(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166969
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ウレタンプレポリマー組成物溶液
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20221027BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20221027BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20221027BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08L75/04
C08G18/10
C08G18/08 038
C08K5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072435
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 義久
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏秀
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK021
4J002ED016
4J002FD206
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J034CE01
4J034DA01
4J034DB03
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4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG04
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4J034DG18
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC37
4J034HC45
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034JA44
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KC35
4J034KD02
4J034KD08
4J034KE02
4J034MA12
4J034QB08
4J034QB11
4J034RA07
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】適度な着色を有し視認性が良好で高透明なウレタンプレポリマー組成物溶液であって、良好な硬化性で高い強度のウレタン硬化物の迅速な形成に資するウレタンプレポリマー組成物溶液、良外観で適度な着色を有して視認性が高い高透明なウレタン硬化物を提供する。
【解決手段】NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒を含むウレタンプレポリマー組成物溶液であって、
前記ウレタンプレポリマー(D)が少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート(C)の反応物であり、
当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が0.1~20重量%の範囲、且つウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%以上99.9重量%以下であり、
ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が2以上13以下の範囲である、
ことを特徴とするウレタンプレポリマー組成物溶液。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒を含むウレタンプレポリマー組成物溶液であって、
前記ウレタンプレポリマー(D)がポリオール(A)とポリイソシアネート(C)の反応物であり、
sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が0.1~20重量%の範囲であり、
ウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%以上99.9重量%以下であり、
ガードナー色数が2以上13以下の範囲である、
ウレタンプレポリマー組成物溶液。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー(D)を形成するポリオール(A)の有する水酸基の総和とポリイソシアネートの有するNCO基の総和のモル比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の範囲である、請求項1に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液。
【請求項3】
70℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲である、請求項1または請求項2に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液。
【請求項4】
金属成分を含むウレタン化触媒の含有量が、前記ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して0.001~0.05重量部の範囲である、請求項1乃至請求項3に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液を用いてなるポリウレタン硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載のウレタン硬化物からなるポリウレタンシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウレタンプレポリマー組成物溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
片末端に不飽和基を有する副生モノオール(以下、不飽和モノオールと記す)を多量に含むポリアルキレンオキシドが、ポリウレタンの原料として用いられている。しかしながら、このポリアルキレンオキシドを用いてポリウレタンを得ようとすると、イソシアネート化合物との反応に伴う硬化(固化)に時間を要して生産性が損なわれるという問題が生じる。
【0003】
更に、このような不飽和モノオールを多量に含むポリアルキレンオキシドから得られるポリウレタンは、高分子量になりづらく、引張破断伸びが小さく、引張破断強度も小さい。これに対して、不飽和モノオールを多量に含むポリアルキレンオキシドでも、イソシアネート基の平均官能基数が多いイソシアネート化合物と反応させることで高分子量のポリウレタンを得ることができる。しかしながら、この場合、ポリウレタンは直鎖状に高分子量化するのではなく、密な架橋構造を有する架橋体となるので、得られるポリウレタンは引張破断伸びが小さく、引張破断強度が小さくなってしまう。
【0004】
一方、不飽和モノオールは比較的低分子量なので、不飽和モノオールが多量に含まれた従来のポリアルキレンオキシドを含む組成物は粘度が低く、それらの組成物からポリウレタンを得るために塗工機などで塗工した際には、塗工しやすいという利点がある。
【0005】
ここで、特許文献1は、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドと芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド、1つの水酸基とエチレンオキシド残基を有するポリアルキレンオキシドを含むウレタン形成性組成物、およびそれを用いたウレタンプレポリマーを含むウレタン形成組成物を用いることで、塗工性と生産性が良好で、引張強度の高いポリウレタンが得られることを開示している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のこれらのポリウレタン形成性組成物、およびそれを用いたウレタンプレポリマーは、高い強度を発現するため、着色が強い芳香族アミンポリオールを多く用いるため、得られるウレタンプレポリマーの着色が強すぎて、不溶物や残渣の視認性が十分ではない場合があった。
【0007】
また、特許文献2は、不飽和モノオールが少ないポリアルキレンオキシドとポリテトラメチレングリコール、1つの水酸基とエチレンオキシド残基を有するポリアルキレンオキシドを含むウレタン形成性組成物、およびそれを用いたウレタンプレポリマーを含むウレタン形成組成物を用いることで、塗工性と生産性が良好で、引張強度の高いポリウレタンが得られることを開示している。一方、特許文献2に記載のこれらのポリウレタン形成性組成物、およびそれを用いたウレタンプレポリマーは、高い強度を発現するためポリテトラメチレングリコールを多く用いているが、得られる組成物は無色であり、塗工面の平滑性など、塗膜の視認性が悪い課題があった。
【0008】
そのため、適度な着色を有して視認性が良好な高透明のウレタンプレポリマー組成物溶液であって、良外観で高透明で高い強度の高透明なウレタン硬化物を形成しうるウレタンプレポリマー組成物溶液が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2020-158551号公報
【特許文献2】特開2020-76011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
適度な着色を有し不溶物や残渣に対する視認性が良好で高透明なウレタンプレポリマー組成物溶液であって、得られるウレタン硬化物が適度な着色を有して視認性が良好で、良外観で高い強度の高透明なウレタン硬化物の迅速な形成に資するウレタンプレポリマー組成物溶液を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
各態様は以下に示す[1]~[6]である。
[1]NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒を含むウレタンプレポリマー組成物溶液であって、
前記ウレタンプレポリマー(D)が少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート(C)の反応物であり、
当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が0.1~20重量%の範囲、且つウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%以上99.9重量%以下であり、
ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が2以上13以下の範囲である、
ウレタンプレポリマー組成物溶液。
[2]前記ウレタンプレポリマー(D)を形成するポリオール(A)の有する水酸基の総和とポリイソシアネートの有するNCO基の総和のモル比率(NCO/OH比)が1.30~5.00の範囲である、[1]に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液。
[3]前記ウレタンプレポリマー組成物溶液の70℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲である、[1]または[2]に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液。
[4]金属成分を含むウレタン化触媒の含有量が前記ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して0.001~0.05重量部の範囲で含む、[1]乃至[3]に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液。
[5][1]乃至[4]に記載のウレタンプレポリマー組成物溶液を用いてなるポリウレタン硬化物。
[6][5]に記載のウレタン硬化物からなるポリウレタンシート。
【発明の効果】
【0012】
高透明で適度な着色を有して不溶物や残渣に対する視認性が良好であり、得られるウレタン硬化物が適度な着色を有して視認性が良好で、良外観で高い強度の高透明なウレタン硬化物の迅速な形成に資するウレタンプレポリマー組成物溶液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための例示的な態様を詳細に説明する。
【0014】
一態様にかかるウレタンプレポリマー組成物溶液は、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒を含むウレタンプレポリマー組成物溶液であって、
前記ウレタンプレポリマー(D)が少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート(C)の反応物であり、
当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が0.1~20重量%の範囲、且つウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%以上99.9重量%以下であり、
ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が2以上13以下の範囲である、
ウレタンプレポリマー組成物溶液に係るものである。
<ウレタンプレポリマー(D)>
上記ウレタンプレポリマー組成物溶液に必須成分として含まれるウレタンプレポリマー(D)は、少なくともポリオール(A)とポリイソシアネート(C)の反応物であり、NCO基末端であることを特徴とする。ウレタンプレポリマー(D)の形成には、必要に応じてウレタン化触媒、溶剤、可塑剤、レベリング剤、その他の添加剤を加えてもよい。
【0015】
NCO末端ウレタンプレポリマー(D)を形成するポリオールの有する水酸基の総和とポリイソシアネートの有するNCO基の総和のモル比率(NCO/OH比)は、特に限定されないが、1.30~5.00の範囲であることが好ましい。NCO/OH比が1.30~5.00の範囲となる量比で混合することで、適度な粘度を有してハンドリング性が良好となりやすく、ウレタンプレポリマー(D)および得られるウレタン硬化物の透明性がより向上しやすい。
【0016】
なかでも、ポリオール(A)とポリイソシアネート(C)がモル比で1:2で反応した構造を主となって、NCO末端ウレタンプレポリマー(D)中に連鎖的に反応した高分子量体や遊離(未反応)のポリイソシアネート(C)を含みにくく、得られるウレタン硬化物の透明性が顕著に良好となりやすいため、ポリオール(A)を含むポリオールの活性水素基の総量に対するポリイソシアネート(C)のNCO基の比率(NCO/OH比)が1.60~4.40の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.90~3.60の範囲である。
【0017】
なかでも、ポリイソシアネート(C)としてヘキサメチレンジイソシアネートやその誘導体などのNCO基の反応性に差がないポリイソシアネート(C)を用いる場合、NCO/OH比が2.20~3.60の範囲、ポリイソシアネート(C)としてイソホロンジイソシアネートを用いる場合、NCO/OH比が2.00~3.10の範囲でウレタンプレポリマー(D)を形成することが、ゲル化や高粘度化を抑制しつつ透明性が良好となりやすいため最も好ましい。
【0018】
更に、少量の芳香族アミン残基やシュークローズ残基などの剛直な構造を有するポリアルキレンオキシド(B)を用いることで、遊離(未反応)のポリイソシアネート(C)を低減でき、ウレタン硬化物や活性水素基末端のウレタンプレポリマーを形成する際などに連鎖的な反応を抑制しやすく、得られるウレタン硬化物が高い透明性を発現しやすいため好ましい。また、少量のポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上のモノオール(AC)を用いることで、遊離(未反応)のポリイソシアネート(C)を低減でき、塗工機などで塗工する際の塗工性が特に優れるため好ましい。
【0019】
反応性基を有するシリコーン成分(モノオールやポリオール、ポリアミン)や反応性基を有するフッ素成分等は用いないことが好ましいが、用いる場合はNCO末端ウレタンプレポリマー(D)の形成に用いることで分子鎖に取り込まれやすく汚染性の悪化が少なくなりやすいことから好ましい。
【0020】
ウレタンプレポリマー(D)の調製には、原料を均一に分散、反応することができる方法であれば特に限定されるものではなく、従来公知の様々な撹拌方法を用いることができ、例えば、撹拌機を用いて撹拌する方法が挙げられる。撹拌機としては、例えば、汎用撹拌機、自転公転ミキサー、ディスパー分散機、ディゾルバー、ニーダー、ミキサー、ラボプラストミル、プラネタリーミキサー等を挙げることができる。
【0021】
ウレタンプレポリマー(D)に含まれるポリオール(A)の残基の含有量は特に限定されないが、良好な塗工性と高い透明性を発現しやすいため30重量%以上99重量%以下であることが好ましく、更に好ましくはより高い透明性と高い強度を両立しやすいことから、50重量%以上95重量%以下の範囲であり、最も好ましくは70重量%以上90重量%以下の範囲である。当該含有量はNMR法またはコリッシュ分解による解析等により算出できるが、原料が分かっている場合、添加量より計算してもよい。
【0022】
ウレタンプレポリマー(D)に含まれるポリイソシアネート(C)の残基の含有量は特に限定されないが、高い強度を発現しやすいため0.5重量%以上30重量%以下であることが好ましく、更に好ましくはより高い透明性と高い強度を両立しやすいことから、2重量%以上20重量%以下の範囲であり、最も好ましくは4重量%以上12重量%以下の範囲である。当該含有量はNMR法またはコリッシュ分解による解析等により算出できるが、原料が分かっている場合、添加量より計算してもよい。
【0023】
ウレタンプレポリマー(D)を形成する際に、ポリオール(A)に加えて、芳香族アミン残基やシュークローズ残基などの剛直な構造を有するポリアルキレンオキシド(B)やモノオール(AC)を加える場合、ポリアルキレンオキシド(B)やその他モノオール(AC)の残基の総量が30重量%以下の範囲であることが好ましい。なかでも、ハンドリング性が良好で、より高い透明性を発現しやすく更に高い強度を発現しやすいため、0.1~20重量%以下の範囲であることが好ましく、0.5~15重量%の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.5~8重量%の範囲である。
【0024】
また着色が強くなりやすく、ウレタンプレポリマー組成物溶液内の視認性が悪化しやすいため、芳香族アミン残基やシュークローズ残基などの剛直な構造を有するポリアルキレンオキシド(B)の残基は10重量%以下であることが好ましい。
【0025】
ウレタンプレポリマー(D)は、ポリオール(A)の残基、ポリイソシアネート(C)の残基、並びに例示したポリアルキレンオキシド(B)の残基やモノオール(AC)の残基に加えてその他の残基を含んでもよく、特に限定されないが、相溶性の悪化や粘度が上昇して、透明性の低下やハンドリング性の悪化がしやすいため5重量%以下であることが好ましい。
【0026】
ウレタンプレポリマー(D)は、使用するポリオール中に不飽和基を有するモノオール構造を含む場合があり、その残基である不飽和基を含む場合があるが、特に限定されず使用する原料により異なるが、より高い硬化性を示しやすいことから不飽和基の含有量は、0.0001meq/g~100meq/gの範囲であることが好ましい。実質的に反応性基として作用可能なウレタンアクリレート基やウレタンメタクリレート基などの高反応性の不飽和基を有さない場合、より高い硬化性を示しやすいことから不飽和基の含有量は0.0003meq/g~0.050meq/gの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.0005meq/g~0.010meq/gの範囲であり、最も好ましくは0.0007meq/g~0.002meq/gの範囲である。不飽和基の含有量はNMR法等種々の解析方法で解析することができる。
【0027】
NCO末端ウレタンプレポリマー(D)の分子量は、特に限定されないが、ハンドリング性がより良好となりやすいことからゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定した重量平均分子量が2500以上500000以下の範囲であることが好ましく、5000以上200000以下の範囲であることが更に好ましく、10000以上100000以下の範囲であることが好ましい。
<ポリオール(A)>
上記ウレタンプレポリマー(D)に用いるポリオール(A)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、マンニッヒポリオール、脂肪族ポリアミンポリオール、ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、フッ素化ポリオール、シリコーン含有ポリオール、リン系ポリオール、ポリアルキレンオキシド等の市販されているポリオール類、および、これらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、生産性に優れ、高透明で適度な粘度を有しハンドリング性が良好なウレタン形成性組成物を得やすいために、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、脂肪族ポリアミンポリオール、ポリアルキレンオキシド、および、これらの2種以上の混合物であることが好ましい。
【0029】
ポリオール(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、適度な粘度を有してハンドリング性に優れ、かつ塗工性や濡れ性が良好となりやすいため、2000以上であることが好ましい。なかでも、ポリオール(A)の好ましい数平均分子量としては、2500以上30000未満であり、更に好ましくは3000以上13000未満であり、最も好ましくは3500以上9000未満である。なお、ポリオール(A)の数平均分子量は、JIS K-1557-1に記載の方法により算出したポリオール(A)の水酸基価と、ポリオール(A)1分子中の水酸基数と、から算出することができる。ポリオール(A)の水酸基価(mgKOH/g)としては、特に限定されないが、好ましくは3以上250以下であり、更に好ましくは5以上180以下であり、最も好ましくは8以上70以下である。
【0030】
ポリオール(A)の25℃における粘度は、特に限定されず、用途により適宜選択されるが、好ましくは100mPa・s以上200000mPa・s以下であり、更に好ましくは200mPa・s以上10000mPa・s以下である。ポリオール(A)の25℃における粘度が100mPa・s以上200000mPa・s以下であれば、ポリウレタン製品を得るために塗工機などで塗工する際に、塗工しやすくなるので好ましい。ここで、25℃での「粘度」とは、JIS K1557-5 6.2.3項に準拠し、コーン・プレート回転粘度計を用いて、せん断速度0.1(1/s)で測定した値である。
【0031】
ポリオール(A)は、低温から高温まで流動性に優れることから炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基を含むことが好ましい。炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として特に限定されず、例えば、炭素数3~20のアルキレンオキシド残基を挙げることができる。具体的には、プロピレンオキシド残基、1,2-ブチレンオキシド残基、2,3-ブチレンオキシド残基、イソブチレンオキシド残基、ブタジエンモノオキシド残基、ペンテンオキシド残基、スチレンオキシド残基、シクロヘキセンオキシド残基等が挙げられる。これらのアルキレンオキシド残基の中でも、ポリオール(A)を得るための原料の入手が容易で、得られるポリオール(A)の工業的価値が高いことから、プロピレンオキシド残基が好ましい。更に好ましくは炭素数3以上のアルキレンオキシド残基を有するポリアルキレンオキシドを50重量%以上含むことが好ましい。
【0032】
また、ポリオール(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基として、単一のアルキレンオキシド残基のみを含んでいてもよく、2種類以上のアルキレンオキシド残基を含んでいてもよい。なお、2種以上をアルキレンオキシド残基が含まれる場合は、例えば、1種のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものに、それ以外のアルキレンオキシド残基が連鎖的に繋がったものであってもよく、2種以上のアルキレンオキシド残基がランダムに繋がったものでもよい。さらに、ポリオール(A)は、炭素数が3以上のアルキレンオキシド残基に加えて、炭素数2のエチレンオキシド残基を含んでいてもよい。
【0033】
また、ポリオール(A)の水酸基数は特には限定されないが、1分子中に2つ以上の水酸基を有することが好ましく、2つ以上6つ以下であることが更に好ましく、最も好ましくは1分子中の水酸基数が2つ以上3つ以下である。ポリオール(A)の1分子中の水酸基数が6以下であると、得られるウレタン硬化物の架橋構造が密になり難く、引張破断伸びと強度が更に大きくなるため、好ましい。
【0034】
ポリオール(A)の水酸基の1級比率は、特に限定されないが、0~90%の範囲であることが好ましい。触媒としてトリフルオロボランやトリスペンタフルオロフェニルボラン等のカチオン重合系で合成する場合、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシド以外のプロピレンオキシド等を用いても1級比率は高くなりやすく、水酸化カリウム等の塩基系触媒や複合金属シアン化物(DMC)触媒等の金属系触媒を用いる場合、1級比率は低くなりやすいが、末端構造を含め特に限定されず、いずれも好適に使用することができる。
【0035】
また、ポリオール(A)は、ウレタンプレポリマー(D)の製造が容易になることから、常温で液状であることが好ましい。
【0036】
ポリオール(A)の不飽和度は、不飽和モノオールが少ないポリオールの使用有無によらずプレポリマーやウレタン硬化物を高透明化しやすいため特に限定されないが、芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B)等の多官能のポリオールの増量や2官能でもポリプロピレンオキシドより剛直な骨格を有するポリオールが多く必要となりやすいため、0.010meq/g以下であることが好ましく、更に好ましくは0.007meq/g以下であり、最も好ましくは0.004meq/g以下である。このような不飽和度の低いポリオール(A)は、特に限定されないが、イミノフォスファゼニウム塩とルイス酸触媒を用いて活性水素化合物にアルキレンオキシドを付加することで製造することができる。
【0037】
ポリオール(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、分子量分布の狭いポリアルキレンオキシドの使用有無によらずプレポリマーやウレタン硬化物を高透明化しやすいため特に限定されないが、プレポリマーの分子量分布が狭くなりやすくハンドリング性に優れやすいため、1.059以下であることが好ましく、更に好ましくは1.039以下であり、最も好ましくは1.004~1.029以下である。
【0038】
ポリオール(A)は、水分値が2000ppm以下であることが好ましいが、脱水操作等で操作が煩雑となるため、用途等に応じて選択することができる。
【0039】
ウレタンプレポリマー(D)に少量用いることが好ましい剛直な構造を有するポリアルキレンオキシド(B)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ソルビトールポリオール、シュークローズポリオール、芳香族アミンポリオール、若しくはこれらの2種類以上の混合物が挙げられ好適に使用することができる。
【0040】
ウレタンプレポリマー(D)に少量用いることが好ましいモノオール(AC)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオキシアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレングリコールモノフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましく、なかでも塗工性に優れやすく、高い透明性を維持しつつ、得られるウレタンの汚染性が低くタック性が低くなりやすいことから、分子量250以上1300以下のポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテルであることが好ましい。
<ポリイソシアネート(C)>
ウレタンプレポリマー(D)に用いるポリイソシアネート(C)としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の例示したポリイソシアネートが挙げられ、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、これらとポリオールやモノオールとが反応することで得られる変性イソシアネート、ならびに、これらの2種以上の混合物が挙げられる。更に、これらのイソシアネートにウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基又はオキサゾリドン基を含む変性物やポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の縮合体が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、生産性に優れ、高透明で着色の少ないウレタン形成性組成物を得やすいために、ポリイソシアネート(C)として脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、または、これらの変性体、若しくはこれらの2種類以上の混合物を含むことが好ましい。
【0042】
このようなポリイソシアネート(C)としては、特に限定されないが、例えば、以下の例示したポリイソシアネート(C)が挙げられ、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、脂肪族イソシアネート含有のプレポリマー、脂環式イソシアネートの含有プレポリマー、または、これらのイソシアネートのウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、イソシアヌレート基、アミド基、イミド基、ウレトンイミン基、ウレトジオン基もしくはオキサゾリドン基含有変性物がより好ましい。これらのイソシアネートは、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上の混合物でもよい。
【0043】
なかでも、ウレタンプレポリマーの粘度の経時での上昇が少なく貯蔵安定性に優れるため、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートやこれらの変性体を含むことが好ましい。また、反応性が異なる1級NCO基と2級NCO基を有し、連鎖反応による高分子量化を抑制しやすく塗工性の悪化や高粘調化の抑制が容易でありウレタンプレポリマーおよびそれを用いて得られるウレタン硬化物の透明性がより顕著に良好となりやすいため、イソホロンジイソシアネートを含むことも好ましい。したがって、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートやこれらの変性体、イソホロンジイソシアネートから選ばれるいずれか1種以上を含むことが好ましい。
<金属成分を含むウレタン化触媒>
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、金属成分を含むウレタン化触媒を必須成分として含有する。金属成分を含むウレタン化触媒を含まずに視認性を向上するためガードナー色数を2以上13以下の範囲に調整する場合、ウレタン硬化物の迅速な形成(硬化性)と視認性の両立が困難となり、使用が困難である。
【0044】
なかでも、効率的にNCO末端のウレタンプレポリマー(D)を形成しやすく、かつ副反応が少なく、より高透明で適度な着色を有するウレタンプレポリマー組成物およびウレタン硬化物を得られやすいため、金属成分を含むウレタン化触媒の含有量が、前記ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して0.001~0.05重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは金属成分を含むウレタン化触媒が0.003~0.045重量部の範囲であり、最も好ましくは0.005~0.03重量部の範囲である。
【0045】
金属成分を含むウレタン化触媒としては、金属成分を含みウレタン化活性を示す化合物であれば特に限定されないが、BiやSnを含む金属触媒は着色が小さく、またイソシアネート架橋剤やポリオール架橋剤などと混合した際にアセチルアセトンなどの遅延剤を添加しても可使時間が短くなりやすいため、Fe、Zr、Ti、Alのいずれか一つ以上の金属を含む有機金属化合物であることが好ましい。なかでも、適度な着色と触媒活性を有し、着色の度合いや反応性を調整しやすいFeキレート触媒、Zrキレート触媒、Tiキレート触媒、Alキレート触媒等の金属キレート触媒の1種または2種以上であることが更に好ましく、最も好ましくは適度な着色を与えて視認性を向上しやすく良好な触媒活性を示して迅速な硬化を促進しやすいためFeキレート触媒を単独で使用することである。
【0046】
特に限定されないが、例えば、Feキレート触媒としてはトリスアセチルアセトネート鉄等、Zrキレート触媒としてはジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート等、Tiキレート触媒としては、チタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート等、Alキレート触媒としてはアルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
<グリコールエーテル系溶媒>
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、sp値が8.0以上のグリコールエーテル系溶媒を必須成分として含有し、当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が0.1~20重量%の範囲、且つウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%以上99.9重量%以下であることを特徴とする。なおsp値は各原子団の凝集エネルギーとモル分子容により求めるFedors法で算出した値を指す(参考文献:「塗料の研究、No.152、2010年10月号」)。Fedors法では、sp値は凝集エネルギー密度の平方根で定義される。具体的には、sp値は以下の式で定義される。
【0047】
δ=(ΔE/V)1/2
上記式においてδはsp値((cal/cm3)1/2)、ΔEは凝集エネルギー(cal/mol)、Vは溶媒のモル分子容(cm3/mol)を意味する。
【0048】
Fedors法では、上記した凝集エネルギーとモル分子容がいずれも、溶媒に含まれる置換基の種類と数に依存していると考えられている。従って、凝集エネルギーの算出は、各置換基が有する凝集エネルギーと分子容から、置換基の個数も考慮して算出される。
【0049】
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、sp値が8.0以上のグリコールエーテル系溶媒を含み、当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が0.1~20重量%の範囲、且つウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%以上99.9重量%以下とすることで、金属成分を含むウレタン化触媒を用いても、乾燥硬化時に系中に留まり相溶性を保持する期間が長くなって反応硬化させる際に発生しやすい硬化収縮を安定的に抑制し良好な成形性でシワのない良好な外観のウレタンを形成することができるため、高固形分でsp値が8.0以上のグリコールエーテル系溶媒が0.1重量%未満の場合、高固形分で視認性を向上するためガードナー色数を2以上13以下の範囲に調整した際にシワが発生しやすく、また塗膜も白濁して安定的に良外観のウレタン硬化物を得ることが困難となる。また当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量が20重量%を超えると、乾燥硬化時にウレタン硬化物中にグリコールエーテル溶媒が残存しやすく、硬化性や強度が低下するとともにブリード汚染の懸念があるため使用が困難となる。
【0050】
当該ウレタンプレポリマー組成物溶液中のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒の含有量は、0.1~20重量%の範囲であれば特に限定されないが、乾燥硬化時に系中に留まり相溶性を保持する期間が長くなって反応硬化させる際に発生しやすい硬化収縮をより安定的に抑制しつつ、ウレタン硬化物中に残存して物性が悪化しにくいため、0.5~15重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1.0~10重量%の範囲であり、最も好ましくは3.0~8.0重量%の範囲である。
【0051】
グリコールエーテル系溶媒の構造としては、sp値が8.0以上であれば特に限定されず、任意の末端構造、任意のグリコールエーテル構造を含むことができるが、ウレタンを形成する際にイソシアネートと反応して取り込まれ透明性が悪化しやすいため水酸基やアミノ基等の活性水素基を含まないことが好ましく、例えばジエチレングリコールジエチルエーテル(sp値8.2、沸点189℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.4、沸点216℃)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(sp値8.1、沸点176℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.1、沸点162℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.5、沸点275℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(sp値8.7、沸点146℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート(sp値9.0、沸点145℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(sp値8.9、沸点188℃)、メトキシブチルアセタート(sp値8.7、沸点171℃)、トリアセチン(sp値10.2、沸点260℃)、等が挙げられ、なかでもジエチレングリコールジエチルエーテル(sp値8.2、沸点189℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(sp値8.4、沸点216℃)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(sp値8.9、沸点188℃)の何れか1種以上を含むことが最も好ましい。更には酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンを併用することで成形性を調整しやすい。
<ウレタンプレポリマー組成物溶液>
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶媒を必須成分として含み、ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が2以上13以下の範囲であることを特徴とする。
【0052】
ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が2未満の場合、ウレタンプレポリマー組成物溶液の残液量などの視認性が悪く迅速な溶液の管理や溶液中の不溶物や付着物の迅速な検出が困難であるとともに得られるウレタン塗膜やウレタン硬化物に適度な着色を有さず塗膜の平滑性などの迅速な評価が困難であるため使用が困難であり、またガードナー色数が13を超える場合、着色が強すぎて溶液内の視認性が低下するため残渣の迅速な検出が困難であるため使用が困難である。
【0053】
更に着色の小さい金属成分を含むウレタン化触媒(BiやSnなど)を含み、ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が2未満となる場合、着色成分を含む必要があるがウレタン物性を悪化させやすくなるとともに、触媒の使用量等にもよるがアセチルアセトンなどの反応遅延剤を添加してもイソシアネート架橋剤と混合後に可使時間が長くなりづらく、生産性や経済性を悪化するため使用が困難である。
【0054】
また金属成分を含むウレタン化触媒を含まず、着色の大きいポリオールやアミン触媒を多く用いてガードナー色数が2以上13以下の範囲に調整した場合、適度な着色を有して視認性は良好であるものの、水分等による副反応により透明性が悪化しやすく、また硬化性が不十分となって高い強度のウレタン硬化物を安定的に得られないため使用が困難である。
【0055】
なかでも、ウレタンプレポリマー組成物溶液の視認性がより良好で、得られるウレタン塗膜の視認性がより良好となりやすいため、ガードナー色数が2以上10以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは3以上8以下の範囲であり、最も好ましくは4以上7以下の範囲である。ウレタンプレポリマー組成物溶液のガードナー色数が上記の範囲内であると適度な着色で組成物溶液の視認性が向上し、且つ塗工直後のウレタン塗膜の着色度により塗膜面外観や平滑性を迅速に判断できる。そのため、ウレタンプレポリマー組成物溶液中の不溶物や残渣をより迅速に判断でき、塗工面の視認性もより良好となる。
【0056】
ウレタンプレポリマー組成物溶液中のウレタンプレポリマー(D)の濃度は、75重量%以上99.9重量%以下であれば、特に限定されないが、よりガードナー色数を調整して視認性を向上しやすくハンドリング性も良好となって視認性とハンドリング性を両立しやすいため、80~99重量%の範囲であることが好ましく、更に好ましくは85~97重量%の範囲であり、最も好ましくは89~96重量%の範囲である。ウレタンプレポリマー(D)の濃度が75重量%を下回ると溶剤の使用量が多く経済性が悪化するとともに、粘度の低下や液の弾性の上昇により、厚みのある塗膜の均一な形成が困難となるため使用が困難となる。
【0057】
ウレタンプレポリマー(D)の形成には、必要に応じてその他ウレタン化触媒、その他溶剤、可塑剤、レベリング剤、その他の添加剤を加えてもよく、ウレタンプレポリマー組成物溶液中にそのまま残存して含んでいてもよい。また、特に限定されないが、ウレタンプレポリマー組成物溶液中には、ポリオール、ポリイソシアネート、金属成分を含むウレタン化触媒、トリアゾール誘導体以外の着色性の成分を加えてもよいがブリードの懸念があるため含まないことが好ましく、含む場合は添加量が10重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは3重量%以下の範囲である。
【0058】
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、保存安定性に優れる水酸基末端のウレタンプレポリマーの形成や硬化反応時に液流れがしにくく成形性に優れるなど、硬化を含む反応時を中心としてハンドリング性がより良好となりやすいことから、70℃における粘度が0.1~30Pa・sの範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.3~20Pa・sの範囲である。
【0059】
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、特に限定されないが、25℃条件にて、粘度が1~100Pa・s、且つ液外観が透明(1cm厚みでのHazeが15%以下)であることが好ましい。なかでも、好ましい性状としては、添加剤を混合しやすく、架橋剤の混合や塗工などのハンドリング性により優れウレタン硬化物が安定的に高透明になりやすいことから、25℃条件にて、粘度が3~50Pa・sの範囲であり、さらに好ましくは5~30Pa・sの範囲である。粘度が高い場合、溶剤や添加剤を加えて粘度を低減調整してもよく、また粘度が低い場合、濃縮等により増粘調整してもよい。
【0060】
ウレタンプレポリマー組成物溶液の透明性は特に限定されないが、より視認性が良好となりやすいことから目視上透明であることが好ましく、1cm厚みでのHazeが15%以下であることが更に好ましく、5%以下であることが最も好ましい。
【0061】
ウレタンプレポリマー組成物溶液は、特に限定されないが、必要に応じて濃縮や溶剤添加による粘度調整を行い、添加剤として鎖延長剤、帯電防止剤、可塑剤、反応遅延剤、レベリング剤、その他の添加剤を添加し混合してもよい。
【0062】
鎖延長剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、分子量1000以下の低分子量ポリアルキレングリコール等のグリコール類;エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミンが挙げられる。なかでも、ウレタンウレアを形成し、良好な物性のウレタンを得やすいため多価アミンが好ましい。
【0063】
帯電防止剤としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩やイオン液体等が挙げられ、例えば、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド等のリチウム塩や4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ホスホニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0064】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、脂肪酸エステルや脂環式エステル、ポリエーテルエステル等が挙げられ、例えばエポキシ化脂肪酸エステル、ミリスチン酸エステル、ポリアルキレングリコールの末端エステル変性化合物等が挙げられる。
【0065】
反応遅延剤としては、特に限定されず、例えば、ウレタン化触媒の活性を抑制する効果のある添加剤(酸遅延剤、キレート化合物等)、反応時に主剤分子量が高くなりにくくなる添加剤(増粘抑制剤等)、イソシアネートやポリオール・プレポリマーの反応性を低減する添加剤(酸遅延剤、安定剤等)等種々の遅延剤を用いることができ、そのような遅延剤を組み合わせて用いることが好ましい。
【0066】
なかでも、反応遅延剤として、酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤、安定剤のいずれか1種または2種以上を用いることが好ましく、更に好ましくは酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤、安定剤のいずれか2~4種を併用する事が好ましく、最も好ましくは酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤のそれぞれ1種以上を含む3~4種を全て併用する事である。また上記酸遅延剤、キレート化合物、増粘抑制剤のそれぞれは1種に限らず、それぞれ2種以上を併用することができ好ましい。
【0067】
なかでも、ポリアルキレンオキシド(B)を用いる場合、アミン構造に由来する触媒活性を抑制しやすくなり、可使時間が延長するとともに乾燥、エージング、塗工時の急激なゲル化を抑制しやすくなり、安定的にシワを抑制して成形性が良くなりやすいため酸遅延剤を含むことが好ましく、特に限定されないがpKa5.0以下の酸を含むことが好ましい。
【0068】
そのようなpKa5.0以下の酸としては、塩酸、硝酸、リン酸やエチルアシッドホスフェートや2-エチルヘキシルアシッドホスフェート等の炭素数2~20の酸性リン酸エステル等のリン系酸遅延剤などが挙げられ、なかでも、反応性と物性のバランスが良好となりやすいためリン系酸遅延剤を用いることが好ましい。酸遅延剤を用いるときの含有量としては、プレポリマー(D)100重量部に対して0.001~1重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.005~0.1重量部の範囲である。また、酸遅延剤を用いるときのウレタンプレポリマー(D)のpHとしては硬化性が高くなりやすく低腐食性の良好な液性となりやすいためpH4~9の範囲となる量であることが好ましい。ウレタンプレポリマー(D)のpHは、水とIPAを重量比5:3で混合した液に固形分7質量%で分散し、pH計にて測定した値を指す。
【0069】
キレート化合物としては、触媒活性を調整して架橋剤混合後の増粘を抑制しやすく、また成形性も良好となりやすいため、ケトエノール互変異性化合物、トリアゾール誘導体の1種また2種以上を含むことが好ましく、さらに好ましくはキレート化合物としてケトエノール互変異性化合物、トリアゾール誘導体のそれぞれを1種以上(計2種以上)用いることが好ましい。
【0070】
ケトエノール互変異性化合物としては、特に限定されないが、より触媒活性を調整して成形性が良好となりやすいため、アセト酢酸エチル又はアセチルアセトンのいずれか1種以上であることが好ましい。そのようなケトエノール互変異性化合物を含む場合、その含有量は、より成形性が良くなりやすいため金属成分を含むウレタン化触媒に対するモル比率(ケトエノール互変異性化合物/金属触媒)が10倍以上であることが好ましく、更に好ましくは50倍~5000倍の範囲であり、ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して、0.01~20重量部の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.5~10重量部の範囲である。
【0071】
トリアゾール誘導体としては、特に限定されないが、硬化収縮の抑制効果が高く、良好な塗膜外観のウレタンを形成しやすいため、フェノール性水酸基を有するベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましく、更に好ましくはウレタンの透明性が高くなりやすいため室温液状で分子量300~700の範囲であってフェノール性水酸基を含むアリール基がベンゾトリアゾールに直結しているフェノール性水酸基を有するベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましく、上記化合物としては、特に限定されないが、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール(BASF製チヌビン571)、3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロピオン酸の炭素数7~9のアルキルエステル)(BASF製チヌビン99-2、チヌビン384-2)などが挙げられる。トリアゾール誘導体を用いる場合の含有量としてはウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して、0.1~3重量部の範囲であることが好ましく、なかでも、より高透明で良好な塗膜外観を形成しやすいため、0.2~2重量部の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.3~1.5重量部の範囲である。
【0072】
キレート化合物として、ケトエノール互変異性化合物とトリアゾール誘導体を併用する場合の混合重量の比率としては、得られるウレタンのシワを抑制しかつ成形性が良好となりやすいためトリアゾール誘導体に対するケトエノール互変異性化合物の重量比率(ケトエノール互変異性化合物/トリアゾール誘導体)が0.5以上50以下であることが好ましく、2以上20以下であることが更に好ましい。
【0073】
安定剤としては、特に限定されないが、イソシアネートやポリオール・プレポリマーの反応性を抑制する化合物が挙げられ、例えばフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。また本態様では安定剤としてトリアゾール誘導体は含まない。このような酸化防止剤を1000ppm以上、好ましくは3000ppm以上、最も好ましくは5000ppm~20000ppmの範囲に増量して用いることで、イソシアネートやポリオール・プレポリマーを安定化して反応性を低減し、増粘を抑制しやすいため好ましい。なかでも、入手が容易でありウレタンとの相溶性が良好なBHTや分子量1000以下のヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックスシリーズ等)を用いることが好ましい。またイルガノックス1135、イルガノックス1726など、室温液状であれば得られるウレタンの透明性が高くなりやすいため好ましいが、BHTやイルガノックス1076、イルガノックス1010など相溶性が高い構造であれば、プレポリマーに均一に分散・ウレタン形成時に透明性を悪化しにくいため好適に使用できる。
【0074】
安定剤を用いる場合の含有量としては、ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して、0.1~3重量部の範囲であることが好ましく、なかでも、より高透明で良好な物性のウレタンを形成しやすいため、安定剤の含有量は0.2~2.5重量部の範囲であることが更に好ましく、最も好ましくは0.5~2重量部の範囲である。
これらの添加剤の混合工程は、揮発による重量の増減が少ないため室温で行ってもよく、また溶解性・混合性を高めるため加温して行ってもよい。また混合の方法も特に限定されない。また必要に応じて行う濃縮工程では、窒素等でのバブリングや加温、減圧など、所定の濃度に調整できる方法であれば特に限定されない。
【0075】
NCO基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液は、ポリオール架橋剤やポリアミン架橋剤、空気中の水分などの活性水素基を有する架橋剤、硬化剤と反応させて直接ウレタン硬化物を形成してもよく、またNCO基の反応性を活用してゲル化しない様に種々の過剰のポリオールやポリアミンなどの活性水素化合物を末端に付加して保存安定性を高め、NCO基を有する架橋剤、硬化剤などと反応させてウレタン硬化物を形成してもよい。
<ウレタン硬化物、ウレタン塗膜の製造方法>
NCO基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液、ならびにそれを用いて得た活性水素基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液は、種々の方法によって反応させ、硬化(固化)することでウレタン硬化物を製造することができる。ウレタン硬化物の製造方法としては特に限定されないが、例えば、NCO基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液、ならびにそれを用いて得た活性水素基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液を、必要に応じて、ウレタン化触媒、溶剤、酸化防止剤、光安定化剤、鎖延長剤、架橋剤、その他添加剤等の存在下、常温または150℃以下の高温でウレタン化反応、ウレア化反応、必要に応じて乾燥を進めることによって製造することができる。
【0076】
ここで、塗工機等で塗工する際の塗工性が顕著に優れることから、均一な厚みのウレタン塗膜を得られるため、特に限定されないが、塗膜を形成し硬化することが好ましい。また、PETフィルムやCOPフィルム等のベース基材に前記ウレタン硬化物の塗膜を種々の方法により形成、必要に応じて離型PETや離型紙等の別基材との貼り合わせや成形することで当該ウレタン塗膜を基材上に有するポリウレタンシートを形成できる。
【0077】
なかでも、ウレタンプレポリマー(D)組成物溶液と過剰の剛直な構造を有する前記ポリアルキレンオキシド(B)を混合して活性水素基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液を形成する工程、それらに添加剤、イソシアネート架橋剤(F)を混合する工程、10~500μmの厚みで基材へ塗工する工程、70~160℃で30秒~10分の条件で乾燥・硬化する工程、を経ることで、高透明でタックの少ないウレタン塗膜を高い生産性で製造することができるため好ましい。さらに好ましくは、硬化性に優れ、薄膜から高厚みまで均一な厚みで高透明の塗膜が得られやすいことから30μm以上の厚みで塗工する工程を含むことが好ましく、30~200μmの範囲で塗工する工程を含むことが好ましい。
【0078】
また、ウレタンプレポリマー(D)は適度な着色度合いを有して視認性が顕著に良好であり、高温でも流動しにくく厚みムラが少なく迅速に硬化することから100~150℃で1分~8分の範囲で乾燥・硬化することが好ましく、さらに好ましくはよりウレタン塗膜の生産性に優れやすいため120~145℃で2分~6分の範囲で乾燥・硬化することである。
【0079】
ウレタン硬化物、ウレタン塗膜の用途は、特に限定されるものでなく、通常のポリウレタンが使用される何れの用途にも使用できるが、機械物性や粘・接着特性などが要求される用途に特に好適に使用できる。具体的には、建築・土木用シーリング材、建築用弾性接着剤等の接着剤、ガムテープや表面保護フィルム、光学用に代表される各種粘着剤、塗料、エラストマー、塗膜防水材、床材、可塑剤、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、硬質ポリウレタンフォーム等の用途が例示され、好適に使用できる。
【0080】
その中でも、ポリウレタンに対して、機械物性や粘・接着特性の要求が強く、施工性や塗工性が求められることから、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤として用いることが特に好ましい。
【実施例0081】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で使用した原料、及び評価方法は以下に示すとおりである。
(原料1)実施例及び比較例に用いたポリオール(A)、またはその他モノオール(AC)
(原料1-1)実施例、比較例に用いたポリオール(A)
ポリオール(A1)は、イミノ基含有ホスファゼニウム塩(以下、IPZ触媒と記す)とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、脱水・脱溶媒を十分に行い、2官能で、分子量が400のポリオキシプロピレングリコールに、十分に脱水を施したプロピレンオキシドを付加することで得た。(A1)は、アルキレンオキシド基としてプロピレンオキシド基のみを有し、1分子中に2つの水酸基を有するポリオキシプロピレングリコール(ジオール)である。
【0082】
ポリオール(A2)は、(A1)と同様にIPZ触媒とトリイソプロポキシアルミニウムを併用し、分子量が600のポリオキシプロピレントリオールに、アルキレンオキシド基としてプロピレンオキシド基を付加後、系中の残ったプロピレンオキシドを除去後にブロック的にエチレンオキシドを付加したものであり、1級の水酸基を含む不飽和度の低いポリオキシアルキレントリオールである。
【0083】
ポリオール(A3)は、市販のポリエステルポリオールである東ソー製ニッポラン5711を使用した。
【0084】
なお、実施例に用いたポリオール(A1)から(A3)は、いずれも、加熱・真空脱水した後に使用した。また、IPZ触媒を用いて作製したポリオール(A)については、アルミを含め触媒を除去した上で使用した。
(原料1-2)実施例、比較例に用いたモノオール(AC)
モノオール(AC1)は、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルで、片末端にメチル基を有し1分子中に1つの水酸基とエチレンオキシド基からなるモノオールである。
【0085】
ポリオール(A1)~(A3)、モノオール(AC1)の性状を表1に示す。
【0086】
【0087】
(原料2)ポリアルキレンオキシド(B)
(原料2-1)実施例に用いたポリアルキレンオキシド(B1)、(B2)
ポリアルキレンオキシド(B1)は、市販されているトリレンジアミン系ポリプロピレングリコールであり、水酸基価340mgKOH/gの寧武化工製NJ-410HNを使用した。本性状より計算される、分子量は660、芳香族アミン残基含有率は19%であり、着色を有するポリオールである。
【0088】
ポリアルキレンオキシド(B2)は、市販されているシュークローズ系ポリプロピレングリコールであり、公称官能基数は8.0、水酸基価377mgKOH/gの東邦化学工業製トーホーポリオールO-855Wを使用した。本性状より計算される分子量は1190であり、シュークローズ残基含有率は29%であり、着色を有するポリオールである。
(原料3)実施例及び比較例に用いたイソシアネート化合物(C)、(F)
実施例及び比較例では、イソシアネート化合物(C)、(F)として、以下の3種類を用いた。
【0089】
イソシアネート化合物(C1):イソホロンジイソシアネート(IPDI)である。(C1)はイソシアネート基として1級NCO基と2級NCO基を有するジイソシアネートである。
【0090】
イソシアネート化合物(C2):1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。(C2)はイソシアネート基として1級NCO基のみを有するジイソシアネートである。
【0091】
イソシアネート化合物(F1):1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系の変性イソシアネートである東ソー(株)製のコロネートHXLVで、(F1)におけるイソシアネート基の平均官能基数は3.2である。
(原料4)ウレタン化触媒
実施例及び比較例では、添加剤として、ウレタン化触媒を添加した。ウレタン化触媒は、トリスアセチルアセトナト鉄(略称:Fe(acac)3)である日本化学産業製ナーセム鉄、オクチルチンジラウレート(DOTDL)である日東化成社製ネオスタンU-810を用いた。本触媒は作業性を良好とするため5%溶液のマスターバッチとして添加した。表中では溶剤を含まない添加量を記載した。
(原料5)溶剤
実施例及び比較例において、溶剤には、富士フイルム和光純薬(株)製のメチルエチルケトン(略称MEK)、東邦化学工業製トリエチレングリコールジメチルエーテル(略称TEGD)を用いた。
【0092】
また比較例において、日本乳化剤製ジプロピレングリコールジメチルエーテル(略称DPGD、sp値7.9、沸点175℃)を用いた。
(ウレタンプレポリマー組成物溶液の製造例)
4つ口ナスフラスコに、ウレタンプレポリマー(D)の原料であるポリオール(A)、必要に応じて加えるポリアルキレンオキシド(B)やモノオール(AC)を投入して、100℃で1時間以上真空脱水を行い、水分を除去した。
【0093】
その後、50℃以下に冷却して、溶剤、イソシアネート、触媒マスターバッチを添加したのち、所定温度へ昇温し、所定温度に到達した時点で反応開始とした。3時間反応後、FT-IRによりNCO基が残存し、且つ液性状に変化がみられなくなったまたはその量に変化が見られなくなったことを確認して、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液を得た。
(ウレタンプレポリマー組成物溶液の評価項目)
<透明性>
ウレタンプレポリマー組成物溶液の透明性を以下の基準で評価した。
【0094】
◎(合格):目視上透明である場合(液のHazeが5%以下)
○(合格):目視上わずかに濁りは見えるが、液のHazeが15%以下である場合(ほぼ透明)。
【0095】
×(不合格):目視上明らかな強い濁りが見える場合、または液のHazeが15%超の場合。
<液の視認性>
ウレタンプレポリマー組成物溶液をガラス製容器に移し、視認性を以下の基準で評価した。
【0096】
◎(合格):適度な着色があり一目で残液量が判別でき、且つ0.5Lメディウム瓶(8.6cmφ)内の溶液内の異物を迅速に検出可能。
【0097】
○(合格):着色が強めであるが0.5Lメディウム瓶(8.6cmφ)内の溶液内の異物を検出可能であり、一目で残液量が判別できるもの。
【0098】
△(不合格):着色が強すぎて、一目で残液量が判別できるが、0.5Lメディウム瓶(8.6cmφ)内の溶液内の異物を目視で検出が困難なもの。
【0099】
×(不合格):無色で視認性が不十分のもの(一目では残液量が判別できないと判断)
<硬化性>
NCO基末端のウレタンプレポリマー組成物溶液には、ウレタンプレポリマー(D)100重量部に対して30重量部の比率でポリアルキレンオキシド(B1)を加えて反応し、保存安定性の高い活性水素基末端のウレタンプレポリマーを形成。活性水素基末端のウレタンプレポリマーの水酸基に対して1.1等量のHDIイソシアヌレート架橋剤コロネートHXLVを加えて、80μm以下でPET基材に塗工して、130℃5分で乾燥直後のウレタン硬化物を指触で以下の基準で評価し、強度の高いウレタン硬化物の形成に資するウレタンプレポリマーか判別した。
【0100】
◎(合格):タックが消失しており、より顕著に高い強度、軽剥離性が期待できる場合。
【0101】
○(合格):タックはわずかであり、顕著に高い強度、軽剥離性が期待できる場合。
【0102】
×(不合格):タックが大きく硬化不足であり、顕著に高い強度、軽剥離性が期待できない場合。
【0103】
また、上記硬化性の評価により得られたウレタン硬化物層を有するウレタンシートの視認性、シート外観を以下の基準で評価した
<ウレタン硬化物層の視認性、外観>
◎(合格):塗膜の有無が一目でわかり、ウレタン塗膜の平滑性が色調の濃淡で迅速に判断できるものであり、シワや白濁がなく良好な外観を示すもの。
【0104】
○(合格):ウレタン塗膜に薄い着色を有して平滑性を判断できるものであり、シワや白濁がほぼなく良好な外観を示すもの。
【0105】
△(不合格):視認性は良好であるが、シワや白濁で外観が劣るもの
×(不合格):適度な着色を有さずほぼ無色であり、塗工面の平滑性など塗膜の視認性に劣るもの
上記透明性と液の視認性、硬化性、ウレタン硬化物層の視認性、外観が何れも合格のものを、適度な着色を有し不溶物や残渣に対する視認性が良好で高透明なウレタンプレポリマー組成物溶液であって、得られるウレタン硬化物が適度な着色を有して視認性が良好で、良外観で高い強度のウレタン硬化物の迅速な形成に資するウレタンプレポリマー組成物溶液と判断し、合格とした。
<実施例>
(実施例1)
ウレタンプレポリマー組成物溶液の製造例、ならびに表1の実施例1に記載の組成比にしたがって、ポリオール(A1)を100重量部加えて脱水し、グリコールエーテル溶剤としてトリエチレングリコールジメチルエーテルを最終のプレポリマー濃度が95%となるように仕込み、イソシアネート化合物(C1)とウレタン化触媒としてトリスアセチルアセトナト鉄0.025重量部を、(A1)に由来する水酸基の量(MOH)と(C1)に由来するイソシアネート基の量(MNCO)が、モル比率で、(C1)のMNCO/(A1)のMOH=2.75の混合比となるように仕込み、70℃一定で3時間反応することでNCO基末端のウレタンプレポリマー(D1)を含むウレタンプレポリマー組成物溶液を得た。表2に実施例1の結果を示す。ウレタンプレポリマー(D1)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明で、ガードナー色数が4と適度な着色を有し濁りもないため良好な溶液の視認性を示した。また初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も高透明で適度な着色を有して顕著に視認性が良好なものであった。
(実施例2~4)
表2の実施例に記載の組成比にしたがって、ポリオール(A1)に加えて剛直な芳香族アミン残基を有する着色を有するポリアルキレンオキシド(B1)を少量用い、ポリオール(A)、ポリアルキレンオキシド(B)、ポリイソシアネート(C)の仕込み量の比率を変更して製造したものである。表2に実施例2~4の結果を示す。ポリアルキレンオキシド(B1)の含有量の増加に伴ってごく僅かに視認性が低下したが15重量部以下の範囲では、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく顕著に高透明で、適度な着色を有して何れも良好な溶液の視認性を示した。また何れも初期硬化性が良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜もポリアルキレンオキシド(B1)の含有量の増加に伴ってごく僅かに厚みのある端部にシワが発生したが良好な外観であり、15重量部以下の範囲では何れも高透明で適度な着色を有して視認性が良好なものであった。
(実施例5)
表2の実施例5に記載の組成比にしたがって、実施例1のポリオール(A1)から3官能でエチレンオキシド残基を有するポリオール(A2)に変更して製造したものである。表2に実施例5の結果を示す。ウレタンプレポリマー(D5)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明で、ガードナー色数が4と適度な着色を有し濁りもないため良好な溶液の視認性を示した。また初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も高透明で適度な着色を有して顕著に視認性が良好なものであった。
(実施例6)
表2の実施例6に記載の組成比にしたがって、実施例1のポリオール(A1)からポリオール(A3)に変更して製造したものである。表2に実施例6の結果を示す。ウレタンプレポリマー(D6)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明で、ガードナー色数が4と適度な着色を有し濁りもないため良好な溶液の視認性を示した。また初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も僅かに濁りは見られたが高透明で使用可能な範囲であり適度な着色を有して視認性が良好なものであった。
(実施例7~9)
実施例1に対して、金属成分を含むウレタン化触媒であり着色性を有するトリスアセチルアセトナト鉄の含有量を変更してガードナー色数を調整して製造したものである。表2に実施例7~9の結果を示す。ウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく何れも高透明であり、金属成分を含むウレタン化触媒が多めであると着色が強めで溶液の視認性が僅かに低下したが使用可能な範囲の高い視認性を示し、また金属成分を含むウレタン化触媒が少なめであるとごく僅かに硬化性が低下したが使用可能な範囲の良好な硬化性を発現し、何れも高い溶液の視認性と良好な硬化性を両立して顕著に高い強度が期待できるものであり、何れもウレタン硬化物の塗膜も高透明で適度な着色を有して視認性が良好なものであった。
(実施例10、11)
表2の実施例に記載の組成比にしたがって、実施例5に対して、剛直なシュークローズ残基を有し着色を有するポリアルキレンオキシド(B2)を少量用い、ポリオール(A)、ポリアルキレンオキシド(B)、ポリイソシアネート(C)の仕込み量の比率を変更して製造したものである。表2に実施例10、11の結果を示す。ウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明で、ガードナー色数が5と適度な着色を有し濁りもないため良好な溶液の視認性を示した。また初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も高透明で適度な着色を有して顕著に視認性が良好なものであった。
(実施例12)
表2の実施例12に記載の組成比にしたがって、実施例2に対して、片末端にメチル基を有し1分子中に1つの水酸基とエチレンオキシド基からなるモノオールであるモノオール(AC1)を少量用いて製造したものである。表2に実施例12の結果を示す。ウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明で、ガードナー色数が5と適度な着色を有し濁りもないため良好な溶液の視認性を示した。また特に塗工性も良好で、初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も高透明で適度な着色を有して顕著に視認性が良好なものであった。
(実施例13)
表2の実施例に記載の組成比にしたがって、実施例4に対して、金属成分を含むウレタン化触媒の種類を変更して製造したものである。表2に実施例13の結果を示す。実施例4に対して、ポリアルキレンオキシド(B1)が15重量部でのガードナー色数はやや低下し視認性が向上。NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく僅かに濁り(特に低温)は発生したが高透明で、適度な着色を有して良好な溶液の視認性を示した。また初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜もポリアルキレンオキシド(B1)の含有量が高くなりごく僅かに濁りが発生したが高透明で適度な着色を有して視認性が良好なものであった。
(実施例14~17)
表2の実施例に記載の組成比にしたがって、ポリイソシアネート(C2)を用いて、ポリオール(A)、ポリアルキレンオキシド(B)、金属成分を含むウレタン化触媒の種類、仕込み量の比率を変更して製造したものである。表2に実施例14~17の結果を示す。NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく顕著に高透明で、適度な着色を有して何れも良好な溶液の視認性を示した。また金属成分を含むウレタン化触媒の量が少なめの実施例15、高沸点のグリコールエーテル溶剤が多めの実施例16は僅かに初期硬化性が低下し、塗膜がごくわずかに白濁したが使用可能な範囲で良好な硬化性と透明性を示し、何れも初期硬化性が良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も何れも高透明で適度な着色を有して視認性が良好なものであった。
【0106】
本実施例により得られたウレタンプレポリマー組成物溶液はいずれも溶剤量等の反応条件によらず高透明でゲル状物やフラスコ壁への付着物、沈降成分等が殆ど見られず、いずれも反応温度である70℃における粘度が0.3~20Pa・sの範囲の範囲でありハンドリング性が良く、良好な流動性を示した。また、硬化性評価により得られたウレタン硬化物はいずれも収縮もなく目視上高い透明性で、Hazeが5%以下であった。
【0107】
以上より、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)に加えて、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含んで特定のガードナー色数とすることで、視認性が良好な高透明のウレタンプレポリマー組成物溶液となり、かつ硬化性が良好でより顕著に高い強度が期待できるものであり、ウレタン硬化物の塗膜も何れも高透明で適度な着色を有して視認性が良好なものとなることが示された。
【0108】
【0109】
<比較例>
(比較例1)
ウレタンプレポリマー組成物溶液の製造例、ならびに表3の比較例1に記載の組成比にしたがって、特定のガードナー色数とならない組成で金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤、NCO基末端のウレタンプレポリマー(DC)を含む、ウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例1の結果を示す。NCO基末端のウレタンプレポリマー(DC)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明であったが、特定のガードナー色数を下回るため適度な着色を有さず溶液の視認性に劣り、使用が困難なものであった。また初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであったが、ウレタン硬化物の塗膜が適度な着色を有さず視認性が悪いものであり、使用が困難なものであった。
(比較例2)
比較例1に対して着色のあるポリアルキレンオキシド(B1)を加えた特定のガードナー色数となる組成であるが、ウレタンプレポリマーが活性水素基末端であるウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例2の結果を示す。特定のガードナー色数となる組成ではあるものの、ウレタンプレポリマー組成物溶液は白濁して析出があるため、透明性も悪く使用が困難な組成物溶液であり、得られるウレタン硬化物も白濁し視認はできるものの白濁で外観が悪く使用が困難なものであった。
(比較例3)
比較例2に対して、活性水素基末端のウレタンプレポリマー(DC2)から類似組成でNCO基末端のウレタンプレポリマー(DC3)に変更し、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないウレタンプレポリマー組成物である。表3に比較例2の結果を示す。NCO基末端のウレタンプレポリマーを含み、特定のガードナー色数となる組成ではあるものの、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないため相溶性に劣り組成物の透明性が悪く、また得られるウレタン硬化物のシワを抑制できず外観に劣り使用が困難なものであった。
(比較例4)
金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤、NCO基末端のウレタンプレポリマーを含むが、特定のガードナー色数を超える組成となる、ウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例4の結果を示す。特定のガードナー色数を超えるため、溶液の着色が強すぎて、溶液内部の視認性に劣り、不溶物や残渣に対する視認性が十分ではない使用が困難なウレタンプレポリマー組成物溶液であった。
(比較例5)
比較例3に対して、特定のガードナー色数の範囲を維持しつつ相溶性を改善するため剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B1)の使用量を低減した代わりに、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まない組成としたものである。表3に比較例4の結果を示す。特定のガードナー色数でポリアルキレンオキシド(B1)の使用量が多すぎないため、溶液の透明性も良好で適度な着色を有し視認性も良好であるものの、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないため、得られるウレタン硬化物のシワを抑制できず外観に劣り使用が困難なものであった。
(比較例6、比較例7)
表3の比較例に記載の組成比にしたがって特定のガードナー色数とならない組成で金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤、NCO基末端のウレタンプレポリマー(DC)を含む、ポリオール(A)、ポリアルキレンオキシド(B)の種類を変更して得たウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例6、比較例7の結果を示す。NCO基末端のウレタンプレポリマー(DC)を含む組成物溶液が、特定のガードナー色数を下回るため適度な着色を有さず溶液の視認性に劣り、使用が困難なものであった。また得られるウレタン硬化物の塗膜が適度な着色を有さず視認性が悪いものであり、使用が困難なものであった。
(比較例8)
比較例4に対して、着色がある金属成分を含むウレタン化触媒を不使用とし、代わりに特定のガードナー色数となる範囲で着色があり触媒活性を有する剛直な芳香族アミン残基を有するポリアルキレンオキシド(B1)を増量し、溶剤量を増加して得たウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例8の結果を示す。着色が強めであるが使用可能な範囲で良好な視認性を示したが、金属成分を含むウレタン化触媒を含まないため硬化性が不十分であり使用が困難となるウレタンプレポリマー組成物溶液であった。
(比較例9)
比較例8に対して硬化性を改善するため、金属成分を含むウレタン化触媒を加えて得たウレタンプレポリマー組成物溶液であり、特定のガードナー色数を超えるものである。表3に比較例9の結果を示す。比較例8に対して硬化性は改善したが、特定のガードナー色数を超えるため、溶液の視認性が不十分であり使用が困難であり、得られるウレタン硬化物も視認性は良いもののシワが発生して外観に劣り使用が困難なウレタンプレポリマー組成物溶液であった。
(比較例10~12)
比較例1に対してポリイソシアネート(C)の比率やグリコールエーテル溶剤の使用有無、ポリアルキレンオキシド(B1)やモノオール(AC1)の使用有無を変更して得たウレタンプレポリマー組成物溶液であり、何れも特定のガードナー色数を下回るものである。表3に比較例10~12の結果を示す。NCO基末端のウレタンプレポリマー(DC)を含む組成物溶液はゲル状物や析出物がなく高透明であったが、ポリイソシアネート(C)の比率やグリコールエーテル溶剤の使用有無、ポリアルキレンオキシド(B1)やモノオール(AC1)の使用有無によらず、特定のガードナー色数を下回るため適度な着色を有さず溶液の視認性に劣り、使用が困難なものであった。また何れも初期硬化性が顕著に良好でより顕著に高い強度が期待できるものであったが、ウレタン硬化物の塗膜が適度な着色を有さず視認性が悪いものであり、使用が困難なものであった。
(比較例13)
比較例10に対して、特定のガードナー色数の範囲とするため着色があり剛直な構造を有するシュークローズ残基を有するポリアルキレンオキシド(B2)を含む代わりに、金属成分を含むウレタン化触媒を含まないウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例13の結果を示す。適度な着色を有し良好な視認性を示したが、金属成分を含むウレタン化触媒を含まないため硬化性が不十分であり使用が困難となるウレタンプレポリマー組成物溶液であった。
(比較例14)
ポリイソシアネート(C)としてポリイソシアネート(C2)を用い、特定のガードナー色数となる組成比で金属成分を含むウレタン化触媒、NCO基末端のウレタンプレポリマーを含むが、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まない代わりにsp値9.0でグリコールエーテル構造を含まないメチルエチルケトンを用いたウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例14の結果を示す。sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないため、得られるウレタン硬化物のシワを抑制できず外観に劣り使用が困難なものであった。
(比較例15)
特定のガードナー色数となる組成比で金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤、NCO基末端のウレタンプレポリマーを含むが、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤の含有量が20重量%を超えるウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例15の結果を示す。相溶性が良好で高沸点のsp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を多量に含むため、乾燥硬化が不十分となったと考えられる硬化性低下と臭気があり、顕著に高い強度が期待できず、使用が困難なウレタンプレポリマー組成物溶液であった。
(比較例16)
比較例5に対して、ポリイソシアネート(C)としてポリイソシアネート(C2)を用いたものであり、特定のガードナー色数となる組成比で金属成分を含むウレタン化触媒、NCO基末端のウレタンプレポリマーを含むが、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例16の結果を示す。溶液の透明性も良好で適度な着色を有し視認性も良好であるものの、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないため、得られるウレタン硬化物のシワを抑制できず外観に劣り使用が困難なものであった。
(比較例17)
比較例3に対して、sp値が8.0未満のグリコールエーテル溶剤であるジプロピレングリコールジメチルエーテルを用いたものであり、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないウレタンプレポリマー組成物溶液である。表3に比較例17の結果を示す。NCO基末端のウレタンプレポリマーを含み、特定のガードナー色数となる組成ではあるものの、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤を含まないため相溶性に劣り組成物の透明性が悪く、また得られるウレタン硬化物のシワを抑制できず外観に劣り使用が困難なものであった。
【0110】
以上、比較例で示したように、金属成分を含むウレタン化触媒、sp値が8.0以上のグリコールエーテル溶剤、NCO基末端のウレタンプレポリマー(D)を含まないものや、特定のガードナー色数とならない組成のもの、特定の組成・固形分比率でグリコールエーテル溶剤を含まないものは、溶液の透明性と高い視認性、得られるウレタン硬化物の高い強度が期待できる硬化性と塗膜の視認性すべてを満足することが困難であった。
【0111】
【0112】
<ウレタン硬化物の製造例1>
実施例3、実施例6のウレタンプレポリマー組成物溶液の固形分100重量部に対して、反応遅延剤としてアセチルアセトン5重量部と酸性リン酸エステル(城北化学工業製JP508)600ppm、トリアゾール安定剤チヌビン99-2を0.8重量部、可塑剤として2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル10重量部、帯電防止剤として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド1.5重量部、レベリング剤としてDIC製F-571を0.05重量部混合・分散し、80μm以下でPET基材に塗工して、130℃5分で乾燥、室温で1週間エージングすることで湿気硬化してウレタン塗膜を作製した。いずれの実施例のウレタンプレポリマー(D)を含む組成物溶液の粘度も1~100Pa・sの範囲で、かつシート作成後の組成物の残液は24時間経過後も良好な流動性を示した。得られたウレタン硬化物は濡れ性が良好でかつ高強度、高透明であり、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤等に好適に使用できるものであった。
<ウレタン硬化物の製造例2>
実施例1、12のウレタンプレポリマー組成物溶液の固形分100重量部に対して、30重量部の比率でポリアルキレンオキシド(B1)を加えて反応し、保存安定性の高い活性水素基末端のウレタンプレポリマーを形成。
【0113】
活性水素基末端のウレタンプレポリマー100重量部に対して、反応遅延剤としてアセチルアセトン5重量部と酸性リン酸エステル(城北化学工業製JP508)600ppm、トリアゾール安定剤チヌビン99-2を0.8重量部、ジエチレングリコール0.2重量部、可塑剤として2-エチルヘキサン酸ヘキサデシル10重量部、帯電防止剤として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド1.5重量部、レベリング剤としてDIC製F-571を0.05重量部混合・分散し、架橋剤としてイソシアネート化合物(F1)であるコロネートHXLVを水酸基に対して1.1当量混合して80μm以下でPET基材に塗工して、130℃5分で乾燥することでウレタン塗膜を作製した。いずれの実施例のウレタンプレポリマー組成物溶液の粘度も1~100Pa・sの範囲で、かつシート作成後の組成物の残液は24時間経過後も良好な流動性を示した。得られたウレタン硬化物は濡れ性が良好でかつ高強度、高透明であり、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤等に好適に使用できるものであった。
【0114】
以上、実施例で示したように、本発明におけるウレタンプレポリマー(D)は、ゲル状物や析出物がなく、高透明で良好な視認性を有し、硬化性が良好で高い強度のウレタン硬化物の形成に資するウレタンプレポリマー組成物溶液であり、ウレタンプレポリマー(D)を用いることで高透明で視認性が高いウレタン塗膜を安定的に形成できる。
【0115】
その特徴を活かすことにより、ウレタンプレポリマー(D)を用いて得られるポリウレタンは、シーリング材、塗料、粘着剤、接着剤等に好適に使用できることが示された。