(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167197
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、及び真皮ヒアルロン酸産生促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20221027BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20221027BHJP
A61K 8/9794 20170101ALI20221027BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/232 20060101ALI20221027BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20221027BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20221027BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/63 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/59 20060101ALI20221027BHJP
A61K 35/64 20150101ALI20221027BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/888 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20221027BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20221027BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20221027BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20221027BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20221027BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20221027BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20221027BHJP
A61K 133/00 20060101ALN20221027BHJP
【FI】
A61K8/64
A61K8/9789
A61K8/9794
A61Q19/00
A61K36/232
A61P17/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61K36/63
A61K36/59
A61K35/64
A61P43/00 107
A61K36/736
A61K36/899
A61K36/888
A61K36/61
A61K36/53
A23L33/10
A23L33/105
A61K127:00
A61K135:00
A61K125:00
A61K133:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072833
(22)【出願日】2021-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】大戸 信明
(72)【発明者】
【氏名】周 艶陽
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
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4C083AA111
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4C087ZA89
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4C088AC05
4C088AC13
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZA96
4C088ZB15
4C088ZB21
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物由来の組成物の中からヒアルロン酸産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【解決手段】ヒアルロン酸産生促進剤に、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有せしめる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有するヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項2】
アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する表皮ヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項3】
アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する真皮ヒアルロン酸産生促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、及び真皮ヒアルロン酸産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の真皮及び表皮は、表皮細胞、線維芽細胞、及び真皮細胞外マトリックス等によって構成されている。ヒアルロン酸は、真皮ヒアルロン酸と表皮ヒアルロン酸とに区別される。真皮ヒアルロン酸は、コラーゲン、エラスチン等とともに真皮細胞外マトリックスを構成し、表皮細胞や線維芽細胞等の細胞の外にあって皮膚構造を支持している。一方で、表皮ヒアルロン酸は、重層した表皮細胞の細胞間隙に存在して細胞間スペースを維持し、細胞の分化や増殖に寄与することが知られている。若い皮膚では、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことによって、水分保持、柔軟性、弾力性等が確保され、肌は外見的にも張りや艶があって、みずみずしい状態が維持される。
【0003】
ところが、紫外線の照射、空気の著しい乾燥、過度の皮膚洗浄等のある種の外的因子の影響や、加齢の進行により、細胞外マトリックスの主要構成成分の一つであるヒアルロン酸の産生量が減少するとともに、ヒアルロン酸の分解及び変質が起こる。また、外的因子の影響や加齢に伴う線維芽細胞の増殖率低下も、天然の保湿因子であるヒアルロン酸の産生量の低下に繋がる。その結果、皮膚の弾力性や保湿機能は低下し、角質は異常剥離を引き起こし、肌は張りや艶を失い、荒れ、シワ、くすみ等の老化症状を呈するようになる。特に、真皮ヒアルロン酸の産生量が低下すると、皮膚の弾力性の低下や深いシワの形成等の老化症状が現れる。一方、表皮ヒアルロン酸の産生量が低下すると、皮膚の保湿機能の低下、肌荒れ、小ジワの形成等の老化症状が現れる。
【0004】
ヒアルロン酸は、ムコ多糖の一種であり、細胞間の間隙に充填されることにより細胞を保持する機能を有し、さらに細胞間隙への水分の保持、組織への潤滑性や柔軟性の付与、機械的障害等の外力に対する抵抗等、数多くの機能を有している。ヒアルロン酸の産生を促進することができれば、皮膚の荒れ、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下及び保湿機能の低下等といった皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができると考えられている。
【0005】
また、ヒアルロン酸は、皮膚組織の他にも、軟骨、関節液、臍帯、眼硝子体、その他の結合組織に存在する。このうち、関節液に含まれるヒアルロン酸は、関節軟骨の表面を覆い、ヒアルロン酸が有する潤滑機能、軟骨に対する被覆・保護機能等により、関節の円滑な作動に役立っている。一方、慢性関節リウマチ等の関節炎において、関節液におけるヒアルロン酸の濃度が低下していることが知られている。したがって、ヒアルロン酸の産生を促進することで、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎又は骨関節炎等の関節炎を予防又は治療することができると考えられている。
【0006】
さらに、創傷又は熱傷の治癒過程において、肉芽組織が形成されるが、ヒアルロン酸が肉芽組織の形成に関与することが知られている。そのため、ヒアルロン酸の産生を促進することで、創傷又は熱傷の治癒を促進することができると考えられる。
【0007】
従来、ヒアルロン酸産生促進作用を有するものとしては、カンラン科ボスウェリア属フランキンセンスより得られる植物エッセンス、ビャクダン科ビャクダン属ビャクダンより得られる植物エッセンス、バラ科バラ属ダマスクロ-ズより得られる植物エッセンス及びシソ科マンネンロウ属ロ-ズマリ-より得られる植物エッセンス(特許文献1参照)、クロミキイチゴ抽出物またはヒマラヤンラズベリー抽出物(特許文献2参照)、トゲドコロの植物体又はその抽出物(特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-023437号公報
【特許文献2】特開2013-018734号公報
【特許文献3】特開2012-056919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全性の高い天然物由来の組成物の中からヒアルロン酸産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするヒアルロン酸産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決するために、本発明は、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有するヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【0011】
また、本発明は、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する表皮ヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【0012】
また、本発明は、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する真皮ヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記表皮ヒアルロン酸産生促進剤及び上記真皮ヒアルロン酸産生促進剤を含有するヒアルロン酸産生促進剤を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安全性の高い天然物由来の組成物の中からヒアルロン酸産生促進作用を有するものを見出し、それを有効成分とするヒアルロン酸産生促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤は、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を有効成分として含有する。
【0016】
本実施形態における有効成分としての上記各種抽出物を得るために使用される抽出原料は、アシタバ(学名:Angelica keiskei)、オリーブ(学名:Olea europaea)、ブドウ(学名:Vitis spp.)、タマサキツヅラフジ(学名:Stephania cephalantha)、モモ(学名:Prunus persica Batsch)、クマザサ(学名:Sasa veitchii)、ショウブ(学名:Acorus calamus)、チョウジ(学名:Syzygium aromaticum)、トウキ(学名:Angelica acutiloba Kitagawa)及びメリッサ(学名:Melissa officinalis L.)である。
【0017】
アシタバ(学名:Angelica keiskei)は、セリ科シシウド属に属する多年草であって、房総半島、伊豆半島、伊豆半島等に自生しており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るアシタバの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、根部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部又は茎部である。
【0018】
オリーブ(学名:Olea europaea)は、モクセイ科オリーブ属に属する常緑高木植物であって、地中海沿岸や中国等をはじめとしたアジアで栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るオリーブの部位としては、例えば、葉部、枝部、幹部、樹皮部、果実部、地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0019】
タマサキツヅラフジ(学名:Stephania cephalantha)は、ツヅラフジ科ツヅラフジ属に属するつる性の植物であって、中国南部や台湾等に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るタマサキツヅラフジの部位としては、例えば、葉部、枝部、茎部、花部、蕾部、根部、塊根部、又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは塊根部である。
【0020】
モモ(学名:Prunus persica Batsch)は、バラ科サクラ属に属する落葉小高木であって、中国や日本で古くから栽培されており、これらの地域から容易に入手され得る。抽出原料として使用し得るモモの構成部位としては、例えば、葉部、幹部、枝部、花部、蕾部、果実部、果皮部、果核部、種子部、地上部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0021】
クマザサ(学名:Sasa veitchii)は、イネ科ササ属に属する植物であって、近畿地方、中国地方、九州地方等に自生しており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るクマザサの部位としては、例えば、葉部、茎部、枝部、樹皮部、花部、地上部、根部又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部である。
【0022】
ショウブ(学名:Acorus calamus)は、サトイモ科ショウブ属に属する植物であって、北海道から九州、東アジア、インド等において広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るショウブの部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、根部、根茎部(菖蒲根ともいう。)、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根茎部(菖蒲根)である。
【0023】
チョウジ(学名:Syzygium aromaticum)は、フトモモ科フトモモ属に属する植物であって、インドネシア、タンザニア、マダガスカル、マレーシア等において広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るチョウジの部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、花蕾部、種子部、果実部、果皮部、果核部、地上部、根部、これらの混合物、又は全草等が挙げられるが、好ましくは花蕾部である。
【0024】
トウキ(学名:Angelica acutiloba Kitagawa)は、セリ科シシウド属に属する多年草であって、日本を原産とし、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るトウキの部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、果実部、根部、根茎部、地上部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは根部である。
【0025】
メリッサ(学名:Melissa officinalis L.)は、シソ科コウスイハッカ属に属する多年生草本であって、コウスイハッカとも呼ばれる。ヨーロッパ、中央アジア、北アメリカ等において広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るメリッサの構成部位としては、例えば、葉部、茎部、花部、地上部、根部、又はこれらの混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部及び/又は茎部である。
【0026】
上記の抽出原料からの抽出物に含まれるヒアルロン酸産生促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、植物の抽出等に一般に用いられている抽出方法によって、上記抽出原料からヒアルロン酸産生促進作用を有する抽出物を得ることができる。なお、抽出物には、抽出処理によって抽出原料から得られる抽出液、抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物のいずれもが含まれる。
【0027】
上記抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま、または粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0028】
抽出に用いられる溶媒としては、水、親水性有機溶媒、またはこれらの混合物等が挙げられ、室温または溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。各抽出原料に含まれるヒアルロン酸産生促進作用を有する成分は、極性溶媒を抽出溶媒とする抽出処理によって容易に抽出することができる。
【0029】
抽出溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0030】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0031】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0032】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温または還流加熱下で抽出することができる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に各抽出原料を投入し、必要に応じて撹拌しながら、30分~4時間静置して可溶性成分を溶出した後、濾過して固形物を除去することにより抽出物を得ることができる。得られた抽出液から抽出溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥することにより乾燥物が得られる。抽出条件は、抽出溶媒として水を用いた場合には50~95℃で1~4時間程度である。また、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40~80℃で30分~4時間程度である。
【0033】
以上のようにして得られた抽出液は、該抽出液の希釈液もしくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。
【0034】
なお、得られた抽出液はそのままでもヒアルロン酸産生促進剤として使用することができるが、濃縮液または乾燥物としたもののほうが好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0035】
また、各抽出原料は特有の匂いと味を有しているため、その生理活性の低下を招かない範囲で脱色、脱臭等を目的とする精製を行うことも可能であるが、化粧料に添加する場合には大量に使用するものではないから、未精製のままでも実用上支障はない。精製は、例えば活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等によって行うことができる。
【0036】
本実施形態における有効成分であるシルク加水分解物を得るために使用されるシルクは、蚕(学名:Bombyx mori)の繭糸から得られる絹繊維であって、商業的に容易に入手することができる。
【0037】
シルクに含まれるヒアルロン酸産生促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、シルクを酸あるいはアルカリを含む溶媒を用いて加水分解することによって、ヒアルロン酸産生促進作用を有する溶液(シルクの加水分解物)を得ることができる。なお、シルク加水分解物を得るために用いることができる酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、酒石酸、シュウ酸等の有機酸等が挙げられ、これらのうちから選択される1種の酸を用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。また、シルク加水分解物を得るために用いることができるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、これらのうちから選択される1種のアルカリを用いてもよいし、2種以上の混合物を用いてもよい。
【0038】
シルク加水分解物を得る方法としては、特殊な方法を採用する必要はなく、常法に従って行うことができる。例えば、酸を適量添加した溶媒に、シルクを投入し、必要に応じて適宜撹拌しながら反応させ、濾過処理を行った後、アルカリを加えて中和し、減圧下で濃縮した後、さらに濾過処理を行い、目的とするシルク加水分解物を得る方法等が挙げられる。なお、加水分解条件としては、シルク加水分解物を得るという目的が達成される限りにおいて、特に制限はない。例えば、反応時間は30分~10日間であればよく、反応温度は0~130℃であればよい。また、シルクを加水分解する際に使用する酸又はアルカリの添加量や濃度等は、酸又はアルカリの種類や使用する溶媒の種類や添加量等に応じてシルク加水分解物を得られる程度に適宜調整されるものであればよい。
【0039】
シルク加水分解物を製造する際に用いることができる溶媒としては、水を含む限りにおいて、特に制限はなく、水を単独で用いてもよいし、水と親水性有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。
【0040】
溶媒として使用し得る水としては、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。従って、本発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0041】
上記親水性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0042】
2種以上の極性溶媒の混合液を溶媒として使用する場合、その混合比はシルク加水分解物を得るという目的が達成される範囲において適宜調整されればよい。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。水と脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましい。水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール1~90容量部を混合することが好ましい。
【0043】
以上のようにしてシルクを加水分解して得られた水溶液は、当該水溶液の希釈液もしくは濃縮液、当該水溶液の乾燥物、またはこれらの粗精製物もしくは精製物を得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよい。なお、得られた水溶液はそのままでもヒアルロン酸産生促進剤として使用することができるが、濃縮液または乾燥物としたもののほうが好ましい。乾燥物を得るにあたっては、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリン等のキャリアーを添加してもよい。
【0044】
本実施形態における有効成分であるブドウ抽出物を得るために使用されるブドウ(学名:Vitis spp.)は、ブドウ科ブドウ属に属するつる性の落葉低木であって、北アメリカや東アジア等において広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。
【0045】
抽出原料であるブドウに含まれるヒアルロン酸産生促進作用を有する物質の詳細は不明であるが、ブドウの樹から採取した樹液等を本実施形態におけるブドウ抽出物とすることができる。なお、本実施形態におけるブドウ抽出物は、上記方法により得られるブドウ樹液を常法に従って、希釈、濃縮、乾燥等の処理を施した希釈物、濃縮物又は乾燥物であってもよい。
【0046】
以上のようにして得られるアシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物は、ヒアルロン酸産生促進作用を有しているため、その作用を利用してヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として用いられ得る。特に、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物は、表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有しているため、その作用を利用して表皮ヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として用いられ得る。また、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物は、真皮ヒアルロン酸産生促進作用を有しているため、その作用を利用して真皮ヒアルロン酸産生促進剤の有効成分として用いられ得る。
【0047】
なお、本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤においては、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物のうちのいずれか1種を上記有効成分として用いてもよいし、それらのうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよい。また、本実施形態に係る表皮ヒアルロン酸産生促進剤は、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物のうちのいずれか1種又は2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよいし、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物のうちのいずれか1種又は2種以上と、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物のうちのいずれか1種又は2種以上とを混合して上記有効成分として用いてもよい。また、本実施形態における真皮ヒアルロン酸産生促進剤においては、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物のうちのいずれか1種又は2種以上を混合して上記有効成分として用いてもよいし、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物のうちのいずれか1種又は2種以上と、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物のうちのいずれか1種又は2種以上とを混合して上記有効成分として用いてもよい。さらに、本実施形態におけるヒアルロン酸産生促進剤において、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物から選ばれる1種又は2種以上と、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種又は2種以上とを混合して上記有効成分として用いてもよい。上記抽出物及び上記加水分解物のうちの2種以上を混合して上記有効成分として用いる場合、その配合比は、それらの作用の程度に応じて適宜決定されればよい。
【0048】
本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤は、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上を製剤化したものであってもよい。
【0049】
上記抽出物及び上記加水分解物は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。上記抽出物及び上記加水分解物を製剤化したヒアルロン酸産生促進剤の形態としては、例えば、軟膏剤、外用液剤等が挙げられる。
【0050】
本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤は、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物が有するヒアルロン酸産生促進作用を通じて、例えば、皮膚のシワの形成、弾力性の低下、保湿機能の低下等の皮膚の老化症状を予防、治療又は改善することができる。特に、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物は、表皮におけるヒアルロン酸産生促進作用を有するので、表皮ヒアルロン酸の産生量低下に起因する皮膚の荒れ、小ジワの形成、保湿機能の低下等の老化症状の予防、治療又は改善剤の有効成分として用いることができ、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物は、真皮におけるヒアルロン酸産生促進作用を有するので、真皮ヒアルロン酸の産生量低下に起因する皮膚の深いシワの形成、弾力性の低下等の老化症状の予防、治療又は改善剤の有効成分として用いることができる。
【0051】
また、上記アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物は、それらのヒアルロン酸産生促進作用を利用して、ヒアルロン酸の産生量低下に起因する疾患・症状等の予防、治療又は改善剤(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節炎、化膿性関節炎、痛風性関節炎、外傷性関節炎、骨関節炎等の関節炎の予防、治療又は改善剤;創傷又は熱傷の治癒の促進剤等)の有効成分として用いることもできる。ただし、本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤は、この用途以外にもヒアルロン酸産生促進作用を発揮する意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0052】
本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤の患者に対する投与方法としては、皮下組織内投与、筋肉内投与、静脈内投与、経口投与、経皮投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0053】
また、本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤、又はアシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上は、優れたヒアルロン酸産生促進作用を有するため、皮膚化粧料、頭皮化粧料、頭髪化粧料等の化粧料や、飲食品等に配合するのに好適である。
【0054】
アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物から選ばれる1種または2種以上や、上記ヒアルロン酸産生促進剤を配合可能な化粧料としては、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、ファンデーション、ヘアトニック、ヘアローション、シャンプー、リンス、石鹸等が挙げられる。上記抽出物及び上記加水分解物やヒアルロン酸産生促進剤を化粧料に配合する場合、その配合量は、化粧料の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物に換算して約0.001~1質量%である。化粧料は、上記抽出物及び上記加水分解物が有するヒアルロン酸産生促進作用を妨げない限り、通常の化粧料の製造に用いられる主剤、助剤またはその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化・活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料等を併用することができる。このように併用することで、より一般性のある製品となり、また、併用された他の有効成分との間の相乗作用が通常期待される以上の優れた効果をもたらすことがある。
【0055】
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口または消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態に係る「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品,機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する組成物を幅広く含むものである。本実施形態における飲食品は、当該飲食品又はその包装に上記抽出物及び上記加水分解物が有するヒアルロン酸産生促進作用が表示されるものであってもよいし、当該飲食品は、保健機能食品(特定保健用食品,機能性表示食品、栄養機能食品)、医薬部外品又は医薬品であってもよい。
【0056】
上記抽出物及び上記加水分解物、又は上記抽出物及び上記加水分解物から製剤化したヒアルロン酸産生促進剤を飲食品に配合する場合、それらにおける有効成分の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる飲食品の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象飲食品が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の形態である場合、上記抽出物及び上記加水分解物、又は上記抽出物及び上記加水分解物から製剤化したヒアルロン酸産生促進剤の添加量は、添加対象飲食品に対して通常0.1~100質量%であり、好ましくは5~100質量%である。
【0057】
上記抽出物及び上記加水分解物の混合物又は上記抽出物及び上記加水分解物の混合物から製剤化したヒアルロン酸産生促進作用剤を配合し得る飲食品は特に限定されないが、その具体例としては、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これらの飲料の濃縮原液および調整用粉末を含む);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子等の菓子類;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂および油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;スープ、シチュー、サラダ、惣菜、漬物;その他種々の形態の健康・栄養補助食品;錠剤、カプセル剤、ドリンク剤等が挙げられ、これらの飲食品に上記抽出物及び上記加水分解物の混合物又はヒアルロン酸産生促進作用剤を配合するときに、通常用いられる補助的な原料や添加物を併用することができる。
【0058】
なお、本実施形態に係るヒアルロン酸産生促進剤はヒトに対して好適に適用されるものであるが、ヒアルロン酸産生促進効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することも可能である。
【実施例0059】
以下、製造例、試験例等を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、下記製造例、試験例等に何ら制限されるものではない。なお、下記の試験例においては、アシタバ抽出物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサの抽出物は、製造例1~9で得られた各抽出物を被験試料として使用し、シルク加水分解物及びタマサキツヅラフジ抽出物は、ゴールデンシルク抽出液BG30(丸善製薬社製)の凍結乾燥品及びセファランチンN(丸善製薬社製)それぞれを被験試料として使用した。
【0060】
〔製造例1〕アシタバ抽出物の製造
アシタバの葉部及び茎部の乾燥物100gに70容量%ブチレングリコール溶液1500mLを加え、80~90℃にて2時間加熱抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してアシタバ抽出物(15g)を得た。
【0061】
〔製造例2〕オリーブ抽出物の製造
オリーブの葉部の乾燥物100gに50容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してオリーブ抽出物(15g)を得た。
【0062】
〔製造例3〕ブドウ抽出物の製造
ブドウの樹より樹液200gを採取した。採取した樹液を乾燥してブドウ抽出物(0.4g)を得た。
【0063】
〔製造例4〕モモ抽出物の製造
モモの葉部の乾燥物100gに30容量%ブチレングリコール溶液1500mLを加え、80~90℃にて2時間加熱抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してモモ抽出物(24g)を得た。
【0064】
〔製造例5〕クマザサ抽出物の製造
クマザサの葉部の乾燥物100gに50容量%エタノールを1500mL加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してクマザサ抽出物(5g)を得た。
【0065】
〔製造例6〕ショウブ抽出物の製造
ショウブの根茎部(菖蒲根)の乾燥物100gに30容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してショウブ抽出物(3g)を得た。
【0066】
〔製造例7〕チョウジ抽出物の製造
チョウジの花蕾部の乾燥物100gに50容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してチョウジ抽出物(0.5g)を得た。
【0067】
〔製造例8〕トウキ抽出物の製造
トウキの根部の乾燥物100gに50容量%ブチレングリコール溶液1500mLを加え、80~90℃にて2時間加熱抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してトウキ抽出物(37g)を得た。
【0068】
〔製造例9〕メリッサ抽出物の製造
コウスイハッカの葉部の乾燥物100gに90容量%エタノール溶液1500mLを加え、還流抽出器を用いて80~90℃にて2時間還流抽出を行い熱時濾過した。得られた抽出液を乾燥してメリッサ抽出物(6g)を得た。
【0069】
〔試験例1〕表皮ヒアルロン酸産生促進作用試験
アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物及びタマサキツヅラフジ抽出物について、下記の方法により表皮ヒアルロン酸産生促進作用の試験を実施した。
【0070】
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×105cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、24時間培養した。培養後に培地を除去し、KGMで溶解した各被験試料(製造例1~3で得られた各抽出物、ゴールデンシルク抽出液BG30(丸善製薬社製)の凍結乾燥品、及びセファランチンN(丸善製薬社製))を各ウェルに100μLずつ添加し、アシタバ抽出物及びオリーブ抽出物を含む各被験試料においては3日間培養し、シルク加水分解物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物を含む各被験試料においては7日間培養した。
【0071】
ヒアルロン酸産生促進作用は、培養終了後の各ウェルの培地中のヒアルロン酸量をヒアルロン酸結合タンパク(HABP)を用いたサンドイッチ法により測定した。測定結果から、下記式によりヒアルロン酸産生促進率(%)を算出した。
【0072】
ヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100
式中の「A」は、被験試料を添加した細胞のヒアルロン酸量を表し、「B」は、被験試料無添加の細胞のヒアルロン酸量を表す。
【0073】
上記試験の結果を表1に示す。なお、上記式において、被験試料無添加のヒアルロン酸産生促進率は100%となる。
【0074】
【0075】
〔試験例2〕真皮ヒアルロン酸産生促進作用試験
アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物について、下記の方法により真皮ヒアルロン酸産生促進作用の試験を実施した。
【0076】
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を10%FBS含有α-MEMを用いて前培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.2×105cells/mLの細胞密度になるように1%FBS含有α-MEMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、24時間培養した。培養後に培地を除去し、1%FBS含有α-MEMに溶解した各被験試料(製造例1、及び4~9で得られた各抽出物)を各ウェルに100μLずつ添加し、5日間培養した。
【0077】
ヒアルロン酸産生促進率は試験例1と同様の方法で算出した。結果を表2に示す。
【0078】
【0079】
表1及び表2に示すように、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、タマサキツヅラフジ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物は、いずれも高いヒアルロン酸産生促進率を示した。この結果から、これらの抽出物は、優れたヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認された。また、アシタバ抽出物、シルク加水分解物、オリーブ抽出物、ブドウ抽出物、及びタマサキツヅラフジ抽出物は、いずれも優れた表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認され、アシタバ抽出物、モモ抽出物、クマザサ抽出物、ショウブ抽出物、チョウジ抽出物、トウキ抽出物、及びメリッサ抽出物は、いずれも優れた真皮ヒアルロン酸産生促進作用を有することが確認された。
本発明のヒアルロン酸産生促進剤は、優れたヒアルロン酸産生発現促進作用を有するので、化粧料や飲食品等の一成分として、更には研究用の試薬として好適に利用され得る。