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特開2022-168526樹脂組成物、光学フィルムおよび積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168526
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物、光学フィルムおよび積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 31/06 20060101AFI20221031BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221031BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20221031BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221031BHJP
【FI】
C08L31/06
G02B5/30
B32B27/36
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074054
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小峯 拓也
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴裕
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AB05
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA17
2H149DA39
2H149EA06
2H149FA01Y
2H149FA12Z
2H149FA51Y
2H149FA58Y
2H149FD03
2H149FD05
2H149FD06
2H149FD47
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100EJ38
4F100GB48
4F100JA07
4F100JA07A
4F100JN01
4F100JN18
4F100JN18A
4F100JN18B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BF041
4J002EH096
4J002EH106
4J002EH136
4J002EH146
4J002GP00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】負の複屈折性を発現し、生産性が高く、製膜及び延伸プロセス適合性の高い樹脂組成物、該樹脂組成物を含む、位相差特性及び製膜及び延伸プロセス適合性に優れた光学フィルムを提供する。
【解決手段】式(1)で示されるフマル酸エステル系重合体、及び二塩基酸エステルを含有する樹脂組成物。

(R、Rは独立してC数1~12のアルキル基、又は炭素数3~6である環状アルキル基を示す)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるフマル酸エステル残基単位50モル%以上を含むエステル系樹脂を71~99.99重量%と、脂肪族二塩基酸エステルまたはフタル酸エステルのいずれかを0.01~29重量%含有する樹脂組成物。
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6の環状アルキル基からなる群の1種を示す)
【請求項2】
脂肪族二塩基酸エステルまたはフタル酸エステルの分子量が400以上5000以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を含む光学フィルム。
【請求項4】
フィルムの厚みが80μm以下、下記式(a)で示される、波長589nmで測定した面外位相差Rthが-500nm以上-20以下である請求項3に記載の光学フィルム。
Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×d (a)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、フィルム面外の垂直方向の屈折率をnz、dはフィルムの厚み示す。)
【請求項5】
下記式(b)にて示される波長589nmで測定したReが20nm以上700nm以下、波長450nmで測定したRe(R450)と波長550nmで測定したRe(R550)の比(R450/R550)が1.04以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の光学フィルム。
Re=(ny-nx)×d (b)
【請求項6】
フィルム単独で250℃以下の延伸温度で、1.4倍以上延伸可能であることを特徴とする請求項3乃至5いずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
樹脂組成物を基材上に製膜後、180度剥離試験時に、剥離速度0.1m/分以上で、破れやひび割れが発生せずに基材から剥離可能であることを特徴とする請求項3乃至6いずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれか一項に記載の光学フィルム(A)と、正の複屈折を示すフィルム(B)を備えた積層フィルム。
【請求項9】
正の複屈折を示すフィルム(B)が、波長589nmで測定したReが0nm以上400nm以下、Rthが5nm以上500nm以下であるフィルムである請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
波長589nmで測定したReが0nm以上400nm以下、Rthが-200nm以上200nm以下である請求項8または9に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位相差フィルム等に好適に用いることのできる光学フィルムの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、位相差特性、製膜及び延伸プロセス適合性に優れる光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、マルチメディア社会における最も重要な表示デバイスとして、携帯電話、コンピューター用モニター、ノ-トパソコン、テレビまで幅広く使用されている。液晶ディスプレイには表示特性向上のため多くの光学フィルムが用いられている。特に光学フィルムは、正面や斜めから見た場合のコントラスト向上、色調の補償など大きな役割を果たしている。
【0003】
液晶ディスプレイ関係の光学フィルムで代表的なものとして、位相差フィルムを挙げることができる。位相差フィルムは反射型液晶表示装置、タッチパネルや有機ELの反射防止層として用いられる。
【0004】
従来の位相差フィルムとしては、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンが使用されており、これらの高分子はいずれも正の複屈折を有する高分子である。ここで、複屈折の正負は以下に示すように定義される。
【0005】
延伸等で分子配向した高分子フィルムの光学異方性は、フィルムを延伸した場合のフィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向(遅相軸)の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした屈折率楕円体で表すことができる。
【0006】
つまり、負の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)、正の複屈折を有する高分子の一軸延伸では延伸軸方向と直交する軸方向の屈折率が小さい(進相軸:延伸方向と直交方向)。
【0007】
また、面内位相差(Re)は、進相軸方向と直交方向の屈折率(ny)-進相軸方向の屈折率(nx)にフィルムの厚みを掛けた値として表される。
【0008】
多くの高分子は正の複屈折性を有する。負の複屈折を有する高分子としてはアクリル樹脂やポリスチレンがあるが、アクリル樹脂は位相差の発現性が小さく、光学補償フィルムとしての特性は十分でない。ポリスチレンは、室温領域での光弾性係数が大きくわずかな応力で位相差が変化するなど位相差の安定性の課題、位相差の波長依存性が大きいといった光学特性上の課題、更に耐熱性が低いといった実用上の課題があり現状用いられていない。
【0009】
位相差の波長依存性とは、位相差が測定波長に依存して変化することを意味し、波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比R450/R550として表すことができる。一般に芳香族構造の高分子ではこのR450/R550が大きくなる傾向が強く、低波長領域でのコントラストや視野角特性が低下する。
【0010】
負の複屈折を示す高分子の延伸フィルムはフィルムの厚み方向の屈折率が高く、従来にない光学補償フィルムとなるため、例えばスーパーツイストネマチック型液晶(STN-LCD)や垂直配向型液晶(VA-LCD)、面内配向型液晶(IPS-LCD)、反射型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイなどのディスプレイの視野角特性の補償用の位相差フィルムや偏光板の視野角を補償するための位相差フィルムとして有用であり、負の複屈折を有する位相差フィルムに対して市場の要求が強い。
【0011】
このような要求特性に対し、種々の位相差フィルムが開発されている。
【0012】
正の複屈折を有する高分子を用いてフィルムの厚み方向の屈折率を高めたフィルムの製造方法が提案されている。ひとつは高分子フィルムの片面または両面に熱収縮性フィルムを接着し、その積層体を加熱延伸処理して、高分子フィルムの厚み方向に収縮力をかける処理方法(例えば特許文献1~3参照)である。また、高分子フィルムに電場を印加しながら面内に一軸延伸する方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。
【0013】
また、負の光学異方性を有する微粒子と透明性高分子からなる位相差フィルムが提案されている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許2818983号公報
【特許文献2】特開平05-297223号公報
【特許文献3】特開平05-323120号公報
【特許文献4】特開平06-088909号公報
【特許文献5】特開2005-156862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1~4において提案された方法は、製造工程が非常に複雑になるため生産性に劣るといった課題がある。また位相差の均一性などの制御も従来の延伸による制御に比べると著しく難しくなる。
【0016】
また、特許文献5で得られる光学補償フィルムは、負の光学異方性を有する微粒子を添加することにより負の複屈折を有する位相差フィルムであり、微粒子の均一分散性、均一配向制御、フィルム透明性等に課題を有する。
【0017】
負の複屈折性を発現し、生産性が高く、製膜及び延伸プロセス適合性の高い樹脂組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らが鋭意検討した結果、特定の性質を有するエステル系樹脂と添加剤を用いた樹脂組成物が上記課題を解決でき、負の複屈折を発現する単膜フィルム及び該フィルムを備えた積層フィルムを得ることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、下記式(1)で示されるフマル酸エステル残基単位50モル%以上を含むエステル系樹脂71~99.99重量%と、脂肪族二塩基酸エステルまたはフタル酸エステルのいずれかを0.01~29重量%を含有する樹脂組成物。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6の環状アルキル基からなる群の1種を示す)
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、本発明の樹脂組成物を原料として用いることで、製膜後の基材剥離性が高く、延伸性も高い負の複屈折性を有するフィルムが得られるため、単膜でも積層フィルムでも液晶ディスプレイ用光学フィルムや反射防止用フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施例9における液晶表示装置シミュレーションモデルの素子配置を示す。
図2】実施例10における液晶表示装置シミュレーションモデルの素子配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一態様である樹脂組成物(以下、「本発明の樹脂組成物」という。)について詳細に説明する。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、前記式(1)で示されるフマル酸エステル残基単位50モル%以上を含むエステル系樹脂を含有する。
【0026】
該エステル系樹脂は、負の複屈折性を示す。ここで複屈折の正負は以下に示すように定義される。
【0027】
樹脂からなるフィルムについて、フィルム面内の進相軸方向の屈折率をnx、それと直交するフィルム面内方向の屈折率をny、フィルムの厚み方向の屈折率をnzとした屈折率楕円体で表すことができる。
【0028】
負の複屈折とは延伸方向が進相軸方向となるものであり、正の複屈折とは延伸方向の垂直方向が進相軸方向となるものである。
【0029】
つまり、一軸延伸すると延伸軸と直交する軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向の垂直方向)なるものを正の複屈折を示す樹脂、一軸延伸すると延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)なるものを負の複屈折を示す樹脂という。
【0030】
正の複屈折を示す樹脂及び負の複屈折を示す樹脂は、延伸することによって、延伸方向と直交する軸方向で屈折率差が生じるため、面内位相差(Re)が発現する。Reは下記式(a)で表される。また正の複屈折を示す樹脂は、延伸方向と直交する厚さ方向の屈折率が小さくなるため、面外位相差(Rth)が正に大きくなる。一方、負の複屈折を示す樹脂は、延伸方向と直交する厚さ方向の屈折率が大きくなるため、面外位相差(Rth)が負に大きくなる。Rthは下記式(b)で表される。
Re=(ny-nx)×d (a)
Rth=〔(nx+ny)/2-nz〕×d (b)
(式(a)、(b)中、dはフィルムの厚みを示す。)
【0031】
式(1)中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、又は炭素数3~6環状アルキル基からなる群の1種を示す。該アルキル基は、フッ素原子,塩素原子などのハロゲン基;エーテル基;エステル基若しくはアミノ基で置換されていてもよい。
【0032】
具体的なR、Rはとして、例えば、エチル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、その中でも耐熱性、機械特性に優れた位相差フィルムとなることからエチル基、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基からなる群の一種であることが好ましく、特に耐熱性、機械特性のバランスに優れた位相差フィルムとなることからイソプロピル基が好ましい。
【0033】
ここで、式(1)で示されるフマル酸ジエステル残基単位としては、具体的にはフマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ-s-ブチル残基、フマル酸ジ-t-ブチル残基、フマル酸ジ-s-ペンチル残基、フマル酸ジ-t-ペンチル残基、フマル酸ジ-s-ヘキシル残基、フマル酸ジ-t-ヘキシル残基、フマル酸ジシクロプロピル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が挙げられ、フマル酸ジイソプロピル残基、フマル酸ジ-s-ブチル残基、フマル酸ジ-t-ブチル残基、フマル酸ジシクロペンチル残基、フマル酸ジシクロヘキシル残基等が好ましく、特にフマル酸ジイソプロピル残基が好ましい。
【0034】
フマル酸ジエステル系樹脂は、式(1)で示される残基単位を一成分含んでいてもよく、また、2種類以上の式(1)で示される残基単位を含む、すなわち二成分以上含んでいてもよい。
【0035】
本発明に用いるフマル酸エステル系樹脂として式(1)に示されるフマル酸ジエステル残基単位を50モル%以上、フマル酸ジエステル類と共重合可能な単量体からなる残基単位を50モル%以下含む樹脂であることが好ましい。ここで、フマル酸ジエステル類と共重合可能な単量体からなる残基単位としては、例えばスチレン残基、α-メチルスチレン残基等のスチレン類残基;アクリル酸残基;アクリル酸メチル残基、アクリル酸エチル残基、アクリル酸ブチル残基等のアクリル酸エステル類残基;メタクリル酸残基;メタクリル酸メチル残基、メタクリル酸エチル残基、メタクリル酸ブチル残基等のメタクリル酸エステル類残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基等のビニルエステル類残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;エチレン残基、プロピレン残基等のオレフィン類残基;等の1種又は2種以上を挙げることができる。その中でも、式(1)に示されるフマル酸ジエステル残基単位が70モル%以上であることが好ましく、特に耐熱性及び機械特性に優れた位相差フィルムとなることからフマル酸ジエステル残基単位が80モル%以上であることが好ましく、さらに90モル%以上であることが好ましい。
【0036】
エステル系樹脂は、特に機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パ-ミエイション・クロマトグラフィ-(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が1×10~5×10のものであることが好ましく、5×10~3×10であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の光学フィルムに含まれる組成物におけるエステル系樹脂は、基材との剥離性、延伸性向上、面内位相差発現性の観点から、71~99.99重量%であり、好ましくは94.0~99.9重量%であり、さらに好ましくは95.5~98.0重量%である。
【0038】
エステル系樹脂の製造方法としては、該共重合体が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、ラジカル重合を行うことにより製造することができる。
【0039】
ラジカル重合の方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれもが採用可能である。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、前記式(1)で示されるエステル系樹脂に、添加剤として、脂肪族二塩基酸エステルまたはフタル酸エステルのいずれかを含有する。これにより、製膜後の基材剥離性が高く、延伸性も高いフィルムとなるため、製膜及び延伸プロセス適合性の高いフィルムになることを特徴とするものである。本発明では、これらのエステル添加剤が、負の複屈折性を示す特定のエステル系樹脂との相溶性が高く、樹脂鎖の間に入り易い(混合し易い)ことを見出したものである。樹脂鎖に混合した添加剤が柔軟な構造をしているため、可塑剤として働くことで、樹脂組成物の柔軟性を向上する。また樹脂組成物からなるフィルムを基材上に製膜後、そのフィルムを基材剥離する工程では、柔軟かつ運動性の高い構造の添加剤が、基材との密着性の低下や、剥離時に生じる摩擦力を低下させることで、基材からの剥離性を向上させる。その結果、剥離速度を上昇して剥離可能となる。また添加剤による樹脂組成物の柔軟性向上のため、延伸性が向上する。その結果、高倍率延伸可能となり、薄膜高位相差性能を発現可能となる。
【0041】
エステル系添加剤の好ましい例としては、アジピン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、アゼライン酸エステル系化合物、ドデカン酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0042】
エステル系添加剤は、基材との剥離性、延伸性、面内位相差発現性、高温時の揮発抑制の観点から、分子量が350~5,000であることが好ましく、400~3,000であることがさらに好ましく、400~1,000であることが特に好ましい。ここで分子量とは、添加剤が化学構造から計算できる低分子化合物であればその分子量を示し、繰り返し単位を有する高分子化合物であれば標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。
【0043】
本発明の光学フィルムに含まれる組成物における添加剤の割合は、基材との剥離性、延伸性向上、面内位相差発現性の観点から、0.01~29重量%であり、好ましくは0.1~6.0重量%であり、さらに好ましくは2.0~4.5重量%である。
【0044】
エステル系添加剤としては、例えば、アジピン酸ジノルマルオクチル、アジピン酸ビス(2―エチルへキシル)、アジピン酸ジイソオクチル、アジピン酸ジカプリル、アジピン酸ジノニル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジウンデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジトリデシル、アジピン酸ノルマルオクチルノルマルデシル、アジピン酸ノルマルヘプチルノルマルノニル、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシエチル)]等のアジピン酸エステル系化合物。セバシン酸ビス(2―エチルヘキシル)、セバシン酸ジノルマルオクチル、セバシン酸ジイソオクチル等のセバシン酸エステル系化合物。アゼライン酸ビス(2―エチルヘキシル)、アゼライン酸ジノルマルオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル等のアゼライン酸エステル系化合物。ドデカン二酸ビス(2―エチルヘキシル)、ドデカン二酸ジノルマルオクチル、ドデカン二酸ジイソオクチル等のドデカン二酸エステル系化合物、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ビス(2―エチルヘキシル)、フタル酸ジカプリル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ベンジルオクチル、フタル酸ノルマルヘキシルノルマルデシル、フタル酸ノルマルオクチルノルマルデシル、イソフタル酸ビス(2―エチルヘキシル)、テレフタル酸ビス(2―エチルヘキシル)等のフタル酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0045】
これらの中から、基材との剥離性、延伸性、面内位相差発現性、高温時の揮発抑制の観点から、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシエチル)]、セバシン酸ビス(2―エチルヘキシル)、アゼライン酸ビス(2―エチルヘキシル)、ドデカン二酸ビス(2―エチルヘキシル)が好ましい。
【0046】
次に、本発明の一態様である光学フィルム(以下、「本発明の光学フィルム」という。)について詳細に説明する。
【0047】
本発明の光学フィルムは、本発明の樹脂組成物を含む。
【0048】
本発明の光学フィルムの厚みは、光学部材の薄膜化への適合性の観点から、厚みが80.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上50.0μm以下がさらに好ましく、1μm以上20.0μm以下がもっとも好ましい。
【0049】
本発明の光学フィルムの、前記式(b)で示される589nmで測定されたReは、光学特性に優れた位相差フィルムとなることから、好ましくは20nm以上700nm以下、さらに好ましくは80nm以上400nm以下、特に好ましくは100nm以上350nm以下である。
【0050】
本発明の光学フィルムの、前記式(a)で示される589nmで測定されたRthは、視野角特性に優れた位相差フィルムとなることから、好ましくは-500nm以上-20nm以下、さらに好ましくは-300nm以上-40nm以下、特に好ましくは-200nm以上-65nm以下である。
【0051】
本発明の光学フィルムの波長分散特性は、波長450nmで測定した位相差(R450)と波長550nmで測定した位相差(R550)の比R450/R550として表すことができる。本発明の光学フィルムのRe(450)/Re(550)は、色相に優れた位相差フィルムとなることから、Re(450)/Re(550)≦1.04であり、好ましくはRe(450)/Re(550)≦1.03である。ここで、波長分散特性 Re(450)/Re(550) は、一般的な全自動複屈折計を用い、測定波長450nmの条件で測定された値 Re(450)と、測定波長550nmの条件で測定された値 Re(550)の比を計算した値である。
【0052】
以下、本発明の一態様である積層フィルム(以下、「本発明の積層フィルム」という。)について詳細に説明する。
【0053】
本発明の光学フィルム(以下、「フィルム(A)」という。)は、正の複屈折を示すフィルム(以下、「フィルム(B)」という)と積層することで、優れた視野角特性を発現する。
【0054】
フィルム(A)のRthが負の値を持ち、フィルム(B)のRthが正の値を持つために、積層時のRthを任意の値へと調整する事が可能となる。
【0055】
本発明の積層フィルムのReは、フィルム(A)とフィルム(B)のReを調整することにより、制御可能である。本発明の積層フィルムを位相差フィルムとして使用した際により光学特性に優れることから、好ましくは0nm以上400nm以下、さらに好ましくは20nm以上300nm以下、特に好ましくは100nm以上150nm以下である。
【0056】
本発明の積層フィルムのRthは、フィルム(A)とフィルム(B)のRthを調整することにより、制御可能である。本発明の積層フィルムを位相差フィルムとして使用した際により視野角補償性能に優れることから、好ましくは-200nm以上200nm以下、さらに好ましくは-70nm以上70nm以下、特に好ましくは0nm以上40nm以下である。
【0057】
フィルム(B)のReは、フィルム(A)とフィルム(B)の積層時により薄膜で光学特性に優れた位相差フィルムとなることから、好ましくは0nm以上400nm以下、さらに好ましくは0nm以上300nm以下、特に好ましくは0nm以上150nm以下である。
【0058】
フィルム(B)のRthは、フィルム(A)とフィルム(B)の積層時により薄膜で視野角特性に優れた位相差フィルムとなることから、好ましくはRthが5nm以上500nm以下、さらに好ましくはRthが40nm以上300nm以下、特に好ましくは65nm以上200nm以下である。
【0059】
このようなフィルム(B)は、例えば正の複屈折性を持つポリマーを一軸延伸することにより得ることができる。該正の複屈折性を持つポリマーとしては、正の複屈折性を有するポリマーであれば特に制限はなく、耐熱性や透明性などの点から好ましい例としては、 ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂、N-置換マレイミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、特にフィルム(A)との積層時に環境安定性の高い位相差フィルムが得られることから、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、環状オレフィン樹脂、セルロース樹脂等が好ましい。
【0060】
フィルム(A)の進相軸とフィルム(B)の進相軸のなす角度は、目的に応じて設定可能であり、その中でも積層時により薄膜で優れた視野角特性を発現し、生産性が高くなることから、0度±10度以下、又は90度±10度以下であることが好ましい。
【0061】
以上に説明した本発明に係る光学フィルムは、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ等に好適に用いることができる。
【0062】
前記液晶表示装置の種類には特に制限はなく、透過型、反射型及び反射半透過型のいずれの種類にも使用することができる。前記液晶表示装置に用いられる液晶セルとしては、例えば、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モードや、水平配向(ECB)モード、垂直配向(VA)モード、インプレーンスイッチング(IPS)モード、ベンドネマチック(OCB)モード、強誘電性液晶(SSFLC)モード、反強誘電液晶(AFLC)モードの液晶セルなど種々の液晶セルを挙げることができる。このうち、本発明に係る位相差フィルム、光学フィルム及び偏光板には、特にTNモード、VAモード、IPSモード又はOCB モードの液晶セルに用いることが好ましい。
【0063】
このような種々の液晶セルに本発明に係る光学フィルムを用いることにより、コントラストや、色相、視野角特性を改善することができる。
【0064】
フィルム(A)およびフィルム(B)は、熱安定性を向上させるために酸化防止剤を含有していても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダ-ドフェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0065】
フィルム(A)およびフィルム(B)は、耐候性を高めるためヒンダ-ドアミン系光安定剤や紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾ-ル、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエ-ト等が挙げられる。
【0066】
フィルム(A)およびフィルム(B)は、発明の主旨を超えない範囲で、その他ポリマ-、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0067】
本発明のフィルム(A)およびフィルム(B)の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、原料の樹脂を溶液キャスト法等の方法により、長尺状のフィルム化し、該フィルムを一軸又は二軸以上に延伸することにより製造することができる。
【0068】
以下に該長尺状のフィルムの製造方法を説明する。
【0069】
フィルムの製造方法としては、溶液キャスト法により製造することが好ましい。ここで、溶液キャスト法とは、樹脂溶液(一般にはド-プと称する。)を支持基材上に流延した後、加熱することにより溶媒を蒸発させてフィルムを得る方法である。塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。例えば、Tダイ法、ドクタ-ブレ-ド法、バ-コ-タ-法、スロットダイ法、リップコ-タ-法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などがあげられる。また、用いられる支持基材としては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルやポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリアクリル、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、セルロースアセテートやセルロースエーテルなどのセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホンやポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、フェノール樹脂、エポキシ系樹脂、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂等からなる高分子基材、ガラス板や石英基板などのガラス基材、アルミやステンレスやフェロタイプ等の金属基材、セラミックス基板などの無機基材等が挙げられる。上記基材として好ましくは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリアクリル、セルロースアセテートやセルロースエーテルなどのセルロース、ポリイミド、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂等の高分子基材である。特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリイミド、脂肪族環状ポリオレフィン、ノルボルネン系の熱可塑性透明樹脂等の高分子基材である。
【0070】
製膜後の基材剥離工程におけるフィルムの剥離速度は、生産性、機械精度、安定性等から好ましくは0.1m/分以上30m/分以下の範囲を例示することができ、より好ましくは1m/分以上30m/分以下の範囲を挙げることができる。
【0071】
溶液キャストに用いる溶剤としては、樹脂等を溶解できる溶剤であればいかなる溶剤であっても構わないが、製膜工程にて、残溶剤が残りにくい様、溶剤の沸点は200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
【0072】
該溶剤としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール、クロロフェノールなどのフェノール類; ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、メシチレン、ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘ キサノン、シクロペンタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;t-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;二硫化炭素、エチルセロソルブ、ブチルセルソルブなどを単独または混合した溶媒が挙げられる。
【0073】
フィルムを製造する際の樹脂溶液の粘度は、各成分の分子量、濃度、溶媒の種類で調整可能である。樹脂溶液の粘度としては特に制限はないが、フィルム塗工性をより容易にするため、好ましくは100~30000cps、さらに好ましくは300~20000cps、特に好ましくは300~15000cpsである。
【0074】
塗工溶液の乾燥工程における乾燥方法は特に制限されず、通常の加熱手段を採用できる。例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等があげられる。
【0075】
フィルムの製造方法では、乾燥温度が1段のみの条件でも構わないし、外観保持や乾燥時間短縮のため、1段階目に低温で乾燥し、2段階目以降に高温で乾燥するような多段階乾燥でも構わない。
【0076】
本発明において、ドープに対する原料樹脂の濃度は、溶解、製膜が可能な限り特に限定されない。樹脂組成物の溶解を実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め樹脂組成物の高濃度の樹脂溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の樹脂溶液としてもよい。
【0077】
フィルムに対して一軸又は二軸に延伸することにより位相差が制御され、本発明の積層フィルムを構成するフィルム(A)またはフィルム(B)とすることが可能である。一軸延伸方法としては、例えば自由幅一軸延伸、テンターにより延伸する方法、ロール間で延伸する方法などが挙げられ、ニ軸延伸方法としては、例えばテンターにより延伸する方法、チューブ状に膨らませて延伸する方法などがある。延伸方向は、フィルム幅方向や斜め方向に延伸するのが良い。
【0078】
延伸する際の温度は、厚みむらが発生し難く、機械的特性、光学的特性に優れる位相差フィルムとなることから、好ましくは90℃以上300℃以下、特に好ましくは105℃以上250℃以下である。
【0079】
フィルムの延伸の倍率(以下、「延伸倍率」という。)は、得られるフィルムが、薄膜かつ良好な位相差特性を発現することから、好ましくは1.4倍以上4.0倍以下、さらに好ましくは1.5倍以上3.8倍以下、特に好ましくは1.7倍以上3.5倍以下である。
【0080】
このように、延伸温度及び延伸倍率を調整することで、得られる延伸フィルムの面内位相差を制御することができる。
【0081】
延伸工程における樹脂フィルムの搬送速度は、機械精度、安定性等から好ましくは0.5m/分以上30m/分以下の範囲を例示することができ、より好ましくは1m/分以上20m/分以下の範囲を挙げることができる。
【0082】
本発明の製造方法においては、延伸工程により得られたフィルムに対して収縮処理を行う収縮工程を有してもよい。具体的には、延伸加工された樹脂フィルムを延伸方向と反対向きに収縮させる。これにより、延伸加工された樹脂伸フィルム内に溜まった残留応力を緩和させることができ、得られるフィルムは、長期間の経過を経てもなお、高い位相差を発現する。
【0083】
延伸工程に供する樹脂組成物フィルムの厚みは、延伸処理のし易さおよび光学部材の薄膜化への適合性の観点から、5~200μmが好ましく、5~150μmがさらに好ましく、5~100μmが特に好ましい。
【0084】
フィルム(A)およびフィルム(B)は、画像表示装置の光量低下を避けるため、フィルム形状における透過率が好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。ここで光線透過率は全光線透過率を表し、JIS K 7361-1(1997版)に準拠し、白色光源を備えた透過率測定可能な装置を用い、波長380nmから780nmで測定した値である。ここで全光線透過率とは、本発明の光学フィルムに含有される組成物を、厚さ20μmのフィルムに成形して測定した際の値である。
【0085】
フィルム(A)およびフィルム(B)のヘーズは、好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。前記範囲にヘーズを制御することにより、位相差フィルムとして表示装置に組み込んだ際に高コントラストの画像が得られる。ここでヘーズは、JIS-K 7136(2000年版)に準拠し、白色光源備えた一般的なヘーズメーターを用い、波長380nmから780nmで測定した値である。
【0086】
フィルム(A)およびフィルム(B)は、必要に応じて他樹脂を含むフィルムと更に積層することができる。他樹脂としては、例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。また、液晶層やハードコート層、ガスバリア層、屈折率を制御した層(低反射層)を積層することも可能である。
【0087】
フィルム(A)およびフィルム(B)は、液晶表示装置用、有機EL表示装置用等の用途に用いられる偏光板において、好適に用いられる。また、該偏光板は画像表示装置として好適に用いられる。
【実施例0088】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0089】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
【0090】
<重合体の解析>
重合体の構造解析は核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名:JNM-GX270)を用い、プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)スペクトル分析より求めた。
<数平均分子量の測定>
ゲル・パ-ミエイション・クロマトグラフィ-(GPC)装置(東ソ-製、商品名:C0-8011(カラムGMHHR-Hを装着))を用い、テトラヒドロフラン、またはジメチルホルムアミドを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算値として求めた。
<位相差特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA-21ADH)を用いて波長589nmの光を用いて光学フィルムの位相差特性を測定した。
<波長分散特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA-21ADH、光源:ハロゲンランプ(12V100W))を用い、波長450nmの光による位相差Re(450)と波長550nmの光による位相差Re(550)の比として光学フィルムの波長分散特性を測定した。
<剥離性の評価>
基材上に製膜したフィルム(樹脂組成物)に対して、幅35mm、長さ210mmの長方形で、フィルムを基材ごとハサミで切り出し、試験片を作成する。切り出した試験片の中央部のフィルム表面に対して、幅25mm、長さ190mmの長方形で、カッターで切れ目を入れる。切れ目を入れたフィルム端から、長さ方向に100mmをつかみ部分として、基材から手で傷がつかないように剥がす。テンシロン万能材料試験機(オリエンテック製、商品名:RTG-1210)を用いて、フィルムを剥がした方の試験片末端を基材側としてチャックで挟む。基材から剥がれた掴み部分のフィルム端については、180°剥離となるように、折り目がつかないように反対方向に曲げて、もう片方のチャックで挟む。基材から剥がれていない長さ90mm分のフィルムに関して、剥離を実施する。剥離速度は、0.1m~1.0m/分で設定する。剥離後のフィルムに関して、目視で確認し、破れやひび割れが発生していない場合、○とした。
【0091】
合成例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、蒸留水600g、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH-50)3.4g、フマル酸ジイソプロピル387.5g、3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート12.5g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、3.2重量部)及び油溶性ラジカル開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.3gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水で2回洗浄およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:73%)。
得られたフマル酸エステル系重合体の数平均分子量は147,000であった。H-NMR測定により、ポリマー粒子はフマル酸ジイソプロピル残基単位/3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート残基単位=96.1/3.9(モル%)であるフマル酸ジイソプロピル・3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート共重合体であることを確認した。
【0092】
合成例2
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、蒸留水600g、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH-50)3.4g、フマル酸ジイソプロピル400.0g及び油溶性ラジカル開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.3gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で24時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水で2回洗浄およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:77%)。得られたフマル酸ジイソプロピル重合体の数平均分子量は129,000であった。
【0093】
合成例3
攪拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた1リットル反応器に、蒸留水600g、分散剤であるヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学製、商品名メトローズ60SH-50)3.4g、フマル酸ジイソプロピル350.9g、フマル酸ジエチル49.1g(フマル酸ジイソプロピル100重量部に対し、14.0重量部)及び油溶性ラジカル開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.3gを入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で28時間保持することによりラジカル懸濁重合を行なった。重合反応の終了後、反応器より内容物を回収し、重合物をろ別し、蒸留水で2回洗浄およびメタノールで2回洗浄後、80℃で減圧乾燥した(収率:75%)。
得られたフマル酸エステル系重合体の数平均分子量は138,000であった。H-NMR測定により、ポリマー粒子はフマル酸ジイソプロピル残基単位/フマル酸ジエチル残基単位=86.7/13.3(モル%)であるフマル酸ジイソプロピル・フマル酸ジエチル共重合体であることを確認した。
【0094】
合成例4
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル42g、フマル酸モノエチル7.7gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.66gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを55℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、フマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル系樹脂27gを得た。得られた樹脂の数平均分子量は53,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位82モル%、フマル酸モノエチル残基単位18モル%であった。
【0095】
実施例1
合成例1により得られたフマル酸エステル系樹脂19.4g、アジピン酸ジイソデシル(分子量:427)0.6gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚22μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.5倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0096】
実施例2
合成例2により得られたフマル酸エステル系樹脂19.2g、フタル酸ジイソデシル(分子量:447)0.8gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚17μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0097】
実施例3
実施例2で製膜して得られた膜厚17μmのフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.75倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0098】
実施例4
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂19.2g、フタル酸ジイソデシル(分子量:447)0.8gをメチルエチルケトン溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度50℃、80℃、100℃の3段乾燥し、膜厚16μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度1.0m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.75倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0099】
実施例5
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂18.8g、フタル酸ジウンデシル(分子量:475)1.2gをメチルエチルケトン溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度50℃、80℃、100℃の3段乾燥し、膜厚28μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度1.0m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.6倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0100】
実施例6
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂19.4g、アジピン酸ジイソデシル(分子量:427)0.6gをメチルエチルケトン溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度50℃、80℃、100℃の3段乾燥し、膜厚18μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度1.0m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.75倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0101】
実施例7
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂19.4g、セバシン酸ビス(2―エチルヘキシル)(分子量:427)0.6gをメチルエチルケトン溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度50℃、80℃、100℃の3段乾燥し、膜厚22μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度1.0m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0102】
実施例8
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂19.4g、ドデカン二酸ビス(2―エチルヘキシル)(分子量:455)0.6gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚20μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度1.0m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.5倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、視野角特性に優れており、光学フィルムとして好適であった。
【0103】
比較例1
合成例1により得られたフマル酸エステル系樹脂20gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚24μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは基材から剥がれず、応力に耐え切れずに破断したため、フィルムを得ることができなかった。延伸用フィルムを得るために、剥離速度0.1m/分より遅い速度で、慎重に人の手で基材からフィルムを剥離した。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸したところ、フィルムが延伸途中に破断した。得られたフィルムは、製膜後の基材剥離性と延伸性が不十分であった。
【0104】
比較例2
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂20.0gをメチルエチルケトン溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度50℃、80℃、100℃の3段乾燥し、膜厚20μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは基材から剥がれず、応力に耐え切れずに破断したため、フィルムを得ることができなかった。延伸用フィルムを得るために、剥離速度0.1m/分より遅い速度で、慎重に人の手で基材からフィルムを剥離した。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸したところ、フィルムが延伸途中に破断した。得られたフィルムは、製膜後の基材剥離性と延伸性が不十分であった。
【0105】
比較例3
合成例2により得られたフマル酸エステル系樹脂19.2g、シリコーンレジンRSN-217(ダウコーニング社)0.8gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚22μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは基材から剥がれず、応力に耐え切れずに破断したため、フィルムを得ることができなかった。延伸用フィルムを得るために、剥離速度0.1m/分より遅い速度で、慎重に人の手で基材からフィルムを剥離した。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸したところ、フィルムが延伸途中に破断した。得られたフィルムは、製膜後の基材剥離性と延伸性が不十分であった。
【0106】
比較例4
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂19.4g、トリメリット酸トリブチル0.6gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚21μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは基材から剥がれず、応力に耐え切れずに破断したため、フィルムを得ることができなかった。延伸用フィルムを得るために、剥離速度0.1m/分より遅い速度で、慎重に人の手で基材からフィルムを剥離した。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、製膜後の基材剥離性が不十分であった。
【0107】
比較例5
合成例1により得られたフマル酸エステル系樹脂19.0g、シリコーンYR-3370(モメンティブパフォーマンスマテリアルズホールディングス社)1.0gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚19μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは基材から剥がれず、応力に耐え切れずに破断したため、フィルムを得ることができなかった。延伸用フィルムを得るために、剥離速度0.1m/分より遅い速度で、慎重に人の手で基材からフィルムを剥離した。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸したところ、フィルムが延伸途中に破断した。得られたフィルムは、製膜後の基材剥離性と延伸性が不十分であった。
【0108】
比較例6
合成例3により得られたフマル酸エステル系樹脂19.4g、リン酸トリクレジル0.6gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて20重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度80℃、120℃、130℃の3段乾燥し、膜厚25μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは基材から剥がれず、応力に耐え切れずに破断したため、フィルムを得ることができなかった。延伸用フィルムを得るために、剥離速度0.1m/分より遅い速度で、慎重に人の手で基材からフィルムを剥離した。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.4倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、製膜後の基材剥離性が不十分であった。
【0109】
比較例7
合成例4により得られたフマル酸エステル系樹脂7.2g、アジピン酸ジイソデシル(分子量:427)0.6g、エチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセルスタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=55,000、分子量Mw=176,000、Mw/Mn=3.2、全置換度DS=2.5)12.2gをトルエン/メチルエチルケトン=4/6(重量比)溶液に溶解させて12重量%の樹脂溶液とした。該溶液をコーターにより、ポリエチレンテレフタレート基材(ルミラーT60 東レ製)上に流涎し、乾燥温度50℃、80℃、130℃の3段乾燥し、膜厚29μmのフィルム(樹脂組成物)を製膜した。製膜後、剥離速度0.1m/分で、基材からの剥離性を評価した結果、フィルムは剥離によって、破れやひび割れが発生せずに外観良好であった。得られたフィルムを、バッチ式のフィルム二軸延伸装置を用いて、140℃1.75倍に縦一軸延伸した。得られた光学フィルムの膜厚、位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に合わせて示す。得られたフィルムは、Rthが大きく、視野角特性が不十分であった。
【0110】
【表1】
【0111】
<積層フィルムの評価>
シンテック社製、液晶表示器用シミュレーター「LCDMASTER」を用いて、シミュレーションを実施した。透過型液晶表示装置および液晶セルを暗状態(黒表示)とし、極角60°、方位角0°~360°で5°ごとに計算を実施し、黒表示時の輝度(黒輝度)を算出し、その最大値を求めた。
【0112】
実施例9
光源側から、偏光子、IPS液晶セル(Re=285nm)、負の複屈折を示すフィルム(A)、正の複屈折を示すフィルム(B)および偏光子をこの順に備える液晶表示装置をシミュレーションモデルとして、シミュレーションを実施した。各素子の配置は、図1に示す通りとした。
フィルム(A)に関しては、実施例1~7のReとRthの測定結果を入力した。フィルム(B)のReとRthは、表2の通りに設定した。シミュレーション結果を表2に示す。
【0113】
<単膜フィルムの評価>
実施例10
光源側から、偏光子、IPS液晶セル(Re=285nm)、負の複屈折を示すフィルム(A)、および偏光子をこの順に備える液晶表示装置をシミュレーションモデルとして、シミュレーションを実施した。各素子の配置は、図2に示す通りとした。
【0114】
フィルム(A)に関しては、実施例5と7のReとRthの測定結果を入力した。シミュレーション結果を表2に示す。
【0115】
比較例8
フィルム(A)及びフィルム(B)のいずれも用いず、視認側偏光子、液晶セル、光源側偏光子の順に配置された構成として、シミュレーションを実施した。
【0116】
比較例9
比較例7のReとRthの測定結果をフィルム(A)に入力して、図2の構成として、シミュレーションを実施した。
表2より、液晶表示装置が、フィルム(A)または、フィルム(A)とフィルム(B)を有することで、斜め方向の黒輝度が低減している事が分かる。
以上の結果から、フィルム(A)または、フィルム(A)とフィルム(B)を用いることで、斜め方向から視認した場合でも黒輝度が小さくコントラストの高い液晶表示装置が得られる事が分かる。
【0117】
【表2】
【符号の説明】
【0118】
10 光源
20、60 偏光子
21、61 偏光子の吸収軸
30 液晶セル
31 液晶分子の配向方向
40 フィルム(A)
50 フィルム(B)
41 フィルム(A)の進相軸
51 フィルム(B)の進相軸
100 液晶表示装置
図1
図2