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特開2022-169962発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップの製造方法
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  • 特開-発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169962
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20221102BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221102BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20221102BHJP
   B65D 3/22 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B5/18
B32B27/10
B65D3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075728
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西野 嘉貢
(72)【発明者】
【氏名】高野 宏行
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK04C
4F100AK06A
4F100BA03
4F100BA07
4F100DG10B
4F100DJ01A
4F100GB16
4F100JA13A
4F100JC00A
(57)【要約】
【課題】
本発明は、発泡性が良好で、カップとして使用した際の断熱性に優れた発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップの製造方法に関するものである。
【解決手段】
外面ポリエチレン樹脂層に、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を配合することにより、発泡性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂からなる発泡層と、紙基材層と、内面ポリエチレン樹脂層とを順に備える発泡用紙積層体であって、低密度ポリエチレン樹脂が、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする発泡用紙積層体に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂からなる発泡層と、紙基材層と、内面ポリエチレン樹脂層とを順に備える発泡用紙積層体であって、
低密度ポリエチレン樹脂が、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする発泡用紙積層体。
【請求項2】
低密度ポリエチレン樹脂が、バイオマスポリエチレン樹脂を0.5質量%以上含むことを特徴とする請求項1記載の発泡用紙積層体。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の発泡用紙積層体からなる胴部材と、基材の片面もしくは両面にポリエチレン樹脂がラミネートされた底板部材とからなる発泡用紙カップ。
【請求項4】
発泡層の形成された胴部と、底部とからなる発泡紙カップの製造方法であって、
発泡工程前の胴部は、外面ポリエチレン樹脂層と、紙基材と、内面ポリエチレン樹脂層とをこの順に積層した積層体からなり、
外面ポリエチレン樹脂層の樹脂密度が0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満であり、
外面ポリエチレン樹脂層が、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含み、
且つ、
外面ポリエチレン樹脂層を発泡させて発泡層を形成する発泡工程を有する、
ことを特徴とする発泡紙カップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス由来のポリエチレン樹脂層からなる発泡層を備えた発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
持続可能な開発目標(SDGs)を達成すべく、化石燃料からの脱却が望まれており、その一つの手段としてバイオマス素材の活用が提案されている。バイオマス素材の代表例としては、バイオマス樹脂について実用化が進んでいる。
【0003】
バイオマス樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)が知られているが、ポリエチレン、PETなどの汎用樹脂とは性質が大きく異なるため、広く普及するには至っていない。このため、再生可能な植物原料からエチレンを製造し、これを用いてバイオマス由来のポリエチレン樹脂(以下「バイオマスポリエチレン樹脂」という)を合成する取り組みが進められている(特許文献1)。
【0004】
ところが、ポリエチレン樹脂の用途は多岐に渡るため、それぞれの用途においてバイオマスポリエチレン樹脂の最適な使用態様は明らかになっていなかった。特に、発泡紙カップ用途におけるバイオマスポリエチレン樹脂の効果は明らかになっていなかった(特許文献2~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2011-506628号公報
【特許文献2】特開2014-133338号公報
【特許文献3】特開2015-214365号公報
【特許文献4】特開2017-196777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、発泡性が良好で、カップとして使用した際の断熱性に優れた発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップの製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、外面ポリエチレン樹脂層に、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を配合することにより、発泡性が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態は、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂からなる発泡層と、紙基材層と、内面ポリエチレン樹脂層とを順に備える発泡用紙積層体であって、低密度ポリエチレン樹脂が、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする発泡用紙積層体に関する。
【0009】
一実施形態は、低密度ポリエチレン樹脂が、バイオマスポリエチレン樹脂を0.5質量%以上含むことを特徴とする上記の発泡用紙積層体に関する。
【0010】
一実施形態は、上記の発泡用紙積層体からなる胴部材と、基材の片面もしくは両面にポリエチレン樹脂がラミネートされた底板部材とからなる発用泡紙カップに関する。
【0011】
一実施形態は、発泡層の形成された胴部と、底部とからなる発泡紙カップの製造方法であって、発泡工程前の胴部は、外面ポリエチレン樹脂層と、紙基材と、内面ポリエチレン樹脂層とをこの順に積層した積層体からなり、外面ポリエチレン樹脂層の樹脂密度が0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満であり、外面ポリエチレン樹脂層が、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含み、且つ、外面ポリエチレン樹脂層を発泡させて発泡層を形成する発泡工程を有する、ことを特徴とする発泡紙カップの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の完成により、発泡性が良好で、カップとして使用した際の断熱性に優れた発泡用紙積層体、発泡用紙カップ、及び発泡紙カップを製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発泡層に含まれる低密度バイオマスポリエチレン樹脂の配合量と、発泡層の厚みの関係をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、少なくとも、低密度ポリエチレン樹脂からなる発泡層と、紙基材層と、内面ポリエチレン樹脂層とを順に備える発泡用紙積層体に関するものである。以下、詳細について説明を行う。
【0015】
紙基材
本発明の積層体を構成する紙基材には特に限定はないが、非塗工紙、塗工紙などを使用できる。また、容器としての強靭さを実現する観点から紙基材の坪量は150~400g/m好ましく、更に好ましくは、250~350g/mである。
【0016】
非塗工紙は、原料パルプにクレー、タルク、二酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム粉末等の填料を加え、必要に応じてサイズ剤、紙力増強剤、定着剤等を添加して製造することができる。また、紙面強度を向上させるため、スチレン系樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、澱粉、カルボキシメチル化セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の薬品を表面に塗工してもよい。
【0017】
塗工紙としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム等の顔料と、ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエンラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエンラテックス等の接着剤とを含む塗工液を調整し、表面に塗工することで得ることができる。
【0018】
胴部:発泡層
発泡層には、密度0.91g/cm3以上、0.93g/cm3未満の低密度ポリエチレン樹脂を用いる。発泡層に融点の低い低密度ポリエチレン樹脂を用いることで、発泡加工の際に内面ポリエチレン樹脂層を発泡させることなく、発泡層を形成することができる。なお、本発明において発泡前の樹脂層を、外面ポリエチレン樹脂層と称する。
【0019】
また、低密度ポリエチレン樹脂は、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含む。低密度バイオマスポリエチレン樹脂を混合することにより、発泡性が向上し、発泡工程に要するエネルギーを削減できる。
【0020】
ここで、バイオマスポリエチレン樹脂とは、植物由来のエチレンから合成されたポリエチレン樹脂を指す。植物由来のエチレンは、植物(トウモロコシ、サトウキビ、タピオカ等)を発酵させて得られたエタノール等を原料として、周知の方法により製造することができる。なお、本発明では、化石燃料由来のポリエチレン樹脂を石化ポリエチレン樹脂と称し、バイオマスポリエチレン樹脂と区別して扱う。
【0021】
また、「バイオマス度」(ポリエチレン樹脂中のバイオマス由来の炭素濃度)とは、放射性炭素(C14)測定によりバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値であり、より具体的には、バイオベース濃度試験規格「ASTM-D6866-20」に従った測定によって算出された、全炭素中におけるバイオマス起源の炭素の含有量( 質量% ) をいう。大気中の二酸化炭素にはC14が一定量含まれており、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物のC14の含有量も同程度である。一方、化石燃料にはC14が殆ど含まれていない。したがって、ポリエチレン樹脂に含まれるC14の割合を測定することにより、ポリエチレン樹脂中のバイオマス由来の炭素濃度「バイオマス度」を算出することができる。
【0022】
低密度ポリエチレン樹脂は、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を0.5質量%配合することが好ましい。前記の通り、低密度ポリエチレン樹脂が低密度バイオマスポリエチレン樹脂を含むことにより、発泡性が向上し、発泡工程に要するエネルギーを削減できる。
【0023】
さらに、低密度ポリエチレン樹脂は、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を5質量%以上配合することがより好ましい。低密度バイオマスポリエチレン樹脂を5質量%以上配合することにより、発泡性が顕著に向上する。なお、本発明者らによって、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を10質量%配合するまでは、発泡性が顕著に向上する傾向が明らかになった。
【0024】
胴部:内面ポリエチレン樹脂層
一実施形態において、発泡層の紙基材を挟んで反対側の面に内面ポリエチレン樹脂層を有する。内面ポリエチレン樹脂層は、加熱処理した際に発泡しない熱可塑性樹脂、又は金属箔等である。内面ポリエチレン樹脂層の無い場合には、加熱処理の際にこの未被覆面から紙中の水分が大気中に蒸散してしまい、発泡層を形成することができなくなる。従って、内面ポリエチレン樹脂層を設けることにより、紙中の水分を効率良く発泡に寄与させることができる。
【0025】
内面ポリエチレン樹脂層には、発泡層と同様にポリエチレン樹脂を用いることができる。内面ポリエチレン樹脂層にポリエチレン樹脂を用いる場合は、発泡層に用いるポリエチレン樹脂(低密度ポリエチレン樹脂)よりも密度が高く、融点も高い中高密度ポリエチレン樹脂(密度0.93g/cm3以上)を用いることが好ましい。発泡層の融点を、内面ポリエチレン樹脂層の融点よりも低くすることで、発泡処理(加熱処理)の際に発泡層のみを効率よく発泡させることができる、なお、発泡層のみを選択的に発泡させるために、発泡層と内面ポリエチレン樹脂層の融点の差が5℃以上であることが好ましい。
【0026】
胴部:フランジ
フランジの形状には特に制限はなく、丸状フランジや、角折フランジを採用することができる。フランジの成型方法については後述する。
【0027】
底部
底部は、少なくとも紙基材からなるものである。本発明では胴部の内面にポリエチレン樹脂層が形成されているため、底部にポリエチレン樹脂層が形成されていないとしても、胴部と底部を接合させることができる。ただし、防水性の観点から、底部の内面にポリエチレン樹脂層を積層することが好ましい。なお、本発明においては、胴部の内面ポリエチレン樹脂層を“内面ポリエチレン樹脂層”と称し、底部の内面に形成されたポリエチレン樹脂層は“底部・内面ポリエチレン樹脂層”と称する。
【0028】
発泡紙カップの製造方法
次に、発泡紙カップの製造方法について説明する。
【0029】
胴部の作製方法
先ず、胴部の作製方法について一例を説明する。先ず、内面ポリエチレン樹脂層と、紙基材と、外面ポリエチレン樹脂層とをこの順に備える積層体を扇型に打ち抜く。次に、内面ポリエチレン樹脂層が内側に来るように巻き込み、端部でヒートシールして円筒状の胴部を作製する。
【0030】
胴部の製造方法:ラミネート条件
ここで、紙基材にポリエチレン樹脂層を積層する方法としては、押出ラミネートが挙げられる。
押出ラミネートの方法としては、シングルラミネート法、タンデムラミネート法、サンドウィッチラミネート法、共押出ラミネート法などを適宜選択することができる。
【0031】
ラミネート時のポリエチレン樹脂の(Tダイ直下)温度としては、260~350℃が好ましく、280~330℃がより好ましい。この範囲であれば、ポリエチレン樹脂層と紙基材間のラミネート強度を好適なものとすることができる。また、冷却ロールの表面温度は10~50℃の範囲で制御することが好ましい。
【0032】
ラミネート後のポリエチレン樹脂層の厚みには特に制限はないが、30~150μmが好ましく、40~100μmがより好ましい。この範囲であれば、カップ成型後に充分なカップ強度を実現できる。
【0033】
また、引取速度が遅すぎると、生産性が悪いため、引取速度は40m/分以上が好ましく、60m/分がより好ましい。一方、引取速度が速すぎると、ポリエチレン樹脂がネックインしやすく生産性が低下しやすい。したがって、引張速度は130m/分以下が好ましく、110m/分以下とすることがより好ましい。
【0034】
次に、エアギャップについて説明する。ここで、エアギャップとはTダイの押出口からニップロールまでの距離を指す。
【0035】
ラミネート加工時のエアギャップを広げすぎるとポリエチレン樹脂がネックインして生産性が低下すため、エアギャップは250mm以下が好ましく、200mm以下がより好ましい。
【0036】
本発明では、ポリエチレン樹脂がエアギャップを通過している間に、オゾンガス及び/又は酸素ガスで表面処理することが好ましい。オゾンガス及び/又は酸素ガスで表面処理することにより、酸化被膜の形成を促進し、基材層との接着力を向上させることができる。オゾンガス及び/又は酸素ガスの処理量には特に制限はないが、ポリエチレン樹脂の酸化を促進する観点で0.5mg/m2以上が好ましい。
【0037】
底部の作製方法
底部の作製方法について一例を説明する。先ず、底部・内面ポリエチレン樹脂層と、紙基材とからなる積層体(底部・内面ポリエチレン樹脂層を備えていなくてもよい)を円型に打ち抜く。次に、打ち抜いた積層体の周縁部をプレスにより折り曲げて底部を作製する。
【0038】
胴部と底部の接合
周縁部が折り曲げられた底部を胴部に嵌め込む。このとき、胴部の下端を折り曲げて、その隙間に底部の周縁部が挟み込まれるようにする。次に、胴部材と底板部材を熱溶着などにより接合させる。
【0039】
フランジ形成工程
本発明において、フランジの形成工程は、少なくとも胴部の上端を加熱しながらフランジ状に成型する成型工程と、フランジ成型後に熱を加える加熱工程とからなる。なお、発泡工程と加熱工程は兼ねることができる。以下詳細に説明する。
【0040】
成型工程
成型工程は、胴部の上端を少しずつ外側に向かってカールさせてフランジを得る工程である。なお、角折状のフランジ(角折フランジ)を得る場合には、カールさせて形成されたフランジ(丸状フランジ)を鋳型に嵌め込み、上面からプレスすることで角折状に成型することができる。
【0041】
また、成型の際には、胴部上端を加熱することが好ましい。加熱することで、紙基材が軟化して成型しやすくなり、生産性や歩留まりが向上する。なお、成型加工中、常に加熱している必要はなく、紙基材の厚みや硬さ、成型速度等によって、加熱するタイミングや間隔を適宜変更することができる。例えば、紙基材が柔らかく、成型速度が速い場合には、成型工程の最初の段階や、成型の途中で加熱すればよい。一方、紙基材が厚く、成型速度が遅い場合には、常時加熱しながら加熱することが好ましい。
【0042】
フランジの加熱工程は、工程を設けた目的が違うため、成型工程中の加熱とは区別する。具体的には、成型加工中の加熱は主として紙基材を軟化させることを目的とするものであるが、加熱工程における加熱は、ポリエチレン樹脂層を軟化・融解させて接着力を高め、フランジをより強固に固定することを目的とするものである。
【0043】
また、加熱工程では、ポリエチレン樹脂層が軟化・融解する程度まで加熱する必要があり、伝熱によって加熱した場合には、機材に樹脂片が付着・蓄積して、生産性や品質が低下しやすい。したがって、機材との接触を低減できる対流及び/又は熱放射による加熱が好ましい。対流による加熱装置の例としては、オーブンが挙げられる。また、熱放射による加熱装置の例としては、赤外線ヒーターなどが挙げられる。
【0044】
発泡工程
発泡工程は、胴部を加熱して紙基材に含まれる水分を揮発させて、その水分で外面ポリエチレン樹脂層を発泡させる工程である。発泡させようとする部位だけでなく、フランジも同時に加熱した場合には、フランジの加熱工程を発泡工程と兼ねることができる。
【0045】
前記の通り、外面ポリエチレン樹脂層に、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を配合することにより、発泡性が向上し、発泡工程に要するエネルギーを削減できる。
【実施例0046】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下に記載する「部」及び「%」は、特段の注釈の無い限り、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0047】
ポリエチレン樹脂
本実施例では、バイオマス由来の低密度バイオマスポリエチレン樹脂(B-LPDE)、高密度バイオマスポリエチレン樹脂(B-HDPE)及び化石燃料由来の低密度ポリエチレン樹脂(F-LDPE)を用いた。品名、メーカー及び樹脂密度は表1の通りである。
【0048】
【表1】
【0049】
積層体1
(工程1)紙基材の片面に、B-LDPEとB-HDPEの混合樹脂(B-LDPE:B-HDPE=40:60、密度0.943g/cm3)を押出ラミネートして、厚さ40μmの内面ポリエチレン樹脂層を積層した。(工程2)次に、紙基材を挟んで内面ポリエチレン樹脂層とは逆の面にF-LDPEを押出ラミネートして、厚さ70μmの外面ポリエチレン樹脂層を積層した(積層体1)。
【0050】
紙基材及びラミネート条件は以下の通りである。
(工程1)
紙基材:水分量23g/m2、坪量320g/m2
押出温度(Tダイ出口温度):320℃
引取速度(ラミネート速度):60m/分
エアギャップ:80mm
【0051】
(工程2)
押出温度(Tダイ出口温度):310℃
引取速度(ラミネート速度):60m/分
エアギャップ:80mm
【0052】
積層体2~10
外面ポリエチレン樹脂層に用いる樹脂原料を表2の通り変更して積層体2~10を製造した。樹脂原料以外の条件(押出温度、引取速度等)積層体1と同様である。
【0053】
【表2】
【0054】
試作例1
積層体1を扇型に打ち抜き、内面ポリエチレン樹脂層が内側に来るように巻き込み、端部でヒートシールして円筒状の胴部を作製した。胴部とは別に、積層体1を円型に打ち抜き、打ち抜いた積層体の周縁部をプレスにより折り曲げて底部を作製した。続いて、周縁部が折り曲げられた底部を、胴部に嵌め込み、400℃(0.5秒×2回)で熱溶着させて紙カップ(発泡前)を作製した。
【0055】
続いて、フランジ部を420℃で0.3秒加熱し、その直後胴部の上端を外側に向かってカールさせてフランジ(丸状)を作製した。さらに鋳型に嵌め込み、上面からプレスしてフランジを角折状に成型して、フランジ付き紙カップを得た。最後に、紙カップごと、120℃のオーブンで360秒加熱して、発泡紙カップ(試作例1)を得た。紙カップの口径は96φ、高さ107mmである。
【0056】
試作例2~10
表3の通り、積層体1を積層体2~10に変更して試作例2~10を作製した。積層体以外の諸条件(成型条件、加熱条件等)は試作例1と同様である。
【0057】
(評価)
発泡工程後の発泡層の厚み(μm)を測定した。結果は表3の通りである。
【0058】
【表3】
【0059】
表3および図1より、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を配合することで発泡性が向上し、特に10質量%程度配合するまでは発泡性が顕著に向上することがわかる。このことから、低密度バイオマスポリエチレン樹脂が発泡性に有効なことは明らかである。なお、生産時のロット振れを抑制するという点においては、低密度バイオマスポリエチレン樹脂の配合量が多少振れても、発泡性に変化がない方が好ましい。本発明においては、低密度バイオマスポリエチレン樹脂を10質量%以上配合することでロット振れを抑制できる。
図1