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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167575
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】光う蝕診断計及び光う蝕診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/24 20060101AFI20221027BHJP
   A61C 1/08 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
A61B1/24
A61C1/08 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073448
(22)【出願日】2021-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】595148176
【氏名又は名称】学校法人大阪歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間 久直
(72)【発明者】
【氏名】粟津 邦男
(72)【発明者】
【氏名】吉川 一志
【テーマコード(参考)】
4C052
4C161
【Fターム(参考)】
4C052AA06
4C052AA20
4C052EE01
4C052EE05
4C052NN07
4C161AA08
4C161WW05
4C161WW08
(57)【要約】
【課題】患者ごとに取り替えることが困難な本体部分を清潔な状態で患者の口腔内に挿入することができ、使用中も唾液や血液等の汚染源への曝露を防ぐことができ、且つ、歯の硬さを定量的に測定することによりう蝕の定量的な診断を行える光う蝕診断計を提供すること。
【解決手段】光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、歯に当接する圧子と、圧子に光を出射する光源と、圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、圧子の先端部と受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配されているレンズと、受光素子及びレンズを収容する筐体と、筐体を内包するカバーと、を有しており、圧子はカバーの外側に配置されている光う蝕診断計。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、歯に当接する圧子と、
前記圧子に光を出射する光源と、
前記圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、
前記圧子の先端部と前記受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズと、
前記受光素子及び前記レンズを収容する筐体と、
前記筐体を内包するカバーと、を有しており、
前記圧子は前記カバーの外側に配置されている光う蝕診断計。
【請求項2】
前記光源から出射した光は前記カバーを透過して前記圧子に入射し、前記圧子の先端部から反射した光は前記カバーを透過して前記受光素子に受光される請求項1に記載の光う蝕診断計。
【請求項3】
前記筐体は圧子取付部を有しており、前記圧子と前記圧子取付部とが前記カバーを挟み込んで互いに接続又は接続解除されることにより、前記圧子が前記筐体と着脱可能な請求項1又は2に記載の光う蝕診断計。
【請求項4】
前記圧子取付部は透明部材を有しており、前記圧子と前記透明部材とが前記カバーを挟み込んで互いに接続又は接続解除されることにより、前記圧子が前記筐体と着脱可能な請求項3に記載の光う蝕診断計。
【請求項5】
さらに圧子保持部材を有しており、
前記圧子取付部は溝部又は凸部を有しており、
前記圧子保持部材は前記圧子取付部の前記溝部又は凸部と嵌合する嵌合部を有しており、
前記圧子保持部材の前記嵌合部と前記圧子取付部の溝部又は凸部とが前記カバーを挟み込んで互いに嵌合又は嵌合解除されることにより、前記圧子が前記筐体と着脱可能な請求項3又は4に記載の光う蝕診断計。
【請求項6】
前記圧子保持部材の一方端の厚みは、前記圧子保持部材の他方端の厚みよりも薄い請求項5に記載の光う蝕診断計。
【請求項7】
前記受光素子が、二次元に配列している単位セルを含む請求項1~6のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項8】
前記圧子と前記光源との間の光路上であって前記圧子と前記受光素子との間の光路上に配置されたビームスプリッターをさらに有している請求項1~7のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項9】
圧力センサを備え、前記圧子が歯に当接する圧力が特定の値に達すると前記受光素子が撮像する請求項1~8のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項10】
前記圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の前記受光素子の受光強度から、前記圧子の先端部が歯に当接しているときの前記受光素子の受光強度を差し引くことにより、差分強度画像を取得する請求項1~9のいずれか一項に記載の光う蝕診断計。
【請求項11】
所定の値を閾値として前記差分強度画像を二値化する請求項10に記載の光う蝕診断計。
【請求項12】
前記二値化により得られた差分強度画像の外径の長軸の長さと短軸の長さの比(長軸の長さ)/(短軸の長さ)が所定の値以上であるときに、エラー信号を発する請求項11に記載の光う蝕診断計。
【請求項13】
前記閾値を超えた領域の面積を取得する請求項11又は12に記載の光う蝕診断計。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の光う蝕診断計を用意するステップと、
前記圧子の先端部の水分及び前記圧子を当接させる歯の表面の水分を除去するステップと、
前記圧子の先端部を歯に当接させるステップと、
前記圧子の先端部が歯に当接している状態で、前記光源から出射し前記圧子の先端部から反射した光を前記受光素子で受光し撮像するステップと、を有している光う蝕診断方法。
【請求項15】
前記圧子の先端部を何にも当接させない状態(非当接)で、前記光源から出射し前記圧子の先端部から反射した光を前記受光素子で受光し撮像するステップをさらに有している請求項14に記載の光う蝕診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、う蝕を診断できる光う蝕診断計及び光う蝕診断方法、並びにそれらを含むう蝕診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
歯の健康は全身の健康に与える影響が大きく、う蝕の予防や適切な治療は社会的要請である。特に高齢者においては、歯の残存数と認知症発症の関連性が非常に高いことが知られており、歯の健康を維持することが認知症予防に有効であるといわれている。う蝕の予防や適切な治療が行われることにより認知症発症を減らすことができれば、介護費用の大きな削減を見込むことができる。
【0003】
歯の硬組織(エナメル質、象牙質)は、う蝕に罹患すると脱灰されて欠損が生じる。エナメル質に白斑が生じる程度の軽いものは経過観察されるが、進行が進むと罹患部分を削る必要が生じる。従来のう蝕の診断及び治療において、う蝕と健全歯との識別や治療方法の選択は、歯科医療者の感覚に頼っているのが現状である。例えば、う蝕と健全歯との識別は、歯科用探針や染色液等により歯科医療者の感覚に頼って行われており、定量的な指標に基づいて行われていない。また、切除するべきう蝕の選別についても歯科医療者の手指の感覚に頼っている部分が多い。そのため、本来切除する必要のない歯まで切除される事例も多く、歯科医療者の経験に左右されることなくう蝕の進行程度を診断できる技術が求められている。
【0004】
また、う蝕の進行を止めるためにフッ素等の薬剤の塗布が行われているが、う蝕の進行程度を定量的に評価して最適な薬剤の塗布を行うためにも、う蝕の進行程度を正確に知ることが必要である。
【0005】
う蝕を診断する技術として、特許文献1及び2に開示されているようなう蝕診断装置が知られているが、これらの装置ではう蝕の進行程度を定量的に評価することは困難であった。
【0006】
また、特許文献3に開示されている「硬さ測定用圧子とそれを用いた硬さ測定方法」では、定量的な硬さの測定が試みられているが、円錐形圧子の表面に塗料を塗布する工程や測定後の顕微鏡観察が必要であるなど、工程及び装置ともに複数に及び測定値順が煩雑であるという課題があった。
【0007】
特許文献4では、圧子が反射した光源からの光を受光することによりう蝕の定量的な診断を試みたう蝕診断計が開示されている。
【0008】
これらう蝕診断装置は患者の口腔内に挿入されるため滅菌されている必要があるが、特許文献1~4のいずれに開示されているう蝕診断装置においても衛生対策に課題があった。患者の歯に直接当接するプローブ部は取り替え可能なものもあるものの、患者ごとに取り替えにくい診断装置の本体部分全体を滅菌することは困難であった。また、唾液や血液の中には感染症の原因となるウィルスが含まれている場合もあるため、診断装置の本体部分が唾液や血液等の汚染源に曝されないための対策が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-29412号公報
【特許文献2】特開2010-252911号公報
【特許文献3】特開2011-112629号公報
【特許文献4】国際公開第2020/080219号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、患者ごとに取り替えることが困難な本体部分を清潔な状態で患者の口腔内に挿入することができ、使用中も唾液や血液等の汚染源への曝露を防ぐことができ、且つ、歯の硬さを定量的に測定することによりう蝕の定量的な診断を行える光う蝕診断計及び光う蝕診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計は、光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、歯に当接する圧子と、圧子に光を出射する光源と、圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、圧子の先端部と受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配されているレンズと、受光素子及びレンズを収容する筐体と、筐体を内包するカバーと、を有しており、圧子はカバーの外側に配置されている。
【0012】
光源から出射した光はカバーを透過して圧子に入射し、圧子の先端部から反射した光はカバーを透過して受光素子に受光されることが好ましい。
【0013】
筐体は圧子取付部を有しており、圧子と圧子取付部とがカバーを挟み込んで互いに接続又は接続解除されることにより、圧子が筐体と着脱可能であることが好ましい。この場合、圧子取付部は透明部材を有しており、圧子と透明部材とがカバーを挟み込んで互いに接続又は接続解除されることにより、圧子が筐体と着脱可能であることが好ましい。さらにこの場合、圧子保持部材をさらに有しており、圧子取付部は溝部又は凸部を有しており、圧子保持部材は圧子取付部の前記溝部又は凸部と嵌合する嵌合部を有しており、圧子保持部材の嵌合部と圧子取付部の溝部又は凸部とがカバーを挟み込んで互いに嵌合又は嵌合解除されることにより、圧子が筐体と着脱可能であることが好ましい。この場合、圧子保持部材の一方端の厚みは、圧子保持部材の他方端の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0014】
受光素子が、二次元に配列している単位セルを含むことが好ましい。
【0015】
圧子と光源との間の光路上であって圧子と受光素子との間の光路上に配置されたビームスプリッターをさらに有していることが好ましい。
【0016】
圧力センサを備え、圧子が歯に当接する圧力が特定の値に達すると受光素子が撮像することが好ましい。
【0017】
圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の受光素子の受光強度から、圧子の先端部が歯に当接しているときの受光素子の受光強度を差し引くことにより、差分強度画像を取得することが好ましい。この場合、所定の値を閾値として差分強度画像を二値化することが好ましい。さらにこの場合、二値化により得られた差分強度画像の外径の長軸の長さと短軸の長さの比(長軸の長さ)/(短軸の長さ)が所定の値以上であるときに、エラー信号を発することが好ましい。
【0018】
二値化する場合、閾値を超えた領域の面積を取得することが好ましい。
【0019】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断方法は、上記に記載の光う蝕診断計を用意するステップと、圧子の先端部の水分及び圧子を当接させる歯の表面の水分を除去するステップと、圧子の先端部を歯に当接させるステップと、圧子の先端部が歯に当接している状態で、光源から出射し圧子の先端部から反射した光を受光素子で受光し撮像するステップと、を有している。
【0020】
圧子の先端部を何にも当接させない状態(非当接)で、光源から出射し圧子の先端部から反射した光を受光素子で受光し撮像するステップをさらに有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光う蝕診断計及び光う蝕診断方法によれば、患者ごとに取り替えることが困難な本体部分を清潔な状態で患者の口腔内に挿入することができ、使用中も唾液や血液等の汚染源への曝露を防ぐことができ、且つ、歯の硬さを定量的に測定することによりう蝕の定量的な診断を行うことができる。清潔な光う蝕診断計を用いて歯の硬さを定量的に測定できることで、う蝕と健全歯の識別やう蝕の進行度合いに関する客観的な指標を安全に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計の断面図を表す。
図2】本発明の一実施形態に係る圧子が歯に当接したときの模式図を表す。
図3】本発明の一実施形態に係る圧子の側面図を表す。
図4図3に示した圧子の先端部とは反対側から見た平面図を表す。
図5】本発明の他の実施形態に係る圧子の側面図を表す。
図6図1に示した光う蝕診断計の一部拡大断面図を表す。
図7】本発明の他の実施形態に係る光う蝕診断計の一部拡大断面図を表す。
図8】本発明のさらに他の実施形態に係る光う蝕診断計の一部拡大断面図を表す。
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る光う蝕診断計の一部拡大断面図を表す。
図10】本発明の一実施形態に係る圧子、圧子保持部材、及び圧子取付部の斜視図を表す。
図11図10に示した圧子保持部材と圧子取付部がカバーを挟み込んで互いに嵌合することにより圧子が筐体に取り付けられた部分の拡大断面図を表す。
図12】本発明の他の実施形態に係る圧子、圧子保持部材、及び圧子取付部の斜視図を表す。
図13図12に示した圧子保持部材と圧子取付部がカバーを挟み込んで互いに嵌合することにより圧子が筐体に取り付けられた部分の拡大断面図を表す。
図14】時間と当接圧力の関係を示すグラフである。
図15図1に示した光う蝕診断計の別の断面図を表す。
図16】圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の圧子の先端部からの反射光の撮像画像である。
図17】圧子の先端部が歯に当接しているときの圧子の先端部からの反射光の撮像画像である。
図18図16に示した撮像画像から図17に示した撮像画像を差し引いた差分強度画像である。
図19図18に示した差分強度画像を二値化した二値化後差分強度画像である。
図20】圧子の先端部が歯に垂直に当接したときの模式図を表す。
図21】圧子の先端部が歯に垂直から逸脱して当接したときの模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合は明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における各部材の寸法は、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0024】
1.光う蝕診断計
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計は、光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、歯に当接する圧子と、圧子に光を出射する光源と、圧子の先端部から反射した光を受光する受光素子と、圧子の先端部と受光素子の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズと、受光素子及びレンズを収容する筐体と、筐体を内包するカバーと、を有しており、圧子はカバーの外側に配置されていることに特徴を有する。このような構成により、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計は、患者ごとに取り替えることが困難な本体部分を清潔な状態で患者の口腔内に挿入することができ、使用中も唾液や血液等の汚染源への曝露を防ぐことができ、且つ、歯の硬さを定量的に測定することができる。清潔な光う蝕診断計を用いて歯の硬さを定量的に測定できることで、う蝕と健全歯の識別やう蝕の進行度合いに関する客観的な指標を安全に得ることが可能となる。
【0025】
図1図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光う蝕診断計の断面図を表す。図2は、本発明の一実施形態に係る圧子が歯に当接したときの模式図を表す。図3は本発明の一実施形態に係る圧子の側面図を表し、図4図3に示した圧子の先端部とは反対側から見た平面図を表す。図5は、本発明の他の実施形態に係る圧子の側面図を表す。
【0026】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、光透過性を有し且つ先細り形状を有しており、歯100に当接する圧子20と、圧子20に光を出射する光源10と、圧子20の先端部21から反射した光を受光する受光素子30と、圧子20の先端部21と受光素子30の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズ40と、受光素子30及びレンズ40を収容する筐体80と、筐体80を内包するカバー90と、を有しており、圧子20はカバー90の外側に配置されている。本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、カバー90を有することにより、患者ごとに取り替えることが困難な受光素子30及びレンズ40を収容する筐体80を清潔な状態で患者の口腔内に挿入することができ、使用中も唾液や血液等の汚染源への曝露を防ぐことができる。また、上記構成を有することにより、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、歯100の硬さを定量的に測定することができ、う蝕と健全歯の識別やう蝕の進行度合いに関する客観的な指標を安全に得ることができる。
【0027】
図2に示すように、歯100に圧子20が当接すると、歯100の硬さに応じて圧子20の先端部21の一定の面積が歯100の表面と接する。この面積は歯100が硬いほど小さく軟らかいほど大きくなる。図2の入射光11のように圧子20に光を入射すると、圧子20の先端部21の歯100の表面と接した部分S1では全反射が起こらず、圧子20の先端部21の何にも当接していない部分S2では全反射が起こるため、圧子20の先端部21の歯100に当接した部分S1と当接しない部分S2との反射光の受光強度のコントラストを検出でき、圧子20の先端部21の歯100と当接した部分S1の面積の情報を得ることができる。この面積は歯100の硬さに応じて決まるため、当該面積より歯100の硬さを得ることができる。
【0028】
図3に示すように、圧子20の先端部21は先細り形状を有するように縮径されている。圧子20の先端部21の好ましい形状は、概ね錐状であり、例として図3に示した円錐の他多角錐等が挙げられる。中でも、圧子20の先端部21の形状は円錐又は四角錐であることが好ましい。先端部21は頂部22を有することが好ましい。先端部21が円錐や多角錐等の場合は、頂部22はそれらの頂点である。
【0029】
図4に示すように圧子20の先端部21とは反対側にある面(以下、底面と呼ぶことがある。)の形状は円形であってもよいし、図示していないが多角形やその他任意の形状であってもよい。
【0030】
図3に示すように、圧子20の先端部21は頂角θを有する。頂角θは、圧子20の先端部21が円錐の場合は対向する母線のなす角度であり、圧子20の先端部21が四角錐の場合は対向する面同士がなす角度である。先端部21の頂角θは、60°~120°の範囲で適宜設定することができる。図3及び図4に示すように、圧子20は底面の図心O(図3及び図4の場合は円の中心)と頂部22とを結ぶ中心軸cを有していることが好ましい。
【0031】
圧子20の底面の大きさは、口腔内への挿入に支障がなく歯100に当接可能であれば特に制限されないが、直径又は長径が3mm以下であることが好ましく、より好ましくは2mm以下である。
【0032】
図5に示すように、圧子20の先端部21は尖鋭ではなくある程度の丸みを有するR部を有していてもよい。R部を有することにより、圧子20が破損しにくく、被験者が痛みを感じにくいという利点がある。一方で、R部の丸みが付きすぎると歯100への当接がしにくくなったり反射光の検出に悪影響があったりするため、R部の曲率半径rは上記条件を満たすように適宜定めればよいが、例えば、R部の曲率半径rは5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。また、R部の曲率半径rは500μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下である。
【0033】
圧子20は光透過性を有している。圧子20が光透過性を有していることにより、圧子20の底面側から入射した光が圧子20の先端部21まで達することができ、先端部21で反射された光が圧子20を透過して受光素子30まで達することができる。圧子20を形成する材料は、光透過性を有する限り特に制限されず、ガラス、鉱石、樹脂材料等から適宜選ぶことができる。具体的には、ガラス、有機ガラス等のガラス;サファイア、ルビー等の天然鉱物;人工鉱物;アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂材料等が挙げられる。
【0034】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20の先端部21と受光素子30の受光面が互いに結像関係となる位置に配置されているレンズ40を有している。これにより、反射光の弱い領域と強い領域とのコントラストの違いを精度よく観測することが可能となる。さらに、単に反射強度を測定する手法と比べて、測定値の較正の変動が少ないという利点がある。
【0035】
光源10は特に制限されないが、半導体レーザー、発光ダイオード等が用いられる。これらは、特定の波長の光を得られるため不要な光との分離が用意であり好適である。中でも、半導体レーザーは指向性を有するため好ましい。
【0036】
図1に示す光路P1のように、光源10から出射した光は圧子20の底面側から圧子20に入射し、圧子20の先端部21に到達することが好ましい。圧子20の先端部21に到達した光は、光路P2のように先端部21で反射され、光路P3のようにレンズ40を通って受光素子30で受光されることが好ましい。図1では、光源10から圧子20の先端部21までの光路と先端部21から受光素子30までの光路が平行ではない位置に光源10と受光素子30が配されているため、互いに平行ではない光路P2及び光路P3が示されているが、受光素子30が圧子20の先端部21に対して光源10と同じ方向に配されている場合は、光路P2及び光路P3は互いに平行で一直線上に配される構成とすることもできる。
【0037】
受光素子30及びレンズ40は、筐体80に収容されている。受光素子30及びレンズ40が筐体80に収容されることで圧子20の先端部21で反射された光が受光素子30に達する光路P3を筐体80内に配置することができ、反射光の安定した観測が可能となる。光源10は、筐体80の外側に取り付けられていてもよく、筐体80内に収容されていてもよい。
【0038】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、筐体80を内包するカバー90を有しており、圧子20はカバー90の外側に配置されている。このような構成により、患者ごとに取り替えることが困難な受光素子30及びレンズ40を収容する筐体80を清潔な状態で患者の口腔内に挿入することができ、使用中も唾液や血液等の汚染源への曝露を防ぎつつ、圧子20は直接歯100に当接することができる。光源10もカバー90に内包されていることが好ましい。これにより光源10の汚染も防ぐことができる。
【0039】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20が配されている一方端を口腔内に挿入し、他方端を把持して操作することができるが、図1に示すように、圧子20が配されている一方端側においてカバー90は袋状に閉じていることが好ましい。把持する他方端側のカバー90は、一方端側と同様に袋状に閉じていてもよいし、或いは、開口していてもよい。他方端側のカバー90が開口している場合は、光う蝕診断計1の一方端から他方端までの長さよりもカバー90の一方端から他方端までの長さの方が長いことが好ましい。カバー90の一方端から他方端までの長さは、光う蝕診断計1の一方端から他方端までの長さの1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.5倍以上が更に好ましく、2倍以上が特に好ましい。カバー90の一方端から他方端までの長さが上記範囲であれば、使用中にカバー90の開口部から汚染源がカバー90内に侵入することを防止できる。カバー90の一方端から他方端までの長さの上限は特に制限されないが、取り扱い性の観点から5倍以下が好ましく、3倍以下がより好ましい。
【0040】
カバー90は、患者ごとに取り替えてもよい。これにより、直接歯100に当接する圧子20以外の部分も常に清潔な状態で使用することができる。頻繁な取り替えが容易となる観点から、カバー90の他方端は開口していることが好ましい。
【0041】
汚染源の侵入を防ぐ観点から、カバー90は他方端の開口以外には開口を有していないことが好ましい。特に、圧子20が配置されている部分は、汚染源に近いため切り込みや穴等の開口がない構成とすることが好ましい。
【0042】
光源10から出射した光はカバー90を透過して圧子20に入射し、圧子20の先端部21から反射した光はカバー90を透過して受光素子30に受光されることが好ましい。光源10から圧子20へ入射する光、及び圧子20の先端部21から反射して受光素子30に到達する光がカバー90を透過できることで、圧子20をカバー90の外側に配置する構成とすることができ、直接歯100に当接して唾液や血液等の汚染源に曝露される圧子20からカバー90内を隔離して、カバー90に内包された部分の清潔を保つことが可能となる。
【0043】
カバー90は、光透過性を有する合成樹脂で構成されていることが好ましく、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。カバー90の厚みは、強度の観点から5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましく、50μm以上であってもよい。また、カバー90の厚みは、光透過性の観点から500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、100μm以下であってもよい。
【0044】
筐体80は圧子取付部81を有しており、圧子20と圧子取付部81とがカバー90を挟み込んで互いに接続又は解除されることにより、圧子20が筐体80と着脱可能であることが好ましい。このような構成により、圧子20を容易に交換することができる。圧子20と圧子取付部81との接続は、嵌合や螺合、磁石による接続等任意の方法で行うことができる。圧子20と圧子取付部81との接続が螺合により行われる場合は、圧子20の底面側の側面にねじ溝を設け、それと螺合するねじ溝を圧子取付部81の内側に設けて、圧子20を圧子取付部81の内部にねじ込むことで圧子20を筐体80に取り付けられてもよい。この場合は、圧子20と圧子取付部81に挟み込まれたカバー90が圧子20のねじ込みに追随して圧子取付部81の内側に押し込まれることとなるが、圧子20の底面やねじ溝が設けられた圧子20の側面においてもカバー90は破損しないことが好ましい。これにより、一方端側には開口のないカバー90とすることができる。或いは、別のねじを用いて圧子20を圧子取付部81に接続してもよい。この場合は、圧子20と圧子取付部81に挟み込まれるカバー90にもねじによる穴が開くが、ねじ穴はねじの頭部やナット等で塞がれて実質的にカバー90の開口とはならないことが好ましい。これにより、一方端側には開口のないカバー90とすることができる。圧子20と圧子取付部81との接続は、圧子20及び圧子取付部81のそれぞれにおいて光源10からの光が圧子20に入射する光の光路P1及び圧子20の先端部21から反射する光の光路P2の妨げとならない部位において行われる。
【0045】
圧子20と圧子取付部81がカバー90を挟み込んで互いに接続される際に、圧子20と圧子取付部81に挟み込まれているカバー90はたるみ、しわ、折れ等光の透過に影響を与える形状変化がないようにぴんと張られている必要がある。圧子20と圧子取付部81に挟み込まれているカバー90がぴんと張られていることで、この部分を透過する光への影響が抑えられ、圧子20の先端部21からの反射光をカバー90の影響を抑えて受光素子30で受光でき、受光画像の乱れを防ぐことができる。
【0046】
筐体80をカバー90に内包し、カバー90の外側に圧子20を配置する構成について、さらに図6図13を参照しながら説明する。図6図1に示した光う蝕診断計の筐体に圧子が配置されている部分の拡大断面図を表す。図7図9は、それぞれ異なる実施形態に係る光う蝕診断計の筐体に圧子が配置されている部分の拡大断面図を表す。図10は本発明の一実施形態に係る圧子、圧子保持部材、及び圧子取付部の斜視図を表し、図11図10に示した圧子保持部材と圧子取付部がカバーを挟み込んで互いにスライドして嵌合することにより圧子が筐体に取り付けられた部分の側面から見た拡大断面図を表す。図12は本発明の他の実施形態に係る圧子、圧子保持部材、及び圧子取付部の斜視図を表し、図13図12に示した圧子保持部材と圧子取付部がカバーを挟み込んで互いにスライドして嵌合することにより圧子が筐体に取り付けられた部分の側面から見た拡大断面図を表す。
【0047】
図6に示すように、光う蝕診断計1は圧子保持部材25を有しており、圧子保持部材25が圧子取付部81を受け入れる凹部を有しており、圧子保持部材25の凹部にカバー90を挟み込みながら圧子取付部81を押し込むことで、圧子20が筐体80に取り付けられてもよい。この場合、圧子保持部材25の凹部に圧子取付部80が単に押し込まれることで互いに固定されてもよいし、上述したような嵌合や螺合、磁石による接続等任意の接続手段により両者が固定されてもよい。圧子保持部材25が凹部を有していることにより、カバー90をぴんと張りながら圧子保持部材25と圧子取付部81を接続することが容易となり、圧子20を筐体80に容易に取り付けることが可能となる。
【0048】
図7に示すように、光う蝕診断計1は圧子保持部材25を有しており、圧子保持部材25が圧子取付部81の凹部に対応する凸部を有しており、圧子保持部材25の凸部がカバー90を挟み込みながら圧子取付部81の凹部に押し込まれることで、圧子20が筐体80に取り付けられてもよい。この場合、圧子保持部材25の凸部が圧子取付部の凹部に単に押し込まれることで互いに固定されてもよいし、上述したような嵌合や螺合、磁石による接続等任意の接続手段により両者が固定されてもよい。圧子保持部材25が凸部を有していることにより、カバー90をぴんと張りながら圧子保持部材25と圧子取付部81を接続することが容易となり、圧子20を筐体80に容易に取り付けることが可能となる。
【0049】
圧子取付部81は透明部材85を有しており、圧子20と透明部材85とがカバー90を挟み込んで互いに接続又は接続解除されることにより、圧子20が筐体80と着脱可能であることが好ましい。
【0050】
透明部材85は、例えば図8及び図9に示すように一方面が圧子20の底面と対向するように配置することができる。圧子取付部81が透明部材85を有していることで、圧子20と圧子取付部81に挟み込まれるカバー90が透明部材85に押しつけられるため、カバー90が平面状にぴんと張られることがより容易となる。これにより、この部分を透過する光へのカバー90の影響が抑えられ、圧子20の先端部21からの反射光をカバー90の影響を抑えて受光素子30で受光でき、受光画像の乱れを防ぐことができる。また、カバー90に万が一穴や破損による開口が生じた場合であっても、透明部材85により筐体80内への水や汚物の侵入を防ぐことができる。
【0051】
透明部材85を構成する材料としては、カバー90と同様の材料を用いることができる。透明部材85の厚みは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。また、透明部材85の厚みは2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0052】
図10及び図11に示すように、光う蝕診断計1は圧子保持部材25を有しており、圧子取付部81は溝部82又は凸部を有しており、圧子保持部材25は圧子取付部81の溝部82又は凸部と嵌合する嵌合部26を有しており、圧子保持部材25の嵌合部26と圧子取付部81の溝部82又は凸部とがカバー90を挟み込んで互いに嵌合又は嵌合解除されることにより、圧子20が筐体80と着脱可能であることが好ましい。このような構成であれば、圧子保持部材25をスライドさせながら圧子取付部81に取り付けることができ、スライドする際にカバー90に張力がかかるためカバー90をぴんと張りながら圧子保持部材25と圧子取付部81を接続することが容易となり、圧子20を筐体80に容易に取り付けることが可能となる。これにより、この部分を透過する光へのカバー90の影響が抑えられ、圧子20の先端部21からの反射光をカバー90の影響を抑えて受光素子30で受光でき、受光画像の乱れを防ぐことができる。
【0053】
圧子保持部材25をスライドさせながら圧子取付部81に取り付ける場合、圧子保持部材25をスライドさせる方向はいずれの方向でもよいが、光う蝕診断計1の他方端を把持しながら操作し易い観点から、圧子保持部材25は光う蝕診断計1の他方端側以外からスライドさせることが好ましい。
【0054】
図12及び図13に示すように、圧子保持部材25の一方端の厚みは、圧子保持部材25の他方端の厚みよりも薄いことが好ましい。すなわち、圧子保持部材25をスライドさせながら圧子取付部81に取り付ける際に、圧子保持部材25のスライドの進行方向の先頭側の厚みが反対側の厚みよりも薄いことが好ましい。これにより、圧子取付部81の溝部82又は凸部に圧子保持部材25の嵌合部26を挿入することが容易になり、圧子保持部材25の厚みの違いによりカバー90を平面状にぴんと張ることがより容易となる。さらに、このような構成とすることにより、圧子取付部81及び圧子保持部材25を製造する際の公差が大きくなることを許容でき部品製造上有利となる。
【0055】
図10及び図12では圧子取付部81が溝部82を有している態様を示したが、圧子取付部81は溝部82に替えて凸部を有していてもよく、溝部82と凸部を両方有していてもよく、或いは、圧子保持部材25の嵌合部26と嵌合する任意の形状の嵌合部を有していてもよい。
【0056】
受光素子30が、二次元に配列している単位セルを含むことが好ましい。該二次元に配列している単位セルは、固体撮像素子(イメージセンサ)であってもよく、CDCイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等であってもよい。中でも、供給価格が比較的安く消費電力が少なく携帯用に好適であるという理由からCMOSイメージセンサが好ましい。
【0057】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20と光源10との光路P1上であって、圧子20と受光素子30との光路上に配置されたビームスプリッター50をさらに有していることが好ましい。ビームスプリッター50を配置することで、図1に示したように光源10から圧子20までの光路P1と平行ではない光路(光路P3)を圧子20から受光素子30までの光路が有することが可能となり、光う蝕診断計1の自由度が向上する。その結果、光う蝕診断計1の圧子20側を口腔内に挿入しつつ、他方端を把持して操作することが容易な形状とすることができる。また、受光画像のS/N比を高めるために、ビームスプリッター50の反射率は、例えば52%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
【0058】
或いは、図示していないが、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧子20と光源10との光路P1上であって、圧子20と受光素子30との光路上に配置されたミラーを有していてもよい。受光素子30が圧子20に対して光源10と反対側に配されており、圧子20から受光素子30までの光路が光源10から圧子20までの光路P1と平行な場合は、圧子20からの反射光をミラーで反射することにより受光素子30で受光することができる。
【0059】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、さらに圧力センサ71を備え、圧子20が歯100に当接する圧力が所定の値に達すると受光素子30が撮像することが好ましい。これにより、一定の圧力で圧子20を歯100に当接したときの歯100の硬さを測定でき、操作者の技量にかかわらず定量的な測定が可能となる。
【0060】
図14に時間と当接圧力の関係を表すグラフを示す。図14において、所定の当接圧力をSとすると、Tのタイミングで撮像する。圧子20は操作者により歯100に当接されるため、時間とともに当接圧力が変動することは避けられないが、所定の当接圧力のタイミングで撮像することで、常に一定の当接圧力における反射光を撮像できる。当接圧力の所定値は、測定する歯100の条件により適宜決定してよいが、好ましくは3N以下、より好ましくは2.5N以下、さらに好ましくは2N以下、また、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.5N以上、さらに好ましくは0.8N以上である。
【0061】
図示していないが、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、圧力センサ71とは別にさらにスイッチを有しており、スイッチからの信号で受光素子30が撮像してもよい。スイッチからの信号で撮像することにより、圧子20の先端部21が何にも当接しておらず(非当接)圧力センサ71からの信号がない場合であっても随時撮像が可能となる。
【0062】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、さらにフィルター60を有していてもよい。フィルター60が透過することのできる光の波長を光源10が出射する光の波長とすることで、光源10から出射された光以外の光の影響、例えば室内蛍光灯や歯科用照明器等の影響を除くことができ、撮像画像のS/N比を高められる。
【0063】
圧子20を筐体80に着脱する際などに、着脱の前後で光路P1、光路P2、及び光路P3の距離が変化するなど、光路P1、光路P2、及び光路P3は測定の度に変化しないことが好ましい。そのために、筐体80の圧子取付部81は圧子20を固定するストッパー等の固定部を備えていてもよい。光路P1、光路P2、及び光路P3の距離が一定であることで、結像関係を変えずに圧子20を交換でき、安定した撮像が可能となる。
【0064】
筐体80の一部が、筐体80を納める空洞を有した持ち手73に取り付けられていてもよい。図15に示すように、一実施形態において、筐体80の外側に設けられた回転軸72を持ち手73内に設けられた軸穴に嵌合することで、筐体80を持ち手73に取り付けることができる。圧子20の先端部21が歯100に当接すると、筐体80が回転軸72を軸として回転し、このとき生じる力を圧力センサ71が検出することができる。図15ではカバー90を省略しているが、持ち手73もカバー90に内包されていることが好ましい。持ち手73もカバー90に内包されていることで、持ち手73を把持することにより操作者の手指が汚染されたり手指の汚染が持ち手73に付着したりすることを防ぐことができる。
【0065】
硬さの測定値を定量的に取得するために、反射光が弱くなる領域の面積は一定の条件下で測定されることが好ましい。このために、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、以下の画像処理過程を有することができる。
【0066】
図16図21を参照しながら、本発明の実施形態に係る画像処理過程を説明する。図16は、圧子の先端部が何にも当接していないとき(非当接)の圧子の先端部からの反射光の撮像画像である。図17は、圧子の先端部が歯に当接しているときの圧子の先端部からの反射光の撮像画像である。図18図16に示した撮像画像から図17に示した撮像画像を差し引いた差分強度画像である。図19図18に示した差分強度画像を二値化した二値化後差分強度画像である。図20は圧子の先端部が歯に垂直に当接したときの模式図を表し、図21は圧子の先端部が歯に垂直から逸脱して当接したときの模式図を表す。
【0067】
[差分強度画像取得過程]
圧子20の先端部21が非当接であるときの反射光を受光素子30が撮像した強度画像(図16)から、圧子20の先端部21が歯100に当接しているときの反射光を受光素子30が撮像した強度画像(図17)を差し引いて、差分強度画像(図18)を取得する。差し引くことにより、圧子20の個体差による反射のばらつきや、観測したい反射光以外の寄与分を除外することができる。上記画像処理過程では圧子20は同一のものを使用し、他の撮像条件も同一にして撮像する。
【0068】
[差分強度画像の二値化過程]
上記で得られた差分強度画像を、所定の値を閾値として二値化する。このとき、本発明の実施形態に係る光う蝕診断計1は、下記の条件でエラー信号を発することができる。歯100に圧子20の先端部21を当接する際は、図20に示すように圧子20の中心軸cができるだけ歯100の表面に対して垂直に当接することが好ましいが、歯100の表面の凹凸や操作者の技量により必ずしも直角とならない場合がある。中心軸cと歯100の表面との当接角度が垂直から外れると、図21に示すように、反射光が弱くなる領域の外径が円形から逸脱する。そうすると、得られた撮像画像が硬さ以外の情報を含んでしまうことになるため、上記閾値を超えた差分強度画像(二値化差分強度画像)の外形の長軸Lmの長さと短軸Lsの長さの比(長軸Lmの長さ)/(短軸Lsの長さ)が所定の値以上であるときにエラー信号を発することが好ましい。これにより、硬さ以外の情報を除外できる。
【0069】
[二値化差分強度画像の面積取得過程]
上記過程を経た二値化差分強度画像(図19)の面積を取得する。当該面積は歯100の硬さを反映しており、硬ければ面積は小さく、軟らかければ面積は大きい。
【0070】
2.光う蝕診断方法
本発明の実施形態に係る光う蝕診断方法は、上記光う蝕診断計1を用意するステップと、圧子20の先端部21の水分及び圧子20を当接させる歯100の表面の水分を除去するステップと、圧子20の先端部21を歯100に当接させるステップと、圧子20の先端部21が歯100に当接している状態で、光源10から出射し圧子20の先端部21から反射した光を受光素子30で受光し撮像するステップと、を有している。口腔内に残存したうがい液や唾液等の水分を除去することで、これら水分の影響を抑制しつつ圧子20の先端部21からの反射光を受光し撮像することができる。
【0071】
本発明の実施形態に係る光う蝕診断方法は、圧子20の先端部21を何にも当接させない状態(非当接)で、光源10から出射し圧子20の先端部21から反射した光を受光素子30で受光し撮像するステップをさらに有していることが好ましい。これにより、非当接のときの撮像画像から歯100に当接したときの撮像画像を差し引いて差分強度画像を得ることができ、圧子20の個体差による反射のばらつきや観測したい反射光以外の寄与分を除外して、歯100の硬さを定量的に得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1:光う蝕診断計
10:光源
11:入射光
20:圧子
21:圧子の先端部
22:圧子の頂部
25:圧子保持部材
26:嵌合部
30:受光素子
40:レンズ
50:ビームスプリッター
60:フィルター
71:圧力センサ
72:回転軸
73:持ち手
80:筐体
81:圧子取付部
82:圧子取付部の溝部
85:透明部材
90:カバー
100:歯
c:圧子の中心軸
m:長軸
s:短軸
O:圧子の底面の図心
R:R部
r:R部の曲率半径
1:歯の表面と接した部分
2:何にも接していない部分
θ:圧子の先端部の角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18
図19
図20
図21