(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022168949
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素分離用アミン組成物
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20221101BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20221101BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20221101BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221101BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021074663
(22)【出願日】2021-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】迫田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕志
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002BA11
4D002BA12
4D002BA13
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002DA34
4D002DA35
4D002EA07
4D002EA08
4D002GA01
4D002GA02
4D002GB02
4D002GB08
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB07
4D020BC01
4D020BC02
4D020CB01
4D020CB08
4D020CB18
4D020CD10
4D020DA02
4D020DA03
4D020DB03
4D020DB06
4D020DB07
4G146JA02
4G146JC21
4G146JC28
4G146JD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低濃度の二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を取りきる能力が改良された、二酸化炭素分離用組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるアミン化合物と、例えばピペラジンなどのアミン化合物(2)を含む、二酸化炭素分離用組成物を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(1)」と称す。)と、下記一般式(2)で示されるアミン化合物を(以下、「アミン化合物(2)」と称す。)含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【化1】
[上記一般式(1)中、R
10、R
11、R
12、R
13及びR
14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
R
15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
【化2】
[上記一般式(2)中、R
4及びR
5は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数3~4のヒドロキシアルキル基を表す。
R
4とR
5は互いに結合して環を形成していてもよい。
R
6は、炭素数1~4のアルキレンを表す。]
【請求項2】
上記のアミン化合物(1)が、下記式
【化3】
で示される、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノールであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項3】
上記のアミン化合物(2)が、下記式
【化4】
で示される、ピペラジンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項4】
上記のアミン化合物(1)と上記のアミン化合物(2)の組成比率が、アミン化合物(1) 100重量部に対して、アミン化合物(2)が5~100重量部であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項5】
上記のアミン化合物(1)及び上記のアミン化合物(2)に加えて、さらにアルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(3)(ただし、アミン化合物(1)、及び(2)を除く)を含む請求項1乃至4のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に、さらに水を含み、当該水の濃度が水を含んだ二酸化炭素分離用組成物全体の30~95重量%であることを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【請求項7】
二酸化炭素を含むガスを、請求項1乃至6のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離するための二酸化炭素分離用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一例として、合成ガスからCO2を除去回収するための二酸化炭素分離用組成物に関する。
【0003】
水素と一酸化炭素を主成分とした合成ガスが、メタノールやオキソアルコール等の有用な化学工業用中間原料の製造原料として用いられている。
【0004】
前記の合成ガスは、例えば、原料炭化水素、水蒸気、炭酸ガスをニッケル系触媒に導入し、800~900℃程度の高温、20~30atm程度の高圧環境下で反応させて製造することができる。反応生成物として、主に、H2、CO、CO2、H2O、CH4を主成分とする改質ガスが得られ、当該改質ガスからCO2とH2Oが除去されたものが合成ガスとして利用される。このとき除去されたCO2は、合成ガスの製造原料として再利用される。
【0005】
引用文献2では、粗製合成ガス(改質ガス)からCO2を除去する方法として、メチルジエタノールアミンを用いた洗浄装置が用いられることを開示している。さらに、CO2が除去された合成ガスを深冷分離装置で処理することにより、重化学工業の基礎原料として重要な一酸化炭素を単離精製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-132651号公報
【特許文献2】特表2008-528423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のメチルジエタノールアミンを用いたCO2除去については、低濃度での二酸化炭素の吸収速度が低い、すなわち二酸化炭素を取りきる能力が十分ではなかった。このために微量CO2の深冷分離装置への流入が認められていた。このような微量CO2は深冷分離装置のコールドボックス内部で凝結し、機器やガス流路の閉塞に至るという問題があった(例えば、特許文献1)。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、公知の組成物よりも二酸化炭素を取りきる能力に優れた(低濃度での二酸化炭素の吸収速度が速い)二酸化炭素分離用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、後述する組成物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下に示すとおりの二酸化炭素分離用組成物である。
【0011】
[1] 下記一般式(1)で示されるアミン化合物(以下、「アミン化合物(1)」と称す。)と、下記一般式(2)で示されるアミン化合物を(以下、「アミン化合物(2)」と称す。)含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【0012】
【0013】
[上記一般式(1)中、R10、R11、R12、R13及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
R15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。]
【0014】
【0015】
[上記一般式(2)中、R4及びR5は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数3~4のヒドロキシアルキル基を表す。
R4とR5は互いに結合して環を形成していてもよい。
R6は、炭素数1~4のアルキレンを表す。]
[2] 上記のアミン化合物(1)が、下記式
【0016】
【0017】
で示される、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノールであることを特徴とする[1]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0018】
[3] 上記のアミン化合物(2)が、下記式
【0019】
【0020】
で示される、ピペラジンであることを特徴とする[1]又は[2]に記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0021】
[4] 上記のアミン化合物(1)と上記のアミン化合物(2)の組成比率が、アミン化合物(1) 100重量部に対して、アミン化合物(2)が5~100重量部であることを特徴とする、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0022】
[5] 上記のアミン化合物(1)及び上記のアミン化合物(2)に加えて、さらにアルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(3)(ただし、アミン化合物(1)、及び(2)を除く)を含む上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物。
【0023】
[6] 上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に、さらに水を含み、当該水の濃度が水を含んだ二酸化炭素分離用組成物全体の30~95重量%であることを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物。
【0024】
[7] 二酸化炭素を含むガスを、上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の二酸化炭素分離用組成物に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、従来公知の材料に比べて単位時間当たりの二酸化吸収速度が速く、低濃度の二酸化炭素であっても高速に、かつ少量の二酸化炭素分離用組成物で吸収分離処理することができるという効果を有する。このため、本発明は、特にその後工程に深冷分離工程がある場合、凝結しうる不純物をより強力に除去できるという点で、工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
まず、本発明の二酸化炭素分離用組成物について説明する。
【0028】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、上記のアミン化合物(1)と、上記のアミン化合物(2)を含むことをその特徴とする。また、例えば、より具体的には、上記のアミン化合物(1)とアミン化合物(2)の混合物を水等の溶媒に溶解させることで、より好ましい二酸化炭素分離用組成物が調製される。
【0029】
本発明において上記のアミン化合物(1)及び(2)は、いずれも二酸化炭素を吸収したり、放散したりする役割を担う。
【0030】
本発明において、上記のアミン化合物(1)における、R10、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。
【0031】
本発明において、上記一般式(1)における、R10、R11、R12、R13、及びR14は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、各々独立して、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(より具体的には、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基)、水酸基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、又はsec-ブトキシ基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシ基であり、水素原子であることがより好ましい。
【0032】
本発明において、上記のアミン化合物(1)におけるR15は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を表す。
【0033】
また、上記のアミン化合物(1)におけるR15は、上記の定義に該当すればよく、特に限定するものではないが、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基(より具体的には、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、又はtert-ブチル基)、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基を挙げることができる。これらのうち、二酸化炭素の放散効率に優れる点で、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、又は2-ヒドロキシエチル基であり、水素原子がより好ましい。
【0034】
上記のアミン化合物(1)におけるa及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。
【0035】
a=1且つb=0のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1a)で示される(以下、「アミン化合物(1a)」と称す。)。
【0036】
【0037】
[上記一般式(1a)中、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15の定義及び好ましい範囲は、上記の一般式(1)において示したR10、R11、R12、R13、R14、及びR15の定義及び好ましい範囲と同義である。]
a=0且つb=1のとき、上記の一般式(1)は下記一般式(1b)で示される(以下、「アミン化合物(1b)」と称す。)。
【0038】
【0039】
[上記一般式(1b)中、R10、R11、R12、R13、R14、及びR15の定義及び好ましい範囲は、上記の一般式(1)において示したR10、R11、R12、R13、R14、及びR15の定義及び好ましい範囲と同義である。]
アミン化合物(1)の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~28)を挙げる事ができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【0041】
上記のアミン化合物(1)については、入手容易性の観点から、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(R10=R11=R12=R13=R14=R15=水素原子、a=0、b=1、上記の例示化合物1)であることが好ましい。すなわち、下記化学構造式で表されるアミン化合物が好ましい。
【0042】
【0043】
本発明のアミン化合物(2)における、R4及びR5は、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、炭素数3~4のアミノアルキル基、又は炭素数3~4のヒドロキシアルキル基を表す。なお、R4とR5は互いに結合して環を形成していてもよい。R6は、炭素数1~4のアルキレンを表す。
【0044】
アミン化合物(2)におけるR4及びR5については、二酸化炭素の吸脱着効率に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、又は3-アミノプロピル基であることが好ましく、R4とR5は互いに結合して環を形成していることがより好ましく、R4とR5が、メチル基であって、当該メチル基が互いに結合し、1,2-エチレンを形成していることが更に好ましい。
【0045】
アミン化合物(2)におけるR6については、炭素数1~4のアルキレンを表し、特に限定するものではないが、例えば、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基等が挙げられ、二酸化炭素の吸脱着効率に優れる点で、1,2-エチレン、又は1,3-プロピレンであることが好ましく、1,2-エチレンであることがより好ましい。
【0046】
なお、上記のアミン化合物(2)において、R4とR5は互いに結合して環を形成したものについては、特に限定するものではないが、二酸化炭素吸収効率に優れる点で、下記一般式(2a)で示されるアミン化合物が好ましい。
【0047】
【0048】
[上記一般式(2a)中、R7は、各々独立して、炭素数1~4のアルキレンを表す。]
一般式(2a)におけるR7(炭素数1~4のアルキレン)の定義、及び好ましい範囲については、一般式(2)で示したR6(炭素数1~4のアルキレン)の定義、及び好ましい範囲と同じである。
【0049】
一般式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、例えば、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N-メチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノプロパン、N-メチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N-メチル-1,2-ジアミノエタン、N,N’-ジエチル-1,4-ジアミノブタン、N-エチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N-エチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノプロパン、N-エチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノエタン、N-エチル-1,2-ジアミノエタン、N,N’-ジプロピル-1,4-ジアミノブタン、N-プロピル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジプロピル-1,3-ジアミノプロパン、N-プロピル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジプロピル-1,2-ジアミノプロパン、N-プロピル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジプロピル-1,2-ジアミノエタン、N-プロピル-1,2-ジアミノエタン、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、又は2-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノール等を挙げることができる。
【0050】
上記のアミン化合物(2)については、入手容易性の観点から、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン(R4=R5=メチル基、R6=1,3-プロピレン)、及びN,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン(R4=R5=メチル基、R6=1,2-エチレン)、ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、及び2-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミンであることが好ましい。
【0051】
本発明の上記のアミン化合物(1)と、上記のアミン化合物(2)を含むことを特徴とする、二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素の吸収速度に優れる点で、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノールであるアミン化合物(1)と、ピペラジン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノエタン、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタノール、及び2-(3-アミノプロピル)-2-アミノエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(2)を含むことを特徴とする二酸化炭素分離用組成物であることが好ましい。
【0052】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、二酸化炭素吸収速度が速いという点で、アミン化合物(1)とアミン化合物(2)の組成比が、アミン化合物(1) 100重量部に対して、アミン化合物(2)が5~100重量部であることが好ましく、アミン化合物(1) 100重量部に対して、アミン化合物(2) 10~70重量部であることがより好ましく、アミン化合物(1) 100重量部に対して、アミン化合物(2) 20~40重量部であることがより好ましい。
【0053】
本発明において、上記一般式(1)、及び(2)で示されるアミン化合物は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、これらのアミン化合物の純度としては、特に限定するものではないが、いずれも、それぞれ、95%以上であることが好ましく、99%以上が特に好ましい。純度が95%を下回ると、二酸化炭素の吸収量が低下する恐れがある。
【0054】
本発明の二酸化炭素分離用組成物については、アミン化合物(1)、及びアミン化合物(2)に加えて、さらに、これらとは異なる、アルカノールアミン類、プロピレンジアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、モルホリン類、ピロリジン類、アゼパン類、及びポリエチレンポリアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種のアミン化合物(3)を含んでいてもよい。当該アミン化合物(3)を共存させることで、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりのN原子含有量を増やすことができる場合があり、二酸化炭素分離用組成物の単位重量当たりの二酸化炭素吸収量が増える点で、工業的に有利である場合がある。
【0055】
本発明において、前記のアルカノールアミン類としては、具体例としては、例えば、エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N-メチルエタノールアミン、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]-N-エチルエタノールアミン、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、2-[2-(ジエチルアミノ)エトキシ]エタノール、N-[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エタノールアミン、N-[2-{2-(ジメチルアミノ)エトキシ}エチル]-N-メチルエタノールアミン、又はN-[2-{2-(ジエチルアミノ)エトキシ}エチル],N-エチルエタノールアミン等が挙げられる。これらのうち、入手のし易さ、及び製造コストの観点から、アルカノールアミン類としては、エタノールアミン、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、及び2-(2-アミノエトキシ)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0056】
本発明において、前記のプロピレンジアミン類としては、具体例としては、例えば、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、又は1,3-ビス(ジエチルアミノ)プロパン等が挙げられる。
【0057】
本発明において、前記のピペラジン類としては、具体例としては、例えば、1-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペラジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペラジン、又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0058】
本発明において、前記のピペリジン類としては、具体例としては、例えば、ピペリジン、2-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-メチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-エチルピペリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-プロピルピペリジン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-4-ブチルピペリジン等が挙げられる。
【0059】
本発明において、前記のモルホリン類としては、具体例としては、例えば、モルホリン、2-メチルモルホリン、2,6-ジメチルモルホリン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-モルホリン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-モルホリン、又は1-(2,3-ジメトキシプロピル)-モルホリン等が挙げられる。
【0060】
本発明において、ピロリジン類としては、具体例としては、例えば、ピロリジン、2-メチルピロリジン、2,5-ジメチルピロリジン、1-(2,3-ジヒドロキシプロピル)-ピロリジン、1-(2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル)-ピロリジン、1-(2,3-ジメトキシプロピル)-ピロリジン、又は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0061】
本発明において、前記のアゼパン類としては、具体例としては、例えば、アゼパン、2-メチルアゼパン、2,7-ジメチルアゼパン、又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等が挙げられる。
【0062】
本発明において、前記のポリエチレンポリアミン類としては、具体例としては、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、ヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、又は8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミン等が挙げられる。
【0063】
ここで、前記の「TETA」とは、4つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を4つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TETAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、又は1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジン等が挙げられる。
【0064】
また、前記の「TEPA」とは、5つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を5つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。TEPAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、又はビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミン等が挙げられる。
【0065】
また、前記の「PEHA」とは、6つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を6つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。PEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N’-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、又はN,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0066】
また、前記の「HEHA」とは、7つのアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を7つ有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。HEHAの具体的な化合物名としては、例えば、1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N’,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、又はN-(2-アミノエチル)-N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミン等が挙げられる。
【0067】
また、前記の「8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミン」とは、8つ以上のアミノ基がエチレン鎖を介して直鎖状又は分岐状に連なっている化合物を指すが、本発明においては、同じくアミノ基を8つ以上有しており、且つピペラジン環構造を有するものも含まれる。8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミンの具体例としては、例えば、商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0068】
これらのうち、入手のし易さ、及び取得コストの観点から、ポリエチレンポリアミン類としては、ジエチレントリアミン(DETA)、
1,4,7,10-テトラアザデカン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、及び1、4-ビス(2-アミノエチル)-ピペラジンの混合物よりなるトリエチレンテトラミン(TETA)、
1,4,7,10,13-ペンタアザトリデカン、N,N,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-ピペラジン、及びビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]アミンの混合物よりなるテトラエチレンペンタミン(TEPA)、
1,4,7,10,13,16-ヘキサアザヘキサデカン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)-N’-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、1-[2-[2-[2-[ビス(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、及びN,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミンの混合物よりなるペンタエチレンヘキサミン(PEHA)、
1,4,7,10,13,16,19-ヘプタアザノナデカン、N-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-N,N’,N’-トリス(2-アミノエチル)-1,2-エタンジアミン、1-[2-[2-[2-[2-[2-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]アミノ]エチル]-ピペラジン、N-(2-アミノエチル)-N,N’-ビス[2-(1-ピペラジニル)エチル]-1,2-エタンジアミンの混合物よりなるヘキサエチレンヘプタミン(HEHA)、並びに
8以上のアミノ基を有するポリエチレンポリアミンである商品名「Poly8」(東ソー株式会社製)
からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0069】
本発明において、アミン化合物(3)は、市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでもよく、特に限定されない。また、アミン化合物(3)の純度としては、特に限定するものではないが、95%以上であることが好ましく、99%以上であることが特に好ましい。純度が95%を下回ると、二酸化炭素の吸収量が低下する恐れがある。
【0070】
本発明において、二酸化炭素分離用組成物がアミン化合物(3)を含有する場合、上記アミン化合物(1)及び(2)とアミン化合物(3)の合計重量に占めるアミン化合物(3)の重量は、特に制限されるものではないが、単位重量当たりの二酸化炭素吸収量を増やすという観点から、50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0071】
本発明の二酸化炭素分離用組成物は、そのままその目的用途に使用することもできるが、操作性の観点から、別途、溶媒をさらに含ませた組成物として使用することができる。なお、当該二酸化炭素分離用組成物に用いる溶媒については、特に限定するものではないが、例えば、水、アルコール化合物、ポリオール化合物(特に限定するものではないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、又はポリエチレングリコール等)等を挙げることができ、これらの混合物を用いてもよい。これらのうち、二酸化炭素ガスを重炭酸塩として吸収分離する効率性に優れる点、吸収剤や分離剤の粘度上昇や固形分生成抑制に優れる点、二酸化炭素の放散エネルギーがあまり高くならない点で、水が好ましい。
【0072】
前記の溶媒(例えば、水)を用いる場合において、当該溶媒の濃度については、本発明の二酸化炭素分離用組成物の操作性に優れる点で、当該溶媒を含んだ二酸化炭素分離用組成物全量に対して30~95重量%であることが好ましく、50~80重量%であることがより好ましい。
【0073】
次に、本発明における二酸化炭素の分離方法について説明する。
【0074】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、本発明の二酸化炭素分離用組成物と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を前記二酸化炭素分離用組成物に高選択的に吸収させる工程を有することを特徴とする。このように二酸化炭素を吸収させた後、前記の二酸化炭素分離用組成物を加熱及び/又は減圧することにより、吸収された二酸化炭素を放散させる工程を含んでいてもよい。
【0075】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を含むガスを、本発明の二酸化炭素分離用組成物に接触させる方法については、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。公知の方法としては、バブリング法や、充填塔又は棚段塔を用いた対向接触法などが挙げられる。
【0076】
本発明の二酸化炭素の分離方法において、二酸化炭素を含むガスを、本発明の二酸化炭素分離用組成物に吸収させる際の温度としては、特に制限するものではないが、通常10℃~60℃の範囲を挙げることができる。
【0077】
また、本発明の二酸化炭素分離用組成物については、これを任意の担体に担持又は添着させてなる二酸化炭素吸収放散剤として、二酸化炭素の化学吸収法に用いることができる。
【0078】
当該化学吸収法は、上記の二酸化炭素分離用組成物と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を吸収させた後、高温又は減圧することにより吸収された二酸化炭素を放散させる方法を表す。この化学吸収法では、一般的に二酸化炭素を放散させる温度は100℃以上とされるが、本発明の二酸化炭素分離用組成物を使用する場合には、特に温度に関する制約は無く、100℃未満の温度としてもよい。
【0079】
前記の担体としては、特に限定するものではないが、例えば、シリカ、アルミナ、マグネシア、多孔性ガラス、活性炭、ポリメチルメタクリレート系の多孔性樹脂、又は繊維などを用いることができる。
【0080】
前記のシリカとしては、結晶性と非結晶性(アモルファス)があり、細孔を有するゼオライト状のシリカ、メソポーラスシリカなど多種知られている。本発明の二酸化炭素吸収放散剤において、使用できるシリカには特に制限はなく、工業的に流通しているものを使用することができるが、表面積が大きいシリカが好ましい。
【0081】
本発明の担体を用いた二酸化炭素吸収放散剤においては、更に水を含有させてもよい。
【0082】
本発明の担体を用いた二酸化炭素吸収放散剤における二酸化炭素分離用組成物の担持量は、二酸化炭素の吸収量及び二酸化炭素分離用組成物の担持操作に優れる点で、二酸化炭素分離用組成物が担持された状態の担体重量に対し5~70重量%であることが好ましく、更に好ましくは10~60重量%である。
【0083】
本発明の担体を用いた二酸化炭素吸収放散剤に含まれる水の量は、吸収する二酸化炭素に対し等モル以上が好ましい。水の量が二酸化炭素に対し等モル以上であると、二酸化炭素の放散エネルギーが余り大きくならない点で好ましい。
【0084】
本発明の担体を用いた二酸化炭素吸収放散剤は固体吸収法として広く知られた二酸化炭素分離方法に適用できる。固体吸収法は、二酸化炭素分離剤と二酸化炭素を含むガスを接触させ、二酸化炭素を吸収させた後、高温又は減圧することにより吸収された二酸化炭素を放散させる方法を表す。固体吸収法では、一般的に二酸化炭素を放散させる温度は100℃以上とされるが、本発明の二酸化炭素分離組成物を使用する場合には、特に温度に関する制約は無く、100℃未満としてもよい。
【0085】
上記の二酸化炭素を含むガスについては、純粋な二酸化炭素ガスであってもよいし、二酸化炭素とその他ガスを含む混合ガスであってもよい。前記のその他のガスとしては、特に限定するものではないが、例えば、大気、窒素、酸素、水素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、一酸化炭素、水蒸気、メタン、又は窒素酸化物等が挙げられる。
【0086】
本発明の二酸化炭素の分離方法に適用できる混合ガスについては、二酸化炭素を含む混合ガスであれば特に制限されないが、二酸化炭素と他のガスとの分離性能を向上させるためには、二酸化炭素濃度が0.5%以上であることが好ましく、より好ましくは1%以上であることが望ましい。
【0087】
本発明の二酸化炭素の分離方法においては、上記の工程(吸収工程、放散工程)以外の工程を追加して実施しても一向に差し支えない。例えば、冷却工程、加熱工程、洗浄工程、抽出工程、超音波処理工程、蒸留工程、その他薬液で処理する工程などを適宜実施することができる。
【0088】
本発明の二酸化炭素の分離方法は、特に限定するものではないが、例えば、化石燃料から一酸化炭素を製造する一酸化炭素製造設備や、石炭ガス化ガスから水素を製造する水素製造設備における二酸化炭素の分離に適用する事ができる。また、二酸化炭素除去後のガスを大気中に放出するような、火力発電所、鉄鋼プラント、及びセメント工場などで発生する燃焼排ガスからの二酸化炭素回収設備にも適用することができる。
【実施例0089】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、二酸化炭素濃度計は、ジェイ・サイエンス・ラボ社製RSIR-2000を用いた。
【0090】
[実施例1]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー社製) 30g、ピペラジン(東京化成工業社製) 10g、及び純水 60gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。アミン化合物(1)/アミン化合物(2)の重量比は、100重量部/33.3重量部であった。二酸化炭素分離用組成物における水の含有量は60重量%であった。これを200mLのガス吸収瓶に入れ、水浴で50℃に調温した。ガス吸収瓶のガス吹き込み口から、前記の二酸化炭素分離用組成物に向けて、10mL/分の二酸化炭素ガスと490mL/分の窒素ガスの混合気体(二酸化炭素濃度2.0容量%)を吹き込み、ガス抜き出し口から放出された混合ガスについて、二酸化炭素濃度計を用いて放出ガスの二酸化炭素濃度を連続測定した。吹き込み開始30分後の放出ガスの二酸化炭素濃度は0.005容量%であった。1時間後は0.064容量%、1時間半後は0.158容量%であった。
【0091】
[実施例2]
1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン-2-メタノール(東ソー社製) 32.6g、ピペラジン(東京化成工業社製) 7.4g、及び純水 60gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。アミン化合物(1)/アミン化合物(2)の重量比は、100重量部/22.7重量部であった。二酸化炭素分離用組成物における水の含有量は60重量%であった。当該二酸化炭素分離用組成物について、実施例1と同様の操作を行って、放出ガスの二酸化炭素濃度を測定した。吹き込み開始30分後の放出ガスの二酸化炭素濃度は0.003容量%であった。1時間後は0.048容量%、1時間半後は0.166容量%であった。
【0092】
[比較例1]
N-メチルジエタノールアミン(東京化成工業社製) 30g、ピペラジン(東京化成工業社製) 10g、及び純水 60gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物について、実施例1と同様の操作を行って、放出ガスの二酸化炭素濃度を測定した。吹き込み開始30分後の放出ガスの二酸化炭素濃度は0.031容量%であった。1時間後は0.076容量%、1時間半後は0.168容量%であった。
【0093】
[比較例2]
N-メチルジエタノールアミン(東京化成工業社製) 32.6g、ピペラジン(東京化成工業社製) 7.4g、及び純水 60gを混合撹拌し、二酸化炭素分離用組成物(100g)を得た。当該二酸化炭素分離用組成物について、実施例1と同様の操作を行って、放出ガスの二酸化炭素濃度を測定した。吹き込み開始30分後の放出ガスの二酸化炭素濃度は0.055容量%であった。1時間後は0.159容量%、1時間半後は0.333容量%であった。
【0094】
以上の実施例1、実施例2、比較例1、及び比較例2の結果を下の表に示す。
【0095】