(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169817
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】高周波シールド構造
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20221102BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
H05K9/00 L
H05K9/00 M
H05K1/02 B
H05K1/02 L
H05K1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019180261
(22)【出願日】2019-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 翔
(72)【発明者】
【氏名】佐山 稔貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
【テーマコード(参考)】
5E321
5E338
【Fターム(参考)】
5E321AA14
5E321AA17
5E321BB21
5E321BB44
5E321CC06
5E321CC12
5E321GG09
5E321GH10
5E338AA01
5E338AA02
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB04
5E338BB54
5E338CC01
5E338CD02
5E338EE13
5E338EE32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コネクタ端子のシールドを簡易な構成で実現する高周波シールド構造を提供する。
【解決手段】高周波シールド構造100は、フレキシブル基板1と、フレキシブル基板に接続された同軸コネクタ7と、を備える。フレキシブル基板は、同軸コネクタが接続されると共に、同軸コネクタの信号線導体であるコネクタ端子7aが設けられる基板領域であるコネクタ接続部11と、コネクタ端子を覆うように、フレキシブル基板の端部13がコネクタ接続部側に折り返される基板領域である折り返し部12と、コネクタ接続部及び折り返し部に設けられ、コネクタ端子を覆う接地導体2と、コネクタ接続部側に設けられる接地導体と、折り返し部側を覆う接地導体とを、電気的に接続するグランド導体9と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板に接続された同軸コネクタと、
を備え、
前記フレキシブル基板は、
前記同軸コネクタが接続されると共に、前記同軸コネクタの信号線導体であるコネクタ端子が設けられる基板領域であるコネクタ接続部と、
前記コネクタ端子を覆うように、前記フレキシブル基板の端部が前記コネクタ接続部側に折り返される基板領域である折り返し部と、
前記コネクタ接続部及び前記折り返し部に設けられ、前記コネクタ端子を覆う接地導体と、
前記コネクタ接続部側に設けられる前記接地導体と、前記折り返し部側を覆う前記接地導体とを、電気的に接続するグランド導体と、
を備える高周波シールド構造。
【請求項2】
前記コネクタ接続部及び前記折り返し部によって形成される包状体を覆う前記接地導体2の内側の最大寸法は、不要放射を抑圧した周波数帯の中心周波数での波長の1/2波長以下である請求項1に記載の高周波シールド構造。
【請求項3】
前記同軸コネクタは、前記コネクタ接続部及び前記折り返し部によって形成される包状体の内部に設けられる請求項1又は2に記載の高周波シールド構造。
【請求項4】
前記同軸コネクタは、前記コネクタ接続部の端部に形成される凹部に配置され請求項1又は2に記載の高周波シールド構造。
【請求項5】
前記コネクタ接続部に形成される基板一体型導波路に前記折り返し部に設けられる前記接地導体が接続されることにより、閉ループのグランドが形成される請求項1~4の何れか一項に記載の高周波シールド構造。
【請求項6】
前記基板一体型導波路に前記折り返し部に設けられる前記接地導体を接触させる締結部材又ははんだを備える請求項5に記載の高周波シールド構造。
【請求項7】
前記折り返し部の端部寄りの領域は、前記コネクタ接続部に設けられる導体層に接するように折り返される請求項1~6の何れか一項に記載の高周波シールド構造。
【請求項8】
前記コネクタ接続部及び前記折り返し部によって形成される包状体の内側の空間の開口部を閉塞する閉塞部材を備える請求項1~7の何れか一項に記載の高周波シールド構造。
【請求項9】
前記コネクタ端子と対向して前記折り返し部に設けられる電波吸収体を備える請求項1~8の何れか一項に記載の高周波シールド構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に接続された同軸コネクタのコネクタ端子を高周波的にシールドする高周波シールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に接続されたコネクタの信号線導体であるコネクタ端子のシールド構造が開示される。特許文献1のシールド構造では、基板から露出するコネクタ端子をシールド材であるFPC(Flexible Printed Circuits)で覆い、FPCの基板への接触部分にはんだ付けが行われる。これにより、基板へのFPCの取り付けのために、FPCや基板にねじ穴を施して、ねじ、ワッシャ、及びナットを取り付けるなどの措置が不要になり、省スペースでありながら、取り付けが容易なシールド構造が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される従来技術では、コネクタ端子をシールドするために、追加の部品であるFPCなどが必要なため、構造をより一層簡素化しながらシールド構造を提供する上での改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、コネクタ端子のシールドを簡易な構成で実現できる高周波シールド構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、フレキシブル基板と、前記フレキシブル基板に接続された同軸コネクタと、を備え、前記フレキシブル基板は、前記同軸コネクタが接続されると共に、前記同軸コネクタの信号線導体であるコネクタ端子が設けられる基板領域であるコネクタ接続部と、
前記コネクタ端子を覆うように、前記フレキシブル基板の端部が前記コネクタ接続部側に折り返される基板領域である折り返し部と、前記コネクタ接続部及び前記折り返し部に設けられ、前記コネクタ端子を覆う接地導体と、前記コネクタ接続部側に設けられる前記接地導体と、前記折り返し部側を覆う前記接地導体とを、電気的に接続するグランド導体と、を備える高周波シールド構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、コネクタ端子のシールドを簡易な構成で実現できる高周波シールド構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の断面図である。
【
図2A】
図1の高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。
【
図2B】折り曲げ部が形成される前後のフレキシブル基板の状態を説明するための図である。
【
図2C】
図2Bに示す折り曲げ部が形成された後のフレキシブル基板の斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の断面図である。
【
図4】
図3の高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の断面図である。
【
図6】
図5に示す高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第3変形例の断面図である。
【
図8】
図7に示す高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第4変形例の断面図である。
【
図10】
図9に示す高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第5変形例の断面図である。
【
図12A】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第6変形例をXZ平面で平面視した図である。
【
図12B】第6変形例に係るフレキシブル基板の斜視図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第7変形例の断面図である。
【
図14A】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による効果を説明するための比較例の筐体モデルの斜視図である。
【
図14B】
図14AのモデルによるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図14C】
図14Aのモデルの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図14D】
図14Aのモデルの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図15A】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第1の効果を説明するためのモデルの斜視図である。
【
図15B】
図15Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図15C】
図15Aの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図15D】
図15Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図16A】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第2の効果を説明するためのモデルの斜視図である。
【
図16B】
図16Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図16C】
図16Aの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図16D】
図16Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図17A】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第3の効果を説明するための第1モデルの斜視図である。
【
図17C】
図17Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図17D】
図17Aの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図17E】
図17Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図18A】本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第3の効果を説明するための第2モデルの斜視図である。
【
図18C】
図18Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図18D】
図18Aの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図18E】
図18Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、例えばアンテナが設置される筐体が曲面で構成されている場合など、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。以下の図面において、X軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスX軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスX軸方向とする。Y軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスY軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスY軸方向とする。Z軸方向のうち、矢印で示す方向はプラスZ軸方向とし、当該方向とは逆の方向はマイナスZ軸方向とする。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構造を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
図1は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の断面図である。
図2Aは
図1の高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。
図2Bは折り曲げ部が形成される前後のフレキシブル基板の状態を説明するための図である。
図2Cは
図2Bに示す折り曲げ部が形成された後のフレキシブル基板の斜視図である。
【0011】
高周波シールド構造100は、フレキシブル基板1と、フレキシブル基板1に接続された同軸コネクタ7と、を備える。
【0012】
フレキシブル基板1は、コネクタ接続部11と、折り返し部12と、接地導体2と、導通用のグランド導体9とを備える。
【0013】
フレキシブル基板1は、曲げることが可能な柔軟性を有し、弱い力で繰り返し変形させることが可能であり、変形した場合にもその電気的特性を維持する特性をもつ基板である。フレキシブル基板1は、一般的なリジッド基板(総厚300μm~1,600μm)と比較して薄く、加工性に優れるため、複雑な形状加工が可能である。フレキシブル基板1は、例えば、厚み12μmから300μmの薄膜状の誘電体1aに、厚みが12μm~300μmの接地導体2(例えば、導体箔など)が張り合わされた構造である。
【0014】
誘電体1aには、ソルダーレジスト(レジスト/フォトレジスト)、カバーレイ(Coverlay)と呼ばれる材料で、ポリイミド、ポリエステルなどが使用される。導体箔の材料には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。誘電体1aは、例えば28GHzにおける誘電正接(いわゆる、tanδ)が0.01以下、特に0.01以下であることが好ましい。なお、28GHzにおける誘電正接は、GHz帯の周波数における指標の例である。そのため、28GHzにおける誘電正接が0.01以下であれば、例えば、1GHz~100GHzにおいても信号線導体4の伝送損失が抑制されるので、28GHz近傍に限らず、1GHz~100GHzにおけるアンテナ素子のアンテナ利得を向上できる。信号線導体4は、不図示のアンテナ素子に接続される導電性の信号線であり、例えば、フレキシブル基板1のコネクタ接続部11のプラスY軸方向の端面に設けられる。
図2Aに示すように、信号線導体4のマイナスZ軸方向の端部4aには、
図1の貫通孔11dと連通する貫通孔4a1が設けられている。貫通孔11dは、コネクタ接続部11に形成され、Y軸方向にコネクタ接続部11を貫通する穴である。
【0015】
アンテナ素子は、例えば
図2Aの信号線導体4のプラスZ軸方向側に設けられている。アンテナ素子は、マイクロ波やミリ波等の高周波帯(例えば、1GHz超~300GHz)の電波の送受に好適である。アンテナ素子は、例えば、V2X通信システム、第5世代移動通信システム(いわゆる、5G)、車載レーダーシステムなどに適用可能であるが、適用可能なシステムはこれらに限られない。周波数域としては、例えばITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)(5.89GHz)用や、5G(28GHz帯、3.6から6GHz帯、39GHz帯)用、Wi-Fi(2.4GHz、5GHz)用であってよい。
【0016】
コネクタ接続部11は、フレキシブル基板1全体の内、同軸コネクタ7が接続される基板領域である。コネクタ接続部11のマイナスY軸方向の端面側に、同軸コネクタ7の本体部7cが設けられる。同軸コネクタ7の本体部7cからプラスY軸方向に、コネクタ端子7aが伸びる。
【0017】
コネクタ端子7aは、高周波信号を伝送するための信号線導体である。コネクタ端子7aは、コネクタ接続部11に形成される貫通孔11dに挿入され、さらに、信号線導体4の端部4aに形成される貫通孔4a1に挿入される。
【0018】
図2Bに示すように、板状に展開したフレキシブル基板1の端部13側の領域(破線で示される領域)を、矢印Aの方向に折り返すことにより、折り返し部12が形成される。すなわち、フレキシブル基板1の端部13側の領域を、コネクタ端子7aを覆うように、コネクタ接続部11側に折り返されることにより、折り返し部12が形成される。
【0019】
折り返し部12のマイナスY軸方向の端面12aは、コネクタ接続部11のプラスY軸方向の端面11aとY軸方向において、対向する。そして、折り返し部12のマイナスX軸方向の先端部(フレキシブル基板1の端部13に相当)が、コネクタ接続部11に接することにより、包状体が形成される。コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体の内側には、空間8が形成される。
【0020】
接地導体2は、コネクタ接続部11及び折り返し部12に設けられ、コネクタ端子7aを覆うグラウンド用導体である。接地導体2は、コネクタ接続部11及び折り返し部12をXY平面で平面視したときに、上記の包状体の外側を覆うように設けられる。
【0021】
接地導体2は、フレキシブル基板1に形成される導体パターンでもよいし、フレキシブル基板1とは別に予め製造された後にフレキシブル基板1に配置される導体シート、導体基板などでもよい。接地導体2の材料には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。接地導体2の厚さは、0.09μm以上が好ましく、0.35μm以上がより好ましい。また、接地導体2の厚さは、110μm以下が好ましい。
【0022】
グランド導体9は、グランド用の導体であり、互いに接触するコネクタ接続部11及び折り返し部12に設けられる。グランド導体9は、コネクタ接続部11側の接地導体2と折り返し部12側の接地導体2とを、電気的に接続する中実又は中空の柱状導電体であることが好ましい。
【0023】
コネクタ接続部11側の接地導体2から、折り返し部12側の接地導体2に向かって伸びるグランド導体9と、接地導体2とによって、閉ループのグランドが形成される。
【0024】
図1に示す長さLは、包状体を覆う接地導体2の内側の最大寸法に相当する。長さLは、不要放射を抑圧した周波数帯の中心周波数での波長の1/2波長以下の値に設定される。包状体を覆う接地導体2の内側の最大寸法をこの値に設定することにより、不要放射がより一層小さくなり、高周波シールド構造100の周囲に設けられる機器へ与えるノイズの影響をより小さくできる。
【0025】
コネクタ端子7aの先端は、信号線導体4の貫通孔4a1を介して、空間8に突き出る。コネクタ端子7aに、はんだ5が設けられることにより、コネクタ端子7aが信号線導体4と電気的に接続される。コネクタ端子7aは、折り返し部12の端面12aとコネクタ接続部11の端面11aとが対向する領域に配置される。
【0026】
具体的には、折り返し部12に設けられた接地導体2を、XZ平面で平面視したとき、折り返し部12は、コネクタ端子7aをY軸方向に延長した仮想線VLから、プラスX軸方向とマイナスX軸方向へそれぞれ一定距離(例えば数mmから数十mm)離れた位置まで覆うと共に、当該仮想線VLから、プラスZ軸方向とマイナスZ軸方向へそれぞれ一定距離(例えば数mmから数十mm)離れた位置まで覆うように、配置される。折り返し部12が形成されたとき、折り返し部12の端面12aからコネクタ接続部11の端面11aまでの最短距離は、例えば1mm以下が好ましく、500um以下がより好ましい。なお、コネクタ端子7aの開放部の方向が、コネクタ端子7aの開放部の先に接続されるアンテナの放射パターンの方向に向いている場合、すなわちコネクタ端子7aが伸びる方向がアンテナのメインローブの方向と同じ場合、このアンテナの大事な放射パターンに影響を与え難い。放射パターンは、通信やレーダで使用する範囲である。
【0027】
コネクタ端子7aは、本体部7cに設けられるケーブル7bを介して、不図示のRFモジュールと電気的に接続される。RFモジュールは、各種機能を持つデバイスが実装された部品であり、一般的には増幅器、位相器、ミキサ、信号源、フィルタ、スイッチ、サーキュレータ、AD/DA(Analog to Digital / Digital to Analog)コンバータ、などのデバイスが実装され、入出力インターフェースにRFコネクタ及び電源/制御コネクタが設けられたものである。
【0028】
本実施の形態に係る高周波シールド構造100によれば、1つのフレキシブル基板1を折り曲げることで、コネクタ端子7aを覆うシールド構造を構成できる。これにより、フレキシブル基板1とは別の部品(例えば四角形状のシールド用部材)を追加する必要がなく、構造が簡素化されて信頼性が高い高周波シールド構造100を得ることができる。また、四角形状のシールド用部材を利用した場合、シールド用部材の4つの辺を固定する必要があるのに対して、本発明では、フレキシブル基板1の1つの辺、すなわちフレキシブル基板1の端部13をコネクタ接続部11に固定するだけで高周波シールド構造100を得ることができるため、固定に伴う作業量が少なくなり、高周波シールド構造100の組立工数が減り、高周波シールド構造100を低コストに製造できる。
【0029】
また、コネクタ端子7aを覆うシールド構造により、不要放射が小さくなり、高周波シールド構造100の周囲に設けられる機器へ与えるノイズの影響を小さくできる。また、高周波シールド構造100の周囲に存在する機器が高周波シールド構造100の近くに存在する場合でも、コネクタ端子7aが折り返し部12に覆われるため、コネクタ端子7aと当該機器とが容量結合し難くなり、アンテナ特性への影響を軽減できる。
【0030】
図3は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第1変形例の断面図である。
図4は
図3の高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。高周波シールド構造100と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第1変形例の高周波シールド構造100Aは、同軸コネクタ7に代えて、同軸コネクタ7Aを備える。
【0031】
同軸コネクタ7Aは、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体の内側の空間8に配置される。同軸コネクタ7Aは、例えば、コネクタ接続部11のプラスY軸方向の端面11a側に設置され、グランド導体10と電気的に接続される。
【0032】
グランド導体10は、同軸コネクタ7Aのグランド用の導体である。グランド導体10は、面状端子10bと、コネクタ接続部11に設けられる複数の柱状端子10aとを備える。
【0033】
面状端子10bは、コネクタ端子7aの端部の周囲を覆うように、コネクタ接続部11のプラスY軸方向の端面11aに設けられる。面状端子10bのプラスY軸方向の面には、同軸コネクタ7Aが設置される。面状端子10bのマイナスY軸方向の面には、柱状端子10aの一端に接続される。
【0034】
柱状端子10aは、面状端子10bから、コネクタ接続部11のマイナスY軸方向の接地導体2に向かって伸び、柱状端子10aの他端は、接地導体2に接続される。これにより、同軸コネクタ7Aは、接地導体2と電気的に接続される。同軸コネクタ7Aのケーブル7bは、例えば、空間8のマイナスZ軸方向に形成される開口部から、空間8の外部に引き出される。
【0035】
高周波シールド構造100Aによれば、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体の内側に同軸コネクタ7Aを設けることによって、コネクタ接続部11のマイナスY軸方向側に同軸コネクタ7Aが存在しなくなる分、高周波シールド構造100Aの全体寸法を小さくできる。従って、高周波シールド構造100Aの設置の自由度が増えると共に、高周波シールド構造100Aを備えるアンテナなどの小型化が可能である。
【0036】
図5は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第2変形例の断面図である。
図6は
図5に示す高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。高周波シールド構造100と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第2変形例の高周波シールド構造100Bは、同軸コネクタ7Aに代えて、同軸コネクタ7Bを備える。
【0037】
同軸コネクタ7Bは、コネクタ接続部11のマイナスZ軸方向の端部11cに形成される凹部11bに配置される。
【0038】
凹部11bは、コネクタ接続部11のマイナスZ軸方向の端部11cの一部が、プラスZ軸方向に向かって突形状に窪む部分である。凹部11bの底部11b1に同軸コネクタ7Bの本体部7cが接した状態で、同軸コネクタ7Bのコネクタ端子7aが、コネクタ接続部11上の信号線導体4に接続される。
【0039】
信号線導体4に接続される同軸コネクタ7Bのコネクタ端子7aは、折り返し部12の端面12aとコネクタ接続部11の端面11aとが対向する領域に配置される。
【0040】
折り返し部12に設けられた接地導体2を、XZ平面で平面視したとき、折り返し部12は、コネクタ端子7aをY軸方向に延長した仮想線VLから、プラスX軸方向とマイナスX軸方向へそれぞれ一定距離離れた位置まで覆うと共に、当該仮想線VLから、プラスZ軸方向とマイナスZ軸方向へそれぞれ一定距離離れた位置まで覆うように、配置される。
【0041】
なお、同軸コネクタ7Bの本体部7cのZ軸方向の長さは、凹部11bのZ軸方向の深さよりも短いことが好ましい。これにより、同軸コネクタ7Bの本体部7cの全体が、凹部11bに入り込み、コネクタ接続部11のマイナスZ軸方向の端部11cから、同軸コネクタ7Bの本体部7cが突き出る量を小さくできる。
【0042】
高周波シールド構造100Bによれば、コネクタ接続部11に形成される凹部11bに同軸コネクタ7Bを設けることによって、コネクタ接続部11のマイナスY軸方向側に同軸コネクタ7Bが突き出る量が小さくなり、高周波シールド構造100Bの全体寸法を小さくできる。
【0043】
また、高周波シールド構造100Bによれば、例えば、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体の内側に形成される空間8が狭くなり、第1変形例のように、空間8に同軸コネクタ7Bの全体を設置できない場合でも、空間8の一部を有効利用して同軸コネクタ7Bを設置できる。従って、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体の設計の自由度が増えると共に、高周波シールド構造100Bを備えるアンテナなどの小型化が可能である。
【0044】
図7は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の断面図である。
図8は
図7に示す高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。高周波シールド構造100と同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第3変形例の高周波シールド構造100Cは、SIW200と、同軸-SIW(Substrate Integrated Waveguide)変換器6とを備える。
【0045】
SIW200は、コネクタ接続部11に形成され、電磁波を遮蔽するシールド構造を有し、導波管モードで信号を伝達する基板一体型導波路である。SIW200は、基板内蔵導波路、ポスト壁導波路と称する場合もある。
【0046】
SIW200は、誘電体1aと、誘電体1aのプラスY軸方向の面に設けられる導体層21と、誘電体1aのマイナスY軸方向の面に設けられる導体層22と、誘電体1aに設けられる複数の導体柱20とによって構成される。同軸コネクタ7のコネクタ端子7aは、同軸-SIW変換器6を介して、SIW200に接続される。
【0047】
導体柱20は、導体層21から導体層22に向かって伸びて、導体層21及び導体層22を電気的に接続する中実又は中空の柱状導電体である。導体柱20は、SIW200中を伝搬する高周波信号が外部に漏洩しない間隔で複数配列されている。
【0048】
導体層21及び導体層22の材料には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。導体層21及び導体層22のそれぞれの厚さは、0.09μm以上が好ましく、0.35μm以上がより好ましい。また、導体層21及び導体層22のそれぞれの厚さは、110μm以下が好ましい。導体層21及び導体層22のそれぞれの厚さが上記範囲内であれば、アンテナ素子のアンテナ利得を高めることができる。
【0049】
折り返し部12の端部13には、複数の導体柱23と導体層24とが形成される。導体層24は、折り返し部12の接地導体2側とは反対側の面に設けられる。導体層24は、コネクタ接続部11の導体層21と対向した位置に設けられ、導体層21に接している。導体層24の材料は、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロムなどが用いられる。
【0050】
導体柱23は、接地導体2から導体層24に向かって伸びて、接地導体2及び導体層24を電気的に接続する中実又は中空の柱状導電体である。
【0051】
接地導体2と、導体柱23と、導体層24と、導体層21と、導体柱20と、コネクタ接続部11の導体層22とによって、閉ループのグランドが形成される。この閉ループのグランドを構成する導体層24及び導体層21の互いの接触状態を維持するため、締結部材27が用いられる。
【0052】
締結部材27は、例えば、折り返し部12からコネクタ接続部11に向かって貫通するねじと、当該ねじが締め込まれるナットとを組み合わせたものなどを例示できる。締結部材27を用いることにより、折り返し部12の導体層24がコネクタ接続部11の導体層21に密着する。
【0053】
高周波シールド構造100Cによれば、SIW200を利用して、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体に、閉ループのグランドを設けることができる。なお、同軸-SIW変換器6が形成された従来のフレキシブル基板では、折り返し部12が設けられていないため、同軸-SIW変換器6などに伝送される信号の使用周波数が、当該フレキシブル基板の周囲に存在する機器に影響を与える虞がある、また、従来のフレキシブル基板では、当該使用周波数における不要な放射電力によって、周囲に存在する機器に影響を与える虞がある。また、周囲に存在する機器による影響も懸念される。これに対して、高周波シールド構造100Cでは折り返し部12が設けられているため、このような問題を解決できる。また、高周波シールド構造100Cによれば、SIW200の導体層21に折り返し部12の導体層24を接続することで、閉ループのグランドを形成できるため、コネクタ端子7aの開放部の先に接続されるアンテナの放射パターンに影響を与え難い。
【0054】
なお高周波シールド構造100Cの構成は、高周波シールド構造100A及び高周波シールド構造100Bに組み合わせることも可能である。
【0055】
図9は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第4変形例の断面図である。
図10は
図9に示す高周波シールド構造をXZ平面で平面視した図である。高周波シールド構造100Cと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第4変形例の高周波シールド構造100Dは、締結部材27に代えて、はんだ26が用いられる。
【0056】
折り返し部12の端部寄りの領域には、複数の穴25が形成される。複数の穴25のそれぞれは、折り返し部12側の接地導体2から導体層24に向かって貫通する。この穴25に、はんだ26が設けられることにより、折り返し部12側の接地導体2が導体層24と電気的に接続される。接地導体2と、はんだ26と、導体層24と、導体層21と、導体柱20とによって、閉ループのグランドが形成される。
【0057】
高周波シールド構造100Dによれば、高周波シールド構造100Cと同様の効果を得ることができると共に、締結部材27が不要なため、構成が簡素化されて高周波シールド構造100Dを信頼性が向上する。また、締結部材27が利用されないため、例えば締結部材27の増し締めなどが不要になり、メンテナンスコストの上昇を抑制できる。
【0058】
図11は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第5変形例の断面図である。高周波シールド構造100Cと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第5変形例の高周波シールド構造100Eでは、折り返し部12の端部13寄りの領域に、折り返し部30が形成されている。
【0059】
折り返し部30は、折り返し部12の端部13寄りの領域を、矢印Bの方向に折り返すことにより形成される。すなわち、折り返し部12の外側に設けられる接地導体2が、コネクタ接続部11に設けられる導体層21に接するように、折り返し部12の端部13が折り返される。これにより、折り返し部12に設けられる接地導体2の一部が、導体層21に接することで、閉ループのグランドが形成される。
【0060】
高周波シールド構造100Eによれば、
図7に示す導体柱23などを設けなくても閉ループのグランドを設けることができ、構造が簡素化されて信頼性が向上する。
【0061】
図12Aは本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第6変形例をXZ平面で平面視した図である。
図12Bは第6変形例に係るフレキシブル基板の斜視図である。高周波シールド構造100Cと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第6変形例の高周波シールド構造100Fは、高周波シールド構造100Cの構成に加えて、2つの閉塞部材51を備える。
【0062】
閉塞部材51は、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体の内側の空間8のZ軸方向の開口部50を閉塞するための部材である。閉塞部材51は、フレキシブル基板1が備える接地導体2と同様の接地導体を備えるものとする。閉塞部材51は、例えば、フレキシブル基板1の一部を利用することができ、例えば、折り返し部12からZ軸方向に伸びている。
【0063】
図12Bには、折り返し部12と一体に形成される閉塞部材51が折り曲げられる前の状態が示される。この閉塞部材51を、開口部50が閉塞するように、矢印Cの方向に折り曲げることにより、
図12Aに示す高周波シールド構造100Fが形成される。
【0064】
折り曲げられた閉塞部材51は、例えば締結部材40によって、高周波シールド構造100Fを取り付ける機器の筐体などに固定される。
【0065】
なお、閉塞部材51は、開口部50の一部を閉塞するように構成してもよいし、開口部50の全体を閉塞するように構成してもよい。開口部50の一部を閉塞する場合、開口部50と閉塞部材51との間の隙間の寸法は、前述した長さL以下の値に設定することが好ましい。また、閉塞部材51は、フレキシブル基板1とは別体の部材を準備しておき、この部材を利用してもよい。
【0066】
高周波シールド構造100Fによれば、コネクタ接続部11及び折り返し部12によって形成される包状体のZ軸方向に形成される開口部50の少なくとも一部が閉塞されるため、不要放射がより一層抑制される。なお、フレキシブル基板1とは別体の部材を閉塞部材51として利用する場合、当該部材の4つの辺をフレキシブル基板1に固定する必要がある。これに対して、高周波シールド構造100Fによれば、折り返し部12と一体に形成される閉塞部材51を利用することで、例えば閉塞部材51の3つの辺を、フレキシブル基板1に固定するだけで高周波シールド構造100Fを得ることができる。そのため、固定に伴う作業量が少なくなり、高周波シールド構造100Fの組立工数が減り、高周波シールド構造100Fを低コストに製造できる。
【0067】
なお、高周波シールド構造100Fの閉塞構造は、高周波シールド構造100~高周波シールド構造100Dに組み合わせることも可能である。
【0068】
図13は本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造の第7変形例の断面図である。高周波シールド構造100Dと同様の構成及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。第7変形例の高周波シールド構造100Gは、高周波シールド構造100Dの構成に加え、電波吸収体52を備える。
【0069】
電波吸収体52は、コネクタ端子7aをY軸方向に延長した仮想線VL上において、例えば、折り返し部12の端面12aに固定される。電波吸収体は、例えばエコソーブ(登録商標)を例示できる。
【0070】
図14Aは本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による効果を説明するための比較例の筐体モデルの斜視図である。筐体モデル100'(比較例)は、例えば
図7の高周波シールド構造100Cから折り返し部12を省いた高周波シールド構造である。
【0071】
図14Aのモデルの設定値は、
図7において、
コネクタ接続部11のZ軸方向の長さL
1:22mm
誘電体1aの比誘電率:2.0
導体層21の厚さ:43μm
導体層22の厚さ:43μm
接地導体2の厚さ:43μm
信号線導体4の厚さ:43μmとした。
【0072】
図14Bは
図14AのモデルによるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。縦軸はSパラメータ、横軸は周波数である。Sパラメータは、同軸コネクタから見た同軸コネクタへ反射する電力と、マイクロストリップ線路からSIWへ抜ける電力との比率を表す。実線のS11は、同軸コネクタから見た同軸コネクタへ反射する電力、破線のS21は、同軸コネクタからSIWへ通過する電力を表す。
図14Bより、周波数28GHz付近において、反射電力が小さく、通過電力が約0dBで通過していることが分かる。
【0073】
図14Cは
図14Aのモデルの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。縦軸は高周波シールド構造から放射される電力合計値、横軸は周波数である。本比較例では、折り返し部12が設けられていないため、20GHz以下の領域では、同軸-SIW変換器として機能しておらず放射していないが、20GHz以上の高い領域では放射している。
【0074】
図14Dは
図14Aのモデルの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。縦軸は28GHzにおける特定の角度でのアンテナゲイン、横軸は球面座標系の角度を表す。実線は、マイナスY軸方向からプラスY軸方向に向かうYZ平面の角度におけるアンテナゲインをプロットしたものである。破線は、マイナスX軸方向からプラスX軸方向に向かうXY平面の角度におけるアンテナゲインをプロットしたものである。
【0075】
図15Aは本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第1の効果を説明するためのモデルの斜視図である。
図15Aには、
図7の高周波シールド構造100Cが模式的に示される。
図15Aの高周波シールド構造は、
図14Aのモデルに折り返し部12を追加したものである。
図15Aの高周波シールド構造では、長さLが、不要放射を抑圧した周波数帯の中心周波数での波長の1/2波長よりも長いものとする。
【0076】
図15Aの高周波シールド構造の設定値は、
コネクタ接続部11のZ軸方向の長さL
1:22mm
折り返し部12のX軸方向の長さL
2:8.5mm
折り返し部12のY軸方向の高さL
3:2mm
誘電体1aの比誘電率:2.0
導体層21の厚さ:43μm
導体層22の厚さ:43μm
接地導体2の厚さ:43μm
信号線導体4の厚さ:43μmとした。
【0077】
図15Bは
図15Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図15Bには、
図14Bと同様、Sパラメータが示される。
図15Bより、
図14Bと同様のシミュレーション結果が得られることから、折り返し部12を設けたことによる影響はないことが分かる。
【0078】
【0079】
図15Aの高周波シールド構造では、コネクタ接続部11及び折り返し部12により形成される開口部から電波が放射されるため、放射電力合計値は、
図14Cと同様のシミュレーション結果が得られる。
【0080】
図15Dは
図15Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図15Dには、
図14Dと同様、放射電力合計値が示される。
【0081】
図15Aの高周波シールド構造では、折り返し部12が設けられるため、コネクタ端子7aをY軸方向に延長した仮想線VLの延伸方向、すなわち0°方向へ放射される不要電波が抑制される。そのため、当該方向へのアンテナゲインが大幅に低下する。
【0082】
図16Aは本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第2の効果を説明するためのモデルの斜視図である。
図16Aには、
図12Aの高周波シールド構造100Fが模式的に示される。
【0083】
図16Aの高周波シールド構造は、
図15Aのモデルに閉塞部材51を追加したものである。
図16Aの高周波シールド構造では、
図15Aのモデルと同様に、長さLが、不要放射を抑圧した周波数帯の中心周波数での波長の1/2波長よりも長いものとする。
【0084】
図16Aの高周波シールド構造の設定値は、
コネクタ接続部11のZ軸方向の長さL
1:22mm
折り返し部12のX軸方向の長さL
2:8.5mm
折り返し部12のY軸方向の高さL
3:2mm
誘電体1aの比誘電率:2.0
導体層21の厚さ:43μm
導体層22の厚さ:43μm
接地導体2の厚さ:43μm
信号線導体4の厚さ:43μmとした。
【0085】
図16Bは
図16Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図16Bより、
図15Bと同様のシミュレーション結果が得られる。
【0086】
図16Cは
図16Aの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図16Aの高周波シールド構造では、閉塞部材51が追加されているため、開口部からの放射電波が抑制されるため、放射電力合計値が大幅に抑制される。
【0087】
図16Dは
図16Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図16Aの高周波シールド構造では、閉塞部材51が追加されているため、コネクタ端子7aをY軸方向に延長した仮想線VLの延伸方向、すなわち0°方向へ放射される不要電波が抑制され、さらに当該方向以外の方向へ放射される不要電波も抑制されるため、あらゆる方向へのアンテナゲインが大幅に低下する。
【0088】
図17Aは本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第3の効果を説明するための第1モデルの斜視図である。
図17Bは
図17Aの高周波シールド構造をXY平面で平面視した図である。
図17A及び
図17Bには、前述した長さLによる効果を説明するための高周波シールド構造が示される。
【0089】
図17Aの高周波シールド構造は、同軸コネクタの位置を90°反時計回り方向に移動させて、折り返し部12の形状を変形したものである。当該高周波シールド構造では、長さLが、不要放射を抑圧した周波数帯の中心周波数での波長の1/2波長よりも長いものとする。また、当該高周波シールド構造には、閉塞部材51が設けられていない。
【0090】
当該高周波シールド構造の設定値は、
コネクタ接続部11のZ軸方向の長さL1:22mm
折り返し部12のX軸方向の長さL2:4mm
折り返し部12のY軸方向の高さL3:8.5mm
誘電体1aの比誘電率:2.0
導体層21の厚さ:43μm
導体層22の厚さ:43μm
接地導体2の厚さ:43μm
信号線導体4の厚さ:43μmとした。
【0091】
【0092】
図18Aは本発明の実施の形態に係る高周波シールド構造による第3の効果を説明するための第2モデルの斜視図である。
図18Bは
図18Aの高周波シールド構造をXY平面で平面視した図である。
【0093】
図18A及び
図18Bには、
図17BのL
3を短くすることで、長さLが、不要放射を抑圧した周波数帯の中心周波数での波長の1/2波長未満とした高周波シールド構造が示される。
【0094】
当該高周波シールド構造の設定値は、
コネクタ接続部11のZ軸方向の長さL1:22mm
折り返し部12のX軸方向の長さL2:4mm
折り返し部12のY軸方向の高さL3:4.5mm
誘電体1aの比誘電率:2.0
導体層21の厚さ:43μm
導体層22の厚さ:43μm
接地導体2の厚さ:43μm
信号線導体4の厚さ:43μmとした。
【0095】
図18Cは
図18Aの高周波シールド構造によるSパラメータのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図18Dは
図18Aの高周波シールド構造から放射される電力のシミュレーション結果の一例を示す図である。
図18Eは
図18Aの高周波シールド構造を用いた場合のアンテナゲインのシミュレーション結果の一例を示す図である。
図18Cのシミュレーション結果は、
図17Cと同等であるが、
図18D及び
図18Eより、長さLを短くしたことで、電力合計値とアンテナゲインが大幅に低減されることが分かる。
【0096】
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 :フレキシブル基板
1a :誘電体
2 :接地導体
4 :信号線導体
4a :端部
4a1 :貫通孔
5 :はんだ
6 :同軸-SIW変換器
7,7A,7B :同軸コネクタ
7a :コネクタ端子
7b :ケーブル
7c :本体部
8 :空間
9,10 :グランド導体
10a :柱状端子
10b :面状端子
11 :コネクタ接続部
11a :端面
11b :凹部
11b1 :底部
11c :端部
11d :貫通孔
12 :折り返し部
12a :端面
13 :端部
20 :導体柱
21,22,23 :導体柱
24 :導体層
25 :穴
26 :はんだ
27 :締結部材
30 :折り返し部
40 :締結部材
50 :開口部
51 :閉塞部材
52 :電波吸収体
100 :高周波シールド構造
100' 筐体モデル
100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G :高周波シールド構造