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特開2022-166974吸着体、熱交換器、および、吸着式ヒートポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166974
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】吸着体、熱交換器、および、吸着式ヒートポンプ
(51)【国際特許分類】
   F25B 17/08 20060101AFI20221027BHJP
   F28F 13/12 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
F25B17/08 E
F28F13/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072445
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】秋田 智行
(72)【発明者】
【氏名】廣田 靖樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 啓志
(72)【発明者】
【氏名】深澤 義宏
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093NN04
3L093RR01
(57)【要約】
【課題】 吸着体において、気体の吸着量を増加させる技術を提供する。
【解決手段】 吸着体は、気体の拡散抵抗が吸着体よりも低い複数の流路が形成されており、複数の流路は、第1方向に延びる複数の第1流路と、第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2流路とを含んでおり、吸着体は、1種類以上の繊維を含む。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を吸着する吸着体であって、
気体の拡散抵抗が前記吸着体よりも低い複数の流路が形成されており、
前記複数の流路は、第1方向に延びる複数の第1流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2流路とを含んでおり、
前記吸着体は、1種類以上の繊維を含む、
吸着体。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着体であって、
前記複数の第1流路と、前記複数の第1流路の間に位置する複数の吸着材とを含む第1吸着層と、
前記第1吸着層に積層され、前記複数の第2流路と、前記複数の第2流路の間に位置する複数の吸着材とを含む第2吸着層と、を有し、
前記繊維は、前記複数の吸着材の少なくとも1つに含まれており、前記第1吸着層と前記第2吸着層との積層面に略平行に配向されている、
吸着体。
【請求項3】
請求項2に記載の吸着体であって、
前記繊維は、前記吸着材の前記流路を形成する壁面に略平行に配向されている、
吸着体。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の吸着体であって、
前記第1流路と前記第2流路とは連通されている、
吸着体。
【請求項5】
熱交換器であって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の吸着体と、
伝熱壁であって、前記吸着体が一方の側に配置され、他方の側を熱媒体が流れる伝熱壁と、を備える、
熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の熱交換器であって、
前記伝熱壁は、筒状に形成されており、内部を前記熱媒体が流れ、
前記吸着体は、前記伝熱壁の外側面に、周方向に沿って配置されている、
熱交換器。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の熱交換器を備える吸着式ヒートポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着体、熱交換器、および、吸着式ヒートポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体を吸着または脱離する吸着材を含む吸着体が知られている。例えば、特許文献1には、板状に形成されている複数の吸着体の間に配置されている流路に、吸着体に吸着される気体を流通させる技術が開示されている。また、特許文献2には、板状の吸着体に形成されている複数の孔に気体を流通させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6045413号公報
【特許文献2】特許5900391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術によっても、吸着体において、気体の吸着量を増加させる技術については、なお、改善の余地があった。例えば、特許文献1に記載の技術では、流路は、板状に形成されている吸着体の主面に沿って配置されているため、吸着体の厚みを厚くすると、吸着材の内部において流路から離れるにしたがって気体が拡散しにくくなる。気体が拡散しにくくなると吸着材の利用率が低下するため、気体の吸着量を増加させることが難しい。また、特許文献2に記載の技術では、複数の孔は、板状の吸着体において厚み方向に形成されているため、隣り合う孔の間隔を広げると、吸着体の内部において孔から離れるにしたがって気体が拡散しにくくなる。気体が拡散しにくくなると吸着材の利用率が低下するため、気体の吸着量を増加させることが難しい。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、吸着体において、気体の吸着量を増加させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、気体を吸着する吸着体が提供される。この吸着体は、気体の拡散抵抗が前記吸着体よりも低い複数の流路が形成されており、前記複数の流路は、第1方向に延びる複数の第1流路と、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の第2流路とを含んでおり、前記吸着体は、1種類以上の繊維を含む。
【0008】
この構成によれば、吸着体には、互いに交差する方向に延びる複数の第1流路と複数の第2流路とが形成されている。これにより、吸着体の内部において、第1流路では気体を拡散しきれない場所に、第2流路を用いて気体を拡散させることができる。また、吸着体では、第2流路は、第1方向に交差する第2方向に延びているため、吸着体の内部における表面積が増加する。これにより、吸着体が気体に接触しやすくなるため、吸着体が気体を吸着しやすくなる。したがって、吸着体における気体の吸着量を増加させることができる。
【0009】
また、この形態の吸着体は、複数の流路が形成されているため、構造が疎になる部分があるものの、吸着体が繊維を有するため、構造が疎になることによる構造強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(2)上記形態の吸着体であって、前記複数の第1流路と、前記複数の第1流路の間に位置する複数の吸着材とを含む第1吸着層と、前記第1吸着層に積層され、前記複数の第2流路と、前記複数の第2流路の間に位置する複数の吸着材とを含む第2吸着層と、を有し、前記繊維は、前記複数の吸着材の少なくとも1つに含まれており、前記第1吸着層と前記第2吸着層との積層面に略平行に配向されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、吸着体は、第1流路を含む第1吸着層と、第2流路を含む第2吸着層とが積層されている。これにより、複雑な形状の流路を、比較的容易に形成することができる。また、吸着材に含まれる繊維が、第1吸着層と第2吸着層との積層面に略平行に配向されているため、吸着材に対して、第1吸着層と第2吸着層との積層面に沿う方向の力が加わることによる吸着材の断裂を抑制することができ、吸着体における亀裂の発生を抑制することができる。
【0012】
(3)上記形態の吸着体であって、前記繊維は、前記吸着材の前記流路を形成する壁面に略平行に配向されていてもよい。このようにすると、さらに、吸着材の断裂を抑制することができる。
【0013】
(4)上記形態の吸着体であって、前記第1流路と前記第2流路とは連通されていてもよい。この構成によれば、流路を流れる気体は、第1流路と第2流路との間を行き来することができる。これにより、第1流路と第2流路との間で気体の流量にばらつきが少なくなるため、吸着体の内部にまんべんなく気体を拡散させることができる。したがって、気体が吸着体に接触する量を増加させることができ、吸着体における気体の吸着量を増加させることができる。
【0014】
(5)本発明の他の形態によれば、熱交換器が提供される。この熱交換器は、上記形態の吸着体と、伝熱壁であって、前記吸着体が一方の側に配置され、他方の側を熱媒体が流れる前記伝熱壁と、を備える。この構成によれば、熱交換器は、気体の吸着性能が良好な吸着体を有するため、吸着体における気体の吸脱着反応における発熱吸熱反応を利用することにより、熱交換器における吸放熱量を増加させることができる。また、上記形態の吸着体は、亀裂の発生を抑制することができるため、伝熱壁と吸着体との密着性を確保することができる。そのため、吸着体と伝熱壁との熱伝導性の悪化を抑制することができ、吸着体と熱媒体との熱交換効率の低下を抑制することができる。そのため、吸放熱性能が良好で、熱交換効率の低下を抑制可能な熱交換器を提供することができる。
【0015】
(6)上記形態の熱交換器であって、前記伝熱壁は、筒状に形成されており、内部を前記熱媒体が流れ、前記吸着体は、前記伝熱壁の外側面に、周方向に沿って配置されていてもよい。この構成によれば、吸着体は、筒状に形成されている伝熱壁の外側面に、周方向に沿って配置されているため、吸着体は、伝熱壁の内部を流れる熱媒体との熱のやり取りを効率的に行うことができる。
【0016】
(7)本発明のさらに他の形態によれば、吸着式ヒートポンプが提供される。この吸着式ヒートポンプは、上記の形態の熱交換器を備える。この構成によれば、吸着式ヒートポンプが、吸放熱性能が良好な熱交換器を備えるため、吸着式ヒートポンプの出力を向上させることができる。
【0017】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、吸着体を備えるシステム、吸着体の製造方法、吸着器を備える熱交換器の製造方法、その熱交換器を備える吸着式ヒートポンプの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の吸着体を備える吸着式ヒートポンプの模式図である。
図2】第1実施形態の吸着体の構成を概略的に示す説明図である。
図3】第1実施形態の吸着体の側面および上面図である。
図4】吸着体一部を拡大して構成を概念的に示す説明図である。
図5】第1吸着材の断面の一部を拡大して概念的に示す説明図である。
図6】吸着体の製造方法を説明する第1の図である。
図7】吸着体の製造方法を説明する第2の図である。
図8】吸着体の製造方法を説明する第3の図である。
図9】第1実施形態の吸着体の一部の構成を模式的に示す説明図である。
図10】第1比較例の吸着体の一部の構成を模式的に示す説明図である。
図11】第2比較例の吸着体の製造工程における乾燥の様子を概念的に示す図である。
図12】第2実施形態としての熱交換器の構成を概略的に示す説明図である。
図13】第2実施形態の吸着体の製造方法の説明図である。
図14】第3実施形態の吸着体を概念的に示す説明図である。
図15】第4実施形態の吸着体を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の吸着体1を備える吸着式ヒートポンプ10の模式図である。吸着式ヒートポンプ10は、2つの反応器6、7と、2つの蒸発凝縮器8、9と、これらを接続する接続配管と、接続配管に配置される複数のバルブと、図示しない制御部と、を備える。吸着式ヒートポンプ10は、2組の反応器と蒸発凝縮器の組み合わせを利用して、温熱から冷熱を発生させる。
【0020】
反応器6は、反応容器6aと、反応容器6aの内部に収容されている吸着体1と、反応容器6aの内部において熱媒体を流通させる熱交換器5と、を備える。反応器7は、反応容器7aと、反応容器7aの内部に収容されている吸着体1と、反応容器7aの内部において熱媒体を流通させる熱交換器5と、を備える。吸着体1は、蒸発凝縮器8、9において発生する作動流体の蒸気、例えば、水蒸気を吸着する。また、水蒸気を吸着している吸着体1は、熱交換器5を流れる熱媒体、例えば、温水の熱を用いて水蒸気を脱離する。
【0021】
蒸発凝縮器8は、水が流れる水配管8aと、吸着体1に吸着される水を貯留する貯留容器8bと、を有する。蒸発凝縮器8では、接続する反応器6、7のモードに応じて、貯留容器8b内の水が蒸発するときの気化熱によって水配管8aを流れる水が冷却されたり、貯留容器8b内の水の蒸気が凝縮されて水に戻されたりする。
【0022】
蒸発凝縮器9は、水が流れる水配管9aと、吸着体1に吸着される水を貯留する貯留容器9bと、を有する。蒸発凝縮器9では、接続する反応器6、7のモードに応じて、貯留容器9b内の水が蒸発するときの気化熱によって水配管9aを流れる水が冷却されたり、貯留容器9b内の水の蒸気が凝縮されて水に戻されたりする。
【0023】
次に、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10の作用について説明する。ここでは、図1に示す状態の吸着式ヒートポンプ10に基づいて説明する。図1に示す状態では、制御部からの指令によって、反応器6と蒸発凝縮器8との間のバルブと、反応器7と蒸発凝縮器9との間のバルブとが開けられており、反応器6と蒸発凝縮器9との間のバルブと、反応器7と蒸発凝縮器8との間のバルブとが閉められている。
【0024】
接続配管を介して接続されている反応器6と蒸発凝縮器8とでは、吸着工程として、吸着作用によって内部が減圧される。これにより、蒸発凝縮器8内に水蒸気が生成される。生成された作動流体の蒸気は、接続配管を通って(白抜き矢印F11)、反応器6の内部に入り、吸着体1に吸着される。このとき、蒸発凝縮器8の水配管8aを流れる水は、水の気化熱によって冷却される。これにより、水配管8aから冷水が排出されることで、冷熱が吸着式ヒートポンプ10の外部に供給される。
【0025】
接続配管を介して接続されている反応器7と蒸発凝縮器9とでは、脱離工程として、反応器7の熱交換器5に温水が供給される。水を吸着している反応器7の吸着体1では、供給される温水の熱によって水が吸着体1から脱離する。脱離した水は水蒸気として蒸発凝縮器9の内部に入り(白抜き矢印F12)、水配管9aを流れる水によって凝縮され、水になる。この水は、次の吸着工程において利用される。
【0026】
本実施形態の吸着式ヒートポンプ10では、反応器6および反応器7の一方が水蒸気を吸着し、反応器6および反応器7の他方が水蒸気を脱離することで、温水の供給による冷熱の生成を連続的に行う。
【0027】
図2は、本実施形態の吸着体1の構成を概略的に示す説明図である。図3は、本実施形態の吸着体1の側面図および上面図である。図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。x軸は、第1流路11bが延びる方向(第1方向)に対応し、y軸は、第2流路12bが延びる方向(第2方向)に対応し、Z軸は、第1吸着層11と第2吸着層12との積層方向に対応する。これらは、図1以降の図においても共通する。また、図2および図3では、吸着体1の構造をわかりやすくするため、各部材のサイズや隙間の大きさなどを、実際の比率から変更して図示している。
【0028】
図示するように、吸着体1は、第1吸着層11と第2吸着層12とが交互に積層されて構成されている。そして、吸着体1には、複数の流路(複数の第1流路11bと、複数の第2流路12b)が形成されている。本実施形態では、吸着体1は、3つの第1吸着層11と、2つの第2吸着層12とを備えるが、吸着層の数は本実施形態に限定されず、任意の数を備えることができる。以降の説明において、第1流路11bと第2流路12bとを区別しないときには、単に、「流路」とも呼ぶ。
【0029】
第1吸着層11は、複数の第1流路11bと、複数の第1流路11bの間に位置する複数の第1吸着材11aを含む。第1吸着材11aは、シリカゲルを含む材料から成り、横断面が矩形状の線状(糸状)に形成されている。複数の第1吸着材11aは、長手方向がx軸方向に沿うように、互いに一定の距離を空けて配置されている。本実施形態において、第1吸着材11aの横断面(長手方向に垂直な断面)における幅(y軸方向の長さ)および高さ(z軸方向の長さ)は、例えば、100μm以上5mm以下である。複数の第1吸着材11aは、上述の通り、一定の距離をあけて並んで配置されており、本実施形態では、隣り合う第1吸着材11aの間の距離は、例えば、50μm以上2mm以下である。このように、複数の第1吸着材11aが一定の距離を空けて並んで配置されることにより、隣り合う2つの第1吸着材11aの間に、吸着体1に吸着される水蒸気が流れる第1流路11bが形成される。すなわち、複数の第1吸着材11aにより、x軸方向(第1方向)に延びる第1流路11bが形成される。第1流路11bは、隣り合う第1吸着材11aの間の隙間であるため、第1流路11bにおける気体の拡散抵抗は、第1吸着材11aにおける気体の拡散抵抗より低い。
【0030】
第2吸着層12は、複数の第2流路12bと、複数の第2流路12bの間に位置する複数の第2吸着材12aを含む。第2吸着材12aは、第1吸着材11aと同様に、シリカゲルを含む材料から成り、横断面が矩形状の棒状(糸状)に形成されている。複数の第2吸着材12aは、長手方向がy軸方向に沿うように、互いに一定の距離を空けて配置されている。本実施形態において、第2吸着材12aの横断面(長手方向に垂直な断面)における幅(x軸方向の長さ)および高さ(z軸方向の長さ)は、例えば、100μm以上5mm以下である。複数の第2吸着材12aは、上述の通り、一定の距離をあけて並んで配置されており、本実施形態では、隣り合う第2吸着材12aの間の距離は、例えば、50μm以上2mm以下である。このように、複数の第2吸着材12aが一定の距離を空けて並んで配置されることにより、隣り合う2つの第2吸着材12aの間に、吸着体1に吸着される水蒸気が流れる第2流路12bが形成される。すなわち、複数の第2吸着材12aにより、y軸方向(第2方向)に延びる第2流路12bが形成される。第2流路12bは、隣り合う第2吸着材12aの間の隙間であるため、第2流路12bにおける気体の拡散抵抗は、第2吸着材12aにおける気体の拡散抵抗より低い。すなわち、吸着体1に形成された複数の流路の気体の拡散抵抗は、吸着体1の拡散抵抗より低い。なお、図3(a)および(b)では、第1吸着材11aと第1流路11b、および第2吸着材12aと第2流路12bを、明瞭に区別するために、第1吸着材11aに右肩下がりの斜線ハッチングを付し、第2吸着材12aにクロスハッチングを付している。
【0031】
上述の通り、本実施形態において、第1流路11bは第1方向に延び、第2流路12bは第2方向に延び、第1方向と第2方向とは、直交している。これにより、吸着体1は、網目状に形成されている。但し、第1流路11bと第2流路12bとは、交わっておらず、互いに接触して重なっている。第1流路11bと第2流路12bとが接触して重なっている連通部16(図3(c)に右肩上がりのハッチングを付して示す)によって、第1流路11bと第2流路12bとは連通している。これにより、z軸方向に延びる第3流路が形成されている。他の実施形態では、第1流路11bと第2流路12bとは、別個の連通流路を介して連通されてもよい。
【0032】
図4は、吸着体1一部を拡大して構成を概念的に示す説明図である。図5は、第1吸着材11aの断面の一部を拡大して概念的に示す説明図である。図5(a)は、図3(c)に示すA-A断面を示し、図5(b)は、図3(b)に示すB-B断面を示す。
【0033】
図4に示すように、吸着体1は繊維Fを含む。詳しくは、第1吸着材11aおよび第2吸着材12aは、繊維Fを含む。繊維Fとしては、無機繊維や鉱物繊維等の繊維を少なくとも1種類含む。本実施形態では、繊維Fとして、炭素繊維(カーボンファイバー)を含む。
【0034】
図3(a)および図4に示すように、第1吸着材11aは、第2吸着材12aとの積層面11Sを有する。図5(a)に示すように、第1吸着材11aの積層面11Sは、xy平面に平行である。繊維Fは、積層面11Sに略平行に配向されている。
【0035】
本実施形態において、第1吸着材11aのA-A断面(図3(c))を、SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)にて観察し、積層面11Sに対する角度が±45°以内の繊維Fが、観察視野に存在する全ての繊維Fの50%以上である場合に、「繊維Fは、積層面11Sに略平行に配向されている」という。図5(A)に示すように、積層面11Sと平行な線LAを用いて、積層面11Sに対する繊維Fの角度が±45°以内か否かを判断することができる。
【0036】
また、図3(a)および図4に示すように、第1吸着材11aは、第1流路11bを形成する壁面11Wを有する。図5(b)に示すように、第1吸着材11aの壁面11Wは、xz平面に平行である。繊維Fは、壁面11Wに略平行に配向されている。
【0037】
本実施形態において、第1吸着材11aのB-B断面(図3(b))を、SEMにて観察し、壁面11Wに対する角度が±45°以内の繊維Fが、観察視野に存在する全ての繊維Fの50%以上である場合に、「繊維Fは、壁面11Wに略平行に配向されている」という。図5(B)に示すように、壁面11Wと平行な線LBを用いて、壁面11Wに対する繊維Fの角度が±45°以内か否かを判断することができる。
【0038】
第2吸着材12aに含まれる繊維Fも同様に、第1吸着材11aは、第2吸着材12aとの積層面に略平行に配向されており、かつ第2流路12bを形成する壁面に略平行に配向されている。
【0039】
図6は、吸着体1の製造方法を説明する第1の図である。図7は、吸着体1の製造方法を説明する第2の図である。図8は、吸着体1の製造方法を説明する第3の図である。この製造方法では、シリカゲルと熱伝導助剤とが混合された材料に繊維Fとバインダーを添加した材料(以下、「吸着材形成材料」とも呼ぶ)を用いて、例えば、3Dプリンタにより、吸着体1の形状を形成する(吸着体中間体1p)。吸着材形成材料は、ペースト状で柔らかく、流動性を確保するために水分が多いため、3Dプリンタにより形成された吸着体中間体1pを乾燥させることにより吸着体1が完成する。詳しくは、以下に説明する。
【0040】
吸着体1の製造方法では、最初に、平板状のステージ18の表面に、例えば、3Dプリンタのノズル19を用いて、吸着材形成材料を押し出し、第1吸着材中間体11apを形成する。このとき、ノズル19は、図6に示すように、ステージ18の表面に沿ってx軸方向に移動させる(図6の白抜き矢印F13)。ノズル19をx軸方向移動させて1本の第1吸着材中間体11apを成形したのち、ノズル19をy軸方向に移動させる。ノズル19をy軸方向に移動させたのち、先に成形された第1吸着材中間体11apと所定の距離を空けて、第1吸着材中間体11apの隣に別の第1吸着材中間体11apを成形する。これを繰り返し、ステージ18の表面に、複数の第1吸着材中間体11apを所定の隙間をあけつつ成形する。これにより、第1吸着層中間体11pが成形される(図6参照)。この工程を、第1吸着層中間体形成工程とも呼ぶ。本実施形態の製造方法において、ステージ18を、熱交換器5の伝熱壁5aとすることで、熱交換器5に直接吸着体1を形成することができる。
【0041】
次に、先ほど成形された第1吸着層中間体11pのz軸方向のプラス側に、第1吸着材中間体11apの成形と同じように、ノズル19を用いて、上述の吸着材形成材料を押し出し、第2吸着材中間体12apを形成する(図7)。このとき、ノズル19は、ステージ18の表面に沿ってy軸方向に移動させる(図7の白抜き矢印F14)。ノズル19を移動させて1本の第2吸着材中間体12apを成形したのち、ノズル19をx軸方向に移動させる。ノズル19をx軸方向に移動させたのち、先に成形された第2吸着材中間体12apと所定の距離を空けて、第2吸着材中間体12apの隣に別の第2吸着材中間体12apを成形する。これを繰り返し、第1吸着層中間体11pのz軸方向のプラス側に、複数の第2吸着材中間体12apを所定の隙間をあけつつ成形する。これにより、第2吸着層中間体12pが成形される(図7参照)。この工程を、第2吸着層中間体形成工程とも呼ぶ。
【0042】
続いて、第1吸着層中間体形成工程、第2吸着層中間体形成工程、第1吸着層中間体形成工程を、この順に行う。これにより、5層が積層された積層体である吸着体中間体1pが形成される(図8)。吸着体中間体1pを乾燥させることにより、吸着体1が完成される。
【0043】
吸着材形成材料に含まれる繊維Fの長さは、特に限定されないが、ノズル19のノズル径よりも短いことが好ましい。繊維Fの長さがノズル19のノズル径より短いと、ノズル19の詰まりを抑制することができる。ノズル19としては、例えば、ノズル径が0.1mm~3mm程度のノズルを用いることができる。また、繊維Fの長さが0.1μm以上であると、補強効果をより発揮することができるため、好ましい。
【0044】
次に、本実施形態の吸着体1の効果について、比較例と比較して説明する。
図9は、本実施形態の吸着体1の一部の構成を模式的に示す説明図であり、図10は、第1比較例の吸着体90の一部の構成を模式的に示す説明図である。図10では、図9と対応する部分を図示している。図9図10において、(a)は上面図を示し、(b)は(a)におけるA-A断面を示し、(c)は(a)におけるB-B断面を示す。なお、図9では、繊維Fの図示を省略している。
【0045】
図10に示すように、第1比較例の吸着体90は、z軸方向に吸着体90を貫通する複数の流路92が形成されている。第1比較例の吸着体90における流路92間の幅D90(図10(a))は、本実施形態の吸着体1の第1吸着材11aおよび第2吸着材12aの幅D1(図9(a))と一致する。また、第1比較例の吸着体90の流路92のz軸方向から見た形状(図10(a))は、本実施形態の吸着体1における連通部16(図9(a))の形状と一致する。
【0046】
上述の通り、第1比較例の吸着体90には、z軸方向に貫通する複数の流路92が形成されている(図10(a)、(c))。これに対し、本実施形態の吸着体1には、x軸方向に貫通する複数の第1流路11bと、y軸方向に貫通する複数の第2流路12bと、が形成されている。被吸着体である気体は、流路内を拡散しつつ、吸着体に拡散される。第1比較例の吸着体90では、z軸方向に貫通する流路92しかないのに対し、本実施形態の吸着体1では、第1流路11bと第2流路12bとが重なり、第1流路11bと第2流路12bとが連通する連通部16が形成されることにより、z軸方向に貫通する流路が形成され、さらに、この流路に交差する第1流路11bと第2流路12bとが形成されている。換言すると、第1比較例の吸着体90には、縦穴として機能する流路92しか形成されていないのに対し、本実施形態の吸着体1には、縦穴として機能する流路と、横穴として機能する流路とが形成されている。被吸着体としての気体は、流路から吸着体の内部に向かって拡散するため、吸着体において、流路から離れた吸着体内部にまでは拡散しにくい。本実施形態の吸着体1では、第1比較例の吸着体90と比較して、流路の形状が複雑であり、吸着体と気体とが接する面積が大きい。また、気体が流路を拡散する速度は、吸着体内部を拡散する速度よりも速いため、吸着体の内部まで吸着が速やかに進行する。そのため、吸着速度・吸着体利用率が向上する。したがって、本実施形態の吸着体1によれば、第1比較例の吸着体90よりも、気体の吸着速度、および吸着体の利用率を向上させることができ、気体の吸着量を増加させることができる。
【0047】
図11は、第2比較例の吸着体の製造工程における乾燥の様子を概念的に示す図である。第2比較例の吸着体は、本実施形態の吸着体1と異なる材料を用いて、吸着体1と同じ製造方法により同様の形状に形成されている。第2比較例の吸着体は、本実施形態の吸着材形成材料から繊維Fとバインダーを除いた材料、すなわち、シリカゲルと熱伝導助剤とが混合された材料(以下、「比較例形成材料」とも呼ぶ)から形成されている。第2比較例の吸着体の製造工程において乾燥の前の状態である吸着体中間体80pは、図11に示すように、第1吸着層中間体81pと第2吸着層中間体82pとが交互に積層された5層構造の積層体である。第1吸着層中間体81pは、複数の第1吸着材中間体81apを備え、第2吸着層中間体82pは、複数の第2吸着材中間体82apを備える。
【0048】
上述の通り、本実施形態の吸着体1は、吸着体90と比較して、多くの流路が形成されており、かつ、複数の流路が交差するように形成されている。そのため、図9(b)、(c)、および図10(b)、(c)に示すように、吸着体1は吸着体90と比較して構造が疎になっている。第2比較例の吸着体も同様に、第1比較例の吸着体90と比較して構造が疎である。そのため、第2比較例の吸着体は、吸着体1において図9(c)に示す断面に相当する断面において、特に構造強度が弱い。吸着体中間体80pを乾燥させる工程において、吸着体中間体80pは上の方(z軸プラス側)から乾燥する。比較例形成材料は、ペースト状で柔らかく、流動性を確保するために水分が多いため、乾燥されると収縮する。吸着体中間体80pにおいて、一番上に積層された第1吸着層中間体81pから乾燥するため、一番上に積層された第1吸着層中間体81pから収縮する。一番下の第1吸着層中間体81pは、乾燥するのが遅く、かつステージ18に付着しているため、あまり収縮しない。そのため、吸着体中間体80pの乾燥工程において、最上面の第1吸着層中間体81pを構成する第1吸着材中間体81apには、x軸方向(長手方向)に引っ張る力が作用し(図11(a)における白抜き矢印)、第1吸着材中間体81apが切れる虞がある(図11(a))。図11(a)に示すように、第1吸着材中間体81apが切れて第1吸着層中間体81pに亀裂が生じると、図11(b)に示すように、亀裂を起点として、吸着体中間体80pが反りながら乾燥する(図11(b)における白抜き矢印)。そうすると、ステージ18として用いられた伝熱壁5aと吸着体との間に隙間ができ、吸着体と熱交換器との間の熱伝導性が悪化する虞がある。
【0049】
これに対し、本実施形態の吸着体1によれば、吸着材形成材料が繊維Fを有するため、繊維Fとバインダーにより吸着材形成材料の接着効果が高まる。また、吸着材形成材料に含まれる繊維Fが、第1吸着層11と第2吸着層12との積層面11Sに略平行に配向されており(図5(a))、かつ第1吸着材11aの第1流路11bを形成する壁面11Wに略平行に配向されている(図5(b))。そのため、吸着体中間体1pの乾燥に伴い、第1吸着材中間体11apに対して、第1吸着層11と第2吸着層12との積層面11Sに沿う方向(長手方向)の力が加わることによる第1吸着材中間体11apの断裂を抑制することができ、吸着体中間体1pにおける亀裂の発生を抑制することができる。また、吸着式ヒートポンプ10の使用時における吸着体1の温度変化に伴う亀裂の発生も、同様に抑制することができる。そのため、吸着体1と熱交換器5との間の熱伝導性の低下を抑制することができる。その結果、吸着体1における水蒸気の吸着によって発生する熱の熱交換器5への放熱性の低下を抑制することができ、吸着体1による水蒸気の吸着反応の速度の低下を抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の吸着体1では、繊維Fとして、炭素繊維を用いている。炭素繊維は、熱伝導性向上効果があるため、吸着体1によれば、構造強度の低下を抑制することができる共に、熱伝導性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態の吸着体の製造方法によれば、3Dプリンタのノズル19を用いて、吸着材形成材料を押し出すことにより、長尺な線状の第1吸着材11aおよび第2吸着材12aを形成しているため、繊維Fを、第1吸着層11と第2吸着層12との積層面11Sに略平行に、容易に配向させることができる。同様に、繊維Fを、吸着材の流路を形成する壁面に略平行に、容易に配向させることができる。
【0052】
また、本実施形態の吸着式ヒートポンプ10は吸着体1を備えている。この吸着体1は、上述の通り、利用効率が向上されており、かつ、熱交換器との間の熱伝導性の低下を抑制することができるため、被吸着体の吸着量を増加させることができる。そのため本実施形態の吸着式ヒートポンプ10によれば、吸着式ヒートポンプの出力を向上させることができる。
【0053】
<第2実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態としての熱交換器5Aの構成を概略的に示す説明図である。本実施形態の熱交換器5Aは、円筒状に形成された伝熱壁5aと、伝熱壁5aの外側面に形成された吸着体2と、を備え、伝熱壁5aの内部を熱媒体としての水が流れる。本実施形態の吸着体2は、第1実施形態の吸着体1と、形状が異なる。
【0054】
吸着体2は、第1吸着層21と、第1吸着層21の上に積層された第2吸着層22と、を備え、伝熱壁5aの外側面に、周方向に沿って円筒状に形成されている。
【0055】
第1吸着層21は、複数の第1流路21bと、複数の第1流路21bの間に位置する複数の第1吸着材21aを含む。第1吸着材21aは、シリカゲルおよび繊維Fを含む材料から成り、横断面形状が矩形状の線状(糸状)に形成されている。第1吸着材21aは、長手方向が伝熱壁5aの中心軸C5と交差する方向に、伝熱壁5aの外周に沿って形成されている。第1吸着材21aの一部は、伝熱壁5aの外側面において、全体の形状が螺旋状に形成されている。隣り合う第1吸着材21aの間隔および螺旋の間隔は一定であり、本実施形態では、例えば、50μm以上2mm以下である。このように、隣り合う第1吸着材21aの間に、吸着体2に吸着される気体が流れる第1流路21bが形成される。第1流路21bは、隣り合う第1吸着材21aの間の隙間であるため、第1流路21bにおける気体の拡散抵抗は、第1吸着材21aにおける気体の拡散抵抗より低い。
【0056】
第2吸着層22は、複数の第2流路22bと、複数の第2流路22bの間に位置する複数の第2吸着材22aを含む。第2吸着材22aは、第1吸着材21aと同様に、シリカゲルおよび繊維Fを含む材料から成り、横断面形状が第1吸着材21aと同じ矩形状の線状(糸状)に形成されている。第2吸着材22aは、長手方向が伝熱壁5aの中心軸C5と交差する方向であって、第1吸着材21aの長手方向と交差するように、伝熱壁5aの外周に沿って形成されている。第2吸着材22aの一部は、第1吸着材21aと同様に、伝熱壁5aの外側面において、全体の形状が螺旋状に形成されている。隣り合う第2吸着材22aの間隔および螺旋の間隔は一定であり、本実施形態では、第1吸着材21aにおける間隔と同じである。このように、隣り合う第2吸着材22aの間に、吸着体2に吸着される気体が流れる第2流路22bが形成される。第2流路22bは、隣り合う第2吸着材22aの間の隙間であるため、第2流路22bにおける気体の拡散抵抗は、第2吸着材22aにおける気体の拡散抵抗より低い。
【0057】
上述の通り、第1吸着層21の第1流路21bと、第2吸着層22の第2流路22bとが交差するように積層されるため、吸着体2は、図示するように網目状に形成されている。
【0058】
図13は、第2実施形態の吸着体2の製造方法の説明図である。本実施形態の吸着体2も、第1実施形態の吸着体1と同様に、第1実施形態の吸着材形成材料と同一の材料を用いて、3Dプリンタにより形状を形成する。
【0059】
具体的には、まず、図13(a)に示すように、伝熱壁5aを、伝熱壁5aの中心軸C5を回転中心として回転させながら(図13(a)の白抜き矢印F21、F22)、ノズル19を伝熱壁5aの一方の端部5bから他方の端部5cに向けて移動させる(図13(a)の白抜き矢印F23)。移動するノズル19から押し出される吸着材形成材料が伝熱壁5aの外壁面に接着することで、図13(a)に示すような中心軸C5に対して斜めに配置される第1吸着材中間体21apが形成される。1本の第1吸着材中間体21apを成形したのち、隙間をあけて別の第1吸着材中間体21apを同じ方法で成形する。これにより、第1吸着層中間体21pが形成される。このとき、隙間が第1吸着層21の第1流路21bとなる。
【0060】
次に、図13(b)に示すように、伝熱壁5aを、伝熱壁5aの中心軸C5を回転中心として回転させながら(図13(b)の白抜き矢印F24、F25)、ノズル19を伝熱壁5aの他方の端部5cから一方の端部5bに向けて移動させる(図13(b)の白抜き矢印F26)。移動するノズル19から押し出される吸着材形成材料が第1吸着層中間体21pの外側面に接着することで、図13(b)に示すような中心軸C5に対して斜めに配置される第2吸着材中間体22apが形成される。1本の第2吸着材中間体22apを成形したのち、隙間をあけて別の第2吸着材中間体22apを同じ方法で成形する。これにより、第2吸着層中間体22pが形成される。このとき、隙間が第2吸着層22の第2流路22bとなる。第1吸着層中間体21pと第2吸着層中間体22pの2層が積層され、吸着体中間体2pが形成される(図13(b))。吸着体中間体2pを乾燥させることにより、吸着体2が完成される。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の吸着体2には、互いに交差する方向に延びる複数の第1流路21bと複数の第2流路22bとが形成されている。そのため、第1実施形態の吸着体1と同様に、吸着体1の利用率を向上させることができ、吸着体2における水蒸気の吸着量を増加させることができる。その結果、熱交換器5Aにおける吸放熱量を増加させることができ、熱交換器5Aの性能を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態の熱交換器5Aにおいて、吸着体2は、筒状に形成されている伝熱壁5aの外側面に、周方向に沿って配置されている。これにより、吸着体2は、伝熱壁5aの内部を流れる水との熱のやり取りを効率的に行うことができ、熱交換器5Aにおける吸放熱量を増加させることができる。
【0063】
また、本実施形態の吸着体2も、第1実施形態の吸着体1と同様に、繊維Fを含んでいる。本実施形態の吸着体2のように、網目状の円筒状に形成された吸着体中間体2pにおいて、繊維Fが含まれていない場合には、第1実施形態で説明した通り、乾燥に伴い、構造が弱い部分に亀裂が生じると、亀裂を起点に吸着体中間体2pが反りながら乾燥することにより、亀裂が中心軸C5に沿う方向に延びて、吸着体中間体2pが割れ、開いてくる虞がある。これに対し、本実施形態の吸着材形成材料が繊維Fを有し、繊維Fとバインダーにより接着効果が高まるため、吸着体中間体2pの乾燥に伴う亀裂の発生を抑制することができる。そのため、吸着体2と伝熱壁5aとの間の熱伝導性の低下を抑制することができる。その結果、吸着体2における水蒸気の吸着によって発生する熱の熱媒体への放熱性を向上させることができ、吸着体2による水蒸気の吸着反応の速度が低下することを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態の熱交換器5Aによれば、伝熱壁5aの外側面に隙間をあけて複数の第1吸着材21aおよび複数の第2吸着材22aを形成することにより、伝熱壁5aの外側面に直接吸着体2を形成することができる。これにより、比較的容易に、円筒状の伝熱壁5aの外周に吸着体2を形成することができる。
【0065】
<第3実施形態>
図14は、第3実施形態の吸着体3を概念的に示す説明図である。図14(a)は、吸着体3の斜視図であり、図14(b)は、吸着体3の上面図である。図14(b)では、第1流路32を明瞭に示すために、第1流路32以外に斜線ハッチングを付して示し、繊維Fの図示を省略している。なお、説明の便宜上、図14では、第1流路32の開口が形成されている方向をz軸方向とし、第2流路33の開口が形成されている方向をy軸方向とし、z軸とy軸とに直交する方向をx軸方向とする。また、図14では、吸着体3の構造をわかりやすくするため、流路の大きさなどを実際の比率から変更している。
【0066】
第3実施形態の吸着体3は、第1実施形態の吸着体1(図2)と形状が異なるものの、第1実施形態と同一の材料から形成されている。すなわち、図14(a)に示すように、吸着体3は繊維Fを含んでいる。本実施形態の吸着体3には、複数の第1流路32と、複数の第2流路33と、が形成されており、略直方体状に形成されている。
【0067】
第1流路32は、z軸方向に延びる流路であって、吸着体3をz軸方向に貫通する。本実施形態では、第1流路32は、9個形成されている。第1流路32は、x軸方向およびy軸方向のそれぞれに、等間隔で並べて配置されている。本実施形態におけるz軸方向を「第1方向」とも呼ぶ。
【0068】
第2流路33は、y軸方向に延びる流路であって、吸着体3をy軸方向に貫通する。本実施形態では、第2流路33は、8個形成されている。第2流路33は、x軸方向およびz軸方向のそれぞれに、等間隔で並べて配置されている。本実施形態におけるy軸方向を「第2方向」とも呼ぶ。
【0069】
次に、吸着体3の製造方法の一例を説明する。最初に、例えば、押出成形によって、z軸方向に貫通孔が形成されている吸着材を成形する。この場合、z軸方向に沿って形成された貫通孔が第1流路32となる。押出成形において、材料は、z軸方向に押出されているため、繊維Fは、z軸方向に略平行に配向している(図14(a))。この押出成形で成形された吸着材に対して、ドリルを用いて、y軸方向に貫通孔を形成する。このドリルで形成された貫通孔が第2流路33となる。これにより、吸着体3が完成される。なお、ここでは、ドリルを用いて貫通孔を形成するとしたが、別の方法で貫通孔を形成してもよい。
【0070】
以上説明したように、第3実施形態の吸着体3には、互いに交差する方向に延びる複数の第1流路32と複数の第2流路33とが形成されている。これにより、水蒸気をより広範囲に拡散させることができるとともに、吸着体3の内部における表面積が増加するため、吸着体3が水蒸気を吸着しやすくなる。したがって、吸着体3における水蒸気の吸着量を増加させることができる。
【0071】
また、本実施形態の吸着体3は、複数の流路が形成されることにより構造が疎になる部分があるものの、吸着体3は、繊維Fを含むため、構造強度を向上させることができる。
【0072】
<第4実施形態>
図15は、第4実施形態の吸着体4を概念的に示す説明図である。図15(a)は、吸着体4の斜視図であり、図15(b)は、吸着体4の上面図である。図15(b)では、第1流路42を明瞭に示すために、第1流路32以外に斜線ハッチングを付して示し、繊維Fの図示を省略している。なお、説明の便宜上、図15では、第1流路42の開口が形成されている方向をx軸方向とし、第2流路43の開口が形成されている方向をy軸方向とし、z軸とy軸とに直交する方向をz軸方向とする。また、図15では、吸着体3の構造をわかりやすくするため、流路の大きさなどを実際の比率から変更している。
【0073】
第4実施形態の吸着体4は、第1実施形態の吸着体1(図2)と形状が異なるものの、第1実施形態と同一の材料から形成されている。すなわち、図15(a)に示すように、吸着体4は繊維Fを含んでいる。本実施形態の吸着体4には、複数の第1流路42と、複数の第2流路43と、が形成されており、略直方体状に形成されている。
【0074】
第1流路42は、x軸方向に延びる流路であって、吸着体4をx軸方向に貫通する。本実施形態では、第1流路42は、6個形成されている。第1流路42は、y軸方向およびz軸方向のそれぞれに、等間隔で並べて配置されている。本実施形態におけるx軸方向を「第1方向」とも呼ぶ。
【0075】
第2流路43は、y軸方向に延びる流路であって、吸着体4をy軸方向に貫通する。本実施形態では、第2流路43は、6個形成されている。第2流路43は、x軸方向およびz軸方向のそれぞれに、等間隔で並べて配置されている。本実施形態におけるy軸方向を「第2方向」とも呼ぶ。
【0076】
本実施形態において、第1流路42と第2流路43とは重なっており、連通している。そのため、z軸方向に延びる第3流路44が形成されている(図15(b))。第4実施形態において、第1流路42、第2流路43、および第3流路44は、互いに直交している。
【0077】
次に、吸着体4の製造方法の一例を説明する。最初に、例えば、押出成形によって、x軸方向に貫通孔が形成されている吸着材を成形する。この場合、x軸方向に沿って形成された貫通孔が第1流路42となる。押出成形において、材料は、x軸方向に押出されているため、繊維Fは、x軸方向に略平行に配向している(図15(a))。この押出成形で成形された吸着材に対して、ドリルを用いて、y軸方向に貫通孔を形成する。このドリルで形成された貫通孔が第2流路43となる。このとき、第1流路42と第2流路43とが連通するように貫通孔を形成することにより、第3流路44が形成される。なお、x軸方向とy軸方向とに貫通孔が形成されている吸着材に対して、ドリルを用いて、z軸方向に貫通孔を形成することによって第3流路44を形成してもよい。このとき、ドリルは、x軸方向に形成されている貫通孔とy軸方向に形成されている貫通孔との両方を通るように、貫通孔を形成する。ここでは、ドリルを用いて貫通孔を形成するとしたが、別の方法で貫通孔を形成してもよい。
【0078】
以上説明したように、第4実施形態の吸着体4には、互いに交差する方向に並ぶ複数の第1流路42と複数の第2流路43とが形成されている。これにより、水蒸気をより広範囲に拡散させることができるとともに、吸着体4の内部における表面積が増加するため、吸着体4が水蒸気を吸着しやすくなる。したがって、吸着体4における水蒸気の吸着量を増加させることができる。
【0079】
さらに、本実施形態の吸着体4によれば、第1流路42および第2流路43は、連通しているため、被吸着体である水蒸気は、吸着体4の内部をまんべんなく拡散することができる。したがって、水蒸気が吸着体4に接触しやすくなるため、吸着体4が水蒸気を吸着しやすくなり、吸着体4における水蒸気の吸着量を増加させることができる。
【0080】
また、本実施形態の吸着体4も繊維Fを含むため、吸着体4の構造強度を向上させることができる。
【0081】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0082】
・上記実施形態では、第1流路が延びる方向である第1方向と、第2流路が延びる方向である第2方向とが直交する例を示したが、第1方向と第2方向とは直交していなくてもよく、交差する方向であればよい。これにより、一方の流路で水蒸気を流通させることができない吸着体の内部に他方の流路で流通させることができるため、吸着材の利用率が向上し、吸着体における水蒸気の吸着量を増加させることができる。
【0083】
・上記実施形態の吸着体では、第1方向に延びる第1流路と第2方向に延びる第2流路とが形成される例を示したが、さらに、異なる方向に延びる複数種類の流路が形成されてもよい。例えば、第1方向と45℃の角度で交差する第3方向に延びる第3流路が形成されてもよい。
【0084】
・上記実施形態では、吸着能を有する材料として、シリカゲルを例示したが、これに限定されない。例えば、水を吸着可能な活性炭やゼオライトなどを用いてもよい。また、吸着材に吸着される気体は、水蒸気に限定されない。例えば、アンモニア、メタノール、エタノールなどを吸着する吸着体として構成してもよい。
【0085】
・第1実施形態では、第1吸着材11aおよび第2吸着材12aは、断面形状が矩形状であるものを例示した。しかしながら、吸着材の断面形状は矩形状に限定されず、例えば、円形状、楕円形状、多角形状等、種々の形状で形成することができる。
【0086】
・上記実施形態において、第1吸着材11aおよび第2吸着材12aは、平面形状が直線状に形成される例を示したが、これに限定されない。例えば、平面形状波線状、曲線状、折れ線(ジグザグ)状等、種々の形状の線状に形成することができる。平面形状がこのような形状の場合、中心線(平均線)の方向を、吸着材が延びる方向と定めることができる。
【0087】
・吸着体の製造方法は、上記実施形態に限定されず、公知の種々の製造方法により製造することができる。例えば、3Dプリンタを用いて、熱溶解積層方式により吸着体を製造してもよい。この場合、吸着材、熱伝導助剤、および繊維に対して、熱可溶性の樹脂を混ぜた材料を用い、ノズル部で加熱することにより溶かして積層することができる。この場合も、繊維を有するため、吸着中間体の冷却に伴う収縮による亀裂の発生を抑制することができる。
【0088】
・第1実施形態および第2実施形態では、第1吸着層と第2吸着層とが同じ材料から形成される例を示したが、第1吸着層と第2吸着層とが、異なる材料から形成されていてもよい。例えば、異なる種類の吸着材を用いた材料が異なる吸着層を積層してもよい。
【0089】
・上記実施形態において、繊維Fとして、炭素繊維を用いる例を示したが、本実施形態に限定されず、例えば、金属繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維や、石綿(アスベスト)等の鉱物繊維等の繊維を少なくとも1種類含んでもよい。例えば、繊維Fとして、炭素繊維とガラス繊維を用いてもよい。ガラス繊維は、炭素繊維と比較して安価であり、吸着体の構造強度を向上させる効果を得ることができるため、繊維Fとして、炭素繊維とガラス繊維の2種類の繊維を含むことにより、炭素繊維のみを用いる場合と比較して、コスト低減を図ることができる。
【0090】
・上記第1実施形態および第2実施形態において、全ての吸着材に繊維Fが含まれる例を示したが、少なくとも1つの吸着材に繊維Fが含まれていてればよい。例えば、最上面に配置される第1吸着層11にのみ繊維Fが含まれる構成にしてもよい。このようにしても、最初に乾燥して収縮する第1吸着層中間体11pにおける亀裂の発生を抑制することができるため、吸着体1の反りを抑制することができる。さらに、最上面に配置される第1吸着層11のうち、一本の第1吸着材11aにのみ繊維Fが含まれていてもよい。このようにしても、当該吸着材の切れを抑制することができる。
【0091】
・上記第1実施形態において、繊維Fが、積層面11Sに略平行に配向すると共に、壁面11Wに略平行に配向する例を示したが、繊維Fは配向していなくてもよい。吸着体に繊維Fが含まれていれば、繊維Fが配向していなくても、構造強度を向上させることができる。
【0092】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0093】
1、2、3、4、90…吸着体
1p、2p、80p…吸着体中間体
5、5A…熱交換器
5a…伝熱壁
6、7…反応器
6a、7a…反応容器
8…蒸発凝縮器
8a…水配管
8b…貯留容器
9…蒸発凝縮器
9a…水配管
9b…貯留容器
10…吸着式ヒートポンプ
11、21…第1吸着層
11S…積層面
11W…壁面
11a、21a…第1吸着材
11ap、21ap、81ap…第1吸着材中間体
11b、21b、32、42、…第1流路
11p、21p、81p…第1吸着層中間体
12、22…第2吸着層
12a、22a…第2吸着材
12ap、22ap、82ap…第2吸着材中間体
12b、22b、33、43…第2流路
12p、22p、82p…第2吸着層中間体
16…連通部
18…ステージ
19…ノズル
44…第3流路
92…流路
C5…中心軸
F…繊維
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