(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022016800
(43)【公開日】2022-01-25
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20220118BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20220118BHJP
H01Q 3/24 20060101ALI20220118BHJP
H01Q 21/28 20060101ALI20220118BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
H01Q1/22 C
H01Q3/24
H01Q21/28
B60J1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119741
(22)【出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】伊東 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】広田 憲篤
(72)【発明者】
【氏名】田邊 秀崇
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA04
5J021AA09
5J021AA13
5J021DB04
5J021HA06
5J021HA10
5J021JA02
5J046AA04
5J046AB17
5J046LA01
5J046LA05
5J046LA06
5J046LA08
5J046LA13
5J046LA15
5J046LA18
5J047AA04
5J047AB17
5J047EC00
(57)【要約】
【課題】従来の車両用窓ガラスは、十分なアンテナ利得を得ることが出来なかった。
【解決手段】一実施の形態の車両用窓ガラスは、第1給電電極11が第1アース電極14より上方となるように、ガラス板101の側辺113に沿って配置され、第2給電電極21と第2アース電極24は、ガラス板101の上辺または下辺に沿って配置され、第1アース側エレメント15は、第1アース電極14と接続し、ガラス板101の側辺113から離れる水平方向に延伸して1つの開放端を有する単エレメントであり、第1給電側エレメント12は、第1給電電極11と接続し、ガラス板101の側辺113から離れる水平方向に延伸する部分を含んで開放端を有する第1給電側第1エレメント12aを有し、第1アンテナ1と第2アンテナ2とは、容量結合しない配置となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられる車両用窓ガラスであって、
ガラス板と、
前記ガラス板に設けられるアンテナとを備え、
前記アンテナは、所定の周波数帯の電波を受信可能な第1アンテナと第2アンテナと、を有し、
前記第1アンテナは、第1給電導体部と第1アース導体部とを有し、
前記第1給電導体部は、第1給電電極と第1給電側エレメントとを有し、
前記第1アース導体部は、第1アース電極と第1アース側エレメントとを有し、
前記第1給電電極と前記第1アース電極は、前記第1給電電極が前記第1アース電極より上方となるように、前記ガラス板の側辺に沿って配置され、
前記第2アンテナは、第2給電導体部と第2アース導体部とを有し、
前記第2給電導体部は、第2給電電極と第2給電側エレメントとを有し、
前記第2アース導体部は、第2アース電極と第2アース側エレメントとを有し、
前記第2給電電極と前記第2アース電極は、前記ガラス板の上辺または下辺に沿って配置され、
前記第1アース側エレメントは、前記第1アース電極と接続し、前記ガラス板の前記側辺から離れる水平方向に延伸して1つの開放端を有する単エレメントであり、
前記第1給電側エレメントは、前記第1給電電極と接続し、前記ガラス板の前記側辺から離れる水平方向に延伸する部分を含んで開放端を有する第1給電側第1エレメントを有し、
前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、容量結合しない配置となる、
車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記第1給電側エレメントと前記第1アース側エレメントとは、少なくとも一部が容量結合する、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記第1給電側第1エレメントは、前記第1給電電極とは反対側の端部近傍から前記第1アース導体部側とは反対側に延伸してL字状となる、請求項1または2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記第1給電側エレメントは、前記第1給電電極と電気的に接続して水平方向に延伸する部分を含んで開放端を有する、第1給電側第2エレメントを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記第1給電側第1エレメントと前記第1給電側第2エレメントとは、少なくとも一部が容量結合する、請求項4に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記所定の周波数帯の電波の空気中の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、
前記第1給電側第2エレメントの距離LH12は、(1/4)×k×λ以上、(1/2)×k×λ以下である、請求項4または5に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記所定の周波数帯の中心周波数の電波の空気中の波長をλ0とするとき、
前記距離LH12は、(1/4)×k×λ0以上、(1/2)×k×λ0以下である、請求項6に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記所定の周波数帯の電波の空気中の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、
前記第1給電側第1エレメントの距離LH11は、(1/4)×k×λ以上、(1/2)×k×λ以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記所定の周波数帯の中心周波数の電波の空気中の波長をλ0とするとき、
前記距離LH11は、(1/4)×k×λ0以上、(1/2)×k×λ0以下である、請求項8に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記所定の周波数帯の電波の空気中の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をkとするとき、
前記第1アース側エレメントの距離LG1は、(1/8)×k×λ以上、(1/4)×k×λ以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記所定の周波数帯の中心周波数の電波の空気中の波長をλ0とするとき、
前記距離LG1は、(1/8)×k×λ0以上、(1/4)×k×λ0以下である、請求項10に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記第1アース側エレメントは、前記第1アース電極とは反対側の水平方向の端部を起点として前記第1アース側エレメントから離れる方向に延伸する、第1アース側補助エレメントを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記第2給電側エレメントは、
前記第2給電電極と接続して前記第2給電電極に近い前記上辺または前記下辺に相当する近接辺から離れる方向に延伸する、第2給電側第1接続エレメントと、
前記第2給電側第1接続エレメントの前記第2給電電極とは反対側の端部近傍から分岐して延伸する、第2給電側第1水平エレメントと第2給電側第2水平エレメントと、
前記第2給電電極と電気的に接続して、前記第2アース電極側とは反対側に延伸する第2給電側第3水平エレメントと、を有し、
前記第2アース側エレメントは、前記第2アース電極と電気的に接続して、前記第2給電電極側とは反対側の水平方向に延伸する、第2アース側水平エレメントを有する、
請求項1から12のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記第2給電側第1水平エレメントおよび前記第2給電側第2水平エレメントは、前記第2アース側水平エレメントよりも、前記近接辺から離れる方向に配置される、請求項13に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記第2給電電極と接続して前記近接辺から離れる方向に延伸して前記第2給電側第3水平エレメントと接続する第2給電側接続エレメントを有する、請求項13または14に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記第2アース電極と接続して前記近接辺から離れる方向に延伸して前記第2アース側水平エレメントと接続する第2アース側接続エレメントを有する、請求項13から15のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記第2給電側第1水平エレメントと前記第2アース側エレメントとは、少なくとも一部が容量結合する、請求項13から16のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記所定の周波数帯よりも低い他の周波数帯の電波を受信する他のアンテナをさらに有する、請求項1から17のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記他のアンテナは、AM放送波の周波数帯とFM放送波の周波数帯のうち少なくとも一方の電波を受信する、請求項18に記載の車両用窓ガラス。
【請求項20】
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項1から19のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項21】
前記ガラス板は、前記車両の側部に取り付けられる固定窓ガラスである、請求項1から20のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項22】
前記ガラス板は、前記車両の対向する位置に対になるように2枚が設けられ、
2枚の前記ガラス板には、それぞれ、所定の周波数帯の電波を受信可能な2つのアンテナが設けられ、合計4つのアンテナは、前記車両において4チャンネルのアンテナとして機能する請求項1から21のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用窓ガラスに関し、例えば、放送波等の電波を受信するアンテナを備えた車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用窓ガラスには、放送波等の電波を受信できるアンテナなど様々な機能部材が備えられている。例えば、車両用窓ガラスには、特定の放送波の周波数帯域の電波を受信できる複数個のアンテナを配置した、いわゆるダイバーシティアンテナが搭載されることも知られている。このように、車両用窓ガラスに備えられる(複数個の)アンテナは、それらを配置するための領域が狭かったりするなどスペースに制限があった。
【0003】
例えば、リアガラスには、中央部に電熱線(デフォッガ)等の加熱領域を設けているため、その周辺部の限られた空白領域にアンテナを配置しなければならない制限がある。また、フロントガラスにアンテナを配置する場合でも、運転手の視界の妨げにならないようにアンテナを配置する領域を狭くする必要がある。アンテナを配置する領域を狭くすることは、同乗者の視界の妨げとならないよう、サイドガラス(リアクオーター等)についても同様である。
【0004】
このような放送波の電波を受信するダイバーシティアンテナとして、地上デジタルテレビ放送波用の電波を受信するアンテナが、車両用窓ガラスに搭載されることも知られている。例えば、特許文献1には、リアクォーターガラスに地上デジタルテレビ放送波用の電波を受信するアンテナ導体が所定のパターンで配置されており、該アンテナ導体がダイバーシティ受信することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、地上デジタルテレビ放送波に割り当てられた周波数帯(470MHz~720MHz)で所定の利得は得られるものの十分とは言えず、さらに高い利得を有するアンテナを搭載した車両用窓ガラスが求められている。
【0007】
本発明は、該課題を解決するために、地上デジタルテレビ放送波の電波を受信可能で高いアンテナ利得が得られるアンテナを搭載する車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態にかかる車両用窓ガラスは、車両に取り付けられる車両用窓ガラスであって、ガラス板と、前記ガラス板に設けられるアンテナとを備え、前記アンテナは、所定の周波数帯の電波を受信可能な第1アンテナと第2アンテナと、を有し、前記第1アンテナは、第1給電導体部と第1アース導体部とを有し、前記第1給電導体部は、第1給電電極と第1給電側エレメントとを有し、前記第1アース導体部は、第1アース電極と第1アース側エレメントとを有し、前記第1給電電極と前記第1アース電極は、前記第1給電電極が前記第1アース電極より上方となるように、前記ガラス板の側辺に沿って配置され、前記第2アンテナは、第2給電導体部と第2アース導体部とを有し、前記第2給電導体部は、第2給電電極と第2給電側エレメントとを有し、前記第2アース導体部は、第2アース電極と第2アース側エレメントとを有し、前記第2給電電極と前記第2アース電極は、前記ガラス板の上辺または下辺に沿って配置され、前記第1アース側エレメントは、前記第1アース電極と接続し、前記ガラス板の前記側辺から離れる水平方向に延伸して1つの開放端を有する単エレメントであり、前記第1給電側エレメントは、前記第1給電電極と接続し、前記ガラス板の前記側辺から離れる水平方向に延伸する部分を含んで開放端を有する第1給電側第1エレメントを有し、前記第1アンテナと前記第2アンテナとは、容量結合しない配置となる。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、地上デジタルテレビ(DTV)放送波の周波数帯の電波に対して高い利得が得られるアンテナを搭載する車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかる車両用窓ガラスのうち車両左側に配置される車両用窓ガラスの概略図である。
【
図2】実施の形態にかかる車両用窓ガラスのうち車両右側に配置される車両用窓ガラスの概略図である。
【
図3】第1アンテナの別の形態を説明する車両用窓ガラスの概略図である。
【
図4】第2アンテナの別の形態を説明する車両用窓ガラスの概略図である。
【
図5】車両左側に配置される窓ガラスに形成されたアンテナの利得特性のグラフである。
【
図6】車両右側に配置される窓ガラスに形成されたアンテナの利得特性のグラフである。
【
図7】車両左右に配置される窓ガラスに形成されたアンテナ全体の利得特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態にかかる車両用窓ガラスのアンテナの構成
本発明にかかる車両用窓ガラスについて説明する。以下の説明では、窓ガラスが車両のボディに取り付けられた状態での実施の形態の説明を行う。窓ガラスは、車両ボディに取り付けられた状態では、金属枠等の枠体(以下、ボディフランジと称す)に囲まれた部分が開口部となっている。なお、ボディフランジは枠体全てが金属の場合に限らず、枠体の一部に樹脂が含まれてもよいが、以降、枠体全てが金属(金属枠)であるとして説明する。ただし、本明細書で「金属枠」とは、開口部を囲う枠体の少なくとも一部が金属である場合も含むものとする。また、窓ガラスとなるガラス板は、ボディフランジ内に埋め込まれる部分を含む。以下の説明では、ボディフランジに囲まれる開口部の窓ガラスを車両用窓ガラスと称す。そして、実施の形態にかかる車両用窓ガラスに形成されるアンテナのアンテナパターンについて説明する。以下で説明するアンテナは、給電電極とアース電極とが1対で用いられる、いわゆる双極タイプのアンテナである。
【0012】
また、以下で説明する図面は、車両にガラス板を取り付けた状態の車両用窓ガラスを示し、図面内に車両の前後方向を例示する。なお、図面中の車両の前方方向は、車両の進行方向に相当する。また、車両用窓ガラスは、車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスのいずれにも適用できるが、以下の説明では、特にことわりがない場合、車両のサイドガラスとする。車両のサイドガラスは、例えば、車両後方側に位置するリアクォーターガラスが挙げられる。そして、実施の形態にかかる車両用窓ガラスはとくに、車両の側部に取り付けられる非可動式の固定窓ガラスに採用される。
【0013】
本実施の形態にかかる車両用窓ガラスは、車両の前方方向に対して左右両側にあるサイドガラスのうち、片側のみに適用した場合、1つの車両用窓ガラスのみで同じ周波数帯の電波を受信できる、第1アンテナ及び第2アンテナの少なくとも2チャンネル以上のダイバーシィティアンテナを構成できる。さらに、本実施の形態にかかる車両用窓ガラスは、車両の対向する位置に対になるような両側にある2枚のサイドガラスにそれぞれ、同じ仕様の車両用窓ガラスを適用してもよい。このような車両は、片側で2チャンネル、両側で4チャンネル(以上)のダイバーシティアンテナを構成できる。
【0014】
[車両用窓ガラスの例]
図1は、実施の形態にかかる車両用窓ガラスの概略図である。
図1に示す車両用窓ガラス100は、サイドガラスの一例である。車両用窓ガラス100は、車両の前方方向に対して左側のサイドガラスとし、ボディフランジ110に設けられた略四角形状の開口部にガラス板101が嵌め込まれた固定窓の例とするが、車両の前方方向に対して右側のサイドガラスでもよい。また、
図1に示す車両用窓ガラス100は、ボディフランジ110によってできる開口部の外周縁部に、不図示の遮光膜を備えてもよい。遮光膜は、具体的に、黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。遮光膜は、後述する第1アンテナ及び第2アンテナの少なくとも一部、例えば、少なくとも第1給電電極11、第1アース電極14、第2給電電極21及び第2アース電極24と重なるように配置されてもよい。このように、遮光膜が第1アンテナ及び第2アンテナの少なくとも一部と重なることで、これらのアンテナの一部が視認されにくくなり意匠性が向上する。
【0015】
図1に示す車両用窓ガラス100は、第1アンテナ(例えば、左側第1アンテナ1)と第2アンテナ(例えば、左側第2アンテナ2)とを有する。左側第1アンテナ1及び左側第2アンテナ2は、所定の周波数帯(例えば、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯)の電波を受信可能なアンテナである。そして、左側第1アンテナ1及び左側第2アンテナ2は、2チャンネルのダイバーシティアンテナとして機能する。以降、左側第1アンテナ1は、単に「第1アンテナ1」とし、左側第2アンテナ2は、単に「第2アンテナ2」として説明する。
【0016】
第1アンテナ1は、車両用窓ガラス100の車両後方側の上下方向に延伸する辺(
図1の車両後方辺113)の近傍に設けられる。第2アンテナ2は、車両用窓ガラス100の車両前方側の前後方向に延伸する辺のうち下方に位置する辺(
図1の車両下方辺112)の近傍に設けられる。第1アンテナ1と第2アンテナ2は、互いに一定の距離を置くようにして形成され、これらが容量結合しない配置とする。第1アンテナ1と第2アンテナ2は、このように配置することで、他方のアンテナとの干渉を抑制でき、単独のアンテナで所定の周波数帯の電波の受信感度が高められる。なお、容量結合しない一定の距離とは、少なくとも30mm超であり、50mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましい。このように、車両用窓ガラス100の隣り合う辺のそれぞれの近傍に第1アンテナ1と第2アンテナ2を配置する場合でも、これらが互いに容量結合しないようにする。
【0017】
図1に示す例では、これらのアンテナを前述のように配置したが、第1アンテナ1は、車両用窓ガラス100の車両前方側の上下方向に延伸する辺(
図1の車両前方辺111)の近傍に配置してもよい。また、第2アンテナ2は、車両用窓ガラス100の車両の前後方向に延伸する辺のうち上方の辺(
図1の車両上方辺114)の近傍に配置してもよい。いずれにしても、第1アンテナ1と第2アンテナ2との距離は、これらが容量結合しない一定の距離を保つ配置とする。
【0018】
なお、
図1における車両用窓ガラス100は、ボディフランジ110によってできる開口部のうち、第1アンテナ1及び第2アンテナ2を配置しない領域に、他のアンテナANTaを備えてもよい。他のアンテナANTaは、後述する車両用窓ガラス200において、詳しく説明する。
【0019】
第1アンテナ1は、双極タイプであり、第1給電導体部10、第1アース導体部13を有する。第1給電導体部10は、第1給電電極11、第1給電側エレメント12を有する。第1アース導体部13は、第1アース電極14、第1アース側エレメント15を有する。
図1に示す例では、第1給電電極11と第1アース電極14は、第1給電電極11が上方となるように、車両後方辺113に沿って上下に並ぶように配置される。
【0020】
第1給電電極11と第1アース電極14のいずれが上方に配置されるかは、各電極に接続されるアンテナに接続されるアンプ等の回路に設けられるコネクタの配線により決定される場合がある。車両用窓ガラス100について、第1給電電極11が第1アース電極14よりも上方に配置されると、第1アンテナ1に、例えばアンプ等(不図示)を介して、フィーダ線(不図示)を結線する時、車両下側から上側に向かって結線できる。そのため、車内側が結露した場合、水滴が当該フィーダ線を伝わって、当該アンプ及び当該第1アンテナ1側への侵入防止の効果が期待できる。また、第1アース電極14は、フィーダ線(不図示)等によりボディにアースされる。
【0021】
第1給電側エレメント12は、第1給電電極11に接続される。そして、第1給電側エレメント12は、車両後方辺113から離れる方向であって、水平方向に延伸する。また、第1給電側エレメント12は、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bとを有する。第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bは、第1給電電極11と接続されない側の端部が開放端となる。また、
図1において、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bは、平行して延伸する。また、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bは、少なくとも一部が容量結合するが、一方のエレメント全部が他方のエレメントと容量結合してもよい。さらに、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bは、同じ距離であって、これらが容量結合してもよい。
【0022】
第1アース側エレメント15は、第1アース電極14に接続される。そして、第1アース側エレメント15は、車両後方辺113から離れる方向であって、水平方向に延伸する。第1アース側エレメント15の第1アース電極14とは反対側の端部は開放端となる。第1アース側エレメント15は、第1給電側第1エレメント12aよりも短い長さで設けられる。そして、第1給電側エレメント12のうち第1アース側エレメント15に近い第1給電側第1エレメント12aは、第1アース側エレメント15と少なくとも一部が容量結合するが、第1アース側エレメント15の全部が容量結合してもよい。
【0023】
ここで、エレメント同士が容量結合する距離について説明する。2つの構成要素が容量結合するためには、隣り合う2つの構成要素の間の距離が30mm以下であるとアンテナ特性に対して有効な容量値の容量結合が生じる。さらに、隣り合う2つの構成要素の間の距離は、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。なお、隣り合う2つの構成要素が容量結合する距離の下限は、0mm超であればよく、例えば、3mm以上が好ましい。
【0024】
第2アンテナ2は、前述のように双極タイプであり、第2給電導体部20、第2アース導体部23を有する。第2給電導体部20は、第2給電電極21、第2給電側エレメント22を有する。第2アース導体部23は、第2アース電極24、第2アース側エレメント25を有する。
図1に示す例では、第2給電電極21と第2アース電極24は、第2アース電極24が前方側になるように車両下方辺112に沿って並べて配置される。
【0025】
第2給電側エレメント22は、第2給電電極21と接続する、第2給電側第1エレメント及び第2給電側第2エレメントを含む。
図1に示す例では、第2給電側第1エレメントは、第2給電側第1接続エレメント22a、第2給電側第1水平エレメント22b及び第2給電側第2水平エレメント22cを有する。また、第2給電側第2エレメントは、第2給電側第2接続エレメント22d及び第2給電側第3水平エレメント22eを有する。
【0026】
第2給電側第1接続エレメント22aは、第2給電電極21と接続される。第2給電側第1接続エレメント22aは、第2給電電極21の近接辺(例えば、車両下方辺112)から離れる方向に延伸する。例えば、第2給電側第1接続エレメント22aは、車両の上下方向(垂直方向)に延伸するエレメントである。第2給電側第1水平エレメント22b及び第2給電側第2水平エレメント22cは、第2給電側第1接続エレメント22aの第2給電電極21とは反対側の端部近傍から分岐して延伸する。つまり、第2給電側第1水平エレメント22b及び第2給電側第2水平エレメント22cは、第2給電側第1接続エレメント22aの第2給電電極21とは反対側の端部近傍を起点に、水平方向に向かって互いに反対の方向に延伸する。また、第2給電側第1水平エレメント22b及び第2給電側第2水平エレメント22cにおいて第2給電側第1接続エレメント22aと接続されない側の端部は開放端となる。なお、本明細書において「近接辺」とは、所定の部位に対して、ボディフランジ110(120)によってできる開口部のうち最も近接する辺を意味する。
【0027】
第2給電側第2接続エレメント22dは、第2給電電極21と接続される。第2給電側第2接続エレメント22dは、第2給電電極21の近接辺(車両下方辺112)から離れる方向に延伸する。例えば、第2給電側第2接続エレメント22dは、車両の上下方向(垂直方向)で、第2給電側第1接続エレメント22aに沿って延伸するエレメントである。第2給電側第3水平エレメント22eは、第2給電側第2接続エレメント22dの第2給電電極21とは反対側の端部近傍から、第2アース電極24側とは反対の方向(例えば、車両後方側に向かう方向)に水平に延伸する。そして、第2給電側第3水平エレメント22eの第2給電側第2接続エレメント22dと接続されない側の端部は、開放端となる。また、第2給電側第3水平エレメント22eの少なくとも一部は、第2給電側第2水平エレメント22cと容量結合する。
【0028】
図1において、第2アース側エレメント25は、第2アース側接続エレメント25a及び第2アース側水平エレメント25bを有する。第2アース側接続エレメント25aは、第2アース電極24と接続され、第2アース電極24の近接辺(車両下方辺112)から離れる方向に延伸する。例えば、第2アース側接続エレメント25aは、車両の上下方向(垂直方向)に延伸するエレメントである。第2アース側水平エレメント25bは、第2アース側接続エレメント25aの第2アース電極24とは反対側の端部近傍から第2給電電極21側とは反対の方向(例えば車両前方側に向かう方向)に水平に延伸する。そして、第2アース側水平エレメント25bの第2アース側接続エレメント25aと接続されない側の端部は、開放端となる。
【0029】
また、
図1に示すように、第2給電側第1水平エレメント22b及び第2給電側第2水平エレメント22cは、第2アース側水平エレメント25bよりも近接辺(車両下方辺112)から離れる方向に配置される。また、第2給電側第1水平エレメント22bは、少なくとも一部が、第2アース側水平エレメント25bと容量結合する。
【0030】
[車両用窓ガラスの第1変形例]
図2は、実施の形態にかかる車両用窓ガラスの概略図である。
図2に示す車両用窓ガラス200は、サイドガラスの第1変形例である。車両用窓ガラス200は、車両の前方方向に対して右側のサイドガラスとし、ボディフランジ120に設けられた略四角形状の開口部にガラス板102が嵌め込まれた固定窓の例である。なお、
図2に示す車両用窓ガラス200は、車両の前方方向に対して左側のサイドガラスに適用してもよい。また、
図2に示す車両用窓ガラス200は、ボディフランジ120とガラス板102によってできる開口部の外周縁部に遮光膜を備えてもよい。なお、以下の説明では、車両用窓ガラス100と車両用窓ガラス200とで同じ構成要素の名称を使用するが、車両用窓ガラス100と車両用窓ガラス200とで区別するために車両用窓ガラス100と車両用窓ガラス200とで同一要素であっても異なる符号を付す。
【0031】
そして、
図2に示す車両用窓ガラス200は、車両用窓ガラス100と同様に、第1アンテナと第2アンテナを有する。以下では、車両用窓ガラス200に設けられる第1アンテナ及び第2アンテナをそれぞれ第1アンテナ3及び第2アンテナ4と称す。また、車両用窓ガラス200では、他のアンテナANTaを有してもよい。第1アンテナ3及び第2アンテナ4は、第1アンテナ1及び第2アンテナ2と同様に、所定の周波数帯(例えば、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯)の電波を受信可能なアンテナである。また、第1アンテナ3及び第2アンテナ4は、2チャンネルのダイバーシティアンテナとして機能する。
【0032】
さらに、車両用窓ガラス200における第1アンテナ3及び第2アンテナ4は、車両用窓ガラス100における第1アンテナ1及び第2アンテナ2と連携することで4チャンネルのダイバーシティアンテナとして機能できる。
【0033】
第1アンテナ3は、車両用窓ガラス200の車両後方側の上下方向に延伸する辺(
図2の車両後方辺123)の近傍に設けられる。第2アンテナ4は、車両用窓ガラス200の車両前方側の前後方向に延伸する辺のうち下方に位置する辺(
図2の車両下方辺122)の近傍に設けられる。第1アンテナ3と第2アンテナ4は、互いに一定の距離を置くようにして形成され、これらが容量結合しない配置とする。
【0034】
図2に示す車両用窓ガラス200は、第1アンテナ3が、車両用窓ガラス200の車両前方側の上下方向に延伸する辺(
図2の車両前方辺121)の近傍に配置してもよい。また、第2アンテナ4は、車両用窓ガラス200の車両の前後方向に延伸する辺のうち上方に位置する辺(
図2の車両上方辺124)の近傍に配置してもよい。
【0035】
第1アンテナ3は、車両用窓ガラス200上において、車両用窓ガラス100の第1アンテナ1に相当するアンテナである。つまり、
図2に示す、第1給電導体部30、第1給電電極31、第1給電側エレメント32、第1アース導体部33、第1アース電極34及び第1アース側エレメント35は、それぞれ、第1給電導体部10、第1給電電極11、第1給電側エレメント12、第1アース導体部13、第1アース電極14及び第1アース側エレメント15に相当する構成要素である。しかし、第1アンテナ1と第1アンテナ3との間には、給電側エレメントの形状に違いがある。そこで、以下では、第1アンテナ3のうち、第1アンテナ1と異なる給電側エレメントの形状について説明する。
【0036】
車両用窓ガラス100における、第1アンテナ1の第1給電導体部10は、第1給電側第1エレメント12a及び第1給電側第2エレメント12bを有する。これに対して、車両用窓ガラス200における、第1アンテナ3の第1給電導体部30に設けられる給電側エレメントは、第1給電側エレメント32のみで構成される、いわゆる「単エレメント」である点が異なる。
【0037】
第1給電側エレメント32は、第1給電電極31に接続され、第1給電電極31から水平方向に延伸し、かつ、第1給電電極31とは反対側の端部近傍から第2アース導体部43側とは反対側に延伸する折れ曲がり部を有するL字形状をなす。なお、L字形状のうち第1給電電極31とは反対側の端部は開放端となる。また、第1給電側エレメント32は、水平方向に延伸する部分のうち、少なくとも一部が第1アース側エレメント35と容量結合すればよく、水平方向に延伸する部分の全部が第1アース側エレメント35と容量結合してもよい。
【0038】
次に、第2アンテナ4について説明する。第2アンテナ4は、車両用窓ガラス200における、車両用窓ガラス100の第2アンテナ2に相当するアンテナである。つまり、
図2に示す、第2給電導体部40、第2給電電極41、第2給電側エレメント42、第2アース導体部43、第2アース電極44及び第2アース側エレメント45は、それぞれ、第2給電導体部20、第2給電電極21、第2給電側エレメント22、第2アース導体部23、第2アース電極24及び第2アース側エレメント25に対応する。そして、第2アンテナ4と第2アンテナ2とは、略同一の形状を有する。
【0039】
したがって、第2給電側第1接続エレメント42a、第2給電側第1水平エレメント42b、第2給電側第2水平エレメント42c、第2給電側接続エレメント42d、第2給電側第3水平エレメント42e、第2アース側接続エレメント45a及び第2アース側水平エレメント45bは、それぞれ、第2給電側第1接続エレメント22a、第2給電側第1水平エレメント22b、第2給電側第2水平エレメント22c、第2給電側第2接続エレメント22d、第2給電側第3水平エレメント22e、第2アース側接続エレメント25a及び第2アース側水平エレメント25bに相当する。なお、各エレメントの長さは窓ガラスの形状、他のアンテナの配置領域の形状等により適宜調整可能である。
【0040】
また、
図2に示すように、車両用窓ガラス200は、第1アンテナ3及び第2アンテナ4に加えて、第1アンテナ3、第2アンテナ4とは異なる周波数帯の電波を受信する他のアンテナ(AM/FMアンテナANTa)を設けてもよい。AM/FMアンテナANTaは、例えば、地上デジタルテレビ放送波よりも低い周波数帯である、AM放送波の周波数帯(例えば、530kHz~1720kHz)、FM放送波の周波数帯(例えば、76MHz~108MHz)の少なくとも一方、または両方の電波を受信できる。
図2では、AM/FMアンテナANTaが配置される領域をハッチングで示した。AM/FMアンテナANTaは、車両用窓ガラス200のうち右側第1アンテナ3及び右側第2アンテナ4が備えられている領域を除く領域に配置する。
【0041】
[第1アンテナ1の変形例]
図3を参照して第1アンテナ1の変形例となる第1アンテナ1a~1dについて説明する。なお、第1アンテナ1の変形例は、第1アンテナ1a~1dに限らない。第1アンテナ1aは、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bのうち一方のエレメントが、他方のエレメントの両端を除く部分と接続して、水平方向とは異なる方向に延伸する接続エレメント12cを有する。該接続エレメント12cは、一方の端部近傍から折れ曲がって水平方向に延伸するエレメントとして第1給電側第2エレメント12bが設けられる構成でもよい。この場合、水平方向に延伸するエレメント(第1給電側第2エレメント12b)の長さが、接続エレメント12cの長さよりも長い方がとくに水平偏波に対するアンテナ利得を向上でき好ましい。
【0042】
第1アンテナ1bは、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bの少なくとも一方が、第1給電電極11と接続して水平方向とは異なる方向に延伸する接続エレメント12dを有する。該接続エレメント12dの端部近傍から折れ曲がって水平方向に延伸するエレメントとして第1給電側第2エレメント12bが設けられる構成でもよい。この場合、水平方向に延伸するエレメント(第1給電側第2エレメント12b)の長さが、接続エレメント12dの長さよりも長い方がとくに水平偏波に対するアンテナ利得を向上でき好ましい。
【0043】
第1アンテナ1cは、第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bの少なくとも一方について、水平方向とは異なる方向に折れ曲がってできる延長エレメント12eを有する。該延長エレメントは、先端が開放端となる構成である。
【0044】
第1アンテナ1dは、第1アース側エレメントの別の形態を示す。第1アンテナ1dの第1アース側エレメント15aは、第1アース電極14側とは反対側が、水平方向とは異なる方向に折れ曲がってできる延長エレメントを有し、その先端が開放端である。また、第1アース側エレメント15aは、第1アース電極14と接続して水平方向とは異なる方向に延伸する(不図示の)接続エレメントを有し、該接続エレメントの端部近傍から折れ曲がって水平方向に延伸する構成でもよい。この場合、水平方向に延伸するエレメントの長さが、接続エレメントの長さよりも長い方がとくに水平偏波に対するアンテナ利得を向上でき好ましい。
【0045】
[第2アンテナ2の変形例]
図4を参照して第2アンテナ2の変形例となる第2アンテナ2a、2bついて説明する。第2アンテナ2a、2bでは、第2給電側エレメント22が、第2給電側第2接続エレメント22dを含まない構成である。つまり、第2アンテナ2aの第2給電側エレメント22は、第2給電側第3水平エレメント22eが、第2給電電極21に直接接続される。一方、第2アンテナ2bの第2給電側エレメント22は、第2給電側第3水平エレメント22eが、第2給電側第1接続エレメント22aの両端を除く部分と接続される。
【0046】
さらに、第2給電側第1水平エレメント22b、第2給電側第2水平エレメント22c及び第2給電側第3水平エレメント22eの少なくとも一つは、水平方向とは異なる方向に折れ曲がってできる(不図示の)延長エレメントを有して、該延長エレメントの先端が開放端となる構成でもよい。(不図示の)延長エレメントは、
図4に示す、第2給電側第1水平エレメント22b、第2給電側第2水平エレメント22c及び第2給電側第3水平エレメント22eの(開放)端から延長するエレメントに相当する。
【0047】
また、第2アース側エレメント25は、
図4に示す例に限らない。例えば、第2アース側エレメント25は、第2アース側接続エレメント25aを含まない構成でもよい。つまり、第2アース側エレメント25における、第2アース側水平エレメント25bは、第2アース電極24に直接接続されてもよい。このとき、第2アース側エレメント25は、第2アース側水平エレメント25bを含んでいればよい。
【0048】
さらに、第2アース側水平エレメント25bは、水平方向とは異なる方向に折れ曲がってできる(不図示の)延長エレメントを有して、該延長エレメントの先端が開放端となる構成でもよい。(不図示の)延長エレメントは、
図4に示す、第2アース側水平エレメント25bの(開放)端から延長するエレメントに相当する。
【0049】
[車両用窓ガラスのエレメント長]
図1及び
図2で示した、車両用窓ガラス100及び車両用窓ガラス200の各エレメント長について説明する。各エレメント長は、受信する電波の波長に基づき決定される。そこで以下では、式を用いて各エレメントの長さの決定方法について説明する。
【0050】
まず、第1給電側第1エレメント12aの長さLH11、第1給電側第2エレメント12bの長さLH12及び第1給電側エレメント32の長さLH3について説明する。これらの長さLH11、LH12及びLH3は、受信する信号の周波数帯の電波の空気中における波長をλ、ガラス板101の波長短縮率をk、としたとき(1a)式の関係を満たす長さに設定するとよい。
(1/4)×λ×k≦LH11,LH12,LH3≦(1/2)×λ×k ・・・ (1a)
これらの長さは、例えば、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信できる長さである。
【0051】
また、第1給電側第1エレメント12aの長さLH11、第1給電側第2エレメント12bの長さLH12及び第1給電側エレメント32の長さLH3は、(1b)式を満たすと好ましく、(1c)式を満たすとより好ましい。
(11/40)×λ×k≦LH11,LH12,LH3≦(19/40)×λ×k ・・・ (1b)
(12/40)×λ×k≦LH11,LH12,LH3≦(18/40)×λ×k ・・・ (1c)
【0052】
さらに、第1給電側第1エレメント12aの長さLH11、第1給電側第2エレメント12bの長さLH12及び第1給電側エレメント32の長さLH3は、受信する信号の周波数帯の中心周波数の電波の空気中における波長をλ0としたとき、(1d)式を満たすとさらに好ましく、(1e)式を満たすととくに好ましく、(1f)式を満たすと最も好ましい。
(1/4)×λ0×k≦LH11,LH12,LH3≦(1/2)×λ0×k ・・・ (1d)
(11/40)×λ0×k≦LH11,LH12,LH3≦(19/40)×λ0×k ・・・ (1e)
(12/40)×λ0×k≦LH11,LH12,LH3≦(18/40)×λ0×k ・・・ (1f)
なお、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯(470MHz~720MHz)における電波の、空気中の波長λは、416mm~638mmであり、ガラス板101(102)の波長短縮率k=0.64とすると、第1給電側第1エレメント12aの長さLH11、第1給電側第2エレメント12bの長さLH12及び第1給電側エレメント32の長さLH3は、約67mm以上、約204mm以下に設定できる。このとき、長さLH11、長さLH12及び長さLH3は、一例としては140mm程度である。
【0053】
次に、第1アース側エレメント15、第1アース側エレメント35の長さについて説明する。第1アース側エレメント15の長さLG1、第1アース側エレメント35の長さLG3は、受信する信号の周波数帯の電波の空気中における波長をλ、ガラス板101(102)の波長短縮率をk、としたとき(2a)式の関係を満たす長さに設定するとよい。
(1/8)×λ×k≦LG1,LG3≦(1/4)×λ×k … (2a)
この長さLG1,LG3は、例えば、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信できる長さである。
【0054】
また、第1アース側エレメント15の長さLG1及び第1アース側エレメント35の長さLG3は、(2b)式を満たすと好ましく、(2c)式を満たすとより好ましい。
(11/80)×λ×k≦LG1,LG3≦(19/80)×λ×k ・・・ (2b)
(12/80)×λ×k≦LG1,LG3≦(18/80)×λ×k ・・・ (2c)
【0055】
さらに、受信する信号の周波数帯の中心周波数の電波の空気中における波長をλ0としたとき、第1アース側第1エレメント15の長さLG1及び第1アース側エレメント35の長さLG3は、(2d)式を満たすと好ましく、(2e)式を満たすとより好ましく、(2f)式を満たすとさらに好ましい。
(1/8)×λ0×k≦LG1,LG3≦(1/4)×λ0×k・・・ (2d)
(11/80)×λ0×k≦LG1,LG3≦(19/80)×λ0×k ・・・ (2e)
(12/80)×λ0×k≦LG1,LG3≦(18/80)×λ0×k ・・・ (2f)
なお、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯における電波の、空気中の波長λは、416~638mmであり、ガラス板101の波長短縮率k=0.64とすると第1アース側第1エレメント15の長さLG1及び第1アース側エレメント35の長さLG3は、約33mm以上、約102mm以下に設定してもよい。このとき、長さLG1及びLG3は、一例としては65mm程度である。
【0056】
また、実施の形態にかかる車両用窓ガラス100及び車両用窓ガラス200は、アンテナを構成するそれぞれのエレメントを互いに容量結合させることで、比較的簡単なパターンでそれぞれのアンテナの利得を高くできる。とくに、車両用窓ガラス100における第1アンテナ1において、第1給電側第1エレメント12aの少なくとも一部は、第1給電側第2エレメント12bと容量結合するとともに、第1アース側エレメント15と容量結合するとよい。そして、車両用窓ガラス200における第1アンテナ3において、第1給電側エレメント32の少なくとも一部は、第1アース側エレメント35と容量結合するとよい。
【0057】
また、実施の形態にかかる車両用窓ガラス100及び車両用窓ガラス200では、1つの窓ガラス内に設けられる2つのアンテナが容量結合しないように配置することで2チャンネルのダイバーシティアンテナとして利用できる。さらに、実施の形態にかかる車両用窓ガラス100及び車両用窓ガラス200は、2つの窓ガラスを用いることで4チャンネルのダイバーシティアンテナを構成できる。このようなダイバーシティアンテナを用いることでアンテナ利得をさらに高められる。以下に記載する実施例において、
図1及び
図2で示した第1アンテナ1及び第2アンテナ2のアンテナ利得、第1アンテナ3及び第2アンテナ4のアンテナ利得について詳細に説明する。
【実施例0058】
(実施例1)
[車両用窓ガラス100のアンテナ利得]
本実施例は、車両用窓ガラス100の具体例であり、地上デジタルテレビ放送波の電波を受信する仕様とした。また、車両用窓ガラス200においても地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信できる仕様とした。ここで、車両用窓ガラス100は、車両の進行方向に対して左側のサイドガラスに搭載し、車両用窓ガラス200は、車両の進行方向に対して右側のサイドガラスに搭載した。
【0059】
車両用窓ガラス100では、第1アンテナ1については以下のような形状とした。第1給電側第1エレメント12aと第1給電側第2エレメント12bとの間隔を10mmとして容量結合させた。第1給電側第1エレメント12aの長さLH11及び第1給電側第2エレメント12bの長さLH12は、140mmとした。第1アース側エレメント15の長さLG1は、65mmとし、第1給電側第1エレメント12aとの間隔を約21mmとして容量結合させた。
【0060】
第1給電側第1エレメント12aの長さLH11及び第1給電側第2エレメント12bの長さLH12(=140mm)は、地上デジタル放送波の周波数帯の電波の空気中の波長λ=416mm~638mm、ガラス板101の波長短縮率k=0.64であり、LH11,LH12≒67mm~214mmの範囲内である。また、長さLH11,LH12は、0.43×λ×kの関係であった。
【0061】
また、第1アース側エレメント15の長さLG1(=65mm)は、LG1≒33mm~102mmの範囲内とし、長さLG1は、0.20×λ0×kの関係であった。なお、第1給電電極11及び第1アース電極14は、約18mm×約17mmの略四角形状で、第1給電電極11は、第1アース電極14より上方に約21mm離して配置した。
【0062】
また、車両用窓ガラス100では、第2アンテナ2については以下の形状とした。第2給電側第1接続エレメント22aの長さは60mmとし、第2給電側第1水平エレメント22bの長さは40mm、第2給電側第2水平エレメント22cの長さは90mmとした。第2給電側第2接続エレメント22dの長さは50mmとし、第2給電側第3水平エレメント22eの長さは80mmとした。また、第2アース側接続エレメント25aの長さは50mm、第2アース側水平エレメント25bの長さは110mmとした。第2給電電極21及び第2アース電極24は、約18mm×約17mmの略四角形状で、第2給電電極21と第2アース電極24との間隔を約21mmとした。なお、第1アンテナ1と第2アンテナ2とは、100mm以上離して配置した。
【0063】
図5は、車両左側に配置される窓ガラスに形成されたアンテナの利得特性のグラフである。
図5に示すアンテナ利得は、上記条件により設計した車両用窓ガラス100を用いて測定した。
図5のアンテナ利得(ゲイン)の数値は、水平面内の車両全周範囲において所定の角度毎に測定されたアンテナ利得の平均値を示す。なお、後述する車両用窓ガラス200についても同様の条件でアンテナ利得の平均値を測定した。
【0064】
具体的に、
図5は、車両用窓ガラス100におけるアンテナの水平偏波に関して測定したアンテナ利得のグラフである。
図5に示すように、車両用窓ガラス100では、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯(470MHz~720MHz)にわたって-10[dBd]以上の利得が得られた。
図5に示すように、第2アンテナ2よりも第1アンテナ1の方が高いアンテナ利得を得られた。さらに、
図5では、第1アンテナ1と第2アンテナ2とを用いたダイバーシティアンテナのアンテナ利得を2ch合成のグラフで示したが、ダイバーシティアンテナでは、1チャンネルのアンテナよりも高い利得が得られた。
【0065】
(実施例2)
[車両用窓ガラス200のアンテナ利得]
本実施例は、車両用窓ガラス200の具体例であり、実施例1と同様に地上デジタルテレビ放送波の電波を受信する仕様とした。車両用窓ガラス200では、第1給電側エレメント32の第1給電電極31からエレメントの折れ曲がり部までの水平方向の長さを50mm、折れ曲がり部から開放端までの長さを70mmとした。つまり、第1給電側エレメント32の長さLH3は、120mmとした。第1アース側エレメント35の長さLG3は、50mmとし、第1給電側エレメント32との間隔を約21mmとして容量結合させた。
【0066】
第1給電側エレメント32の長さLH3(=120mm)は、地上デジタル放送波の周波数帯の空気中の電波の波長λ=416mm~638mm、ガラス板101の波長短縮率k=0.64であり、LH3≒67mm~207mmの範囲内とした。また、長さLH3は、0.35×λ0×kの関係であった。
【0067】
また、第1アース側エレメント35の長さLG3(=50mm)は、LG3≒33mm~102mmの範囲内とし、長さLG3は、0.15×λ0×kの関係であった。なお、第1給電電極31及び第1アース電極34は、約18mm×約17mmの略四角形状で、第1給電電極31を第1アース電極34より上方に約21mm離れて配置した。
【0068】
また、車両用窓ガラス200では、第2アンテナ4については以下の形状とした。第2給電側第1接続エレメント42aの長さは60mmとし、第2給電側第1水平エレメント42bの長さは60mm、第2給電側第2水平エレメント42cの長さは60mmとした。第2給電側接続エレメント42dの長さは50mmとし、第2給電側第3水平エレメント42eの長さは110mmとした。また、第2アース側接続エレメント45aの長さは50mm、第2アース側水平エレメント45bの長さは80mmとした。第2給電電極41及び第2アース電極44は、約18mm×約17mmの略四角形状で、第2給電電極41と第2アース電極44との間隔を約21mmとした。
【0069】
また、車両用窓ガラス200では、第2給電側第1水平エレメント42b及び第2給電側第2水平エレメント42cと、AM/FMアンテナANTaとの最短距離を20mmとした。
【0070】
図6は、上記条件により設計した車両用窓ガラス200におけるアンテナの水平偏波に関して測定したアンテナ利得のグラフである。
図6に示すように、車両用窓ガラス200では、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯(470MHz~720MHz)にわたって-14[dBd]以上の利得が得られた。
図6に示すように、第2アンテナ4よりも第1アンテナ3の方が高いアンテナ利得を得られた。さらに、第1アンテナ3と第2アンテナ4とを用いたダイバーシティアンテナのアンテナ利得を2ch合成のグラフで示した。ダイバーシティアンテナでは、1チャンネルのアンテナよりも高い利得を得ることができた。
【0071】
(実施例3)
[4チャンネルを用いたダイバーシティアンテナのアンテナ利得]
図7は、車両左側(実施例1)と右側(実施例2)のサイドガラスにそれぞれに配置される、車両用窓ガラス100、車両用窓ガラス200に形成されたアンテナ全体の水平偏波に関して測定したアンテナ利得のグラフである。
図7に示すアンテナ利得は、上記
図5及び
図6の測定で用いたアンテナを4チャンネル分合成したものである。
図7に示すように、4チャンネルのダイバーシティアンテナとすることで、アンテナ利得は、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯(470MHz~720MHz)にわたって-1[dBd]以上の利得が得られた。
【0072】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。