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特開2022-167558ジビニルベンジルフルオレン化合物及びその製造方法、それから得られる硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂硬化物、光学物品及び撮像装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167558
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】ジビニルベンジルフルオレン化合物及びその製造方法、それから得られる硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂硬化物、光学物品及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/34 20060101AFI20221027BHJP
   C07C 15/60 20060101ALI20221027BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20221027BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
C08F212/34
C07C15/60 CSP
G02B1/04
G02C7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073421
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】川辺 正直
(72)【発明者】
【氏名】倉富 格
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB46
4J100AB15P
4J100AB15Q
4J100AL08Q
4J100BA02Q
4J100BC12P
4J100BC12Q
4J100BC44Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA37
4J100DA61
4J100DA62
4J100DA63
4J100FA03
4J100FA47
(57)【要約】      (修正有)
【課題】透明性、溶解性などの特性が改善された新規なジビニルベンジルフルオレン化合物、この化合物の製造方法、および、それから得られる硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂硬化物、光学物品及び撮像装置を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるジビニルベンジルフルオレン化合物であって、

(式中、Rは独立にハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭素数6~30のアリール基及び炭素数3~30のヘテロアリール基から選ばれる一つの置換基を示し、xは独立に0~4の整数を示す)
示査走査熱量計を使用して昇温速度:10℃/分で測定を行った場合、融点が130℃以下又は融点を持たないことを特徴とするジビニルベンジルフルオレン化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるジビニルベンジルフルオレン化合物であって、
【化1】

(式中、Rは独立にハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭素数6~30のアリール基及び炭素数3~30のヘテロアリール基から選ばれる一つの置換基を示し、xは独立に0~4の整数を示す)
示査走査熱量計を使用して昇温速度:10℃/分で測定を行った場合、融点が130℃以下又は融点を持たないことを特徴とするジビニルベンジルフルオレン化合物。
【請求項2】
上記ジビニルベンジルフルオレン化合物のビニルベンジル基のp-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率が0.6~1.0である請求項1に記載のジビニルベンジルフルオレン化合物。
【請求項3】
下記一般式(2)で示されるフルオレン化合物の1種又は2種以上と、p-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率が0.6~1.0であるビニルベンジルハライドとを、アルカリ存在下で反応させることを特徴とするジビニルベンジルフルオレン化合物の製造方法。
【化2】

(式中、Rは独立にハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基および炭素数6~30のアリール基から選ばれる一つの置換基を示し、xは独立に0~4の整数を示す)
【請求項4】
上記ビニルベンジルハライドが、m-ビニルベンジルクロライド及びp-ビニルベンジルクロライドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、p-ビニルベンジルクロライド/(p-ビニルベンジルクロライド+m-ビニルベンジルクロライド)の比率が0.6~1.0である請求項3に記載のジビニルベンジルフルオレン化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のジビニルベンジルフルオレン化合物に、該ジビニルベンジルフルオレン化合物と共重合可能なモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを配合してなることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化性樹脂硬化物を含んでなることを特徴とする光学物品。
【請求項8】
光学レンズである請求項7に記載の光学物品。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の光学物品が組み込まれてなることを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工性に優れ、かつ、透明性と高屈折率性を有するジビニルベンジルフルオレン化合物及びその製造方法、並びに、これから得られる硬化性樹脂組成物、それを硬化して得られた硬化性樹脂硬化物、これを含んでなる光学物品及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラム、各種カメラの光学素子等の光学部品には、近年、加工・生産性に優れる点から樹脂材料が広く用いられており、また、光学部品の小型化、薄型化といった傾向、或いは、反射防止性の調整といった観点から屈折率の高い樹脂材料が求められている。
特に、近年、液晶テレビ、ノートパソコン、携帯ゲーム機、携帯電話等の表示に使用される液晶表示素子において、小型化、高抵抗性、高輝度化の要求が高くなっており、この実現にはプリズムシートの高屈折率化が不可欠である。プリズムシートのような賦形材料を製造するには、高屈折率かつ粘度の低い光学材料が求められている。しかし、従来の樹脂材料は高屈折率化すると粘度が向上し、更には結晶化するという課題があった。
また、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学素子の材料として、光学ガラスあるいは光学用透明樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性や透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れ、様々な屈折率やアッベ数を有する多種類の材料が存在しているが、材料コストが高い上、成形加工性が悪く、また生産性が低いという問題点を有している。とりわけ、収差補正に使用される非球面レンズに加工するには、極めて高度な技術と高いコストがかかるため実用上大きな障害となっている。
上記の光学ガラスに対し、光学用透明樹脂からなる光学レンズは、成形性に優れ、大量生産が可能であり、しかも非球面レンズの製造も容易であるという利点を有しており、現在カメラ用レンズ用途として使用されている。高屈折率の光学用透明樹脂の例としては、ポリカーボネート、ポリエステルあるいはエピスルフィド化合物などが挙げられる。
【0003】
近年屈折率の高い光学材料として、屈折率の高い材料を提供するため、フルオレン骨格を持つ化合物が提案されている。例えば、アクリロイル基がアルキレンオキシ基を介してフルオレン骨格に結合した2官能型化合物や(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、フルオレン骨格を含有するジグリシジルエーテルとアクリル酸又はメタクリル酸とを反応させて得られる化合物(特許文献4)が知られており、これらは耐熱性が高く高屈折率であるとして注目されている。然しながら、前記した嵩高く剛直なフルオレンの誘導体は一般に固形または常温で数十Pa・s以上の高粘度液体であるため、プリズムシートなどの賦形材料に用いる場合には、適当な粘度になるよう反応性希釈剤等を多量に用いて希釈する必要があり、そのため得られる硬化物の屈折率が低くなってしまうという課題があった。
【0004】
一方、特許文献5には、フルオレン化合物及びビニルベンジルハライドをアルカリ存在下で反応させることによって得られる硬化性ポリビニルベンジル化合物が開示されている。しかしながら、当該特許公報で開示されているジビニルベンジルフルオレンで使用されているビニルベンジル単位のm-/p-異性体比率が 50/50重量%混合物であることに由来して、結晶性が高く、反応性希釈剤への溶解性も低いために、透明性が必要とされる光学部品に使用しようとすると、Hazeを生じ、透明性の低い成形品しか得られないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04-325508号公報
【特許文献2】特開2007-84815号公報
【特許文献3】WO2005/033061
【特許文献4】特開平03-106918号公報
【特許文献5】WO2002/083610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、透明性、溶解性などの特性が改善された新規なジビニルベンジルフルオレン化合物、この化合物の製造方法、および、それから得られる硬化性樹脂組成物、硬化性樹脂硬化物、光学物品及び撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ビニル基を分子内に複数有する化合物は、重合により分子間の架橋反応が進行しやすい。この特性を利用して、このような化合物を重合系に添加し共重合させることで架橋体を形成して、重合物を不溶化させたり機能性を付与させたりすることが可能である。
例えば、ビニル基を分子内に複数有する化合物としてはジビニルベンゼンが挙げられるが、これをスチレン重合系に少量加えて共重合させ、さらにスルホン酸基等の官能基を導入することでイオン交換樹脂として使用できる。その他、合成ゴム、ABS樹脂、MBS樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などのスチレン系樹脂の架橋剤や、ポリエチレンの変性剤として使用できる。別の例としては、(メタ)アクリレート等の透明樹脂系と共重合させることで、光導波路や光学レンズといった光学材料に強度や耐熱性等の機能性を付与できる可能性がある。
【0008】
具体的には、特許文献5に開示されたジビニルベンジルフルオレン化合物が知られているが、使用されているビニルベンジル単位のm-/p-異性体比率が 50/50重量%混合物であることに由来して、融点が145℃と高く、融点が130℃以下のジビニルベンジルフルオレン化合物は報告されていない。
【0009】
このような状況の中、本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ビニルベンジル単位のm-/p-異性体比率が0.6~1.0であるジビニルベンジルフルオレン化合物を合成したところ、融点が130℃以下で、かつ、反応性希釈剤への溶解性も改善され、しかも、このビニルベンジル単位のm-/p-異性体の比率が特定の範囲内にあるジビニルベンジルフルオレン化合物の成形硬化物は、意外にも、全光線透過率、Hazeなどの光学特性が十分に改善されており、かつ、高い屈折率を有していることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるジビニルベンジルフルオレン化合物であって、
【化1】

(式中、Rは独立にハロゲン原子、炭素数1~5のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭素数6~30のアリール基及び炭素数3~30のヘテロアリール基から選ばれる一つの置換基を示し、xは独立に0~4の整数を示す)
示査走査熱量計を使用して昇温速度:10℃/分で測定を行った場合、融点が130℃以下又は融点を持たないことを特徴とするジビニルベンジルフルオレン化合物である。
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物は、ビニルベンジル基のp-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率が0.6~1.0であることが好適である。
【0011】
本発明は、下記一般式(2)で示されるフルオレン化合物の1種又は2種以上と、p-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率が0.6~1.0であるビニルベンジルハライドとを、アルカリ存在下で反応させることを特徴とするジビニルベンジルフルオレン化合物の製造方法である。
【化2】

(式中、R、xは、一般式(1)におけるものと同義である)
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物の製造方法は、上記ビニルベンジルハライドが、m-ビニルベンジルクロライド及びp-ビニルベンジルクロライドからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、p-ビニルベンジルクロライド/(p-ビニルベンジルクロライド+m-ビニルベンジルクロライド)の比率が0.6~1.0であることが好適である。
【0012】
本発明は、上記ジビニルベンジルフルオレン化合物に、該ジビニルベンジルフルオレン化合物と共重合可能なモノマー、オリゴマーおよび/ またはポリマーを配合してなることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。
さらに、本発明は、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化物、硬化性樹脂硬化物を含んでなる光学物品、及び光学物品が組み込まれてなる撮像装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物は、溶解性が改善され、その成形硬化物は、透過率、Haze、屈折率などの光学特性が改善され、光学材料や各種の改質剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物、硬化性樹脂組成物及びこれに配合される各成分について詳しく説明する。
【0015】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物は、重合性不飽和結合を2個有する上記一般式(1)で表されるジビニルベンジルフルオレン化合物であって、示査走査熱量計を使用して、昇温速度:10℃/分で測定を行った場合に、130℃以下の融点であるか、又は融点を持たないことを特徴とするジビニルベンジルフルオレン化合物である。
【0016】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物は、融点が130℃以下であるか、又は融点を持たないことが必須であるが、融点125℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることが最も好ましい。ジビニルベンジルフルオレン化合物の融点が130℃を越えると、結晶性が高くなると共に、ビニル基の熱重合開始温度とも重なり、加工性が悪化すると共に、成形硬化物の透明性が低下する。
【0017】
上記一般式(1)において、Rは独立にハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、炭素数6~30のアリール基及び炭素数3~30のヘテロアリール基から選ばれる一つの置換基を示すが、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数3~30のヘテロアリール基である。より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のヘテロアリール基、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基である。
xは、置換数であり、独立に0~4の整数を示すが、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0である。
【0018】
ジビニルベンジルフルオレン化合物において、ビニルベンジル基のp-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率が、好ましくは0.6~1.0であり、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上である。1.0が理想的であるが、現実的には上限が0.995、より好ましくは0.99、さらに好ましくは0.98である。
o-異性体については、熱安定性の観点から、これを含まないことが望ましく、含有した場合であっても、全ビニルベンジル基に対して、5モル%未満である。換言すれば、全ビニルベンジル基において、p-異性体及びm-異性体の合計量が95モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。
【0019】
ここで、ジビニルベンジルフルオレン化合物のp-異性体の構造は、下記一般式(3)で例示される。
【化3】
【0020】
ジビニルベンジルフルオレン化合物のm-異性体の構造は、下記一般式(3)で例示される。
【化4】
【0021】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物の合成に用いられるフルオレン化合物としては、前記一般式(2)に示されるように、未置換のフルオレン、又はその芳香環部分がアルキル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アリール基若しくはヘテロアリール基で置換されたフルオレン化合物が挙げられ、これらは単独でも2 種以上の化合物を混合して用いてもよい。これらの内で、入手が容易で、工業的に実施する上で、最も好適なフルオレン化合物は、未置換のフルオレンである。
【0022】
次に、本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物の合成に用いられるビニルベンジルハライドとしては、m-ビニルベンジルクロライド、p-ビニルベンジルクロライド、m-ビニルベンジルブロマイド、p-ビニルベンジルブロマイド等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でも2種以上の化合物を混合して用いてもよい。上記のうち、m-ビニルベンジルクロライドおよびp-ビニルベンジルクロライドが、入手が容易で、工業的に実施する上で、最も好ましい。
【0023】
さらに、本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物の合成に、ビニルベンジルハライドを使用する場合に、p-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率を0.6~1.0とすることで、透明性、溶解性、加工性などの特性が改善された新規なジビニルベンジルフルオレン化合物を得ることができる。
【0024】
原料としてのビニルベンジルハライドについて、p-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率は、その下限は0.7が好ましく、0.8がより好ましく、0.9がさらに好ましい。一方、その上限は、ビニルベンジルハライドの価格又は製造のしやすさの観点から、0.995が好ましい。0.99がより好ましく。0.98がさらに好ましい。p-異性体/(m-異性体+p-異性体)の比率が、0.6未満であると、得られるジビニルベンジルフルオレン化合物の結晶性と融点が上昇し、反応性希釈剤への溶解性も悪化し、ビニル基の熱重合開始温度とも重なるため、成形硬化物の透明性が低下する。
【0025】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物の合成は、前記一般式(2)で示されるフルオレン又はフルオレン化合物の1種または2種以上と、ビニルベンジルハライドとを、アルカリ存在下で反応させて得ることができる。必要に応じて炭素数2~20のジハロメチル化合物を添加してもよい。
この反応は、公知のビニルベンジル化反応の条件に準じて行うことができる。ビニルベンジル化反応は、例えば、L.J.MathiasらのJ.Polym.Sci.,Part B;,2869(1998)、J.Polym.Sci.,Part A;,587(1997)あるいはC.J.KellyらのJ.Chem.Res.(S),446(1997)に記載されている方法によって行うことができる。
【0026】
反応溶媒としてはジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ジメトキシプロパン、1,2-ジメトキシプロパン、テトラメチレンスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等の非プロトン性極性溶媒、並びに、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、及び、これらの混合物等が挙げられ、これらの中から原料種や反応条件に応じて反応系が均一になるような溶剤種を選択すればよい。
【0027】
この反応に用いられるアルカリとしては、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のアルコキサイド、水素化物、水酸化物、例えばナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド、水素化ナトリウム、ホウ水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、反応系を非水系とするか、含水系とするかでアルカリ種を選択すればよい。アルカリの使用割合は、原料のフルオレン化合物の9位の水素1当量に対して1.1~3.0当量程度がよい。1当量未満であると、反応速度が著しく遅くなり、反応が完全に進行せず原料が残ってしまい、硬化物性に好ましくない影響を与える。また3当量を超えて用いても残存アルカリの除去に多量の洗浄水などの除去溶剤を使用するため経済的ではない。
【0028】
反応の際に相間移動触媒を用いることができる。この相間移動触媒としては、各種オニウム塩、例えば、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリカプリルメチルアンモニウムクロライド等の四級アンモニウム化合物、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の四級ホスホニウム化合物、ベンジルテトラメチレンスルホニウムブロマイド等の三級スルホニウム化合物及びこれらの混合物が挙げられる。
これらの相間移動触媒の使用量は触媒種、あるいは反応温度により触媒効果が異なるため、一概に規定できないが、一般的には原料のフルオレン化合物の9位の水素1 当量に対して、0.01~0.2当量程度使用すればよい。
【0029】
反応温度及び反応時間は、使用する原料化合物の種類、反応条件によって異なるため、一概に規定できないが、それぞれ30~100℃で0.5~20時間であればよい。100℃を超える反応温度では、しばしば熱重合などの好ましくない反応を併発する一方、30℃ 未満では反応は進むものの、長時間を要することから経済的ではない。
【0030】
本発明ではビニルベンジルハライドのような高い熱重合性を持つ不飽和ハライドを使用することから、必要に応じて熱重合防止剤を反応系に添加してもよい。例えばt-ブチルカテコール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4-ニトロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルハイドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、フェノチアジン、銅塩などが挙げられる。さらに、空気の適量の使用も重合禁止に効果がある。
これらの熱重合防止剤の使用量は、熱重合防止剤の種類によって効果が異なるため、一概に規定出来ないが、およそ硬化性ビニルベンジル化合物に対して数ppm~2000ppmである。
【0031】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、これと共重合可能なモノマー、オリゴマーおよび/ またはポリマーを配合して硬化性樹脂組成物として成形性の改善などを図ることができる。具体例としては、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、マレイミド樹脂、ポリフェノールのポリシアナート樹脂などの重合性不飽和基を有するオリゴマーまたはポリマー、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレートなどのモノマーおよびプレポリマー、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ビニルベンジルエーテル化合物、単官能あるいは多官能(メタ)アクリル酸誘導体化合物等が挙げられる。
【0032】
共重合可能なモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーを使用する場合、その使用量は、その種類、本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物との相容性、硬化物の用途などによっても異なるため、一概に規定できないが、本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物100重量部に対して、例えば、10~300重量部、好ましくは20~200重量部、より好ましくは50~150重量部である。300重量部を超える添加量では、本発明のジビニルベンジル化合物からの分離・滲出などが起こり易くなる。
【0033】
本発明のジビニルベンジル化合物および硬化性樹脂組成物は、熱、光、電子線などの公知の方法を採用して硬化させることができる。また硬化剤を使用して硬化温度を低くしたり、硬化反応を促進したりすることも有用である。硬化物は、光学レンズ等の光学・電子機器分野の光学部材等に好適に用いることができる。
【0034】
硬化剤を使用する場合、例えばベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエートなどが挙げられ、これらを用途に応じて使用できる。
その使用量は、本発明のジビニルベンジル化合物または硬化性樹脂組成物中の不飽和基の種類、濃度、使用する硬化剤の種類、半減期温度、必要とする安定性などによって異なるが、概ね本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物または硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.1~10重量部である。
【0035】
光硬化させる場合、光重合開始剤を使用するとよい。本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物は、重合性化合物としてラジカル重合性であるビニル基(エチレン性不飽和基)を有するので、光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン類;2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノンなどのアントラキノン類;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどのチオキサントン類;アセトフエノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;ベンゾフエノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、4,4'-ビスメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0036】
これらは、単独又は2種以上の混合物として使用でき、更にはトリエタノールアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の安息香酸誘導体等の促進剤などと組み合わせて使用することができる。
【0037】
光重合開始剤の市販品としては、例えばIrgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur l116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
その使用量は、例えば、本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物または硬化性樹脂組成物100重量部に対して、0.1~10重量部である。
【0038】
この他、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸亜鉛、ジメチルアニリン、フェニルモルフォリンなどの公知の硬化促進剤を使用することもできる。
【0039】
硬化温度は、重合性不飽和基の種類、硬化剤の種類と使用量などによって異なるため、一概に規定できないが、20~250℃、好ましくは50~250℃である。硬化温度が20℃未満では硬化が不十分となる場合がある。
また硬化条件の調整のために、ハイドロキノン、ベンゾキノン、銅塩などの公知の硬化遅延剤を配合してもよい。
【0040】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要により酸化防止剤、離型剤、光増感剤、有機溶剤、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、更には紫外線吸収剤、光安定剤、無機、有機各種フィラー、防かび剤、抗菌剤などを本発明の硬化性樹脂組成物に添加し、それぞれ目的とする機能性を付与することも可能である。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物は、各成分を任意の順序で混合することにより得ることができる。本発明の硬化性樹脂組成物は経時的に安定である。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化物を得ることができる。ここで、活性エネルギー線を照射して硬化する場合に用いられる光源の具体例としては、例えば、キセノンランプ、カーボンアーク、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、あるいは走査型、カーテン型電子線加速路による電子線等を挙げることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化する場合、硬化に必要な紫外線照射量は300~20000mJ/cm程度でよい。なお、樹脂組成物を十分に硬化するために、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で紫外線等の活性エネルギー線を照射することが望ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、プラスチックレンズ等のような注型物に使用することができる。本発明の樹脂組成物を用いたプラスチックレンズの作製法としては、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体等からなるガスケットと所望の形状の2枚のガラス鋳型によって造られた型を作り、これに本発明の樹脂組成物を注入した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化し、硬化物を型より剥離する方法等がある。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物をプリズムレンズシート用樹脂組成物としてフィルム状基材に塗布する方法としては、業界公知の種々の方法を用いることができる。具体的な方法としては、例えば、樹脂組成物を表面にプリズムレンズの形状を有する金型上に塗布し、樹脂組成物の層を設け、その樹脂組成物層の上に無色透明なフィルム状基材(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等)を気泡が入らないように圧着し、次いでその状態でフィルム状基材側から高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して樹脂組成物の層を硬化した後、プリズムレンズ状の樹脂層を形成したフィルム状基材を金型より剥離する方法を挙げることができる。
【0045】
紫外線等の活性エネルギー線を照射して得られる本発明の光学材料用樹脂組成物の硬化物の屈折率は、25℃で1.59以上であることが好ましく、より好ましくは25℃で1.60以上である。特に好ましくは、25℃で1.62以上である。特に本発明の光学材料用硬化性樹脂組成物でプリズムレンズシートを作製する場合、硬化物の屈折率が25℃で1.59未満であると充分な正面輝度を確保できないという問題が生じることがある。
【0046】
本発明の硬化物のアッベ数は40.0以下であることが好ましく、より好ましくは30.0以下である。硬化物のアッベ数が40.0を超えると、撮像素子の薄型化を行う際に、色収差が大きく色のにじみが生じるため好ましくない。
【0047】
本発明の硬化物の吸水率は、1.0wt%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5wt%以下である。特に好ましくは、0.35wt%以下であり、最も好ましくは、0.2wt%以下である。硬化物の吸水率が1.0wt%を超えると、吸水に伴って、材料の屈折率が変化するため、色収差が大きくなり、色のにじみが生じる傾向がある。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物を成形、硬化して得られる樹脂硬化物は、光学物品として好適に使用できる。光学物品の中でも、とりわけプリズムレンズシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、眼鏡レンズ、非球面レンズ等の光学レンズとして有用である。そして、このような光学レンズは、撮像装置に好適に組み込まれる。また、本発明の硬化性樹脂組成物又は樹脂硬化物は、その他にも、光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向けの光学物品、多層基板、プリプレグ、樹脂付き金属箔、印刷インキ、塗料、クリアーコート剤、ツヤニス等にも使用できる。
【0049】
以下に、本発明の実施の形態の一つである、光学物品を組み込んだ撮像装置を例示する。
撮像装置用レンズモジュールを備えた種々の機器、例えば、カメラ、コンピューター、ワードプロセッサー、プリンター、コピー機、ファックス、電話、モバイル機器(携帯電話、スマートフォン、ゲーム機器、タブレット等の携帯情報端末(PDA))、自動車機器、建築用機器、天文用機器等に、本発明の光学物品を好適に使用できる。特に、小型の撮像装置用レンズ(さらには高精度のレンズ)、例えば、小型カメラ(例えば、携帯電話用カメラ(いわゆるカメラ付き携帯電話のカメラ)、車載用カメラモジュール等)等の撮像装置用レンズモジュールとして有用である。
携帯電話、スマートフォン、ゲーム機器、タブレット等の携帯電子端末には、小型で薄型な撮像装置が搭載されている。このような撮像装置には、受光素子と、受光素子上に被写体像を形成するためのレンズと、を有するレンズモジュールが備えられている。
撮像装置に用いられるレンズモジュールとしては、例えば、特開2010-266664号公報、特開2003-046825号公報、特開2006-313185号公報、特開2003-032525号公報、WO2011/074531号などに開示された撮像装置に利用できる。
本発明の光学レンズは、上記の通り例示された撮像装置のレンズ又はレンズ部として好適に使用できる。
【実施例0050】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各例中の部は特に記載がない場合いずれも重量部であり、各物性の評価は以下に示す方法によって行った。
【0051】
1)分子量及び分子量分布
分子量及び分子量分布測定は、GPC(東ソー製、HLC-8220GPC)を使用し、分析カラムとして、東ソー製、TSKgel MultiporeHXL-M:2本、TSKgel G1000HXL:1本、ガードカラムにTSKguardcolumn MP(XL):1本を使用し、溶媒にテトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/min、カラム温度38℃、単分散ポリスチレンによる検量線を用いて行った。
【0052】
2)ジビニルベンジルフルオレン化合物の構造
日本電子製JNM-LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C-NMR及びH-NMR分析により決定した。溶媒としてクロロホルム-dを使用し、テトラメチルシランの共鳴線を内部標準として使用した。また、ジビニルベンジルフルオレン化合物の質量は、日立製作所製、M-80B型質量分析装置を使用し、FD-MS分析を行うことにより測定した。
【0053】
3)ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、及び軟化温度の測定
ジビニルベンジルフルオレン化合物をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより、残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。サンプルの耐熱性により、プローブが樹脂膜を貫通せず、膜厚よりも小さなプローブ侵入量を示さない場合には、軟化温度の指標としてプローブが侵入しなかった最高温度以上と表示した。
ジビニルベンジルフルオレン化合物の融点は、DSC(示差走査型熱量計)を使用し、窒素気流下、昇温速度10℃/分で-20℃から320℃までスキャンさせることにより測定を行った。
【0054】
4)300℃における重量減少量、耐熱変色性、及びハンダ耐熱性試験の測定
ジビニルベンジルフルオレン化合物の300℃に於ける重量減少量及び耐熱変色性の測定は、試料をTGA(熱天秤)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から320℃までスキャンさせることにより測定を行い、300℃に於ける重量減少量を求めると共に、測定後の試料の変色量を目視にて確認し、A:熱変色無し、B:淡黄色、C:茶色、D:黒色に分類することにより耐熱変色性の評価を行った。
さらに、ジビニルベンジルフルオレン化合物のハンダ耐熱性試験は、2.0mm厚で10mm角の硬化させた試験片シートを280℃の鉛フリーはんだ槽に30秒間浸漬させた後、試験片を引き上げ、浸漬後の試験片の形状の変化を目視にて確認し、A:変化無し、B:反りあり、C:変形・膨れ有りに分類することによりハンダ耐熱性の評価を行った。
【0055】
5)耐溶剤性の測定
ジビニルベンジルフルオレン化合物の耐溶剤性の測定は、真空プレス成形により、硬化させた試料板をトルエンに室温で10分間浸漬し、浸漬後の試料の変化を目視にて確認し、A:変化無し、B:膨潤、C:変形・膨れ有りに分類することにより耐溶剤性の評価を行った。
【0056】
6)Haze及び全光線透過率の測定
2mm厚もしくは200μm厚の平板試験片を作製し、Haze(濁度)及び全光線透過率を、分光式色差計(日本電色社製、SZ-Σ90)を用い測定した。
【0057】
7)屈折率・アッベ数
4cm×0.8cmのテストピースを作製し、屈折率及びアッベ数を多波長アッベ屈折計(アタゴ社製、「多波長アッベ屈折率計 DR-M2」)を用い測定した。中間液にはサンプルより屈折率の高いイオウヨウ化メチレン溶液を用い、D線589nmの干渉フィルターを用い屈折率とアッベ数を測定した。
【0058】
8)分光透過率
厚さ1.0mmの平行平板をテストピースとして、分光光度計(コニカミノルタ社製、「CM-3600d」)用いて波長:400nmの分光透過率を測定した。測定タイミングは、190℃60分でのポストキュアを行った耐熱試験前と、エアーオーブン中、260℃、8分間の耐熱試験後とした。
【0059】
9)吸水率
厚さ1mm、幅30mm、長さ30mmの平板状のサンプルを作製し、真空下、100℃、2時間の条件で乾燥させ、室温まで冷却した後、デシケーター中で恒量となるまで静置し、恒量となったサンプル質量を初期値(m0)とした。次に、このサンプルを85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器中に500時間、放置した後の質量(md)を測定し、初期値と浸漬後の質量の変化から下記式を用いて吸水率を測定した。
(md―m0)×100/m0=吸水率(%)
【0060】
実施例1 ジビニルベンジルフルオレン化合物(A-1)の合成
フルオレン 203.54g(純度:98%、1.20mol)、トルエン800g、テトラ-n- ブチルアンモニウムブロミド18.09g(純度:98%、0.055モル)、ハイドロキノン2.78g(純度:99%、0.025モル)、さらに、NaOH 174.42g(純度:97%、4.23モル)を水 320mlに溶解させたNaOH水溶液を仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して均一の溶液にした。この溶液にAGCセイミケミカル社製ビニルベンジルクロリドCMS-14(m-/p-異性体:5/95重量%混合物) 449.83g(純度95%、2.8モル)を20分かけて滴下し、その後60~61℃で8時間反応させた。得られた緑色の反応生成物に200mlのトルエンを追加してから、溶液を2N塩酸で中和した後、蒸留水で3回洗浄し、トルエンを減圧除去後、得られた淡黄色粘稠固体を新鮮なメタノールから再結晶することにより、DSC測定から融点が119℃の白色の固体349.44g(収率72.8%)を得た。これを化合物A-1とする。
化合物A-1の構造の確認はH-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル、IRスペクトル、FD-MS測定により行った。FD-MSの測定結果からMwは400であり、これらの測定結果から生成物はジビニルベンジルフルオレン(一般式1において、Rが水素原子)であり、NMRスペクトルから、ビニルベンジル単位は、m-/p-異性体:5/95%混合物であることを確認した。化合物A-1を室温で、トルエンに10wt%の濃度で、溶解させたところ、透明な溶液が得られ、良好な溶解性を有していることを確認した。
【0061】
化合物A-1を2.0mmのスペーサーを介して、金型に入れ、真空プレス成形機を使用して、真空下、200℃、1時間硬化を行った。
得られた硬化シートを切り出し、光学特性、引張特性の測定及び熱分析を実施した。その結果、全光線透過率:91.3%、Haze:0.30、屈折率:1.652、アッベ数:23.6、線膨張係数:83ppm/℃、吸水率:0.15%、耐溶剤性:A、ハンダ耐熱性:Aであった。
また、TMA測定の結果、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃に於ける重量減少量は0.3wt%、耐熱変色性はAであった。
【0062】
比較例1 ジビニルベンジルフルオレン化合物(B-1)の合成
フルオレン 203.54g(純度:98%、1.20mol)、トルエン800g、テトラ-n- ブチルアンモニウムブロミド18.09g(純度:98%、0.055モル)、ハイドロキノン2.78g(純度:99%、0.025モル)、さらに、NaOH 174.42g(純度:97%、4.23モル)を水 320mlに溶解させたNaOH水溶液を仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して均一の溶液にした。この溶液にダウケミカル社製ビニルベンジルクロリドVBC(m-/p-異性体:57/43重量%混合物) 445.14g(純度96%、2.8モル)を20分かけて滴下し、その後60~61℃で8時間反応させた。得られた緑色の反応生成物に200mlのトルエンを追加してから、溶液を2N塩酸で中和した後、蒸留水で3回洗浄し、トルエンを減圧除去後、得られた淡黄色粘稠固体を新鮮なトルエンから再結晶することにより、DSC測定から融点が144℃の白色の固体324.48g(収率67.6%)を得た。これを化合物B-1とする。
化合物B-1の構造の確認はH-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル、IRスペクトル、FD-MS測定により行った。FD-MSの測定結果からMwは400であり、これらの測定結果から生成物ジビニルベンジルフルオレン(一般式1において、Rが水素原子)であり、ビニルベンジル単位は、m-/p-異性体:57/43%混合物であった。化合物B-1を室温で、トルエンに10wt%の濃度で、溶解させたところ、白濁した溶液が得られ、溶解性は不十分であることを確認した。
【0063】
化合物B-1を2.0mmのスペーサーを介して、金型に入れ、真空プレス成形機を使用して、真空下、200℃、1時間硬化を行った。
得られた硬化シートを切り出し、光学特性、引張特性の測定及び熱分析を実施した。
その結果、全光線透過率:89.6%、Haze:3.64、屈折率:1.648、アッベ数:23.9、線膨張係数:87ppm/℃、吸水率:0.16%、耐溶剤性:A、ハンダ耐熱性:Aであった。
また、TMA測定の結果、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃に於ける重量減少量は0.4wt%、耐熱変色性はAであった。
【0064】
比較例2 ジビニルベンジルフルオレン化合物(C-1)の合成
フルオレン 203.54g(純度:98%、1.20mol)、トルエン800g、テトラ-n- ブチルアンモニウムブロミド18.09g(純度:98%、0.055モル)、ハイドロキノン2.78g(純度:99%、0.025モル)、さらに、NaOH 174.42g(純度:97%、4.23モル)を水 320mlに溶解させたNaOH水溶液を仕込み、撹拌しながら60℃まで昇温して均一の溶液にした。この溶液にセイミケミカル社製ビニルベンジルクロリドCMS-P(m-/p-異性体:50/50重量%混合物)449.83g(純度95%、2.8モル)を20分かけて滴下し、その後60~61℃で8時間反応させた。得られた緑色の反応生成物に200mlのトルエンを追加してから、溶液を2N塩酸で中和した後、蒸留水で3回洗浄し、トルエンを減圧除去後、得られた淡黄色粘稠固体を新鮮なトルエンから再結晶することにより、DSC測定から融点が145℃の白色の固体313.92g(収率65.4%)を得た。これを化合物C-1とする。
化合物C-1の構造の確認はH-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル、IRスペクトル、FD-MS測定により行った。FD-MSの測定結果からMwは400であり、これらの測定結果から生成物ジビニルベンジルフルオレン(一般式1において、Rが水素原子)であり、ビニルベンジル単位は、m-/p-異性体:50/50%混合物であった。化合物C-1を室温で、トルエンに10wt%の濃度で、溶解させたところ、白濁した溶液が得られ、溶解性は不十分であることを確認した。
【0065】
化合物C-1を2.0mmのスペーサーを介して、金型に入れ、真空プレス成形機を使用して、真空下、200℃、1時間硬化を行った。
得られた硬化シートを切り出し、光学特性、引張特性の測定及び熱分析を実施した。その結果、全光線透過率:89.4%、Haze:4.14、屈折率:1.649、アッベ数:23.9、線膨張係数:88ppm/℃、吸水率:0.18%、耐溶剤性:A、ハンダ耐熱性:Aであった。
また、TMA測定の結果、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、300℃に於ける重量減少量は0.42wt%、耐熱変色性はAであった。
【0066】
実施例2及び比較例3~4
実施例1及び比較例1,2で得られた化合物A-1、B-1、C-1を使用し、表1に示す割合で各成分を配合し、硬化性樹脂組成物を得た。次に、この硬化性樹脂組成物を、各種試験方法により硬化し性能評価を行った。性能評価結果も表1に示す。
【0067】
共重合可能なモノマー:
NKエステル A-LEN-10;2-(o-フェニルフェノキシ)エチルアクリレート(新中村化学工業株式会社製)
硬化剤:
パーブチルP;α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製)
光重合開始剤:
イルガキュア184;1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)
安定剤:
アデカスタブAO-60;ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](株式会社ADEKA)
【0068】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のジビニルベンジルフルオレン化合物、及び、硬化性樹脂組成物、並びに、硬化性樹脂組成物を成形、硬化して得られる樹脂硬化物は、光学材料として優れる。とりわけプリズムレンズシート、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、眼鏡レンズ、非球面レンズ等の光学プラスチックレンズ用材料として有用であるそして、このようなレンズは、撮像装置に有利に使用される。また、本発明の硬化性樹脂組成物又は樹脂硬化物はその他にも、光ディスク、光ファイバー、光導波路等のオプトエレクトロニクス向け用途、多層基板、プリプレグ、樹脂付き金属箔、印刷インキ、塗料、クリアーコート剤、ツヤニス等にも使用できる。
本発明の変性ビニル芳香族系共重合体は、電気・電子産業、宇宙・航空機産業、建築・建設産業等の分野において、誘電材料、絶縁材料、耐熱材料、構造材料、接着剤、封止剤、塗料、コーティング剤、シーリング材、印刷インキ、塗料、クリアーコート剤、ツヤニス、分散剤等としても有用である。熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂組成物の耐熱性、誘電特性、接着性・密着性及び光学特性等の特性を改質する改質剤として使用することもできる。