(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168680
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】磁界発生装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/70 20160101AFI20221031BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20221031BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221031BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20221031BHJP
【FI】
H02J50/70
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074308
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】居村 岳広
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 蒼真
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】送電コイルから発生する磁界を、送電コイルの近傍のみならず、遠方においても低減させることが可能な磁界発生装置を提供する。
【解決手段】磁界の発生による電力の送電を行う主コイル10と、主コイル10の周辺の主コイル10と同一の平面に配置され、主コイル10が発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる、又は吸収するキャンセルコイル20A、20Bと、キャンセルコイル20A、20Bと間隔を置いて配置され、主コイル10が発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる別のキャンセルコイル20A、20Bと、を備える磁界発生装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界の発生による電力の送電を行う第1送電コイルと、
前記第1送電コイルの周辺の前記第1送電コイルと同一の平面に配置され、前記第1送電コイルが発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる、又は吸収する第1キャンセルコイルと、
前記第1キャンセルコイルと間隔を置いて配置され、前記第1送電コイルが発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる少なくとも1つの第2キャンセルコイルと、
を備える磁界発生装置。
【請求項2】
前記第2キャンセルコイルは、前記第1送電コイルから所定の間隙を置いて少なくとも1つ配置される、請求項1に記載の磁界発生装置。
【請求項3】
前記第2キャンセルコイルは、前記第1送電コイルを挟む位置に等間隔に少なくとも1組配置される、請求項2に記載の磁界発生装置。
【請求項4】
前記第2キャンセルコイルは、前記第1送電コイルから見て同一の方向に少なくとも1組配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項5】
前記第2キャンセルコイルは、前記第1キャンセルコイルと同一の形状に形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項6】
前記第2キャンセルコイルの周辺に配置され、磁界の発生による電力の送電を行う第2送電コイルを備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項7】
前記第2送電コイルは、前記第1送電コイルが磁界を発生させている間は磁界を発生させない、請求項6に記載の磁界発生装置。
【請求項8】
前記第1キャンセルコイルは、前記第1送電コイルを挟んで配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項9】
前記第1キャンセルコイルは、前記第1送電コイルを取り囲んで配置される、請求項1~7のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項10】
前記第1送電コイルは、電気で駆動する移動体へ電力を送電する、請求項1~9のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項11】
前記第2キャンセルコイルは、前記移動体の走行方向に沿って前記第1キャンセルコイルと間隔を置いて配置される、請求項10に記載の磁界発生装置。
【請求項12】
前記第2キャンセルコイルは、さらに、前記移動体の走行進路に隣接する走行進路に少なくとも1つ配置されている、請求項11に記載の磁界発生装置。
【請求項13】
前記移動体は、電気で駆動する電気自動車である、請求項10~12のいずれか1項に記載の磁界発生装置。
【請求項14】
所定の間隙を置いて配置され、磁界の発生による電力の送電を行う複数の送電コイルを備え、
複数の前記送電コイルの中の一の送電コイルが送電している間は、少なくとも1つの他の送電コイルは、送電中の前記一の送電コイルが発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる、磁界発生装置。
【請求項15】
前記他の送電コイルは、前記一の送電コイルの隣に配置されている、請求項14に記載の磁界発生装置。
【請求項16】
前記複数の送電コイルは、電気で駆動する移動体へ電力を送電する、請求項14又は15に記載の磁界発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリに蓄えられた電力をモータの駆動力に変換することで走行する電気自動車は、走行時にバッテリに蓄えられた電力が枯渇しないよう注意しなければならない。充電スタンドで電気自動車のバッテリを充電する方法もあるが、充電スタンドに辿り着くまでに電力が枯渇するおそれもある。
【0003】
そこで、電気自動車のバッテリに蓄えられた電力の枯渇を防ぐために、電気自動車の走行中にバッテリを充電させる走行中ワイヤレス給電技術の開発が進められている。走行中ワイヤレス給電技術は、漏洩磁界の影響が懸念される。この漏洩磁界は電子機器の誤作動や人体への悪影響をもたらす。そこで遠傍の漏洩磁界の抑制を図る技術が提案されている。例えば非特許文献1には、送電コイルから発生する磁界をキャンセルコイルが作り出す磁界で打ち消すことで近傍の磁界を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】T. Campi, S. Cruciani, F. Maradei and M. Feliziani, "Active Coil System for Magnetic Field Reduction in an Automotive Wireless Power Transfer System," 2019 IEEE International Symposium on Electromagnetic Compatibility, Signal & Power Integrity (EMC+SIPI), New Orleans, LA, USA, 2019, pp. 189-192, doi: 10.1109/ISEMC.2019.8825202.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1で開示されている技術では、送電コイルの近傍の磁界をキャンセルコイルにより低減させることはできるが、送電コイルの遠方、例えば10メートル程度離れた場所の磁界を低減させることはできない。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、送電コイルから発生する磁界を、送電コイルの近傍のみならず、遠方においても低減させることが可能な磁界発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る磁界発生装置は、磁界の発生による電力の送電を行う第1送電コイルと、前記第1送電コイルの周辺の前記第1送電コイルと同一の平面に配置され、前記第1送電コイルが発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる、又は吸収する第1キャンセルコイルと、前記第1キャンセルコイルと間隔を置いて配置され、前記第1送電コイルが発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる少なくとも1つの第2キャンセルコイルと、を備える。
【0008】
本発明の第2態様に係る磁界発生装置は、第1態様に係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルは、前記第1送電コイルから所定の間隙を置いて少なくとも1つ配置される。
【0009】
本発明の第3態様に係る磁界発生装置は、第2態様に係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルは、前記第1送電コイルを挟む位置に等間隔に少なくとも1組配置される。
【0010】
本発明の第4態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第3態様のいずれかに係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルは、前記第1送電コイルから見て同一の方向に少なくとも1組配置される。
【0011】
本発明の第5態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第4態様のいずれかに係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルは、前記第1キャンセルコイルと同一の形状に形成される。
【0012】
本発明の第6態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第5態様のいずれかに係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルの周辺に配置され、磁界の発生による電力の送電を行う第2送電コイルを備える。
【0013】
本発明の第7態様に係る磁界発生装置は、第6態様に係る磁界発生装置であって、前記第2送電コイルは、前記第1送電コイルが磁界を発生させている間は磁界を発生させない。
【0014】
本発明の第8態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第7態様にいずれかに係る磁界発生装置であって、前記第1キャンセルコイルは、前記第1送電コイルを挟んで配置される。
【0015】
本発明の第9態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第7態様のいずれかに係る磁界発生装置であって、前記第1キャンセルコイルは、前記第1送電コイルを取り囲んで配置される。
【0016】
本発明の第10態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第9態様のいずれかに係る磁界発生装置であって、前記第1送電コイルは、電気で駆動する移動体へ電力を送電する。
【0017】
本発明の第11態様に係る磁界発生装置は、第10態様に係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルは、前記移動体の走行方向に沿って前記第1キャンセルコイルと間隔を置いて配置される。
【0018】
本発明の第12態様に係る磁界発生装置は、第11態様に係る磁界発生装置であって、前記第2キャンセルコイルは、さらに、前記移動体の走行進路に隣接する走行進路に少なくとも1つ配置されている。
【0019】
本発明の第13態様に係る磁界発生装置は、第1態様~第12態様のいずれかに係る磁界発生装置であって、前記移動体は、電気で駆動する電気自動車である。
【0020】
本発明の第14態様に係る磁界発生装置は、所定の間隙を置いて配置され、磁界の発生による電力の送電を行う複数の送電コイルを備え、複数の前記送電コイルの中の一の送電コイルが送電している間は、少なくとも1つの他の送電コイルは、送電中の前記一の送電コイルが発生させる漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる。
【0021】
本発明の第15態様に係る磁界発生装置は、第14態様に係る磁界発生装置であって、前記他の送電コイルは、前記一の送電コイルの隣に配置されている。
【0022】
本発明の第16態様に係る磁界発生装置は、第14態様又は第15態様に係る磁界発生装置であって、前記複数の送電コイルは、電気で駆動する移動体へ電力を送電する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、送電コイルから発生する磁界を少なくとも2つのキャンセルコイルで打ち消すことで、送電コイルから発生する磁界を、送電コイルの近傍のみならず、遠方においても低減させることが可能な磁界発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る磁界発生装置の概要を示す図である。
【
図2】主コイル及びキャンセルコイルの構造を示す斜視図である。
【
図3】磁界発生装置による電気自動車への給電を模式的に示した図である。
【
図4】磁界発生装置による電気自動車への給電を模式的に示した図である。
【
図5】主コイルの漏洩磁界の測定点を示す図である。
【
図6】漏洩磁界をシミュレーションして比較したグラフを示した図である
【
図8】キャンセルコイルの別の選択例を示す図である。
【
図9】キャンセルコイルの別の選択例を示す図である。
【
図10】キャンセルコイルの形状の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る磁界発生装置の概要を示す図である。
【0027】
図1に示した磁界発生装置は、本発明の移動体の一例である電気自動車1の走行中に、電気自動車1のバッテリにワイヤレスで給電するための走行中ワイヤレス給電システムに用いられる装置である。
図1には、複数の主コイル10と、主コイル10の近傍に設けられるキャンセルコイル20A、20Bと、の組が、電気自動車1の走行方向に沿って、道路上に複数埋設されている磁界発生装置が示されている。
図1には、(A)~(C)で示した3組の主コイル10及びキャンセルコイル20A、20Bが道路上に埋設されている様子が示されている。
【0028】
主コイル10は、電気自動車1へワイヤレスで給電するための所定の周波数で磁界を発生させる。主コイル10は、本発明の第1送電コイルの一例である、
図1には示されていないが、電気自動車1の底面には、主コイル10と同様の形状を有し、主コイル10が発生させた磁界に応じて電流を発生させるコイルが設けられる。コイルが発生させた電流は、電気自動車1に設けられるバッテリの充電に用いられる。すなわち、主コイル10が発生させた磁界により、電気自動車1は、走行中にバッテリを充電することができる。
【0029】
主コイル10の近傍に設けられるキャンセルコイル20A、20Bは、主コイル10が発生させた磁界に伴う漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させる、又は主コイル10が発生させた磁界に伴う漏洩磁界を吸収するコイルである。(B)の位置にあるキャンセルコイル20A、20Bは、本発明の第1キャンセルコイルの一例である。
【0030】
図2は、主コイル10及びキャンセルコイル20A、20Bの構造を示す斜視図である。主コイル10は、アルミ板40及びフェライト30の上に所定回数巻回された導線で構成される。また、キャンセルコイル20A、20Bは、主コイル10と所定距離離れた位置に設けられる。キャンセルコイル20A、20Bは、主コイル10と同様に、それぞれ、アルミ板40及びフェライト30の上に所定回数巻回された導線で構成される。
【0031】
図3は、磁界発生装置による電気自動車1への給電を模式的に示した図である。
図3中の(A)~(C)は、
図1の(A)~(C)と対応している。
【0032】
図3に示したように、電気自動車1の通過に合わせて、磁界を発生させる主コイル10を切り替えていくことで、電気自動車1に対するワイヤレス給電を実現する。電気自動車1の通過の検出手法は特定の手法に限定されず、例えば道路にセンサを埋設するなどすることで行われてもよい。
【0033】
図3に示した例では、電気自動車1が(B)の位置にいる状態で(B)の主コイル10がONとなって磁界を発生させ、(A)及び(C)の主コイル10がOFFとなっている。すなわち、(B)の主コイル10が発生させた磁界によって電気自動車1のバッテリが充電される。
【0034】
しかし、主コイル10だけでは、上述したように漏洩磁界の影響が懸念される。そこで、本実施形態に係る磁界発生装置は、キャンセルコイル20A、20Bと組み合わせることで、漏洩磁界を低減させることを特徴としている。
【0035】
図4は、磁界発生装置による電気自動車1への給電を模式的に示した図である。
図4には、(A)~(E)の5組の主コイル10及びキャンセルコイル20A、20Bの状態が模式的に示されている。
【0036】
図4に示した例では、電気自動車1が(C)の位置にいる状態で(C)の主コイル10がONとなって磁界を発生させ、(A)、(B)、(D)及び(E)の主コイル10がOFFとなっている。そして、電気自動車1が(C)の位置にいる状態で、(B)、(C)及び(D)のキャンセルコイル20A、20BがONとなって磁界を発生させ、(A)及び(E)のキャンセルコイル20A、20BがOFFとなっている。(B)及び(D)の位置にあるキャンセルコイル20A、20Bは、本発明の第2キャンセルコイルの一例である。
【0037】
本実施形態に係る磁界発生装置は、磁界を発生させている主コイル10と同じ組のキャンセルコイル20A、20Bから磁界を発生させるとともに、磁界を発生させていない主コイル10と同じ組のキャンセルコイル20A、20Bから磁界を発生させる。本実施形態に係る磁界発生装置は、このように主コイル10、キャンセルコイル20A、20Bから磁界を発生させることで、主コイル10が発生させた磁界に伴う漏洩磁界を、主コイル10の近傍のみならず、遠方においても軽減させることができる。
【0038】
また、このように複数の組のキャンセルコイル20A、20Bを用いることで、複数の組のキャンセルコイル20A、20Bを用いない場合と比べてキャンセルコイルに必要な電圧を小さくでき、キャンセルコイルが消費する電力を減らすことができる。
【0039】
ここで、本実施形態に係る磁界発生装置による効果を説明する。
図5は、主コイル10の漏洩磁界の測定点を示す図である。
図5に示したように、主コイル10の中心から水平方向に10メートル離れた場所での漏洩磁界をシミュレーションすることで、本実施形態に係る磁界発生装置による効果を示す。ここでは、複数の組のキャンセルコイル20A、20Bを用いない場合(ケース1とする)と、
図4の(B)及び(C)の2つの組のキャンセルコイル20A、20Bを用いる場合(ケース2とする)と、
図4の(B)、(C)及び(D)の3つの組のキャンセルコイル20A、20Bを用いる場合(ケース3とする)とを比較して説明する。
【0040】
なお、主コイル10の送電距離を15cm、共振周波数は85kHzとする。また、主コイル10のサイズは400×400mm、巻数は15、ピッチは1.8mm、共振時のインダクタンスは251.82μH、キャパシタンスは139.23μF、Q値は551.04である。また、キャンセルコイル20A、20Bのサイズは100×400mm、巻数は8、ピッチは2mm、共振時のインダクタンスは40.765μH、キャパシタンスは245.31μF、Q値は73.004である。
【0041】
図6は、上述の3つの場合の漏洩磁界をシミュレーションして比較したグラフを示した図である。
図6に示したグラフの横軸はキャンセルコイル20A、20Bに印加するキャンセル電圧、縦軸は主コイル10から10メートル先の磁界強度(漏洩磁界)である。符号101は、キャンセルコイル20A、20Bによる磁界が無い場合の、キャンセル電圧と磁界強度との関係を示す。符号102は、磁界強度の規制値(2.66mA/m、総務省告示207号第4項より)を示す。符号103は、ケース1におけるキャンセル電圧と磁界強度との関係を示す。符号104は、ケース2におけるキャンセル電圧と磁界強度との関係を示す。符号105は、ケース3におけるキャンセル電圧と磁界強度との関係を示す。なお、主コイル10の電圧は、漏洩磁界の抑制効果を分かりやすくするために、1000Vで固定した。
【0042】
図6に示したグラフによれば、ケース1では、キャンセル電圧が800Vになっても、漏洩磁界は規制値を下回れなかった。これに対し、ケース2では、キャンセル電圧がおよそ610Vを超えると、漏洩磁界は規制値を下回るようになった。さらに、ケース3では、およそ470Vを超えると、漏洩磁界は規制値を下回るようになった。
【0043】
図6に示したシミュレーション結果から、キャンセルコイルの数を増やすことで、低いキャンセル電圧で漏洩磁界を規制値より小さくすることができる。従って、キャンセルコイルの数を増やすことで、漏洩磁界の軽減に要する電力を低く抑えることが可能となる。
【0044】
なお、使用するキャンセルコイルの場所及び数は選択可能である。
図7は、キャンセルコイルの選択例を示す図である。例えば
図7に示したように、上記ケース3においてキャンセルコイル20Aのみを使用するようにしてもよい。なお
図7では、磁界を発生させていない主コイル10及び同じ組のキャンセルコイル20Bは図示していない。
【0045】
図8は、キャンセルコイルの別の選択例を示す図である。
図8では、磁界を発生させている主コイル10の隣の組(B)、(D)では無く、さらに隣の組(A)、(E)のキャンセルコイル20A、20Bを用いる例を示している。このようにキャンセルコイルを選択しても、同様に遠方の漏洩磁界を軽減させることが可能となる。
【0046】
図9は、キャンセルコイルの別の選択例を示す図である。
図9では、複数の車線にコイルが埋設されている例が示されている。そして
図9では、主コイル10の隣の組では無く、隣の車線のキャンセルコイル20Bが複数選択されている例が示されている。このようにキャンセルコイルを選択しても、同様に主コイル10が発生させている漏洩磁界を遠方において軽減させることが可能となる。
【0047】
また、キャンセルコイルの形状も変更可能である。例えば、主コイルを取り囲むようにキャンセルコイルを形成してもよい。
【0048】
図10は、キャンセルコイルの形状の変形例を示す図である。磁界発生装置は、
図10に示したように、主コイル10を取り囲むキャンセルコイル20を形成し、主コイル10及びキャンセルコイル20の組を複数有してもよい。そして
図10では、磁界を発生させている主コイル10の隣の組(B)、(D)では無く、さらに隣の組(A)、(E)のキャンセルコイル20を用いる例を示している。このようにキャンセルコイルを形成し、キャンセルコイルを選択しても、同様に主コイル10が発生させている漏洩磁界を遠方において軽減させることが可能となる。
【0049】
ここまでは、主コイルの他にキャンセルコイルを設けた例を示したが、本発明は係る例に限定されるものではない。例えば、キャンセルコイルを設けずに、電気自動車1へ給電するための磁界を発生させていない主コイルを、ここまで述べてきたキャンセルコイルとして利用してもよい。
【0050】
図11は、磁界発生装置の変形例を示す図である。
図11に示したのは、磁界発生装置を構成する複数の主コイル10が車両の走行方向に沿って道路に埋設されている例である。
【0051】
図11では、(C)の位置にある主コイル10が、電気自動車1へ給電するための磁界を発生させているコイルであり、(B)及び(D)の位置にある主コイル10が、(C)の位置にある主コイル10が発生させている漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させるコイルである。すなわち、(C)の位置にある主コイル10と、(B)及び(D)の位置にある主コイル10とでは、異なる磁界を発生させるような電圧が印加される。
【0052】
このように、キャンセルコイルを設けない場合であっても、主コイル10が発生させている漏洩磁界を遠方において軽減させることが可能となる。
【0053】
図12は、磁界発生装置の変形例を示す図である。
図12に示したのは、磁界発生装置を構成する複数の主コイル10が車両の走行方向に沿って道路に埋設されており、さらに主コイル10の列に隣接して複数のキャンセルコイル20が車両の走行方向に沿って道路に埋設されている例である。
【0054】
図12では、1つの主コイル10が電気自動車1へ給電するための磁界を発生させており、3つのキャンセルコイル20が、主コイル10が発生させている漏洩磁界を打ち消す磁界を発生させている。このように、主コイル10の列とキャンセルコイル20の列を分ける場合であっても、主コイル10が発生させている漏洩磁界を遠方において軽減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
1 電気自動車
10 主コイル
20、20A、20B キャンセルコイル