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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169792
(43)【公開日】2022-11-09
(54)【発明の名称】バッグ把持用クリップ及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20221101BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20221101BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221101BHJP
【FI】
C12M1/02 A
C12M3/00 Z
C12M1/00 G
C12M1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022139570
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2019544495の分割
【原出願日】2018-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2017184952
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 英俊
(72)【発明者】
【氏名】田代 幸太郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞懸濁液の撹拌処理において、細胞の回収率の低下を抑制することができるバッグ把持用クリップ及び撹拌方法を提供する。
【解決手段】バッグ把持用クリップは、第1のフィルムと第1のフィルムと対向する第2のフィルムとの間に収容空間を形成するバッグ2を把持した場合に、第1のフィルムと第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力をバッグに加え、収容空間を、連通部33を介して互いに連通した複数の空間に分割する隔壁30を形成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルムと前記第1のフィルムと対向する第2のフィルムとの間に収容空間を形成するバッグを把持した場合に、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力を前記バッグに加え、前記収容空間を、連通部を介して互いに連通した第1の空間と第2の空間とに分割する隔壁を形成するバッグ把持用クリップと、前記バッグ把持用クリップによって把持されたバッグと、を含む容器を用いて液を撹拌する撹拌方法であって、
前記バッグ把持用クリップで前記バッグを把持する第1のステップと、
前記第1のステップの後に、前記バッグに前記液を収容する第2のステップと、
前記第2の空間に収容された前記液を、前記連通部を経由して前記第1の空間に移送する第3のステップと、
前記バッグの内部に前記液を収容した状態で、前記バッグ把持用クリップを前記バッグから取り外す第5のステップと、
前記第5のステップの後に、前記バッグの内部に収容された前記液を前記バッグの外部に排出する第6のステップと、
を含む撹拌方法。
【請求項2】
前記第3のステップの後に、前記第1の空間に収容された前記液を、前記連通部を経由して前記第2の空間に移送する第4のステップを更に含む
請求項1に記載の撹拌方法。
【請求項3】
前記第3のステップ及び前記第4のステップを交互に繰り返し実施する
請求項2に記載の撹拌方法。
【請求項4】
前記第3のステップでは、前記第1の空間と前記第2の空間との間に気圧差を形成して、前記第2の空間に収容された前記液を、前記連通部を経由して前記第1の空間に移送する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の撹拌方法。
【請求項5】
前記液は細胞懸濁液である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の撹拌方法。
【請求項6】
第1のフィルムと前記第1のフィルムと対向する第2のフィルムとの間に収容空間を形成するバッグを把持した場合に、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力を前記バッグに加え、前記収容空間を、連通部を介して互いに連通した複数の空間に分割する隔壁を形成するバッグ把持用クリップであって、
前記バッグに対して着脱可能であり、
前記押圧力は、電磁石による磁力によって付与される
バッグ把持用クリップ。
【請求項7】
第1のフィルムと前記第1のフィルムと対向する第2のフィルムとの間に収容空間を形成するバッグを把持した場合に、前記第1のフィルムと前記第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力を前記バッグに加え、前記収容空間を、連通部を介して互いに連通した第1の空間と第2の空間とに分割する隔壁を形成するバッグ把持用クリップであって、
前記バッグに対して着脱可能であり、
前記隔壁は、前記バッグの第1の辺と、前記第1の辺と対向する第2の辺との間に、前記第1の辺及び前記第2の辺と交差する交差方向に伸びる部分を有し、
前記連通部は、前記隔壁の前記第1の辺から前記第2の辺に向けて伸びる部分と、前記隔壁の前記第2の辺から前記第1の辺に向けて伸びる部分との間に設けられている
バッグ把持用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、バッグ把持用クリップ、容器及び撹拌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養バッグに関する技術として、以下の技術が知られている。例えば、特開2011-239734号公報には、培養容器を仕切部材により培養部と拡大可能部の二室に分け、細胞数の増加に合わせて仕切部材の位置を移動させ、培養部の容積を拡大することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
細胞を培地内に浮遊させた状態で培養する浮遊培養においては、細胞増殖に必要な栄養分及び気体を全ての細胞に行き渡らせる必要がある。このため、細胞は、培地内に均一に分散していることが好ましい。
【0004】
細胞を培地内に均一に分散させる方法として、撹拌翼を用いて細胞懸濁液を撹拌する方法が知られている。しかしながら、細胞は脆弱であり、撹拌翼による物理的ストレスによってダメージを受け、細胞の生存率が低下するおそれがある。
【0005】
細胞を培地内に均一に分散させる他の方法として、細胞を培地とともに収容したバッグを揺動させる揺動撹拌が知られている。揺動撹拌による撹拌方式は、撹拌翼を用いた撹拌に比べて細胞懸濁液の流動状態の変化が激しく、操作条件の確立が困難である。
【0006】
また、細胞を培地内に均一に分散させる他の方法として、バッグ内に収容された細胞懸濁液に圧力を印加することによって、バッグ内の細胞懸濁液を流動させて撹拌する方法も考えられる。しかしながら、この場合、バッグ内において圧力差を形成することを可能とする隔壁等の構造物をバッグ内に設ける必要がある。バッグ内に構造物を設けると、細胞をバッグの外部に排出する際に、構造物が排出の妨げとなり、細胞がバッグ内に残留し、細胞の回収率が低下するおそれがある。
【0007】
本発明の一つの実施形態は、細胞懸濁液の撹拌処理において、細胞の回収率の低下を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術に係るバッグ把持用クリップは、第1のフィルムと第1のフィルムと対向する第2のフィルムとの間に収容空間を形成するバッグを把持した場合に、第1のフィルムと第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力をバッグに加え、収容空間を、連通部を介して互いに連通した複数の空間に分割する隔壁を形成する。
【0009】
隔壁は、バッグの第1の辺と、第1の辺と対向する第2の辺との間に、第1の辺及び第2の辺と交差する方向に伸びていてもよく、連通部が、隔壁の伸びる経路上に設けられていてもよい。
【0010】
連通部が、隔壁と第1の辺との間または隔壁と第2の辺との間に設けられていてもよい。
【0011】
開示の技術に係るバッグ把持用クリップは、バッグに対して着脱可能であることが好ましい。
【0012】
隔壁は、収容空間を、第1の空間と、第1の空間の鉛直方向下側に配置された第2の空間とに分割するものであってもよい。
【0013】
隔壁は、第1の空間の底部に下り方向の傾斜を形成し、底部の最下位置に一端が接続され、第2の空間の内部に伸びた連通部を形成するものであってもよい。
【0014】
開示の技術に係るバッグ把持用クリップは、バッグに当接される、弾性体を含む当接部を備えていてもよく、当接部を支持する支持部材を更に備えていてもよい。
【0015】
第1のフィルムと第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力は、磁力によって付与されてもよい。
【0016】
開示の技術に係るバッグ把持用クリップは、第1のフィルムに当接される第1の当接部と、第1のフィルムの、第1の当接部が当接される部分とは異なる部分に当接される第2の当接部と、第2のフィルムに当接され、第1の当接部との間にバッグを挟むことで、第1の空間と第2の空間とを隔てる隔壁の一部及び連通部を形成する隔壁の一部を形成する第3の当接部と、第2のフィルムに当接され、第2の当接部との間にバッグを挟むことで、第1の空間と第2の空間とを隔てる隔壁の他の一部及び連通部を形成する隔壁の他の一部を形成する第4の当接部と、を含んでいてもよい。
【0017】
開示の技術に係るバッグ把持用クリップは、第1の当接部と第2の当接部との相対的な位置を固定する第1の固定部と、第3の当接部と第4の当接部との相対的な位置を固定する第2の固定部と、を更に含んでいてもよい。
【0018】
開示の技術に係るバッグ把持用クリップは、第1の当接部と第2の当接部との少なくとも一方をスライドさせることにより第1の当接部と第2の当接部との相対的な位置を変化させる第1のスライド機構と、第3の当接部と第4の当接部との少なくとも一方をスライドさせることにより第3の当接部と第4の当接部との相対的な位置を変化させる第2のスライド機構と、を更に含んでいてもよい。
【0019】
開示の技術に係る容器は、上記のバッグ把持用クリップと、バッグ把持用クリップによって把持されたバッグと、を含む。
【0020】
開示の技術に係る容器は、複数の空間の各々に接続された通気ポートを更に含んでいてもよい。
【0021】
開示の技術に係る撹拌方法は、第1のフィルムと第1のフィルムと対向する第2のフィルムとの間に収容空間を形成するバッグを把持した場合に、第1のフィルムと第2のフィルムを部分的に密着させる押圧力をバッグに加え、収容空間を、連通部を介して互いに連通した第1の空間と第2の空間とに分割する隔壁を形成するバッグ把持用クリップと、バッグ把持用クリップによって把持されたバッグと、を含む容器を用いて細胞懸濁液を撹拌する撹拌方法であって、バッグ把持用クリップでバッグを把持する第1のステップと、第1のステップの後に、第2の空間に細胞懸濁液を収容する第2のステップと、第1の空間と第2の空間との間に気圧差を形成して、第2の空間に収容された細胞懸濁液を、連通部を経由して第1の空間に移送する第3のステップと、を含む。
【0022】
開示の技術に係る撹拌方法は、第3のステップの後に、第1の空間に収容された細胞懸濁液を、連通部を経由して第2の空間に移送する第4のステップを更に含んでいてもよい。また、第3のステップ及び第4のステップを交互に繰り返し実施してもよい。
【0023】
開示の技術に係る撹拌方法は、バッグの内部に細胞懸濁液を収容した状態で、バッグ把持用クリップをバッグから取り外す第5のステップと、第5のステップの後に、バッグの内部に収容された細胞懸濁液をバッグの外部に排出する第6のステップと、を更に含んでいてもよい。
【0024】
開示の技術に係る容器は、互いに対向する第1のフィルムと第2のフィルムを部分的に密着させる開閉可能なジップ機構を内部に有する容器であって、ジップ機構を閉状態とすることによって、容器の内部の収容空間を、連通部を介して互いに連通した複数の空間に分割する隔壁が形成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一つの実施形態によれば、細胞懸濁液の撹拌処理において、細胞の回収率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】開示の技術の実施形態に係るバッグ把持用クリップの構成の一例を概略的に示す斜視図である。
図2】開示の技術の実施形態に係る撹拌容器の構成の一例を示す正面図である。
図3図2における3-3線に沿った断面図である。
図4】開示の技術の実施形態に係る撹拌容器の内部構成の一例を示す図である。
図5A】開示の技術の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図5B】開示の技術の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図5C】開示の技術の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図5D】開示の技術の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図5E】開示の技術の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図5F】開示の技術の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図6A】開示の技術の実施形態に係る撹拌容器の構成の一例を示す断面図である。
図6B】開示の技術の実施形態に係る撹拌容器の構成の一例を示す断面図である。
図7】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌容器の構成の一例を示す断面図である。
図8】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌容器の内部構成の一例を示す図である。
図9A】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図9B】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図9C】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図9D】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図9E】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図9F】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌方法の一例を示す図である。
図10】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌容器の内部構成の一例を示す図である。
図11A】開示の技術の他の実施形態に係る撹拌容器の構成の一例を示す正面図である。
図11B図11Aにおける11B-11B線に沿った断面図である。
図12】開示の技術の実施形態に係るジップ機構の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、開示の技術の実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、各図面において、実質的に同一又は等価な構成要素又は部分には同一の参照符号を付している。
【0028】
[第1の実施形態]
図1は、開示の技術の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1の構成の一例を概略的に示す斜視図である。図2は、バッグ把持用クリップ1と、バッグ把持用クリップ1によって把持されたバッグ2とを含んで構成される、開示の技術の実施形態に係る撹拌容器3の構成の一例を示す正面図である。図3は、図2における3-3線に沿った断面図である。
【0029】
バッグ2は、例えば、細胞培養の用途で用いることができ、それぞれ可撓性およびガス透過性を有する第1のフィルムF1及び第2のフィルムF2を、ヒートシール(熱圧着)などの手法により貼り合せることにより構成される。なお、バッグ2は、1枚のフィルムを折り返して構成されるものであってもよく、この場合においても、フィルムの互いに対向する部分を、それぞれ、第1のフィルムF1及び第2のフィルムF2とする。
【0030】
第1のフィルムF1及び第2のフィルムF2を構成する材料として、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックを好適に用いることができる。バッグ2は、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2との間に細胞を培地とともに収容するための収容空間を形成する。
【0031】
バッグ把持用クリップ1は、第1のフィルムF1側に配置される第1の部分10Aと、第2のフィルムF2側に配置される第2の部分10Bとを含んで構成されており、第1の部分10Aと第2の部分10Bとの間に、バッグ2を挟み込むことでバッグ2を把持する。すなわち、バッグ把持用クリップ1は、バッグ2の第1のフィルムF1側及び第2のフィルムF2側からそれぞれ他方の側に押圧力を加えることでバッグ2を把持する。バッグ把持用クリップ1は、バッグ2に対して着脱可能である。
【0032】
バッグ把持用クリップ1の第1の部分10Aは、第1のフィルムF1に当接される線状の第1の当接部11Aと、第1のフィルムF1の第1の当接部11Aが当接される部分とは異なる部分に当接される線状の第2の当接部12Aと、第1の当接部11A及び第2の当接部12Aを支持する支持部材を構成する支持板13Aとを有する。第1の当接部11A及び第2の当接部12Aは、支持板13Aの、バッグ2が配置される側の面である把持面Sa(図3参照)に取り付けられている。
【0033】
同様に、バッグ把持用クリップ1の第2の部分10Bは、第2のフィルムF2に当接される線状の第3の当接部11Bと、第2のフィルムF2の第3の当接部11Bが当接される部分とは異なる部分に当接される第4の当接部12Bと、第3の当接部11B及び第4の当接部12Bを支持する支持部材を構成する支持板13Bとを有する。第3の当接部11B及び第4の当接部12Bは、支持板13Bの、バッグ2が配置される側の面である把持面Sb(図3参照)に取り付けられている。
【0034】
図3に示すように、バッグ把持用クリップ1が、バッグ2を把持した状態において、第1の当接部11Aと第3の当接部11Bとが重なり合い、第2の当接部12Aと第4の当接部12Bとが重なり合う。すなわち、第1の当接部11Aと第3の当接部11Bとの間、及び第2の当接部12Aと第4の当接部12Bとの間にバッグ2が挟み込まれる。第1の当接部11Aと第3の当接部11Bとの間にバッグ2が挟み込まれることにより、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とが、第1の当接部11A及び第3の当接部11Bの形状に応じて部分的(線状)に密着し、これにより、バッグ2の内部に線状の隔壁が形成される。同様に、第2の当接部12Aと第4の当接部12Bとの間にバッグ2が挟み込まれることにより、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とが、第2の当接部12A及び第4の当接部12Bの形状に応じて部分的(線状)に密着し、これにより、バッグ2の内部に線状の隔壁が形成される。第1の当接部11A、第2の当接部12A、第3の当接部11B及び第4の当接部12Bを、それぞれ、ゴムなどの弾性体で構成してもよい。この構成により、バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持した場合に、各当接部が当接される部位において、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2との密着性を高めることができ、隔壁としての機能が有効に発揮される。
【0035】
図3に示すように、第1の当接部11A及び第2の当接部12Aは、それぞれ、スペーサ14Aを介して支持板13Aに取り付けられ、第3の当接部11B及び第4の当接部12B、は、それぞれ、スペーサ14Bを介して支持板13Bに取り付けられている。スペーサ14A及び14Bを設けることで、支持板13Aと支持板13Bとの間に、細胞を培地とともに収容した状態のバッグ2を配置するのに十分なスペースを確保することが可能となる。
【0036】
支持板13A及び支持板13Bを貫通する複数のネジ15により、バッグ把持用クリップ1の第1の部分10A及び第2の部分10Bの相対位置が固定される。また、複数のネジ15によりバッグ2の各当接部が当接される部位において、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とを部分的(線状)に密着させる押圧力が付与される。すなわち、複数のネジ15によって作用する引っ張り弾性力によって、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とを部分的(線状)に密着させる押圧力が付与される。なお、第1の部分10A及び第2の部分10Bの相対位置の位置決めを行うための凹凸構造が、支持板13A及び支持板13Bの、ネジ15の近傍に設けられていてもよい。
【0037】
図4は、バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持することにより、バッグ2の内部に形成される隔壁30の形態の一例を示す正面図であり、撹拌容器3の内部構成の一例を示す図である。隔壁30は、バッグ把持用クリップ1によって把持されたバッグ2の第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とが密着する部分に形成される。
【0038】
隔壁30によって、バッグ2の内部の収容空間は、第1の空間31と第2の空間32とに分割される。バッグ把持用クリップ1とバッグ2とを含んで構成される撹拌容器3を用いて、培地中に細胞を分散させた細胞懸濁液の撹拌を行う場合、第2の空間32は、第1の空間31の鉛直方向下方側に配置される。また、隔壁30によって、第1の空間31と第2の空間32とを連通させる連通部33が形成される。すなわち、隔壁30は、正面視矩形状であるバッグ2の端部となる辺A1と、辺A1と対向するバッグ2の他方側の端部となる辺A2との間に、辺A1及び辺A2と交差する交差方向に伸びる部分を有し、連通部33が、隔壁30の上記交差方向に伸びる部分の延長線上に設けられている。より具体的には、隔壁30は、第1の空間31の底部に下り方向の傾斜を形成し、且つ第1の空間31の傾斜した底部の最下位置に一端が接続され、第2の空間32の内部に伸びた連通部33を形成している。第1の空間31の傾斜した底部の最下位置は、バッグ2の辺A1と辺A2との間の水平方向中央に配置され、従って、連通部33も、辺A1と辺A2との間の水平方向中央に配置されている。
【0039】
バッグ2は、第1の空間31に接続された通気ポート41及び第2の空間32に接続された通気ポート42を備えている。バッグ2の外部から通気ポート41及び42を介してバッグ2の内部に気体を導入することが可能である。また、第2の空間32の底部には、送液ポート43が設けられており、送液ポート43を介して、バッグ2の内部から細胞懸濁液を排出したり、バッグ2の内部に細胞懸濁液を注入したりすることが可能である。なお、バッグ2は、バッグ2の内部への細胞懸濁液の注入を行うための注入専用の送液ポートと、バッグ2の内部からの細胞懸濁液の排出を行うための排出専用の送液ポートとを含む複数の送液ポートを備えていてもよい。
【0040】
以下に、撹拌容器3を用いて細胞懸濁液を撹拌する、開示の技術の実施形態に係る撹拌方法について、図5A~5Fを参照しつつ説明する。なお、図5B図5Eにおいては、バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持することにより、バッグ2の内部に形成される隔壁30が示されており、バッグ把持用クリップ1の図示が省略されている。
【0041】
初めに、細胞懸濁液を収容していない状態のバッグ2を用意する(図5A)。次に、バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持する(図5B)。すなわち、バッグ把持用クリップ1の第1の部分10Aと第2の部分10Bとの間にバッグ2を挟み、ネジ15を締め込む。これにより、バッグ2の第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とを第1の当接部11A、第2の当接部12A、第3の当接部11B及び第4の当接部12Bによって部分的(線状)に密着させる押圧力が付与される。バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持することで、バッグ2の内部に隔壁30が形成され、隔壁30により、バッグ2の内部の収容空間は、連通部33を介して互いに連通した第1の空間31と第2の空間32とに分割される。バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持することで、撹拌容器3が構成される。
【0042】
次に、撹拌容器3の第2の空間32が、第1の空間31の鉛直方向下方に位置するように撹拌容器3の向きを固定し、送液ポート43を介してバッグ2の内部に細胞懸濁液100を注入する(図5C)。細胞懸濁液100は、撹拌容器3の第2の空間32に収容される。なお、第2の空間32の全てが細胞懸濁液100で満たされることのないように、バッグ2に注入する細胞懸濁液100の液量は、第2の空間32の容量よりも小さいことが好ましい。
【0043】
次に、第1の空間31に接続された通気ポート41を開放状態としつつ、第2の空間32に接続された通気ポート42を介して第2の空間32の内部に気体を導入する。これにより、第2の空間32の内部の気圧が、第1の空間31の内部の気圧よりも高くなる。その結果、第2の空間32に収容された細胞懸濁液100は、液面が加圧され、連通部33を経由して第1の空間31に移送される。細胞懸濁液100を連通部33を経由して第1の空間31に移送することで、細胞懸濁液100が撹拌される(図5D)。
【0044】
なお、バッグ2の内部に導入する気体は、細胞が汚染されることのないように無菌状態であることが好ましい。バッグ2の内部に導入する気体として、酸素または空気などの細胞に対して無害な気体を使用することが好ましい。また、上記の説明では、細胞懸濁液100の第2の空間32から第1の空間31への移送を、第2の空間32の内部を加圧することによって行う場合を例示したが、この態様に限定されない。すなわち、細胞懸濁液100の第2の空間32から第1の空間31への移送を、通気ポート41を介して第1の空間31の内部の気体を吸引する等して、第1の空間31の内部を減圧することによって行ってもよい。
【0045】
次に、第2の空間32に接続された通気ポート42を開放状態とする。これにより、第1の空間31に収容された細胞懸濁液100は、重力により連通部33を経由して第2の空間32に移送される(図5E)。隔壁30により、第1の空間31の底部に下り方向の傾斜を形成し、傾斜した底部の最下位置に連通部33を形成することで、第1の空間31に収容された細胞懸濁液100を、重力によって連通部33に導くことができる。細胞懸濁液100を連通部33を経由して第2の空間32に移送することで、細胞懸濁液100が撹拌される。なお、第1の空間31に接続された通気ポート41を介して第1の空間31の内部に気体を導入することで、第1の空間31から第2の空間32への細胞懸濁液100の移送を促進させてもよい。
【0046】
その後、必要に応じて、第2の空間32から第1の空間31への細胞懸濁液100の移送、及び第1の空間31から第2の空間32への細胞懸濁液100の移送を、複数回に亘り繰り返し実施してもよい。細胞懸濁液100の移送は、細胞が培地に略均一に分散するまで、繰り返し実施することが好ましい。
【0047】
次に、バッグ把持用クリップ1をバッグ2から取り外す。これにより、第1の空間31と第2の空間32とを隔てる隔壁30が除去される。その後、バッグ2の内部に収容された細胞懸濁液100を、送液ポート43からバッグ2の外部に排出する(図5F)。なお、バッグ把持用クリップ1をバッグ2から取り外した後、バッグ2内で細胞培養を行ってもよい。
【0048】
以上のように、開示の技術の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1は、バッグ2を把持した場合に、バッグ2の第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とを部分的(線状)に密着させる押圧力を加え、バッグ2の収容空間を、連通部33を介して互いに連通した第1の空間31と第2の空間32とに分割する隔壁30を形成する。また、開示の技術の実施形態に係る撹拌方法は、バッグ把持用クリップ1でバッグ2を把持した後にバッグ2内に細胞懸濁液を導入し、第1の空間31と第2の空間32との圧力差または重力を利用して、第1の空間31と第2の空間32との間で細胞懸濁液を流動させることで、細胞懸濁液の撹拌を行うものである。このように、圧力差または重力により細胞懸濁液を流動させて撹拌を行う方式によれば、撹拌翼を用いる方式と比較して、細胞へのダメージを小さくすることができる。なお、細胞へのダメージの付与をより確実に抑制するために、液面を加圧する圧力を、ポンプなどを用いて厳密に制御することが好ましい。
【0049】
また、開示の技術の実施形態に係る撹拌方法によれば、撹拌翼を用いる方式と同様、細胞を培地中に均一に分散させることができる。また、撹拌処理後は、バッグ把持用クリップ1をバッグ2から取り外すことで、バッグ2の内部の隔壁30が除去され、細胞懸濁液をバッグ2の外部に排出する際に、排出の妨げとなる構造物がなくなるので、バッグ2の内部における細胞の残留を抑制することができる。これにより、細胞の回収率の低下を抑制することができる。
【0050】
本実施形態に係る撹拌方法は、例えば、細胞を培地中に浮遊させた状態で静置する静置培養において、培養期間中の所定のタイミングで細胞と培地とを混合する目的で使用することも可能である。これにより、培地中に分散する細胞の分散状態が改善され、栄養分及び気体が全ての細胞に偏りなく行き渡る好ましい培養環境を形成することができる。
【0051】
ここで、バッグ把持用クリップ1をバッグ2に取り付ける際に、連通部33において、細胞懸濁液が流通する空間の形成を促進するために、以下の操作を行ってもよい。なお、以下の説明において参照する図6A及び図6Bは、撹拌容器3の構成の一例を示す断面図であり、図3に示す断面に相当する断面が示されている。
【0052】
図6Aに示すように、バッグ把持用クリップ1の第1の部分10Aと第2の部分10Bとの間にバッグ2を挟んだ状態で、ネジ15を仮締めする。バッグ2は、第1の当接部11Aと第3の当接部11Bとの間、第2の当接部12Aと第4の当接部12Bとの間に挟まれる。
【0053】
次に、第1の当接部11Aと第3の当接部11Bとの間、第2の当接部12Aと第4の当接部12Bとの間に、バッグ2を挟んだ状態で、第1の当接部11A及び第2の当接部12Aを、これらが互いに近づく方向にスライドさせるとともに、第3の当接部11B及び第4の当接部12Bを、これらが互いに近づく方向にスライドさせる。
【0054】
これにより、図6Bに示すように、バッグ2は、第1の当接部11Aと第3の当接部11Bとの間に挟まれた部分と、第2の当接部12Aと第4の当接部12Bとの間に挟まれた部分との間の領域において、第1のフィルムF1及び第2のフィルムF2は、それぞれ、バッグ2の外側に膨らむように撓みを生じる。その結果、連通部33において細胞懸濁液が流通する空間Bが形成される。なお、第1の当接部11A及び第2の当接部12Aのいずれか一方を他方に近づく方向にスライドさせて、第3の当接部11B及び第4の当接部12Bのうち、第1の当接部11A及び第2の当接部12Aのうちのスライドさせた方に対向する一方を、他方に近づく方向にスライドさせてもよい。
【0055】
連通部33に空間Bを形成した後、第1の当接部11A及び第2の当接部12Aのそれぞれの位置をネジ16により固定する。これにより、第1の当接部11Aと第2の当接部12Aとの相対的な位置が固定される。同様に、第3の当接部11B及び第4の当接部12Bのそれぞれの位置をネジ16により固定する。これにより、第3の当接部11Bと第4の当接部12Bとの相対的な位置が固定される。その後、ネジ15を本締めする。
【0056】
上記の要領で連通部33に空間Bを形成する場合、バッグ把持用クリップ1は、第1の当接部11Aと第2の当接部12Aとの相対的な位置を変化させる第1のスライド機構と、第3の当接部11Bと第4の当接部12Bとの相対的な位置を変化させる第2のスライド機構と、第1の当接部11Aと第2の当接部12Aとの相対的な位置を固定する第1の固定部と、第3の当接部11Bと第4の当接部12Bとの相対的な位置を固定する第2の固定部と、を備える。なお、上記の第1及び第2のスライド機構は、それぞれ、各当接部が接合されたスペーサ14A、14Bを、各当接部と一体的にスライドさせるように構成されていてもよい。また、上記の第1及び第2の固定部は、各当接部が接合されたスペーサ14A、14Bを、それぞれ、支持板13A、13Bに固定するネジ16を含んで構成されていてもよい。
【0057】
また、上記の要領で連通部33に空間Bを形成する場合、空間Bの容積に相当する量の気体または液体が、バッグ2の内部に予め確保されているか、空間Bの形成時にバッグ2の外部から導入することが必要となる。例えば、空間Bの形成時に、通気ポート41及び42のいずれかを開放状態としておき、開放状態とされた通気ポートを介してバッグ2の内部に外気を導入してもよい。バッグ2の内部に導入される気体は、汚染防止の観点から無菌状態であることが好ましい。また、事前にバッグ2の洗浄を行う場合には、洗浄に用いられる洗浄液を、バッグ2の内部に残したままとしてもよい。
【0058】
[第2の実施形態]
図7は、開示の技術の第2の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1Aと、バッグ把持用クリップ1Aによって把持されたバッグ2とを含んで構成される、撹拌容器3Aの構成の一例を示す断面図である。図7には、図3に示す断面に相当する断面が示されている。
【0059】
上記した第1の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1は、複数のネジ15によって作用する引っ張り弾性力によって、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とを部分的(線状)に密着させる押圧力を付与するものであった。これに対して、第2の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1Aは、支持板13Aに取り付けられた磁石40Aと、支持板13Bに取り付けられた磁石40Bとによって作用する磁力によって、第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とを部分的(線状)に密着させる押圧力を付与する。なお磁石40A及び40Bは、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。
【0060】
第2の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1Aによれば、第1の実施形態に係るバッグ把持用クリップ1と比較して、バッグ把持用クリップ1Aをバッグ2に取り付ける際の作業負担が軽減される。また、磁石40A及び40Bを電磁石で構成することで、磁力の発生を電気的に制御することが可能となる。例えば、バッグ把持用クリップ1Aをバッグ2から取り外す際に、磁力の発生を停止させることで、バッグ把持用クリップ1Aの取り外しが容易となる。なお、第1の当接部11A、第2の当接部12A、第3の当接部11B、第4の当接部12Bを、磁石で構成してもよい。また、スペーサ14A及び14Bの各々を、磁石で構成してもよい。
【0061】
[第3の実施形態]
図8は、バッグ把持用クリップ(図示せず)でバッグ2を把持することにより、バッグ2の内部に形成される隔壁30の形態の他を示す平面図であり、開示の技術の第3の実施形態に係る撹拌容器3Bの内部構成の一例を示す図である。図示を省略した本実施形態に係るバッグ把持用クリップは、図8に示す隔壁30が形成される部分においてバッグ2に当接される当接部と、上記当接部を支持する支持板とを含む。隔壁30は、バッグ把持用クリップによって把持されたバッグ2の第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とが密着する部分に形成される。
【0062】
隔壁30によって、バッグ2の内部の収容空間は、第1の空間31と第2の空間32とに分割される。撹拌容器3Bを用いて細胞懸濁液の撹拌を行う場合、第1の空間31と第2の空間32とは、水平方向に並置される。また、隔壁30によって、第1の空間31と第2の空間32とを連通させる連通部33が形成される。すなわち、撹拌容器3Bにおいて、隔壁30は、正面視矩形状のバッグ2の端部となる辺A3と、辺A3と対向するバッグ2の他方側の端部となる辺A4との間に、辺A3及び辺A4と交差する交差方向に伸びる部分を有し、連通部33が、隔壁30の上記交差方向に伸びる部分の延長線上に設けられている。より具体的には、隔壁30は、辺A3から辺A4に向けて直線的に伸びる部分と、辺A4から辺A3に向けて直線的に伸びる部分とを有し、両部分の間隙が連通部33を構成している。
【0063】
バッグ2は、第1の空間31に接続された通気ポート41及び第2の空間32に接続された通気ポート42を備えている。バッグ2の外部から通気ポート41及び42を介してバッグ2の内部に気体を導入することが可能である。また、バッグ2の底部には、送液ポート43が設けられており、送液ポート43を介して、バッグ2の内部から細胞懸濁液を排出したり、バッグ2の内部に細胞懸濁液を注入したりすることが可能である。
【0064】
以下に、撹拌容器3Bを用いて細胞懸濁液を撹拌する、開示の技術の実施形態に係る撹拌方法について、図9A~9Fを参照しつつ説明する。
【0065】
初めに、細胞懸濁液を収容していない状態のバッグ2を用意する(図9A)。次に、バッグ把持用クリップでバッグ2を把持する(図9B)。これにより、バッグ2の内部に隔壁30が形成され、隔壁30により、バッグ2の内部の収容空間は、連通部33を介して互いに連通した第1の空間31と第2の空間32とに分割される。バッグ把持用クリップでバッグ2を把持することで、撹拌容器3Bが構成される。
【0066】
次に、撹拌容器3Bの第1の空間31と第2の空間32とが、水平方向に並置されるように、撹拌容器3Bの向きを固定し、送液ポート43を介して撹拌容器3Bの内部に細胞懸濁液100を注入する(図9C)。細胞懸濁液100は、第1の空間31及び第2の空間32に均等に分配される。
【0067】
次に、第2の空間32に接続された通気ポート42を開放状態としつつ、第1の空間31に接続された通気ポート41を介して第1の空間31の内部に気体を導入する。これにより、第1の空間31の内部の気圧が第2の空間32の内部の気圧よりも高くなる。その結果、第1の空間31に収容された細胞懸濁液100は、液面が加圧され、その一部が連通部33を経由して第2の空間32に移送される。細胞懸濁液100を連通部33を経由して第2の空間32に移送することで、細胞懸濁液100が撹拌される(図9D)。
【0068】
次に、第1の空間31に接続された通気ポート41を開放状態としつつ、第2の空間32に接続された通気ポート42を介して第2の空間32の内部に気体を導入する。これにより、第2の空間32の内部の気圧が第1の空間31の内部の気圧よりも高くなる。その結果、第2の空間32に収容された細胞懸濁液100は、液面が加圧され、その一部が連通部33を経由して第1の空間31に移送される。細胞懸濁液100を連通部33を経由して第1の空間31に移送することで、細胞懸濁液100が撹拌される(図9E)。
【0069】
その後、必要に応じて、第1の空間31から第2の空間32への細胞懸濁液100の移送、及び第2の空間32から第1の空間31への細胞懸濁液100の移送を、複数回に亘り繰り返し実施してもよい。細胞懸濁液100の移送は、細胞が培地に略均一に分散するまで、繰り返し実施することが好ましい。
【0070】
次に、バッグ把持用クリップをバッグ2から取り外す。これにより、第1の空間31と第2の空間32とを隔てる隔壁30が除去される。その後、バッグ2の内部に収容された細胞懸濁液100を、送液ポート43からバッグ2の外部に排出する。なお、バッグ把持用クリップをバッグ2から取り外した後、バッグ2内で細胞培養を行ってもよい。
【0071】
以上のように、図8に示す隔壁30の形態を有する撹拌容器3Bにおいても、第1の実施形態に係る撹拌容器3を用いた撹拌方法と同様の方法で細胞懸濁液の撹拌を行うことが可能である。従って、細胞懸濁液の撹拌処理において、細胞へのダメージを小さくでき、且つ細胞の回収率の低下を抑制することができる。
【0072】
[第4の実施形態]
図10は、バッグ把持用クリップ(図示せず)でバッグ2を把持することにより、バッグ2の内部に形成される隔壁30の形態の他を示す平面図であり、開示の技術の第4の実施形態に係る撹拌容器3Cの内部構成の一例を示す図である。図示を省略した本実施形態に係るバッグ把持用クリップは、図10に示す隔壁30が形成される部分においてバッグ2に当接される当接部と、上記当接部を支持する支持板とを含む。隔壁30は、バッグ把持用クリップ1によって把持されたバッグ2の第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とが密着する部分に形成される。
【0073】
隔壁30によって、バッグ2の内部の収容空間は、第1の空間31と第2の空間32とに分割される。撹拌容器3Cを用いて細胞懸濁液の撹拌を行う場合、第1の空間31と第2の空間32とは、水平方向に並置される。また、隔壁30によって、第1の空間31と第2の空間32とを連通させる連通部33が形成される。すなわち、撹拌容器3Cにおいて、隔壁30は、正面視矩形状のバッグ2の端部となる辺A3と、辺A3と対向するバッグ2の他方側の端部となる辺A4との間に、辺A3及び辺A4と交差する交差方向に伸びる部分を有し、連通部33が、隔壁30の上記交差方向に伸びる部分の延長線上に設けられている。より具体的には、隔壁30は、辺A3から辺A4に向けて直線的に伸びる部分を有し、隔壁30と辺A4との間に連通部33が設けられている。なお、隔壁30は、辺A4から辺A3に向けて直線的に伸びる部分を有し、隔壁30と辺A3との間に連通部33が設けられていてもよい。
【0074】
バッグ2は、第1の空間31に接続された通気ポート41及び第2の空間32に接続された通気ポート42を備えている。バッグ2の外部から通気ポート41及び42を介してバッグ2の内部に気体を導入することが可能である。また、バッグ2の底部には、送液ポート43が設けられており、送液ポート43を介して、バッグ2の内部から細胞懸濁液を排出したり、バッグ2の内部に細胞懸濁液を注入したりすることが可能である。
【0075】
撹拌容器3Cを用いて細胞懸濁液を撹拌する方法は、上記した第3の実施形態に係る撹拌容器3Bを用いる場合と同様であるので、説明は省略する。
【0076】
[第5の実施形態]
図11Aは、開示の技術の第5の実施形態に係る撹拌容器3Dの構成の一例を示す正面図、図11Bは、図11Aにおける11B-11B線に沿った断面図、図12は、図11Bに示す破線で囲んだ部分の拡大図であり、ジップ機構50の構成の一例を示す断面図である。
【0077】
図11Aに示すように、撹拌容器3Dは、第1の実施形態に係る撹拌容器3(図4参照)と同様の形態の隔壁30を、撹拌容器3Dの内部に有する。第1の実施形態に係る撹拌容器3においては、隔壁30は、バッグ2をバッグ把持用クリップ1で把持することによって形成されるものであった。これに対して、本実施形態に係る撹拌容器3Dは、互いに対向する第1のフィルムF1と第2のフィルムF2を線状に密着させる開閉可能なジップ機構50を内部に有し、ジップ機構50を閉状態とすることによって隔壁30が形成される。隔壁30によって、撹拌容器3Dの内部の収容空間は、第1の空間31と第2の空間32とに分割される。また、隔壁30によって、第1の空間31と第2の空間32とを連通させる連通部33が形成される。
【0078】
図12に示すように、ジップ機構50は、第1のフィルムF1の内側面に形成された凸部51と、第2のフィルムF2の内側面において凸部51に対向して配置された凹部52とを含んで構成されている。凸部51を凹部52に嵌合させることにより、ジップ機構50が閉状態となり、ジップ機構50の形成部位において第1のフィルムF1と第2のフィルムF2とが密着して撹拌容器3Dの内部に隔壁30が形成される。また、凸部51と凹部52との嵌合を解除することにより、ジップ機構50が開状態となり、撹拌容器3Dの内部から隔壁30が除去される。
【0079】
撹拌容器3Dは、第1の空間31に接続された通気ポート41及び第2の空間32に接続された通気ポート42を備えている。撹拌容器3Dの外部から通気ポート41及び42を介して撹拌容器3Dの内部に気体を導入することが可能である。また、第2の空間32の底部には、送液ポート43が設けられており、送液ポート43を介して、撹拌容器3Dの内部から細胞懸濁液を排出したり、撹拌容器3Dの内部に細胞懸濁液を注入したりすることが可能である。
【0080】
撹拌容器3Dを用いて細胞懸濁液を撹拌する方法は、上記した第1の実施形態に係る撹拌容器3を用いる場合と同様である。撹拌容器3Dによれば、撹拌処理後は、ジップ機構50を開状態とすることで、撹拌容器3Dの内部の隔壁30が除去され、細胞懸濁液を撹拌容器3Dの外部に排出する際に、排出の妨げとなる構造物がなくなるので、撹拌容器3Dの内部における細胞の残留を抑制することができる。これにより、細胞の回収率の低下を抑制することができる。
【0081】
なお、撹拌容器3Dにおいて、隔壁30の形態は、図8に示す撹拌容器3Bの隔壁30の形態と同様であってもよく、図10に示す撹拌容器3Cの隔壁30の形態と同様であってもよい。
【0082】
本出願は、2017年9月26日出願の日本出願である特願2017-184952の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は参照により本明細書に取り込まれる。また本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11A
図11B
図12