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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168725
(43)【公開日】2022-11-08
(54)【発明の名称】発光装置、灯具及び街路灯
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20221031BHJP
   F21S 8/08 20060101ALI20221031BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20221031BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/63 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/64 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20221031BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20221031BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221031BHJP
【FI】
H01L33/50
F21S8/08 120
F21V9/30
C09K11/08 J
C09K11/63
C09K11/64
C09K11/59
C09K11/61
C09K11/66
C09K11/67
C09K11/62
C09K11/80
C09K11/79
F21Y115:10 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074392
(22)【出願日】2021-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 美佳
(72)【発明者】
【氏名】藤尾 多茂
【テーマコード(参考)】
4H001
5F142
【Fターム(参考)】
4H001CA02
4H001CA05
4H001XA01
4H001XA03
4H001XA07
4H001XA08
4H001XA09
4H001XA11
4H001XA13
4H001XA14
4H001XA19
4H001XA20
4H001XA21
4H001XA31
4H001XA37
4H001XA38
4H001XA39
4H001XA55
4H001XA56
4H001XA57
4H001XA64
4H001XA65
4H001XA71
4H001XB32
4H001XB41
4H001XB42
4H001YA25
4H001YA58
4H001YA63
5F142AA25
5F142BA24
5F142BA32
5F142CA02
5F142CA11
5F142CC26
5F142CD02
5F142CD18
5F142CG03
5F142CG23
5F142CG24
5F142CG26
5F142CG43
5F142DA03
5F142DA12
5F142DA14
5F142DA22
5F142DA32
5F142DA43
5F142DA45
5F142DA53
5F142DA54
5F142DA73
5F142DB16
5F142FA24
5F142GA21
5F142HA01
5F142HA05
(57)【要約】
【課題】散乱が抑制される光を発する発光装置、灯具及び街路灯を提供する。
【解決手段】400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価指数Raが70以上であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の輝度をLとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、式前記輝度Lに対する前記実効放射輝度Bの第1散乱度指数B/Lが0.151以下である光を発する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価指数Raが70以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、
CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の輝度をLとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、下記式(1)により定義される、前記輝度Lに対する前記実効放射輝度Bの第1散乱度指数B/Lが0.151以下である光を発する、発光装置。
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Dc(λ)はレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【請求項2】
400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、
570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、
前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが70以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、
300nm以上800nm以下の範囲における発光装置の発光の放射輝度をAとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、下記式(2)により定義される、前記放射輝度Aに対する前記実効放射輝度Bの第2散乱度指数B/Aが0.060以下である光を発する、発光装置。
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【請求項3】
前記第1蛍光体は、前記第1蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が3nm以上120nm以下の範囲内である、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1蛍光体が、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、下記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(1C)で表される組成を有するフッ化物蛍光体、及び下記式(1C)とは組成が異なる下記式(1C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の発光装置。
Si:Eu (1A)
(式(1A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (1B)
(式(1B)中、q、s、t、u及びvは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (1C)
(式(1C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (1C’)
(式(1C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
【請求項5】
480nm以上570nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第2蛍光体は、前記第2蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が20nm以上125nm以下の範囲内である、請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第2蛍光体が、下記式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、及び下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項5又は6に記載の発光装置。
Ln (Al1-aGa12:Ce (2A)
(式(2A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、aは、0≦a≦0.5を満たす。)
LaLn Si:Ce (2B)
(式(2B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モル中に含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
【請求項8】
前記第1蛍光体及び前記第2蛍光体の総量に対する前記第1蛍光体の含有量が5質量%以上95質量%以下の範囲内である、請求項5から7のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項9】
黒体放射軌跡からの色偏差Duvがマイナス0.008以上プラス0.008以下の範囲内の光を発する、請求項1から8のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項10】
400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対して、650nm以上750nm以下の第2放射輝度が50%以下である光を発する、請求項1から9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の発光装置を備えた灯具。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の発光装置を備えた街路灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、灯具及び街路灯に関する。
【背景技術】
【0002】
街路灯や道路照明灯等の屋外に設置される灯具の光源は、白熱電球よりも寿命が長く、高効率であることから、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等のHIDランプが多く用いられている。これらのランプを用いた光源は、発光材料に水銀を用いており、水銀に関する水俣条約の規制に伴い、安全な発光材料を用いる照明器具への代替が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のLED光源を備えた光源ユニットと、反射面を有する略箱形状の反射ユニットと、を備え、光源からの光と、光源からの光を反射面で反射させた反射光との両方の光を道路に照射する街路灯が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-038826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
屋外で使用される灯具からの発光は、散乱が抑制されることが求められる場合がある。屋外で使用される灯具は、屋外に設置される街路灯や道路照明灯以外にも、例えばヒトの頭に装着可能なヘッドライト、懐中電灯、又はLEDを使用した携帯用ランタンのような屋外での使用が想定される灯具が挙げられる。また、屋内であっても出入口付近や窓際等の屋外に近い場所での使用が想定される灯具にも、散乱を抑制することが求められる場合もある。
本発明の一態様は、より散乱が抑制される光を発することができる発光装置、灯具及び街路灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価指数Raが70以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の輝度をLとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、下記式(1)により定義される、前記輝度Lに対する前記実効放射輝度Bの第1散乱度指数B/Lが0.151以下である光を発する、発光装置である。
【0007】
【数1】
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Dc(λ)はレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【0008】
第2態様は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが70以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、300nm以上800nm以下の範囲における発光装置の発光の放射輝度をAとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、下記式(2)により定義される、前記放射輝度Aに対する前記実効放射輝度Bの第2散乱度指数B/Aが0.060以下である光を発する、発光装置である。
【0009】
【数2】
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【0010】
第3態様は、前記発光装置を備えた灯具である。
【0011】
第4態様は、前記発光装置を備えた街路灯である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、より散乱が抑制される光を発する発光装置、灯具及び街路灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、非特許文献2に開示されているCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)である。
図2図2は、波長300nmにおける散弾強度を1としたレイリー散乱の強度曲線Dc(λ)を示す図である。
図3A図3Aは、CIE1931色度図を示し、CIE1931色度図上のスペクトル軌跡及び純紫軌跡内の黒体(Black Body)放射軌跡(Duvが0.000)と、黒体放射軌跡から色偏差を示す図である。
図3B図3Bは、図2Aの一部拡大図を示し、CIE1931色度図における色度座標のx値が0.300以上0.600以下及びy値が0.250以上0.500以下の範囲の黒体放射軌跡(Duvが0.000)、各相関色温度における黒体放射軌跡からの色偏差(Duv:-0.020、-0.010、-0.008、+0.008、+0.010、+0.020)の各軌跡を示す図である。
図4図4は、第1構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図5図5は、第1構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図6図6は、第2構成例の発光装置の一例を示す概略斜視図である。
図7図7は、第2構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図8図8は、第3構成例の発光装置の一例を示す概略斜視図である。
図9図9は、第3構成例の発光装置の一例を示す概略断面図である。
図10図10は、街路灯の一例を示す図である。
図11図11は、実施例1の発光装置、比較例1の発光装置の分光放射輝度を示す図である。
図12図12は、実施例2の発光装置、比較例1の発光装置の分光放射輝度を示す図である。
図13図13は、実施例3の発光装置、比較例1の発光装置の分光放射輝度を示す図である。
図14図14は、実施例4の発光装置、比較例2の発光装置の分光放射輝度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の発光装置、灯具及び街路灯に限定されない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に限定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。半値全幅は、発光スペクトルにおいて最大の発光強度の50%の発光強度を示す発光ピークの波長幅を意味する。
【0015】
第1実施形態に係る発光装置は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価指数Raが70以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、CIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の輝度をLとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、下記式(1)により定義される、前記輝度Lに対する前記実効放射輝度Bの第1散乱度指数B/Lが0.151以下である光を発する。
【0016】
【数3】
(式(1)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、V(λ)はCIE(国際照明委員会)で規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線であり、Dc(λ)はレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【0017】
光と微粒子の相互作用によって生じる光の散乱は、光の波長λと微粒子の大きさDとの相対関係で決定される。空気中に含まれる微粒子の大きさDは光の波長λよりもはるかに小さい。レイリー散乱は、光の波長よりも小さいサイズの粒子による光の散乱である。空気中において、光は波長が短いほど散乱されやすい。光の散乱が抑制されていれば、光を遠くまで到達させることができる。光を遠くまで到達させることができる発光装置は、例えば100m程度の比較的遠い前方を照らすことができ、屋外で使用される灯具や、屋外に近い屋内で使用される灯具に好適に用いることができる。
【0018】
発光装置の発光の輝度Lは、下記式(3)によって導き出される。発光装置の発光の輝度Lは、300nm以上800nm以下の範囲における発光装置の分光放射輝度S(λ)と、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)の積分値である。
【0019】
【数4】
【0020】
非特許文献2には、CIE1931表色系の側光システムで用いられているヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)が開示されている(非特許文献2:小林正自等、「ヘッドランプ光源の分光分布が不快グレアに与える影響に関する研究」、社団法人自動車技術会 学術講演会前刷集、No.5から10、p9からp14)。図1は、非特許文献2に開示されているCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)である。図1は、CIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)のピークトップを1とした値である。
【0021】
図2は、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線Dc(λ)を示す。
【0022】
発光装置の発光の実効放射輝度Bは、下記式(4)によって導き出される。発光装置の発光の実効放射輝度Bは、300nm以上800nm以下の範囲における、散乱強度曲線Dc(λ)と発光装置の分光放射輝度S(λ)の積分値である。
【0023】
【数5】
【0024】
発光装置の発光の第1散乱度指数B/Lは、300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の輝度Lに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度Bの比である。第1散乱度指数B/Lは、ヒトの明所視標準比視感度を考慮した発光装置の発光の散乱の程度を表す。
【0025】
発光装置の発光の第1散乱度指数B/Lが0.151以下であれば、ヒトの明所視標準比視感度を考慮した場合に、散乱が抑制される光が発光装置から発せられる。発光装置の発光の第1散乱度指数B/Lが0.151を超えると、散乱が抑制されず、光を遠方まで到達させることが難しくなる。発光装置の発光の第1散乱度指数B/Lは、0.150以下であることが好ましく、0.149以下であることがより好ましい。発光装置の発光は、レイリー散乱を考慮すると、第1散乱度指数B/Lが0.01以上でもよく、0.02以上でもよく、0.05以上でもよく、0.10以上でもよく、0.12以上でもよい。
【0026】
第2実施形態に係る発光装置は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子と、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と、を備えた発光装置であり、前記発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価指数Raが70以上であり、前記発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の放射輝度をAとし、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度をBとしたとき、下記式(2)により定義される、前記放射輝度Aに対する前記実効放射輝度Bの第2散乱度指数B/Aが0.060以下である光を発する。
【0027】
【数6】
(式(2)中、S(λ)は発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)はレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線である。)
【0028】
発光装置の発光の放射輝度Aは、下記式(5)によって導き出される。式(5)中のS(λ)は、発光装置の発光の分光放射輝度である。
【0029】
【数7】
【0030】
発光装置の発光の第2散乱度指数B/Aは、300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の放射輝度Aに対する、波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線を考慮した300nm以上800nm以下の範囲の発光装置の発光の実効放射輝度Bの比である。第2散乱度指数B/Aは、ヒトの明所視標準比視感度を考慮せずに、発光装置の発光の散乱の程度を表す。
【0031】
発光装置の発光の第2散乱度指数B/Aが0.060以下であれば、ヒトの明所視標準比視感度を考慮しない場合であっても、散乱が抑制された光が発光装置から発せられる。発光装置の発光の第2散乱度指数B/Aが0.060を超えると、散乱が抑制されず、光を遠方まで到達させることが難しくなる。発光装置の発光の第2散乱度指数B/Aは、0.059以下であることが好ましく、0.058以下であることがより好ましい。発光装置の発光は、レイリー散乱を考慮すると、第2散乱度指数B/Aが0.010以上でもよく、0.020以上でもよく、0.030以上でもよい。
【0032】
街路灯、道路照明灯等の屋外で使用される灯具の光源として用いられている高圧ナトリウムランプは、カタログ値において相関色温度が2000Kから2500K程度であり、黄色成分乃至橙色成分が多い光を発する。屋外で使用される灯具の光源には、光束やエネルギー等の特性によって、HIDランプ、ハロゲンランプ、LEDを用いた発光装置等の光源が用いられる。
【0033】
発光装置は、相関色温度が1950K以下の光を発する。発光装置は、例えば高圧ナトリウムランプが発する光と同程度からやや低い相関色温度の光を発する。発光装置が発する光の相関色温度が1950K以下であると、高圧ナトリウムランプを光源とする街路灯、道路照明灯等の屋外で使用される灯具の光源として、発光装置が置き換えられた場合であっても、違和感の感じさせない光が発せられる。発光装置から発せられる光の相関色温度は、1920K以下でもよく、1900K以下でもよい。発光装置から発せられる光は、例えば屋外に設置される灯具から発せられる光としてヒトに違和感を感じさせないために、相関色温度は、1000K以上であることが好ましく、1200Kでもよく、1500K以上でもよく、1700K以上でもよい。
【0034】
発光装置の発光の平均演色評価数Raは、70以上であればよく、75以上でもよく、80以上でもよく、85以上でもよく、90以上でもよい。発光装置の発光の平均演色評価数は、JIS Z8726に準拠して測定することができる。発光装置の発光の平均演色評価数Raの値が100に近づくほど基準光源に近似した演色性となる。演色性は、照射物の見え方の程度を表す。発光装置の発光の平均演色評価数Raが70以上であれば、一般作業を行う工場、オフィス、学校でも十分な演色性を有する光が発せられる。発光装置は、平均演色評価数Raが99以下であってもよい。
【0035】
発光装置の発光の特殊演色評価数R9は、赤色を評価する指標である。街路灯、道路照明灯等の屋外又は屋内であっても屋外に近い場所に設置される灯具に用いられる発光装置は、赤色を確認する必要性が低い場合が多い。発光装置の発光の特殊演色評価数R9は、マイナスの数値であってもよい。発光装置の発光の特殊演色評価数R9は、マイナス(-)150以上プラス(+)99以下の範囲内でもよく、-140以上+98以下の範囲内でもよく、-135以上95以下の範囲内でもよい。
【0036】
発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、100nm以下でもよく、95nm以下でもよく、90nm以下でもよく、3nm以上でもよく、40nm以上でもよく、60nm以上でもよく、70nm以上でもよい。発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が大きいと、ヒトが感知し難い長波長側の光の成分が大きくなる、もしくは空気中の微粒子で散乱されやすい短波長側の光の成分が大きくなる傾向がある。長波長側の光の成分が多くなると、発光装置から発せられ光の輝度が低下する傾向がある。短波長側の光の成分が多くなると、光が遠方まで届きにくい傾向がある。また、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が小さいと、特定の波長範囲の光の成分が多くなる傾向がある。発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピークが短波長側にある場合には、空気中の微粒子の影響を受けやすく散乱しやすい短波長側の発光が抑制されず、散乱を抑制することが難しくなる。また、発光装置の発光スペクトルにおいて、最大の発光強度を有する発光ピークが長波長側にあり、ヒトが感知し難い長波長側の光の成分が大きくなると、輝度の低下を抑制することが難しくなる。散乱が抑制される光を発する発光装置を提供するために、発光装置は、発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であることが好ましい。
【0037】
発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅は、発光装置に備えられる第1蛍光体の発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅又は第2蛍光体の発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅よりも狭くなる場合がある。例えば、それぞれ異なる波長範囲に発光ピーク波長を有する第1蛍光体と第2蛍光体を備える場合、第1蛍光体の発光スペクトルと第2蛍光体の発光スペクトルが重なる部分の発光強度が変化し、その結果、発光装置から発せられる混色光の発光スペクトルは、第1蛍光体の発光スペクトル又は第2蛍光体の発光スペクトルとは異なり、第1蛍光体の発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅又は第2蛍光体の発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅よりも、狭くなる場合がある。
【0038】
発光装置は、発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピーク波長が570nm以上680nm以下の範囲内にあることが好ましく、575nm以上680nm以下の範囲内でもよく、575nm以上670nm以下の範囲内でもよい。発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピーク波長の範囲は、第1蛍光体の発光ピーク波長の範囲と重複していてもよい。発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークは、第1蛍光体の発光に起因するものであってもよい。
【0039】
発光素子
発光素子は、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。発光素子の発光ピーク波長は、420nm以上480nm以下の範囲内にあることが好ましく、さらに440nm以上460nm以下の範囲内にあってもよい。これにより、発光装置は、屋外を照らす場合に違和感を感じさせない相関色温度を有し、屋外を照らす光に要求される演色性を満たし、散乱が抑制される光を発する。発光素子の発光の少なくとも一部が第1蛍光体の励起光として利用され、第2蛍光体を含む場合は、第2蛍光体の励起光として利用される。また、発光素子の発光の一部が発光装置から発せられる光として利用される。発光素子の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅は、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。発光素子は、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることが好ましい。これにより、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0040】
第1蛍光体
発光装置は、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を備える。第1蛍光体は、400nm以上490nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光素子の発光によって励起され、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する。第1蛍光体は、575nm以上670nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、580nm以上660nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。第1蛍光体は、第1蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、3nm以上120nm以下の範囲内であることが好ましい。第1蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する半値全幅は、3nm以上15nm以下の範囲内であるか、60nm以上120nm以下の範囲内であることが好ましい。例えば屋外に設置される灯具として違和感を感じさせない相関色温度を有し、屋外に設置される灯具に要求される演色性を満たし、散乱が抑制される光を発するために、第1蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅は前記範囲内であることが好ましい。
【0041】
第1蛍光体は、下記式(1A)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、下記式(1B)で表される組成を有する第2窒化物蛍光体、下記式(1C)で表されるフッ化物蛍光体、及び下記式(1C)とは組成が異なる下記式(1C’)で表される組成を有するフッ化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。発光装置は、第1蛍光体を含むことにより、1950K以下の相関色温度であり、平均演色評価数Raが70以上であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、第1散乱度指数B/Lが0.151以下である、散乱が抑制される光を発することができる。また、発光装置は、第1蛍光体を含むことにより、第2散乱度指数B/Aが0.060以下である散乱が抑制される光を発することができる。
Si:Eu (1A)
(式(1A)中、Mは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むアルカリ土類金属元素である。)
SrCaAlSi:Eu (1B)
(式(1B)中、q、s、t、u、vは、それぞれ0≦q<1、0<s≦1、q+s≦1、0.9≦t≦1.1、0.9≦u≦1.1、2.5≦v≦3.5を満たす。)
[M 1-bMn4+ ] (1C)
(式(1C)中、Aは、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH から成る群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもKが好ましい。Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Geが好ましい。bは、0<b<0.2を満たし、cは、[M 1-bMn4+ ]イオンの電荷の絶対値であり、dは、5<d<7を満たす。)
A’c’[M1-b’Mn4+ b’d’] (1C’)
(式(1C’)中、A’は、K、Li、Na、Rb、Cs及びNH からなる群から選択される少なくとも1種を含み、その中でもKが好ましい。M’は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含み、その中でもSi、Alが好ましい。b’は、0<b’<0.2を満たし、c’は、[M1-b’Mn4+ b’d’]イオンの電荷の絶対値であり、d’は、5<d’<7を満たす。)
本明細書において、蛍光体の組成を表す式中、コロン(:)の前は母体結晶及び蛍光体の組成1モル中の各元素のモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。
【0042】
第1蛍光体は、フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第1硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。フルオロジャーマネート蛍光体は、例えば、下記式(1D)で表される組成を有する。第4窒化物蛍光体は、例えば、下記式(1E)で表される組成を有する。第1硫化物蛍光体は、例えば、下記式(1F)で表される組成を有する。
(i-j)MgO・(j/2)Sc・kMgF・mCaF・(1-n)GeO・(n/2)M :Mn (1D)
(式(1D)中、MはAl、Ga及Inからなる群から選択される少なくとも1種である。i、j、k、m、n及びzはそれぞれ、2≦i≦4、0≦j<0.5、0<k<1.5、0≦m<1.5、0≦n<0.5を満たす。)
v2 w2Al3-y2Siy2z2:M (1E)
(式(1E)中、Mは、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、Mは、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素であり、v2、w2、y2及びz2は、それぞれ0.80≦v2≦1.05、0.80≦w2≦1.05、0≦y2≦0.5、3.0≦z2≦5.0を満たす。)
(Ca,Sr)S:Eu (1F)
本明細書において、蛍光体の組成を示す式中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、これら複数の元素のうち少なくとも1種の元素を組成中に含むことを意味し、複数の元素から2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0043】
式(1D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体体は、下記式(1d)で表される組成を有していてもよい。
3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn (1d)
【0044】
式(1E)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体体は、下記式(1e)で表される組成を有していてもよい。
v2 w2 x2Al3-y2Siy2z2 (1e)
(式(1e)中、M、M及びMは、それぞれ式(1E)のM、M及びMと同義であり、v2、w2、y2及びz2は、それぞれ式(1E)のv2、w2、y2及びz2と同義であり、x2は、0.001<x2≦0.1を満たす。)
【0045】
フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第1硫化物蛍光体は、570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは600nm以上630nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。フルオロジャーマネート蛍光体、第4窒化物蛍光体、及び第1硫化物蛍光体は、第1蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、例えば5nm以上100nm以下であり、好ましくは6nm以上90nm以下である。
【0046】
第1実施形態の発光装置及び第2実施形態の発光装置は、少なくとも1種の第1蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上の第1蛍光体を含んでいてもよい。発光装置は、第1蛍光体を含むことにより、屋外で使用される場合又は屋内であっても屋外に近い場所で使用される場合に、違和感を感じさせない1950K以下の相関色温度であり、平均演色評価数Raが70以上であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、第1散乱度指数B/Lが0.151以下である散乱が抑制される光を発することができる。また、発光装置は、前述の第1蛍光体を含むことにより、1950K以下の相関色温度であり、平均演色評価数Raが70以上であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、第2散乱度指数B/Aが0.060以下である散乱が抑制される光を発することができる。
【0047】
第1実施形態の発光装置又は第2実施形態の発光装置は、第1蛍光体として、式(1D)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体、式(1E)で表される組成を有するフルオロジャーマネート蛍光体、式(1F)で表される組成を有する第4窒化物蛍光体、及び式(1G)で表される第1硫化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。第1蛍光体は、少なくとも1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上の蛍光体を含んでいてもよい。
【0048】
発光装置に含まれる第1蛍光体は、発光装置の形態等によって含有量が変化する。第1蛍光体が、発光装置の波長変換部材に含まれる場合、波長変換部材は、蛍光体と透光性材料を含むことが好ましい。波長変換部材は、蛍光体と透光性材料を含む波長変換体を備えていてもよい。波長変換部材に含まれる蛍光体は、透光性材料100質量部に対して、蛍光体の総量が10質量部以上900質量部以下の範囲内でもよく、15質量部以上850質量部以下の範囲内でもよく、20質量部以上800質量部以下の範囲内でもよい。蛍光体の総量は、発光装置に第1蛍光体のみが含まれ、第1蛍光体以外の他の蛍光体を含まない場合には、第1蛍光体の合計量をいう。蛍光体の総量は、発光装置に第1蛍光体及び第2蛍光体が含まれる場合は、第1蛍光体及び第2蛍光体の合計量をいう。
【0049】
発光装置が後述する第2蛍光体を備える場合には、発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量は、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して、5質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量が、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して5質量%以上95質量%以下の範囲内であれば、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが70以上であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、第1散乱度指数B/Lが0.151以下であり、散乱が抑制される光を発することができる。発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量が、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して5質量%以上95質量%以下の範囲内であれば、相関色温度が1950K以下であり、平均演色評価数Raが70以上であり、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が110nm以下であり、第2散乱度指数B/Aが0.060以下であり、散乱が抑制される光を発することができる。発光装置に含まれる第1蛍光体の含有量は、第1蛍光体及び第2蛍光体の総量に対して、8質量%以上80質量%以下の範囲内でもよく、10質量%以上70質量%以下の範囲内でもよく、11質量%以上60質量%以下の範囲内でもよい。
【0050】
第2蛍光体
発光装置は、480nm以上570nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を備えることが好ましい。第2蛍光体は、400nm以上490nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する発光素子の発光によって励起され、480nm以上570nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発する。第2蛍光体は、発光素子によって励起され、490nm以上565nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよく、495nm以上560nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有していてもよい。第2蛍光体は、第2蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、20nm以上125nm以下の範囲内であることが好ましく、25nm以上124nm以下の範囲内であってもよく、30nm以上123nm以下の範囲内であってもよい。例えば屋外で使用される発光装置又は屋内であっても屋外に近い場所で使用される発光装置として違和感のない相関色温度であり、一般作業を行う工場、オフィス、学校でも十分な演色性を有し、散乱が抑制される光を発するために、第2蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅は前記範囲内であることが好ましい。
【0051】
第2蛍光体は、下記式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、及び下記式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
Ln (Al1-aGa12:Ce (2A)
(式(2A)中、Lnは、Y、Gd、Tb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、aは、0≦a≦0.5を満たす。)
LaLn Si:Ce (2B)
(式(2B)中、Lnは、Y及びGdからなる群から選択される少なくとも1種を必須として含み、Sc及びLuからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、組成1モルに含まれるLn元素を100モル%としたときに、Lnに含まれるY及びGdの合計が90モル%以上であり、w、x、y及びzは、1.2≦w≦2.2、0.5≦x≦1.2、10≦y≦12.0、0.5≦z≦1.2、1.80<w+x<2.40、2.9≦w+x+z≦3.1を満たす。)
式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体及び式(2B)で表される組成を有する第3窒化物蛍光体は、蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、例えば90nm以上、好ましくは100nm以上、より好ましくは110nm以上であり、また例えば125nm以下、好ましくは124nm以下、より好ましくは123nm以下である。
【0052】
第2蛍光体は、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及びアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体は、例えば、ストロンチウムを少なくとも含み、ユウロピウムで賦活される蛍光体であり、例えば、下記式(2C)で表される組成を有する。またアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、例えば、カルシウムと塩素を少なくとも含み、ユウロピウムで賦活される蛍光体であり、例えば、下記式(2D)で表される組成を有する。
SrAl1425:Eu (2C)
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu (2D)
式(2C)中、Srの一部はMg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及び式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、480nm以上520nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは485nm以上515nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。
式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体及び式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体は、蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、例えば30nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、また例えば80nm以下、好ましくは70nm以下である。
【0053】
第2蛍光体は、βサイアロン蛍光体、第2硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、及びアルカリ土類金属シリケート系蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。βサイアロン蛍光体は、例えば、下記式(2E)で表される組成を有する。第1硫化物蛍光体は、例えば、下記式(2F)で表される組成を有する。スカンジウム系蛍光体は、例えば、下記式(2G)で表される組成を有する。アルカリ土類金属シリケート系蛍光体は、例えば、下記式(2H)で表される組成又は下記式(2J)で表される組成を有する。
Si6-gAl8-g:Eu(0<g≦4.2) (2E)
(Sr,M)Ga:Eu (2F)
(式(2F)中、Mは、Be、Mg、Ca、Ba及びZnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。)
(Ca,Sr)Sc:Ce (2G)
(Ca,Sr)(Sc,Mg)Si12:Ce (2H)
(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu (2J)
【0054】
βサイアロン蛍光体、第2硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、及びアルカリ土類金属シリケート系蛍光体は、520nm以上580nm未満の範囲内に発光ピーク波長を有し、好ましくは525nm以上565nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する。βサイアロン蛍光体、第2硫化物蛍光体、スカンジウム系蛍光体、及びアルカリ土類金属シリケート系蛍光体は、第2蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長を有する発光ピークの半値全幅が、例えば20nm以上、好ましくは30nm以上であり、また例えば120nm以下、好ましくは115nm以下である。
【0055】
第2蛍光体は、式(2A)で表される組成を有する希土類アルミン酸塩蛍光体、式(2B)で表される組成を有する第1窒化物蛍光体、式(2C)で表される組成を有するアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、式(2D)で表される組成を有するアルカリ土類金属ハロシリケート蛍光体、式(2E)で表される組成を有するβサイアロン蛍光体、式(2F)で表される組成を有する第1硫化物蛍光体、式(2G)で表される組成を有するスカンジウム系蛍光体、式(2H)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリケート系蛍光体、及び式(2J)で表される組成を有するアルカリ土類金属シリケート系蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含んでいてもよい。第2蛍光体は、少なくとも1種の蛍光体を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0056】
発光装置は、黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvがマイナス(-)0.008以上プラス(+)0.008以下の光を発することが好ましい。色偏差Duvは、発光装置から発せられる光の黒体放射軌跡からの偏差であり、JIS Z8725に準拠して測定される。相関色温度が1950K以下の相関色温度が比較的低い場合であっても、CIE1931色度図上において黒体放射軌跡(Duvが0.000)からの色偏差Duvが-0.008以上+0.008以下の範囲内であると、照射物の色味が自然であり、違和感を感じさせない光が、発光装置から発せられる。発光装置は、1950K以下の黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvが-0.008以上+0.008以下の範囲内の光を発することが好ましく、Duvが-0.006以上+0.006以下の範囲内の光を発することがより好ましく、Duvが-0.003以上+0.003以下の範囲内である光を発することがさらに好ましい。1950K以下の黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvが-0.008を下回る光又は+0.008を上回る光が発せられると、照射物が自然の色味から外れ、ヒトに違和感を感じさせる場合がある。
【0057】
図3Aは、CIE1931色度図上のスペクトル軌跡及び純紫軌跡内の黒体(Black Body)放射軌跡(Duvが0.000)と、黒体放射軌跡から色偏差を示す図である。図3Bは、図3Aの一部拡大図を示し、CIE1931色度図における色度座標のx値が0.300以上0.600以下及びy値が0.250以上0.500以下の範囲の黒体放射軌跡、黒体放射軌跡からの色偏差である、Duvが-0.020、Duvが-0.010、Duvが-0.008、Duvが+0.008、Duvが+0.010、Duvが+0.020の軌跡を示す図である。図3Bにおいて、黒体放射軌跡(Duvが0.000)に交差する直線は、各相関色温度(CCTが1700K、1950K、2000K、2700K、3000K、4000K、5000K、6500K)における等色温度線である。発光装置から発せられる混色光の色偏差がDuvが0の場合は、黒体放射軌跡からの偏差がなく、黒体放射軌跡に近似する。
【0058】
発光装置は、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対して、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度が50%以下である光を発することが好ましい。発光装置の発光において、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対する650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度の割合をLpともいう。発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpが50%以下であると、発光装置から発せられる混色光の中でも、赤色成分の光が比較的少なく、輝度を低下させることなく、ヒトに違和感を感じさせずに散乱が抑制される光が発光装置から発せられる。発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpは、45%以下でもよく、40%以下でもよく、35%以下でもよく、30%以下でもよい。発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpは、良好な演色性を有する光を発するために、5%以上でもよく、8%以上でもよい。
【0059】
発光装置の発光の第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lpは、下記式(6)によって導き出される。発光装置の発光の400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対する、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度の割合Lpは、発光装置から発せられる混色光のうち、長波の赤色成分の光の割合を示す。
【0060】
【数8】
【0061】
発光装置は、第1相対散乱度指数RS1が99.9%以下である光を発することが好ましい。第1相対散乱度指数RS1は、基準第1散乱度指数B/Lを100%としたときの、相関色温度が1950K以下である光を発する発光装置の前記式(1)から導き出される第1散乱度指数B/Lの比率をいう。基準第1散乱度指数B/Lは、相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上の光を発する測定対象となる発光装置の中で最も低い数値の第1散乱度指数を、基準第1散乱度指数B/Lとすることができる。第1相対散乱度指数RS1が99.9%以下であると、相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上の光を発する発光装置よりも、散乱が抑制された光が発せられる。第1相対散乱度指数RS1は20%以上であることが好ましい。第1相対散乱度指数RS1が20%未満の光が発光装置から発せられると、散乱を抑制する効果は大きくなるが、光の色バランスが崩れ、演色性が低下する。平均演色評価数Raが70以上の演色性を満たすとともに、散乱を抑制するために、発光装置は、第1相対散乱度指数RS1が20%以上99.9%以下の範囲内である光を発することが好ましい。相関色温度が1950K以下である光を発する発光装置は、第1相対散乱度指数RS1が30%以上99.5%以下の範囲内でもよく、40%以上99.0%以下の範囲内でもよく、50%以上98.5%以下の範囲内でもよく、70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%以上でもよい。
【0062】
相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である光を発する発光装置の基準第1散乱度指数B/Lは、下記式(7)によって導き出すことができる。
【0063】
【数9】
(式(7)中、S(λ)は相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)及びV(λ)は式(1)と同義である。)
【0064】
第1相対散乱度指数RS1(%)は、下記式(8)によって導き出すことができる。
【0065】
【数10】
【0066】
発光装置は、第2相対散乱度指数RS2が99.9%以下である光を発することが好ましい。第2相対散乱度指数RS2は、基準第2散乱度指数B/Aを100%としたときの、相関色温度が1950K以下である光を発する発光装置の前記式(2)から導き出される第2散乱度指数B/Aの比率をいう。基準第2散乱度指数B/Aは、相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上の光を発する測定対象となる発光装置の中で最も低い数値の第2散乱度指数を、基準第2散乱度指数B/Aとすることができる。第2相対散乱度指数RS2が99.9%以下であると、ヒトの明所視標準比視感度を考慮しない場合においても、相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上の光を発する発光装置よりも、光の散乱を抑制することができる。第2相対散乱度指数RS2は20%以上であることが好ましい。第2相対散乱度指数RS2が20%未満の光が発光装置から発せられると、散乱を抑制する効果は大きくなるが、光の色バランスが崩れ、演色性が低下する。平均演色評価数Raが70以上の演色性を満たすとともに、散乱を抑制するために、発光装置は、第2相対散乱度指数RS2が20%以上99.9%以下の範囲内である光を発することが好ましい。相関色温度が1950K以下である光を発する発光装置は、第2相対散乱度指数RS2が30%以上99.8%以下の範囲内でもよく、40%以上99.5%以下の範囲内でもよく、50%以上99.0%以下の範囲内でもよく、70%以上98.0%以下の範囲内でもよく、80%以上95.0%以下の範囲内でもよく、90%以上でもよい。
【0067】
相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である光を発する発光装置の基準第2散乱度指数B/Aは、下記式(9)によって導き出すことができる。
【0068】
【数11】
(式(9)中、S(λ)は相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である発光装置の発光の分光放射輝度であり、Dc(λ)は式(2)と同義である。)
【0069】
第2相対散乱度指数RS2(%)は、下記式(10)によって導き出すことができる。
【0070】
【数12】
【0071】
発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図4及び図5は、第1構成例の発光装置を示す概略断面図である。
【0072】
発光装置100は、図4に示されるように、400nm以上490nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する発光素子10と、発光素子からの光により励起されて発光する第1蛍光体71と、を備える。
【0073】
発光装置100は、成形体41と、発光素子10と、波長変換部材21とを備える。成形体40は、第1リード2及び第2リード3と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体的に成形されてなるものである。成形体41は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第1リード2及び第2リード3とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は波長変換部材21により被覆されている。波長変換部材21は、例えば、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70と透光性材料を含む。波長変換部材21は、成形体40の凹部において、発光素子10と蛍光体70を覆う封止部材としての機能も有する。蛍光体70は、発光素子からの光により励起されて570nm以上680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体71を含む。発光素子10の正負一対の電極に接続された第1リード2及び第2リード3は、発光装置100を構成するパッケージの外方に向けて、第1リード2及び第2リード3の一部が露出されている。これらの第1リード2及び第2リード3を介して、外部から電力の供給を受けて発光装置100を発光させることができる。
【0074】
発光装置200は、図5に示されるように、蛍光体70が、480nm以上570nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体72を含むこと以外は、図4に示される発光装置100と同じであり、同一の部材には同一の符号を付した。
【0075】
第1構成例の発光装置における波長変換部材は、蛍光体と透光性材料とを含み、透光性材料が樹脂であることが好ましい。波長変換部材に用いる透光性材料は、樹脂、ガラス及び無機物からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、及びポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。無機物は、酸化アルミニウム及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。波長変換部材には、蛍光体と透光性材料の他に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられる。波長変換部材に含まれる蛍光体及び透光性材料以外のその他の成分の含有量は、その他の成分の合計の含有量で、透光性材料100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の範囲内とすることができ、0.1質量部以上45質量部以下の範囲内でもよく、0.5質量部以上40質量部以下の範囲内でもよい。
【0076】
第1構成例の発光装置の製造方法
第1構成例の発光装置の製造方法のを説明する。なお、詳細は、例えば特開2010-062272号公報の開示を参照することもできる。発光装置の製造方法は、成形体の準備工程と、発光素子の配置工程と、波長変換部材用組成物の配置工程と、樹脂パッケージ形成工程とを含むことが好ましい。成形体として、複数の凹部を有する集合成形体を用いる場合には、樹脂パッケージ形成工程後に、各単位領域の樹脂パッケージごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0077】
成形体の準備工程において、複数のリードを熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する成形体を準備する。成形体は、複数の凹部を含む集合基体からなる成形体であってもよい。
発光素子の配置工程において、成形体の凹部の底面に発光素子が配置され、発光素子の正負の電極が第1リード及び第2リードにワイヤにより接続される。
波長変換部材用組成物の配置工程において、成形体の凹部に波長変換部材用組成物が配置される。
樹脂パッケージ成形工程において、成形体の凹部に配置された波長変換部材用組成物を硬化させて、樹脂パッケージが形成され、発光装置が製造される。複数の凹部を含む集合体基体からなる成形体を用いた場合は、樹脂パッケージの形成工程後に、個片化工程において、複数の凹部を有する集合基体の各単位領域の樹脂パッケージごとに分離され、個々の発光装置が製造される。以上のようにして、図4又は図5に示す第1構成例の発光装置を製造することができる。
【0078】
図6は、第2構成例の発光装置を示す概略斜視図である。図7は、第2構成例の発光装置を示す概略断面図である。
【0079】
発光装置300は、図6及び図7に示されるように、支持体1と、この支持体1上に配置される発光素子10と、この発光素子10の上面に配置される蛍光体70を含む波長変換部材22と、波長変換部材22及び発光素子10の側方であって支持体1に配置された光反射部材43を備える。波長変換部材22の上面には、封止部材50を備える。封止部材50は、平面視が円形状で断面視が半円球状であるレンズ部51と、このレンズ部51の外周側に延出する鍔部52とを有する。レンズ部51は、平面視を円形状とし、断面視を半円球状としている。またレンズ部51の外周側には鍔部52を延出させている。
【0080】
波長変換部材22は、平面視において発光素子10よりも大きく形成されている。また、発光素子10の側面と光反射部材40の間に、発光素子10の側面及び波長変換部材22の一部に接する透光性部材30を設けている。透光性部材30は、発光素子10と波長変換部材22との間に設けられた、透光性接合部材32を含む。透光性接合部材32は、発光素子10と波長変換部材22を接合する接着材とすることができる。この透光性接合部材32は、その一部を、発光素子10の側面と波長変換部材22の発光素子10側の主面とで形成される隅部に、延在させてもよい。また、図7に示すように、延在された透光性接合部材32の断面形状は、光反射部材43の方向に広がる逆三角形とすることもできる。透光性部材30及び接合部材32は、透光性を有する樹脂が利用できる。支持体1は、上面に発光素子10や封止部材50等を実装するための部材である。支持体1は絶縁性の母材と、母材の表面に発光素子を実装する配線パターン等の導電部材4を備えている。光反射部材43は、透光性部材30、接合部材32及び波長変換部材22を被覆するための部材である。なお、第2構成例の発光装置及び後述する第2構成例の発光装置の製造方法の詳細は、例えば特開2020―57756号公報の開示を参照することもできる。
いる。
【0081】
第2構成例の発光装置の波長変換部材は、第1構成例の発光装置の波長変換部材と同様に、蛍光体と透光性材料とを含む。蛍光体は、発光素子からの光により励起されて570nm680nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第1蛍光体を含む。蛍光体は、発光素子からの光により励起されて480nm以上570nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する第2蛍光体を含んでいてもよい。透光性材料は、第1構成例の発光装置の波長変換部材に用いた透光性材料と同様の透光性材料を用いることができる。また、第2構成例の発光装置の波長変換部材は、蛍光体と透光性材料の他に、第1構成例の発光装置の波長変換部材と同様に、必要に応じてフィラー、着色剤、光拡散材を含んでいてもよい。
【0082】
第2構成例の発光装置の製造方法
第2構成例の発光装置の製造方法の一例を説明する。第2構成例の発光装置の製造方法は、発光素子の配置工程と、波長変換部材の準備工程と、透光性部材及び接合部材の形成工程と、光反射部材の配置工程と、封止部材の配置工程と、を含み、各単位領域ごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0083】
発光素子の配置工程は、予め用意された支持体に発光素子をフリップチップ実装する。波長変換部材の準備工程は、蛍光体と透光性材料を含む波長変換部材用組成物を硬化させて予め板状、シート状又は層状に形成し、発光素子上に配置可能な大きさに個片化して、板状、シート状又は層状の波長変換部材を準備する。透光性部材及び接合部材の形成工程は、発光素子の上面に透光性の接着材を塗布し、発光素子の上面に波長変換部材を接合させる。発光素子と波長変換部材の界面からはみ出た接着材が発光素子の側面から波長変換部材の周辺にかけて延在されて付着し、フィレット状をなして硬化され、透光性部材及び接合部材が形成される。光反射部材の配置工程は、支持体の上面において、波長変換部材及び透光性部材の側面を覆うように、白色の樹脂を配置して硬化させ、光反射部材を配置する。最後に、波長変換部材及び光反射部材の上面に封止部材を配置する。これによって第2構成例の発光装置を製造することができる。
【0084】
図8は、第3構成例の発光装置を示す概略斜視図である。図9は、第3構成例の発光装置を示す概略断面図である。
【0085】
発光装置400は、図8及び図9に示されるように、外観形状が略直方体である。発光装置400は、発光素子10と、被覆部材44と、蛍光体70を含む波長変換部材23と、を備える。発光素子10の側面と被覆部材44の間に、発光素子10の側面及び波長変換部材23の一部に接する透光性部材33を設けている。透光性部材33は、発光素子10と波長変換部材23とを接合する接着材とすることができる。被覆部材44は、発光素子10の下面と、電極12p、電極12nと、透光性部材33の側面と、波長変換部材23の下面を覆うように配置される。被覆部材44は、光反射性であり、発光素子10の側面を直接的又は間接的に被覆する。被覆部材44の外側面は、波長変換部材23の側面とともに、発光装置400の側面を構成する。被覆部材44の外側面と、波長変換部材23の側面とは、同一面とすることが好ましい。被覆部材44は、発光装置10の一対の電極12p、12nのそれぞれの少なくとも一部が露出するように被覆する。被覆部材44の下面は、発光装置400の下面の一部を構成する。なお、第3構成例の発光装置及びその製造方法の詳細は、例えば特開2019―9429号公報の開示を参照することもできる。
【0086】
第3構成例の発光装置の製造方法
第3構成例の発光装置の製造方法の概略を説明する。第3構成例の発光装置の製造方法は、波長変換部材の準備工程と、透光性部材及び発光素子の配置工程と、透光性部材の形成工程と、被覆部材の形成工程と、を含み、被覆部材の形成工程後に、電極の露出工程を含んでいてもよく、各単位領域ごとに分離する個片化工程を含んでいてもよい。
【0087】
波長変換部材の準備工程は、蛍光体と透光性材料を含む波長変換部材用組成物を硬化させて予め板状、シート状又は層状に形成する。透光性部材及び発光素子の配置工程は、波長変換部材の上面に透光性の接着材を塗布し、発光素子を配置する。透光性部材の形成工程は、発光素子と波長変換部材の界面からはみ出た接着材が発光素子の側面から波長変換部材の周辺にかけて延在されて付着し、フィレット状をなして硬化され、透光性部材が形成される。被覆部材の形成工程は、発光素子を埋設するように波長変換部材上に被覆部材を形成する。被覆部材の一部を除去することで、発光素子の電極を露出させる。必要に応じて、各各単位領域ごとに切断し、個片化する。これによって、第3構成例の発光装置を製造することができる。
【0088】
灯具
灯具は、上述した発光装置の少なくとも1種を備えていればよい。灯具は、上述した発光装置を備えて構成され、反射部材、保護部材、発光装置に電力を供給するための付属装置等をさらに備えていてもよい。灯具は複数の発光装置を備えていてもよい。灯具が複数の発光装置を備える場合、同一の発光装置を複数備えていてもよく、形態の異なる発光装置を複数備えていてもよい。また、複数の発光装置を個別に駆動して、個々の発光装置の明るさ等の調節が可能な駆動装置を備えていてもよい。灯具の使用形態としては、直付型、埋め込み型、吊り下げ型等のいずれであってもよい。灯具は、街路灯、港湾やトンネルなどの屋外の設置を想定した灯具であってもよく、ヘッドライト、懐中電灯、又はLEDを使用した携帯用ランタンのような屋外での使用が想定される灯具であってもよく、屋内であっても窓際等の屋外に近い場所に設置される灯具であってもよい。
【0089】
街路灯
街路灯は、上述した発光装置の少なくとも1種を備えていればよい。図10は、街路灯の一例を示す図である。街路灯1000は、歩道W又は車道Cに設置されるポールPと、発光装置Leの支持部Sとを備え、支持部Sには、発光装置Leの周囲を覆い、アクリル、ポリカーボネート、又はガラス等の発光装置Leが発した光の少なくとも一部を透過する光透過部Tを備えている。街路灯1000は、ポールPと一体となった支持部Sに設置された発光装置Leによって高所から低所を照らすことができる。街路灯は、図10に示す例に限定されない。
【0090】
街路灯は、支持部の高さを任意に設定できるポールを備えたポール型の街路灯のみならず、ポールの代わりにブラケットで支持部を支持するブラケット型の街路灯であってもよく、下方から上方を照らす投光型の街路灯であってもよく、支柱やブロック等の景観材に組み込まれる景観材組み込み型の街路灯であってもよい。
【実施例0091】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
各実施例及び比較例の発光装置には、以下の第1蛍光体及び/又は第2蛍光体を用いた。
【0093】
第1蛍光体
第1蛍光体として、表1に示すように、それぞれ異なる発光ピーク波長及び半値全幅を有し、式(1B)で表される組成に含まれる第2窒化物蛍光体SCASN-2、SCASN-3、SCASN-4、SCASN-6、式(1C)で表される組成に含まれるフッ化物蛍光体KSF、式(1B)(式(1B)中、q=0)で表される組成に含まれる第2窒化物蛍光体CASNを準備した。
【0094】
第2蛍光体
第1蛍光体として、表2に示すように、それぞれ異なる発光ピーク波長及び半値全幅を有し、式(2A)で表される組成に含まれる、LuAl12:Ceである希土類アルミン酸塩蛍光体であるLAG、式(2A)で表される組成に含まれる、Y(Al,Ga)12:Ce(aは、0<a≦0.5を満たす)である希土類アルミン酸塩蛍光体G-YAG1、G-YAG3及びG-YAG4と、式(2A)で表される組成に含まれる、YAl12:Ceである希土類アルミン酸塩蛍光体YAG1及びYAG2を準備した。
【0095】
蛍光体の発光スペクトルの測定
各蛍光体は、量子効率測定装置(大塚電子株式会社製、QE-2000)を用いて、励起波長450nmの光を各蛍光体に照射し、室温(約25℃)における発光スペクトルを測定し、各発光スペクトルから発光ピーク波長及び半値全幅を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
実施例1
第1構成例の発光装置200を製造した。第1構成例の発光装置200は、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む図5を参照することができる。
発光素子10は、発光ピーク波長が450nmである窒化物系半導体層が積層された発光素子10を用いた。発光素子10の大きさは、平面形状が約700mm四方の略正方形であり、厚さが約200mmである。
第1リード2及び第2リード3として、リードフレームを用い、第1リード2及び第2リード3をエポキシ樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する成形体41を準備した。
成形体41の凹部の底面に発光素子10を配置し、発光素子10の正負の電極と、第1リード2及び第2リード3をAu製のワイヤ60により接続した。
波長変換部材21を構成する透光性材料としてシリコーン樹脂を用いた。第1蛍光体71及び第2蛍光体72として表3に示す蛍光体を用いた。
波長変換部材用組成物は、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1850付K近になるように、表3に示すように第1蛍光体71及び第2蛍光体72を配合した。波長変換部材用組成物は、シリコーン樹脂100質量部に対してフィラーとして酸化アルミニウムを2質量部も配合した。次いで、準備した波長変換部材用組成物を成形体41の凹部に充填した。
成形体41の凹部内に充填した波長変換部材用組成物を150℃で3時間加熱して硬化させ、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む波長変換部材21を備えた樹脂パッケージを形成し、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0099】
実施例2
第1構成例の発光装置200を製造した。第1構成例の発光装置200は、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む図5を参照することができる。
波長変換部材の準備工程において、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1850付近になるように、蛍光体70の総量と、第1蛍光体71と第2蛍光体72の配合比率が表3に示す量となるように、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含有する波長変換部材用組成物を準備したこと以外は、実施例1と同様にして、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0100】
実施例3
第1構成例の発光装置200を製造した。第1構成例の発光装置200は、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む図5を参照することができる。
波長変換部材21を構成する透光性材料としてフェニルシリコーン樹脂を用いた。第1蛍光体71及び第2蛍光体72として表3に示す蛍光体を用いた。
波長変換部材用組成物は、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1850付K近になるように、表3に示すように第1蛍光体71及び第2蛍光体72を配合した。波長変換部材用組成物は、フェニルシリコーン樹脂100質量部に対してフィラーとして二酸化ケイ素を15質量部も配合した。次いで、準備した波長変換部材用組成物を成形体41の凹部に充填した。
成形体41の凹部内に充填した波長変換部材用組成物を150℃で4時間加熱して硬化させ、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む波長変換部材21を備えた樹脂パッケージを形成し、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0101】
実施例4
第3構成例の発光装置400を製造した。第3構成例の発光装置は、図8及び図9を参照することができる。
【0102】
波長変換部材の準備工程
波長変換部材23を構成する透光性材料としてシリコーン樹脂を用いた。第1蛍光体及び第2蛍光体は、表3に示す蛍光体を用いた。波長変換部材用組成物は、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体及び第2蛍光体を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1850K付近になるように、蛍光体70の総量と、第1蛍光体と第2蛍光体の配合比率が表3に示す量となるように第1蛍光体及び第2蛍光体を配合した。波長変換部材用組成物は、シリコーン樹脂100質量部に対してフィラーとして酸化アルミニウムを2質量部を配合した。次いで、準備した波長変換部材用組成物を180℃で2時間加熱してシート状に硬化させて、シート状の波長変換部材22を準備した。
【0103】
透光性部材及び発光素子の配置工程
透光性の接着材である、フェニルシリコーン樹脂を波長変換部材23の上面に塗布し、実施例1と同様の発光素子10を接合させて、さらに発光素子10と波長変換部材23の界面に透光性の接着材を塗布し、150℃、4時間硬化させて、発光素子10の側面から波長変換部材23の周辺かけて延在するように、フィレット状をなして硬化された透光性部材33を形成した。
【0104】
被覆部材の配置工程
被覆部材用組成物として、フェニルシリコーン樹脂と平均粒径(カタログ値)が0.25μmの酸化チタン粒子とを含み、フェニルシリコーン樹脂100質量部に対して酸化チタン粒子を60質量部含む光反射部材用組成物を準備した。波長変換部材23の上面において、波長変換部材23及び透光性部材33の側面を覆い、発光素子10を埋設するように、白色の樹脂である被覆部材用組成物に配置して、硬化させ、被覆部材44を形成した。被覆部材44の一部を除去することで、発光素子10の電極12p、12nを露出させた。発光素子10の平面形状よりも縦横に約0.195mm大きい、平面形状が約1.1mm四方の略正方形であり、波長変換部材33及び被覆部材44を含む全体の厚さが約350μmとなるように個片化し、相関色温度が1950K以下になる光を発する、第3構成例の発光装置400を製造した。
【0105】
比較例1
第2構成例の発光装置を製造した。第2構成例の発光装置は、図6及び図7を参照することができる。
波長変換部材の準備工程において、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が2200付近になるように、蛍光体70の総量と、第1蛍光体と第2蛍光体の配合比率が表3に示す量となるように、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含有する波長変換部材用組成物を準備したこと以外は、実施例4と同様にして、相関色温度が2200K以上になる光を発する、第3構成例の発光装置400を製造した。
【0106】
比較例2及び3
第1構成例の発光装置200を製造した。第1構成例の発光装置200は、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む図5を参照することができる。
波長変換部材の準備工程において、透光性材料100質量部に対して、発光素子10からの光と、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含む蛍光体70の光との混色光の相関色温度が1950付近になるように、蛍光体70の総量と、第1蛍光体と第2蛍光体の配合比率が表3に示す量となるように、第1蛍光体71及び第2蛍光体72を含有する波長変換部材用組成物を準備したこと以外は、実施例3と同様にして、相関色温度が1950Kを超えて2000K以下になる光を発する、第1構成例の発光装置200を製造した。
【0107】
各発光装置について、以下の測定を行った。結果を表3に示す。
【0108】
発光装置の発光スペクトル
各発光装置について、分光測光装置(PMA-12、浜松ホトニクス株式会社製)と積分球を組み合わせた光計測システムを用いて、発光スペクトルを測定した。各発光装置の発光スペクトルの測定は、室温(20℃から30℃)で行った。図11から図14は、各発光装置の発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)を記載した。図11から図13は、各発光装置の前記式(3)から導き出される輝度Lを同等の数値とした場合の各発光装置の発光スペクトルを記載した。図14は、各発光装置の発光スペクトル、各発光装置の前記式(5)から導き出される放射輝度Aを同等の数値とした場合の各発光装置の発光スペクトルを記載した。
【0109】
色度座標(x、y)、相関色温度(K)、色偏差Duv、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、半値全幅
各発光装置の発光スペクトルから、CIE1931のCIE色度図上の色度座標(x値、y値)と、JIS Z8725に準拠して相関色温度(CCT:K)及び色偏差Duvと、JIS Z8726に準拠して平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R9、及び半値全幅を測定した。
【0110】
第1放射輝度に対する第2放射輝度の割合Lp
各発光装置の発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)から、前記式(6)に基づき、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度を100%としたときの、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度の割合Lp(%)を算出した。
【0111】
第1散乱度指数B/L
各発光装置について測定した各発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)、図1から求められるCIEで規定されたヒトの明所視標準比視感度曲線V(λ)、図2から求められるレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線Dc(λ)を、前記式(1)に算入し、各発光装置の第1散乱度指数B/Lを算出した。
【0112】
第1相対散乱度指数RS1
相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である比較例1及び2の発光装置のうち、第1散乱度指数B/Lが最も低い数値である、比較例1の発光装置の第1散乱度指数を基準第1散乱度指数B/Lとした。基準第1輝度散乱度指数B/Lに対する各発光装置の第1散乱度指数B/Lの比である第1相対散乱度指数RS1を、式(8)に基づき算出した。
【0113】
第2散乱度指数B/A
各発光装置について測定した各発光スペクトル(分光放射輝度)S(λ)、図2から求められるレイリー散乱において波長300nmにおけるレイリー散乱の散乱強度を1としたときの波長に対する散乱強度曲線Dc(λ)を、式(2)に算入し、各発光装置の第2散乱度指数B/Aを算出した。
【0114】
第2相対散乱度指数RS2
相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である比較例1及び2の発光装置のうち、第2散乱度指数B/Aが最も低い数値である、比較例2の発光装置の第2輝度比を基準第2散乱度指数B/Aとした。基準第2散乱度指数B/Aに対する各発光装置の第2散乱度指数B/Aの比である第2相対散乱度指数RS2を、式(10)に基づき算出した。
【0115】
【表3】
【0116】
表1に示すように、実施例1から4に係る発光装置は、相関色温度が1950K以下であり、例えば高圧ナトリウムランプが発する光と同程度からやや低い相関色温度の光を発した。実施例1から4に係る発光装置は、例えば屋外で使用される灯具の光源として、高圧ナトリウムランプの代替として発光装置を用いた場合も、照射物の色味が自然であり、違和感を感じさせない光が発せられる。また、実施例1から4に係る発光装置は、発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が3nm以上110nm以下の範囲内であった。また、発光装置の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、570nm以上680nm以下の範囲内であった。発光装置は、発光装置の発光スペクトルにおける最大の発光強度を有する発光ピークの半値全幅が3nm以上110nm以下であるため、ヒトが感知し難い長波長側の光の成分を抑制することができた。また、実施例1から3に係る発光装置は、ヒトの明所視標準比視感度を考慮した前記式(1)から導き出される第1散乱度指数B/Lが0.151以下であり、散乱が抑制される光が発せられた。また、実施例4に係る発光装置は、ヒトの明所視標準比視感度を考慮しない場合であっても、前記式(2)から導き出される第2散乱度指数B/Aが0.060以下であり、散乱が抑制される光が発せられた。
【0117】
実施例1から4に係る発光装置は、黒体放射軌跡からの偏差である色偏差Duvが0.000である光を発し、相関色温度が1950K以下の光を発する場合においても、照射物の色味が自然であり、ヒトに違和感を感じさせない光が、発光装置から発せられた。
【0118】
実施例1から4に係る発光装置は、400nm以上750nm以下の範囲の第1放射輝度100%に対する、650nm以上750nm以下の範囲の第2放射輝度が割合Lpが50%以下である光を発した。実施例1から4に係る発光装置は、発光装置から発せられる混色光の中でも、赤色成分の光が比較的少なく、ヒトに違和感を感じさせない光が発せられた。
【0119】
実施例1から3に係る発光装置は、第1相対散乱度指数RS1が98.5%以下であり、相関色温度が1950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である光を発する発光装置よりも、散乱を抑制することができる光が発せられた。
【0120】
実施例4に係る発光装置は、第2相対散乱度指数RS2が92.1%であり、相関色温度が21950Kを超えて、平均演色評価数Raが70以上である光を発する発光装置よりも、散乱を抑制することができる光が発せられた。
【0121】
実施例1から4に係る発光装置は、平均演色評価数Raが70以上であり、一般作業を行う工場、オフィス、学校でも十分な演色性を有する光が発せられた。
【0122】
比較例1から3に係る発光装置は、高圧ナトリウムランプが発する光よりもやや高い相関色温度の光を発し、例えば屋外で使用される灯具の光源として、高圧ナトリウムランプに代替した場合に、照射物の色味が自然に見えず、違和感を感じさせる可能性があった。また、比較例1から3に係る発光装置は、第1散乱度指数B/Lが0.151を超える光を発し、ヒトの明所視標準視感度を考慮した場合に、散乱が抑制されていなかった。また、比較例1から3に係る発光装置は、第2散乱度指数B/Aが0.060を超える光を発し、ヒトの明所視標準比視感度を考慮しない場合においても、散乱が抑制されていなかった。
【0123】
図11から13に示すように、実施例1から3に係る発光装置の分光放射輝度は、空気中の微粒子で光が散乱されやすい短波長側の400nm以上500nm以下の範囲において、比較例1に係る発光装置の分光放射輝度よりも低くなった。
【0124】
図14に示すように、実施例4に係る発光装置の分光放射輝度は、空気中の微粒子で光が散乱されやすい、より短波長側の400nm以上470nm以下の範囲において、比較例2に係る発光装置の分光放射輝度よりも低くなった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の一態様の発光装置は、散乱が抑制された発光が求められる街路灯、港湾やトンネル等の屋外に設置する灯具、ヘッドライト、懐中電灯、又はLEDを使用した携帯用ランタンのような屋外での使用が想定される灯具の光源として、また、屋内であっても出入口や窓際等の屋外に近い場所に設置される灯具の光源として利用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1:支持体、2:第1リード、3:第2リード、4:導電部材、10:発光素子、12p、12n:電極、21、22、23:波長変換部材、30、33:透光性部材、32:透光性接合部材、41:成形体、42:樹脂部、43:光反射部材、44:被覆部材、50:封止部材、51:レンズ部、52:鍔部、60:ワイヤ、70:蛍光体、71:第1蛍光体、72:第2蛍光体、100、200、300、400:発光装置、1000:街路灯、C:車道、Le:光源、P:ポール、S:支持部、T:光透過部、W:歩道。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14