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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168514
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20221031BHJP
【FI】
F28D15/02 E
F28D15/02 101K
F28D15/02 101L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074035
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
(57)【要約】
【課題】外層金属層の剥離を抑制できるループ型ヒートパイプを提供する。
【解決手段】ループ型ヒートパイプ10は、作動流体を気化させる蒸発器と、作動流体を液化する凝縮器と、蒸発器と凝縮器とを接続する液管14及び蒸気管と、作動流体が流れるループ状の流路とを有する。液管14は、金属層31,32,33が積層された構造を有する。内層金属層である金属層32は、金属層32の上面側から窪む有底孔40と、金属層32の下面側から窪む有底孔50と、有底孔40と有底孔50とが部分的に連通して形成された細孔60とを含む多孔質体32sを有する。金属層32は、有底孔40の内部に設けられた凸部41を有する。凸部41は、有底孔40の底面に接続された基端と、凸部41の厚さ方向において基端と反対側に設けられた先端とを有する。凸部41の先端は、金属層32の上面よりも有底孔40の底面側に凹んだ位置に設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する蒸気管と、
前記作動流体が流れるループ状の流路と、を有し、
前記蒸発器と前記凝縮器と前記液管と前記蒸気管との少なくとも一つの構造体は、第1外層金属層と、第2外層金属層と、前記第1外層金属層と前記第2外層金属層との間に設けられた単層又は複数層の内層金属層とを有し、
前記内層金属層は、前記内層金属層の一方の面側から窪む第1有底孔と、前記内層金属層の他方の面側から窪む第2有底孔と、前記第1有底孔と前記第2有底孔とが部分的に連通して形成された細孔とを含む多孔質体を有し、
前記内層金属層は、前記第1有底孔の内部に設けられた第1凸部を有し、
前記第1凸部は、前記第1有底孔の底面に接続された基端と、前記第1凸部の厚さ方向において前記基端と反対側に設けられた先端とを有し、
前記第1凸部の先端は、前記内層金属層の一方の面よりも前記第1有底孔の底面側に凹んだ位置に設けられているループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記第1外層金属層は、前記内層金属層の一方の面に接合されており、
前記第1外層金属層は、隣り合う複数の前記第1有底孔を連通する第1溝を有する請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記第1溝は、平面視において、前記第1凸部と重なるように形成されている請求項2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記内層金属層は、前記第2有底孔の内部に設けられた第2凸部を有し、
前記第2凸部は、前記第2有底孔の底面に接続された基端と、前記第2凸部の厚さ方向において前記基端と反対側に設けられた先端とを有し、
前記第2凸部の先端は、前記内層金属層の他方の面よりも前記第2有底孔の底面側に凹んだ位置に設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記第1外層金属層と前記第2外層金属層との間に単層の前記内層金属層のみが設けられており、
前記第2外層金属層は、前記内層金属層の他方の面に接合されており、
前記第2外層金属層は、隣り合う複数の前記第2有底孔を連通する第2溝を有する請求項4に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記第2溝は、平面視において、前記第2凸部と重なるように形成されている請求項5に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
前記第1凸部の先端は、平面状に形成された先端面を有している請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項8】
前記第1凸部は、平面視において、前記第1有底孔の中心に設けられている請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項9】
前記少なくとも一つの構造体は、前記液管であり、
前記液管の前記内層金属層は、前記多孔質体と、前記多孔質体の有する流路よりも横断面積が大きく形成された第1流路とを有し、
前記第1有底孔及び前記第2有底孔は、前記第1流路と連通している請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のループ型ヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器に搭載される半導体デバイス(例えば、CPU等)の発熱部品を冷却するデバイスとして、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するヒートパイプが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管とで接続されたループ型ヒートパイプが知られている。ループ型ヒートパイプでは、作動流体がループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
流路は、複数の金属層が積層して形成されている。複数の金属層は、複数の金属層の積層方向の両端に設けられる一対の外層金属層と、一対の外層金属層の間に設けられる複数層の内層金属層とを有する。複数の内層金属層には、各内層金属層の一方の面側から窪む有底孔と各内層金属層の他方の面側から窪む有底孔とが部分的に連通して形成された細孔を含む多孔質体が設けられている。そして、内層金属層の積層方向の一端側が一方の外層金属層に接合され、内層金属層の積層方向の他端側が他方の外層金属層に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6291000号公報
【特許文献2】特許第6400240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、ループ型ヒートパイプでは、流路の内部に封入する作動流体の特性に応じて、液相の作動流体が気化した際に体積膨張が生じる場合がある。また、ループ型ヒートパイプでは、そのループ型ヒートパイプの周囲温度が作動流体の凝固点よりも低い温度になると、作動流体が凝固して固化してしまう。このとき、作動流体が液相から固相に相変化することに伴って体積膨張が生じる場合がある。このような体積膨張が生じると、外層金属層が外側に膨らむように変形して外層金属層が内層金属層から剥離するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する蒸気管と、前記作動流体が流れるループ状の流路と、を有し、前記蒸発器と前記凝縮器と前記液管と前記蒸気管との少なくとも一つの構造体は、第1外層金属層と、第2外層金属層と、前記第1外層金属層と前記第2外層金属層との間に設けられた単層又は複数層の内層金属層とを有し、前記内層金属層は、前記内層金属層の一方の面側から窪む第1有底孔と、前記内層金属層の他方の面側から窪む第2有底孔と、前記第1有底孔と前記第2有底孔とが部分的に連通して形成された細孔とを含む多孔質体を有し、前記内層金属層は、前記第1有底孔の内部に設けられた第1凸部を有し、前記第1凸部は、前記第1有底孔の底面に接続された基端と、前記第1凸部の厚さ方向において前記基端と反対側に設けられた先端とを有し、前記第1凸部の先端は、前記内層金属層の一方の面よりも前記第1有底孔の底面側に凹んだ位置に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一観点によれば、外層金属層の剥離を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態のループ型ヒートパイプを示す概略平面図である。
図2】(a)は、一実施形態の液管を示す概略断面図(図1における2-2線断面図)であり、(b)は、(a)に示した液管の一部を拡大した拡大断面図である。
図3】一実施形態の多孔質体を示す概略斜視図である。
図4】一実施形態の多孔質体を示す概略平面図である。
図5】(a)~(d)は、一実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す概略断面図である。
図6】(a)~(d)は、一実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す概略断面図である。
図7】(a),(b)は、一実施形態のループ型ヒートパイプの製造方法を示す概略断面図である。
図8】変更例のループ型ヒートパイプを示す概略断面図である。
図9】変更例のループ型ヒートパイプを示す概略断面図である。
図10】変更例のループ型ヒートパイプの一部を拡大した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態について添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率については各図面で異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。なお、本明細書において、「平面視」とは、対象物を図2(a)等の鉛直方向(図中上下方向)から見ることを言い、「平面形状」とは、対象物を図2(a)等の鉛直方向から見た形状のことを言う。また、本明細書における「上下方向」及び「左右方向」は、各図面において各部材を示す符号が正しく読める向きを正位置とした場合の方向である。
【0011】
(ループ型ヒートパイプ10の全体構成)
図1に示すループ型ヒートパイプ10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器M1に収容される。ループ型ヒートパイプ10は、蒸発器11と、蒸気管12と、凝縮器13と、液管14とを有している。
【0012】
蒸発器11と凝縮器13は、蒸気管12と液管14とにより接続されている。蒸発器11は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有している。蒸発器11で生成された蒸気Cvは、蒸気管12を介して凝縮器13に送られる。凝縮器13は、作動流体Cの蒸気Cvを液化する機能を有している。液化した作動流体Cは、液管14を介して蒸発器11に送られる。蒸気管12及び液管14は、作動流体C又は蒸気Cvを流すループ状の流路15を形成する。
【0013】
蒸気管12は、例えば、長尺状の管体に形成されている。液管14は、例えば、長尺状の管体に形成されている。本実施形態において、蒸気管12と液管14とは、例えば、長さ方向の寸法(つまり、長さ)が互いに同じである。なお、蒸気管12の長さと液管14の長さとは、互いに異なっていてもよい。例えば、液管14の長さに比べて蒸気管12の長さが短くてもよい。ここで、本明細書における蒸発器11、蒸気管12、凝縮器13及び液管14の「長さ方向」とは、各部材における作動流体C又は蒸気Cvが流れる方向(図中矢印参照)に一致する方向のことである。
【0014】
(蒸発器11の構成)
蒸発器11は、図示しない発熱部品に密着して固定される。蒸発器11内の作動流体Cは、発熱部品にて発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。なお、蒸発器11と発熱部品との間に、熱伝導部材(TIM:Thermal Interface Material)が介在されていてもよい。熱伝導部材は、発熱部品と蒸発器11の間の接触熱抵抗を低減し、発熱部品から蒸発器11への熱伝導をスムーズにする。
【0015】
(蒸気管12の構成)
蒸気管12は、例えば、蒸気管12の長さ方向と平面視で直交する幅方向の両側に設けられた一対の管壁12wと、一対の管壁12wの間に設けられた流路12rとを有している。流路12rは、蒸発器11の内部空間と連通している。流路12rは、ループ状の流路15の一部である。蒸発器11において発生した蒸気Cvは、蒸気管12を介して凝縮器13へと導かれる。
【0016】
(凝縮器13の構成)
凝縮器13は、例えば、放熱用に面積を大きくした放熱プレート13pと、放熱プレート13pの内部において蛇行した流路13rとを有している。流路13rは、ループ状の流路15の一部である。蒸気管12を介して導かれた蒸気Cvは、凝縮器13において液化する。
【0017】
(液管14の構成)
液管14は、例えば、液管14の長さ方向と平面視で直交する幅方向の両側に設けられた一対の管壁14wと、一対の管壁14wの間に設けられた流路14rとを有している。流路14rは、凝縮器13の流路13rと連通するとともに、蒸発器11の内部空間と連通している。流路14rは、ループ状の流路15の一部である。
【0018】
液管14は、多孔質体20を有している。多孔質体20は、例えば、液管14の長さ方向に沿って、凝縮器13から蒸発器11まで延びるように形成されている。多孔質体20は、その多孔質体20に生じる毛細管力によって、凝縮器13で液化した作動流体Cを蒸発器11へと導く。すなわち、凝縮器13で液化した作動流体Cは、液管14を通って蒸発器11に導かれる。なお、図示は省略するが、蒸発器11内にも多孔質体20と同様の多孔質体が設けられている。
【0019】
(ループ型ヒートパイプ10の構成)
このように、ループ型ヒートパイプ10では、発熱部品で発生した熱を凝縮器13に移動し、その凝縮器13において放熱する。これにより、発熱部品が冷却され、発熱部品の温度上昇が抑制される。
【0020】
ここで、作動流体Cとしては、蒸気圧が高く、蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。このような作動流体Cを用いることで、蒸発潜熱によって発熱部品を効率的に冷却できる。作動流体Cとしては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、アセトン等を用いることができる。
【0021】
(液管14の具体的構造)
図2(a)は、図1の2-2線に沿う液管14の断面を示している。この断面は、液管14において作動流体Cの流れる方向(図1で矢印で示す方向)と直交する面である。図2(b)は、図2(a)に示した液管14の一部を拡大した拡大断面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、液管14は、例えば、3層の金属層31,32,33を積層した構造を有している。換言すると、液管14は、一対の外層金属層となる金属層31,33の間に、内層金属層となる金属層32を積層した構造を有している。本実施形態の液管14の内層金属層は、1層の金属層32のみによって構成されている。
【0023】
各金属層31~33は、例えば、熱伝導性に優れた銅(Cu)層である。複数の金属層31~33は、例えば、拡散接合、圧接、摩擦圧接や超音波接合等の固相接合により互いに直接接合されている。なお、図2(a)では、金属層31~33を判り易くするため、実線にて区別している。例えば、金属層31~33を拡散接合により一体化した場合、各金属層31~33の界面は消失していることがあり、境界は明確ではないことがある。ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加熱して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、金属層31~33は、銅層に限定されず、ステンレス層、アルミニウム層やマグネシウム合金層等から形成してもよい。また、積層した金属層31~33のうちの一部の金属層について、他の金属層と異なる材料が用いられてもよい。金属層31~33の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層31~33のうちの一部の金属層を他の金属層と異なる厚さとしてもよく、また全ての金属層を互いに異なる厚さとしてもよい。
【0024】
液管14は、積層された金属層31~33からなり、金属層31~33の積層方向と直交する液管14の幅方向(図2(a)の左右方向)の両端に設けられた一対の管壁14wと、一対の管壁14wの間に設けられた多孔質体20とを有している。多孔質体20は、例えば、管壁14wに連続して形成されている。
【0025】
金属層31は、金属層32の上面に積層されている。金属層31の下面には、1つ又は複数の溝31gが形成されている。各溝31gは、金属層31の下面から金属層31の厚さ方向の中央部にかけて窪むように形成されている。
【0026】
金属層32は、金属層31と金属層33との間に積層されている。金属層32の上面は、金属層31の下面に接合されている。金属層32の下面は、金属層33の上面に接合されている。金属層32は、液管14の幅方向の両端に設けられた一対の壁部32wと、一対の壁部32wの間に設けられた多孔質体32sとを有している。
【0027】
金属層33は、金属層32の下面に積層されている。金属層33の上面には、1つ又は複数の溝33gが形成されている。各溝33gは、金属層33の上面から金属層33の厚さ方向の中央部にかけて窪むように形成されている。
【0028】
(管壁14wの具体的構造)
管壁14wは、例えば、内層金属層である金属層32が有する壁部32wにより構成されている。本実施形態の各管壁14wは、壁部32wのみによって構成されている。各壁部32wには、孔や溝は形成されていない。
【0029】
(多孔質体20の具体的構造)
多孔質体20は、例えば、内層金属層である金属層32が有する多孔質体32sと、外層金属層である金属層31,33がそれぞれ有する溝31g,33gとを有している。
【0030】
(多孔質体32sの具体的構造)
多孔質体32sは、金属層32の上面から金属層32の厚さ方向の中央部にかけて窪む有底孔40と、金属層32の下面から金属層32の厚さ方向の中央部にかけて窪む有底孔50とを有している。多孔質体32sは、有底孔40と有底孔50とが部分的に連通して形成された細孔60を有している。有底孔40,50の深さは、例えば、25μm~100μm程度とすることができる。
【0031】
図2(b)に示すように、有底孔40,50の内面は、例えば、開口側(金属層32の上下面側)から底面側にかけて円弧状に連続する形状に形成されている。有底孔40,50の内側面は、断面視において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。有底孔40,50の内側面の断面形状は、例えば、有底孔40,50の深さ方向の途中の開口幅が最も広くなるように円弧状に湾曲した曲面に形成されている。有底孔40,50の底面は、断面視において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。有底孔40,50の底面は、例えば、有底孔40,50の内側面と連続して形成されている。有底孔40,50の底面の曲率半径は、有底孔40,50の内側面の曲率半径と等しくてもよいし、有底孔40,50の内側面の曲率半径と異なっていてもよい。ここで、本明細書において「等しい」とは、正確に等しい場合の他、寸法公差等の影響により比較対象同士に多少の相違がある場合も含む。
【0032】
なお、有底孔40,50の内面を、断面形状が半円形や半楕円形となる凹形状としてもよい。ここで、本明細書において、「半円形」とは、真円を二等分した半円のみでなく、例えば、半円よりも円弧が長いものや短いものも含む。また、本明細書において、「半楕円形」とは、楕円を二等分した半楕円のみでなく、例えば、半楕円よりも円弧が長いものや短いものも含む。また、有底孔40,50の内面を、底面側から開口側に向かうに連れて拡がるテーパ形状としてもよい。また、有底孔40,50の底面を金属層32の上面と平行な平面に形成し、有底孔40,50の内側面を底面に対して垂直に延びるように形成してもよい。
【0033】
図3及び図4に示すように、有底孔40,50は、例えば、平面視円形状に形成されている。有底孔40,50の直径は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。なお、有底孔40,50の平面形状を、楕円形や多角形等の任意の形状とすることができる。有底孔40と有底孔50とは、平面視で部分的に重複している。有底孔40と有底孔50とが平面視で重複する部分において、有底孔40と有底孔50とは部分的に連通して細孔60を形成している。なお、図3では、金属層32のうち多孔質体32s(有底孔40,50及び細孔60)を構成する部分のみを図示している。
【0034】
(有底孔40の具体的構造)
有底孔40は、内部に凸部41を有している。すなわち、金属層32は、有底孔40の内部に設けられた凸部41を有している。凸部41は、例えば、有底孔40の底面を構成する金属層32と連続して一体に形成されている。凸部41は、例えば、有底孔40の内側面の全周と離れて設けられている。すなわち、凸部41の外周面と有底孔40の内側面との間には、有底孔40の全周にわたって空間が形成されている。換言すると、凸部41は、有底孔40の平面視中央部に設けられている。図4に示すように、本実施形態の凸部41は、平面視において、有底孔40の中心に設けられている。凸部41は、例えば、平面視において、有底孔50の全体と重ならない位置に設けられている。
【0035】
凸部41の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。凸部41の平面形状は、有底孔40の平面形状と等しい形状であってもよいし、有底孔40の平面形状と異なる形状であってもよい。凸部41の平面形状の大きさは、例えば、有底孔40の平面形状の大きさの5%~20%程度の大きさとすることができる。例えば、凸部41の平面形状は、直径が5μm~50μm程度の円形状とすることができる。本実施形態では、凸部41は、有底孔40の内側面と同心円状に形成されている。
【0036】
図2(b)に示すように、凸部41は、凸部41の厚さ方向における基端及び先端を有している。凸部41の基端は、有底孔40の底面に接続されている。凸部41の先端は、凸部41の厚さ方向において基端と反対側に設けられている。凸部41の先端は、例えば、平面状に形成された先端面41Aを有している。凸部41は、金属層32の厚さ方向(図中上下方向)において、有底孔40の底面から有底孔40の深さ方向の途中まで延びている。すなわち、凸部41の厚さは、有底孔40の深さよりも短い長さに設定されている。凸部41の先端面41Aは、金属層32の上面(一方の面)よりも有底孔40の底面側(ここでは、下方)に凹んだ位置に設けられている。
【0037】
凸部41は、例えば、凸部41の基端から凸部41の先端に向かうに連れて細くなる先細り形状に形成されている。換言すると、凸部41は、凸部41の先端面41Aから有底孔40の底面に向かうに連れて太くなるように形成されている。凸部41の外周面は、例えば、断面視において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。
【0038】
なお、凸部41を、凸部41の厚さ方向の中央部分が凸部41の基端及び先端よりも細くなるように形成してもよい。すなわち、凸部41を、凸部41の厚さ方向の中央部分が最も細くなるように形成してもよい。この場合の凸部41の外周面の断面形状は、凸部41の厚さ方向の中央部分に「くびれ」を持たせるように湾曲して形成されている。この場合の凸部41の外周面は、断面視において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。この場合の凸部41は、凸部41の厚さ方向の中央部分から凸部41の先端に向かうに連れて太くなるように形成されている。この場合の凸部41は、凸部41の厚さ方向の中央部分から凸部41の基端に向かうに連れて太くなるように形成されている。
【0039】
(有底孔50の具体的構造)
有底孔50は、内部に凸部51を有している。すなわち、金属層32は、有底孔50の内部に設けられた凸部51を有している。凸部51は、例えば、有底孔50の底面を構成する金属層32と連続して一体に形成されている。凸部51は、例えば、有底孔50の内側面の全周と離れて設けられている。すなわち、凸部51の外周面と有底孔50の内側面との間には、有底孔50の全周にわたって空間が形成されている。換言すると、凸部51は、有底孔50の平面視中央部に設けられている。図4に示すように、本実施形態の凸部51は、平面視において、有底孔50の中心に設けられている。凸部51は、例えば、平面視において、有底孔40の全体と重ならない位置に設けられている。
【0040】
凸部51の平面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。凸部51の平面形状は、有底孔50の平面形状と等しい形状であってもよいし、有底孔50の平面形状と異なる形状であってもよい。凸部51の平面形状の大きさは、例えば、有底孔50の平面形状の大きさの5%~20%程度の大きさとすることができる。例えば、凸部51の平面形状は、直径が5μm~50μm程度の円形状とすることができる。本実施形態では、凸部51は、有底孔50の内側面と同心円状に形成されている。
【0041】
図2(b)に示すように、凸部51は、凸部51の厚さ方向における基端及び先端を有している。凸部51の基端は、有底孔50の底面に接続されている。凸部51の先端は、凸部51の厚さ方向において基端と反対側に設けられている。凸部51の先端は、例えば、平面状に形成された先端面51Aを有している。凸部51は、金属層32の厚さ方向(図中上下方向)において、有底孔50の底面から有底孔50の深さ方向の途中まで延びている。すなわち、凸部51の厚さは、有底孔50の深さよりも短い長さに設定されている。凸部51の先端面51Aは、金属層32の下面(他方の面)よりも有底孔50の底面側(ここでは、上方)に凹んだ位置に設けられている。
【0042】
凸部51は、例えば、凸部51の基端から凸部51の先端に向かうに連れて細くなる先細り形状に形成されている。換言すると、凸部51は、凸部51の先端面51Aから有底孔50の底面に向かうに連れて太くなるように形成されている。凸部51の外周面は、例えば、断面視において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。
【0043】
なお、凸部51を、凸部51の厚さ方向の中央部分が凸部51の基端及び先端よりも細くなるように形成してもよい。すなわち、凸部51を、凸部51の厚さ方向の中央部分が最も細くなるように形成してもよい。この場合の凸部51の外周面の断面形状は、凸部51の厚さ方向の中央部分に「くびれ」を持たせるように湾曲して形成されている。この場合の凸部51の外周面は、断面視において、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。この場合の凸部51は、凸部51の厚さ方向の中央部分から凸部51の先端に向かうに連れて太くなるように形成されている。この場合の凸部51は、凸部51の厚さ方向の中央部分から凸部51の基端に向かうに連れて太くなるように形成されている。
【0044】
図2(a)に示すように、凸部41の先端面41Aは、金属層31の下面と離れて設けられている。凸部41の先端面41Aと金属層31の下面との間には隙間が形成されている。凸部51の先端面51Aは、金属層33の上面と離れて設けられている。凸部51の先端面51Aと金属層33の上面との間には隙間が形成されている。
【0045】
(溝31g,33gの具体的構造)
各溝31g,33gの内面の横断面形状は、任意の形状とすることができる。各溝31g,33gの底面は、例えば、円弧状に湾曲した曲面に形成されている。各溝31g,33gの内側面は、例えば、金属層31の下面に対して垂直に延びるように形成されている。なお、各溝31g,33gの内面を、底面側から開口側に向かうに連れて拡がるテーパ形状としてもよい。各溝31g,33gの内面を、開口側から底面側にかけて円弧状に連続する形状に形成してもよい。各溝31g,33gの内面を、断面形状が半円形や半楕円形となる凹形状としてもよい。
【0046】
図4に示すように、各溝31gは、平面視において、有底孔40の一部と重なる位置に設けられている。各溝31gは、有底孔40と連通するように形成されている。各溝31gは、隣り合う複数の有底孔40同士を連通するように形成されている。各溝31gは、平面視において、複数の有底孔40が並ぶ方向に沿って延びるように形成されている。複数の溝31gは、例えば、互いに平行に延びるように形成されている。各溝31gは、例えば、平面視において、凸部41と重なる位置に設けられている。各溝31gは、例えば、平面視において、有底孔40の中心と重なる位置に設けられている。
【0047】
各溝33gは、平面視において、有底孔50の一部と重なる位置に設けられている。各溝33gは、有底孔50と連通するように形成されている。各溝33gは、隣り合う複数の有底孔50同士を連通するように形成されている。各溝33gは、平面視において、複数の有底孔50が並ぶ方向に沿って延びるように形成されている。複数の溝33gは、例えば、互いに平行に延びるように形成されている。各溝33gは、例えば、平面視において、溝31gと交差する方向に延びるように形成されている。各溝33gは、例えば、平面視において、凸部51と重なる位置に設けられている。各溝33gは、例えば、平面視において、有底孔50の中心と重なる位置に設けられている。
【0048】
(多孔質体20の構成)
図2(a)に示すように、金属層32に形成された有底孔40,50及び細孔60と金属層31,33にそれぞれ形成された溝31g,33gとは、互いに連通している。そして、これら有底孔40,50、細孔60及び溝31g,33gが連通して形成された空間が三次元的に広がっている。有底孔40,50、細孔60及び溝31g,33g、つまり多孔質体20の有する流路は、液相の作動流体C(図1参照)が流れる流路14rとして機能する。
【0049】
液管14には、図示は省略するが、作動流体C(図1参照)を注入するための注入口が設けられている。但し、注入口は、封止部材により塞がれており、ループ型ヒートパイプ10内は気密に保たれている。
【0050】
(ループ型ヒートパイプ10の構成)
図1に示す蒸発器11、蒸気管12及び凝縮器13は、図2(a)に示した液管14と同様に、3層の金属層31~33(図2(a)参照)が積層されて形成される。すなわち、図1に示すループ型ヒートパイプ10は、3層の金属層31~33(図2(a)参照)が積層されて構成される。例えば、蒸発器11では、蒸発器11に設けられた多孔質体が櫛歯状に形成されている。蒸発器11内において、多孔質体の設けられていない領域は、空間が形成されている。例えば、蒸気管12では、内層金属層である金属層32(図2(a)参照)を厚さ方向に貫通する貫通孔を形成することにより、流路12rが形成されている。例えば、凝縮器13では、内層金属層である金属層32(図2(a)参照)を厚さ方向に貫通する貫通孔を形成することにより、流路13rが形成されている。なお、金属層の積層数は、3層に限定されず、4層以上とすることができる。
【0051】
(ループ型ヒートパイプ10の作用)
次に、ループ型ヒートパイプ10の作用について説明する。
ループ型ヒートパイプ10は、作動流体Cを気化させる蒸発器11と、気化した作動流体C(つまり、蒸気Cv)を凝縮器13に流入させる蒸気管12と、蒸気Cvを液化する凝縮器13と、液化した作動流体Cを蒸発器11に流入させる液管14とを有している。
【0052】
液管14には多孔質体20が設けられている。この多孔質体20は、凝縮器13から液管14の長さ方向に沿って蒸発器11まで延びている。多孔質体20は、その多孔質体20に生じる毛細管力によって、凝縮器13で液化した液相の作動流体Cを蒸発器11へと導く。
【0053】
ここで、図2(a)に示すように、液管14では、内層金属層である金属層32に形成された有底孔40の内部に凸部41が設けられ、金属層32に形成された有底孔50の内部に凸部51が設けられている。これにより、凸部41,51を設けない場合に比べて、有底孔40,50の容積を小さくできるため、有底孔40,50の内部に貯留される作動流体Cの貯留量を小さくできる。したがって、例えば液管14内を流れる作動流体Cが液相から固相に相変化したことに伴って体積膨張が生じる場合に、その体積膨張量を、凸部41,51を設けない場合に比べて小さくできる。
【0054】
本実施形態において、金属層31は第1外層金属層の一例、金属層32は内層金属層の一例、金属層33は第2外層金属層の一例である。また、有底孔40は第1有底孔の一例、凸部41は第1凸部の一例、有底孔50は第2有底孔の一例、凸部51は第2凸部の一例、溝31gは第1溝の一例、溝33gは第2溝の一例である。
【0055】
(ループ型ヒートパイプ10の製造方法)
次に、ループ型ヒートパイプ10の製造方法について説明する。
まず、図5(a)に示す工程では、平板状の金属シート71を準備する。金属シート71は、最終的に金属層31(図2(a)参照)となる部材である。金属シート71は、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から構成されている。金属シート71の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。
【0056】
続いて、金属シート71の上面にレジスト層72を形成し、金属シート71の下面にレジスト層73を形成する。レジスト層72,73としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0057】
次に、図5(b)に示す工程では、レジスト層73を露光及び現像して、金属シート71の下面を選択的に露出する開口部73Xを形成する。開口部73Xは、図2(a)に示した溝31gに対応するように形成される。
【0058】
続いて、図5(c)に示す工程では、開口部73X内に露出する金属シート71を、金属シート71の下面側からエッチングする。これにより、金属シート71の下面に溝31gが形成される。溝31gは、例えば、レジスト層72,73をエッチングマスクとして金属シート71をウェットエッチングすることにより形成できる。金属シート71の材料として銅を用いる場合には、エッチング液として塩化第二鉄水溶液や塩化第二銅水溶液を用いることができる。
【0059】
次いで、レジスト層72,73を剥離液により剥離する。これにより、図5(d)に示すように、下面に溝31gを有する金属層31を形成することができる。
次に、図6(a)に示す工程では、平板状の金属シート74を準備する。金属シート74は、最終的に金属層32(図2(a)参照)となる部材である。金属シート74は、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から構成されている。金属シート74の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。
【0060】
続いて、金属シート74の上面にレジスト層75を形成し、金属シート74の下面にレジスト層76を形成する。レジスト層75,76としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0061】
次いで、図6(b)に示す工程では、レジスト層75を露光及び現像して、金属シート74の上面を選択的に露出する開口部75Xを形成する。同様に、レジスト層76を露光及び現像して、金属シート74の下面を選択的に露出する開口部76Xを形成する。開口部75Xは、図2(a)に示した有底孔40に対応するように形成される。開口部76Xは、図2(a)に示した有底孔50に対応するように形成される。レジスト層75は、図2(b)に示した凸部41が形成される部分の金属シート74の上面を被覆するレジストパターン75Aを有している。レジストパターン75Aは、開口部75Xの内部に設けられる。レジスト層76は、図2(b)に示した凸部51が形成される部分の金属シート74の下面を被覆するレジストパターン76Aを有している。レジストパターン76Aは、開口部76Xの内部に設けられる。
【0062】
次に、図6(c)に示す工程では、レジスト層75から露出する金属シート74を、金属シート74の上面側からエッチングするとともに、レジスト層76から露出する金属シート74を、金属シート74の下面側からエッチングする。レジストパターン75A及び開口部75Xにより、金属シート74の上面に凸部41を有する有底孔40が形成される。このとき、凸部41は、凸部41の先端(ここでは、上端)が薄化されることにより、凸部41の先端面41Aが金属シート74の上面よりも下方に凹んだ位置に形成される。また、レジストパターン76A及び開口部76Xにより、金属シート74の下面に凸部51を有する有底孔50が形成される。このとき、凸部51は、凸部51の先端(ここでは、下端)が薄化されることにより、凸部51の先端面51Aが金属シート74の下面よりも上方に凹んだ位置に形成される。有底孔40と有底孔50は、平面視において部分的に重なるように形成され、その重なる部分において有底孔40と有底孔50とが互いに連通して細孔60が形成される。有底孔40,50及び凸部41,51は、例えば、レジスト層75,76をエッチングマスクとして金属シート74をウェットエッチングすることにより形成できる。金属シート74の材料として銅を用いる場合には、エッチング液として塩化第二鉄水溶液や塩化第二銅水溶液を用いることができる。
【0063】
次に、レジスト層75,76を剥離液により剥離する。これにより、図6(d)に示すように、一対の壁部32wと多孔質体32sとを有する金属層32を形成することができる。
【0064】
続いて、図7(a)に示す工程では、図5(a)~図5(d)に示した工程と同様の方法により、金属層33を形成する。次いで、金属層31と金属層33との間に金属層32を配置する。
【0065】
次に、図7(b)に示す工程では、所定温度(例えば、900℃程度)に加熱しながら積層した金属層31~33をプレスすることにより、固相接合にて金属層31~33を接合する。これにより、積層方向に隣接する金属層31,32,33が直接接合される。
【0066】
以上説明した工程により、金属層31,32,33が積層された構造体が形成される。そして、図1に示した蒸発器11、蒸気管12、凝縮器13及び液管14を有するループ型ヒートパイプ10が形成される。このとき、液管14には多孔質体20が形成される。
【0067】
その後、例えば、真空ポンプ等を用いて液管14内を排気した後、図示しない注入口から液管14内に作動流体Cを注入し、その後注入口を封止する。
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0068】
(1)内層金属層である金属層32に形成された有底孔40の内部に凸部41を設けるようにした。これにより、凸部41を設けない場合に比べて、有底孔40の容積を小さくできるため、有底孔40の内部に貯留される作動流体Cの貯留量を小さくできる。したがって、例えば液管14内を流れる作動流体Cが液相から固相に相変化したことに伴って体積膨張が生じる場合に、その体積膨張量を、凸部41を設けない場合に比べて小さくできる。このため、作動流体Cの体積膨張に起因して外層金属層である金属層31が外側に膨らむように変形することを抑制できる。よって、金属層31が金属層32から剥離することを抑制できる。例えば、ループ型ヒートパイプ10を有する電子機器M1を、寒冷地等の周囲温度が作動流体Cの凝固点よりも低い温度となる環境で使用し、液相の作動流体Cが凍結して凍結膨張が生じる場合であっても、金属層31が金属層32から剥離することを抑制できる。
【0069】
(2)内層金属層である金属層32に形成された有底孔50の内部に凸部51を設けるようにした。これにより、凸部51を設けない場合に比べて、有底孔50の容積を小さくできるため、有底孔50の内部に貯留される作動流体Cの貯留量を小さくできる。したがって、例えば液管14内を流れる作動流体Cが液相から固相に相変化したことに伴って体積膨張が生じる場合に、その体積膨張量を、凸部51を設けない場合に比べて小さくできる。このため、作動流体Cの体積膨張に起因して外層金属層である金属層33が外側に膨らむように変形することを抑制できる。よって、金属層33が金属層32から剥離することを抑制できる。
【0070】
(3)隣り合う複数の有底孔40,50を連通する溝31g,33gを金属層31,33に設け、内層金属層を単層の金属層32のみにより構成した。溝31g,33gを形成したことにより、内層金属層を単層構造とした場合であっても、有底孔40,50、細孔60及び溝31g,33gが連通して形成される空間を三次元的に広げることができる。このため、内層金属層を単層の金属層32のみで構成でき、液管14を3層の金属層31~33により構成することができる。これにより、液管14を薄型化することができる。ひいては、ループ型ヒートパイプ10を薄型化することができる。
【0071】
(4)凸部41を有底孔40の平面中心に設け、溝31gを平面視において凸部41と重なるように形成した。このため、溝31gが平面視において有底孔40の中心と重なるように形成される。これにより、例えば製造誤差等に起因して溝31gの位置が目標位置から多少ずれた場合であっても、溝31gを有底孔40と連通するように好適に形成することができる。
【0072】
(5)凸部41の先端に、平面状に形成された先端面41Aを設けるようにした。この構成によれば、凸部41の先端が針状に形成される場合に比べて、凸部41の体積を大きくできるため、有底孔40の容積を小さくできる。これにより、有底孔40の内部に貯留される作動流体Cの貯留量を小さくでき、その作動流体Cの体積膨張量を小さくできる。
【0073】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0074】
図8に示すように、液管14に、多孔質体20と、流路21(第1流路)とを設けるようにしてもよい。本変更例の液管14は、一対の管壁14wと、一対の管壁14wに連続して形成された一対の多孔質体20と、一対の多孔質体20の間に設けられた流路21とを有している。本変更例の液管14では、多孔質体20の有する流路と流路21とによって液管14の流路14rが構成されている。なお、多孔質体20は、上記実施形態と同様に、金属層32の多孔質体32sと金属層31,33の溝31g,33gとにより構成されている。
【0075】
流路21の横断面積は、例えば、多孔質体20の有する流路の横断面積よりも大きく形成されている。流路21は、内層金属層である金属層32を厚さ方向に貫通する貫通孔32Xにより構成されている。例えば、流路21は、多孔質体20の有する流路と連通している。例えば、貫通孔32Xは、金属層32の有底孔40,50の少なくとも一方と連通している。
【0076】
この場合であっても、有底孔40,50の内部には、凸部41,51がそれぞれ設けられている。
図9に示すように、液管14に、多孔質体20と、複数の流路22(第1流路)とを設けるようにしてもよい。本変更例の液管14は、一対の管壁14wと、各管壁14wと離れて設けられた多孔質体20と、各管壁14wと多孔質体20との間に設けられた2つの流路22とを有している。本変更例の液管14では、多孔質体20の有する流路と2つの流路22とによって液管14の流路14rが構成されている。本変更例の多孔質体20は、液管14の幅方向の中央部に設けられている。多孔質体20は、流路22により管壁14wと離隔して設けられている。なお、多孔質体20は、上記実施形態と同様に、金属層32の多孔質体32sと金属層31,33の溝31g,33gとにより構成されている。
【0077】
各流路22の横断面積は、例えば、多孔質体20の有する流路の横断面積よりも大きく形成されている。各流路22は、内層金属層である金属層32を厚さ方向に貫通する貫通孔32Yにより構成されている。例えば、各流路22は、多孔質体20の有する流路と連通している。例えば、各貫通孔32Yは、金属層32の有底孔40,50の少なくとも一方と連通している。
【0078】
この場合であっても、有底孔40,50の内部には、凸部41,51がそれぞれ設けられている。
・上記実施形態において、凸部41,51を有する有底孔40,50を含む多孔質体20を液管14に設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、多孔質体20を、蒸発器11、蒸気管12や凝縮器13に設けるようにしてもよい。例えば、蒸発器11、蒸気管12、凝縮器13及び液管14の少なくとも一つの構造体に多孔質体20を設けていればよい。例えば、蒸気管12のみに多孔質体20を設けるようにしてもよい。
【0079】
・上記実施形態の多孔質体20における有底孔40,50及び凸部41,51の形状を適宜変更してもよい。
例えば図10に示すように、凸部41の先端を針状に尖った形状に形成してもよい。同様に、凸部51の先端を針状に尖った形状に形成してもよい。
【0080】
また、多孔質体32sにおいて、先端が針状に形成された凸部41と、平面状に形成された先端面41Aを有する凸部41とが混在していてもよい。同様に、多孔質体32sにおいて、先端が針状に形成された凸部51と、平面状に形成された先端面51Aを有する凸部51とが混在していてもよい。
【0081】
・上記実施形態の多孔質体20において、金属層32の上面に設けられた有底孔40の深さと、金属層32の下面に設けられた有底孔50の深さとが異なっていてもよい。
・上記実施形態では、有底孔40,50の両方の内部に凸部41,51を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、有底孔40,50のうち有底孔40の内部のみに凸部41を設けるようにしてもよい。すなわち、凸部51を省略してもよい。例えば、有底孔40,50のうち有底孔50の内部のみに凸部51を設けるようにしてもよい。すなわち、凸部41を省略してもよい。
【0082】
・上記実施形態では、全ての有底孔40の内部に凸部41を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、複数の有底孔40のうち少なくとも一つの有底孔40に凸部41を設けていればよい。
【0083】
・上記実施形態では、全ての有底孔50の内部に凸部51を設けるようにしたが、これに限定されない。例えば、複数の有底孔50のうち少なくとも一つの有底孔50に凸部51を設けていればよい。
【0084】
・上記実施形態において、1つの有底孔40の内部に複数の凸部41を設けるようにしてもよい。
・上記実施形態において、1つの有底孔50の内部に複数の凸部51を設けるようにしてもよい。
【0085】
・上記実施形態では、内層金属層を、単層の金属層32のみにより構成するようにした。すなわち、内層金属層を単層構造とした。しかし、これに限定されない。例えば、内層金属層を、複数層の金属層が積層された積層構造としてもよい。この場合の内層金属層は、金属層31と金属層33との間に複数層の金属層が積層されて構成される。また、内層金属層を構成する複数層の金属層の各々は、多孔質体32sと同様の多孔質体を有している。
【符号の説明】
【0086】
10 ループ型ヒートパイプ
11 蒸発器
12 蒸気管
13 凝縮器
14 液管
12r,13r,14r,15 流路
20 多孔質体
21,22 流路
31 金属層
31g 溝
32 金属層
32s 多孔質体
33 金属層
33g 溝
40 有底孔
41 凸部
41A 先端面
50 有底孔
51 凸部
51A 先端面
60 細孔
C 作動流体
Cv 蒸気
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10