(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168566
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】多孔質フィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 3/24 20060101AFI20221031BHJP
C08G 63/181 20060101ALI20221031BHJP
C08G 63/19 20060101ALI20221031BHJP
C08G 63/06 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
B32B3/24
C08G63/181
C08G63/19
C08G63/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074111
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々田 泰行
【テーマコード(参考)】
4F100
4J029
【Fターム(参考)】
4F100AB16
4F100AB17
4F100AB24
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AR00
4F100AR00B
4F100AS00
4F100AS00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DB16
4F100DB16B
4F100DC30
4F100DC30A
4F100DJ00
4F100DJ00A
4F100EH46
4F100EH71
4F100EJ82
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JA05
4F100JA05A
4F100JG01
4F100JG01B
4F100JK06
4F100JK15
4J029AA06
4J029AB01
4J029AD09
4J029AE01
4J029CB05A
4J029EC06A
4J029JC072
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】密着性に優れる多孔質フィルム、及び、上記多孔質フィルムを用いた積層体の提供。
【解決手段】内部及び表面に複数の孔を有する多孔質構造体と、多孔質構造体の内壁の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を含み、複数の孔は、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する、多孔質フィルム、及びその応用。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部及び表面に複数の孔を有する多孔質構造体と、
前記多孔質構造体の内壁の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を含み、
前記複数の孔は、前記多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する、多孔質フィルム。
【請求項2】
前記複数の孔は、前記内部の孔径が前記表面の孔径よりも小さい、請求項1に記載の多孔質フィルム。
【請求項3】
前記多孔質構造体の内壁における前記被覆層の面積率は、前記内壁の総表面積に対して、30%以上である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質フィルム。
【請求項4】
前記被覆層は、導体又は触媒を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の多孔質フィルム。
【請求項5】
前記導体又は触媒は、プラチナ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、タンタル、ニッケル、リン化鉄、リン化2ニッケル、及び、酸化イリジウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の多孔質フィルム。
【請求項6】
前記多孔質構造体は、ポリマーを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の多孔質フィルム。
【請求項7】
前記ポリマーは、ガラス転移温度が150℃以上である、請求項6に記載の多孔質フィルム。
【請求項8】
前記ポリマーは、液晶ポリマー及びポリスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項6又は請求項7に記載の多孔質フィルム。
【請求項9】
前記液晶ポリマーは、式(1)~式(3)のいずれかで表される構成単位を含む、請求項8に記載の多孔質フィルム。
式(1) -O-Ar1-CO-
式(2) -CO-Ar2-CO-
式(3) -X-Ar3-Y-
式(1)~式(3)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表し、Ar2及びAr3はそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表し、X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表し、Ar1~Ar3で表される基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
式(4) -Ar4-Z-Ar5-
式(4)中、Ar4及びAr5はそれぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキレン基を表す。
【請求項10】
電極である、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の多孔質フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの上に配置された電解質膜と、を含む積層体。
【請求項12】
接着フィルムである、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の多孔質フィルム。
【請求項13】
金属層と、請求項12に記載の多孔質フィルムと、樹脂層と、をこの順に含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔質フィルム及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多孔質フィルムは、さまざまな分野に適用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガス通過性のある多孔質性体による一対の集電体に金属電極が機械的な圧着力によって接合されている態様が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多孔質フィルムにおいては、密着性の向上が求められる場合がある。
【0006】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、密着性に優れる多孔質フィルムを提供することである。
また、本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記多孔質フィルムを用いた積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 内部及び表面に複数の孔を有する多孔質構造体と、多孔質構造体の内壁の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を含み、複数の孔は、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する、多孔質フィルム。
<2> 複数の孔は、内部の孔径が表面の孔径よりも小さい、<1>に記載の多孔質フィルム。
<3> 多孔質構造体の内壁における被覆層の面積率は、内壁の総表面積に対して、30%以上である、<1>又は<2>に記載の多孔質フィルム。
<4> 被覆層は、導体又は触媒を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の多孔質フィルム。
<5> 導体又は触媒は、プラチナ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、タンタル、ニッケル、リン化鉄、リン化2ニッケル、及び、酸化イリジウムからなる群より選択される少なくとも1種である、<4>に記載の多孔質フィルム。
<6> 多孔質構造体は、ポリマーを含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の多孔質フィルム。
<7> ポリマーは、ガラス転移温度が150℃以上である、<6>に記載の多孔質フィルム。
<8> ポリマーは、液晶ポリマー及びポリスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、<6>又は<7>に記載の多孔質フィルム。
<9> 液晶ポリマーは、式(1)~式(3)のいずれかで表される構成単位を含む、<8>に記載の多孔質フィルム。
式(1) -O-Ar1-CO-
式(2) -CO-Ar2-CO-
式(3) -X-Ar3-Y-
式(1)~式(3)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表し、Ar2及びAr3はそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表し、X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表し、Ar1~Ar3で表される基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
式(4) -Ar4-Z-Ar5-
式(4)中、Ar4及びAr5はそれぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキレン基を表す。
<10> 電極である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の多孔質フィルム。
<11> <10>に記載の多孔質フィルムと、多孔質フィルム上に配置された電解質膜と、を含む積層体。
<12> 接着フィルムである、<1>~<9>のいずれか1つに記載の多孔質フィルム。
<13> 金属層と、<12>に記載の多孔質フィルムと、樹脂層と、をこの順に含む積層体。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、密着性に優れる多孔質フィルムを提供することができる。
また、本開示の他の実施形態によれば、上記多孔質フィルムを用いた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。 また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0010】
以下、本開示を詳細に説明する。
【0011】
[多孔質フィルム]
本開示に係る多孔質フィルムは、内部及び表面に複数の孔を有する多孔質構造体と、多孔質構造体の内壁の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を含み、複数の孔は、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する。
【0012】
従来の多孔質フィルムは、他の層(例えば、樹脂層、金属層等)との密着性が十分でないことを本発明者は見出した。
本発明者が鋭意検討した結果、上記構成をとることにより、密着性に優れる多孔質フィルムを提供できることを見出した。
【0013】
本開示に係る多孔質フィルムでは、特に、複数の孔が、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有するため、従来よりも密着性に優れる。
【0014】
<多孔質構造体>
本開示に係る多孔質フィルムは、内部及び表面に複数の孔を有する多孔質構造体を含む。多孔質構造体は、フィルム状であることが好ましい。複数の孔は、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する。主面とは、表面のうち主要な面積を有する面を意味する。本開示において、多孔質構造体の主面とは、多孔質構造体の厚み方向と直交する2つの面を指す。
【0015】
多孔質構造体に形成されている複数の孔は、貫通孔であってもよい。
本開示に係る多孔質フィルムでは、多孔質構造体は、一方の主面から他方の主面に向かって貫通する貫通孔を有することが好ましい。
【0016】
貫通孔とは、一の面から他の面へ貫通する孔を意味する。多孔質構造体が貫通孔を有する場合、多孔質構造体の2つの主面には、貫通孔の開口部が存在する。なお、多孔質構造体は、一方の主面から他方の主面に向かって貫通する貫通孔以外の他の貫通孔を有していてもよい。他の貫通孔は、例えば、一方の主面から側面に向かって貫通する貫通孔である。すなわち、多孔質構造体には、2つの主面以外の面にも、貫通孔の開口部が存在していてもよい。
【0017】
また、一方の主面から他方の主面に向かって貫通する一の貫通孔において、貫通孔の開口部は2つのみであってもよく、3つ以上であってもよい。開口部が2つである場合とは、貫通孔が一方の主面から他方の主面に向かって分岐することなく形成されていることを意味する。一方、開口部が3つ以上である場合とは、貫通孔が内部に分岐部分を有することを意味する。
【0018】
多孔質構造体において、一方の主面から他方の主面に向かって貫通する貫通孔の数は特に限定されない。
【0019】
多孔質構造体における複数の孔は、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する。
【0020】
本開示において、「多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する」とは、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径が一定ではなく、変化していることを意味する。
【0021】
多孔質構造体における複数の孔が、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有するか否かについては、以下の方法で判定される。
【0022】
多孔質フィルムをミクロトーム等により切削して、断面評価用サンプルを得る。断面評価用サンプルの断面SEM画像を取得し、断面に存在する孔について、多孔質フィルムの一方の主面から任意の厚みにおける平均孔径を算出する。各厚みにおいて算出した平均孔径を比較し、最大値が最小値に対して1.1倍以上である場合に、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有すると判定する。平均孔径を算出する厚みの位置、および、数は、多孔質フィルムの厚みに応じて適宜設定するが、主面から他の主面を均等に分割した厚みの位置にて測定し、平均孔径を算出する数は、5以上である。
【0023】
孔径とは、孔が円形である場合は円相当径、孔が楕円形である場合は長径と短径の平均値を指す。
【0024】
多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する態様としては、例えば、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径が連続的に増加(又は減少)している態様;多孔質構造体の任意の内部(例えば、中心位置;一方の主面から厚み方向の距離の1/3の位置等)から他方の主面に向かって孔径が連続的に増加する態様;及び、多孔質構造体の一方の主面から内部に向かって孔径が連続的に減少しており、孔径が最小となる部位(以下、「孔径最小部位」ともいう)が内部に存在し、かつ、孔径最小部位から他方の主面に向かって孔径が連続的に増加している態様が挙げられる。
【0025】
なお、孔径が連続的に増加していること、及び、孔径が連続的に減少していることは、隣り合う断面における平均孔径をそれぞれ比較することにより確認することができる。なお、「連続的に増加している」とは、本質的には、減少することがなく一律に増加することを意味するものであるが、減少している部分が偶発的に生じていてもよい。同様に、「連続的に減少している」とは、本質的には、増加することがなく一律に減少することを意味するものであるが、増加している部分が偶発的に生じていてもよい。
【0026】
多孔質構造体における複数の孔は、内部の孔径が表面の孔径よりも小さいことが好ましい。具体的には、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径が連続的に減少しており、孔径最小部位が内部に存在し、かつ、孔径最小部位から他端面に向かって孔径が連続的に増加していることがより好ましい。
【0027】
多孔質構造体における複数の孔において、最小孔径は、0.001μm~10μmであることが好ましく、0.05μm~7μmであることがより好ましい。多孔質フィルムを、多孔質フィルムの厚み方向と直交する方向に仮想的に複数分割し、各断面における平均孔径のうち最小値を、「最小孔径」とする。
【0028】
多孔質構造体における複数の孔において、最大孔径は、0.1μm~25μmであることが好ましく、0.5μm~20μmであることがより好ましい。多孔質フィルムを、多孔質フィルムの厚み方向と直交する方向に仮想的に複数分割し、各断面における平均孔径のうち最大値を、「最大孔径」とする。
【0029】
多孔質構造体の厚みは、特に限定されないが、多孔質構造体を独立膜として使用する場合には、フィルム強度の観点から、10μm~1000μmであることが好ましく、30μm~300μmであることがより好ましい。
【0030】
多孔質構造体は、ポリマーを含むことが好ましい。多孔質構造体は、ポリマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
ポリマーの種類は特に限定されず、公知のポリマーを用いることができる。
【0032】
ポリマーは、耐熱性、及び、長期使用時の形態安定性の観点から、ガラス転移温度が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度の上限値は特に限定されないが、例えば、300℃である。なお、ポリマーの種類によってはガラス転移温度が観測されないこともある。
【0033】
ガラス転移温度は、示差走査熱量分析(DSC)装置を用いて測定される。DSCの測定パンにサンプルを5mg入れ、これを窒素気流中で10℃/分で30℃から昇温した際に現れたベースラインが変曲した部分の中点をガラス転移温度とすることができる。
【0034】
ポリマーとしては、例えば、液晶ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂、及びフッ素樹脂が挙げられる。
【0035】
中でも、密着性を向上させる観点から、ポリマーは、液晶ポリマー及びポリスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0036】
-液晶ポリマー-
液晶ポリマーの種類は特に限定されず、公知の液晶ポリマーを用いることができる。
また、液晶ポリマーは、溶融状態で液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマーであってもよく、溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーであってもよい。また、サーモトロピック液晶の場合は、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。
【0037】
液晶ポリマーとしては、例えば、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルにアミド結合が導入された液晶ポリエステルアミド、液晶ポリエステルにエーテル結合が導入された液晶ポリエステルエーテル、及び、液晶ポリエステルにカーボネート結合が導入された液晶ポリエステルカーボネートが挙げられる。
【0038】
また、液晶ポリマーは、液晶性の観点から、芳香環を有するポリマーであることが好ましく、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドであることがより好ましい。
【0039】
更に、液晶ポリマーは、芳香族ポリエステル又は芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合などのイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
【0040】
また、液晶ポリマーは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリマーであることが好ましい。
【0041】
液晶ポリマーの例としては、例えば、以下が挙げられる。
1)(i)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、(ii)芳香族ジカルボン酸と、(iii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重縮合させてなるもの。
2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重縮合させてなるもの。
3)(i)芳香族ジカルボン酸と、(ii)芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重縮合させてなるもの。
4)(i)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、(ii)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重縮合させてなるもの。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンはそれぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重縮合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0042】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシ基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシ基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシ基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0043】
液晶ポリマーは、液晶性の観点から、下記式(1)~式(3)のいずれかで表される構成単位(以下、式(1)で表される構成単位等を、単位(1)等ということがある。)を有することが好ましく、下記式(1)で表される構成単位を有することがより好ましく、下記式(1)で表される構成単位と、下記式(2)で表される構成単位と、下記式(2)で表される構成単位とを有することが特に好ましい。
式(1) -O-Ar1-CO-
式(2) -CO-Ar2-CO-
式(3) -X-Ar3-Y-
式(1)~式(3)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表し、Ar2及びAr3はそれぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表し、X及びYはそれぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表し、Ar1~Ar3で表される上記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。
式(4) -Ar4-Z-Ar5-
式(4)中、Ar4及びAr5はそれぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表し、Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキレン基を表す。
【0044】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
上記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基及びn-デシル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1~10である。
上記アリール基の例としては、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは6~20である。
上記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される上記基毎にそれぞれ独立に、好ましくは2個以下であり、より好ましくは1個である。
【0045】
上記アルキレン基の例としては、メチレン基、1,1-エタンジイル基、1-メチル-1,1-エタンジイル基、1,1-ブタンジイル基及び2-エチル-1,1-ヘキサンジイル基が挙げられ、その炭素数は、好ましくは1~10である。
【0046】
単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位である。
単位(1)としては、Ar1がp-フェニレン基であるもの(p-ヒドロキシ安香酸に由来する構成単位)、及びAr1が2,6-ナフチレン基であるもの(6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する構成単位)、又は、4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4’-ヒドロキシ-4-ビフェニルカルボン酸に由来する構成単位)が好ましい。
【0047】
単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する構成単位である。
単位(2)としては、Ar2がp-フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する構成単位)、Ar2がm-フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する構成単位)、Ar2が2,6-ナフチレン基であるもの(2,6-ナフタレンジカルボン酸に由来する構成単位)、又は、Ar2がジフェニルエーテル-4,4’-ジイル基であるもの(ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸に由来する構成単位)が好ましい。
【0048】
単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する構成単位である。
単位(3)としては、Ar3がp-フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p-アミノフェノール又はp-フェニレンジアミンに由来する構成単位)、Ar3がm-フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する構成単位)、又は、Ar3が4,4’-ビフェニリレン基であるもの(4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4-アミノ-4’-ヒドロキシビフェニル又は4,4’-ジアミノビフェニルに由来する構成単位)が好ましい。
【0049】
単位(1)の含有量は、全構成単位の合計量(液晶ポリマーを構成する各構成単位の質量をその各単位の式量で割ることにより、各単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%~80モル%、更に好ましくは30モル%~60モル%、特に好ましくは30モル%~40モル%である。
単位(2)の含有量は、全構成単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%~35モル%、更に好ましくは20モル%~35モル%、特に好ましくは30モル%~35モル%である。
単位(3)の含有量は、全構成単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%~35モル%、更に好ましくは20モル%~35モル%、特に好ましくは30モル%~35モル%である。
単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性、強度及び剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
【0050】
単位(2)の含有量と単位(3)の含有量との割合は、[単位(2)の含有量]/[単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1~1/0.9、より好ましくは0.95/1~1/0.95、更に好ましくは0.98/1~1/0.98である。
【0051】
なお、液晶ポリマーは、単位(1)~(3)をそれぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリマーは、単位(1)~(3)以外の構成単位を有してもよいが、その含有量は、全単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0052】
液晶ポリマーは、単位(3)として、X及びYの少なくとも一方がイミノ基であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する構成単位及び芳香族ジアミンに由来する構成単位の少なくとも一方を有することが、溶媒に対する溶解性が優れるので、好ましく、単位(3)として、X及びYの少なくとも一方がイミノ基であるもののみを有することが、より好ましい。
【0053】
液晶ポリマーは、それを構成する構成単位に対応する原料モノマーを溶融重合させることにより製造することが好ましい。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物などが挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。なお、溶融重合は、必要に応じて、更に固相重合させてもよい。
【0054】
液晶ポリマーは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃以上350℃以下、更に好ましくは260℃以上330℃以下である。液晶ポリマーの流動開始温度が上記範囲であると、溶解性、耐熱性、強度及び剛性に優れ、また、溶液の粘度が適度である。
【0055】
流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリマーを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4,800Pa・s(48,000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリマーの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー-合成・成形・応用-」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0056】
また、液晶ポリマーは、その重量平均分子量が1,000,000以下であることが好ましく、3,000~300,000であることがより好ましく、5,000~100,000であること更に好ましく、5,000~30,000であることが特に好ましい。液晶ポリマーの重量平均分子量が上記範囲であると、熱処理後のフィルムにおいて、厚み方向の熱伝導性、耐熱性、強度及び剛性に優れる。
【0057】
ポリマーの含有量は、多孔質構造体の全体積に対し、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。ポリマーの含有量の上限値は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0058】
-その他の添加剤-
多孔質構造体は、本開示の効果を著しく損なわない範囲で、ポリマー以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
【0059】
その他の添加剤としては、公知の添加剤を用いることができる。具体的には、例えば、フィラー、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤等が挙げられる。
【0060】
<被覆層>
本開示に係る多孔質フィルムは、多孔質構造体の内壁の少なくとも一部を被覆する被覆層を含む。
【0061】
多孔質構造体の内壁とは、多孔質構造体に形成されている孔の表面を意味する。被覆層は、孔の表面の一部のみを被覆していてもよく、孔の表面全体を被覆していてもよい。
【0062】
多孔質構造体の内壁における被覆層の面積率は、内壁の総表面積に対して、30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。上記面積率の上限値は特に限定されず、100%であってもよい。面積率が30%以上であると、被覆層の機能を効率的に発現させることができる。また、被覆層同士が連続相を形成する頻度を高め、強度を向上させる効果もある。
【0063】
上記面積率は、以下の式で表される。
面積率(%)=(被覆層の面積/多孔質構造体の内壁の総表面積)×100
【0064】
被覆層の面積、及び、多孔質構造体の内壁の総表面積は、以下の方法で測定される。
多孔質フィルムをミクロトーム等により切削して、複数の断面評価用サンプルを作製する。各サンプルの断面を、走査型電子顕微鏡、X線光電子分光イメージング、飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)イメージング、赤外分光イメージング、ラマンイメージング等で観察し、被覆層の面積、及び、多孔質構造体の内壁の総表面積を測定する。
【0065】
被覆層は、多孔質フィルムに機能を付与する観点から、導体又は触媒を含むことが好ましい。
【0066】
導体又は触媒としては、金属、金属リン化物、及び金属酸化物が挙げられる。導体又は触媒は、有機系の化合物であってもよい。中でも、導体又は触媒は、プラチナ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銀、銅、タンタル、ニッケル、リン化鉄、リン化2ニッケル、及び、酸化イリジウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0067】
被覆層の平均厚みは、特に制限されないが、機能の発現とコストとを両立させる観点から、0.001μm~10μmであることが好ましく、0.01μm~1μmであることがより好ましく、0.03μm~0.5μmであることがさらに好ましい。
【0068】
被覆層の平均厚みは、以下の方法で算出される。まず、多孔質フィルムをミクロトーム等により切削して、複数の断面評価用サンプルを作製する。各サンプルの断面を、走査型電子顕微鏡、X線光電子分光イメージング、赤外分光イメージング、ラマンイメージング等で観察し、被覆層の厚みを測定する。測定した厚みの平均値を、平均厚みとする。
【0069】
本開示に係る多孔質フィルムの平均厚みは、強度の観点から、10μm~1000μmであることが好ましく、10μm~500μmであることがより好ましく、30μm~300μmであることがさらに好ましい。
【0070】
多孔質フィルムの平均厚みは、任意の5箇所について、接着式の膜厚計、例えば、電子マイクロメータ(製品名「KG3001A]、アンリツ社製)を用いて測定し、それらの平均値とする。
【0071】
<多孔質フィルムの製造方法>
本開示に係る多孔質フィルムの製造方法は、例えば、以下の工程を含む。
(1)ポリマー、及び、上記ポリマーと相溶しない化合物を溶媒に溶解した溶液を支持体に流延し、膜Aを形成する工程(流延工程)
(2)膜Aを凝固浴に浸漬し、膜Bを形成する工程(浸漬工程)
(3)膜Bから、上記ポリマーと相溶しない化合物を溶出させ、多孔質構造体を作製する工程(溶出工程)
(4)多孔質構造体を焼成する工程(焼成工程)
(5)被覆層形成用溶液に、焼成後の多孔質構造体を含浸させる工程(含浸工程)
【0072】
(流延工程)
流延工程は、ポリマー、及び、上記ポリマーと相溶しない化合物を溶媒に溶解した溶液を支持体に流延し、膜Aを形成する工程である。
【0073】
流延工程における流延方法としては、特に制限はなく、公知の流延方法を用いることができる。
【0074】
流延温度及び流延速度は、特に制限はなく、公知の流延方法、及び、使用する溶液の組成を参照し、決定すればよい。
【0075】
膜Aの平均厚さは、特に制限はなく、所望の厚さであればよいが、0.1μm~10mmであることが好ましく、1μm~5mmであることがより好ましく、10μm~1,000μmであることが更に好ましく、50μm~500μmであることが特に好ましい。
【0076】
支持体としては、例えば、金属ドラム、金属バンド、ガラス板、樹脂フィルム又は金属箔が挙げられる。中でも、支持体は、ガラス板、又は樹脂フィルムであることが好ましい。
【0077】
ポリマーは、液晶ポリマー及びポリスルホンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0078】
上記ポリマーと相溶しない化合物は、膜Aを形成した際に相分離状態となり得る化合物であれば特に限定されないが、溶出容易性の観点から、水溶性であることが好ましい。
本開示における「水溶性」とは、25℃の水100gに対し、0.1g以上溶解可能であることをいう。
【0079】
上記ポリマーと相溶しない化合物は、分子量1,000未満の低分子化合物であってもよく、重量平均分子量Mwが1,000以上の高分子化合物であってもよいが、孔形成性、及び、溶出容易性の観点から、重量平均分子量Mwが1,000以上の高分子化合物であることが好ましく、水溶性樹脂であることがより好ましい。
【0080】
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(N-ビニルアセトアミド)、水溶性ポリエステル、及び水溶性ポリウレタンが挙げられる。中でも、第1ポリマーと相溶しない化合物は、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0081】
溶媒は、ポリマー、及び、上記ポリマーと相溶しない化合物を溶解可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0082】
<浸漬工程>
浸漬工程は、膜Aを凝固浴に浸漬し、膜Bを形成する工程である。
【0083】
凝固浴の成分としては、特に制限はないが、凝固性、及び、熱伝導性の観点から、水、極性溶媒、又は、水と極性溶媒との混合溶媒であることが好ましく、水、又は、水と極性溶媒との混合溶媒であることがより好ましく、水であることが特に好ましい。
【0084】
凝固浴に用いる極性溶媒としては、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、セルソルブ類、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。
【0085】
凝固浴の温度は、凝固性の観点から、0℃~50℃であることが好ましく、10℃~35℃であることがより好ましく、20℃~30℃であることが特に好ましい。
【0086】
浸漬時間は、特に制限はなく、適宜選択すればよい。
【0087】
なお、本開示に係る多孔質フィルムの製造方法では、流延工程の後であって、かつ、浸漬工程の前において、膜Aに気体を当てる工程を含むことが好ましい。気体を当てる時間を調節することにより、得られる多孔質構造体の支持体とは反対側(空気側ともいう。)の平均孔径を調整することが可能である。
【0088】
気体としては、特に制限はないが、空気であることが好ましい。
【0089】
また、上記気体の温度は、0℃~50℃であることが好ましく、10℃~35℃であることがより好ましく、20℃~30℃であることが特に好ましい。上記気体の相対湿度は、30%~90%であることが好ましく、35%~80%であることがより好ましく、40%~70%であることが特に好ましい。
【0090】
上記気体を当てる時間は、特に制限はなく、所望の平均孔径となるように選択すればよい。
【0091】
また、本開示に係る多孔質フィルムの製造方法は、浸漬工程中又は浸漬工程の後において、支持体から膜Bを剥離する工程を含むことが好ましい。
剥離は、凝固浴中で行ってもよく、凝固浴外で行ってもよい。
剥離方法としては、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。
剥離時の温度は、特に制限はないが、0℃~50℃であることが好ましい。
剥離速度は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0092】
<溶出工程>
溶出工程は、膜Bから、上記ポリマーと相溶しない化合物を溶出させ、多孔質構造体を作製する工程である。
【0093】
溶出工程における溶出方法としては、膜Bとを溶出液と接触させる方法が好ましく、膜Bを溶出液に浸漬する方法がより好ましい。
【0094】
溶出液としては、ある温度において、ポリマーを溶解させず、上記ポリマーと相溶しない化合物を溶解させる化合物であればよいが、選択的溶出性の観点から、水溶性溶剤が好ましい。
【0095】
水溶性溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール等)、ポリアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)などの多価アルコール;ポリアルキレングリコールエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル等)などの多価アルコールエーテルが挙げられる。
【0096】
中でも、選択的溶出性の観点から、水溶性溶剤は、多価アルコール又は多価アルコールエーテルが好ましく、多価アルコールがより好ましく、ポリアルキレングリコールが更に好ましく、ジエチレングリコールが特に好ましい。
【0097】
溶出工程における溶出温度は、ポリマー等の溶解性、並びに、使用する溶出液の沸点及び融点にも依存するが、20℃~150℃であることが好ましく、50℃~100℃であることがより好ましく、60℃~90℃であることが特に好ましい。
【0098】
溶出工程における溶出時間は、特に制限はないが、0.1分~24時間であることが好ましく、0.5分~60分であることがより好ましく、1分~10分であることが特に好ましい。
【0099】
本開示に係る多孔質フィルムの製造方法では、溶出工程の後、多孔質構造体を洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0100】
また、本開示に係る多孔質フィルムの製造方法では、溶出工程の後、又は多孔質構造体を洗浄する工程の後、多孔質構造体を乾燥させる工程を含むことが好ましい。
【0101】
洗浄に用いる洗浄液は、特に制限はないが、水、極性溶媒、又は、水と極性溶媒との混合溶媒であることが好ましく、水、又は、水と極性溶媒との混合溶媒であることがより好ましく、水であることが特に好ましい。
洗浄温度及び洗浄時間は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
また、洗浄手段は、特に制限はなく、公知の洗浄手段を用いることができる。
【0102】
乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
また、乾燥手段は、特に制限はなく、公知の乾燥手段を用いることができる。
【0103】
(焼成工程)
焼成工程は、多孔質構造体を焼成する工程である。
【0104】
焼成温度は、特に制限はないが、200℃~400℃であることが好ましく、250℃~300℃であることがより好ましい。
【0105】
焼成時間は、特に制限はないが、0.1時間~5時間であることが好ましく、2時間~4時間であることがより好ましい。
【0106】
焼成は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素が挙げられる。
【0107】
(含浸工程)
含浸工程は、被覆層形成用溶液に、焼成後の多孔質構造体を含浸させる工程である。
【0108】
被覆層形成用溶液は、無電解めっき液であることが好ましい。無電解めっき液としては、公知の溶液を用いることができる。
【0109】
また、本開示に係る多孔質フィルムの製造方法では、含浸工程の後、得られた多孔質フィルムを乾燥させる工程を含むことが好ましい。
【0110】
乾燥温度及び乾燥時間は、特に制限はなく、適宜選択することができる。
また、乾燥手段は、特に制限はなく、公知の乾燥手段を用いることができる。
【0111】
含浸工程において、多孔質構造体に形成されている孔に無電解めっき液が入りこむことにより、多孔質構造体の内壁に被覆層が形成される。
【0112】
-用途-
本開示に係る多孔質フィルムは、種々の用途に用いることができる。中でも、電極に好適に用いることができる。また、本開示に係る多孔質フィルムは、電解質膜として用いることもできる。
【0113】
また、本開示に係る多孔質フィルムは、接着フィルムとして好適に用いることができる。
【0114】
[積層体]
本開示に係る積層体は、本開示に係る多孔質フィルムを含む積層体であればよい。本開示に係る積層体は、本開示に係る多孔質フィルムと、上記多孔質フィルムの少なくとも一方の面に配置された層と、を有することが好ましい。多孔質フィルムの少なくとも一方の面に配置される層は特に限定されず、例えば、ポリマー層及び金属層が挙げられる。多孔質フィルムの少なくとも一方の面に配置される層は、塗工層であってもよい。
【0115】
また、多孔質フィルムの少なくとも一方の面に配置される層は、多孔質フィルムの面全体に配置されていてもよく、多孔質フィルムの一部にのみ配置されていてもよい。
【0116】
中でも、本開示に係る多孔質フィルムは電極として用いられ、本開示に係る積層体は、電極としての多孔質フィルムと、上記多孔質フィルム上に配置された電解質膜と、を含むことが好ましい。
【0117】
本開示に係る多孔質フィルムと電解質膜とを貼り付ける方法としては、特に制限はなく、公知のラミネート方法を用いることができる。
【0118】
上記多孔質フィルムと、上記電解質膜との剥離強度は、0.5kN/m以上であることが好ましく、0.7kN/m以上であることがより好ましく、0.7kN/m~2.0kN/mであることが更に好ましく、0.9kN/m~1.5kN/mであることが特に好ましい。
【0119】
本開示において、多孔質フィルムと、電解質膜との剥離強度は、以下の方法により測定するものとする。
【0120】
多孔質フィルムと電解質膜との積層体から1.0cm幅の剥離用試験片を作製し、多孔質フィルムを両面接着テープで平板に固定し、JIS C 5016(1994)に準じて180°法により、50mm/分の速度で電解質膜から多孔質フィルムを剥離したときの強度(kN/m)を測定する。
【0121】
また、本開示に係る多孔質フィルムは接着フィルムとして用いられ、本開示に係る積層体は、金属層と、接着フィルムとして多孔質フィルムと、樹脂層と、をこの順に含むことが好ましい。
【0122】
本開示に係る多孔質フィルムと金属層、及び、本開示に係る多孔質フィルムと樹脂層とを貼り付ける方法としては、特に制限はなく、公知のラミネート方法を用いることができる。
【0123】
積層体としては、例えば、金属層/多孔質フィルム/樹脂層の3層構造、及び、金属層/多孔質フィルム/樹脂層/多孔質フィルム/金属層の5層構造が挙げられる。
【実施例0124】
以下に実施例を挙げて本開示を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本開示の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0125】
<<測定法>>
[孔径分布]
多孔質フィルムをミクロトームで切削して、断面評価用サンプルを3個作製した。走査型電子顕微鏡を用いて、多孔質フィルムの上記厚み方向における両端面に形成されている孔と、3つの断面に形成されている孔と、を観察した。各断面における孔の任意の50箇所を選択して孔径を測定し、平均孔径を算出した。算出した平均孔径において、最大値が最小値に対して1.1倍以上である場合に、多孔質フィルムの厚み方向に孔径分布を有すると判定した。
【0126】
[多孔質構造体の内壁における被覆層の面積率]
多孔質フィルムをミクロトームで切断して断面サンプルを作製し、X線光電子分光分析法(XPS)、又は飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて断面のイメージング測定を行った。5か所のサンプル画像から、内壁の総表面積、及び、被覆層の面積を測定し、下記式に基づいて面積率を算出した。なお、被覆層の素材が無機系の場合にはXPSの結果を、有機系の場合にはTOS-SIMSの結果を優先した。
面積率(%)=(被覆層の面積/多孔質構造体の内壁の総表面積)×100
【0127】
[剥離強度]
多孔質フィルムと電解質膜との積層体から1.0cm幅の剥離用試験片を作製し、多孔質フィルムを両面接着テープで平板に固定し、JIS C 5016(1994)に準じて180°法により、50mm/分の速度で電解質膜から多孔質フィルムを剥離したときの強度(kN/m)を測定した。
【0128】
<多孔質フィルムの作製に用いたポリマー>
LC-A:下記製造方法に従って作製した液晶ポリマー
【0129】
-LC-Aの製造-
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸940.9g(5.0モル)、4-ヒドロキシアセトアミノフェン377.9g(2.5モル)、イソフタル酸415.3g(2.5モル)及び無水酢酸867.8g(8.4モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、撹拌しながら、室温(23℃)から140℃まで60分かけて昇温し、140℃で3時間還流させた。
次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から300℃まで5時間かけて昇温し、300℃で30分保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(B1)を得た。この液晶ポリエステル(B1)の流動開始温度は、193.3℃であった。
【0130】
上記で得た液晶ポリエステル(B1)を、窒素雰囲気下、室温から160℃まで2時間20分かけて昇温し、次いで160℃から180℃まで3時間20分かけて昇温し、180℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却し、次いで、粉砕機で粉砕して、粉末状の液晶ポリエステル(B2)を得た。この液晶ポリエステル(B2)の流動開始温度は、220℃であった。
【0131】
上記で得た液晶ポリエステル(B2)を、窒素雰囲気下、室温(23℃)から180℃まで1時間25分かけて昇温し、次いで180℃から255℃まで6時間40分かけて昇温し、255℃で5時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(LC-A)を得た。液晶ポリエステル(LC-A)の流動開始温度は、302℃であった。また、この液晶ポリエステル(LC-A)を、示差走査熱量分析装置(製品名「DSC8230」、リガク社製)を用いて融点を測定した結果、311℃であった。
【0132】
PVP-A:ポリビニルピロリドン(製品名「ピッツコールK-50」、第一工業製薬(株)製)を用いた。なお、PVP-Aは、0℃~100℃においてLC-Aと相溶しない化合物である。
PSU-A:ポリスルホン(製品名「ユーデルP-3500」、ソルベイジャパン(株)製)を用いた。
PAI-A:ポリアミドイミド系樹脂溶液(商品名「バイロマックスHR-11NN」、東洋紡(株)製、固形分濃度15質量%、N-メチル-2-ピロリドン溶液)を用いた。
【0133】
(実施例1)
-ポリマー溶液の調製-
LC-Aを、N-メチルピロリドンに加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間撹拌し、固形分濃度12質量%の溶液を得た。
次に、LC-A100質量部に対し、PVP-A 87質量部、塩化リチウム7質量部、及び水8質量部を添加し、均一に溶解させた。
続いて、公称孔径10μmの焼結繊維金属フィルターを通過させた後、同じく公称孔径10μmの焼結繊維フィルターを通過させ、ポリマー溶液を得た。
【0134】
-製膜-
ポリマー溶液をガラス板上に、乾燥後に厚さ140μmとなるようキャステイングコーターを通して流延した(流延工程)。LC-AとPVP-Aとは相分離し、液膜は、共連続構造を有していた。温度25℃相対湿度50%に調節した空気を、風速1.2m/secで、流延した液膜表面に当てた。その後、膜が形成されたガラス板を、直ちに25℃の水を満たした凝固浴槽へ浸漬させた(浸漬工程)。
得られた膜は、凝固後、水中でガラス板から剥離した。75℃のジエチレングリコール中で5分間洗浄処理を行い、PVP-Aを溶出させた(溶出工程)。さらに水洗及び乾燥を行った。
【0135】
-焼成-
溶出工程後の膜を、280℃の窒素雰囲気下で3時間加熱し、多孔質構造体を得た(焼成工程)。多孔質構造体は、表面及び内部に複数の孔を有しており、複数の孔は、一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有することが分かった。また、複数の孔は、内部の孔径が表面の孔径よりも小さいことが分かった。
【0136】
-被覆-
得られた多孔質構造体を、無電解白金めっき液に10分間含浸させた(含浸工程)。多孔質構造体の表面、及び、多孔質構造体の孔の内壁に白金皮膜が形成された多孔質フィルムを得た。多孔質構造体の内壁における被覆層の面積率は、99%であった。
【0137】
-積層体の作製-
特開2018-60789号公報の実施例1に準じて、高分子電解質膜を作製した。上記多孔質フィルムを2つ作製し、電極とした。高分子電解質膜を2つの電極(上記多孔質フィルム)で挟み、加熱圧着して膜電極接合体を得た。得られた膜電極接合体は、多孔質フィルム/高分子電解質膜/多孔質フィルムの構造を有していた。得られた膜電極接合体において、高分子電解質膜と多孔質フィルムとの剥離強度は0.5kN/m以上であることを確認した。
【0138】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、多孔質フィルムを得た。
【0139】
-積層体の作製-
特開2018-60789号公報の実施例1に準じて、高分子電解質膜を作製した。また、表面粗さ(Rz)が0.9μmの白金板を準備した。
【0140】
高分子電解質膜を2つの電極(上記多孔質フィルム)で挟み、さらに、多孔質フィルムの外側にそれぞれ白金板を貼り付け、加熱圧着して膜電極接合体を得た。得られた膜電極接合体は、白金板/多孔質フィルム/高分子電解質膜/多孔質フィルム/白金板の構造を有していた。得られた膜電極接合体において、高分子電解質膜と多孔質フィルムとの剥離強度は0.5kN/m以上であることを確認した。
【0141】
(実施例3)
実施例1で用いたLC-AをPSU-Aに変更し、PSU-AをN-メチルピロリドンに加え、窒素雰囲気下、140℃で4時間撹拌し、固形分濃度20質量%の溶液を得たこと以外は、実施例1と同様の方法でポリマー溶液を得た。その後、実施例1と同様の方法で、流延工程、浸漬工程、及び溶出工程を実施し、焼成工程を行わずに、多孔質構造体を得た。多孔質構造体は、表面及び内部に複数の孔を有しており、複数の孔は、一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有することが分かった。また、複数の孔は、内部の孔径が表面の孔径よりも小さいことが分かった。
実施例1と同様の方法で含浸工程を実施し、多孔質構造体の表面、及び、多孔質構造体の孔の内壁に白金皮膜が形成された多孔質フィルムを得た。多孔質構造体の内壁における被覆層の面積率は、98%であった。
【0142】
-積層体の作製-
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例1と同様の方法で膜電極接合体を得た。得られた膜電極接合体は、多孔質フィルム/高分子電解質膜/多孔質フィルムの構造を有していた。得られた膜電極接合体において、高分子電解質膜と多孔質フィルムとの剥離強度は0.5kN/m以上であることを確認した。
【0143】
(実施例4)
実施例3と同様の方法で、多孔質フィルムを得た。
【0144】
-積層体の作製-
得られた多孔質フィルムを用いて、実施例2と同様の方法で膜電極接合体を得た。得られた膜電極接合体は、白金板/多孔質フィルム/高分子電解質膜/多孔質フィルム/白金板の構造を有していた。得られた膜電極接合体において、高分子電解質膜と多孔質フィルムとの剥離強度は0.5kN/m以上であることを確認した。
【0145】
(比較例1)
特開2018-60789号公報の実施例1に準じて、高分子電解質膜を作製した。また、表面粗さ(Rz)が0.9μmの白金板を準備した。高分子電解質膜を2つの白金板で挟み、加熱圧着して膜電極接合体を得た。得られた膜電極接合体は、白金板/高分子電解質膜/白金板の構造を有していた。得られた膜電極接合体において、高分子電解質膜と白金板との剥離強度は0.1kN/mであることを確認した。
【0146】
以上より、内部及び表面に複数の孔を有する多孔質構造体と、多孔質構造体の内壁の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を含み、複数の孔が、多孔質構造体の一方の主面から他方の主面に向かって孔径分布を有する、多孔質フィルムは、密着性に優れることが分かった。
【0147】
(比較例2)
PAI-A溶液100質量部に、ポリビニルピロリドン(分子量5.5万)35質量部を加えて製膜用の原液とし、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に流延した。続けて、速やかに湿度約100%、温度50℃の環境で4分間保持した。
その後、膜が形成されたPETフィルムを、水を満たした凝固浴槽へ浸漬させた。
得られた膜は、凝固後、水中でPETフィルムから剥離した。水中で洗浄処理を行い、PAI-Aを溶出させた後、自然乾燥を行った。厚み約50μmの多孔質構造体を得た。
得られた多孔質構造体を電子顕微鏡で観察したところ、多孔質構造体の表面に存在する孔の平均孔径は約0.5μmであり、多孔質構造体内部はほぼ均質で全域にわたって平均孔径が約0.5μmの連続相である微小孔が存在していた。
実施例1と同様の方法で含浸工程を実施したところ、多孔質構造体の表面付近でめっき液の閉塞が起こってしまい、多孔質構造体の内壁における被覆層の面積率は、20%であった。