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特開2022-166771フォトクロミック光学物品、およびその製造方法
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  • 特開-フォトクロミック光学物品、およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166771
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】フォトクロミック光学物品、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/23 20060101AFI20221026BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20221026BHJP
   G02C 7/12 20060101ALI20221026BHJP
   G02B 1/08 20060101ALI20221026BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G02B5/23
G02C7/10
G02C7/12
G02B1/08
C08G18/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072194
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】森 力宏
(72)【発明者】
【氏名】百田 潤二
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
4J034
【Fターム(参考)】
2H006BE02
2H148DA04
2H148DA09
2H148DA14
2H148DA24
4J034CA04
4J034CA32
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC09
4J034CC12
4J034CC27
4J034CC35
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD04
4J034CD06
4J034DA01
4J034DB01
4J034DF02
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG08
4J034DG09
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB02
4J034HB03
4J034HC00
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC23
4J034HC24
4J034HC25
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC53
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC70
4J034HC71
4J034HC73
4J034MA12
4J034MA18
4J034QA02
4J034QA05
4J034QB08
4J034QC03
4J034RA05
4J034RA13
(57)【要約】
【目的】優れた密着性を有し、且つ優れたフォトクロミック特性を発揮するフォトクロミック光学物品を提供することである。
【解決手段】1対の無機材料からなる(A)、及び(A’)光学物品用プレートを、(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む(B)フォトクロミック接着層、(C)偏光フィルム、更には(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層を介して接合したフォトクロミック光学物品を提供する。この様な積層形態を形成することにより、優れたフォトクロミック特性、及び密着性を有するフォトクロミック光学物品を提供することが出来る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機材料からなる光学物品用プレート、
(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む(B)フォトクロミック接着層、
(C)偏光フィルム、
(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層、および
(A’)無機材料からなる光学物品用プレート
をこの順で配置してなる、フォトクロミック光学物品。
【請求項2】
前記(D)接着層の厚みが0.8mm以下である、請求項1に記載のフォトクロミック光学物品。
【請求項3】
前記(B)フォトクロミック接着層が、
(Ba)フォトクロミック化合物、
(B1)分子内にイソ(チオ)シアネート基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート成分、
(B2)分子内に水酸基及びチオール基から選ばれる活性水素含有基を2個以上有するポリ(チ)オール成分、
を含有する(BI)フォトクロミック重合性組成物
を重合して得られるものである、請求項1又は2に記載のフォトクロミック光学物品。
【請求項4】
前記(BI)フォトクロミック重合性組成物が、さらに
(B3)分子内に水酸基及びチオール基から選ばれる活性水素含有基を1個有するモノ(チ)オール成分を含有する、請求項3に記載のフォトクロミック光学物品。
【請求項5】
前記(B1)ポリイソ(チオ)シアネート成分、及び前記(B2)ポリ(チ)オール成分の少なくとも1方の成分が、ポリロタキサン構造を有する化合物を含む、請求項3又は4に記載のフォトクロミック光学物品。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のフォトクロミック光学物品の製造方法であって、
(A’)無機材料からなる光学物品用プレート上に、(Da)光硬化性組成物を塗布し、
塗布した前記(Da)光硬化性組成物上に、(C)偏光フィルムを重ねて配置した後、
光照射して前記(Da)光硬化性組成物を硬化させて(D)接着層を形成することにより、
前記(A’)光学物品用プレート、前記(D)接着層、および(C)偏光フィルムがこの順で配置された第一積層体を準備する工程を含む、フォトクロミック光学物品の製造方法。
【請求項7】
(A)光学物品用プレート上に、
(Ba)フォトクロミック化合物、(B1)分子内にイソ(チオ)シアネート基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート化合物、及び(B2)分子内に水酸基及びチオール基から選ばれる活性水素含有基を2個以上有するポリ(チ)オール化合物を含む(BI)フォトクロミック重合性組成物を塗布し、
塗布した前記(BI)フォトクロミック重合性組成物上に、
前記第一積層体の(C)偏光フィルムを重ね合わせて配置した後、
前記(BI)フォトクロミック重合性組成物を重合して(B)フォトクロミック接着層を形成することにより、
第一積層体の(C)偏光フィルム上に、前記(B)フォトクロミック接着層、および前記(A)光学物品用プレートがこの順で配置されたフォトクロミック光学物品を製造する、請求項6に記載のフォトクロミック光学物品の製造方法。
【請求項8】
前記(BI)フォトクロミック重合性組成物が、さらに
(B3)分子内に水酸基及びチオール基から選ばれる活性水素含有基を1個有するモノ(チ)オール成分を含有する、請求項7に記載のフォトクロミック光学物品の製造方法。
【請求項9】
前記(B1)ポリイソ(チオ)シアネート成分、及び前記(B2)ポリ(チ)オール成分の少なくとも1方の成分が、ポリロタキサン構造を有する化合物を含む、請求項7又は8に記載のフォトクロミック光学物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
1対の無機材料からなる光学物品用プレートを、
フォトクロミック化合物、および樹脂成分を含むフォトクロミック接着層、
偏光フィルム、更には光硬化性組成物の硬化体からなる接着層
を介して接合した新規なフォトクロミック光学物品に関する。また、そのフォトクロミック光学物品を製造する新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年米国を中心として、防眩性を有するサングラスなどに、軽量で透明性を有するプラスチック基材の需要が急速に高まっている。そして、このようなプラスチック製サングラスにおいては、フォトクロミック特性や偏光特性を組み合わせることによって、周囲の明るさ(紫外線量)に応じて透過率が変化することにより防眩性を調節できるプラスチック製フォトクロミックサングラスが急速に人気を得ている。このようなサングラスは、以下の方法により製造されている。
【0003】
例えば、(メタ)アクリル樹脂中や、ウレタン樹脂中にフォトクロミック化合物を分散させることにより、該サングラスを製造する方法が知られている(特許文献1~4参照)。これら文献には、(メタ)アクリル樹脂、又はウレタン-ウレア樹脂とフォトクロミック化合物と含む組成物をそのままサングラスにする方法(練り込み法)、または他の材質からなる基材上に該組成物をコーティングしてサングラスにする方法(コーティング法)、更には2枚のプラスチック製光学シートの接着剤として該組成物を使用しサングラスにする方法(バインダー法)が記載されている。これらの方法を使用すれば、サングラスの材質に応じて、優れたフォトクロミック特性を有するサングラスを製造することができる。
【0004】
しかしながら、フォトクロミック重合性組成物をレンズ形状に成型する製造方法では、プラスチック材料が主成分となるため、無機材料を主成分とするものと比較して、得られるフォトクロミックサングラスの耐久性が低下する。特に、長時間太陽光に暴露されるような環境下で使用するとフォトクロミック化合物が劣化し易かった。そのため、ハードコート層をさらに設けるなど、様々な工夫が必要となる。
【0005】
一方、フォトクロミック重合性組成物を接着剤として使用し、一対の光学プレートを接合する方法も提案されている。この方法によれば、フォトクロミック特性を発揮する層の両側に光学プレートを配置することになるため、フォトクロミック化合物の劣化を抑制できる。
【0006】
しかしながら、この方法においても、光学プレートとしてプラスチック材料を使用した場合には、近年より一層高まる高性能なサングラスが要求される点において、やはりフォトクロミック化合物の劣化という問題があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014-136804号
【特許文献2】特開2007-138186号
【特許文献3】国際公開第2004-050775号
【特許文献4】特開2012-052091号
【特許文献5】特開平01-033154号
【特許文献6】国際公開第2020-204176号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のようなプラスチック製品に変えて、無機材料であるガラス製品(カラス製プレート)を、フォトクロミック化合物を含むウレタン樹脂で接合する方法(特許文献5、及び6参照)も検討されている。この方法によれば、無機材料を使用しているため、有機材料(プラスチック)を使用している上記方法よりも、フォトクロミック化合物の耐久性は格段に向上する。
【0009】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献5、または6に記載の方法であっても、密着性の点で改善の余地があった。特に、近年、高い耐久性を求められているが、前記従来の技術では、温水を使った促進試験において、密着性が低下する場合があり、改善の余地があった。
【0010】
したがって、本発明の目的は、1対の無機材料からなる光学物品用プレートを、フォトクロミック化合物、およびウレタン樹脂を含むフォトクロミック接着層、偏光フィルム、更には光硬化性組成物の硬化体からなる接着層を介して接合した、より優れた密着性を有するフォトクロミック光学物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。そして、光学物品用プレートを接合する際に使用する接着性組成物の組み合わせを様々検討し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(A)無機材料からなる光学物品用プレート、
(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む(B)フォトクロミック接着層、
(C)偏光フィルム、
(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層、および
(A’)無機材料からなる光学物品用プレート
をこの順で配置してなる、フォトクロミック光学物品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1対の無機材料からなる光学物品用プレートを、フォトクロミック化合物、およびウレタン樹脂を含むフォトクロミック接着層、偏光フィルム、更には光硬化性組成物の硬化体からなる接着層を介して接合した、優れた密着性を有するフォトクロミック光学物品を提供できる。加えて、該フォトクロミック光学物品は、優れたフォトクロミック特性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のフォトクロミック光学物品の好ましい態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、図1に示す通りの構成を有する。つまり、無機材料からなる(A)光学物品用プレート1、及び無機材料からなる(A’)光学物品用プレート1’を、(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む(B)フォトクロミック接着層2、(C)偏光フィルム3、更には(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層4を介して接合したフォトクロミック光学物品5である。以下、順を追って説明する。先ず、(A)、及び(A’)光学物品用プレートについて説明する。
【0016】
<(A)、及び(A’)光学物品用プレート>
本発明で使用する(A)、及び(A’)光学物品用プレート(以下、単に「(A)プレート」、または「(A’)プレート」とする場合もある。)は、光学用のガラスレンズ等に使用されるものであれば、その素材は特に制限されるものではなく、公知のものを使用できる。
【0017】
後述する(Bb)樹脂成分は、無機材料からなる(A)、及び(A’)プレートへの密着性が非常によい。また、無機材料は、有機材料に比べてガスバリア性に優れるためフォトクロミック化合物の光酸化劣化を抑制することもできる。このため、本実施形態に係るフォトクロミック光学物品は、無機材料からなる光学物品用プレートを使用する場合に特に優れた効果を発揮する。
【0018】
(A)、及び(A’)プレートは一対で使用されるものであり、本実施形態に係るフォトクロミック光学物品を眼鏡レンズとする場合には、眼に近い側(内側)の光学物品用プレートと、目から遠く、屋外では太陽光がより照射される側(外側)の光学物品用プレートとの組み合わせとなる。
【0019】
具体的には、無機材料として、ガラス材料として汎用的なソーダガラス、フリントガラス、クラウンガラス等のガラス素材を使用できる。その中でも、SiO2、B、Al、NaCO3、NaO、KO、CaO、Ca(OH)、CaCO、Ca、BaO、MgO、PbO、ZnO、MnO、Al、Al、LiO、Nb、ZrO、Fe、CeO、TiO、La、SrO、As、Sbのうち少なくとも1つの酸化物を有するガラス材料を使用することが好ましい。ガラスレンズは、化学強化ガラス、屈折率1.6以上の高屈折率ガラス、及び紫外線吸収性能ガラス等の機能性ガラスであってもよい。
【0020】
(A)、及び(A’)プレートの材質がガラス材料である場合、外側の光学物品用プレートには、フォトクロミック特性を十分に発揮させるため、紫外線(UV)吸収特性が弱いガラス材料を使用することが好ましい。具体的には、波長380nmの光の透過率が50%以上であるガラス材料を使用することが好ましい。また、外側の(A)プレートには、耐衝撃性の観点から、化学的に強化されたガラス材料を使用してもよい。
【0021】
一方、内側の(A’)プレートには、紫外線から眼を保護するため、UV吸収特性が強いガラス材料を使用することが好ましい。具体的には、波長400nmの光の透過率が10%以下であるガラス材料を使用することが好ましい。特に、本実施形態に係るフォトクロミック光学物品が度数矯正用の眼鏡レンズである場合、フォトクロミック光学物品の薄型化及び軽量化の観点から、内側の(A’)プレートには、屈折率1.6以上のガラス材料を使用することが好ましい。
【0022】
(A)、及び(A’)プレートの厚みは、特に制限されない。度付きでないサングラスを作製する場合には、厚みが1.5mm以下の光学物品用プレートを使用することができ、軽量化の観点から、厚みが1.0mm以下の光学物品用プレートを使用することが好ましい。この場合、厚みの下限は、0.1mmである。
【0023】
また、近視用の度付きレンズを作製する場合には、例えば、外側の(A)プレートの中心の厚みが1.0mm以下であり、内側の(A’)プレートの少なくとも一部が1.0mmよりも厚いことが好適である。この時、(A)プレートの厚みは0.1~1.0mmの範囲にあることが好ましい(最小厚みと最大厚みとが、前記範囲を満足することが好ましい。)。また、(A’)プレートの厚みは、10~20mm範囲にあることが好ましい(最小厚みと最大厚みとが、前記範囲を満足することが好ましい。)。
【0024】
また、遠視用の度付きレンズを作製する場合には、例えば、外側の(A)プレートの中心の厚みが20mm以下であり、内側の(A’)プレートの少なくとも一部が1.0mmよりも厚いことが好適である。この時、(A)プレートの厚みは0.1~20mmの範囲にあることが好ましい(最小厚みと最大厚みとが、前記範囲を満足することが好ましい。)。また、(A’)プレートの厚みは、10~20mm範囲にあることが好ましい(最小厚みと最大厚みとが、前記範囲を満足することが好ましい。)。
【0025】
さらに、バイフォーカルレンズ、累進レンズ等を作製する場合においても、(A)、及び(A’)プレートの厚みを適宜選択することができる。
【0026】
度付きレンズを作製する場合においては、内側の(A’)プレートの凹面側を必要に応じて研磨することにより、使用者の視力に応じて度数を調整することが可能となる。
【0027】
中でも、本実施形態に係るフォトクロミック光学物品は、(A)、または(A’)プレートの少なくとも一方の厚みが1.5mm以下、特に1.0mm以下である場合に優れた効果を発揮する。(A)、又は(A’)プレートの厚みの下限は、例えば、0.1mmである。本実施形態に係るフォトクロミック光学物品は、(A)、または(A’)プレートの少なくとも一方の厚みが0.1~1.5mmであることが好ましく、0.5~1.0mmであることがより好ましい。なお、(A)、又は(A’)プレートの少なくとも一方の厚みが0.1~1.5mmである場合、他方の光学物品用プレートは同じ厚みであってもよいし、異なる厚みであってもよい、異なる厚みである場合、その厚みは特に制限されず、10~20mmであってもよい。
【0028】
(A)、及び(A’)プレートの形状は特に制限されず、所望とする用途に応じた形状(平面状、曲面状等)の光学物品用プレートを使用すればよい。
【0029】
また、本発明の(A)、及び(A’)プレートには、前記以外の性質を有するガラスを使用してもよい。例えば、防眩性を向上させる目的で、ネオジム化合物等を添加したものを採用してもよい。
【0030】
本発明には、(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む(B)フォトクロミック接着層が使用される。以下、各成分について説明する。
【0031】
<(B)フォトクロミック接着層>
本発明において、(B)フォトクロミック接着層は、(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む。つまり、前記(Bb)樹脂成分が、前記(A)プレートと下記に詳述する(C)偏光フィルムとを主に接着する接着剤の役割を果たす。そして、該(B)フォトクロミック接着層は、この(Bb)樹脂成分中に(Ba)フォトクロミック化合物が分散されており、得られるフォトクロミック光学物品は、フォトクロミック特性を発揮する。
【0032】
本発明において、(B)フォトクロミック接着層の厚みは、フォトクロミック特性を十分に発揮し、また十分な密着性を確保できる厚みであれば、特に制限されるものではない。中でも、(B)フォトクロミック接着層の厚みは、本発明のフォトクロミック光学物品を眼鏡レンズとして使用する場合には、0.8mm以下であることが好ましい。強度の観点から(A)、及び(A’)プレートの厚みを0.1~1.5mm程度に維持する必要があるため、デザイン上の観点から(B)フォトクロミック接着層の厚みは0.8mm以下であることが好ましい。
【0033】
その中でも、優れたフォトクロミック特性、および密着性を発揮するためには、0.02mm以上0.8mm以下にすることが好ましく、0.03mm以上0.5mm以下にすることがより好ましく、0.05mm以上0.2mm以下にすることが最も好ましい。膜厚が0.02mm以上0.8mm以下の範囲であることにより、密着性が高くなり、膜厚が均一となり易く、(B)フォトクロミック接着層は発色時の濃度ムラ等が生じ難くなる。また、膜厚が0.8mm以下であることにより、端部からフォトクロミック接着層が劣化するのを抑制することができる。その結果、密着性が向上する傾向にあり、フォトクロミック化合物の耐久性も維持できる。
【0034】
次に、(B)フォトクロミック接着層に含まれる(Ba)フォトクロミック化合物について説明する。
【0035】
<(Ba)フォトクロミック化合物>
(Ba)フォトクロミック化合物(以下、単に「(Ba)成分」ともいう。)としては、例えば、フルギド化合物、クロメン化合物、スピロオキサジン化合物等が知られている。本実施形態においては、これらのフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用できる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。フルギド化合物、クロメン化合物、及びスピロオキサジン化合物としては、例えば、特開平2-28154号公報、特開昭62-288830号公報、国際公開第94/22850号、国際公開第96/14596号等に記載されている化合物が挙げられる。
【0036】
また、優れたフォトクロミック性を有する化合物として本発明者等が新たに見出した化合物、例えば特開2001-114775号、特開2001-031670号、特開2001-011067号、特開2001-011066号、特開2000-347346号、特開2000-344762号、特開2000-344761号、特開2000-327676号、特開2000-327675号、特開2000-256347号、特開2000-229976号、特開2000-229975号、特開2000-229974号、特開2000-229973号、特開2000-229972号、特開2000-219687号、特開2000-219686号、特開2000-219685号、特開平11-322739号、特開平11-286484号、特開平11-279171号、特開平10-298176号、特開平09-218301号、特開平09-124645号、特開平08-295690号、特開平08-176139号、特開平08-157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、国際公開第2009-136668号、国際公開第2008-023828号、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、国際公開第2007-086532号、特開平2009-120536号、特開2009-67754号、特開2009-67680号、特開2009-57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008-74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、国際公開第2005-028465号、国際公開第2003-042203号、特開2005-289812号、特開2005-289870号、特開2005-112772号、日本国特許3522189号公報、国際公開第2002-090342号、日本国特許第3471073号公報、特開2003-277381号、国際公開第2001-060811号、国際公開第2000-071544号、国際公開第2005-028465号、国際公開第2011-16582号、国際公開第2011-034202号、国際公開第2012-121414号、国際公開第2013-042800号、日本国特許6031035号公報等に開示されている化合物を好適に用いることができる。
【0037】
これらの(Ba)成分の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ〔2,1-f〕ナフト〔1,2-b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらのクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度及び退色速度に特に優れるため好適である。
【0038】
また、本発明の(Ba)成分としては、分子量が300以上の長鎖の基を置換基として有する化合物であってもよい(300以上の分子量とは、長鎖の基の部分のみの分子量を指す。)。このような長鎖の基としては、ポリシロキサン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、ポリエステル鎖、およびポリエステルポリエーテル鎖から選ばれる少なくとも1つの基であることが好ましい。分子量が300以上の長鎖の基は、高分子量のものであるため、フォトクロミック化合物を製造する際に、1種類ではなく、複数種類の基となる場合がある。その場合、該長鎖の分子量は、複数種類のものの平均値が前記範囲となればよい。また、この平均値は数平均分子量である。この分子量は、フォトクロミック化合物の製造時の原料の種類により確認できる。また、製造物から確認する場合には、NMR、IR、質量分析等の公知の手段により確認できる。
【0039】
(Ba)成分が、分子量300以上の長鎖の基を有することにより、(Bb)樹脂成分中において、より高度なフォトクロミック特性を発揮できると考えられる。該長鎖の基の分子量は、フォトクロミック特性、その配合量、および(Ba)成分自体の生産性を考慮すると300~25,000であることが好ましく、400~20,000であることがより好ましく、440~15,000であることがさらに好ましく、500~10,000であることが特に好ましい。この分子量は、フォトクロミック化合物と結合する部分は含まず、ポリシロキサン鎖、ポリオキシアルキレン鎖、ポリエステル鎖、およびポリエステルポリエーテル鎖の部分に関する値であることが好ましい。
【0040】
該長鎖の基の数は、フォトクロミック化合物1分子に対して、少なくとも0.5個以上となることが好ましい。すなわち、該長鎖の基の数が最も少なくなる場合であっても、2つのフォトクロミック化合物を、該長鎖の基で結合するような構造となることが好ましい。該長鎖の基の数の上限は、分子鎖の分子量との兼ね合い、フォトクロミック特性等を考慮すると、4つ以下が好ましく、2つ以下がより好ましく、1つであることが更に好ましい。
【0041】
また、(Ba)成分は、フォトクロミック特性を発揮する分子構造が、光の照射によって分子の一部が開裂して発色し、開裂した箇所が再結合することにより退色するものが好ましい。従って、フォトクロミック化合物が可逆的に発色と退色を繰り返すためには、開裂と再結合が起こる際に分子の動きを妨げない自由空間の存在(分子の自由度)が大変重要となる。このような分子構造を有する化合物の場合、特に、該分子鎖の効果が発揮されるものと考えられる。
【0042】
このようなフォトクロミック化合物としては、例えば、国際公開第2000-015630号、国際公開第2004-041961号、国際公開第2005-105874号、国際公開第2005-105875号、国際公開第2006-022825号、国際公開第2009-146509号、国際公開第2010-20770号、国際公開第2012-121414号、国際公開第2012-149599号、国際公開第2012-162725号、国際公開第2012-176918号、国際公開第2013-078086号、国際公開第2019/013249号、特願2018-079303号、特願2018-136374号等に記載される、前記分子鎖を有するフォトクロミック化合物が使用できる。
【0043】
本発明において、フォトクロミック光学物品の(B)フォトクロミック接着層に含まれる(Ba)フォトクロミック化合物の配合割合は、以下の配合割合とすることが好ましい。すなわち、(Bb)樹脂成分100質量部に対して、(Ba)フォトクロミック化合物を0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0044】
次いで、本発明の接着層を形成する(Bb)樹脂成分について説明する。
【0045】
<(Bb)樹脂成分>
本発明において、(Bb)樹脂成分は、前記(A)プレートと下記に詳述する(C)偏光フィルムとを接着できるものであれば、公知のものを使用できる。中でも、優れたフォトクロミック特性の発現、及び光学物品用プレートや偏光フィルムへの密着性の観点から、ウレタン樹脂、又は架橋性(メタ)アクリル樹脂を使用することが好ましい。その中でも、光学物品用プレートへの密着性の観点から、ウレタン樹脂を使用することが最も好ましい。
【0046】
<(Bb)成分;ウレタン樹脂>
前記ウレタン樹脂としては、公知のウレタン樹脂を何等制限なく使用することができる。その中でも、
(B1)分子内にイソ(チオ)シアネート基を2個以上有するポリイソ(チオ)シアネート成分(以下、単に「(B1)成分」とする場合もある。)と、
(B2)分子内に、水酸基、およびチオール基から選ばれる活性水素含有基を2個以上有するポリ(チ)オール成分(以下、単に「(B2)成分」とする場合もある。)とを、
重合して得られる樹脂であることが好ましい。
【0047】
そのため、本発明において、(Bb)成分をウレタン樹脂で形成する場合には、
前記(Ba)フォトクロミック化合物、
前記(B1)成分、および
前記(B2)成分
を含むフォトクロミック重合性組成物を重合することにより、(B)フォトクロミック接着層とすることが好ましい。
【0048】
本発明において、イソ(チオ)シアネート基とは、イソシアネート基、又はイソチオシアネート基を指す。そして、分子内にイソ(チオ)シアネート基を2個以上有するとは、「分子内にイソシアネート基を2個以上有する」か、「分子内にイソチオシアネート基を2個以上有する」か、又は「分子内に、イソシアネート基、およびイソチオシアネート基の合計の基の数が2個以上となる」ことを指す。
【0049】
また、「分子内に、水酸基、およびチオール基から選ばれる活性水素含有基を2個以上有する」とは、「分子内に水酸基を2個以上有する」か、「分子内にチオール基を2個以上有する」か、又は「分子内に、水酸基、およびチオール基の合計の基の数が2個以上となる」ことを指す。
【0050】
なお、「分子内に、水酸基、およびチオール基から選ばれる活性水素含有基を1個有する」とは、分子内に、水酸基、又はチオール基を1つ有することを指す。
【0051】
先ず、(B1)ポリイソ(チオ)シアネート化合物について説明する。
【0052】
<(B1)成分>
本発明において、接着層に好適に使用される(Bb)ウレタン樹脂は、ポリイソ(チオ)シアネート化合物を原料とする。
【0053】
<(B1)成分;ポリイソシアネート化合物>
該ポリイソ(チオ)シアネート化合物の内、ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、含硫黄脂肪族イソシアネート化合物、脂肪族スルフィド系イソシアネート化合物、芳香族スルフィド系イソシアネート化合物、脂肪族スルホン系イソシアネート化合物、芳香族スルホン系イソシアネート化合物、スルホン酸エステル系イソシアネート化合物、芳香族スルホン酸アミド系イソシアネート化合物、含硫黄複素環イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0054】
(A)プレートへの密着性、及び透明性・機械強度に優れた光学物品を形成するのに好適な化合物、特に、フォトクロミック化合物を含む光学物品を製造するために適している化合物としては、以下の化合物が挙げられる。該ポリイソシアネート化合物の好ましい例としては、下記式(I)~(IV)で示される化合物である。
【0055】
<(B1)成分;アルキレン鎖を有するポリイソシアネート化合物>
下記式(I)
【0056】
【化1】
(式中、
100は、炭素数1~10のアルキレン基であり、前記アルキレン基の鎖中の炭素原子が硫黄原子に置換された基であってもよい。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0057】
100は、炭素数1~10のアルキレン基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、又はヘプタメチレン基、オクタメチレン基の直鎖状の基、又は、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基の水素原子の一部がメチル基に置換された分岐鎖状の基が好ましい。また、炭素原子が硫黄原子で置換されたアルキレン基は、―CHCHSCHCHSCHCH-基が好ましい。
【0058】
前記式(I)で示される化合物を具体的に例示すると、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,4,4,-トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、1,2-ビス(2-イソシアナ-トエチルチオ)エタン等が挙げられる。これら化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上の化合物を使用することもできる。
【0059】
<(B1)成分;フェニル基、又はシクロヘキサン基(環)を有するポリイソシアネート化合物>
下記式(II)、下記式(III)
【0060】
【化2】
【0061】
【化3】
【0062】
(式中、
101は、それぞれ、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子であり、同一の基であっても、異なる基であってもよく、
102は炭素数1~4のアルキル基であり、複数の基が存在する場合には、同一の基であっても、異なる基であってよく、
100は整数で2又は3であり、b100は整数で0~4であり、c100は整数で0~4である。)で示される化合物を使用することが好ましい。前記式(II)で示される化合物と前記式(III)で示される化合物の違いは、フェニル基を有する化合物(前記式(II)で示される化合物)とシクロヘキサン基(環)を有する化合物(前記式(III)で示される化合物)との違いである。
【0063】
101において、炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R101は、水素原子、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0064】
102において、炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R102は、水素原子、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0065】
前記式(II)、又は前記式(III)で示される化合物を具体的に例示すれば、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(o-,m-,p-)、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(異性体混合物)等が挙げられる。これら化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上の化合物を使用することもできる。
【0066】
<(B1)成分;2つのフェニル基、又は2つのシクロヘキサン基(環)を有するポリイソシアネート化合物>
下記式(IV)、下記式(V)
【0067】
【化4】
【0068】
【化5】
【0069】
(式中、
103は、それぞれ、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子であり、同一の基であっても、異なる基であってもよく、
100は整数で0~4である。)で示される化合物を使用することが好ましい。前記式(IV)で示される化合物と前記式(V)で示される化合物の違いは、フェニル基を2個有する化合物(前記式(IV)で示される化合物)とシクロヘキサン基(環)を2個有する化合物(前記式(V)で示される化合物)との違いである。
【0070】
103において、炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R103は、水素原子、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0071】
前記式(IV)、又は前記式(V)で示される化合物を具体的に例示すれば、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4'-ジイソシアネート等が挙げられる。これら化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上の化合物を使用することもできる。
【0072】
<(B1)成分;ノルボルナン環を有するポリイソシアネート化合物>
下記式(VI)
【0073】
【化6】
【0074】
(式中、
104は、それぞれ、炭素数1~4のアルキル基、又は水素原子であり、同一の基であっても、異なる基であってよく、e100は整数で0~4である。)で示される化合物である。
【0075】
104において、炭素数1~4のアルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R104は、水素原子、メチル基、エチル基であることが特に好ましい。
【0076】
前記式(VI)で示される化合物を具体的に例示すれば、ノルボルナンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタンが挙げられる。これら化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上の化合物を使用することもできる。
【0077】
さらに、上記ポリイソシアネートのハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や、多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物なども使用できる。
【0078】
<(B1)成分;ポリイソチオシアネート化合物>
また、分子内に2個以上のイソチオシアネート基を有する化合物としては、前記式(I)~(VI)で示されるポリイソシアネート化合物において、イソシアネート基がイソチオシアネート基に代わっている化合物が挙げられる。より具体的には、脂肪族イソチオシアネート化合物、脂環族イソチオシアネート化合物、芳香族イソチオシアネート化合物、含複素環イソチオシアネート化合物、含硫黄脂肪族イソチオシアネート化合物、含硫黄芳香族イソチオシアネート化合物、含硫黄複素環イソチオシアネート化合物等が挙げられる。これら、ポリイソチオシアネート化合物の具体例としては、以下の化合物を例示することができる。
【0079】
脂肪族イソチオシアネート化合物としては、1,2-ジイソチオシアネートエタン、1,3-ジイソチオシアネートプロパン、1,4-ジイソチオシアネートブタン、1,6-ジイソチオシアネートヘキサン、p-フェニレンジイソプロピリデンジイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0080】
脂環族イソチオシアネート化合物としては、シクロヘキシルイソチオシアネート、シクロヘキサンジイソチオシアネート、2,4-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、2,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、3,4-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナン、3,5-ビス(イソチオシアナトメチル)ノルボルナンなどが挙げられる。
【0081】
芳香族イソチオシアネート化合物としては、フェニルイソチオシアネート、1,2-ジイソチオシアネートベンゼン、1,3-ジイソチオシアネートベンゼン、1,4-ジイソチオシアネートベンゼン、2,4-ジイソチオシアネートトルエン、2,5-ジイソチオシアネートm-キシレンジイソシアネート、4,4’-ジイソチオシアネート1,1’-ビフェニル、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート2-メチルベンゼン)、1,1’-メチレンビス(4-イソチオシアネート3-メチルベンゼン)、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、4,4’-ジイソチオシアネートベンゾフェノン、4,4’-ジイソチオシアネート3,3’-ジメチルベンゾフェノン、ベンズアニリド-3,4’-ジイソチオシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソチオシアネート、ジフェニルアミン-4,4’-ジイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0082】
含複素環イソチオシアネート化合物としては、2,4,6-トリイソチオシアネート1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。カルボニルイソチオシアネート化合物としては、ヘキサンジオイルジイソチオシアネート、ノナンジオイルジイソチオシアネート、カルボニックジイソチオシアネート、1,3-ベンゼンジカルボニルジイソチオシアネート、1,4-ベンゼンジカルボニルジイソチオシアネート、(2,2’-ビピリジン)-4,4’-ジカルボニルジイソチオシアネートなどが挙げられる。
【0083】
さらに、イソチオシアネート基の硫黄原子の他に、少なくとも1つの硫黄原子を有する多官能のイソチオシアネート化合物も使用することができる。このような多官能イソチオシアネート化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
【0084】
含硫脂肪族イソチオシアネート化合物としては、チオビス(3-イソチオシアネートプロパン)、チオビス(2-イソチオシアネートエタン)、ジチオビス(2-イソチオシアネートエタン)などが挙げられる。含硫芳香族イソチオシアネート化合物としては、1-イソチオシアネート4-{(2-イソチオシアネート)スルホニル}ベンゼン、チオビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、スルホニルビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、スルフィニルビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、ジチオビス(4-イソチオシアネートベンゼン)、4-イソチオシアネート1-{(4-イソチオシアネートフェニル)スルホニル}-2-メトキシ-ベンゼン、4-メチル-3-イソチオシアネートベンゼンスルホニル-4’-イソチオシアネートフェニルエステル、4-メチル-3-イソチオシアネートベンゼンスルホニルアニリド-3’-メチル-4’-イソチオシアネートなどが挙げられる。
【0085】
含硫複素環イソチオシアネート化合物としては、チオフェン-2,5-ジイソチオシアネート、1,4-ジチアン-2,5-ジイソチオシアネートが挙げられる。
【0086】
<(B1)成分;イソシアネート基、およびイソチオシアネート基を有する化合物>
本発明において、(B1)成分として、イソシアネート基、およびイソチオシアネート基の両方の基を有する化合物としては、以下の化合物が挙げられる。例えば、前記の具体的に例示したポリイソシアネート化合物において、少なくとも1つのイソシアネート基がイソチオシアネート基となっている化合物である。また、前記の具体的に例示したポリイソチオシアネート化合物において、少なくとも1つのイソチオシアネート基がイソシアネート基となっている化合物である。
【0087】
<(B1)成分;(B1R)成分(ポリロタキサン構造を有するポリ(チオ)イソシアネート成分)>
本発明においては、(B1)成分として、分子内にイソ(チオ)シアネート基を2個以上有し、かつポリロタキサン構造を有する(B1R)イソ(チオ)シアネート基含有ポリロタキサン成分(以下、(B1R)成分とする場合もある)を含むこともできる。この(B1R)成分は、平均値であるが、1分子当たり、6個を超えるイソ(チオ)シアネート基を含むことが好ましい。
【0088】
ポリロタキサン構造とは、軸分子と該軸分子を包接する複数の環状分子とからなる複合分子構造を有するものであり、該環状分子が軸分子から外れないように、該軸分子の末端には嵩高い基を有するものを指す。つまり、ポリロタキサン構造とは、鎖状の軸分子が環状分子内を貫通した複合分子構造を有しており、環状分子の環の内部を軸分子が貫通しているため、環状分子は、軸分子上を自由にスライドできる。
【0089】
このように(B1R)成分は、(Bb)樹脂成分に含まれることにより、フォトクロミック接着層を形成した際に、環状分子が軸分子をスライドすることによって、外部からの局所的な圧力等を緩和し易くなる。その結果、(B)フォトクロミック接着層と(A)プレート間の密着性を向上できると考えられる。さらには、このスライド効果により、フォトクロミック特性も向上するものと考えられる。
【0090】
(B1R)成分は、公知の方法で合成できる。具体的には、(B1R)成分は、国際公開第2015-068798号等に記載の方法で合成し、環状分子が有する側鎖末端の水酸基をイソ(チオ)シアネート基にすればよい。
【0091】
本発明において、最も好適に使用される(B1R)成分は、以下の構造を有するものである。
【0092】
具体的には、
両端にアダマンチル基が結合しているポリエチレングリコールを軸分子とし、
α-シクロデキストリン環を環状分子とすることが好ましい。そして、α-シクロデキストリン環の水酸基とプロピレンオキサイド、およびポリカプロラクトンとを反応させて、末端にOH基を有する側鎖を導入し、該側鎖の末端OH基をイソ(チオ)シアネート基に変性したものが好ましい。
【0093】
(B1R)成分として、該軸分子の分子量は8,000~30,000であり、α-シクロデキストリン環の導入割合が0.003~0.4の範囲であり、α-シクロデキストリン環が修飾された割合(修飾度;側鎖の導入率)は、30%以上70%以下であることが好ましい。該側鎖の分子量は平均値で400~1,500であることが好ましい。
【0094】
そして、(B1R)成分は、重量平均分子量が10万~20万であり、平均値ではあるが、その1分子当たり、イソ(チオ)シアネート基を150~350個含むものを使用することが好ましい。
【0095】
<(B1)成分の好ましい例>
前記(B1)ポリイソ(チオ)シアネート化合物の中でも、接着層を形成するウレタン樹脂の均一性を考慮すると、分子内のイソ(チオ)シアネート基の数が2個以上6個以下の化合物が好ましく、2個以上4個以下の化合物がより好ましく、さらに2個の化合物が最も好ましい。具体的な化合物としては、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、2,6-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2,2,1〕-ヘプタン、1,2-ビス(2-イソシアナ-トエチルチオ)エタン、キシレンジイソシアネート(o-,m-,p-)、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(異性体混合物)、および4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネートを挙げることができ、単独で使用することもでき、またそれらの混合物として使用してもよい。その中でも、耐侯性、フォトクロミック特性、操作性の観点から、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(異性体混合物)が最も好ましい。
【0096】
そして、本発明おいては、特に好適な(B1)成分としては、以下の組み合わせとすることもできる。具体的には、(B1)成分として、前記(B1R)成分以外の(B1)成分(以下、(B1R)成分を含まない(B1)成分を、単に「(B11)成分」とする場合もある)と、前記(B1R)成分とを組み合わせて使用することが好ましい。なお、前記(B11)成分は、分子内にイソ(チオ)シアネート基の数が2個以上6個以下の化合物が好ましく、2個以上4個以下の化合物がより好ましく、さらに2個の化合物が最も好ましい。
【0097】
次に、(B2)成分について説明する。
【0098】
<(B2)成分;ポリ(チ)オール成分>
本発明において、(B)フォトクロミック接着層に好適に使用される(Bb)ウレタン樹脂は、(B2)ポリ(チ)オール化合物を原料とする。該ポリ(チ)オール化合物の内、例えば、ポリオール化合物としては、はジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-ヒドロキシ化合物であり、脂肪族ポリオール化合物、芳香族ポリオール化合物等が挙げられる。具体的に、ポリ(チ)オール化合物を例示すると、下記の化合物を上げることができる。
【0099】
<(B2)ポリ(チ)オール化合物の好適な化合物>
以上のような該(B2)ポリ(チ)オール化合物の中でも、透明性・機械強度に優れた光学物品を形成するのに好適な化合物、特に、フォトクロミック化合物を含む光学物品を製造するために適している化合物としては、以下の化合物が挙げられる。具体的には、下記式(VII)~(IX)、(XI)~(XIII)、および(XV)~(XIX)で示される化合物が挙げられる。
【0100】
<(B2)成分;アルキレン鎖等を有するポリ(チ)オール化合物>
下記式(VII)
【0101】
【化7】
【0102】
(式中、
100は、炭素数2~30のアルキレン基、又はアルケニル基であり、
105は、それぞれ、水酸基、又はSH基であり、同一の基であっても、異なる基であってもよい。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0103】
100は、炭素数2~30のアルキレン基、又はアルケニル基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の何れであってもよい。好ましくは、炭素数2~15の直鎖状のアルキレン基である。
【0104】
下記式(VII)で示される化合物を具体的に例示すれば、ポリエチレンポリオール(炭素数2~15)、1,10-デカンジチオール、1,8-オクタンジチオールが挙げられる。
【0105】
<(B2)成分;2つ以上のエーテル結合、又はエステル結合を有する好適なポリ(チ)オール化合物>
下記式(VIII)、又は下記式(IX)
【0106】
【化8】
【0107】
【化9】
【0108】
{式中、
100は、炭素数2~15のアルキレン基、又はアルケニル基であり、
106は、それぞれ、水素原子、又は下記式(X)
【0109】
【化10】
【0110】
(式中、
107は、炭素数1~6のアルキレン基である。)
で示される基であり、同一の基であっても、異なる基であってよく、
100は平均値で1~100の整数である。}で示される化合物を使用することが好ましい。
【0111】
100は、炭素数2~15のアルキレン基、又はアルケニル基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。好ましくは、炭素数2~6の直鎖状のアルキレン基である。
【0112】
107は、炭素数1~6のアルキレン基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R107は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることが特に好ましい。
【0113】
前記式(VII)で示される化合物、又は前記式(IX)で示される化合物を具体的に例示すると、ポリエチレングリコール(l100=1~100)、ポリカプロラクトンポリオール(l100=1~100)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,6-ヘキサンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0114】
<(B2)成分;好適なカーボネートポリオール化合物>
下記式(XI)
【0115】
【化11】
【0116】
(式中、
100、およびE100’は、それぞれ、炭素数2~15のアルキレン基であり、同一の基であっても、異なる基であってよく、
100は平均値で1~20の数である。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0117】
100、およびE100’は、炭素数2~15のアルキレン基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、E100、およびE100’は、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、ドデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、1-メチルトリエチレン基、1-エチルトリエチレン基、1-イソプロピルトリエチレン基であることが特に好ましい。前記式(XI)で示される化合物を具体的に例示すれば、ポリカーボネートポリオール(E100、E100’がペンタメチレン基、ヘキサメチレン基であり、g100=4~10)等が挙げられる。
【0118】
<(B2)成分;多官能ポリオール化合物>
下記式(XII)
【0119】
【化12】
【0120】
(式中、
108は、炭素数1~6のアルキル基であり、複数存在する場合には、同一又は異なっていてもよく、
109は、水素原子、又は前記式(X)と同一であり、同一又は異なっていてもよく
110は、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、又は水素原子であり、同一又は異なっていてもよく、
100は0~2であり、q100は2~4であり、o100+q100は4であり、p100は0~10であり、r100は1~6である。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0121】
108は、炭素数2~15のアルキル基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R108は、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基であることが特に好ましい。
【0122】
前記式(XII)で示される化合物を具体的に例示すれば、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパントリポリオキシエチレンエーテル (日本乳化剤株式会社製TMP-30)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセタート等が挙げられる。
【0123】
<(B2)成分;エーテル結合を有するポリオール化合物>
下記式(XIII)
【0124】
【化13】
【0125】
{式中、
100は、それぞれ、1~6のアルキル基、又は、下記式(XIV)
【0126】
【化14】
【0127】
(式中、
111は、水素原子、又は、前記式(X)と同義の基であり、同一の基であっても、異なる基であってもよく、
112は、それぞれ、メチル基、エチル基、又は水素原子であり、同一の基であっても、異なる基であってもよく、
100は0~10であり、t100は1~6である。)であり、
ただし、基F100の内、少なくとも2つ以上が前記式(XIV)で示される基である。}で示される化合物を使用することが好ましい。
【0128】
100は、少なくとも2つが前記式(XIV)で示される基である。そして、それ以外の基としては、1~6のアルキル基が挙げられ、鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、F100は、メチル基、エチル基、トリメチル基、プロピル基であることが特に好ましい。また、Fは、2つ以上が前記式(XIV)で示される基であれば、それぞれ、同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0129】
前記式(XIII)で示される化合物を具体的に例示すれば、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリト-ルヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0130】
<(B2)成分;水酸基を2つ有するポリオール化合物>
下記式(XV)
【0131】
【化15】
【0132】
(式中、
113は、炭素数1~30のアルキル基、又はアルケニル基である。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0133】
113は、炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数1~30のアルケニル基であり、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。上記式(XV)は、脂肪酸とグリセリンの縮合反応から得ることができるため、R112は具体的には、脂肪酸のアルキル、及びアルケニル基部位が挙げられる。脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0134】
前記式(XV)で示される化合物を具体的に例示すれば、モノオレイン酸グリセリル(東京化成工業株式会社製モノオレイン)、モノエライジン、モノリノール酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル等が挙げられる。
【0135】
<(B2)成分;多官能ポリチオール化合物>
下記式(XVI)
【0136】
【化16】
【0137】
(式中、
114は、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、又は前記炭素数1~6のアルキル基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる基あり、R114が複数存在する場合には、同一の基であっても、異なる基であってもよく、
115は、炭素数1~10のアルキレン基であり、前記炭素数1~10のアルキレン基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる基、又は、前記炭素数1~10のアルキレン基の水素原子の一部がSH基で置換された基であり、R115が複数存在する場合には、同一の基であっても、異なる基であってもよく、
100は2~4の整数であり、v100は0~2の整数である。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0138】
114において、炭素数1~6のアルキル基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよく、中でも、R114は、水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましい。また、炭素数1~6のアルキル基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる具体的な基としては、-CHSCH等が挙げられる。
【0139】
115において、炭素数1~10のアルキレン基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R115は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が特に好ましい。また、炭素数1~10のアルキレン基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる具体的な基としては、-CHS-、-CHCHS-、-CHCHCHS-等が挙げられる。さらに、前記炭素数1~6のアルキル基の水素原子の一部がSH基で置換された基とは、-CHSCH(SCHSH)-のような基が挙げられる。
【0140】
前記式(XVI)で示される化合物を具体的に例示すれば、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ブタンジチオール、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、1,1,1,1-テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン等が挙げられる。
【0141】
<(B2)成分;環状のポリチオール化合物>
下記式(XVII)
【0142】
【化17】
【0143】
(式中、
116は、メチレン基、又は硫黄原子であり、3つのR116の少なくとも2つは硫黄原子であり、
117は炭素数1~6のアルキレン基、又は前記炭素数1~6のアルキレン基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる基である。)で示される化合物を使用することが好ましい。
【0144】
117において、炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R117は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、前記炭素数1~6のアルキレン基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる基は、具体的には、-CHS-、-CHCHS-、等が挙げられる。
【0145】
前記式(XVII)で示される化合物を具体的に例示すれば、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン等が挙げられる。
【0146】
<(B2)成分;フェニル基含有ポリチオール化合物>
下記式(XVIII)
【0147】
【化18】
【0148】
(式中、
118は、炭素数1~6のアルキレン基であり、又は前記炭素数1~6のアルキレン基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる基であり、w100は2~3である。)で示される化合物を使用することができる。
【0149】
118において、炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R118は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることが好ましい。また、前記炭素数1~6のアルキレン基の鎖中の炭素原子の一部が-S-結合となる基は、具体的には、-CHCHCHSCH-、-CHCHSCH-、-CHSCH-等が挙げられる。
【0150】
前記式(XVIII)で示される化合物を具体的に例示すれば、1,4-ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0151】
<(B2)成分;トリアジン環を有するポリ(チ)オール化合物>
下記式(XIX)
【0152】
【化19】
【0153】
{式中、
119は、それぞれ、炭素数1~6のアルキル基、又は下記式(XX)
【0154】
【化20】
【0155】
(式中、
120、およびR121は、炭素数1~6のアルキレン基であり、
122は、酸素原子、又は硫黄原子である)
で示される基であり、ただし、前記R119の少なくとも2つは前記式(XX)で示される基であり、前記R119は、同一の基であっても、異なる基であってもよい。}で示される化合物を使用することが好ましい。
【0156】
120、およびR121において、炭素数1~6のアルキレン基は、直鎖状、又は分岐鎖状の基であってもよい。中でも、R120、およびR121は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基であることが好ましい。
【0157】
前記式(XX)で示される化合物を具体的に例示すれば、2-メルカプトメタノール、トリス-{(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル}-イソシアヌレートが挙げられる。これらの化合物は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0158】
また、上記式(VII)~(IX)、(XI)~(XIII)、(XV)~(XIX)で表される化合物以外のポリオール化合物として、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、及びこれらとポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどを反応させた誘導体も好適に使用できる。この様な化合物の例として、エチレンオキシド鎖、プロピレンオキシド鎖を有するブロックコポリマーである株式会社ADEKA製のアデカ プルロニック(登録商標)シリーズなどを挙げることが出来る。
【0159】
<(B2)成分;(B2R)成分(ポリロタキサン構造を有するポリ(チ)オール成分)>
本発明においては、(B2)成分として、分子内に(チ)オール基を2個以上有し、かつポリロタキサン構造を有する(B2R)(チ)オール基含有ポリロタキサン成分(以下、(B2R)成分とする場合もある)を含むこともできる。この(B2R)成分は、平均値であるが、1分子当たり、6個を超える(チ)オール基を含むことが好ましい。
【0160】
ポリロタキサン構造とは、<(B1)成分;ポリロタキサン構造を有するポリ(チオ)イソシアネート成分>で説明した通りの構造である。
【0161】
この(B2R)成分の役割は、前記(B1R)成分と同じ役割を果たす。そのため、(B2R)成分は、国際公開第2015-068798号等に記載の方法で合成し、環状分子が有する側鎖末端の水酸基であるものが好ましい。そして、好適な(B2R)成分は、以下の通りである。つまり、
両端にアダマンチル基で結合しているポリエチレングリコールを軸分子とし、
α-シクロデキストリン環を環状分子とすることが好ましい。そして、α-シクロデキストリン環の水酸基と、プロピレンオキサイド、ポリカプロラクトンとを反応させて、該環に側鎖(末端がOH基)が導入されているものが好ましい。該軸分子の分子量は8,000~30,000であり、α-シクロデキストリン環の導入割合が0.003~0.4の範囲であり、α-シクロデキストリン環が修飾された割合(修飾度;側鎖の導入率)は、30%以上70%以下であることが好ましい。該側鎖の分子量は平均値で400~1,500であることが好ましい。
【0162】
そして、(B2R)成分は、重量平均分子量が10万~20万であり、平均値ではあるが、その1分子当たり、水酸基を150~350個含むものを使用することが好ましい。なお、この水酸基は、環状分子の側鎖が導入された基の末端の水酸基であり、イソ(チオ)シアネート基と反応し得る基である。(B2R)成分は、(B1R)成分よりも製造工程を短縮できる。そのため、(Bb)樹脂成分にポリロタキサン構造を導入する場合には、(B2R)成分を使用することが好ましい。
【0163】
<(B2)成分の好ましい例>
本発明において、上記(B2)成分は特に制限なく用いることができ、単独で使用することもでき、複数組み合わせて使用することもできる。得られるフォトクロミック光学物品のフォトクロミック特性を考慮すると、分子内に、水酸基、およびチオール基から選ばれる活性水素含有基を2個以上6個以下有することが好ましく、3個以上6個以下有することがより好ましく、4個以上6個以下であることが最も好ましい。い。上記(B2)成分のポリ(チ)オール化合物の好ましい例としては、活性水素含有基を3個有するものがトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセタート、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、トリス-{(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル}-イソシアヌレ-トであり、活性水素含有基を4個以上6個以下有するものがペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1,1,1-テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、であることが好ましい。
【0164】
そして、本発明おいては、特に好適な(B2)成分としては、以下の組み合わせとすることもできる。具体的には、前記(B2)成分として、前記(B2R)成分以外の(B2)成分(以下、(B2R)成分を含まない(B2)成分を、単に「(B21)成分」とする場合もある)と、前記(B2R)成分とを組み合わせて使用することが好ましい。なお、前記(B21)成分は、分子内にイソ(チオ)シアネート基の数が2個以上6個以下の化合物が好ましく、3個以上6個以下の化合物がより好ましく、さらに4個以上6個以下の化合物が最も好ましい。
【0165】
<(B3)成分;モノ(チ)オール化合物>
本発明において、(B)フォトクロミック接着層に好適に使用される(Bb)樹脂成分は、ウレタン樹脂とすることが好ましく、前記(B1)成分、および前記(B2)成分を少なくとも含む重合性組成物を重合して得られるものであることが好ましい。ただし、より(A)光学プレート、および(C)偏光フィルムとの密着性を高め、優れたフォトクロミック特性を発揮させるためには、モノ(チ)オール化合物(以下、単に(B3)成分とする場合もある)を使用することが好ましい。
次に、(B3)分子内に、水酸基、およびチオール基から選ばれる活性水素含有基を1個有するモノ(チ)オール化合物((B3)成分)について説明する。
【0166】
本発明において、(B)フォトクロミック接着層に好適に使用される(Bb)ウレタン樹脂には、上記(B1)、(B2)成分に加えて、(B3)モノ(チ)オール化合物を用いることもできる。
【0167】
本発明においては、(B1)成分と(B2)成分とを反応させることにより、(チオ)ウレタン結合を有する網目状構造の剛直な硬化体が得られる。そこに、(B3)成分を導入することで、片末端フリーな構造を有するモノ(チ)オール化合物が網目状構造に取り込まれる。そして、モノ(チ)オール化合物の周辺にフレキシブルな空間が形成され、この空間近傍に存在するフォトクロミック化合物の可逆的な構造変化を、より速やかに生じさせるようになると考えられる。その結果、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度)に優れたフォトクロミック光学物品を製造できると考えられる。また、柔軟性が向上することが理由と考えられるが、(B3)成分を導入することにより、密着性を向上することもできる。
【0168】
さらに、(B3)成分は、水酸基、またはチオール基を1個しか有さないため、水素結合がポリ(チ)オール化合物よりも少ない。そのため、(B3)成分を含む各成分を混合して得られる(BI)フォトクロミック重合性組成物の粘度を減少させることできる。その結果、フォトクロミック光学物品を製造する際のハンドリング性能を向上することができ、(B)フォトクロミック接着層の成形性を向上できると考えられる。
【0169】
本発明で用いる(B3)成分の具体例としては、以下の化合物を例示することができる。
【0170】
1分子中に1個の水酸基化合物;ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ポリエチレングリコールモノラウラート、ポリエチレングリコ-ルモノステアラート、ポリエチレングリコ-ルモノ-4-オクチルフェニルエーテル、直鎖状のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、炭素数5~30の直鎖状、または枝分かれ状を有する飽和アルキルアルコール、
1分子中に1個のチオール化合物;3-メトキシブチルチオグリコレート、2-エチルヘキシルチオグリコレート、2-メルカプトエチルオクタン酸エステル、3-メルカプトプロピオン酸-3-メトキシブチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸-2-オクチル、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メチル-3-メルカプトプロピオネート、トリデシル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、炭素数5~30の直鎖状、または枝分かれ状構造を有する飽和、不飽和アルキルチオール、
等が挙げられる。以上の(B3)成分は、単独で使用することもできるし、複数種類のものを混合して使用することもできる。
【0171】
<(B3)成分:好適なモノ(チ)オール化合物>
本発明において、好適な(B3)成分としては、分子量が100以上である化合物であることが好ましく、150以上であることがさらに好ましい。さらに、(B)フォトクロミック接着層の成形性を向上させるため、(BI)フォトクロミック重合性組成物の粘度を下げるためには、低分子量(低粘度)の(B3)と、高分子量の(B3)を混合させることも効果的である。
【0172】
本発明においては、少量の添加で、(A)プレート、及び(C)偏光フィルムへの密着性、及びフォトクロミック特性を向上できるという観点から、以下の化合物を使用する好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレエート、ポリエチレングリコールモノラウラート、ポリエチレングリコ-ルモノステアラート、ポリエチレングリコ-ルモノ-4-オクチルフェニルエーテル、直鎖状のポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル)、炭素数5~30の直鎖状、または枝分かれ状を有する飽和アルキルアルコ-ル、3-メルカプトプロピオン酸-2-オクチル、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メチル-3-メルカプトプロピオネート、トリデシル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、炭素数5~30の直鎖状、または枝分かれ状構造を有する飽和、不飽和アルキルチオールである。
【0173】
<(BI)フォトクロミック重合性組成物>
本発明において、(B)フォトクロミック接着層を形成するのに好適な(BI)フォトクロミック重合性組成物について説明する。主に接着効果をもたらす(Bb)樹脂成分は、前記の通り、ウレタン樹脂からなることが好ましい。そのため、(BI)フォトクロミック重合性組成物は、前記(Ba)フォトクロミック化合物、前記(B1)成分、及び(B2)成分を含むことが好ましい。そして、配合量については、以下の配合量を満足することが好ましい。
【0174】
<(Ba)フォトクロミック化合物、(B1)成分、および(B2)成分の配合割合>
本発明において、(Bb)樹脂成分が前記(B1)成分、および前記(B2)成分からなる場合には、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0175】
具体的には、前記(B1)成分におけるイソ(チオ)シアネート基の総モル数をn1とし、前記(B2)成分における活性水素(活性水素含有基)の総モル数をn2としたとき、
n1:n2=0.9~1.5:1であることが好ましく、1.05~1.30:1であることがより好ましい。
【0176】
また、質量換算すると、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0177】
具体的には、前記(B1)成分、及び前記(B2)成分の合計100質量部当たり、前記(B1)成分を20~70質量部、前記(B2)成分を30~80質量部とすることが好ましく、前記(B1)成分を30~50質量部、前記(B2)成分を50~70質量部とすることがさらに好ましい。
【0178】
この場合、(Ba)フォトクロミック化合物は、以下の配合量であることが好ましい。すなわち、前記に(Bb)樹脂成分に対する(Ba)フォトクロミック化合物の好適な配合量を示したが、(Bb)樹脂成分の配合量は、この場合、前記(B1)成分、及び前記(B2)成分の合計量と同じと見なすことができる。そのため、前記(B1)成分、および前記(B2)成分の合計量100質量部に対して、(Ba)フォトクロミック化合物を0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0179】
<(B3)成分を使用する場合の配合割合>
前記の通り、本発明においては、前記(Bb)樹脂成分に、前記(B1)成分、および前記(B2)成分に加えて、さらに、前記(B3)成分を導入することが好ましい。この場合、得られるフォトクロミック光学物品が優れたフォトクロミック特性、および密着性を発揮するためには、以下の配合量を満足することが好ましい。
【0180】
具体的には、前記(B3)成分における活性水素(活性水素含有基)の総モル数をn3としたとき、
n1:(n2+n3)=0.9~1.5:1であることが好ましく、1.05~1.30:1であることがより好ましい。
【0181】
また、n2:n3=1~300:1であることが好ましく、3~50:1であることがより好ましい。
【0182】
また、質量換算すると、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0183】
具体的には、前記(B1)成分、前記(B2)成分、及び前記(B3)成分の合計100質量部当たり、前記(B1)成分を20~74質量部、前記(B2)成分を21~75質量部、前記(B3)成分を2~40質量部の範囲で含有することが好ましく、前記(B1)成分を35~64質量部、前記(B2)成分を29~59質量部、前記(B3)成分を5~25質量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0184】
この場合、(Ba)フォトクロミック化合物の配合量は、前記(B1)成分、前記(B2)成分、及び前記(B3)成分の合計100質量部当たり、0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0185】
<ポリロタキサン構造を有するモノマー(B1R)成分、又は(B2R)成分を使用する場合の配合量>
本発明においては、前記の通り、(Bb)樹脂成分が前記(B1R)成分、又は(B2R)成分の構造を有することが好ましい。そのため、(BI)フォトクロミック重合性組成物は、前記(B1R)成分、又は前記(B2R)成分を含むことが好ましい。
【0186】
<前記(B1R)成分を含む場合の好適な配合量>
本発明において、(BI)フォトクロミック重合性組成物が前記(B1R)成分を含む場合には、優れた効果を発揮するため、以下の配合割合とすることが好ましい。前記(B1R)成分を含む場合には、前記(B1)成分は、前記(B11)成分を含むことが好ましい。
【0187】
具体的には、前記(B11)成分におけるイソ(チオ)シアネート基の総モル数をn11とし、前記(B1R)成分におけるイソ(チオ)シアネート基の総モル数をn1Rとしたとき、
(n11+n1R):n2=0.9~1.5:1であることが好ましく、1.05~1.30:1であることがより好ましい。
【0188】
また、n11:n1R=50~200:1とすることが好ましく、70~150:1とすることが好ましい。
【0189】
また、質量換算すると、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0190】
具体的には、前記(B11)成分、前記(B1R)成分、および前記(B2)成分の合計100質量部当たり、前記(B11)成分を10~69.9質量部、前記(B1R)成分を0.1~10質量部、前記(B2)成分を30~80質量部の範囲で含有することが好ましく、前記(B11)成分を27~47質量部、前記(B1R2)成分を1~3質量部、前記(B2)成分を50~70質量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0191】
この場合、(Ba)フォトクロミック化合物の配合量は、前記(B11)成分、前記(B1R)成分、及び前記(B2)成分の合計100質量部当たり、0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0192】
<前記(B1R)成分、および前記(B3)成分を含む場合の好適な配合量>
前記の通り、本発明においては、前記(B3)成分を(Bb)樹脂成分に導入することが好ましい。そのため、(BI)フォトクロミック重合性組成物において、特に優れた効果を発揮するためには、前記(B1R)、および前記(B3)成分を含むことが好ましい。この場合の好ましい配合量は、以下の通りである。
【0193】
具体的には、
(n11+n1R):(n2+n3)=0.9~1.5:1であることが好ましく、1.05~1.30:1であることがより好ましい。
【0194】
また、n11:n1R=50~200:1とすることが好ましく、70~150:1とすることが好ましい。n2:n3=1~300:1であることが好ましく、3~50:1であることがより好ましい。
【0195】
また、質量換算すると、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0196】
具体的には、前記(B11)成分、前記(B1R)、前記(B2)成分、および前記(B3)成分の合計100質量部に対し、前記(B11)成分を20~74質量部、前記(B1R)成分を1~30質量部、前記(B2)成分を20~74質量部、及び前記(B3)成分を2~40質量部とすることが好ましく、前記(B11)成分を35~64質量部、前記(B1R)を2~9質量部、前記(B2)を26~59質量部、及び前記(B3)成分を4~25質量部とすることが好ましい。
【0197】
この場合、(Ba)フォトクロミック化合物の配合量は、前記(B11)成分、前記(B1R)成分、前記(B2)成分、及び前記(B3)成分の合計100質量部当たり、0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0198】
<前記(B2R)成分を含む場合の好適な配合量>
本発明において、(BI)フォトクロミック重合性組成物が前記(B2R)成分を含む場合には、優れた効果を発揮するため、以下の配合割合とすることが好ましい。前記(B2R)成分を含む場合には、前記(B2)成分は、前記(B21)成分を含むことが好ましい。
【0199】
具体的には、前記(B21)成分におけるイソ(チオ)シアネート基の総モル数をn21とし、前記(B2R)成分におけるイソ(チオ)シアネート基の総モル数をn2Rとしたとき、
n1:(n21+n2R)=0.9~1.5:1であることが好ましく、1.05~1.30:1であることがより好ましい。
【0200】
また、n21:n2R=50~200:1とすることが好ましく、70~150:1とすることが好ましい。なお、n2Rは、平均値であり、前記の通り、イソ(チオ)シアネート基と反応し得る基であり、側鎖が導入されなかった環状分子の水酸基は含まないものとする。
【0201】
また、質量換算すると、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0202】
具体的には、前記(B1)成分、前記(B21)成分、および前記(B2R)成分の合計100質量部当たり、前記(B1)成分を20~70質量部、前記(B21)成分を20~79.9質量部、および前記(B2R)成分を0.1~10質量部の範囲で含有することが好ましく、前記(B1)成分を30~65質量部、前記(B21)成分を34~67質量部、および前記(B2R)成分を1~3質量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0203】
この場合、(Ba)フォトクロミック化合物の配合量は、前記(B1)成分、前記(B21)成分、及び前記(B2R)成分の合計100質量部当たり、0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0204】
<前記(B2R)成分、および前記(B3)成分を含む場合の好適な配合量>
前記の通り、本発明においては、前記(B3)成分を(Bb)樹脂成分に導入することが好ましい。そのため、(BI)フォトクロミック重合性組成物において、特に優れた効果を発揮するためには、前記(B2R)、および前記(B3)成分を含むことが好ましい。この場合の好ましい配合量は、以下の通りである。
【0205】
具体的には、
n1:(n21+n2R+n3)=0.9~1.5:1であることが好ましく、1.05~1.30:1であることがより好ましい。そして、この場合、n2:n3:n2R=1~300:1:0.05~10であることが好ましく、3~50:1:0.10~2であることがより好ましい。
【0206】
また、質量換算すると、フォトクロミック特性、および密着性を考慮すると、以下の配合割合となることが好ましい。
【0207】
具体的には、前記(B1)成分、前記(B21)成分、前記(B2R)成分、及び前記(B3)成分の合計100質量部当たり、前記(B1)成分を20~70質量部、前記(B21)成分を4.9~74.9質量部、前記(B2R)成分を0.1~10質量部、及び前記(B3)成分を5~25質量部の範囲で含有することが好ましく、前記(B1)成分を30~50質量部、前記(B21)成分を27~59質量部、前記(B2R)成分を1~3質量部、及び前記(B3)成分を10~20質量部の範囲で含有することがより好ましい。
【0208】
この場合、(Ba)フォトクロミック化合物の配合量は、前記(B1)成分、前記(B21)成分、前記(B2R)成分、及び前記(B3)成分の合計100質量部当たり、0.01~10質量部とすることが好ましく、0.05~5質量部とすることがより好ましく、0.1~3質量部とすることがさらに好ましい。
【0209】
なお、前記例では、(B1R)成分、および(B2R)成分を併用した場合を記載していないが、これら成分を同時に配合することができる。この場合、n1:n2=0.9~1.5:1となる範囲で適宜配合量を決定すればよい。ただし、(BI)フォトクロミック重合性組成物自体の調整という点では、(B1R)成分、又は(B2R)成分の一方を使用することが好ましく、中でも、(B2R)成分を使用することが好ましい。
【0210】
前記(BI)フォトクロミック重合性組成物には、前記(B1)成分、前記(B2)成分、および必要に応じて配合される前記(B3)成分以外にも、公知の配合剤を配合することができる。次に、これら配合剤について説明する。なお、以下に説明する配合剤の配合量は、前記(Bb)樹脂成分を100質量部とした場合の数値とする。
つまり、この(Bb)樹脂成分100質量部とは、
前記(B1)成分、及び前記(B2)成分を使用する場合には、これらの合計量、
前記(B1)成分、前記(B2)成分、及び前記(B3)成分を使用する場合には、これらの合計量、
前記(B11)成分、前記(B1R)成分、及び前記(B2)成分を使用する場合には、これらの合計量、
前記(B11)成分、前記(B1R)成分、前記(B2)成分、及び前記(B3)成分を使用する場合には、これらの合計量、
前記(B1)成分、前記(B21)成分、及び前記(B2R)成分を使用する場合には、これらの合計量、又は
前記(B1)成分、前記(B21)成分、前記(B2R)成分、及び前記(B3)成分を使用する場合には、これらの合計量に相当するものとする。
【0211】
<(Bc)重合硬化促進剤>
本発明においては、ウレタンの重合硬化を速やかに促進させるために、活性水素含有基とイソ(チオ)シアネート基との反応に有効な、ウレタン用反応触媒や縮合剤が重合硬化促進剤(以下、単に「(Bc)成分」とする場合もある。)を使用してもよい。
【0212】
<(Bc)成分;ウレタン用反応触媒>
この反応触媒は、ポリイソ(チア)シアネートと、ポリオール又はポリチオールとの反応によるポリ(チオ)ウレタン結合生成において用いられる。これらの重合触媒は3級アミン類およびこれらに対応する無機または有機塩類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、ルイス酸類、または有機スルホン酸を挙げることができる。この具体例としては、以下のものを例示することができる。また、選択する上述の化合物の種類により、触媒活性が高すぎる場合は、3級アミンとルイス酸を混合して用いることにより触媒活性を抑えることが可能である。
【0213】
3級アミン類;トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N,N,N′,N′-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン、4,4′-トリメチレンビス(1-メチルピペリジン)、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-7-ウンデセン。
【0214】
ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ-n-プロピルホスフィ、トリイソプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン。
【0215】
4級アンモニウム塩類;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド。
【0216】
4級ホスホニウム塩類;テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド。
【0217】
ルイス酸;トリフェニルアルミ、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルチンジラウレ-ト、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジリシノレート、ジオクチルスズジオレエート、ジオクチルスズジ(6-ヒドロキシ)カプロエート、ジオクチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジドデシルスズジリシノレート、又は各種金属塩、例えば、オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2-エチルヘキシル等の塩。
【0218】
有機スルホン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸。
【0219】
<(Bc)成分;縮合剤>
縮合剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
【0220】
無機酸;塩化水素、臭化水素、硫酸やリン酸等、
有機酸;p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等、
酸性イオン交換樹脂;アンバーライト(製品名)、アンバーリスト(製品名)等、
カルボジイミド;ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノピロリル)-カルボジイミド。
【0221】
<(Bc)成分の配合量>
上述した(Bc)重合硬化促進剤は、それぞれ、1種単独でも、2種以上を併用することもできる。その使用量は、所謂触媒量でよく、例えば、(Bb)樹脂成分100質量部に対して、0.001~10質量部、特に0.01~5質量部の範囲が好ましい。
【0222】
<その他の配合成分>
本発明において、前記(B)フォトクロミック接着層には、本発明の効果を損なわない範囲でそれ自体公知の各種配合剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、界面活性剤、可塑剤等の各種安定剤、添加剤、溶剤、レベリング剤、さらには、t-ドデシルメルカプタン等のチオール類を重合調整剤として、必要に応じて配合することができる。上記添加剤の添加量は、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。具体的には、前記(Bb)樹脂成分100質量部に対して、添加剤の合計量が0.001~10質量部の範囲となることが好ましい。
【0223】
中でも、紫外線安定剤を使用するとフォトクロミック化合物の耐久性を向上させることができるために好適である。このような紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが知られている。特に好適な紫外線安定剤は、以下の通りである。
【0224】
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA-52、LA-57、LA-62、LA-63、LA-67、LA-77、LA-82、LA-87、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565。
【0225】
このような紫外線安定剤の使用量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、通常、(Bb)樹脂成分100質量部に対して、0.001質量部~10質量部、特に0.01質量部~1質量部の範囲である。特にヒンダードアミン光安定剤を用いる場合、フォトクロミック化合物の種類によって耐久性の向上効果に差がある結果、調整された発色色調の色ズレが生じないようにするため、(Ba)フォトクロミック化合物 1モル当り、0.5~30モル、より好ましくは1~20モル、さらに好ましくは2~15モルの量とするのがよい。
【0226】
また、帯電防止性剤としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤(非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤)、及びイオン性液体(常温で液体として存在し、陽イオン及び陰イオンの対で存在する塩)等が挙げられる。具体例としては以下の通りである。
【0227】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩;アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)又はアルカリ土類金属(マグネシウム及びカルシウム等)と、有機酸[炭素数1~7のモノ又はジカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸及びコハク酸等)、炭素数1~7のスルホン酸(メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等)及びチオシアン酸]との塩、及び前記有機酸と無機酸[ハロゲン化水素酸(塩酸及び臭化水素酸等)、過塩素酸、硫酸、硝酸及びリン酸等)]の塩等。
【0228】
4級アンモニウム塩;アミジニウム(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム等)又はグアニジウム(2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム等)と、前記有機酸又は無機酸との塩等。
【0229】
界面活性剤;しょ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸塩(石けん)、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、(モノ)アルキルリン酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、Nメチルビスヒドロキエチルアミン脂、肪酸エステル・塩酸塩、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等。
【0230】
イオン性液体;1,3-エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1,3-エチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド、1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-エチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、1-メチルピラゾリウムビストリフルオロメタンスルホンイミド等。
【0231】
このような帯電防止剤の使用量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、通常、(Bb)樹脂成分100質量部に対して、0.001質量部~10質量部、特に0.01質量部~1質量部の範囲である。
【0232】
添加剤の中でも、550~600nmの範囲に吸収ピークを有する色素は、防眩性を向上させる観点から有用であり、該色素としては、ニトロ系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、スレン系化合物、ポルフィリン系化合物、希土類金属化合物などが挙げられる。その中でも、防眩性と視認性の兼ね合いから、ポルフィリン系化合物、希土類系化合物が好ましい。更には、プラスチック材料中への分散安定性の観点から、ポルフィリン系化合物が最も好ましい。
【0233】
該希土類金属化合物としては、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(フェナシルフェニルケトナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-フェニル-2-メチル-1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-チオフェニル-1,3-ブタンジオナト)ネオジム、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)エルビウム、アクアヒドロキシ(1-フェニル1,3-ブタンジオナト)ホロニウムなどの錯体を挙げることできる。
【0234】
該ポルフィリン系化合物としては、ポルフィリン骨格に種々の置換基を有していても良い化合物であり、例えば、特開平5-194616号公報、特開平5-195446号公報、特開2003-105218号公報、特開2008-134618号公報、特開2013-61653号公報、特開2015-180942号公報、WO2012/020570号パンフレット、日本国特許第5626081号、日本国特許第5619472号、日本国特許第第5778109号等に記載されている化合物を好適に使用することができる。
【0235】
このような550~600nmの範囲に吸収ピークを有する色素の使用量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されるものではないが、通常、(Bb)樹脂成分100質量部に対して、0.001質量部~10質量部、特に0.01質量部~1質量部の範囲である。
【0236】
<(BI)フォトクロミック重合性組成物の調整方法>
本発明において、前記の通り、(B)フォトクロミック接着層を形成するためには、(BI)フォトクロミック重合性組成物を先ず製造し、該フォトクロミック重合性組成物を重合硬化する方法を採用することが好ましい。
【0237】
(B)フォトクロミック接着層に好適に使用される(BI)フォトクロミック重合性組成物は、特に制限されるものではなく、各成分を混合することにより調整できる。前記(B1)成分、(B2)成分に加えて、および必要に応じて配合される(B3)成分、(B1R)成分、(B2R)成分、(C)重合硬化促進剤、およびその他の成分を含む組成物に、(Ba)フォトクロミック化合物を加えることが好ましい。
【0238】
次いで、本発明で使用される(C)偏光フィルムについて説明する。
【0239】
<(C)偏光フィルム>
本発明のフォトクロミック光学物品には、偏光特性を付与する目的で、(C)偏光フィルムを使用する。
【0240】
本発明で使用される(C)偏光フィルムは、特に制限されるものではなく、市販の偏光フィルムを利用することができる。
【0241】
(C)偏光フィルムの厚みは、10~300μmのものが好ましく、20~200μmのものがより好ましく、20~100μmのものがさらに好ましい。(C)偏光フィルムは、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質で染色されたポリビニルアルコールが延伸されてなるものである。
【0242】
本発明で(C)偏光フィルムを使用する場合には、以下の(C)偏光フィルムを使用することが好ましい。具体的には、(C)偏光フィルムに含まれる二色性染料としては、市販の二色性染料が制限なく使用できる。例えば、アゾ系、アントラキノン系等の染料が挙げられる。具体的には、クロランチンファストレッド(C.I.28160)、コンゴーレッド(C.I.22120)、ブリリアントブルーB(C.I.24410)、ベンゾパープリン(C.I.23500)、クロラゾールブラックBH(C.I.22590)、ダイレクトブルー2B(C.I.22610)、ジアミングリーン(C.I.30295)、クリソフェニン(C.I.24895)、シリウスイエロー(C.I.29000)、ダイレクトファーストレッド(C.I.23630)、アシドブラック(C.I.20470)、ダイレクトスカイブルー(C.I.24400)、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)、ダイレクトコッパーブルー2B(C.I.24185)、ニッポンブリリアントヴァイオレットBKconc(C.I.27885)等が挙げられる。これらの二色性染料の中から目的に応じて2色以上の色素を選択して用いることもできる。なお、括弧内には、有機合成協会編「新版 染料便覧」(丸善株式会社、1970年)に記載のColour Index No.を示した。
【0243】
また、該二色性染料を含む(C)偏光フィルムは、特に制限されるものではないが、本発明のフォトクロミック重合性組成物を使用すれば、視感透過率が10~60%、偏光度が70.0~99.9である該(C)偏光フィルムであっても、強固に接合することができる。
【0244】
該(C)偏光フィルムは、その機能、接着性を高めるためには、セルローストリアセテートフィルムが両面に積層されているものであってもよい。該セルローストリアセテートフィルムは、その厚さは20~200μmであることが好ましく、20~100μmであることがより好ましい。
【0245】
また、該(C)偏光フィルムは、(C)偏光フィルムに含まれる水分量の調整や、偏光フィルムの寸法安定性のために、本発明のフォトクロミック光学物品を作製する前に、40~100℃の範囲で5秒~30分程度の加熱処理を実施したものを使用することもできる。更には、(A)、及び(A’)プレートと接合する前に、事前に(A)、及び(A’)プレートと同形状となるように曲げ加工した(C)偏光フィルムを用いることが好ましい。
【0246】
<(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層>
本発明には、(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層が、前記(C)偏光フィルムと前記(A’)プレートを接着するために使用される。
【0247】
本発明において、(D)接着層の厚みは、前記(C)偏光フィルムと(A’)プレートとが十分な密着性を確保できる厚みであれば、特に制限されるものではない。中でも、(D)接着層の膜厚が0.8mm以下であることが好ましい。本発明のフォトクロミック光学物品を眼鏡レンズとして使用する場合には、強度の観点から、例えば、(A)、及び(A’)プレートの少なくとも一方の厚みを0.1~1.5mm程度に維持することが好ましい。そのため、デザイン上の観点からフォトクロミック光学物品の総厚を抑制するために、(D)接着層の膜厚が0.8mm以下であることが好ましい。その中でも、操作性、および優れた効果を勘案すると、0.02mm以上0.8mm以下にすることが好ましく、0.03mm以上0.5mm以下にすることがより好ましく、0.05mm以上0.2mm以下にすることが最も好ましい。膜厚が0.02mm以上0.8mm以下であることにより、密着性が高くなり、膜厚が均一となり易い。
以下、(Da)光硬化性組成物について説明する。
【0248】
<(Da)光硬化性組成物>
本発明における(Da)光硬化性組成物は、公知の架橋性(メタ)アクリル樹脂、架橋性エポキシ樹脂、及びエン/チオール樹脂を形成できるモノマー組成物を使用できる。
【0249】
具体的には、以下のような(メタ)アクリル基を含み、かつ重合性基を2つ以上有する架橋性(メタ)アクリルモノマーを使用できる。そして、このモノマーを重合硬化することにより、架橋性(メタ)アクリル樹脂からなる(D)接着層とすることができる。
【0250】
また、エポキシ基(オキセタン基含む)を含み、かつ重合性基を2つ以上有する架橋性エポキシモノマーを使用することができる。これらモノマーを重合硬化することにより、架橋性エポキシ樹脂からなる(D)接着層とすることができる。
【0251】
更には、ポリエン化合物、及びチオール化合物を含む組成物を使用することもできる。この組成物を重合硬化することで、エン/チオール樹脂からなる(D)接着層とすることができる。
【0252】
((Da)光硬化性組成物;架橋性(メタ)アクリルモノマー組成物)
本発明に使用される架橋性(メタ)アクリルモノマーとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールA ジメタクリレート、2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量628の2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量804の2,2-ビス(4-メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2-ビス(4-アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量468のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、平均分子量330のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量736のポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量258のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量308のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量508のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量708のポリエチレングリコールジアクリレート、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物であるポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレートなどの多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレートなどの多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有し、かつケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を有するシルセスキオキサンモノマー、(メタ)アクリル基を側鎖に有するポリロタキサン化合物、2-イソシアナトエチルメタクリレート、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
【0253】
また、前記(メタ)アクリル基を含み、かつ重合性基を2つ以上有する架橋性(メタ)アクリルモノマーを含む組成物には、架橋性(メタ)アクリルモノマー以外に、(メタ)アクリル基を含む非架橋性(メタ)アクリルモノマーやビニル基を有するモノマーも配合してよい。
【0254】
(光重合開始剤)
本発明においては、(メタ)アクリル基を含み、かつ重合性基を2つ以上有する架橋性(メタ)アクリルモノマーを含む組成物には、重合開始剤を配合することもできる。
【0255】
前記重合開始剤としては、光重合開始剤を使用するのが好適であり、公知のものを採用することが可能である。該光重合開始剤として具体的には、ベンゾフェノン;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;1,2-ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート等のα-ジカルボニル系化合物;2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6-ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキシド系化合物;1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシ-フェニル-アセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステルなどが挙げられる。
【0256】
<架橋性(メタ)アクリルモノマー組成物の配合割合>
前記重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル基を含み、かつ重合性基を2つ以上有する架橋性(メタ)アクリルモノマーを含む組成物100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部、より好ましくは0.01~5質量部の範囲である。
((Da)光硬化性組成物;架橋性エポキシモノマー組成物)
本発明で使用できる架橋性エポキシモノマーとしては、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、及びオキセタン化合物などが挙げられ、その具体例としては以下のものを例示することができる。
・脂肪族エポキシ化合物;エチレンオキシド、2-エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’-メチレンビスオキシラン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテルなど。
・脂環族エポキシ化合物;イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス-2,2-ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテルなど。
・芳香族エポキシ化合物;レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテルなど。
・オキセタン化合物;ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、前述のオキセタン化合物のオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類など。
【0257】
また、上記以外にも、分子内にエポキシ基(オキセタン基含む)と硫黄原子とを有する含硫黄原子エポキシ系重合性モノマーも使用することができる。該含硫黄原子エポキシ系重合性モノマーは、特に屈折率向上に寄与するものであり、鎖状脂肪族系および環状脂肪族系のものがあり、その具体例は、次のとおりである。
・鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系重合性モノマー;ビス(2,3-エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3-エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)エタン、1,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルプロパン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルブタン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルペンタン、1,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-3-チアペンタン、1,6-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-2-メチルヘキサン、3,8-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-3,6-ジチアオクタン、1,2,3-トリス(2,3-エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)-1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-1-(2,3-エポキシプロピルチオ)ブタンなど。
・環状脂肪族系含硫黄原子エポキシ系重合性モノマー;1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス[<2-(2,3-エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]-1,4-ジチアン、2,5-ビス(2,3-エポキシプロピルチオメチル)-2,5-ジメチル-1,4-ジチアンなど。
【0258】
架橋性エポキシモノマーを含む光硬化性組成物は、前記のモノマーを組み合わせて使用できる。また、これらモノマーを光重合するため、下記に詳述する光カチオン発生剤を含むことが好ましい。
【0259】
(光カチオン発生剤)
光カチオン発生剤は、公知の光カチオン発生剤を使用することができる。該光カチオン発生剤としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩またはヨードニウム塩等のオニウム塩を用いることができ、特に、芳香族オニウム塩を用いることが好ましい。その他、フェロセン誘導体等の鉄-アレーン錯体や、アリールシラノール-アルミニウム錯体等も好ましく用いることができる。
【0260】
該光カチオン発生剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムホスフェート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4-ジフェニル-スルフォニオ)フェニル]スルフィド-ビス-ヘキサフルオロフォスフェート、ビス[4-ジフェニル-スルフォニオ)フェニル]スルフィド‐ビス‐ヘキサフルオロアンチモネート、(2、4-シクロペンタジエン-1-イル)[(1-メチルエチル)ベンゼン]-Fe-ヘキサフルオロホスフェート等を挙げることができる。市販品の例としては、(株)ADEKA製の「SP-150」、「SP-170」;チバガイギー社製の「Irgacure261」、「Irgacure264」;ユニオンカーバイド社製の「UVR-6974」、「UVR-6990」;米国ダウケミカル社製の「サイラキュアUVI-6970」、「サイラキュアUVI-6974」、「サイラキュアUVI-6990」;日本曹達製の「CI-2481」、「CI-2624」;サンアプロ(株)製の「CPI-100シリーズ」、「CPI-200シリーズ」、「CPI-300シリーズ」、「CPI-400シリーズ」(CPI;(登録商標))、などを挙げることができる。
【0261】
(架橋性エポキシモノマー組成物の配合割合)
以上の架橋性エポキシモノマーを含む光硬化性組成物には、これら組成物の重合硬化を促進するために前記光カチオン発生剤を配合することが好ましい。光カチオン発生剤の配合量は、架橋性エポキシモノマー組成物が十分に重合する有効な量であればよい。通常は、架橋性エポキシモノマー組成物100質量部に対して、0.01~5.0質量部である。
【0262】
((Da)光硬化性組成物;ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系光硬化性組成物)
本発明において、ポリエン化合物とは、多官能性の炭素-炭素不飽和結合を有する化合物である。また、チオール化合物とは、該ポリエン化合物と光照射時に反応する硫黄原子を分子内に有する化合物である。特に、チオール化合物は、分子内にメルカプト基を有する化合物であることが好ましい。これら化合物を含むエン/チオール系光硬化性組成物を使用することにより、ポリエン化合物とチオール化合物との付加反応(光マイケル付加反応)により硬化体が形成される。そのため、酸素による重合阻害が少なく、表面硬化性に優れた硬化体(塗膜層)を形成できる。
【0263】
(ポリエン化合物)
ポリエン化合物は、多官能性の炭素-炭素不飽和結合を有する化合物である。該ポリエン化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などを分子内に1個以上有する化合物を挙げることができるが、密着性の観点から、アリル基などを分子内に1個以上有する化合物(アリル化合物)、特にアリル基などを分子内に2個以上有する化合物を好適に用いることができる。
【0264】
具体的なポリエン化合物としては、ジアリリデンペンタエリスリトール、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、フマル酸ジアリル、グリセリンジアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジアリルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジアリルエーテル、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック又はランダムコポリマーであるグリコールのジアリルエーテル、エチレンオキサイドとテトラハイドロフランのブロック又はランダムコポリマーであるグリコールのジアリルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリアリルトリメリテート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、テトラアリルピロメリテート、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール1モルに対しエチレンオキサイドを付加して得られるポリオールのポリアリルエーテル、エポキシオリゴマーのポリアリルエーテル、ウレタンオリゴマーのポリアリルエーテル、メラミンオリゴマーのポリアリルエーテル、アリルグリシジルエーテルのエポキシ基を多価カルボン酸又はその酸無水物と反応させた化合物などのアリル化合物、さらには液状で側鎖のビニル基が70%以上水添された1,2-ポリブタジエンオリゴマーの両末端に存在する水酸基を、ジイソシアナート化合物などを介して、アリルアルコール、アリルメルカプタン等と反応させることによって得られるアリル化合物が挙げられる。
【0265】
また、前述の架橋性(メタ)アクリルモノマーの(メタ)アクリル化合物や、スチレン、α-メチルスチレン、メチルビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、α-クロロスチレン、クロロビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド、パラジビニルベンゼン、メタジビニルベンゼンなどのビニル化合物を挙げることができる。
(チオール化合物)
チオール化合物は、前記ポリエン化合物と反応する硫黄原子を分子内に有する化合物である。中でも、分子内にメルカプト基を2~6個有するチオール化合物が好ましい。このようなポリチオール化合物としては、分子内にメルカプト基を2~6個有するものであればよい。
【0266】
具体的には、炭素数2~20程度のアルカンジチオールなどの脂肪族ポリチオール化合物、キシリレンジチオールなどの芳香族ポリチオール化合物、アルコール類のハロヒドリン付加物のハロゲン原子をメルカプト基で置換してなるポリチオール化合物、ポリエポキシド化合物の硫化水素反応生成物からなるポリチオール化合物が挙げられる。また、分子内に水酸基2~6個を有する多価アルコール類と、チオグリコール酸、β-メルカプトプロピオン酸、又はβ-メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール化合物などを挙げることができる。
【0267】
中でも、反応性がよく、かつ化学構造の制御が容易な、分子内に水酸基2~6個を有する多価アルコールと、チオグリコール酸、β-メルカプトプロピオン酸、又はβ-メルカプトブタン酸とのエステル化物、特にβ-メルカプトプロピオン酸とのエステル化物、及びβ-メルカプトブタン酸とのエステル化物からなるポリチオール化合物が好適である。
【0268】
具体的には、前述の(B2)ポリ(チ)オール化合物に含まれる、ポリチオール化合物などを使用することが出来る。
【0269】
(ポリエン化合物及びチオール化合物を含むエン/チオール系光硬化性組成物;ポリエン化合物とチオール化合物の配合割合)
前記ポリエン化合物とポリチオール化合物との配合比が、ポリエン化合物の炭素-炭素二重結合とチオール化合物のチオール基とが、モル比で3:1~1:3となるように配合するのが好ましく、特にモル比で1:1となるように配合することが好ましい。
【0270】
以上のエン/チオール系光硬化性組成物には、これら組成物の重合硬化を促進するために、架橋性エポキシモノマー組成物で説明したのと同じ光カチオン発生剤を配合することもできる。光カチオン発生剤の配合量は、エン/チオール系光硬化性組成物が十分に重合する有効な量であればよい。通常は、エン/チオール系光硬化性組成物100質量部に対して、0.01~5.0質量部である。
【0271】
<(Da)光硬化性組成物に配合できるその他の成分
本発明の(Da)光硬化性組成物には、上記成分の他、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を配合することもできる。具体的には、界面活性剤、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等を配合することもできる。また、均一な塗膜層を形成するため、有機溶媒を配合することもできる。これらその他成分の配合量は、通常、モノマー成分からなる光硬化性組成物100質量部に対して、5質量部以下である。
【0272】
この他、防眩性を高めるに、(BI)フォトクロミック重合性組成物で説明した、550~600nmの範囲に吸収ピークを有する色素を配合することもできる。
【0273】
<フォトクロミック光学物品の総厚>
本発明のフォトクロミック光学物品は、1対の無機材料からなる(A)、及び(A’)プレートを、(Ba)フォトクロミック化合物、および(Bb)樹脂成分を含む(B)フォトクロミック接着層、(C)偏光フィルム、更には(Da)光硬化性組成物の硬化体からなる(D)接着層を介して接合してなるものである。この構成から得られるフォトクロミック光学物品の好ましい総厚は、目的に応じて異なるものであり、例えば眼鏡用途であれば、度付きでないサングラス用途、または度付きレンズ用途では異なる。
【0274】
度付きでないサングラス用途の場合には、前述のように外側、及び内側に使用される(A)、および(A’)プレートの厚みは1.5mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。また接着層の厚みは前述のように0.8mm以下であることが好ましく、0.05mm以上0.2mm以下にすることが最も好ましい。よって、度付きでないサングラス用途の場合のフォトクロミック光学物品の総厚は、3.8mm以下であることが好ましく、2.2mm以下であることがより好ましい。
【0275】
また、度付きレンズ用途の場合は近視用と遠視用で異なり、内側または外側に使用される一方の光学物品用ガラスプレートの厚みは1.0mm以下であることがより好ましいが、もう一方に使用される光学物品用プレートは10~20mm程度の適当な厚みのものを使用してもよく、使用者の視力に応じて研磨して使用すればよい。また接着層の厚みは前述のように0.8mm以下であることが好ましく、0.05mm以上0.2mm以下にすることが最も好ましい。よって、度付きレンズ用途の場合のフォトクロミック光学物品の総厚は、22.3mm以下であることが好ましく、11.2mm以下であることがより好ましい。その中でも、度付きレンズとして使用する際に、使用者の視力に応じて研磨した後のフォトクロミック光学物品の中心厚は2.5mm以下とすることが好ましい。
【0276】
<フォトクロミック光学物品の製造方法>
本発明において、フォトクロミック光学物品の製造方法は、特に制限されるものではない。中でも、以下の工程を実施することが好ましい。具体的には、
(A’)プレート上に、(Da)光硬化性組成物を塗布し、塗布した前記(Da)光硬化性組成物上に、(C)偏光フィルムを重ねて配置した後、
光照射して前記(Da)光硬化性組成物を硬化させて(D)接着層を形成することにより、前記(A’)光学物品用プレート、前記(D)接着層、および(C)偏光フィルムがこの順で配置された第一積層体を準備する工程を含むことが好ましい。
【0277】
なお、第一積層体を準備する工程において、(Da)光硬化性組成物は、(C)偏光フィルム上に塗布してもよいが、操作性を考慮すると(A’)プレート上に塗布することが好ましい。
【0278】
そして、前記第一積層体を準備する工程により第一積層体を製造した後、
得られた前記第一積層体の(C)偏光フィルムと(A)プレートとの間に、(Ba)フォトクロミック接着層を形成し、両者を接合することが好ましい。
【0279】
具体的には、以下の様な手順により、本発明のフォトクロミック光学物品を製造することが好ましい。
【0280】
前記の通り、(Da)光硬化性組成物を準備する。そして、(Da)光硬化性組成物を、(A’)プレートの凸面上に塗布する。(Da)光硬化性組成物の(A’)プレート上への塗布方法には、公知の方法が何ら制限なく使用可能である。中でも、スピンコート法により塗布されることが好ましい。次いで、(A’)プレートの凸面と同形状になるように事前に曲げ加工した(C)偏光フィルムを、(C)偏光フィルムの凹面と(Da)光硬化性組成物が塗布された(A’)プレートの凸面が向かい合うようにして貼り合わる。その後、光硬化することにより、(Da)光硬化性組成物を硬化し、(D)接着層を形成させる。こうすることにより、第一積層体を形成することが好ましい。
【0281】
次に、前記(BI)フォトクロミック重合性組成物を調整する。そして、(A)プレートの凹面側に所定量の(BI)フォトクロミック重合性組成物を塗布する。塗布したフォトクロミック重合性組成物上に、準備した第一積層体の偏光フィルム側(凸面側)を貼り合わせる。その後、熱硬化することにより、(BI)フォトクロミック重合性組成物を硬化し、(B)フォトクロミック接着層を形成させることにより、本発明のフォトクロミック光学物品を製造できる。この際に、(A)プレートの凹面側と、(C)偏光フィルムを積層した(A’)プレートの偏光フィルム側(凸面側)との間隔が一定となるように、テープ、ガスケットなどのスペーサーを使用することが好ましい。なお、(BI)フォトクロミック重合性組成物は、第一積層体の(C)偏光フィルム上に塗布することもできるが、操作性を考慮すると、(A)プレート上に塗布することが好ましい。
【0282】
(Da)光硬化性組成物を光により重合硬化させる場合には、重合条件の中でも、特に紫外線強度は得られる接着層の強度、密着性などの物性に影響を与える。この照度条件は、(Da)光硬化性組成物に含まれるモノマーや光重合開始剤の種類と量などによって影響を受ける。そのため、一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で、50~500mW/cmの紫外線を、0.5~5分の時間で光照射することが好ましい。また、光は、偏光フィルムによる光の吸収を抑え、十分に(Da)光硬化性組成物を光硬化させるために、(A’)プレートの凹面側(偏光フィルムが積層されていない側)から照射されることが好ましい。
【0283】
本発明においては、(D)接着層を紫外線により重合硬化した後、(A’)プレート、及び(C)偏光フィルムとの密着性をより高めるため、60~120℃の温度範囲で0.5~6時間程度加熱処理することもできる。
【0284】
(BI)フォトクロミック重合性組成物を熱により重合硬化させる場合、平滑性高い(B)フォトクロミック接着層を形成するためには、重合温度の制御を行うことが好ましい。この温度条件は、重合硬化促進剤の種類と量によって影響を受けるため、一概に限定はできないが、一般的に比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていく方法が好適である。ただし、本発明においては、薄膜の(B)フォトクロミック接着層としても優れた効果を発揮するため、比較的短時間で厳密な温度制御を行わなくとも、(BI)フォトクロミック重合性組成物を重合できる。なお、最適な重合条件は、使用する材料等によっても異なるため、重合時間、重合温度等の条件は、予備実験を行い、最適値を決定しておくことが好ましい。本発明においては、90℃以上の温度を採用した場合には、2時間以下の重合時間で重合を完結することもできる。
【0285】
前記の(BI)フォトクロミック重合性組成物を使用して、本発明のフォトクロミック光学物品を製造する場合には、その他以下の条件を採用できる。例えば、エストラマーガスケット、粘着性テープ、又はスペーサー等で保持されている光学物品用プレートの隙間に、(BI)フォトクロミック重合性組成物を注入し、十分に脱泡した後に、空気炉中での加熱によって重合硬化することが好ましい。
【0286】
ただし、(BI)フォトクロミック重合性組成物の粘度の影響もあるが、(B)フォトクロミック接着層の厚みが比較的薄い場合、例えば、0.5mm以下の場合には、前述の方法で(BI)フォトクロミック重合性組成物を注入することは困難になる場合がある。その場合には、前述の通り、(B)フォトクロミック接着層を所望の膜厚とするために必要な量の(BI)フォトクロミック重合性組成物を(A)プレートの凹面側に塗布し、スペーサー等を設けることなく、その上に第一積層体の(C)偏光フィルム面を載せる。その後、該(BI)フォトクロミック重合性組成物を重合硬化することにより、(B)フォトクロミック接着層を形成することもできる。この場合、1対の光学物品用プレートを重ね合わせただけでは、(BI)フォトクロミック重合性組成物が流出するおそれがある。そのため、流出を抑制するために、該(BI)フォトクロミック重合性組成物の25℃における粘度を100mPa・s以上にすることが好ましい。(BI)フォトクロミック重合性組成物の初期の粘度が100mPa・s未満の場合には、放置することによって、若干、モノマー成分を重合硬化させて、該粘度が100mPa・s以上とすることもできる。ただし、スペーサーを設けて製造してもよい。
【0287】
<その他の処理>
本発明のフォトクロミック光学物品は、使用する用途に応じて、その片面、もしくは両面にハードコート処理、撥水処理、防曇処理、反射防止膜等の公知の方法で後加工することもできる。
【実施例0288】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、上記の各成分及びフォトクロミック特性の評価方法等は、以下のとおりである。
【0289】
<(A)、(A’)プレート>
いずれも同一の曲面を有する光学物品用プレートである。
G1:屈折率1.52、アッベ数60、中心厚1.0mm、ベースカーブ(BC)4.0の光学物品用プレート。
G2:G1の表面を硝酸カリウムで化学強化させた光学物品用プレート。
G3:屈折率1.7、アッベ数34、中心厚4.0mm、ベースカーブ(BC)4.0の高屈折率ガラスプレート。
【0290】
<(Ba)フォトクロミック化合物>
PC1:下記式で表される化合物
【0291】
【化21】
【0292】
PC2:下記式で表される化合物
【0293】
【化22】
【0294】
PC3:Vivimed社製Reversacol Trent Blue。
PC4:Vivimed社製Reversacol Heath Green。
【0295】
なお、PC2は、例えば、国際公開第2009/146509号に記載の製造方法を参考にして製造することができる。具体的には、国際公開第2009/146509号において、2-ヒドロキシ-エトキシカルボニル基を有するナフトピラン化合物と、カルボキシ基を両末端に有するポリジメチルシロキサンとを反応させることにより、製造することができる。分子鎖の(平均)分子量は1350である。
【0296】
<(B1)成分>
ポリイソ(チオ)シアネート化合物
NBDI:ノルボルナンジイソシアネート。
H6XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン。
【0297】
<(B2)成分>
<ポリ(チ)オール化合物>
[ポリオール]
PL1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(オキシエチレンの繰り返し単位14(平均値)、オキシプロピレンの鎖繰り返し単位16(平均値)、数平均分子量1600)。
水酸基を分子の両末端に有する(水酸基を2つ有する)。
オキシエチレンの繰返し部分とオキシプロピレンの繰返し部分はブロック共重合体である。株式会社ADEKA製アデカ プルロニック(登録商標)L-34。
[ポリチオール]
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)。
DEMP:ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)。
【0298】
<(B3)モノ(チ)オール化合物>
WS-140:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル (オキシエチレンの繰り返し単位10(平均値)、オキシプロピレンの鎖繰り返し単位2(平均値)、数平均分子量750)。水酸基を一方の末端に有し、もう一方の末端には炭素数12のアルキル基を有する。
オキシエチレンの繰返し部分とオキシプロピレンの繰返し部分はランダム共重合体である。
SMP:ステアリル-3-メルカプトプロピオネート(Mw=359)。
【0299】
<(B2R)ポリロタキサンモノマー>
RX-1:ポリロタキサン
国際公開第2015/068798号に記載の方法で合成されたポリロタキサンである。軸分子が数分子量11000のポリエチレングリコールで形成され、両端の嵩高い基がアダマンチル基であり、環状分子がαシクロデキストリンであり、オキシプロピレン基を介してεカプロラクトンが平均で3.5分子開環重合したものである。
RX-1の特性を以下に示す。
αシクロデキストリンの包接量:0.25。
側鎖の修飾度:0.5。
側鎖の分子量:平均で約450。
重量平均分子量:180000。
水酸基価:85mgKOH/g。
以上の数値から、1分子中の水酸基の数(イソ(チオ)シアネート基を反応し得る水酸基の数)は、平均で270である。
なお、この(B2R)を使用した場合には、前記(B2)成分は、(B21)成分と見なすことができる。
【0300】
<(Bc)重合硬化促進剤>
[ウレタン用又はウレア用反応触媒]
C1:ジメチルジクロル錫。
【0301】
<その他の配合成分>
[安定剤]
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]。
[紫外線吸収剤]
UVA1:p-メトキシベンジリデンマロン酸ジメチルエステル。
【0302】
<フォトクロミック重合性組成物1>
下記処方により、各成分を混合して均一液(フォトクロミック重合性組成物1)を調製した。各配合量を表1に示す。また、各成分のイソ(チオ)シアネート基の総モル数、および総(チ)オール基の総モル数の比を表2に示す。
処方;
(Ba)成分 フォトクロミック化合物:PC1 0.3質量部
(B1)成分 ポリイソ(チオ)シアネート化合物:NBDI 42質量部
(B2)成分 ポリ(チ)オール化合物:DEMP 43質量部
(B2)成分 ポリ(チ)オール化合物:DEMP 15質量部
(Bc) 硬化促進剤:C1 0.05質量部
安定剤: HP 0.1質量部。
【0303】
<フォトクロミック重合性組成物2~4>
表1に示すフォトクロミック化合物((Ba)成分)、ポリイソ(チオ)シアネート化合物((B1)分)、ポリ(チ)オール化合物((B2)成分又は(B21)成分)、モノ(チ)オール化合物((B3)成分)、ポリロタキサンモノマー((B2R)成分)、重合硬化促進剤((Bc)成分)、及びその他の配合成分を用い、フォトクロミック重合性組成物1と同様にして、フォトクロミック重合性組成物2~4を調整した。
【0304】
【表1】
【0305】
【表2】
【0306】
<(C)偏光フィルム>
偏光フィルム;BC4.0に曲げ加工を実施した2色性染料で染色したグレー色の偏光フィルムを使用した。厚み27μm、視感透過率42.5%、偏光度99.2%であった。
【0307】
<(Da)光硬化性組成物1>
下記処方により、各成分を混合して均一液(光硬化性組成物1。)を調製した。各配合量を表3に示す。
処方;
トリメチロールプロパントリアクリレート: 40質量部
平均分子量708のポリエチレングリコールジアクリレート: 45質量部
ヒドロキシメタアクリレート: 15質量部
フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(商品名:Omnirad819、IGM社製)(重合開始剤): 0.1質量部。
【0308】
<(Da)光硬化性組成物2~4>
表3示す各種モノマー等を用いて、光硬化性組成物1と同様にして、光硬化性組成物2~4を調整した。
【0309】
【表3】
【0310】
<実施例1>
光硬化性組成物1を、屈折率1.52、アッベ数60、中心厚1.0mm、BC4.0の(A’)プレート G1(1)の凸面上に、膜厚が0.05mm程度になるようにスピンコーター(1H-DX2、MIKASA製)を用いて塗布した。次いで、光硬化性組成物1を塗布した面に、BC4.0に曲げ加工を実施した2色性染料で染色したグレー色の偏光フィルム(厚み27μm、視感透過率42.5%、偏光度99.2%)を貼りつけた。その後、G1(1)表面の波長365nmにおける出力が100mW/cmになるように調整したフュージョンUVシステムズ社製のDバルブを搭載したF3000SQを用いて、G1(1)の凹面側から60秒間光照射して塗膜を硬化させた。こうすることにより、(D)接着層の厚みが0.05mmの第一積層体を得た。
【0311】
次いで、もう1枚の(A)プレート G1(2)を用意し、このG1の凹面側にフォトクロミック重合性組成物1を約0.8g注ぎ、ガスケット(G1(2)凹面側とG1(1)上の偏光フィルム間の隙間が0.1mmとなるようにスペーサーを有するもの)を介して、先に準備した偏光フィルムを凸面に有する第一積層体を、G1(2)の凹面と向かい合うようにガスケットにはめ込んだ。
【0312】
その後、50℃に加温したオーブン内に30分間放置した後に、120℃で2時間加熱してフォトクロミック重合性組成物1を重合硬化した。ガスケットを取り除くことにより、0.1mm厚の(B)フォトクロミック接着層を有する、フォトクロミック光学物品を得た。
【0313】
得られたフォトクロミック光学物品を以下の評価項目で測定した結果、フォトクロミック光学物品の発色時の視感透過率が10%、退色速度が60秒、密着性が1であった。なお、発色時の発色濃度、退色速度、及び密着性に関しては以下のように評価した。
【0314】
〔評価項目〕
(1)視感透過率(フォトクロミック層が発色している時)
得られたフォトクロミック光学物品を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、フォトクロミック光学物品の視感透過率を測定した。
【0315】
上記視感透過率の測定には、(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)を使用した。
【0316】
(2)退色速度〔t1/2(sec.)〕
得られたフォトクロミック光学物品を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大吸収波長における吸光度が{ε(120)-ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0317】
(3)密着性
得られたフォトクロミック光学物品の接着層部分に、幅5mmの金属片を10kgfの力で押しつけた際の剥離の有無で密着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
1:密着性が非常に良好;得られた光学物品を100℃の蒸留水中に5時間浸漬した後であっても剥離が見られなかった。
2:密着性が良好;得られた光学物品を100℃の蒸留水中に3時間浸漬した後では剥離が見られなかったが、5時間浸漬後に剥離が見られた。
【0318】
<実施例2~7>
表3に示した光学物品用ガラスプレート、フォトクロミック重合性組成物、及び光硬化性組成物を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック光学物品を作製し、評価を行なった。評価結果を表4に示す。
【0319】
<比較例1>
実施例1の光硬化性組成物1の代わりに、(Ba)成分(PC1)を含まないフォトクロミック重合性組成物1を使用し、光硬化性組成物の代わりに熱硬化を実施した以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック光学物品を作製し、評価を行なった。評価結果を表4に示す。なお、熱硬化の条件は実施例1のフォトクロミック重合性組成物1を硬化させたのと同じ条件を採用した。
【0320】
【表4】
【0321】
実施例1~7から明らかな通り、本発明のフォトクロミック光学物品は、フォトクロミック特性、及び密着性に優れている。一方、比較例1は、フォトクロミック特性は良好であるものの、密着性がやや劣る結果となった。
【符号の説明】
【0322】
1 (A)無機材料からなる光学物品用プレート
1’ (A’)無機材料からなる光学物品用プレート
2 (B)フォトクロミック接着層
3 (C)偏光フィルム
4 (D)接着層
5 フォトクロミック光学物品
図1