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特開2022-167903粉末、このような粉末を含む電極及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167903
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】粉末、このような粉末を含む電極及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20221027BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20221027BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20221027BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/587
H01M4/36 E
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022123396
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2019218745の分割
【原出願日】2015-10-15
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2014/079200
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スタイン・プット
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・ファン・ヘネフテン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ジレイル
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・マルクス
(72)【発明者】
【氏名】武藤 有弘
(72)【発明者】
【氏名】石井 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】武内 正隆
(57)【要約】
【課題】当該技術分野における負電極及びその中に含まれる電気化学的活物質の進歩にも関わらず、Liイオン電池の性能を更に最適化するための能力を有する一層優れた電極に対する要求が未だにある。
【解決手段】マトリックス材料と、このマトリックス材料中に分散したシリコン系ドメインとを含む粒子を含む粉末であって、マトリックス材料が、炭素又は炭素に熱分解され得る材料であり、シリコン系ドメインの一部分がシリコン系ドメインの凝集体の形態で存在し、これらの凝集体の少なくとも98%が3μm以下の最大サイズを有するか、又はシリコン系ドメインが凝集体には全く凝集しない、粉末。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材料と、このマトリックス材料中に分散したシリコン系ドメインとを含む粒子を含む粉末であって、前記マトリックス材料が、炭素又は炭素に熱分解され得る材料であり、前記シリコン系ドメインの一部分がシリコン系ドメインの凝集体の形態で存在し、これらの凝集体の少なくとも98%が3μm以下の最大サイズを有するか、又は前記シリコン系ドメインが凝集体には全く凝集しない、粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末、より詳細には、更に処理した後に、又は更に処理することなく、電池の電極において使用するための粉末に関し、このような粉末を含む電極及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(Liイオン)電池は、現在、最高の性能の電池であり、携帯用電子機器については既に標準になっている。加えて、これらの電池は、自動車及び蓄電装置などの他の産業において既に浸透しかつ急激に普及している。このような電池の利点を可能にするのは、良好な電力性能と組み合わされた高エネルギー密度である。
【0003】
Liイオン電池は、通常、いくつかのいわゆるLiイオンセルを含み、これが今度は、電解液に浸漬されている正(カソード)電極、負(アノード)電極及びセパレータを含む。携帯機器用途に最も頻繁に用いられるLiイオンセルは、カソード用にリチウムコバルト酸化物又はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物などの電気化学的活物質を、アノード用に天然若しくは人工グラファイトを用いて開発されている。
【0004】
電池の性能、特に電池のエネルギー密度に影響を及ぼす重要な制限因子のうちの1つが、アノードにおける活物質であることが知られている。したがって、エネルギー密度を改善するために、この10年余りの間に、例えばスズ、アルミニウム及びシリコンに基づく最新の電気化学的活物質が研究かつ開発され、このような開発は、大部分は、使用中のLi組み込みの際に、この活物質とLiとを混ぜて合金にする原理に基づいている。
【0005】
最適な候補物質はシリコンであると考えられ、なぜなら、4200mAh/g(重量)又は2200mAh/cm(容積)の理論容量を得ることができ、これらの容量は、グラファイト(372mAh/g)のものよりも、また他の候補物質のものよりもはるかに大きいためである。
【0006】
本書の全体を通して、シリコンは、そのゼロ価の状態の元素Siを意味することを意図する。用語Siは、その酸化状態、ゼロ価又は酸化されているかに無関係に、元素Siを示すために使用される。
【0007】
しかしながら、アノードにおいてシリコン系の電気化学的活物質を用いることの1つの欠点は、充電中のその大きな体積膨張であり、これは、リチウムイオンがアノードの活物質中に、例えば合金化又は挿入によって完全に組み込まれる場合(このプロセスは多くの場合、リチオ化と呼ばれる)、300%と高い。Li組み込み中のシリコン系材料の大きな体積膨張は、シリコンにおいてストレスを誘導する場合があり、これが今度は、シリコン材料の機械的劣化をもたらすことがある。
【0008】
Liイオン電池の充電及び放電中に周期的に繰り返されることで、シリコン電気化学的活物質の繰り返される機械的劣化は、電池の寿命を許容できないレベルまで低下させ得る。
【0009】
シリコンの体積変化の有害作用を軽減しようとする試みにおいて、多くの調査研究は、シリコン材料のサイズをサブマイクロメートル若しくはナノサイズのシリコンドメインまで、通常は、500nmより小さい、好ましくは150nmより小さい平均サイズを有するよう低減することによって、これらを電気化学的活物質として使用することが、実行可能な解決策となり得ることを示した。
【0010】
体積変化に対応するために、複合粒子が通常使用され、ここでは、シリコンドメインが、マトリックス材料(通常、炭素系材料であるが、シリコン系合金又は酸化物も可能である)と混合される。
【0011】
炭素系材料については、一般的に、電池においては2つの異なるタイプの炭素が広く用いられる。第1のタイプは、グラファイトであり、これは、天然であっても、又は軟質炭素を焼成することによって人工的に作製されてもよく、秩序だった比較的小さい炭素層を、その層に対して垂直な方向にいかなる顕著な結晶学的秩序無しに有する炭素質材料である。第2のタイプは、いわゆる硬質炭素であり、これは無秩序な炭素層を有し、この炭素層は加熱してグラファイトを形成するには可動性が不十分である。これらの硬質炭素は、通常、有機ポリマー又は炭化水素の分解から形成される。
【0012】
更に、シリコンのマイナス効果は、数回のリチオ化-脱リチオ化サイクル後に、厚いSEI、すなわち固体電解質界面がアノード上に形成され得ることである。SEIは、電解質とリチウムとの複雑な反応生成物であり、したがって、電気化学反応に対するリチウム可用性が低減し、それゆえ、充電-放電サイクル当たりの容量損失であるサイクル性能は不良となる。厚いSEIは、電池の電気抵抗を更に増大させる場合があり、これによって達成可能な充電及び放電率を制限する。
【0013】
原理的には、SEIの形成は、不活性化層がシリコン表面上に形成されるとすぐに停止する自己終結プロセスである。しかしながら、シリコンの体積膨張により、シリコン及びSEIのいずれも放電(リチオ化)及び再充電(脱リチオ化)中に破損することがあり、これにより、新たなシリコン表面が解放され、新たなSEI形成が開始することになる。
【0014】
当該技術分野において、上記リチオ化/脱リチオ化機構は、一般的にいわゆるクーロン効率によって定量化され、クーロン効率は、充電中に使用されるエネルギーと比較した放電中に電池から除去されるエネルギー間の比率(充電-放電サイクルに対する%)として定義される。したがって、シリコン系アノード材料に関する大部分の研究は、充電-放電サイクリング中の体積変動を低減することによって、このクーロン効率を改善することに焦点が当てられている。
【0015】
このようなシリコン系複合材料を製造するための現行法は、電極ペースト配合物の調製中に個々の成分(例えば、シリコン及び目的とするマトリックス材料若しくは目的とするマトリックス材料の前駆体)を混合することに基づいているか、又はシリコン及びホスト材料の乾式粉砕/混合(焼成工程後に可能)を介して、あるいはシリコン及びホスト材料の湿式粉砕/混合(その後の湿潤媒体の除去及び可能な焼成工程)を介してその時行われる別々の複合材料製造工程によるものである。
【0016】
ホスト材料及びその中に分散されたシリコン系粉末を含む複合粉末を製造するための既知の開示は、米国特許第8,124,279号、同第8,241,793号及び同第8,158,282号である。例えば、米国特許第8,124,279号において、炭素系材料中のナノスケールのシリコン凝集粒子の複合材料が開示されている。炭素系材料は、1μm~100μmの平均粒子直径を有する粒子状グラファイトの粉末、導電性カーボンブラック及びバインダの混合物であり得る。
【0017】
米国特許第8,062,556号も、シリコン-炭素ナノ複合材料の調製のための製造法を開示しており、ここでは、100nm未満のサイズを備えた粒子を有するシリコン系粉末が、炭素含有ポリマーと混合され、その後熱分解される。シリコン-炭素ナノ複合材料は、Liイオン電池用の電極の作製において活物質として利用され、この電極は、カーボンブラック及びバインダを更に含む。
【0018】
米国特許第6,589,696号及び米国特許出願公開第2006/0134516号から、理論的には、アノード活物質と電解液との間の反応は、アノード材料の活性粒子上にコーティング材料を配置することによって回避され得ることが知られている。
【0019】
実際には、アノード材料の粒子をポリビニルアルコール(PVA)溶液と混合し、溶媒を蒸発させ、得られた生成物を熱分解し、PVAを炭素に分解することによって、本書においてこれを試みた。
【0020】
しかしながら、これは、良くても部分的かつ不良なコーティングを与えるにすぎず、アノード材料の電解液からの遮蔽は不十分となる。
【0021】
これについての理由は、恐らくは以下の要因のうちの1つ以上に関連する:
・PVAの量が完全なコーティングを形成するのには余りに低かったこと。
・開示されたプロセスにおいて、相当の比率のPVAが、結局最後にはアノード活物質といくらかの距離を残し、コーティングを形成するために利用できないこと。
・PVA分解の炭素収率がわずか10~20%であり、これにより、炭素層のその形成の間にかなりの収縮が発生し、これが炭素層が形成される間に亀裂をもたらし、非被覆領域をもたらすこと。
・80~90重量%に及ぶ分解ガスの漏れが、炭素への変換中にPVA層の分解においてそれら自体のための流路を作り出し、これが、炭素層において多孔性を作り出し、これによって、その保護能力を低減すること。
【0022】
加えて、PVA中の酸素原子が、熱分解中に、シリコンと反応し、SiOを形成し、これによって、シリコンの少なくとも一部を電気化学的用途に不活性にすることが疑われる。
【0023】
更に米国特許出願公開第2005/074672号、欧州特許第1722429号、及びXiang et al,CARBON49(2011)1787-1796においても、シリコン系複合材料を作製するための方法が開示されている。しかしながら、これらの場合、多量のナノシリコン粉末が、単純にグラファイトと混合されるだけであった。本発明の成果は、主としてそのナノメートルサイズに起因して、このようなシリコン粉末が、マイクロメートルサイズの凝集体に強く凝集し、これらは、少なくとも標準的な処理工程によっては容易に崩壊されないことを認識することである。
【0024】
これらの凝集体の崩壊を回避するための特定の尺度無しに標準的に混合することは、それによって最終複合材料中のナノシリコン粒子の凝集体をもたらし、これは、本発明によって認識されるように、最適以下である。
【0025】
米国特許出願公開第2014/0255785号及び同第2014/0234722号において、個別のシリコン粒子を有する複合材料が記載されている。これらのシリコン粒子は、グラフェンナノ片又はグラフェンシートのルース層内に埋め込まれており、高表面積を備えた多孔質構造をもたらす。
【0026】
これは、以下の短所を有する:BET測定値によって表示される比表面積が、過剰のSEI形成をもたらすこと。更に、密度が低いと、低い体積エネルギー蓄積能力につながるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第8,124,279号
【特許文献2】米国特許第8,241,793号
【特許文献3】米国特許第8,158,282号
【特許文献4】米国特許第8,062,556号
【特許文献5】米国特許第6,589,696号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0134516号
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/074672号
【特許文献8】欧州特許第1722429号
【特許文献9】米国特許出願公開第2014/0255785号
【特許文献10】米国特許出願公開第2014/0234722号
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Xiang et al,CARBON49(2011)1787-1796
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
当該技術分野における負電極及びその中に含まれる電気化学的活物質の進歩にも関わらず、Liイオン電池の性能を更に最適化するための能力を有する一層優れた電極に対する要求が未だにある。特に、ほとんどの用途のためには、改善された容量及びクーロン効率を有する負電極が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0030】
したがって、本発明は、マトリックス材料と、このマトリックス材料中に分散したシリコン系ドメインとを含む粒子を含む粉末であって、マトリックス材料が、炭素又は炭素に熱分解され得る材料であり、シリコン系ドメインの一部分がシリコン系ドメインの凝集体の形態で存在し、これらの凝集体の少なくとも98%が3μm以下の最大サイズを有するか、又はシリコン系ドメインが凝集体には全く凝集しない、粉末に関する。
【0031】
言い換えると、シリコン系ドメイン及びマトリックス材料は、分散体、すなわち、粒子、この場合はシリコン系ドメインが、異なる組成物又は状態の連続相中に、この場合はマトリックス材料中に分散している系を形成する。
【0032】
言い換えると、シリコン系ドメインの一部分がシリコン系ドメインの凝集体の形態で存在し、d98≦3μmであるか、又はシリコン系ドメインは全く凝集しない。
【0033】
本明細書のd98は、凝集体の最大サイズの分布の98パーセンタイル値である。
【0034】
シリコン系ドメインとは、主としてマトリックスとの離散した境界を有するシリコン原子のクラスターを意味する。このようなシリコン系ドメインにおけるシリコン含量は、通常80重量%以上であり、好ましくは90重量%以上である。
【0035】
シリコン系ドメイン及びその凝集体は、粉末の粒子の断面の顕微鏡技術によって観察することができる。これらの顕微鏡技術によって、凝集体がもし存在するならば、凝集体の最大サイズも決定することができる。
【0036】
凝集体は、シリコン系ドメインの一群であり、ここでは、ドメインは接触し、通常は互いに一点接触している。
【0037】
このような凝集体は、通常、マトリックス材料を含まないか又はほぼ含まないであろう。したがって、シリコン系ドメイン間でマトリックス材料が不在であること、又はほぼ不在であることは、これらのドメインを、単一の凝集体に属するものとして積極的に特定する。その逆は必ずしも真ではなく、すなわち、マトリックス材料の存在は、シリコン系ドメインの一群がクラスターではないことを決定するには十分ではない。
【0038】
明確にするために、上述した百分率は、ある特定の最大サイズを備えた凝集体の数に関するものであり、それらが表す重量に関するものではないことが留意される。
【0039】
光学顕微鏡又はSEM技術による、シリコン系ドメイン又はこれらの凝集体とマトリックス材料とのコントラストが不十分な場合、これらの断面のEDX又はEDSを用いる元素マッピング法を用いてもよく、ここでは、マトリックス材料を表す元素のシグナルが弱い又はシグナルが全くないことを、シリコン系ドメインの凝集体の存在及びサイズを決定するために用いることができる。
【0040】
凝集体又はドメインの最大サイズは、凝集体又はドメインの周囲上の2点間の最大の測定可能な直線距離である。
【0041】
実際には、このようなシリコン系ドメインは、異なる材料から作製されたマトリックス中の主としてシリコン原子のクラスター又は離散シリコン粒子のいずれかとすることができる。複数のこのようなシリコン粒子は、シリコン粉末であり、したがってシリコン系ドメインはシリコン粉末とみなすことができる。
【0042】
シリコン系ドメインは、酸化シリコンの薄い表面層を有してもよい。
【0043】
シリコン系ドメインは任意の形状を有してよく、例えば、実質的に球状であるだけでなく、ヒゲ状、ロッド、プレート、ファイバ及び針状などでもよい。
【0044】
明確にするために、シリコン系ドメインは、500nm未満、好ましくは150nm未満である質量平均直径d50を有する、ナノサイズであることが留意される。シリコン系ドメインのサイズが小さいのは境界状態とみなされ、この境界状態無しでは、良好な複合材料は生成され得ないことも更に留意される。
【0045】
更には、複合粉末それ自体は、主としてマイクロメートルサイズの粒子を含む。これは、10m/g未満、好ましくは5m/g未満、更に好ましくは2m/g未満の、BET技術によって測定される比表面積を有する。
【0046】
本発明による複合粉末は、従来の粉末よりも優れたサイクル性能を有する。理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、本発明による粉末はシリコンが良好に分散しているため従来の粉末よりもシリコンの膨潤及び収縮の既知のマイナス効果を被りにくいという事実に、このことが少なくとも部分的に関連していると推測する。このプラス効果は、シリコン系ドメインの凝集体を有する従来の粉末においても、凝集体内に、膨張を可能にするための十分な自由空間が存在するはずであると予測されているために、驚くべきことである。
【0047】
更に、本発明のこのような粉末はこれによって、間接的に、凝集したシリコン系ドメインを有する従来の粉末に比べてSEIを形成する傾向が著しく低く、更にこれによって、電気化学的性能も増加させる。
【0048】
好ましい実施形態において、シリコン系ドメインの一部分はシリコン系ドメインの凝集体の形態で存在し、これらの凝集体の少なくとも98%は2μm以下、好ましくは1μm以下の最大サイズを有するか、又はシリコン系ドメインは凝集体に全く凝集しない。
【0049】
更に好ましい実施形態において、シリコン系ドメインは、3μmを超える最大サイズを有して、凝集体に全く凝集せず、好ましくは、1μmを超える最大サイズを有して、凝集体に全く凝集しない。
【0050】
好ましい実施形態において、シリコン系ドメインは、マトリックス材料中に完全には埋め込まれていない遊離シリコン系ドメインであるか、又はマトリックス材料によって完全に包囲されている完全に埋め込まれたシリコン系ドメインであり、遊離シリコン系ドメインの百分率は、複合粉末中の金属又は酸化状態のSiの総量の4重量%以下である。
【0051】
遊離シリコン系ドメインの百分率は、好ましくは、粉末のサンプルをアルカリ溶液中にある特定の時間配置し、ある特定の時間の後に発生した水素の体積を決定し、反応したシリコン1モルに対して2モルの水素が生成することに基づいて、この量の水素を発生させるために必要とされたシリコンの量を算出し、これをサンプル中に存在する金属又は酸化状態のSiの総量で割ることによって決定される。
【0052】
遊離シリコンドメインは、本明細書では、マトリックス材料によって遮蔽されていないか又は完全には遮蔽されておらず、したがって複合粒子の外側から自由に接近可能であるシリコン系ドメインとして定義される。
【0053】
この実施形態による複合粉末は、シリコン系ドメインを有する従来の複合粉末に比べてSEIを形成する傾向が著しく低いであろう。
【0054】
理論によって束縛されるものではないが、本発明者らは、これは、たとえSiが通常、SEI中の重要な構成成分でなくとも、電解液とシリコン系ドメインとの間の可能な接触面が従来の粉末より小さいことに少なくとも部分的に関連付けられると推測している。
【0055】
結論として、本発明による複合粉末は、優れたサイクル性能を有するであろうし、高電流で使用される傾向が高いであろう。
【0056】
更なる利点は、電解液の含水量に関してそれほど厳しい要件が課され得ないことである。これは、次の理由:電解液中の水がLiPFと反応し、HFを形成することができるためである。このHFは、シリコンを腐食し、シリコン損失及び電解液の導電性を低下させるLiSiFの形成をもたらす。これを回避するために、電解液中の含水量は、極端に低く、50ppm以下に保たれることが多い。しかしながら、これを実現するためには、高価な原材料及び/又は高価な処理施設が必要とされる。
【0057】
本発明の粉末の遊離シリコンが低レベルであることによって、この問題は大幅に減らされ、これにより、電解液の厳しい水分制限要件は緩和され、全体のコストを削減することが可能である。
【0058】
好ましい実施形態において、シリコン系ドメインは、シリコン系粒子であり、これらは、複合材料を形成した後に、マトリックスから分離して存在する個別に識別可能な粒子であり、したがって、これらはマトリックスと一緒には形成されなかったことを意味する。
【0059】
更に別の好ましい実施形態において、本発明の粉末の粒子は、シリコン系ドメイン及びマトリックス材料のみを、又はほぼこれらのみを含み、言い換えると、少なくとも90重量%のシリコン系ドメイン及びマトリックス材料を含む。
【0060】
なお更なる実施形態において、粉末は、炭素質材料、好ましくはグラファイトを含み、シリコン系ドメインはこの炭素質材料中には埋め込まれていない。
【0061】
代替的な実施形態において、本発明の粉末は、この粒子のみから又はほぼこの粒子のみからなり、粉末は、少なくとも95重量%のこの粒子を含む。
【0062】
本発明は、本発明の粉末を含む電気化学セル用の電極及びこのような電極を含む電池に関する。
【0063】
好ましくは、複合粉末は、2重量%~25重量%のシリコン、好ましくは8重量%~15重量%のシリコンを含む。これは、好ましくは、1~20マイクロメートルの平均粒子直径d50を有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明による粉末の粒子のSEM画像を示す図である。
図2】より大きな縮尺で図1のSEM画像の一部を表示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明を、以下の実施例及び反例によって更に説明し、本発明による粉末の粒子のSEM画像を示す(白色バーが5μmを表す)図1、並びにより大きな縮尺で図1のSEM画像の一部を表示する(白色バーは1μmを表す)図2によって例示する。
【0066】
使用される分析法
遊離シリコンの決定:
製品の遊離シリコン系ドメインの百分率を決定するために、既知の総Si含量を有する製品0.1gを、45℃の水中1.2g/LのKOHの溶液中に配置した。ガスビュレットを用いて48時間にわたって発生したガスを採取し、その体積を測定したが、他のガス測定法が想定されてもよい。
【0067】
KOH溶液のみを含む参考試験も、同じ温度で行った。恐らく空気からの吸収ガスの放出に起因する参考試験において発生したガスの体積を、試験製品から発生したガスの体積から減じた。
【0068】
このように計算されたガスの体積を、理想的な気体の法則及びシリコンとKOHとの反応が、以下の反応の一方又は両方(両反応は、シリコン1モル当たり2モルに相当する水素を得る)に従って進むとの知識に基づいて、反応したシリコンの質量に変換した:
Si+KOH+5HO→KHSiO+2H
Si+2KOH+2HO→KSiO+2H
遊離シリコン系ドメインの百分率を、サンプル中の反応したシリコンの量及びSiの総量の比率として定義した。
【0069】
酸素含量の決定
実施例及び反例における粉末の酸素含量は、Leco TC600酸素-窒素分析器を用いて、以下の方法によって決定した。
【0070】
粉末のサンプルを、それ自体がニッケルのバスケット内に配置されている閉鎖したスズカプセル内に配置した。バスケットをグラファイトるつぼに入れ、キャリアガスとしてヘリウム下で2000℃を超える温度まで加熱した。
【0071】
これによってサンプルは溶融し、酸素はるつぼからのグラファイトと反応し、CO又はCOガスになる。これらのガスを赤外測定セル中に誘導する。観測されるシグナルを酸素含量に再計算する。
【0072】
電気化学性能の決定
試験される全ての複合粉末を、45μmの篩を用いて篩い分けし、カーボンブラック、カーボン繊維及びカルボキシメチルセルロースナトリウムバインダ(水中2.5重量%)と混合した。使用された比率は、90重量部の複合粉末/3重量部のカーボンブラック/2重量部のカーボン繊維及び5重量部のカルボキシメチルセルロース(CMC)であった。
【0073】
これらの成分を、Pulverisette7プラネタリーボールミル中で、500rpmにて10分間、二段階で混合した。
【0074】
エタノールできれいにした銅箔を、集電体として用いた。混合成分の125μmの厚さの層を、銅箔上にコーティングした。コーティングを真空中、50℃にて45分間乾燥させた。乾燥させた被覆銅箔から1.27cmの円を打ち抜き、リチウム金属を対電極として使用するコインセルにおける電極として使用した。電解液は、EC/DEC 1/1+2%のVC+10%のFEC溶媒中に溶解した1MのLiPFであった。全てのサンプルを、高精度のコインセル試験器(Maccor4000シリーズ)で試験した。
【0075】
最初の放電容量及び繰り返し充放電サイクルのクーロン効率を決定した。第9のサイクルのクーロン効率が報告され、なぜならこれが、第5から第100までのサイクルの平均値を代表するためである。
【0076】
当業者であれば、電池が持続すると期待される数百又は数千の充放電サイクルを超えると、サイクル当たりのクーロン効率に小さな差が生じ、電池は最後には相当な累積的影響を受けると予想されることを認識するであろう。
【0077】
凝集体サイズの決定
シリコン粒子の凝集体の最大サイズを、凝集体の外周上の2点間の最大測定可能距離を測定することによって、SEM画像により決定した。シリコン及びピッチは、そのままであるか又は分解されているかのいずれかを視覚的に容易に識別することができ、したがって、シリコン凝集体は、シリコンの分布率によって容易に特定することができるが、特にピッチの不在によって容易に特定することができる。
【0078】
0.5μm未満の最大サイズを有する凝集体を決定するために同じ手順が繰り返されたが、SEM顕微鏡写真をより高倍率(好ましくは、50.000倍を超える)で撮影した。計測及びサイズ測定で補助するために、画像解析ソフトウェアを用いた。信頼性の高いデータを得るために、このような凝集体が存在するならば、少なくとも0.5μmの最大サイズを有する少なくとも100個の凝集体を測定した。
【0079】
サンプルを周知の方法に従って、例えば、これらを樹脂中に埋め込み、その後切断し、研磨して、それらの滑らかな断面を提供することによって、調製した。
【0080】
実施例1
アルゴンをプラズマガスとして用いて、60kWの高周波数(RF)の誘導結合プラズマ(ICP)を適用することによって、サブマイクロメートルサイズのシリコン粉末を得て、これに、マイクロメートルサイズのシリコン粉末を220g/時の速度で注入し、2000Kを超える広く行き渡る(すなわち、反応ゾーン内に)温度をもたらした。この第1の工程において、前駆体は完全に蒸発した。第2の加工工程において、ガスの温度を1600K未満に加工させるために、反応ゾーンのすぐ下流でアルゴン流をクエンチガスとして使用し、金属サブマイクロメートルシリコン粉末に核生成させた。最後に、0.15モル%の酸素を含むN/O混合物を100L/時で添加することによって、不動態化工程を、100℃の温度で5分間行った。プラズマ及びクエンチガスの両方についてのガスの流速を、80nmの平均粒子直径d50及び521nmのd90を有するサブマイクロメートルのシリコン粉末を得るように調整した。この場合には、2.5Nm/時のArを、プラズマ用に、10Nm/時のArをクエンチガス用に使用した。
【0081】
配合物を、16gの言及したサブマイクロメートル粉末と32gの石油系ピッチ粉末から作製した。
【0082】
これを、N下で450℃まで加熱し、これによりピッチが溶融し、60分間の待機時間後に、1000rpmで作動するCowles溶解器型ミキサーを用いて高せん断下で30分間混合した。
【0083】
得られたピッチ中のサブマイクロメートルシリコンの混合物を、N下で室温まで冷却し、凝固したら、粉砕し篩い分けして、17.8μmの平均粒子直径d50を有する粉末を得た。
【0084】
SEM顕微鏡による評価を行い、シリコン粉末中のシリコン粒子が、得られた複合粉末中で凝集しているかどうかを決定した。0.5μm以上のサイズの凝集体は確認されなかった。
【0085】
粉末の酸素含量は、0.95重量%であった。
【0086】
SEM顕微鏡写真を図1及び2に示し、ここでは、シリコン粒子のピッチ全体にわたる分布が非常に均質であったことを見ることができる。これらの写真において、白色はシリコン粒子を示し、暗色はピッチを示す。
【0087】
グラファイト(Showa Denko SCMG-AF)を、乾燥混合によって乾燥させたシリコン粉末/ピッチ配合物に添加し、シリコン粉末/ピッチ/グラファイト混合物(それぞれ、1.0:2.0:7.6の重量比を有する)を得た。
【0088】
得られた混合物の10gを、管状炉の石英ボート中で、アルゴンを連続的に流して焼成し、3℃/分の加熱速度で1000℃まで加熱した。サンプルを1000℃で2時間保持した。加熱を止め、サンプルをアルゴン雰囲気下で室温まで冷却した。サンプルを石英容器から取り出し、コーヒーミルで15分間粉砕し、篩い分けして、13.6μmの平均粒子直径d50を有する複合粉末を得た。得られた複合粉末の酸素含量は、0.8重量%であった。
【0089】
SEM解析を行い、凝集体のサイズが焼成工程によって成長しなかったことを確認した。以下が確認された:0.5μm以上のサイズの凝集体は観察されなかった。多孔性は、視覚的に観察されなかった。
【0090】
BET法によって測定された複合粉末の比表面積は1.8m/gであった。
【0091】
実施例2
実施例1のように得たサブマイクロメートルサイズのシリコン粉末500gを、石油系ピッチ粉末1000gと混合した。
【0092】
高せん断を適用するために、配合物を、二軸スクリューを装備したHaakeプロセス11押出機に供給し、スクリューを150rpmの回転速度で運転させながら400℃に加熱した。押出機での滞留時間は30分であった。
【0093】
シリコンがピッチ材料中に十分に分散した状態の得られた押出物を、50℃未満まで冷却した。押出機の射出口及びその中に押出物が採取される容器を、Nを流すことによって周囲から遮蔽させた。
【0094】
得られた押出物の一部を、モルタル中で粉砕し、篩い分けして、15.9μmの平均粒子直径d50を有する粉末を得た。
【0095】
SEM顕微鏡による評価を行い、シリコン粉末中のシリコン粒子が、得られた複合粉末中で凝集しているかどうかを決定した。0.5μm以上のサイズの凝集体は確認されなかった。
【0096】
粉末の酸素含量は、0.98%であった。
【0097】
グラファイト(Showa Denko SCMG-AF)を、乾燥混合によって得られたシリコン粉末/ピッチ配合物に添加し、シリコン粉末/ピッチ/グラファイト混合物(それぞれ、1.0:2.0:7.6の重量比を有する)を得た。
【0098】
その後、得られた混合物を、実施例1に記載されているように焼成し、篩い分けした。
【0099】
得られた粉末の平均粒子直径d50は14.1μmであり、酸素含量は0.79%であった。
【0100】
SEM解析を行い、凝集体のサイズが焼成工程によって成長しなかったことを確認した。以下が確認された:0.5μm以上のサイズの凝集体は観察されなかった。多孔性は、視覚的に観察されなかった。
【0101】
BET法によって測定された複合粉末の比表面積は3.7m/gであった。
【0102】
比較例1
実施例1のように得たサブマイクロメートルサイズのシリコン粉末16gを、石油系ピッチ粉末32gと乾式混合した。
【0103】
これをN下で450℃まで加熱し、これにより、ピッチは溶融し、この温度で60分間保持した。せん断は適用しなかった。
【0104】
得られたピッチ中のサブマイクロメートルシリコンの混合物を、N下で室温まで冷却し、凝固したら、粉砕し篩い分けして、11.2μmの平均粒子直径d50を有する複合粉末を得た。粉末の酸素含量は、1.21%であった。
【0105】
SEM顕微鏡による評価を行い、シリコン粉末中のシリコン粒子が、得られた複合粉末中で凝集しているかどうかを決定した。以下の結果を得た(全ての結果はμmである):
【0106】
【表1】
【0107】
グラファイト(Showa Denko SCMG-AF)を、乾燥混合によって得られたシリコン粉末/ピッチ配合物に添加し、シリコン粉末/ピッチ/グラファイト混合物(それぞれ、1.0:2.0:7.6の重量比を有する)を得た。
【0108】
その後、得られた混合物を、実施例1に記載されているように焼成し、篩い分けした。得られた粉末の平均粒子直径d50は16μmであり、酸素含量は0.9%であった。
【0109】
シリコン粒子及び凝集体のSEM顕微鏡による評価を、焼成生成物で繰り返した。シリコンナノ粒子の相当量の凝集が生じたことを示す、以下の結果を得た(全ての結果はμmである):
【0110】
【表2】
【0111】
これらから分かるように、これらの結果は、未焼成生成物に関するものと同様である。
【0112】
SEM画像は、多孔性を、特にシリコン粒子の凝集体を作り上げているシリコン粒子の間で示した。
【0113】
BET法によって測定された複合粉末の比表面積は8.7m/gであった。
【0114】
比較例2
実施例1のように得たサブマイクロメートルサイズのシリコン粉末16gを、石油系ピッチ粉末32gと混合した。
【0115】
グラファイト(Showa Denko SCMG-AF)を、乾燥混合によってシリコン粉末/ピッチ配合物に添加し、シリコン粉末/ピッチ/グラファイト混合物(それぞれ、1.0:2.0:7.6の重量比を有する)を得た。溶融工程は適用しなかった。
【0116】
その後、得られた混合物を、実施例1に記載されているように焼成し、篩い分けした。得られた粉末の平均粒子直径d50は14.3μmであり、酸素含量は0.9%であった。
【0117】
シリコン粒子及び凝集体のSEM顕微鏡による評価を、焼成生成物で繰り返した。シリコンナノ粒子の相当量の凝集が生じたことを示す、以下の結果を得た(全ての結果はμmである):
【0118】
【表3】
【0119】
SEM画像は、多孔性を、特にシリコン粒子の凝集体を作り上げているシリコン粒子の間で示したが、グラファイトと分解されたピッチとの間の界面においても示した。
【0120】
BET法によって測定された複合粉末の比表面積は5.6m/gであった。
【0121】
電気化学性能及び遊離シリコンレベルを、焼成後に全ての生成物について決定し、表1に報告する。全てのこれらの生成物の総シリコンレベルは、10%+/-0.5%で測定した。
【0122】
【表4】
【0123】
特定の測定条件において、0.3%の遊離シリコンが、検出限界であったことに留意するべきである。この検出限界は、サンプルサイズを増加させることによって、及び/又は発生したガスの測定限界を低下させることによって、当業者により下げることができる。
【0124】
分かるとおり、粉末の電気化学的性質は、どちらの条件も満たされる場合、すなわちシリコン粒子の観察可能な凝集体が不在であり、遊離シリコンが低レベルである場合にのみ最適である。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス材料と、このマトリックス材料中に分散したシリコン系ドメインとを含み、黒鉛を含まない粒子を含む粉末であって、前記マトリックス材料が連続マトリックスであり、前記マトリックス材料が炭素であり、前記シリコン系ドメインにおけるシリコン含量が80重量%以上である、粉末。
【請求項2】
前記シリコン系ドメインにおけるシリコン含量が90重量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記シリコン系ドメインの一部分がシリコン系ドメインの凝集体の形態で存在し、これらの凝集体の少なくとも98%が3μm以下の最大サイズを有するか、又は前記シリコン系ドメインが凝集体には全く凝集しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記シリコン系ドメインが凝集体に全く凝集しないか、又は全ての凝集体が3μm以下の最大サイズを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記シリコン系ドメインが、前記マトリックス材料中に完全には埋め込まれていない遊離シリコン系ドメインであるか、又は前記マトリックス材料によって完全に包囲されている完全に埋め込まれたシリコン系ドメインであり、前記遊離シリコン系ドメインの百分率が、前記粉末中の金属又は酸化状態のSiの総量の4重量%以下であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記遊離シリコン系ドメインの百分率が、前記粉末のサンプルをアルカリ溶液中にある特定の時間配置し、前記ある特定の時間の後に発生した水素の体積を決定し、反応したシリコン1モルに対して2モルの水素が生成することに基づいて、この量の水素を発生させるために必要とされたシリコンの量を算出し、これを前記サンプル中に存在する金属又は酸化状態のSiの総量で割ることによって決定される百分率であることを特徴とする、請求項5に記載の粉末。
【請求項7】
前記シリコン系ドメインが、500nm未満である、質量平均直径d50を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
前記シリコン系ドメインが、シリコン系粒子であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
10m /g未満のBET値を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記粒子が、20体積%未満の多孔度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
前記粒子が多孔性ではないことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の粉末を含む、電気化学セル用の電極。
【請求項13】
請求項12に記載の電極を含む電池。
【外国語明細書】