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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169820
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221102BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B60J1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019182600
(22)【出願日】2019-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽
(72)【発明者】
【氏名】松島 孝典
(72)【発明者】
【氏名】木村 壮志
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA26
4G061BA02
4G061CB07
4G061CB16
4G061CB18
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD03
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】発光装置を封入した合わせガラスにおいて、発光素子に接続される配線を車内から目立ち難くすること。
【解決手段】本合わせガラスは、車内側ガラス板と、車外側ガラス板と、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板を接合する中間膜と、前記中間膜に封入された発光装置と、を有する車両用の合わせガラスであって、前記発光装置は、前記車内側ガラス板を介して前記車両の内部に光を出射する装置であり、前記中間膜は、前記車内側ガラス板と接合する第1の中間膜と、前記車外側ガラス板と接合する第2の中間膜と、を有し、前記発光装置よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率が50%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内側ガラス板と、車外側ガラス板と、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板を接合する中間膜と、前記中間膜に封入された発光装置と、を有する車両用の合わせガラスであって、
前記発光装置は、前記車内側ガラス板を介して前記車両の内部に光を出射する装置であり、
前記中間膜は、前記車内側ガラス板と接合する第1の中間膜と、前記車外側ガラス板と接合する第2の中間膜と、を有し、
前記発光装置よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率が50%以下である合わせガラス。
【請求項2】
前記部材は、前記車内側ガラス板及び前記第1の中間膜であり、前記車内側ガラス板の可視光線透過率が50%以下であり、前記第1の中間膜の可視光線透過率が90%以上である請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記部材は、前記車内側ガラス板及び前記第1の中間膜であり、前記車内側ガラス板の可視光線透過率が80%以上であり、前記第1の中間膜の可視光線透過率が50%以下である請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記部材は、前記車内側ガラス板及び前記第1の中間膜であり、前記車内側ガラス板の可視光線透過率が50%以下であり、前記第1の中間膜の可視光線透過率が50%以下である請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記車外側ガラス板の可視光線透過率が50%以下であり、前記第2の中間膜の可視光線透過率が90%以上である請求項1乃至4の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記車外側ガラス板の可視光線透過率が80%以上であり、前記第2の中間膜の可視光線透過率が50%以下である請求項1乃至4の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記車外側ガラス板の可視光線透過率が50%以下であり、前記第2の中間膜の可視光線透過率が50%以下である請求項1乃至4の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記発光装置は、発光素子を光源とする請求項1乃至7の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記発光素子は、発光ダイオードである請求項8に記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記発光装置は、基材と、前記基材に実装された複数の前記発光素子と、複数の前記発光素子に接続された配線と、バスバーとを有する請求項8又は9に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記発光素子の形状は、長さ0.1mm以上3.2mm以下、幅0.1mm以上2.0mm以下、高さ0.1mm以上1.0mm以下である請求項8乃至10の何れ一項に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記車内側ガラス板の車内側の面の周縁部には遮蔽層が形成されており、前記発光装置の周縁部の少なくとも一部は、平面視において、前記遮蔽層と重複している請求項1乃至11の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記発光装置の周縁部の少なくとも一部は、前記遮蔽層よりも内側に位置している請求項12に記載の合わせガラス。
【請求項14】
前記車内側ガラス板及び前記車外側ガラス板は湾曲形状である請求項1乃至13の何れ一項に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子を有する発光装置を封入した合わせガラスが、建材用途で使用されている。又、発光素子を有する発光装置を封入した合わせガラスを、自動車の窓ガラスとして使用する技術が検討されている。
【0003】
例えば、透明なガラスの支持体上に配置された1組の発光ダイオードを、合わせガラスである自動車用のルーフに封入し、照明手段として用いる技術が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6360828号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用の合わせガラスに発光素子を封入すると、発光素子の非発光時に発光素子に接続される配線が車内から視認されデザイン性が低下する問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、発光装置を封入した合わせガラスにおいて、発光素子に接続される配線を車内から目立ち難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本合わせガラスは、車内側ガラス板と、車外側ガラス板と、前記車内側ガラス板と前記車外側ガラス板を接合する中間膜と、前記中間膜に封入された発光装置と、を有する車両用の合わせガラスであって、前記発光装置は、前記車内側ガラス板を介して前記車両の内部に光を出射する装置であり、前記中間膜は、前記車内側ガラス板と接合する第1の中間膜と、前記車外側ガラス板と接合する第2の中間膜と、を有し、前記発光装置よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率が50%以下である。
【発明の効果】
【0008】
開示の一実施態様によれば、発光装置を封入した合わせガラスにおいて、発光素子に接続される配線を車内から目立ち難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る合わせガラスを例示する図である。
図2】本実施形態に係る合わせガラスの湾曲形状を例示する斜視図である。
図3】合わせガラスの取付角度について説明する図である。
図4図1(a)の領域Bの部分拡大平面図である。
図5】本実施形態に係る合わせガラスの変形例1を示す平面図である。
図6】本実施形態に係る合わせガラスの変形例2を示す平面図である。
図7】本実施形態に係る合わせガラスの変形例3を示す平面図である。
図8】本実施形態に係る合わせガラスの変形例4を示す平面図である。
図9】実施例について説明する図(その1)である。
図10】実施例について説明する図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本発明の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張している場合がある。
【0011】
なお、車両とは、代表的には自動車であるが、電車、船舶、航空機等を含む、合わせガラスを有する移動体を指すものとする。
【0012】
又、平面視とは合わせガラスの所定領域を合わせガラスの車内側の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは合わせガラスの所定領域を合わせガラスの車内側の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
図1は、本実施形態に係る合わせガラスを例示する図であり、図1(a)は合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示している。図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿う断面図である。
【0014】
図1に示すように、合わせガラス10は、ガラス板11と、ガラス板12と、中間膜13と、遮蔽層14と、発光装置15とを有する車両用の合わせガラスである。Bは、発光装置15が配置されている領域を示している。すなわち、合わせガラス10では、左辺及び右辺近傍の2つの領域に発光装置15が配置されている。但し、発光装置15は、合わせガラス10の1つの領域に配置されてもよいし、3つ以上の領域に配置されてもよい。又、発光装置15は、平面視において、遮蔽層14の内側領域全体に配置されていてもよい。
【0015】
なお、図1では、合わせガラス10を平板形状に示しているが、図2に示すように、合わせガラス10は長手方向及び短手方向の両方に湾曲した複曲形状であってもよい。或いは、合わせガラス10は、長手方向のみに湾曲した単曲形状や、短手方向のみに湾曲した単曲形状であってもよい。合わせガラス10が湾曲している場合、車外側に向けて凸となるように湾曲していることが好ましい。
【0016】
又、図1及び図2では、合わせガラス10を矩形状としているが、合わせガラス10の平面形状は矩形状には限定されず、台形状等を含む任意の形状として構わない。
【0017】
合わせガラス10は、例えば、車両用のフロントサイドガラス、リアサイドガラス、リアクォーターガラス、リアガラス、ルーフガラス、エクストラウインドウ等に適用できる。
【0018】
例えばリアガラスが前方に向け傾斜して車両に取り付けられていると、リアガラスだけでは車両の運転者の後方における視野が狭くなるため、後方の視認性が悪い。エクストラウインドウは、このような場合に、車両の運転者の後方視認性を向上させるために、車両のリアガラスの下方に取り付けられる。
【0019】
なお、エクストラウインドウの取付角度θは、リアガラスの取付角度θとは異なっていてもよい。エクストラウインドウの取付角度θは、地面に対し50°以上であってもよい。好ましくは、70°以上である。ここで、取付角度θとは、図3(a)及び図3(b)に示すように、合わせガラス10の水平方向の幅の中心点を、底辺から上辺まで順次結んだ線を中心線Lとし、該中心線Lと水平面H(地面と平行な平面)とがなす角度を指す。なお、図3(a)は合わせガラスを車両に取り付けて車室内から車室外に視認した様子を模式的に示しており、図3(b)は、図3(a)の中心線Lを通る縦断面を示している。
【0020】
上述した通り、リアガラスが前方に向け傾斜して車両に取り付けられている場合、すなわち、リアガラスの取付角度θが、地面に対し10°以上40°以下である場合、リアガラスの下方に更にエクストラウインドウが配置され、かつ、エクストラウインドウの取付角度θが地面に対し50°以上であれば、車両の運転者の後方における視野をより広くできる。
【0021】
なお、合わせガラス10はエクストラウインドウに限定されない。合わせガラス10の取付角度θが地面に対し50°以上であれば、合わせガラス10はリアガラスでもよいし、フロントサイドガラス、リアサイドガラス、リアクォーターガラスでもよい。すなわち、合わせガラス10の地面に対する取付角度θは50°以上が好ましい。より好ましくは70°以上である。
【0022】
一方、合わせガラス10の取付角度θが10°以下、すなわち地面とほぼ平行になるように取り付けられていてもよい。すなわち、合わせガラス10はルーフガラスでもよい。
【0023】
ガラス板11は、合わせガラス10を車両に取り付けたときに車内側となる車内側ガラス板である。又、ガラス板12は、合わせガラス10を車両に取り付けたときに車外側となる車外側ガラス板である。
【0024】
合わせガラス10が湾曲している場合、曲率半径は1000mm以上100000mm以下であることが好ましい。ガラス板11とガラス板12の曲率半径は同じでもよいし、異なっていてもよい。ガラス板11とガラス板12の曲率半径が異なっている場合は、ガラス板11の曲率半径の方がガラス板12の曲率半径よりも大きい。
【0025】
ガラス板11とガラス板12は互いに対向する一対のガラス板であり、中間膜13及び発光装置15は一対のガラス板の間に位置している。ガラス板11とガラス板12とは、中間膜13及び発光装置15を挟持した状態で固着されている。
【0026】
中間膜13は、ガラス板11とガラス板12を接合する膜である。中間膜13は、例えば、ガラス板11と接合する中間膜131と、ガラス板12と接合する中間膜132とを有する。中間膜131及び132とは別に、中間膜131と中間膜132の間に位置して発光装置15の外周を包囲する額縁状の中間膜を有してもよい。中間膜131及び132を特に区別する必要がない場合には、単に中間膜13と称する。
【0027】
なお、中間膜13の外周はエッジ処理されていることが好ましい。すなわち、中間膜13の端部(エッジ)は、ガラス板11及び12の端部(エッジ)から大きく飛び出さないように処理されていることが好ましい。中間膜13の端部のガラス板11及び12の端部からの飛びだし量が150μm以下であると、外観を損なわない点で好適である。但し、合わせガラス10がサイドガラスである場合には、下辺はドアパネルにより隠蔽されるため、中間膜13の下辺のエッジ処理は必須ではない。ガラス板11、ガラス板12、及び中間膜13の詳細については後述する。
【0028】
遮蔽層14は、不透明な層であり、例えば、合わせガラス10の周縁部に沿って帯状に設けることができる。遮蔽層14は、例えば、不透明な(例えば、黒色の)着色セラミック層である。遮蔽層14は、遮光性を持つ着色中間膜や着色フィルム、着色中間膜と着色セラミック層の組み合わせであってもよい。着色フィルムは赤外線反射フィルム等と一体化されていてもよい。合わせガラス10に不透明な遮蔽層14が存在することで、合わせガラス10の周縁部を車体に保持するウレタン等の樹脂の紫外線による劣化を抑制できる。
【0029】
遮蔽層14は、例えば、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットを含むセラミックカラーペーストをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、焼成することで形成できるが、これには限定されない。遮蔽層14は、例えば、黒色又は濃色顔料を含有する有機インクをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布し、乾燥させて形成してもよい。
【0030】
図1及び図2の例では、遮蔽層14は、ガラス板11の車内側の面の周縁部に設けられている。但し、遮蔽層14は、必要に応じ、ガラス板11の車内側の面の周縁部及びガラス板12の車内側の面の周縁部の両方に設けられてもよい。
【0031】
図4は、図1(a)の領域Bの部分拡大平面図である。但し、図4では、発光装置15の配線153の図示は省略されている。
【0032】
図1及び図4を参照すると、発光装置15は、基材151と、基材151に実装された複数の発光素子152と、各々の発光素子152に接続された配線153とを有する。発光装置15は、平面視において、例えば、周縁部の少なくとも一部が遮蔽層14と重複し、周縁部の少なくとも一部が遮蔽層14よりも内側に位置している。
【0033】
発光装置15は、必要に応じて、基材151や発光素子152や配線153以外の構成要素(発光素子152や配線153を被覆する保護層等)を有してもよい。発光装置15は、複数の発光素子152へ電力を供給するための不図示のバスバーを有してもよい。なお、図1では配線153が簡略化して描かれているが、実際には配線153は基材151上に複雑にレイアウトされる。
【0034】
基材151は、例えば、ポリエチレンテレフタレートである。基材151は、ポリエチレンナフタレート、ポリアニリン、ポリチオフェン、カーボンナノチューブ、グラフェン等であってもよい。
【0035】
発光素子152は、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)である。発光素子152は、有機EL(Organic Electro-Luminescence)、無機EL(Inorganic Electro-Luminescence)等であってもよい。なお、ここでいうLEDには、マイクロLEDも含まれる。
【0036】
発光素子152の形状は、特に限定されないが、例えば、直方体である。発光素子152が直方体である場合の大きさの一例を挙げれば、長さ 1.0mm×幅0.5mm×高さ0.2mm、長さ1.6mm×幅0.8mm×高さ0.3mm、長さ3.2mm×幅2.0mm×高さ1.0mm等である。
【0037】
発光素子152がLEDである場合、発光素子152の形状は、長さ0.1mm以上3.2mm以下、幅0.1mm以上2.0mm以下、高さ0.1mm以上1.0mm以下であることが好ましい。発光素子152の形状が、長さ0.1mm以上3.2mm以下、幅0.1mm以上2.0mm以下であれば、各々の発光素子152の発光が車内の乗客に視認されやすく、好ましい。また、発光素子152の高さ0.1mm以上1.0mm以下であれば、ガラス板11と、ガラス板12とを接合する中間膜13に封入でき、好ましい。
【0038】
発光素子152がマイクロLEDである場合、発光素子152の形状は、長さ、幅ともに100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。マイクロLEDの長さ、幅の下限値は、ともに製造上の諸条件等から、特にエッジ効果を低減するために3μm以上であることが好ましい。マイクロLEDの高さとしては、10μm以上50μm以下である。
【0039】
配線153としては、導電材料であれば特に限定されないが、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、金属ナノワイヤー(銀ナノワイヤー、銅ナノワイヤー等)等が挙げられる。
【0040】
バスバーとしては、銀、銅、錫、金、アルミニウム、鉄、タングステン、クロム、ニッケルからなる群から選択される少なくとも1つの金属、この群から選択される2つ以上の金属を含む合金、又は導電性有機ポリマー等を、スパッタ法等により形成してもよい。又、バスバーとして、銅リボンや平編み銅線を用いてもよいし、銀ペーストを、例えば、スクリーン印刷等の印刷方式により塗布、焼成して形成してもよい。バスバーは、発光装置15の周縁部に形成されることが好ましい。
【0041】
発光装置15は、ガラス板11を介して車両の内部に光を出射する装置であり、基材151をガラス板12側に向けて、複数の発光素子152をガラス板11側に向けて中間膜13に封入されている。発光装置15のガラス板11側の面(発光素子152の実装面)は中間膜131に被覆され、発光装置15のガラス板12側の面は中間膜132に被覆されている。なお、発光装置15の基材151の周縁部とガラス板11及び12の周縁部とは、必ずしも平行でなくてもよい。
【0042】
発光素子152の発光色は、特に限定されないが、例えは、赤、緑、青、黄、白等である。1つの基材151上に、互いに発光色の異なる複数の発光素子152が実装されてもよい。
【0043】
発光装置15は、複数の発光素子152を発光させて、車両の内部に向けて、例えば、文字(例えば、ロゴの表示、通知、警告表示等)を表示できる。又、発光装置15は、複数の発光素子152を発光させて、車両の内部に向けて、例えば、図形(例えば、矢印等)や模様を表示できる。すなわち、複数の発光素子152を規則的に配置してもよいし、不規則的、すなわち、個々の発光素子152の距離が同じである場合と異なる場合とが混在するように配置してもよい。なお、発光装置15は、ルームランプや紫外線除菌ランプ等として用いることもできる。
【0044】
発光装置15の周縁部の少なくとも一部が、平面視において、遮蔽層14と重複していることが好ましい。発光装置15の周縁部の少なくとも一部が、平面視において、遮蔽層14と重複していることで、発光装置15の周縁部の少なくとも一部を車外側及び/又は車内側から視認しにくいように隠蔽できる。すなわち、発光装置15の基材151のエッジを車外側及び/又は車内側から視認しにくいように隠蔽することで、基材151のエッジにより生じる透視歪を車外側及び/又は車内側から視認しにくいように隠蔽できる。また、発光装置15の周縁部に形成されるバスバーを車外側及び/又は車内側から視認しにくいように隠蔽できる。なお、ガラス板11の車内側の面の周縁部及びガラス板12の車内側の面の周縁部の両方に遮蔽層14が設けられた場合は、発光装置15と電気的に接続されるバスバーを車外側及び車内側の両方から視認しにくくなる点で好適である。
【0045】
ここで、ガラス板11、ガラス板12、及び中間膜13について詳述する。
【0046】
〔ガラス板〕
ガラス板11及び12は、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。合わせガラス10の外側に位置するガラス板12は、耐傷付き性の観点から無機ガラスであることが好ましく、成形性の観点からソーダライムガラスであることが好ましい。ガラス板11及びガラス板12がソーダライムガラスである場合、クリアガラス、鉄成分を所定量以上含むグリーンガラス及びUVカットグリーンガラスが好適に使用できる。
【0047】
無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0048】
強化ガラスは、例えば風冷強化ガラス等の物理強化ガラス、化学強化ガラスの何れでもよい。物理強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷させる等、徐冷以外の操作により、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力層を生じさせることで、ガラス表面を強化できる。
【0049】
化学強化ガラスである場合は、例えば、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化できる。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよく、更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板を用いてもよい。
【0050】
一方、有機ガラスの材料としては、ポリカーボネート、例えばポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の透明樹脂が挙げられる。
【0051】
ガラス板11及び12の形状は、特に矩形状に限定されるものではなく、種々の形状及び曲率に加工された形状であってもよい。ガラス板11及び12の曲げ成形には、重力成形、プレス成形、ローラー成形等が用いられる。ガラス板11及び12の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0052】
ガラス板12の板厚は、最薄部が1.1mm以上3mm以下であることが好ましい。ガラス板12の板厚が1.1mm以上であると、耐飛び石性能等の強度が十分であり、3mm以下であると、合わせガラス10の質量が大きくなり過ぎず、車両の燃費の点で好ましい。ガラス板12の板厚は、最薄部が1.8mm以上2.8mm以下がより好ましく、1.8mm以上2.6mm以下が更に好ましく、1.8mm以上2.2mm以下が更に好ましく、1.8mm以上2.0mm以下が更に好ましい。
【0053】
ガラス板11の板厚は、0.3mm以上2.3mm以下であることが好ましい。ガラス板11の板厚が0.3mm以上であることによりハンドリング性がよく、2.3mm以下であることにより質量が大きくなり過ぎない。
【0054】
又、ガラス板11及び12は、平板形状であっても湾曲形状であってもよい。しかし、ガラス板11及び12が湾曲形状であり、かつガラス板11の板厚が適切でない場合、ガラス板11及び12として特に曲がりが深いガラスを2枚成形すると、2枚の形状にミスマッチが生じ、圧着後の残留応力等のガラス品質に大きく影響する。
【0055】
しかし、ガラス板11の板厚を0.3mm以上2.3mm以下とすることで、残留応力等のガラス品質を維持できる。ガラス板11の板厚を0.3mm以上2.3mm以下とすることは、曲がりの深いガラスにおけるガラス品質の維持に特に有効である。ガラス板11の板厚は、0.5mm以上2.1mm以下がより好ましく、0.7mm以上1.9mm以下が更に好ましい。この範囲であれば、上記の効果が更に顕著となる。
【0056】
ガラス板11及び/又は12の外側に撥水、紫外線や赤外線カットの機能を有する被膜や、低反射特性、低放射特性を有する被膜を設けてもよい。又、ガラス板11及び/又は12の中間膜13と接する側に、紫外線や赤外線カット、低放射特性、可視光吸収、着色等の被膜を設けてもよい。
【0057】
ガラス板11及び12が湾曲形状の無機ガラスである場合、ガラス板11及び12は、フロート法による成形の後、中間膜13による接着前に、曲げ成形される。曲げ成形は、ガラスを加熱により軟化させて行われる。曲げ成形時のガラスの加熱温度は、大凡550℃~700℃である。
【0058】
〔中間膜〕
中間膜13としては熱可塑性樹脂が多く用いられ、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、アイオノマー樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、特許第6065221号に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。
【0059】
これらの中でも、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。上記可塑化ポリビニルアセタール系樹脂における「可塑化」とは、可塑剤の添加により可塑化されていることを意味する。その他の可塑化樹脂についても同様である。
【0060】
但し、中間膜13に発光装置15を封入する場合、封入する物の種類によっては特定の可塑剤により劣化することがあり、その場合には、その可塑剤を実質的に含有していない樹脂を用いることが好ましい。つまり、中間膜13が可塑剤を含まないことが好ましい場合がある。可塑剤を含有していない樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂等が挙げられる。
【0061】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下、必要に応じて「PVA」と言うこともある)とホルムアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルホルマール樹脂、PVAとアセトアルデヒドとを反応させて得られる狭義のポリビニルアセタール系樹脂、PVAとn-ブチルアルデヒドとを反応させて得られるポリビニルブチラール樹脂(以下、必要に応じて「PVB」と言うこともある)等が挙げられ、特に、透明性、耐候性、強度、接着力、耐貫通性、衝撃エネルギー吸収性、耐湿性、遮熱性、及び遮音性等の諸性能のバランスに優れることから、PVBが好適なものとして挙げられる。なお、これらのポリビニルアセタール系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
但し、中間膜13を形成する材料は、熱可塑性樹脂には限定されない。又、中間膜13は、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、発光剤等の機能性粒子を含んでもよい。又、中間膜13は、シェードバンドと呼ばれる着色部を有してもよい。着色部を形成するために用いられる着色顔料としては、プラスチック用として使用できるものであって、着色部の可視光線透過率が40%以下となるものであれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、アンスラキノン系、イソインドリノ系などの有機着色顔料や、酸化物、水酸化物、硫化物、クロム酸、硫酸塩、炭酸塩、珪酸塩、燐酸塩、砒酸塩、フェロシアン化物、炭素、金属粉などの無機着色顔料等が挙げられる。これらの着色顔料は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。着色顔料の添加量は、着色部の可視光線透過率が40%以下となるものであるかぎり、目的の色調に合わせて任意で良く、特に限定されるものではない。
【0063】
中間膜13の膜厚は、最薄部で0.5mm以上であることが好ましい。なお、中間膜13が第1の中間膜131及び第2の中間膜132からなる場合、中間膜13の膜厚とは、第1の中間膜131の膜厚と第2の中間膜132の膜厚とを合計した膜厚である。中間膜13の最薄部の膜厚が0.5mm以上であると合わせガラスとして必要な耐衝撃性が十分となる。又、中間膜13の膜厚は、最厚部で3mm以下であることが好ましい。中間膜13の膜厚の最大値が3mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎない。中間膜13の膜厚の最大値は2.8mm以下がより好ましく、2.6mm以下が更に好ましい。
【0064】
なお、中間膜13は、3層以上の層を有していてもよい。例えば、中間膜を3層以上から形成し、両側の層を除く何れかの層のせん断弾性率を可塑剤の調整等により両側の層のせん断弾性率よりも小さくすることにより、合わせガラス10の遮音性を向上できる。この場合、両側の層のせん断弾性率は同じでもよいし、異なってもよい。
【0065】
又、中間膜13に含まれる中間膜131及び132は、同一の材料で形成することが望ましいが、中間膜131及び132を異なる材料で形成してもよい。但し、ガラス板11及び12との接着性、或いは合わせガラス10の中に入れ込む機能材料等の観点から、中間膜13の膜厚の50%以上は上記の材料を使うことが望ましい。
【0066】
中間膜13を作製するには、例えば、中間膜となる上記の樹脂材料を適宜選択し、押出機を用い、加熱溶融状態で押し出し成形する。押出機の押出速度等の押出条件は均一となるように設定する。その後、押し出し成形された樹脂膜を、合わせガラスのデザインに合わせて、上辺及び下辺に曲率を持たせるために、例えば必要に応じ伸展することで、中間膜13が完成する。
【0067】
〔合わせガラス〕
合わせガラス10の総厚は、2.8mm以上10mm以下であることが好ましい。合わせガラス10の総厚が2.8mm以上であれば、十分な剛性を確保できる。又、合わせガラス10の総厚が10mm以下であれば、十分な透過率が得られると共にヘイズを低減できる。
【0068】
合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.5mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。ここで、ガラス板11とガラス板12の板ずれとは、すなわち、平面視におけるガラス板11の端部とガラス板12の端部のずれ量である。
【0069】
合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.5mm以下であると、外観を損なわない点で好適である。合わせガラス10の少なくとも1辺において、ガラス板11とガラス板12の板ずれが1.0mm以下であると、外観を損なわない点で更に好適である。
【0070】
合わせガラス10を製造するには、ガラス板11とガラス板12との間に、中間膜13及び発光装置15を挟んで積層体とする。そして、例えば、この積層体をゴム袋やラバーチャンバー、樹脂製の袋等の中に入れ、-65~-100kPaの真空中で温度約70~110℃で接着する。加熱条件、温度条件、及び積層方法は、発光装置15の性質に配慮して、例えば、積層中に劣化しないように適宜選択される。
【0071】
更に、例えば100~150℃、圧力0.6~1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラス10を得られる。但し、場合によっては工程の簡略化、並びに合わせガラス10中に封入する材料の特性を考慮して、この加熱加圧工程を使用しない場合もある。
【0072】
つまり、ガラス板11又はガラス板12のうち、何れか一方、又は両方のガラス板が互いに弾性変形した状態で接合されている、「コールドベンド」と呼ばれる方法を使用してもよい。コールドベンドは、テープ等の仮止め手段によって固定されたガラス板11、ガラス板12及び中間膜13及び発光装置15からなる積層体と、従来公知であるニップローラー又はゴム袋、ラバーチャンバー等の予備圧着装置及びオートクレーブを用いることで達成できる。
【0073】
ガラス板11とガラス板12との間に、本願の効果を損なわない範囲で、中間膜13及び発光装置15の他に、電熱線、赤外線反射、発光、発電、調光、タッチパネル、可視光反射、散乱、加飾、吸収等の機能を持つフィルムやデバイスを有してもよい。又、合わせガラス10の表面に防曇、撥水、遮熱、低反射等の機能を有する膜を有していてもよい。又、ガラス板11の車外側の面やガラス板12の車内側の面に遮熱、発熱等の機能を有する膜を有していてもよい。
【0074】
[発光素子の非発光時の配線、発光素子、基材の視認性]
発光装置15において、発光素子152の非発光時に、基材151のエッジ、発光素子152、及び配線153が車内から視認されないことがデザイン性向上の観点から好ましい。特に、発光素子152の非発光時に、不規則にレイアウトされた配線153が視認されると、デザイン性を大きく低下させるため、配線153を車内から視認され難くすることは重要である。
【0075】
車両用のフロントサイドガラス、リアサイドガラス、リアクォーターガラス、リアガラス、ルーフガラス、エクストラウインドウ等は、法規上、可視光線透過率の規定がないため、任意の可視光線透過率に設定可能である。そこで、合わせガラス10では、発光装置15よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率が50%以下としている。なお、可視光線透過率は、JIS R 3106:1998に準拠した方法で測定できる。
【0076】
合わせガラス10では、発光装置15よりも車内側に位置する部材は、ガラス板11及び中間膜131である。従って、合わせガラス10では、ガラス板11及び中間膜131の2層を透過する可視光線の可視光線透過率が50%以下である。より好ましくは、40%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
【0077】
このように、発光装置15よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率を50%以下とすることで、発光素子152の非発光時に、基材151のエッジ、発光素子152、及び配線153を車内から視認され難くできるため、デザイン性が向上する。
【0078】
但し、発光装置15よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率を40%以下とすることがより好ましく、30%以下とすることがより好ましく、20%以下とすることがより好ましく、10%以下とすることがより好ましく、5%以下とすることが更に好ましい。可視光線透過率を下げるほど、基材151のエッジ、発光素子152、及び配線153が車内から視認され難くなる。なお、発光装置15よりも車内側に位置する部材の合計の可視合計の光線透過率を下げた場合でも、発光素子152の発光時には、発光素子152の出射光を車内から視認可能である。
【0079】
ガラス板11及び中間膜131の可視光線透過率を50%以下とするためには、例えば、ガラス板11をプライバシーガラスとし、中間膜131をクリア中間膜とすればよい。この場合、例えば、ガラス板11の可視光線透過率が50%以下であり、中間膜131の可視光線透過率が90%以上である。
【0080】
又、ガラス板11及び中間膜131の可視光線透過率を50%以下とするためには、ガラス板11をグリーンガラス又はクリアガラスとし、中間膜131を着色中間膜としてもよい。この場合、例えば、ガラス板11の可視光線透過率が80%以上であり、中間膜131の可視光線透過率が50%以下である。
【0081】
又、ガラス板11及び中間膜131の可視光線透過率を50%以下とするためには、ガラス板11をプライバシーガラスとし、中間膜131を着色中間膜としてもよい。この場合、例えば、ガラス板11の可視光線透過率が50%以下であり、中間膜131の可視光線透過率が50%以下である。
【0082】
ここで、グリーンガラスは、透明度の高いガラスである。グリーンガラスの可視光線透過率は、例えば、板厚が1.6mm~2.0mmの場合で83~88%程度である。又、クリアガラスは、グリーンガラスよりも更に透明度の高いガラスであり、可視光線透過率は、例えば、板厚が1.8mm~2.0mmの場合で88~92%程度である。
【0083】
クリア中間膜は、透明度の高い中間膜である。クリア中間膜の可視光線透過率は、例えば、膜厚が0.76mmの場合で90~95%程度である。例えば、膜厚が0.76mmで可視光線透過率が93.7%の製品が、積水化学工業社やイーストマン社から市販されている。
【0084】
プライバシーガラスは、グリーンガラス及びクリアガラスよりも透明度の低いガラスであり、濃グレー色ガラスとも称される。プライバシーガラスは、ガラス板11において、Feに換算した全鉄の含有量を調整することで実現できる。プライバシーガラスの可視光線透過率は、例えば、板厚が1.8mmの場合で40~50%程度、板厚が2.0mmの場合で30~45%程度に調整可能である。
【0085】
プライバシーガラスの組成の一例を挙げると、酸化物基準の質量%表示で、ガラス母組成として、SiO:66~75%、NaO:10~20%、CaO:5~15%、MgO:0~6%、Al:0~5%、KO:0~5%、FeO:0.13~0.9%、Feで表した全鉄:0.8%以上、2.4%未満、TiO:1%超、5%以下、を含有し、当該ガラス母組成の成分の合量に対して、CoOを100~500質量ppm、Seを0~70質量ppm、及びCrを0~800質量ppm含有し、かつCoO、Se及びCrの合量が0.1質量%未満である。
【0086】
なお、プライバシーガラスについては、例えば、国際公開第2015/088026号に詳細に述べられており、その内容は本明細書に参考として援用できる。
【0087】
着色中間膜は、クリア中間膜よりも透明度の低い中間膜である。着色中間膜は、〔中間膜〕の説明で例示した材料を着色することで作製できる。具体的には、主として熱可塑性樹脂を含む組成物に着色剤を含有させることで着色中間膜が得られる。着色中間膜はガラス転移点を調整するための可塑剤を含有してもよい。
【0088】
着色剤としては、可視光線透過率を低下させるものであれば特に制限されず、染料、無機顔料、有機顔料等が挙げられる。これらの中でも、長期使用による退色のおそれが少ないことから無機顔料又は有機顔料が好ましく、耐光性に優れることから無機顔料が好ましい。
【0089】
有機顔料としては、アニリンブラック等の黒色顔料、アリザリンレーキ等の赤色顔料等が挙げられる。無機顔料としては、炭素系顔料、金属酸化物系顔料が挙げられる。例えば、カーボンブラック、アイボリーブラック、マルスブラック、ピーチブラック、ランプブラック、マグネタイト型四酸化三鉄等の黒色顔料、アンバー、バートンアンバー、イエローウォーカー、ヴァンダイクブラウン、シェンナ、バートンシェンナ等の茶色顔料、ベンガラ、モリブデンレッド、カドミウムレッド等の赤色顔料、赤口黄鉛、クロムバーミリオン等の橙色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー等の青色顔料、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、コバルトグリーン等の緑色顔料、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー等の黄色顔料、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレット等の紫色顔料等が挙げられる。これらの着色剤は1種又は2種以上を組合せて使用してもよい。
【0090】
着色剤の配合量は、中間膜131の可視光線透過率が50%以下になる量とする。着色中間膜は、更に、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、蛍光剤、接着性調整剤、カップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、脱水剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種類又は2種類以上を含有してもよい。
【0091】
着色中間膜は、着色されていない中間膜131の表面に暗色で印刷層を形成して着色中間膜とする方法で作製してもよい。暗色の印刷層の形成方法は、通常の、樹脂基材への有色の材料を用いた印刷方法が適用できる。有色の材料としては、上記着色剤と同様の有機顔料や無機顔料が挙げられる。なお、この場合の印刷層は、セラミックス製の遮蔽層のようにガラスの軟化点付近の温度での耐久性は必要ないため、例えば、カーボンブラックを含む有機顔料の使用が可能である。印刷層の厚さは、中間膜131の可視光線透過率が50%以下になる厚さに適宜調整可能である。
【0092】
なお、着色中間膜を用いることで、中間膜131の可視光線透過率を大幅に低減可能である。例えば、中間膜131の可視光線透過率を20%以下、10%以下、又は5%以下とすることも可能である。例えば、膜厚が0.76mmで可視光線透過率が1.33%の製品、及び膜厚が0.76mmで可視光線透過率が8.96%の製品が、積水化学工業社やイーストマン社から市販されている。又、膜厚が0.76mmで可視光線透過率が18.00%の製品が、積水化学工業社から市販されている。
【0093】
なお、ガラス板12の可視光線透過率を80%以上とし、ガラス板11の可視光線透過率を50%以下とする場合、ガラス板11とガラス板12で組成を同一にできないため、両者の曲げの条件も異なる。そのため、ガラス板11及び12が湾曲形状である場合に、ガラス板11とガラス板12を合わせガラス10の作製が容易にできる程度の形状精度で曲げることが困難である。
【0094】
そのため、ガラス板11及び12が湾曲形状である場合には、ガラス板11の可視光線透過率を50%以下とするよりも、中間膜131の可視光線透過率を50%以下とする方が好ましい。この場合、ガラス板11とガラス板12で組成を同一にでき、両者の曲げの条件も同一にできるため、合わせガラス10の製造が容易である。なお、可視光線透過率が50%以下のガラス板11と同じ組成で、同様に可視光線透過率が50%以下のガラス板12を用いてもよい。すなわち、ガラス板11とガラス板12とが同一組成であることが好ましい。
【0095】
なお、合わせガラス10では、発光装置15よりも車内側に位置する部材はガラス板11及び中間膜131であるが、合わせガラス10は、可視光線透過率を下げるために、発光装置15よりも車内側にガラス板11及び中間膜131以外の部材を有してもよい。
【0096】
例えば、合わせガラス10は、発光装置15よりも車内側にガラス板11及び中間膜131の他にプライバシーフィルムを有してもよい。プライバシーフィルムは、例えば、ガラス板11の車内側の面及び/又は車外側の面に配置できる。プライバシーフィルムとしては、例えば、スモークフィルム等の樹脂フィルムが挙げられる。
【0097】
例えば、3M社から、可視光線透過率が8~71%のフィルムが市販されている。又、リンテック社から、可視光線透過率が11~65%のフィルムが市販されている。又、アイケーシー社から、可視光線透過率が7~44%のフィルムが市販されている。例えば、これらの中から、発光装置15よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率が50%以下となるフィルムを選択し、プライバシーフィルムとして用いることができる。
【0098】
合わせガラス10が、発光装置15よりも車内側にプライバシーフィルムを有する場合、ガラス板11としてグリーンガラス及びクリアガラスを用い、中間膜131としてクリア中間膜を用いることも可能である。但し、プライバシーフィルムとプライバシーガラス及び/又は着色中間膜とを併用してもよい。
【0099】
このように、発光装置15において、発光素子152の非発光時に、基材151のエッジ、発光素子152、及び配線153を車内から視認され難くするためには、発光装置15よりも車内側に位置する部材の合計の可視光線透過率を50%以下とすると好適である。それに加え、発光装置15の背景となる発光装置15よりも車外側に位置するガラス板12及び/又は中間膜132の可視光線透過率を下げてもよい。これにより、発光素子152の非発光時に、基材151のエッジ、発光素子152、及び配線153が車内から更に視認され難くなると共に、車外からも視認され難くなる。
【0100】
ガラス板12及び/又は中間膜132の可視光線透過率を下げるためには、例えば、ガラス板12をプライバシーガラスとし、中間膜132をクリア中間膜とすればよい。この場合、例えば、ガラス板12の可視光線透過率が50%以下であり、中間膜132の可視光線透過率が90%以上である。
【0101】
又、ガラス板12及び/又は中間膜132の可視光線透過率を下げるためには、ガラス板12をグリーンガラス又はクリアガラスとし、中間膜132を着色中間膜としてもよい。この場合、例えば、ガラス板12の可視光線透過率が80%以上であり、中間膜132の可視光線透過率が50%以下である。
【0102】
又、ガラス板12及び/又は中間膜132の可視光線透過率を下げるためには、ガラス板12をプライバシーガラスとし、中間膜132を着色中間膜としてもよい。この場合、例えば、ガラス板12の可視光線透過率が50%以下であり、中間膜132の可視光線透過率が50%以下である。
【0103】
なお、図1では、合わせガラス10の左辺及び右辺近傍の2つの領域に発光装置15が配置される例を示したが、発光装置15は、合わせガラス10の左辺及び/又は右辺近傍の1つの領域に配置されてもよいし、3つ以上の領域に配置されてもよい。
【0104】
又、発光装置15が配置される領域は、合わせガラスの左辺及び右辺近傍には限定されず、例えば、図5に示す合わせガラス10Aのように、上辺近傍の2つの領域Bに発光装置15を配置してもよい。或いは、合わせガラス10Aの上辺近傍の1つ又は3つ以上の領域に、発光装置15を配置してもよい。
【0105】
又、図6に示す合わせガラス10Bように、下辺近傍の1つの領域Bに、発光装置15を配置してもよい。或いは、合わせガラス10Bの下辺近傍の2つ以上の領域に、発光装置15を配置してもよい。或いは、発光装置15は、合わせガラスの左辺近傍、右辺近傍、上辺近傍、及び下辺近傍から選択された何れか2つ以上の領域に配置してもよい。
【0106】
又、図7に示す合わせガラス10Cように、右下の角部近傍の1つの領域Bに、発光装置15を配置してもよい。或いは、合わせガラス10Cの右下の角部近傍の2つ以上の領域に、発光装置15を配置してもよい。或いは、合わせガラス10Cの右上、左上、及び/又は左下の角部近傍の1つ以上の領域に、発光装置15を配置してもよい。
【0107】
〈実施例〉
以下、実施例について説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。
【0108】
[例1]
合わせガラスとした際に外板(車外側ガラス板)となるガラス板12、内板(車内側ガラス板)となるガラス板11、及び2枚の中間膜131及び132を図9の例1の層構成に合わせて準備した。ガラス板11及び12の寸法は、何れも、300mm×300mm×板厚2mmとした。又、中間膜131及び132の寸法は、何れも、300mm×300mm×板厚0.76mmとした。又、ポリエチレンテレフタレート製の基材に長さ1.6mm×幅0.8mm×高さ0.3mmのLEDが複数個実装され、ITOで配線が形成された発光装置を準備した。
【0109】
なお、図9のガラス板11及び12の欄において、Pはプライバシーガラス、Cはクリアガラス、Greenはグリーンガラスを示している。又、図9の中間膜131及び132の欄において、Cはクリア中間膜、Gは着色中間膜を示しており、Gの括弧内は中間膜単体での可視光線透過率である。図10についても同様である。
【0110】
次にガラス板11とガラス板12との間に中間膜131と発光装置と中間膜132を挟んで積層体を作製し、積層体をゴム袋の中に入れ、-65~-100kPaの真空中で温度約70~110℃で接着した。そして、圧力0.6~1.3MPa、温度約100~150℃の条件で加圧及び加熱し、評価用合わせガラスLG1を作製した。
【0111】
そして、評価用合わせガラスLG1について、評価対象(基材のエッジ、LED、及び配線)の視認性の評価を行った。具体的には、評価用合わせガラスLG1をガラス板12側が下になるように白色台紙上に配置し、蛍光灯下において発光装置の全てのLEDを非発光状態とした。次に、観察者の視点から発光装置までの距離を0.4mとして、ガラス板11側から評価対象(基材のエッジ、LED、及び配線)が視認できるか否かを確認した。観察者は、1.5以上の視力を有する者を任意に10人選択し、全員が評価対象を視認できなかった場合を〇(合格)、7人以上が視認できなかった場合を△(合格)、それ以外を×(不合格)とした。
【0112】
又、評価用合わせガラスLG1について、評価用合わせガラスG1全体の可視光線透過率Tv1(%)と、ガラス板11及び中間膜131のみの可視光線透過率Tv2(%)を、JIS R 3106:1998に準拠した方法で測定した。
【0113】
[例2~例8]
ガラス板11及び12並びに中間膜131及び132を図9の例2~例8の層構成に合わせて準備した以外は例1と同様にして、評価用合わせガラスLG2~LG8を作製した。そして、評価用合わせガラスLG2~LG8について、例1と同様に、可視光線透過率Tv1及びTv2の測定と、視認性の評価を行った。
【0114】
[例9~例17]
ガラス板11及び12並びに中間膜131及び132を図10の例9~例17の層構成に合わせて準備した以外は例1と同様にして、評価用合わせガラスLG9~LG17を作製した。そして、評価用合わせガラスLG9~LG17について、例1と同様に、可視光線透過率Tv1及びTv2の測定と、視認性の評価を行った。
【0115】
[評価結果]
図9及び図10に、各々の評価用合わせガラスについて、ガラス板11及び12並びに中間膜131及び132の層構成と共に、可視光線透過率Tv1及びTv2、評価結果をまとめた。
【0116】
図9及び図10の評価結果より、可視光線透過率Tv2が50%以下であれば、発光素子の非発光時に、配線が車内側ガラス板となるガラス板11側から視認され難くなることがわかった。そして、可視光線透過率Tv2を50%以下とするには、ガラス板11をプライバシーガラスとするか、中間膜131を着色中間膜とするか、或いはその両方を行えばよいことがわかった。
【0117】
又、ガラス板12及び/又は中間膜132の透過率を下げることで、発光素子の非発光時に、配線に加えて、基材のエッジ及びLEDが車内側ガラス板となるガラス板11側から視認され難くなることがわかった。
【0118】
これらから、次のような結論が得られる。すなわち、ガラス板11をプライバシーガラスとするか、中間膜131を着色中間膜とするか、或いはその両方を行って可視光線透過率Tv2を50%以下とすることで、配線が車内側ガラス板となるガラス板11側から視認され難くなる点で好ましい。それに加えて、ガラス板12をプライバシーガラスとするか、中間膜132を着色中間膜とするか、或いはその両方を行うことで、配線と共に基材のエッジ及びLEDが車内側ガラス板となるガラス板11側から視認され難くなる点で更に好ましい。
【0119】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0120】
10、10A、10B、10C、10D 合わせガラス
11、12 ガラス板
13、131、132 中間膜
14 遮蔽層
15 発光装置
151 基材
152 発光素子
153 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10