1部分にエネルギビームを照射し、前記第2部分が第2方向に向くように前記物体の姿勢を前記第1姿勢と異なる第2姿勢に設定して前記エネルギビームを照射する
処理装置。
[付記13]
前記第1方向と前記第2方向とは同じ方向である
付記12に記載の処理装置。
[付記14]
前記第1及び第2方向は重力方向と平行である
付記12又は13に記載の処理装置。
[付記15]
前記物体の形状に関する形状情報を用いて前記第1及び第2姿勢を設定する
付記12から14のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記16]
前記物体の形状を計測する形状計測装置を備える
前記形状情報は、前記計測装置の計測結果を含む
付記15に記載の処理装置。
[付記17]
前記形状情報は、前記物体の設計情報を含む
付記15に記載の処理装置。
[付記18]
前記設計情報は前記物体の形状を表す情報を含む
付記17に記載の処理装置。
[付記19]
前記第1部分に照射される前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギと、前記第2部分に照射される前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギとは同じである
付記12から18のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記20]
前記第1部分に照射される前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギと、前記第2部分に照射される前記エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギとは互いに異なる
付記12から18のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記21]
前記物体は立体物であり、
前記第1部分は前記立体物のうちの一部であり、前記第2部分は前記立体物のうちの別の一部である
付記12から20のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記22]
部材の第1表面に造形用エネルギビームを照射して前記第1表面に溶融池を形成し前記溶融池に造形材料を供給することにより造形された造形物を処理する処理装置であって、
前記部材と前記造形物とが並ぶ第1方向と交差する第2方向に向けられた前記造形物の第2表面の少なくとも一部に加工用エネルギビームを照射する
処理装置。
[付記23]
前記部材と前記造形物との境界部分に前記加工用エネルギビームを照射する
付記22に記載の処理装置。
[付記24]
前記部材は、造形用エネルギビームを母材の第3表面に照射することで形成される溶融池に造形材料を供給することにより造形される
付記22又は23に記載の処理装置。
[付記25]
前記第1方向は、前記溶融池の底面から上面への方向である
付記22から24のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記26]
前記加工用エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギは、前記造形用エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギよりも小さい
付記22から25のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記27]
前記加工用エネルギビームが前記第2表面に照射される第1領域の大きさは、前記造形用エネルギビームが前記第1表面に照射される第2領域の大きさよりも大きい
付記22から26のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記28]
前記造形用エネルギビーム及び前記加工用エネルギビームを射出する光源を更に備える
付記22から27のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記29]
前記光源からのエネルギビームを集光する集光光学系を備え、
前記第1表面に集光される前記集光光学系からの前記エネルギビームの第1集光状態と、前記第2表面に集光される前記集光光学系からの前記エネルギビームの第2集光状態とは互いに異なる
付記28に記載の処理装置。
[付記30]
前記第1集光状態の前記エネルギビームを前記造形用エネルギビームとし、前記第2集光状態の前記エネルギビームを前記加工用エネルギビームとする
付記29に記載の処理装置。
[付記31]
前記造形用エネルギビームが射出される方向に対する前記造形物の姿勢を変更する姿勢変更装置を更に備える
付記22から30のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記32]
前記造形物を造形しているときに前記造形用エネルギビームが前記第1表面に向けて射出される方向と、前記加工用エネルギビームが前記第2表面に向けて射出される方向とが互いに異なるように、前記姿勢を変更する
付記31に記載の処理装置。
[付記33]
前記造形物の形状に関する形状情報を用いて前記姿勢を変更する
付記31又は32に記載の処理装置。
[付記34]
前記造形物の形状に関する形状情報を用いて、前記造形用エネルギビームが射出される方向を変更する付記31から33のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記35]
前記造形物の形状を計測する形状計測装置を備える
前記形状情報は、前記計測装置の計測結果を含む
付記33又は34に記載の処理装置。
[付記36]
前記形状情報は、前記造形物の設計情報を含む
付記33から35のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記37]
前記設計情報は前記造形物の形状を表す情報を含む
付記36に記載の処理装置。
[付記38]
前記設計情報を用いて前記造形物を造形する
付記36又は37に記載の処理装置。
[付記39]
前記姿勢変更装置は、前記第2表面に対して前記加工用エネルギビームが垂直入射するように、前記姿勢を変更する
付記31から38のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記40]
前記姿勢変更装置は、前記姿勢を変更する前と比較して前記第2表面に対する前記加工用エネルギビームの入射角度が小さくなるように、前記姿勢を変更する
付記31から39のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記41]
前記加工用エネルギビームが前記第2表面に照射されるとき、前記第2表面は水平である
付記22から40のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記42]
前記部材は、造形用エネルギビームを母材の第3表面に照射することで形成される溶融池に造形材料を供給することにより造形され、
前記加工用エネルギビームは、前記造形物の第2表面と前記部材の表面のうち前記第2方向に向けられた第4表面とを含む面内の照射領域に照射され、
前記第1方向に沿った前記照射領域の大きさは、前記第1方向に沿った前記部材の中心位置と前記造形物の中心位置との間隔よりも大きい
付記22から41のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記43]
前記照射領域の前記第1方向に沿った大きさは、前記造形物の前記第1方向に沿った大きさと前記部材の前記第1方向に沿った大きさとの和の半分よりも大きい
付記42に記載の処理装置。
[付記44]
前記部材の一部が形成されている期間の少なくとも一部において、既に形成された前記部材の他の一部を前記加工用エネルギビームで研磨する
付記42又は43に記載の処理装置。
[付記45]
前記第2表面上に照射される前記加工用エネルギビームの照射領域の大きさは、前記第2表面における凹凸のピッチよりも大きい
付記22から44のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記46]
前記加工用エネルギビームによる前記第2表面の加工条件を制御する制御装置を更に備える
付記22から45のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記47]
前記制御装置は、前記第2表面のうちの第3部分に前記加工用エネルギビームを照射するときに用いられる第1加工条件と、前記第2表面のうちの第4部分に前記加工用エネルギビームを照射するときに用いられる第2加工条件とが異なるものとなるように、前記加工条件を制御する
付記46に記載の処理装置。
[付記48]
前記第3部分における前記加工用エネルギビームからの熱の伝達態様は、前記第4部分における前記加工用エネルギビームからの熱の伝達態様と異なる
付記47に記載の処理装置。
[付記49]
前記伝達態様は、前記加工用エネルギビームからの熱の拡散特性を含む
付記48に記載の処理装置。
[付記50]
前記第3部分は、前記第4部分よりも前記加工用エネルギビームからの熱が拡散しにくい領域を含み、
前記制御装置は、前記加工用エネルギビームから前記第3部分に伝達される熱量が、前記加工用エネルギビームから前記第4部分に伝達される熱量よりも少なくなるように、前記加工条件を制御する
付記47から49のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記51]
前記加工条件は、前記加工用エネルギビームに関する第1条件を含む
付記45から50のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記52]
前記第1条件は、前記加工用エネルギビームの単位面積当たりの強度又はエネルギ、前記加工用エネルギビームのフォーカス位置、前記加工用エネルギビームのデフォーカス量、前記加工用エネルギビームが照射される照射領域の大きさ、前記照射領域の形状、前記照射領域の位置及び前記加工用エネルギビームの強度分布又はエネルギ分布の少なくとも一つに関する条件を含む
付記51に記載の処理装置。
[付記53]
前記加工用ビームと前記第2表面との相対位置を変更する位置変更装置を更に備え、
前記加工条件は、前記位置変更装置に関する第2条件を含む
付記45から52のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記54]
前記第2条件は、前記加工用エネルギビームが照射される照射領域の前記第2表面に対する相対的な移動速度を含む
付記53に記載の処理装置。
[付記55]
前記加工条件は研磨条件である
付記45から54のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記56]
前記第2表面への前記エネルギビームの照射により、前記第2表面を前記エネルギビームの照射前よりも滑らかにする
付記22から55のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記57]
前記第2表面への前記エネルギビームの照射により、前記第2表面の色調を前記エネルギビームの照射前と変える
付記22から56のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記58]
前記第2表面への前記エネルギビームの照射により、前記第2表面の反射率を前記エネルギビームの照射前よりも上げる
付記22から57のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記59]
前記第2表面への前記エネルギビームの照射により、前記第2表面の面粗さを前記エネルギビームの照射前よりも細かくする
付記22から58のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記60]
前記第2表面への前記エネルギビームの照射により、前記第2表面での光の拡散度を前記エネルギビームの照射前よりも下げる
付記22から59のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記61]
前記第2表面への前記エネルギビームの照射により、前記第2表面を溶融させる
付記21から60のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記62]
前記第2表面で溶融された溶融物の表面での表面張力の作用により、前記表面での滑らかさを向上させる
付記61に記載の処理装置。
[付記63]
エネルギビームを供給する光源と、
前記光源からのエネルギビームを対象物に集光する集光光学系と、
前記集光光学系を介した前記エネルギビームの集光位置に造形材料を供給する材料供給部と、
前記集光位置と前記対象物との相対的な位置関係を変更する位置変更装置と、
前記集光位置と前記対象物との相対的な位置関係を変更しつつ前記集光位置に前記造形材料を供給して造形物としての物体を造形するように前記位置変更装置を制御する制御装置と
を備え、
前記集光光学系を介したエネルギビームを前記物体に照射し、
前記対象物に集光する前記光源からの前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路と、前記物体に照射される前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路とは同じ光路である
処理装置。
[付記64]
前記物体への前記エネルギビームの照射により、前記物体の表面を前記エネルギビームの照射前よりも滑らかにする
付記1から21及び63のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記65]
前記物体への前記エネルギビームの照射により、前記物体の表面の色調を前記エネルギビームの照射前と変える
付記1から21、63及び64のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記66]
前記物体への前記エネルギビームの照射により、前記物体の表面の反射率を前記エネルギビームの照射前よりも上げる
付記1から21及び63から65のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記67]
前記物体への前記エネルギビームの照射により、前記物体の表面の面荒さを前記エネルギビームの照射前よりも細かくする
付記1から21及び63から66のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記68]
前記物体への前記エネルギビームの照射により、前記物体の表面での光の拡散度を前記エネルギビームの照射前よりも下げる
付記1から21及び63から67のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記69]
前記物体への前記エネルギビームの照射により、前記物体の表面を溶融させる
付記1から21及び63から68のいずれか一項に記載の処理装置。
[付記70]
前記物体の表面で溶融された溶融物の表面での表面張力の作用により、前記表面での滑らかさを向上させる
付記69に記載の処理装置。
[付記71]
物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理方法において、
前記物体の表面の少なくとも一部に前記エネルギビームを照射することと、
前記物体の前記表面における前記エネルギビームの照射位置を変更することと
を含み、
前記物体の形状に関する形状情報を用いて前記エネルギビームの前記照射位置を変更する
処理方法。
[付記72]
物体にエネルギビームを照射する処理を行う処理方法において、
前記物体の表面の第1部分が第1方向に向くように前記物体の姿勢を第1姿勢に設定して前記第1部分にエネルギビームを照射することと、
前記第1部分と異なる方向に向けられた前記物体の表面の第2部分が第2方向に向くように前記物体の姿勢を前記第1姿勢と異なる第2姿勢に設定して、前記第2部分に前記エネルギビームを照射することと
を含む処理方法。
[付記73]
部材の第1表面に造形用エネルギビームを照射して前記第1表面に溶融池を形成し前記溶融池に造形材料を供給することにより造形された造形物を処理する処理方法であって、
前記部材と前記造形物とが並ぶ第1方向と交差する第2方向に向けられた前記造形物の第2表面の少なくとも一部に加工用エネルギビームを照射することと
を含む処理方法。
[付記74]
部材の第1表面に造形用エネルギビームを照射して前記第1表面に溶融池を形成し前記溶融池に造形材料を供給することにより造形物を造形することと、
前記部材と前記造形物とが並ぶ第1方向と交差する第2方向に向けられた前記造形物の第2表面の少なくとも一部に加工用エネルギビームを照射することと
を含む処理方法。
[付記75]
エネルギビームを供給することと、
集光光学系を用いて前記エネルギビームを対象物に集光することと、
前記エネルギビームが集光される集光位置に造形材料を供給することと、
前記集光位置と前記対象物との相対的な位置関係を変更しつつ前記集光位置に前記造形材料を供給して造形物としての物体を造形することと、
前記集光光学系を介した前記エネルギビームを前記物体に照射することと
を含み、
前記対象物に集光する前記光源からの前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路と、前記物体に照射される前記エネルギビームの前記集光光学系内での光路とは同じ光路である
処理方法。
[付記76]
付記1から21及び63から70のいずれか一項に記載の処理装置を用いて、前記物体の表面を加工する加工方法。
[付記77]
付記22から62のいずれか一項に記載の処理装置を用いて、前記第2表面を加工する加工方法。
[付記78]
目標造形物を形成する造形装置であって、
付記1から70のいずれか一項に記載の処理装置を用いて、前記目標造形物の表面を研磨する造形装置。
[付記79]
目標造形物を形成する造形装置であって、
付記71から75のいずれか一項に記載の処理方法を用いて、前記目標造形物の表面を研磨する造形装置。
[付記80]
前記造形装置は、造形用エネルギビームを造形面に照射するエネルギビーム照射装置と、前記造形面に造形材料を供給する供給系とを含み、前記造形面に照射された前記造形用エネルギビームで前記造形面に溶融池を形成し前記造形材料を前記溶融池で溶融させることで前記目標造形物を形成する
付記78又は79に記載の造形装置。
[付記81]
目標造形物を形成することと、
付記1から70のいずれか一項に記載の処理装置を用いて、前記目標造形物の表面を研磨することと
を含む造形方法。
[付記82]
目標造形物を形成することと、
付記71から75のいずれか一項に記載の処理方法を用いて、前記目標造形物の表面を研磨することと
を含む造形方法。
【0126】
上述の各実施形態の構成要件の少なくとも一部は、上述の各実施形態の構成要件の少なくとも他の一部と適宜組み合わせることができる。上述の各実施形態の構成要件のうちの一部が用いられなくてもよい。また、法令で許容される限りにおいて、上述の各実施形態で引用した全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0127】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う処理装置及び処理方法、加工方法、並びに、造形装置及び造形方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
1 造形システム
3 材料供給装置
4 造形装置
41 造形ヘッド
411 照射系
412 材料ノズル
42 ヘッド駆動系
43 ステージ
44 ステージ駆動系
5 光源
W ワーク
M 造形材料
SL 構造層
ST 3次元構造物
CS 造形面
PS 研磨対象面
EA 照射領域
MA 供給領域
MP 溶融池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22