(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167481
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】静電吸着部材及び基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20221027BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073287
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直幸
(72)【発明者】
【氏名】立岩 昭彦
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA19
5F131CA04
5F131CA70
5F131EA03
5F131EB13
5F131EB18
5F131EB22
5F131EB82
5F131EB84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異常放電を更に抑制する静電吸着部材及び基板固定装置を提供する。
【解決手段】静電吸着部材30は、第1面41Aと、第1面とは反対側の第2面41Bとを有し、第1面から第2面まで貫通する貫通孔120が形成された誘電体部材41と、貫通孔内に設けられ、第1面と面一の第3面113を有する多孔質体110と、を有する。貫通孔は、第1面から第1面に垂直な第1方向に第1距離だけ離れた第1開口121と、第1面から第1方向に第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2開口と、を有し、第1方向からの平面視で、第1開口の少なくとも一部が第2開口122の内側にあり、多孔質体は、第1方向からの平面視で、第1開口の内側に位置する第1部分131と、第1部分に繋がり、第1開口の外側に位置する第2部分132と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔が形成された誘電体部材と、
前記貫通孔内に設けられ、前記第1面と面一の第3面を有する多孔質体と、
を有し、
前記貫通孔は、
前記第1面から前記第1面に垂直な第1方向に第1距離だけ離れた第1開口と、
前記第1面から前記第1方向に前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2開口と、
を有し、
前記第1方向からの平面視で、前記第1開口の少なくとも一部が前記第2開口の内側にあり、
前記多孔質体は、前記第1方向からの平面視で、
前記第1開口の内側に位置する第1部分と、
前記第1部分に繋がり、前記第1開口の外側に位置する第2部分と、
を有することを特徴とする静電吸着部材。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記多孔質体により充填されていることを特徴とする請求項1に記載の静電吸着部材。
【請求項3】
前記第1開口は、前記第1面に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の静電吸着部材。
【請求項4】
前記第2開口は、前記第2面に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電吸着部材。
【請求項5】
前記第1方向からの平面視で、前記第1開口の全体が前記第2開口の内側にあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の静電吸着部材。
【請求項6】
前記貫通孔の内壁面にらせん状の溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の静電吸着部材。
【請求項7】
前記誘電体部材は、静電電極を内蔵することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の静電吸着部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の静電吸着部材と、
前記第2面に接着されたベースプレートと、
を有することを特徴とする基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電吸着部材及び基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ等の基板の固定に用いられる基板固定装置として、静電吸着部材に基板を冷却する冷却ガス用の貫通孔が形成され、貫通孔内に異常放電の抑制のための多孔質体が設けられた基板固定装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-209615号公報
【特許文献2】特開2013-232641号公報
【特許文献3】特開2017-218352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質体が設けられた従来の基板固定装置によっても異常放電が生じることがある。
【0005】
本開示は、異常放電を更に抑制することができる静電吸着部材及び基板固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態によれば、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面とを有し、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔が形成された誘電体部材と、前記貫通孔内に設けられ、前記第1面と面一の第3面を有する多孔質体と、を有し、前記貫通孔は、前記第1面から前記第1面に垂直な第1方向に第1距離だけ離れた第1開口と、前記第1面から前記第1方向に前記第1距離よりも大きい第2距離だけ離れた第2開口と、を有し、前記第1方向からの平面視で、前記第1開口の少なくとも一部が前記第2開口の内側にあり、前記多孔質体は、前記第1方向からの平面視で、前記第1開口の内側に位置する第1部分と、前記第1部分に繋がり、前記第1開口の外側に位置する第2部分と、を有する静電吸着部材が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、異常放電を更に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態における静電吸着部材を示す図である。
【
図3】第2実施形態における静電吸着部材を示す断面図である。
【
図4】第3実施形態における静電吸着部材を示す断面図である。
【
図5】第4実施形態における静電吸着部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明者らは、多孔質体が設けられた従来の基板固定装置によっても異常放電が生じる原因を究明すべく鋭意検討を行った。この結果、基板固定装置のメンテナンス時等、静電吸着部材の上に基板が載置されていない時に、多孔質体が貫通孔から脱離することがあることが明らかになった。例えば、多孔質体が接着剤により貫通孔の内壁面に接着されている場合、基板の処理のためのプラズマの繰り返しの照射により、接着剤が劣化することがある。そして、接着剤が劣化した状態で、ベースプレートに設けられたガス路から貫通孔に冷却ガスが供給されると、ガス圧により多孔質体が貫通孔から脱離することがある。無機ペーストを用いて多孔質体が貫通孔内に埋め込まれている場合も、経時劣化等により密着力が低下し、ベースプレートに設けられたガス路から貫通孔に冷却ガスが供給されると、ガス圧により多孔質体が貫通孔から脱離することがある。多孔質体が脱離することで、後の基板の処理の際に異常放電が発生しやすくなるのである。
【0010】
本開示は、このような知見に基づきなされたものであって、多孔質体の貫通孔からの脱離を抑制し、異常放電を更に抑制する。
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を示す断面図である。
【0013】
図1に示すように、第1実施形態に係る基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電吸着部材30とを有している。
【0014】
ベースプレート10は、静電吸着部材30を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20mm~50mm程度とすることができる。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用することもできる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電吸着部材30上に吸着されたウェハ等の基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0015】
ベースプレート10の内部には、水路15が設けられている。水路15は、一端に冷却水導入部15Aを備え、他端に冷却水排出部15Bを備えている。水路15は、基板固定装置1の外部に設けられた冷却水制御装置(図示せず)に接続されている。冷却水制御装置(図示せず)は、冷却水導入部15Aから水路15に冷却水を導入し、冷却水排出部15Bから冷却水を排出する。水路15に冷却水を循環させベースプレート10を冷却することで、静電吸着部材30上に吸着された基板を冷却することができる。
【0016】
ベースプレート10の内部には、更に、ガス路16が設けられている。ガス路16には、静電吸着部材30に吸着された基板を冷却するためのヘリウム(He)ガス等の不活性ガスが導入される。
【0017】
静電吸着部材30は、基体31と、静電電極32と、発熱体33とを有している。静電吸着部材30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。静電吸着部材30がクーロン力型静電チャックであってもよい。
【0018】
基体31は、誘電体部材41と、複数の多孔質体110とを有している。
【0019】
誘電体部材41の材料は、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスである。誘電体部材41の厚さは、例えば、1mm~10mm程度であり、誘電体部材41の比誘電率は、例えば、1kHzの周波数で9~10程度である。
【0020】
誘電体部材41は、第1面41Aと、第1面41Aとは反対側の第2面41Bとを有する。第2面41Bが接着層20によりベースプレート10に接着される。第1面41Aに基板が吸着される。誘電体部材41には、第1面41Aから第2面41Bまで貫通する複数の貫通孔120が形成されている。貫通孔120は、ベースプレート10のガス路16に連通する。各貫通孔120内に1個ずつ多孔質体110が設けられている。多孔質体110及び貫通孔120の形状については、後述する。
【0021】
静電電極32は、例えば薄膜電極であり、誘電体部材41に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、所定の電圧が印加されると、基板との間に静電気による吸着力が発生し、静電吸着部材30上に基板を吸着保持することができる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32としては、例えばタングステン又はモリブデンの焼結体を用いることができる。
【0022】
発熱体33は誘電体部材41に内蔵されている。発熱体33としては、例えばタングステン又はモリブデンの焼結体を用いることができる。発熱体33として、圧延合金を用いてもよい。
【0023】
接着層20は、静電吸着部材30をベースプレート10に接着している。接着層20としては、例えば、シリコーン系接着剤を用いることができる。接着層20にアルミナや窒化アルミニウム等のフィラーが含有されていてもよい。接着層20の厚さは、例えば、0.1mm~3mm程度である。接着層20の熱伝導率は2W/(m・K)以上であることが好ましい。接着層20は、1層から形成してもよく、複数層から形成してもよい。例えば、熱伝導率が高い接着剤と弾性率が低い接着剤とを組み合わせた2層構造とすることで、ベースプレート10と静電吸着部材30との間の熱膨張差から生じるストレスを低減させる効果が得られる。
【0024】
ここで、多孔質体110及び貫通孔120の形状について説明する。
図2は、第1実施形態における静電吸着部材30を示す図である。
図2(a)は平面図であり、
図2(b)は断面図である。
図2(b)は、
図2(a)中のIIb-IIb線に沿った断面図に相当する。
【0025】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、多孔質体110は円錐台状の形状を有し、貫通孔120は多孔質体110が嵌る形状を有する。
【0026】
貫通孔120は、第1面41Aに位置する上開口121と、第2面41Bに位置する下開口122とを有する。上開口121及び下開口122の形状は円形状であり、第1面41Aに垂直な第1方向からの平面視で、上開口121の中心と下開口122の中心とが重なり合う。
【0027】
また、下開口122の直径が上開口121の直径よりも大きい。第1面41Aに平行な面での貫通孔120の開口面積は、上開口121から下開口122にかけて直線的に大きくなっている。つまり、貫通孔120の内壁面は、下開口122に近づくほど貫通孔120の開口面積が大きくなるように、第1方向から傾斜した傾斜面となっている。第1方向からの平面視で、上開口121の全体が下開口122の内側にある。上開口121は第1開口の一例であり、下開口122は第2開口の一例である。この場合、第1距離は0であり、第2距離は、誘電体部材41の厚さに等しい。
【0028】
上記のように、多孔質体110は円錐台状の形状を有する。多孔質体110は、第1面41Aと面一の第3面113と、第2面41Bと面一の第4面114とを有する。第3面113の形状及び大きさは、上開口121の形状及び大きさに略一致する。第4面114の形状及び大きさは、下開口122の形状及び大きさに略一致する。多孔質体110は、第1方向からの平面視で、上開口121の内側に位置する第1部分131と、第1部分131に繋がり、上開口121の外側に位置する第2部分132とを有する。多孔質体110の第1方向に垂直な断面の断面積は、第3面113の面積を除き、上開口121の開口面積よりも大きい。
【0029】
上記のように、貫通孔120はガス路16に連通する。貫通孔120の下開口122及び多孔質体110の第4面114は、平面視でガス路16の静電吸着部材30側の開口16Aよりも大きく形成されている。
【0030】
第1実施形態に係る基板固定装置1では、多孔質体110が、第1部分131及び第2部分132を有する。従って、多孔質体110と誘電体部材41との間の密着力が低下したとしても、多孔質体110の貫通孔120からの脱離を抑制することができる。つまり、ベースプレート10に設けられたガス路16から貫通孔120に冷却ガスが供給され、多孔質体110にガス圧がかかったとしても、第2部分132が上開口121を通過することができず、貫通孔120内に拘束されるため、多孔質体110の貫通孔120からの脱離を抑制することができる。
【0031】
従って、多孔質体110の貫通孔120からの脱離を抑制し、多孔質体110の脱離に伴う異常放電を抑制することができる。
【0032】
また、多孔質体110が誘電体部材41に接合されているため、多孔質体110と誘電体部材41との間に優れた接合強度が得られる。特に、誘電体部材41がセラミックから構成される場合に、良好な接合強度を得やすい。
【0033】
多孔質体110は、セラミックからなる誘電体部材41に接していることが好ましい。良好な接合強度が得られるとともに、両社の間の熱膨張係数の差が小さく、熱応力を低減できるからである。
【0034】
更に、多孔質体110の第3面113が第1面41Aと面一であるため、基板が静電吸着部材30に吸着された時に第3面113と基板との間に実質的に隙間が生じない。このため、多孔質体110と基板との間での放電を抑制することができる。
【0035】
多孔質体110を貫通孔120内に設ける方法は限定されない。例えば、無機材料の焼結等により多孔質体110を形成し、接着剤等により貫通孔120の内側面に固定してもよい。また、無機材料の粒子、好ましくは球状の粒子を含むペーストを貫通孔120内に塗布した後に焼成することで、多孔質体110を貫通孔120内に形成してもよい。無機材料としては、セラミック、ガラス等を用いることができる。特に、多孔質体110の主成分と誘電体部材41の主成分とが同じであることが好ましい。
【0036】
前者の方法では、厳密には、多孔質体110を貫通孔120よりも若干小さく形成しておき、接着剤等により隙間を埋めることになるが、後者の方法では、多孔質体110を直接貫通孔120の内壁面に接合することができる。このため、後者の方法によれば、貫通孔120内で多孔質体110が占める割合を高めることができる。また、後者の方法の場合には、下開口122からペーストを塗布することで、空隙を生じさせることなく、貫通孔120内にペーストを埋め込みやすい。
【0037】
なお、第1方向からの平面視で、上開口121の少なくとも一部が下開口122の内側にあれば、上開口121の少なくとも一部が下開口122の外側にあってもよい。
【0038】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、貫通孔及び多孔質体の形状の点で第1実施形態と相違する。ここでは、第2実施形態における多孔質体及び貫通孔の形状について説明する。
図3は、第2実施形態における静電吸着部材30を示す断面図である。
【0039】
第2実施形態では、基体31が、複数の多孔質体110に代えて複数の多孔質体210を有している。また、誘電体部材41には、複数の貫通孔120に代えて複数の貫通孔220が形成されている。貫通孔220は、ベースプレート10のガス路16に連通する。各貫通孔220内に1個ずつ多孔質体210が設けられている。
【0040】
図3に示すように、多孔質体210は、第1面41A側に位置するものほど断面積が小さい複数、例えば3個の円柱が重なって構成された形状を有し、貫通孔220は多孔質体210が嵌る形状を有する。
【0041】
貫通孔220は、第1面41Aに位置する上開口221と、第2面41Bに位置する下開口222とを有する。上開口221及び下開口222の形状は円形状であり、第1面41Aに垂直な第1方向からの平面視で、上開口221の中心と下開口222の中心とが重なり合う。
【0042】
また、下開口222の直径が上開口221の直径よりも大きい。第1面41Aに平行な面での貫通孔220の開口面積は、上開口221から下開口222にかけて段階的に大きくなっている。つまり、貫通孔220の内壁面は、階段状の面となっている。第1方向からの平面視で、上開口221の全体が下開口222の内側にある。上開口221は第1開口の一例であり、下開口222は第2開口の一例である。この場合、第1距離は0であり、第2距離は、誘電体部材41の厚さに等しい。
【0043】
上記のように、多孔質体210は第1面41A側に位置するものほど断面積が小さい複数、例えば3個の円柱が重なって構成された形状を有する。多孔質体210は、第1面41Aと面一の第3面213と、第2面41Bと面一の第4面214とを有する。第3面213の形状及び大きさは、上開口221の形状及び大きさに略一致する。第4面214の形状及び大きさは、下開口222の形状及び大きさに略一致する。多孔質体210は、第1方向からの平面視で、上開口221の内側に位置する第1部分231と、第1部分231に繋がり、上開口221の外側に位置する第2部分232とを有する。多孔質体210の第1方向に垂直な断面の断面積は、第3面213の面積を除き、上開口221の開口面積よりも大きい。
【0044】
上記のように、貫通孔220はガス路16に連通する。貫通孔220の下開口222及び多孔質体210の第4面214は、平面視でガス路16の静電吸着部材30側の開口16Aよりも大きく形成されている。
【0045】
第2実施形態に係る基板固定装置では、多孔質体210が、第1部分231及び第2部分232を有する。従って、多孔質体210と誘電体部材41との間の密着力が低下したとしても、多孔質体210の貫通孔220からの脱離を抑制することができる。つまり、ベースプレート10に設けられたガス路16から貫通孔220に冷却ガスが供給され、多孔質体210にガス圧がかかったとしても、第2部分232が上開口221を通過することができず、貫通孔220内に拘束されるため、多孔質体210の貫通孔220からの脱離を抑制することができる。
【0046】
多孔質体210を貫通孔220内に設ける方法は限定されない。例えば、無機材料の焼結等により多孔質体210を形成し、接着剤等により貫通孔220の内側面に固定してもよい。また、無機材料の粒子、好ましくは球状の粒子を含むペーストを貫通孔220内に塗布した後に焼成することで、多孔質体210を貫通孔220内に形成してもよい。後者の方法の場合には、下開口222からペーストを塗布することで、空隙を生じさせることなく、貫通孔220内にペーストを埋め込みやすい。
【0047】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、貫通孔及び多孔質体の形状の点で第1実施形態等と相違する。ここでは、第3実施形態における多孔質体及び貫通孔の形状について説明する。
図4は、第3実施形態における静電吸着部材30を示す断面図である。
【0048】
第3実施形態では、基体31が、複数の多孔質体110に代えて複数の多孔質体310を有している。また、誘電体部材41には、複数の貫通孔120に代えて複数の貫通孔320が形成されている。貫通孔320は、ベースプレート10のガス路16に連通する。各貫通孔320内に1個ずつ多孔質体310が設けられている。
【0049】
図4に示すように、多孔質体310は鼓状の形状を有し、貫通孔320は多孔質体310が嵌る形状を有する。
【0050】
貫通孔320は、第1面41Aに位置する上開口321と、第2面41Bに位置する下開口322と、上開口321と下開口322との間に位置する中間開口323とを有する。上開口321、下開口322及び中間開口323の形状は円形状であり、第1面41Aに垂直な第1方向からの平面視で、上開口321の中心と下開口322の中心と中間開口323の中心とが重なり合う。
【0051】
また、下開口322の直径と上開口321の直径とが略等しい。上開口321の直径及び下開口322の直径が中間開口323の直径よりも大きい。第1面41Aに平行な面での貫通孔320の開口面積は、上開口321から中間開口323にかけて直線的に小さくなり、中間開口323から下開口322にかけて直線的に大きくなっている。つまり、貫通孔320の内壁面は、上開口321と中間開口323との間では、中間開口323に近づくほど貫通孔320の開口面積が小さくなり、中間開口323と下開口322との間では、下開口322に近づくほど貫通孔320の開口面積が大きくなるように、第1方向から傾斜した傾斜面となっている。第1方向からの平面視で、中間開口323の全体が下開口322の内側にある。中間開口323は第1開口の一例であり、下開口322は第2開口の一例である。この場合、第1距離は、第1面41Aと中間開口323との間の距離であり、第2距離は、誘電体部材41の厚さに等しい。
【0052】
上記のように、多孔質体310は鼓状の形状を有する。多孔質体310は、第1面41Aと面一の第3面313と、第2面41Bと面一の第4面314とを有する。第3面313の形状及び大きさは、上開口321の形状及び大きさに略一致する。第4面314の形状及び大きさは、下開口322の形状及び大きさに略一致する。多孔質体310は、第1方向からの平面視で、中間開口323の内側に位置する第1部分331と、第1部分331に繋がり、中間開口323よりも下開口322側で中間開口323の外側に位置する第2部分332とを有する。多孔質体310の第1方向に垂直な断面の断面積は、中間開口323よりも下開口322側では、中間開口323の開口面積よりも大きい。
【0053】
上記のように、貫通孔320はガス路16に連通する。貫通孔320の下開口322及び多孔質体310の第4面314は、平面視でガス路16の静電吸着部材30側の開口16Aよりも大きく形成されている。貫通孔320の下開口322及び多孔質体310の第4面314が、平面視でガス路16の静電吸着部材30側の開口16Aよりも小さく形成されていてもよい。
【0054】
第3実施形態に係る基板固定装置では、多孔質体310が、第1部分331及び第2部分332を有する。従って、多孔質体310と誘電体部材41との間の密着力が低下したとしても、多孔質体310の貫通孔320からの脱離を抑制することができる。つまり、ベースプレート10に設けられたガス路16から貫通孔320に冷却ガスが供給され、多孔質体310にガス圧がかかったとしても、第2部分332が中間開口323を通過することができず、貫通孔320内に拘束されるため、多孔質体310の貫通孔320からの脱離を抑制することができる。
【0055】
多孔質体310を貫通孔320内に設ける方法は限定されない。例えば、無機材料の粒子、好ましくは球状の粒子を含むペーストを貫通孔320内に塗布した後に焼成することで、多孔質体310を貫通孔320内に形成してもよい。
【0056】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、貫通孔及び多孔質体の形状の点で第1実施形態等と相違する。ここでは、第4実施形態における多孔質体及び貫通孔の形状について説明する。
図5は、第4実施形態における静電吸着部材30を示す断面図である。
【0057】
第4実施形態では、基体31が、複数の多孔質体110に代えて複数の多孔質体410を有している。また、誘電体部材41には、複数の貫通孔120に代えて複数の貫通孔420が形成されている。貫通孔420は、ベースプレート10のガス路16に連通する。各貫通孔420内に1個ずつ多孔質体410が設けられている。
【0058】
図5に示すように、多孔質体410は、雄ねじのようにらせん状の溝が形成された側面を有し、貫通孔420は、雌ねじのようにらせん状の溝が形成された内壁面を有し、貫通孔420は多孔質体410が嵌る形状を有する。
【0059】
貫通孔420は、第1面41Aに位置する上開口421と、第2面41Bに位置する下開口422とを有する。上開口421及び下開口422の形状は円形状であり、第1面41Aに垂直な第1方向からの平面視で、上開口421の中心と下開口422の中心とが略重なり合う。
【0060】
第1面41Aに垂直な第1方向からの平面視で、貫通孔420の側面に形成されたらせん状の溝の底部を繋いだ底部曲線は環状となっており、第1方向で隣り合う溝の間の頂部を繋いだ頂部曲線も環状となっている。そして、底部曲線の環の面積は、頂部曲線の環の面積よりも大きい。第1面41Aに垂直な第1方向からの平面視で、1周分の環を構成する頂部曲線に相当する頂部開口423は第1開口の一例であり、この頂部開口423よりも下開口422側に位置し、1周分の環を構成する底部曲線に相当する底部開口424は第2開口の一例である。この場合、第1距離は、第1面41Aと、頂部開口423のうち最も第1面41A側の部分との間の距離であり、第2距離は、第1面41Aと、底部開口424のうち最も第1面41A側の部分との間の距離である。第1方向からの平面視で、頂部開口423の全体が底部開口424の内側にある。
【0061】
上記のように、多孔質体410は、雄ねじのようにらせん状の溝が形成された側面を有する。多孔質体410は、第1面41Aと面一の第3面413と、第2面41Bと面一の第4面414とを有する。第3面413の形状及び大きさは、上開口421の形状及び大きさに略一致する。第4面414の形状及び大きさは、下開口422の形状及び大きさに略一致する。多孔質体410は、第1方向からの平面視で、頂部開口423の内側に位置する第1部分431と、第1部分431に繋がり、頂部開口423よりも下開口422側で頂部開口423の外側に位置する第2部分432とを有する。
【0062】
上記のように、貫通孔420はガス路16に連通する。貫通孔420の下開口422及び多孔質体410の第4面414は、平面視でガス路16の静電吸着部材30側の開口16Aよりも大きく形成されている。貫通孔420の下開口422及び多孔質体410の第4面414が、平面視でガス路16の静電吸着部材30側の開口16Aよりも小さく形成されていてもよい。
【0063】
第4実施形態に係る基板固定装置では、多孔質体410が、第1部分431及び第2部分432を有する。従って、多孔質体410と誘電体部材41との間の密着力が低下したとしても、多孔質体410の貫通孔420からの脱離を抑制することができる。つまり、ベースプレート10に設けられたガス路16から貫通孔420に冷却ガスが供給され、多孔質体410にガス圧がかかったとしても、第2部分432が頂部開口423を通過することができず、貫通孔420内に拘束されるため、多孔質体410の貫通孔420からの脱離を抑制することができる。
【0064】
多孔質体410を貫通孔420内に設ける方法は限定されない。例えば、無機材料の焼結等により多孔質体410を形成し、接着剤等により貫通孔120の内側面に固定してもよい。多孔質体410は貫通孔420内にねじ込むことができる。また、無機材料の粒子、好ましくは球状の粒子を含むペーストを貫通孔420内に塗布した後に焼成することで、多孔質体410を貫通孔420内に形成してもよい。
【0065】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 基板固定装置
10 ベースプレート
16 ガス路
30 静電吸着部材
31 基体
41 誘電体部材
110、210、310、410 多孔質体
113、213、313、413 第3面
114、214、314、414 第4面
120、220、320、420 貫通孔
121、221、321、421 上開口
122、222、322、422 下開口
131、231、331、431 第1部分
132、232、332、432 第2部分
323 中間開口