(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168376
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】エチレン系重合体組成物及びそれよりなるガラス用接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 31/04 20060101AFI20221031BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20221031BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20221031BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20221031BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
C08L31/04 S
C08L33/04
C08L33/08
C08K5/5415
C03C27/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021073770
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】森下 功
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【テーマコード(参考)】
4G061
4J002
【Fターム(参考)】
4G061AA04
4G061BA01
4G061CB03
4G061CB16
4G061CD02
4G061CD18
4J002BB061
4J002BB071
4J002EL106
4J002EX017
4J002EX077
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD146
4J002FD207
4J002GF00
4J002GJ01
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】 耐熱性に優れ、かつ耐貫通性とガラスとの接着性にも優れるエチレン系重合体組成物及びそれよりなるガラス用接着剤、合わせガラス中間膜用フィルム、及びそれを用いてなるガラスとの積層体、合わせガラスを提供する。
【解決手段】 エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して、アミノ基を有するシラン化合物(B)0.005~0.5重量部、ビニル基、メタクリル基又はアクリル基からなる群の少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物(C)1種類以上を0.01~1重量部、有機過酸化物(D)0.005~0.5重量部を含有することを特徴とするエチレン系重合体組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して、アミノ基を有するシラン化合物(B)0.005~0.5重量部、ビニル基、メタクリル基又はアクリル基からなる群の少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物(C)1種類以上を0.01~1重量部、有機過酸化物(D)0.005~0.5重量部を含有することを特徴とするエチレン系重合体組成物。
【請求項2】
JISK6924-1を準拠し測定したメルトフローレートが、190℃×10分の加熱処理前後で30%以上低下することを特徴とする請求項1に記載のエチレン系重合体組成物。
【請求項3】
周波数10Hzでの動的粘弾性測定において、110℃での貯蔵弾性率が4.0×105Pa~2.0×106Paであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエチレン系重合体組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物よりなることを特徴とするガラス用接着剤。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物よりなることを特徴とする合わせガラス中間膜用フィルム。
【請求項6】
引張速度35m/minでの高速引張試験において、引張破断強度が8.0MPa以上であることを特徴とする請求項5に記載の合わせガラス中間膜用フィルム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物をガラスと積層してなることを特徴とする積層体。
【請求項8】
請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物を一対のガラスで挟んでなることを特徴とする合わせガラス。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載のエチレン系重合体組成物よりなる合わせガラス中間膜用フィルムを加熱によりガラスと貼り合わせる工程と、貼り合わせ後に加熱処理する工程からなる合わせガラスの製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の製造方法により得た合わせガラスのガラス中間膜用フィルムとガラスとの接着強度が50N/25mm以上であることを特徴とする合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなるエチレン系重合体組成物を有するガラス用接着剤、合わせガラス用中間膜フィルム、それを用いてなるガラスとの積層体、合わせガラス、及び合わせガラスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、合わせガラス用中間膜には、強靭な膜強度による耐貫通性、ガラスとの優れた接着性、高い透明性などが求められ、これらの性能を満足する樹脂として、可塑剤により可塑化されたポリビニルブチラール樹脂が広く使用されてきた。
【0003】
しかしながらこの種の中間膜は吸湿性が大きいことや、接着温度を上げないと十分な強度が得られないこと、また、調光合わせガラスのような機能性を有する合わせガラスの中間膜として使用する際には、膜の表面にブルームした可塑剤により調光フィルムやガラスとの接着性が低下する等の問題があった。
【0004】
これらの問題点を改良した中間膜として、エチレン-酢酸ビニル共重合体に高濃度の有機過酸化物及びシランカップリング剤を混合して熱架橋性の中間膜を成膜した後、合わせガラスを加工する時の加熱により熱架橋させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体にアミノ基、グリシジル基及びメルカプト基からなる群より選ばれる一種以上の基を有するシランカップリング剤よりなる合わせガラス用中間膜や、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に少なくともエポキシ基、メタクリル基又はアクリル基の何れかの官能基を有するシラン化合物、およびアミン化合物を含む合わせガラス中間膜が提案されている(例えば、特許文献2,3,4,5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平02-053381号公報
【特許文献2】特開平06-329446号公報
【特許文献3】特開平07-002551号公報
【特許文献4】特開平07-315892号公報
【特許文献5】特開平27-160876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に提案の中間膜は、合わせガラスを製造する際に130℃以上の高温かつ高圧を加えた状態で圧着する必要がある。このため、電圧の印加により液晶素子の配向を利用して調光を可能とするような機能性合わせガラスなどは、一対のガラスの間に中間膜と熱に弱い液晶フィルムを介在させて成形するため、高温高圧で成形すると液晶フィルムにダメージを与えるので適用できないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2,3,4,5に提案の中間膜では、合わせガラスを製造する際に高温かつ高圧での圧着を必要としないものの架橋度が十分とはいえず、高温になると中間膜が軟化してガラスの自重で2枚のガラスがずれるという耐熱性に関する実用上の問題があった。
【0009】
そこで、本発明では上記課題を解決し、耐熱性に優れ、かつ耐貫通性とガラスとの接着性にも優れるエチレン系重合体組成物及びそれよりなるガラス用接着剤、合わせガラス中間膜用フィルム、それを用いてなるガラスとの積層体、合わせガラス、及び合わせガラスの製造方法を提供することを目的・効果とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対して、アミノ基を有するシラン化合物(B)と特定の構造を有するシラン化合物(C)、更には有機過酸化物(D)を配合してなるエチレン系重合体組成物が耐熱性に優れ、かつ耐貫通性とガラスとの接着性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して、アミノ基を有するシラン化合物(B)0.005~0.5重量部、ビニル基、メタクリル基又はアクリル基からなる群の少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物(C)1種類以上を0.01~1重量部、有機過酸化物(D)0.005~0.5重量部含有することを特徴とするエチレン系重合体組成物、それよりなるガラス用接着剤、合わせガラス中間膜用フィルム、それらを用いたガラスとの積層体、合わせガラス、及び合わせガラスの製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
耐熱性に優れ、かつ耐貫通性とガラスとの接着性にも優れるエチレン系重合体組成物及びそれよりなるガラス用接着剤、合わせガラス中間膜用フィルム、及びそれを用いてなるガラスとの積層体、合わせガラスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のエチレン系重合体組成物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して、アミノ基を有するシラン化合物(B)0.005~0.5重量部、ビニル基、メタクリル基又はアクリル基からなる群の少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物(C)1種類以上を0.01~1重量部、有機過酸化物(D)0.005~0.5重量部を含むことを特徴とするものである。
【0015】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成するエチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と記す。)又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としては、該範疇に属するものであればいかなる制限も受けずに用いることが可能である。該エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えばエチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸プロピル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸プロピル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メタクリル酸2-エチルヘキシル共重合体などを挙げることができる。
【0016】
また、得られるエチレン系重合体組成物が特に透明性、ハンドリング性に優れたものとなることから、EVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の酢酸ビニル含有率又は(メタ)アクリル酸エステル含有率は18~35重量%、特に20~28重量%の範囲にあることが好ましい。ここで、酢酸ビニル含有率又は(メタ)アクリル酸エステル含有率が18重量%未満の場合、得られるエチレン系重合体組成物が透明性に劣るものとなる。一方、酢酸ビニル含有率又は(メタ)アクリル酸エステル含有率が35重量%を超える場合は、常温での粘着性が強く、軟化温度も低くなるため、得られるエチレン系重合体組成物や成形体が耐ブロッキング性に劣るものとなり、ハンドリング面に問題が生じる。
【0017】
EVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造方法は、EVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体の製造が可能であれば特に限定されるものではないが、公知の高圧ラジカル重合法やイオン重合法、溶液重合やラテックス重合等を挙げることができる。このようなEVAとして、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されており、又エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体として住友化学株式会社からアクリフトの商品名で市販されている。
【0018】
なお、EVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としては、得られるエチレン系重合体組成物が特に成形加工性、機械的強度、柔軟性に優れたものとなることから、JIS K 6924-1を準拠し測定したメルトフローレートが0.1~15g/10分の範囲にあることが好ましく、特に成形加工性と機械的強度のバランスより0.5~10g/10分の範囲にあることがより好ましい。ここで、メルトフローレートが0.1未満の場合、成形時の押出し負荷や樹脂圧力が高くなり加工性に劣るものとなる。一方、メルトフロレートが15g/10分を超える場合は、得られるエチレン系重合体組成物が機械的強度に劣るものとなる。
【0019】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成するアミノ基を有するシラン化合物(B)は、ガラスとの接着性に優れ、さらには色相に優れるエチレン系重合体組成物が得られることから、例えば、N-2-(アミノエチル)ー3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)ー3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。このようなシラン化合物(B)の具体的商品としては、例えば、「KBM-602」、「KBM-603」、「KBM-902」、「KBE-902」、「KBM-903」、「KBE-903」、「KBE-9103P」、「KBM-573」(商品名、信越シリコーン社製)、「Z-6610」、「Z-6011」、「OFS-6020」、「Z-6883」(商品名、ダウ・東レ社製)、などを挙げることができる。アミノ基を有するシラン化合物(B)の含有量としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して0.005~0.5重量部であり、得られるエチレン系重合体組成物の接着性を向上させ、透明性、色相など他の物性バランスが良好となることから、0.01~0.1重量部がより好ましい。アミノ基を有するシラン化合物(B)が0.5重量部を超えると透明性や色相が劣るものとなり、0.005重量部未満であると、ガラスとの接着性に劣るものとなる。
【0020】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成するシラン化合物(C)は、耐熱性、耐湿熱性、耐温水性などに優れるエチレン系重合体組成物が得られることから、1つの分子中にビニル基、メタクリル基又はアクリル基からなる群の少なくとも1種の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。シラン化合物(C)の具体的例示としては、ビニル基を有するものとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリル基を有するものとしては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリル基を有するものとしては、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。このようなシラン化合物(B)の具体的商品としては、例えば、「KBM-1003」、「KBE-1003」、「KBM-502」、「KBM-503」、「KBE-503」、「KBM-5103」(商品名、信越シリコーン社製)、「Z-6300」、「OFS-6030」、「Z-6033」(商品名、ダウ・東レ社製)、などを挙げることができ、中でも加水分解速度が比較的遅く保管中における物性の経時変化を抑制できることから末端にエトキシ基を有するシラン化合物が好ましい。シラン化合物(C)の含有量としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して0.01~1重量部であり、得られるエチレン系重合体組成物の耐熱性、耐湿熱性、耐温水性などがより向上することから、0.05~0.5重量部がより好ましい。シラン化合物(C)が1重量部を超えるとEVA-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と有機過酸化物(D)との架橋反応を妨げ目的とする架橋度が得られず、0.01重量部未満であると、耐熱性に劣るものとなる。また、シラン化合物(C)は、得られる組成物に求められる特性を阻害しない範囲であれば1種類でもよく、または2種類以上併用した組成物であってもよい。
【0021】
本発明のエチレン系重合体組成物を構成する有機過酸化物(D)は、EVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に対し、アミノ基を有するシラン化合物(B)と特定の構造を有するシラン化合物(C)を含むエチレン系重合体組成物が有する優れた接着性、耐熱性、耐湿熱性や耐温水性、透明性、柔軟性、色相を維持しながら、更なる耐熱性と透明性の向上が可能である。有機過酸化物(D)の含有量としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対して、0.005~0.5重量部であることが好ましく、特に0.01~0.3重量部であることが好ましい。該有機過酸化物は該範疇に属するものであればいかなる制限も受けずに用いることが可能であり、例えばジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)バラレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5,-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トルイルパーオキサイドなどを挙げることができる。これらは2種以上を併用しても良い。そして、これらの中でもジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,5,5,-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0022】
本発明におけるエチレン系重合体組成物を構成する特定の構造を有するシラン化合物(C)および有機過酸化物(D)の配合比率は、成形加工性及び耐熱性の観点から、シラン化合物(C)1重量部に対して有機過酸化物(D)の配合比率が0.2~1.5重量部であることが望ましい。シラン化合物(C)に対する有機過酸化物(D)の配合比率が1.5重量部を超えるとメルトフローレートが著しく低下して加工性に劣るものとなり、0.2重量部未満であるとEVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の架橋反応が十分に進まず、更にはEVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)とシラン化合物(C)とのグラフト反応率が低く耐熱性に劣るものとなる。
【0023】
本発明のエチレン系重合体組成物は、特に成形加工性、接着性、機械的強度、柔軟性に優れたものとなることから、JIS K 6924-1を準拠し測定したメルトフローレートが0.05~10g/10分の範囲にあることが好ましく、特に成形加工性と機械的強度のバランスより0.1~2g/10分の範囲にあることがより好ましい。ここで、メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合、成形時の押出し負荷や樹脂圧力が高くなり加工性に劣り、更には濡れ性が低いため接着性に劣るものとなる。一方、2g/10分を超える場合は、架橋度が不十分であり耐熱性に劣るものとなる。
【0024】
更に、本発明のエチレン共重合体組成物は、190℃×10分の加熱処理前後でJIS K 6924-1を準拠し測定したメルトフローレートが30%以上低下することが望ましい。メルトフローレートの低下率が30%以上であれば加熱により架橋が進行する特徴を持つため適当な温度および時間での加熱処理により耐熱性に優れたものとなり、一方30%未満の場合は任意の加熱処理において架橋反応を進行させることが難しく耐熱性に劣るものとなる。
【0025】
また本発明のエチレン系重合体組成物は、耐熱性の観点から周波数10Hzでの動的粘弾性測定において、110℃での貯蔵弾性率が4.0×105~2.0×106Paであることが望ましい。ここで、110℃での貯蔵弾性率が4.0×105Pa未満の場合、該エチレン系重合体組成物からなる合わせガラスにおいて使用時に高温下にさらされた場合、中間膜が軟化してガラスの自重で2枚のガラスがずれるという問題が発生する。一方、2.0×106Paを超える場合は成形加工性に劣るものとなる。
【0026】
本発明のエチレン系重合体組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲において、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合していてもよく、酸化防止剤としては、例えばt-ブチル-ヒドロキシトルエン、テトラキス-(メチレン-3-(3’-5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば3-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系の他、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバシン酸塩、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6、6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン系が挙げられる。
【0027】
本発明のエチレン系重合体組成物の製造方法としては、如何なる方法を用いてもよく、例えばミキサー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機などの混練機を用い混合する方法などを挙げることができる。
【0028】
本発明のエチレン系重合体組成物は、耐熱性、耐湿熱性や耐温水性、耐貫通性、接着性、透明性、柔軟性に優れることから各種産業用途に用いることが可能であり、その中でも耐熱性、耐貫通性、接着性に優れることからガラス用接着剤、合わせガラスの中間膜用フィルムとしても適したものであり、例えば本発明のエチレン系重合体組成物を合わせガラス中間膜用フィルムとして使用する際には、耐貫通性、透明性に優れた合わせガラスとなることから、厚さ50~2000μmとすることが好ましく、特に200~1500μmとすることが好ましい。
【0029】
本発明のエチレン系重合体組成物を用いた合わせガラス中間膜用フィルムは、耐貫通性の観点から引張速度35m/分での高速引張試験において、引張破断強度が8.0MPa以上であることが望ましい。引張速度35m/分での高速引張試験における引張破断強度が8.0MPa以上の場合、厚さの薄い場合でも耐貫通性に優れた合わせガラス中間膜用フィルムとなるため、価格面及び生産性に優れたものとなる。
【0030】
本発明のエチレン系重合体組成物はガラスと積層してなる積層体として好適に用いることができる。
【0031】
本発明のエチレン系重合体組成物を用いた合わせガラス中間膜用フィルムの成形方法としては、特に限定されるものではないが、公知の方法、例えば、空冷インフレーション成形機、水冷インフレーション成形機、キャスト成形機、シート成形機、カレンダー成形機、圧縮成形機などを用いて成形加工することができる。
【0032】
本発明のエチレン系重合体組成物を用いた合わせガラス中間膜用フィルムは、一対のガラスの間に中間層として挟み込み、例えば真空バッグのような治具を用いて減圧下で加熱したり、オートクレーブ装置を用いて加圧下で加熱することにより合わせガラスとすることが可能である。また、一対のガラスの間に2枚の中間膜を挿入し、その中間膜と中間膜の間に、例えば液晶フィルムを入れて同様な治具や装置を用いて加熱することにより調光が可能な機能性を有した合わせガラスとすることが可能である。合わせガラスとする際には、ガラス以外に更に金属板、ポリカーボネート板、アクリル板などのプラスチック板、ポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルムなどの高分子フィルム、紙などと積層し積層体とすることも可能である。該合わせガラスの層構成としては、例えば1)ガラス/中間膜/ガラス、2)ガラス/中間膜/プラスチック板、3)ガラス/中間膜/高分子フィルム、4)ガラス/中間層/プラスチック板/中間膜/ガラス、5)ガラス/中間膜/高分子フィルム/中間膜/ガラス、6)ガラス/中間膜/プラスチック板/中間膜/高分子フィルム/中間膜/ガラス、7)ガラス/中間膜/金属板/中間膜/ガラス、8)ガラス/中間膜/紙/中間膜/ガラスなどを挙げることができる。該プラスチック板、高分子フィルム、金属板、紙は着色しても良いし、またそれらの両面もしくは片面のいずれかに表面に印刷や金属被膜など処理を施しても良い。
【0033】
また、本発明のエチレン系重合体組成物を用いた合わせガラス中間膜は、加熱によりガラスと貼り合わせる工程の後に、更なる加熱処理を施す工程を加えることにより耐熱性や接着性、透明性などの物性を更に向上させることができる。上記加熱処理の条件は特に限定されるものではないが、合わせガラスに含まれる液晶フィルム等の性能が損なわれない程度に高温であることが望ましく、生産性を低下させない程度に長時間であることが望ましい。
【0034】
加熱によりガラスと貼り合わせる工程の後に、更なる加熱処理を施すことにより得た、本発明のエチレン系重合体組成物を用いた合わせガラスでは、ガラス中間膜用フィルムとガラスとの接着強度が50N/25mm以上であることが望ましい。接着強度が50N/25mm以上であれば耐貫通性及び耐衝撃性に優れた合わせガラスとなる。
【実施例0035】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
(1)MFR低下率
メルトフローレート(MFR)はJIS K 6924-1を準拠し測定した。実施例により得られたエチレン系重合体組成物を190℃に設定したMFR計内に投入後6分間保持した後測定した値(X)とMFR系内に投入後16分間保持した後測定した値(Y)に対し、計算式(1-(Y)/(X))×100により算出した値をMFR低下率として記載した。
(2)貯蔵弾性率
実施例により得られたエチレン系重合体組成物より圧縮成形機(神藤金属工業所製 、型式:シントー式AWFA-50型)を用いて厚さ1.0mmのシートを作製した。圧縮成形は、エチレン系重合体組成物を180℃にセットした金型の中に入れ、3分間予熱した後脱気操作を行ない、180℃、10MPaにて3分間加熱加圧し金型から取り出した後、25℃にセットした冷却用の金型の中に入れ、10MPaで5分間加圧冷却を行なった。得られたシートをカッターで切り抜き、厚さ1mm、巾5.1mm、長さ22mmのサンプルを作製した。サンプルを動的粘弾性測定装置(株式会社UBM製、型式:Rheogel-E4000)にセットし、チャック間距離10mm、周波数10Hz、温度範囲-40℃~140℃、昇温速度4℃/minで動的粘弾性測定を行い110℃における貯蔵弾性率を測定した。
(3)ガラスずれ幅
板ガラス(セントラル硝子株式会社製、商品名:FL2、厚み2mm、巾50mm、長さ100mm)の上に実施例により得られた中間膜用フィルム(厚み0.4mm、巾50mm、長さ70mm)を置き、更にその上にガラスを重ねて構成物を作製した。作製した構成物をアルミ真空袋の中に入れ、真空梱包機(株式会社ハギオス製、商品名:MZC-300C)を用いて30トール以下になるまで減圧しながら積層体を真空パックした。次に、真空パックをそのまま110℃にセットしたギアオーブン(株式会社安田精機製作所製、型式:SHF-77)に入れ30分間加熱し、室温まで放冷後、真空パックからラミネート構成物を取り出した。作製したガラス/中間膜用フィルム/ガラスのラミネート構成物の一方のガラスにFL2ガラス2枚分に相当する重りを取り付け、105℃にセットした定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DN-63H)中で縦置きで吊るし、中間膜用フィルムにガラス3枚分の荷重がかかるようにした。100時間経過後に構成物を取り出し、初期からのガラスのずれ幅をデジタルノギスを用いて測定した。
(4)高速引張破断強度
実施例により得られたエチレン系重合体組成物より圧縮成形機(神藤金属工業所製 、型式:シントー式AWFA-50型)を用いて厚さ0.4mmのシートを作製した。圧縮成形は、エチレン系重合体組成物を180℃にセットした金型の中に入れ、3分間予熱した後脱気操作を行ない、180℃、10MPaにて3分間加熱加圧し金型から取り出した後、25℃にセットした冷却用の金型の中に入れ、10MPaで5分間加圧冷却を行なった。作製したシートをJISK7127タイプ5のダンベル型に打ち抜き引張試験用試験片を得た。次に、高速剥離試験機(テスター産業株式会社製、型式:TE-701)を用いて、試験片を引張速度35m/minで引張り、高速引張破断強度を測定した。
(5)接着強度
板ガラス(セントラル硝子株式会社製、商品名:FL3、厚み3mm、巾100mm、長さ100mm)の上に、つかみ部作製用として離型用ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(厚み0.07mm、巾100mm、長さ63mm)を置き、その上に実施例により得られた中間膜用フィルム(厚み0.4mm、巾100mm、長さ70mm)を重ね合わせた。更にその上に、支持体としてPET(厚み0.1mm)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(厚み0.05mm)を予め接着剤で貼り合わせたラミネートフィルムのLLDPE面を下側にして重ね合わせた。このようにして作製した積層体をアルミ真空袋の中に入れ、真空梱包機(株式会社ハギオス製、商品名:MZC-300C)を用いて30トール以下になるまで減圧しながら積層体を真空パックした。次に、真空パックをそのまま110℃にセットしたギアオーブンに入れ30分間加熱し、室温まで放冷後、真空パックからラミネート積層体を取り出した。積層体を25mm巾の短冊状に切断し、接着強度測定用試験片を得た。次に、引張試験機(ORIENTEC社製、型式:RTG-1210)を用いて、試験片の該加熱接着部分を剥離速度300mm/分、剥離角度180度の条件で引張り、接着強度を測定した。
【0037】
実施例1
メルトフローレート4.3g/10分、酢酸ビニル含有率が26重量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A1)(東ソー株式会社製、商品名:ウルトラセン634)100重量部に対し、シラン化合物(B)として、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン(B1)(信越化学株式会社製、商品名:KBE-902)0.05重量部、シラン化合物(C)として、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(C1)(信越化学株式会社製、商品名:KBE-503)0.50重量部、有機過酸化物(D)として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(D1)(日油株式会社製、商品名:パーヘキサC)0.25重量部をタンブラーブレンダーで混合した。混合原料を2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、型式:TEX-25αIII)を用いて、温度170℃、押出量10kg/hの条件にて溶融混練しエチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0038】
実施例2
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてメルトフローレート4.7g/10分、酢酸ビニル含有率が26重量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)(東ソー株式会社製、商品名:ウルトラセン651)100重量部に対し、シラン化合物(B)として3-アミノプロピルトリメトキシメチルシラン(B2)(信越化学株式会社製、商品名:KBM-903)0.05重量部、シラン化合物(C1)0.30重量部、有機過酸化物(D1)0.20重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0039】
実施例3
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A1)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.07重量部、シラン化合物(C)としてシラン化合物(C1)0.10重量部及び3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(C2)(信越化学株式会社製、商品名:KBM-503)0.10重量部、有機過酸化物(D1)0.10重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0040】
実施例4
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A1)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.05重量部、シラン化合物(C)としてビニルトリエトキシシラン(C3)(信越化学株式会社製、商品名:KBE-1003)0.50重量部、有機過酸化物(D1)0.25重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0041】
実施例5
EVA又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)としてメルトフローレート7.0g/10分、メタクリル酸含有率が25重量%であるエチレン-メタクリル酸エステル共重合体(A3)(住友化学株式会社製、商品名:アクリフトWK307)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.06重量部、シラン化合物(C2)0.20重量部、有機過酸化物(D)として2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(D2)0.30重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0042】
実施例6
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A1)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.07重量部、シラン化合物(C1)0.05重量部、有機過酸化物(D1)0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0043】
実施例7
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A1)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.05重量部、シラン化合物(C1)0.1重量部、シラン化合物(C2)0.1重量部、有機過酸化物(D1)0.05重量部とした以外は、実施例3と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0044】
実施例8
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてメルトフローレート5.7g/10分、酢酸ビニル含有率が28重量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A4)(東ソー株式会社製、商品名:ウルトラセン751)100重量部に対し、シラン化合物(B2)0.10重量部、シラン化合物(C2)0.20重量部、有機過酸化物(D1)0.15重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
比較例1
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)100重量部に対し、シラン化合物(B)を非含有、シラン化合物(C1)0.30重量部、有機過酸化物(D1)0.15重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表2に示す。得られたエチレン系共重合体組成物は耐貫通性及び接着性に劣るものであった。
【0047】
比較例2
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.05重量部、シラン化合物(C)を非含有、有機過酸化物(D1)0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表2に示す。得られたエチレン系共重合体組成物は耐熱性に劣るものであった。
【0048】
比較例3
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.05重量部、シラン化合物(C)0.001重量部、有機過酸化物(D1)0.05重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表2に示す。得られたエチレン系共重合体組成物は耐熱性に劣るものであった。
【0049】
比較例4
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.04重量部、シラン化合物(C1)2.0重量部、有機過酸化物(D1)0.5重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表2に示す。得られたエチレン系共重合体組成物は耐熱性に劣るものであった。
【0050】
比較例5
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.07重量部、シラン化合物(C)として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(C4)(信越化学株式会社製、商品名:KBM-403)0.3重量部、有機過酸化物(D1)0.15重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。なお、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランは本発明のシラン化合物(C)に該当しないが、表2の標記の便宜上(C4)と称する。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表2に示す。得られたエチレン系共重合体組成物は耐熱性に劣るものであった。
【0051】
比較例6
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)としてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A2)100重量部に対し、シラン化合物(B1)0.05重量部、シラン化合物(C1)0.3重量部、有機過酸化物(D1)0.001重量部とした以外は、実施例1と同様にして、エチレン系重合体組成物を得た。
得られたエチレン系共重合体組成物を用いてMFR変化、貯蔵弾性率、ガラスずれ幅、高速引張破断強度、接着強度の評価を実施した。その結果を表2に示す。得られたエチレン系共重合体組成物は耐熱性に劣るものであった。
【0052】
本発明のガラス用接着剤は、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体に対しアミノ基を有するシラン化合物と特定の構造を有するシラン化合物、更には有機過酸化物を含む組成物からなり、耐熱性に優れ、かつ耐貫通性やガラスとの接着性にも優れていることから、建材や輸送車両などの産業用合わせガラス、特に液晶フィルムなどの熱に弱いフィルムを介在させた調光合わせガラス用の接着材料としての適用が期待されるものである。