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特開2022-167997プラスチック容器および外装体からなる包装体
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  • 特開-プラスチック容器および外装体からなる包装体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022167997
(43)【公開日】2022-11-04
(54)【発明の名称】プラスチック容器および外装体からなる包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/04 20060101AFI20221027BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20221027BHJP
   A61J 1/06 20060101ALI20221027BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20221027BHJP
【FI】
B65D77/04 E
A61J1/05 311
A61J1/06 Z
A61J1/10 331Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022135983
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2018029166の分割
【原出願日】2018-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】美尾 篤
(72)【発明者】
【氏名】野村 純平
(72)【発明者】
【氏名】鳥屋部 果穂
(57)【要約】
【課題】注射剤等の内容物の水分蒸散による濃度変化を防止し、かつ冷蔵条件の保管または一時的な温度低下の際にも、二次包装内における結露の発生を防止することが可能なプラスチック容器および外装体からなる包装体を提供する。
【解決手段】内容物11として水または水溶液を収容するための気密性を有するプラスチック容器10と、プラスチック容器を収容した外装体20との組み合わせからなり、プラスチック容器および外装体は吸湿性を有さず、収容部12の水蒸気透過度WVTRが0.01~3.4g/m・24h、フィルム部22の水蒸気透過度WVTRが0.1~100g/m・24h、WVTR-WVTR>0の関係を満足し、空気21の体積は内容物11の体積の3倍以内であり、外装体の内部は常圧であり、0~10℃で保存される用途か、または0~10℃の温度環境に一時的に静置しても結露を生じない特性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物として、水または水溶液を収容するための気密性を有するプラスチック容器と、前記プラスチック容器を収容してフィルム部がシールされた状態にある外装体との組み合わせからなる包装体であって、
前記プラスチック容器および前記外装体はそれぞれ吸湿性を有さず、
前記プラスチック容器の前記内容物を収容する収容部は、JIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)が、0.01~3.4(g/m・24h)の範囲内であり、
前記外装体の前記フィルム部は、JIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)が、0.1~100(g/m・24h)の範囲内であり、
それぞれの水蒸気透過度が、(WVTR)-(WVTR)>0の関係を満足し、
さらに、前記外装体と前記プラスチック容器との間に存在する空気の体積は、前記プラスチック容器内に収容された前記内容物の体積の3倍以内であり、
かつ、前記外装体の内部は常圧であり、前記内容物が収容された状態で0~10℃の温度環境下で保存される用途であるか、または10℃~常温の範囲内で保存される用途において0~10℃の温度環境に一時的に静置した場合でも結露を生じない特性を有することを特徴とするプラスチック容器および外装体からなる包装体。
【請求項2】
前記プラスチック容器が、輸液バッグ、ブロー容器、アンプル、バイアルのいずれかの形態であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック容器および外装体からなる包装体。
【請求項3】
前記内容物が医薬品であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック容器および外装体からなる包装体。
【請求項4】
前記医薬品が注射剤であることを特徴とする請求項3に記載のプラスチック容器および外装体からなる包装体。
【請求項5】
前記注射剤が、血漿分画製剤、酵素、血液凝固線溶系因子、ホルモン、ワクチン、インターフェロン類、エリスロポエチン類、サイトカイン類、抗体、融合タンパク質のいずれか1種類以上を含み、前記プラスチック容器が、無菌充填用バッグ容器および栓体を含むことを特徴とする請求項4に記載のプラスチック容器および外装体からなる包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷温条件といった、結露が生じやすい環境へ保管した場合であっても、外装体内での結露が生じにくく、安全衛生性に優れたプラスチック容器および外装体からなる包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば注射剤を包装する容器は、薬剤濃度の維持や長期保存の必要性などから、適切な包装設計を行うことにより、製剤を構成する水分の蒸散を抑制する必要がある。具体的には、プラスチック製医薬品容器試験法における水蒸気透過性試験において水蒸気透過性が所定値以下であることが要求される。この水蒸気透過性は一次包装単独で達成してもよく、一次包装と二次包装の組み合わせで達成しても良い。
【0003】
通常、プラスチック製水性注射剤容器の水蒸気透過性は、使用する樹脂の材質と厚さに依存するため、ある程度の水蒸気透過性を有している。このために、水蒸気バリア性を有する積層フィルムで包装することによって、包装体の水蒸気透過性を低下させることは有効である。
【0004】
輸液バッグやボトル等のプラスチック製注射剤容器(一次包装)に、収容物である水性注射製剤を充填して密封し、これをプラスチックパウチ等の外装体(二次包装)内に収容する形態は一般的である。特に製剤が酸素の存在下で容易に酸化や分解を生じる性質を有する場合、例えば特許文献1に示されているように、気体難透過性を有する外装袋内に脱酸素剤等と製剤が充填された容器を封入することは、広く用いられる手段である。
【0005】
また、製剤の性質によっては保存安定性の確保のため、冷蔵環境下に保管し、投与直前に室温に静置する必要があるものが存在する。このとき、一次包装内の製剤温度と室温との差や、室内環境の湿度によっては、一次包装内で蒸発し、高分子膜を透過した水蒸気が、二次包装内で結露してしまうことが指摘されている。
【0006】
二次包装内の結露は、一次包装からの液漏れと識別することができず、一次包装の密封が確保された状態であっても、製剤の無菌性が担保されていることを判断できないという問題を引き起こす。また、結露によって生じた液滴は、これをきっかけとした細菌類やカビ類の繁殖の原因となりうるため、医薬品そのものの安全衛生性を確保するという観点から、重大な品質問題であると言える。
【0007】
類似の現象は点眼容器でも見られ、例えば特許文献2においては、一次包装と二次包装の水蒸気透過性のバランスにより、充填された液剤の蒸散を防ぎつつ、二次包装内の結露を防止する方法が提案されている。具体的には、一次包装単体での水蒸気透過性は高く、二次包装内に収容することにより、水分蒸散を防止する設計としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-155864号公報
【特許文献2】特開2015-107322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2に記載の技術によれば、二次包装を開封するまでは、一次包装からの水分蒸散は低い水準に抑えられるものの、二次包装を開封した時点で所定の水蒸気バリア性能は損なわれてしまうため、繰り返し使用するための保管時には水分の蒸散速度が非常に速いという問題点が指摘される。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術を輸液バッグ等の注射剤に応用しようとする場合、結露を防止する目的で一次包装の水蒸気透過性を高める設計とした場合、日本薬局方「7.02プラスチック製医薬品容器試験法」により定められた水蒸気透過性試験の規格を逸脱し、水性注射剤容器としての使用ができなくなってしまう。
【0011】
本発明は上記の課題、すなわち注射剤等の内容物の水分蒸散による濃度変化を防止し、かつ冷蔵条件の保管または一時的な温度低下の際にも、二次包装内における結露の発生を防止することが可能なプラスチック容器および外装体からなる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では一次包装からの水分蒸散を抑制しつつ、二次包装から外部への透過を容易にすることで、二次包装内部での水蒸気圧の上昇を抑えることで、課題が解決できることを見出した。
【0013】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。
すなわち、第1の発明は、内容物として、水または水溶液を収容するための気密性を有するプラスチック容器と、前記プラスチック容器を収容してフィルム部がシールされた状態にある外装体との組み合わせからなる包装体であって、前記プラスチック容器および前記外装体はそれぞれ吸湿性を有さず、前記プラスチック容器の前記内容物を収容する収容部は、JIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)が、0.01~5(g/m・24h)の範囲内であり、前記外装体の前記フィルム部は、JIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)が、0.1~100(g/m・24h)の範囲内であり、それぞれの水蒸気透過度が、(WVTR)-(WVTR)>0の関係を満足し、さらに、前記外装体と前記プラスチック容器との間に存在する空気の体積は、前記プラスチック容器内に収容された前記内容物の体積の3倍以内であり、かつ、前記外装体の内部は常圧であり、前記内容物が収容された状態で0~10℃の温度環境下で保存される用途であるか、または10℃~常温の範囲内で保存される用途において0~10℃の温度環境に一時的に静置した場合でも結露を生じない特性を有することを特徴とするプラスチック容器および外装体からなる包装体である。
【0014】
第2の発明では、前記プラスチック容器が、輸液バッグ、ブロー容器、アンプル、バイアルのいずれかの形態である。
第3の発明では、前記内容物が医薬品である。
第4の発明では、前記医薬品が注射剤である。
第5の発明では、前記注射剤が、血漿分画製剤、酵素、血液凝固線溶系因子、ホルモン、ワクチン、インターフェロン類、エリスロポエチン類、サイトカイン類、抗体、融合タンパク質のいずれか1種類以上を含み、前記プラスチック容器が、無菌充填用バッグ容器および栓体を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、注射剤等の内容物の水分蒸散による濃度変化を防止し、かつ冷蔵条件の保管または一時的な温度低下の際にも、二次包装内における結露の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】包装体の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
図1は、本実施形態の包装体の概略を示す断面図である。
【0018】
本実施形態の包装体30は、内容物11を収容する収容部12を有するプラスチック容器10と、プラスチック容器10を収容する外装体20とから構成されている。プラスチック容器10および外装体20は、それぞれ吸湿性を有しない。
【0019】
内容物11は水または水溶液であり、プラスチック容器10は気密性を有する。ここで、気密性とは、プラスチック容器10の外部から固形または液状の異物が侵入せず、内容物の損失、風解、潮解または蒸発を防ぐことができる容器の有する性質を意味し、日本薬局方の通則に規定される「気密容器」の有する性質であればよい。
【0020】
なお、広辞苑においては、気密性を「気体を通さないこと、気体に対して密閉されていること」と定義しているのに対し、日本薬局方では「気体の侵入しない容器」は「密封容器」と称され、「密封容器」にはガラス製容器、両面アルミ製ブリスター包装、金属製の押出しチューブ等が使用される。本実施形態のプラスチック容器10は、必ずしも「気体の侵入しない容器」とする必要はない。
【0021】
プラスチック容器10は、特に限定されないが、輸液バッグ、ブロー容器、アンプル、バイアルのいずれかの形態が好ましい。プラスチック容器10は、ゴム栓体等によって封止可能な排出口13を有してもよい。排出口13に注射器の針を挿入することにより、収容部12を開封することなく、内容物11を取り出してもよい。内容物11の目視確認のため、収容部12の少なくとも一部が透明であることが好ましい。
【0022】
内容物11としては、注射剤等の医薬品が挙げられる。後述するように、内容物11が冷蔵保存を要する場合に好適である。そのような注射剤としては、血漿分画製剤、酵素、血液凝固線溶系因子、ホルモン、ワクチン、インターフェロン類、エリスロポエチン類、サイトカイン類、抗体、融合タンパク質のいずれか1種類以上を含むものが挙げられる。注射剤等を収容するプラスチック容器は、無菌充填用バッグ容器および栓体を含むことが好ましい。
【0023】
本実施形態のプラスチック容器10の収容部12は、JIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)が、0.01~5(g/m・24h)の範囲内である。通常、プラスチックは、水蒸気透過度を金属やガラスほど小さくすることが困難であることから、水蒸気透過度の比較的低い水準として、上記の範囲内としている。
【0024】
外装体20は、フィルム部22がシールされた状態にあり、フィルム部22とプラスチック容器10との間は空気21で満たされている。外装体20のフィルム部22は、JIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)が、0.1~100(g/m・24h)の範囲内である。フィルム部22における水蒸気透過度の分布が略均等であり、フィルム部22に穴を有しないことが好ましい。
【0025】
外装体20が2枚以上のフィルム部22から構成される場合には、それぞれの水蒸気透過度が等しくても異なってもよいが、各フィルム部22の水蒸気透過度が異なる場合には、透過面積に応じて水蒸気透過度を平均した値が、上記範囲内となればよい。例えば透過面積がAで水蒸気透過度がWVTRであるフィルムと、透過面積がAで水蒸気透過度がWVTRであるフィルムを外装体の異なる面に用いた場合は、合計の透過面積(m)が(A+A)で、24時間当たり水蒸気透過量(g/24h)の合計が(A・WVTR+A・WVTR)となることから、平均の水蒸気透過度は、(A・WVTR+A・WVTR)/(A+A)として求められる。
【0026】
プラスチック容器10および外装体20を構成するプラスチックとしては、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、エラストマーなどの1種または2種以上が挙げられる。これらのプラスチックは、フィルム、シート、チューブ、成形品などとして容器に用いることができる。プラスチックの水蒸気透過度を低くする場合には、アルミニウム等の金属、シリカ、アルミナ等の金属酸化物を、金属箔、蒸着膜などとしてプラスチックと積層してもよい。プラスチックの水蒸気透過度は、材料の選択、厚さ、組み合わせ等により調整することが可能である。積層方法としては、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート、共押出、多層ブロー成形、積層射出成形、コーティング等が挙げられる。
【0027】
また、本実施形態の包装体30は、外装体20の内部の空気21が常圧となり、内容物11が収容された状態で0~10℃の温度環境下で保存される用途であるか、または10℃~常温の範囲内で保存される用途において0~10℃の温度環境に一時的に静置した場合でも結露を生じない特性を有する。ここで、常圧とは、加圧も減圧もせずに、大気圧と等しいことを意味する。これは、外装体20を構成するフィルム部22が大気圧の変動に従って変形可能であり、外装体20の内部の空気21と外部の大気との間に気圧差がない状態であればよい。また、常温とは、例えばJIS Z8703(試験場所の標準状態)に規定される標準状態の温度(20℃、23℃、25℃)の範囲内を考慮し、20~25℃を意味する。
【0028】
また、0~10℃の低温では、空気1m当たりの水蒸気量が4.8~9.3g/mであり、常温である20~25℃の水蒸気量である17.2~22.8g/mより低い状態にある。ただし、本実施形態の保存状態は、外部雰囲気の相対湿度を100RH%に限定するものではない。保存温度が0℃以上であることにより、内容物11中の水分を含めた包装体30中の水分の凍結が抑制される。また、包装体30の保存温度が常温以下、すなわち、0~10℃または10℃~常温の範囲内であれば、プラスチック容器10の気密性は保たれる。保存温度の下限は0℃または10℃に限らず、0℃以上または10℃以上で下限温度を設定可能である。保存温度の上限は常温(20~25℃)または10℃に限らず、常温以下(25℃以下、20℃以下)または10℃以下の上限温度を設定可能である。包装体30の保存中に0~10℃の低温となるのが、常時でも継続的でも一時的でもよく、意図的でも偶発的でもよい。
【0029】
プラスチック容器10は、外装体20に対して出し入れ可能であり、外装体20とプラスチック容器10との間には、空気21が存在する。この空気21の体積は、プラスチック容器10内に収容された内容物11の体積の3倍以内である。温度による気体の体積変化を考慮すると、0~10℃において、空気21の体積が内容物11の体積の3倍以内であることが好ましい。内容物11の体積は、例えば20mL以上が好ましい。また、「3倍以内」というのが「2倍以内」であってもよい。
【0030】
また、収容部12の水蒸気透過度(WVTR)と、フィルム部22の水蒸気透過度(WVTR)は、(WVTR)-(WVTR)>0の関係を満足する。つまり、WVTRが、WVTRより大きいことが必要である。さらに(WVTR)と(WVTR)との差または比などが所定の範囲にあることが好ましい。
【0031】
次に、以上の条件を満たす包装体30の作用について説明する。
内容物11として、水または水溶液が充填されたプラスチック容器10の内部は湿潤している。また、プラスチック容器10を収容した外装体20の内部は比較的乾燥している。このため、プラスチック容器10の内部と外部との間には、水蒸気圧の差が存在している。プラスチック容器10の収容部12を挟んで両側の蒸気圧は平衡になろうとし、プラスチック容器10の内部の水分は水蒸気としてプラスチック容器10と外装体20との間の空気21中へ移動する。
しかし、外装体20を構成するフィルム部22の水蒸気透過度が低い(水蒸気バリア性が高い)なら、プラスチック容器10の外部へ移動した水蒸気は外装体20の内部に閉じ込められた状態となる。このため、時間の経過により外装体20の内部の水蒸気圧は一定の水準まで高まる。さらに、0~10℃の低温では飽和水蒸気圧が下がるため、それを上回る部分は凝縮し、水滴となって結露する。
そこで、外装体20の内部およびプラスチック容器10の外部における結露を防止するためには、外装体20の水蒸気バリア性を下げ、外装体20の内部から外部に向けて水蒸気を連続的に移動させることが必要である。したがって、プラスチック容器10の水蒸気透過度(WVTR)と、外装体20の水蒸気透過度(WVTR)を比較したとき、WVTR<WVTRの関係が成立する必要がある。外装体20の水蒸気透過度を大きくとり、外装体20の外部へ水蒸気を移動させ、外装体20の内部の空気21中で水蒸気圧の上昇を抑制することで、0~10℃の低温で包装体30内の飽和蒸気圧の降下が生じても、結露を防ぐことが可能である。
【0032】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0034】
[一次包装用シートの製膜およびバッグ容器の製袋]
(1-1)Tダイ式押出製膜機を用いて、日本ポリエチレン株式会社製の密度0.908g/cm、融解ピーク温度120℃の気相法メタロセン系ポリエチレン「ハーモレックス(登録商標)」を原料として、厚み230μmのポリエチレン(PE)シートを製膜した。
(1-2)上記のPEシートを、厚み12μmのシリカ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱ケミカル株式会社製「テックバリア(登録商標)L」)と、三井化学株式会社製のポリウレタン系接着剤「タケラック(登録商標)」によりドライラミネート工法で貼り合わせ、ラミネートシートを得た。
(1-3)接着剤の硬化後、2枚のラミネートシートをPE面が内側になるよう対向させ、HDPE(株式会社プライムポリマー製「ハイゼックス(登録商標)」)を原料として射出成形により製造した排出口とともに、外周をヒートシールし、パウチ部の内寸が140mm×100mmのバッグ容器を製袋した。
(1-4)上記ラミネートシートのJIS K7129の方法に従って温度40℃、相対湿度90%の環境下で測定される水蒸気透過度(WVTR)値は0.2(g/m・24h)であった。
(1-5)また、シリカ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルムをラミネートしないで、厚み230μmのPEシートをそのまま(1-3)と同様にしてバッグ容器の形状に製袋したほか、PEシート厚みを変更して、表1に示すように、水蒸気透過度の異なる一次包装体を種々作製した。
【0035】
[二次包装用シートの製膜および二次包装パウチの製袋]
(2-1)空冷インフレーション製膜法により、日本ポリエチレン株式会社製の密度0.908g/cm、融解ピーク温度120℃の気相法メタロセン系ポリエチレン「ハーモレックス(登録商標)」を原料として、厚み40μmのポリエチレン(PE)フィルムを得た。
(2-2)上記のPEフィルムを、厚み12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱ケミカル株式会社製「スーパーニール(登録商標)」)と、三井化学株式会社製のポリウレタン系接着剤「タケラック(登録商標)」によりドライラミネート工法で貼り合わせ、ラミネートフィルムを得た。
(2-3)接着剤の硬化後、2枚のラミネートフィルムをPE面が内側になるよう対向させ、外周の3方をヒートシールし、残る1方が開口し、パウチ部の外寸が240mm×160mm、ヒートシール幅が10mmの二次包装パウチを製袋した。この二次包装パウチのWVTR値は5.1(g/m・24h)であった。
(2-4)また、(2-2)の二軸延伸ポリエステルフィルムとして、片側表面がシリカ蒸着処理されたバリアフィルム(三菱ケミカル株式会社製「テックバリア(登録商標)L」)を、蒸着処理側を貼り合わせ面としたラミネートフィルムを合わせて作製した。このラミネートフィルムのWVTR値は0.27(g/m・24h)であった。(2-3)と同様にして二次包装パウチを作製した。
【0036】
[一次包装体の試験方法]
バッグ容器に内容物として水100mLを充填し、ゴム栓体により封止することで、一次包装体を作製した。この一次包装体を第十七改正日本薬局方(JP17)の水蒸気透過性試験法に従って、温度20℃、相対湿度65%で14日間静置した場合の水蒸気透過量により、JP17水蒸気透過性(%)を測定した。
【0037】
それぞれの一次包装容器のWVTR値とJP17水蒸気透過性の値は、表1に示す通りである。一次包装容器のWVTR値が5(g/m・24h)を超える場合、JP17水蒸気透過性(%)が規格から逸脱し、不適合となった。なお、プラスチック製水性注射剤容器の水蒸気透過性の規格値は0.20%以下である。
【0038】
【表1】
【0039】
<実験1>
上記の一次包装体を二次包装パウチ内に収容し、開口部を3方シール部と同様にヒートシールすることで、検体を作製した。作製した検体を、温度30℃、相対湿度70%のオーブン内に2週間静置した後、5℃の冷蔵庫内でさらに2週間保管した。所定の期間が経過した検体を冷蔵庫から取り出し、目視により二次包装パウチ内の結露の有無を観察した。評価基準は、二次包装内に結露が生じていない場合を「○」、結露が生じ水滴が認められた場合を「×」、ただし水滴が僅かな場合は「△」とした。
試験終了後、二次包装パウチ内に存在する空気の体積を求めるため、外装を開封せずに注射針とプラスチック製シリンジにより、二次包装パウチ内の空気を抜取り、シリンジのメモリから空気体積を算出した。各検体の空気体積は、表2の中に合わせて記載した。
【0040】
表1に示した一次包装と、二次包装の組み合わせによる実験1の結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示すように、一次包装のWVTR値が、二次包装のWVTR値よりも低い場合、冷蔵条件で保管した包装系内部の結露を防止できることが明らかとなった。
なお、内容物の液量を例えば50mLや200mLとすることも可能と考えられる。
【0043】
<実験2>
上記の一次包装体AからGを二次包装パウチ内に収容し、開口部を3方シール部と同様にヒートシールすることで、検体を作製した。作製した検体をダンボール箱に収納した後、温度記録用のデータロガーとともに、常温輸送のトラック便により東京-大阪間を片道輸送した。データロガーの記録を解析したところ、2-10℃の範囲内に置かれた時間は11時間であった。到着地にて23℃(相対湿度50%)の室内で1時間静置した後に梱包を開封し、二次包装内の結露の有無を目視で観察し、実験1と同じ評価基準によって記録した。
表3に実験2における結果を一覧に示した。
【0044】
【表3】
【0045】
実験2の結果は実験1で得られたものと同様の傾向を示した。冷蔵条件で保管された後に室温環境へ取り出されるのと同様に、室温保管を前提とする製品が、輸送中に一時的な冷温下に置かれると、同様に結露を生じる可能性が示唆され、本発明に基づく適正な包装設計がなされる必要性があることが示された。
【符号の説明】
【0046】
10…プラスチック容器、11…内容物、12…収容部、13…排出口、20…外装体、21…空気、22…フィルム部、30…包装体。
図1