(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169965
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】酸化銅ナノワイヤーを用いた接合材料とその製造方法及び接合方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20221102BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20221102BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20221102BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B22F1/00 L
B22F1/00 C
B22F1/02 A
H01B1/22 D
H01B1/00 L
H01B1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075733
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】518427074
【氏名又は名称】LG Japan Lab株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】西川 宏
【テーマコード(参考)】
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4K018AA04
4K018BA02
4K018BB03
4K018BB05
4K018BC01
4K018BD04
4K018DA11
4K018DA31
4K018KA34
5G301DA06
5G301DA23
5G301DA42
5G301DD03
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】
低温で接合可能であって、高い接合強度を得ることができる接合材料とその製造方法、及び接合方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料と、を含むことを特徴とする、接合材料とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料と、を含むことを特徴とする、接合材料。
【請求項2】
前記酸化銅ナノワイヤーが、前記金属材料の表面に形成されている、請求項1に記載の接合材料。
【請求項3】
酸化銅ナノワイヤーが表面に形成された金属材料の粉砕物を含む、請求項1に記載の接合材料。
【請求項4】
前記金属材料が微粒子である、請求項1から3のいずれか一項に記載の接合材料。
【請求項5】
前記酸化銅ナノワイヤーの線径に対する長さの平均アスペクト比が、2以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の接合材料。
【請求項6】
前記酸化銅ナノワイヤーの平均線径が5nm以上300nm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の接合材料。
【請求項7】
前記酸化銅ナノワイヤーが、酸化第二銅を50体積%以上含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の接合材料。
【請求項8】
金属銅を含有する母体金属材料を酸素含有雰囲気下、250~550℃で1時間を超えて加熱する工程を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の接合材料の製造方法。
【請求項9】
母体金属材料を加熱する工程の前に、母体金属材料と溶媒を混合する工程を有する、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
母体金属材料を加熱する工程の後に、加熱した母体金属材料を粉砕する工程と、得られた粉砕物と溶媒を混合する工程とをさらに有する、請求項8に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の接合材料を、還元雰囲気下で加熱する、又は還元剤と混合した後に加熱焼結する工程を含むことを特徴とする、接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化銅ナノワイヤーを用いた接合材料とその製造方法及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体における基板とチップの接合にはその放熱性の高さから銀ペーストを用いた加熱接合が主流となっている。しかしながら、銀はイオンマイグレーション耐性が低く、さらにその材料コストの高さから、イオンマイグレーション耐性が高く安価であり銀と同等の熱伝導率を持つ、銅ペーストを用いた接合技術が近年着目されている。
【0003】
一方で、ペーストを用いた基板とチップの加熱接合時には、その熱的損傷や加熱冷却後の残留応力の観点から、接合時の加熱温度は低温であるほうが望ましい。一般に、金属粒子の粒径が小さくなればなるほど、その融点は低くなるため、近年では金属ナノ粒子を用いたペーストによる低温接合が技術潮流となっている。一方、金属ナノ粒子は活性が高く、凝集や酸化が起きやすいため、凝集や酸化を防止する有機保護剤を添加するのが通例である。例えば、シリコーンオイルを銅粒子に被覆することで耐酸化性を向上させる技術も提案されている(特許文献1)。しかしながら、このような有機物は低温の加熱接合では有機物が残留してしまい、完全に除去することが難しく、このような残留物は接合を阻害させる要因となる。
【0004】
このような問題を解決するため、金属酸化物由来のペーストを用いた還元接合技術の研究が進められている。酸化物粒子は金属ナノ粒子のように酸化する懸念がなく、かつ金属ナノ粒子のように凝集が起きにくいため、有機保護剤が不要であり、有機物残留による焼結阻害が生じない。金属酸化物は加熱接合中に還元性ガスや還元剤により金属粒子に還元され、金属粒子同士の焼結により接合を可能とする。例えば、特許文献2は、酸化銅ナノ粒子が表面を被覆しているマイクロ銅粒子を開示している。しかしながら、マイクロ銅粒子の表面積に対し酸化銅ナノ粒子の体積はわずかであり、ナノサイズ粒子による低温接合効果が十分に発揮できず、強固な接合層を確保することが難しい。
【0005】
特許文献3には、粒径2nm以上50nm以下の1次粒子、および粒径3nm以上1000nm以下の酸化第二銅粒子の製造方法およびその接合方法が開示されている。また、特許文献4には、銅・酸化第一銅複合ナノ粒子を主材とする焼結接合剤、その製造方法およびそれを用いた接合方法が開示されている。しかしながら、いずれの製造方法も工程が煩雑であり、収集効率が良い製造方法とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-60779号公報
【特許文献2】特開2017-74598号公報
【特許文献3】特開2012-99384号公報
【特許文献4】国際公開第2016/088554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低温で接合可能であって、高い接合強度を得ることができる接合材料とその製造方法、及び接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、様々な手段を検討した結果、金属銅を含有する母体金属材料を特定の条件下で加熱することにより、ナノメートルオーダーである酸化銅ナノワイヤーを簡便に製造できることを見出し、さらに、接合材料として、酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料と、を用いることで、低温で接合可能であって、接合強度の高い接合層を得られやすくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、以下に関するものである。
[1]酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料と、を含むことを特徴とする、接合材料。
[2]前記酸化銅ナノワイヤーが、前記金属材料の表面に形成されている、[1]に記載の接合材料。
[3]酸化銅ナノワイヤーが表面に形成された金属材料の粉砕物を含む、[1]に記載の接合材料。
[4]前記金属材料が微粒子である、[1]から[3]のいずれかに記載の接合材料。
[5]前記酸化銅ナノワイヤーの線径に対する長さの平均アスペクト比が、2以上である、[1]から[4]のいずれかに記載の接合材料。
[6]前記酸化銅ナノワイヤーの平均線径が5nm以上300nm以下である、[1]から[5]のいずれかに記載の接合材料。
[7]前記酸化銅ナノワイヤーが、酸化第二銅を50体積%以上含有する、[1]から[6]のいずれかに記載の接合材料。
[8]金属銅を含有する母体金属材料を酸素含有雰囲気下、250~550℃で1時間を超えて加熱する工程を有することを特徴とする、[1]から[7]のいずれかに記載の接合材料の製造方法。
[9]母体金属材料を加熱する工程の前に、母体金属材料と溶媒を混合する工程を有する、[8]に記載の製造方法。
[10]母体金属材料を加熱する工程の後に、加熱した母体金属材料を粉砕する工程と、得られた粉砕物と溶媒を混合する工程とをさらに有する、[8]に記載の製造方法。
[11][1]から[7]のいずれかに記載の接合材料を、還元雰囲気下で加熱する、又は還元剤と混合した後に加熱焼結する工程を含むことを特徴とする、接合方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温で接合可能であって、高い接合強度を得ることができる接合材料とその製造方法、及び接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる酸化銅ナノワイヤー及び金属材料の走査電子顕微鏡像である。
【
図2】比較例にかかる金属材料の走査電子顕微鏡像である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる酸化銅ナノワイヤー及び金属材料の走査電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[第1実施形態]
本発明の一実施形態にかかる接合材料は、酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料と、を含むことを特徴とする接合材料である。
【0014】
(酸化銅ナノワイヤー)
本実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーは、酸化銅を含み、ナノメートルオーダー(1~999nm)の線径を有する線状の構造体を意味する。本発明の一実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーは、100nm以上の平均長さを有し、その上限は特に限定されないが、例えば10000nm以下の平均長さを有する。酸化銅ナノワイヤーは、体積に対して表面積が大きいために化学的活性が高く、以下に示されるように、接合材に含有させることで、焼結温度を低下させ、焼結助剤として働くと考えられる。
なお、酸化銅ナノワイヤーの平均長さは、以下の平均アスペクト比と同様の方法で測定することができる。
【0015】
発明の一実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーは、酸化第二銅を50体積%以上含有することが好ましく、酸化第二銅を70体積%以上含有することがより好ましく、酸化第二銅を90体積%以上含有することがさらに好ましく、酸化第二銅からなることが特に好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーの平均線径は、5nm以上300nm以下であることが好ましく、5nm以上200nm以下であることがより好ましく、5nm以上100nm以下であることがさらに好ましい。酸化銅ナノワイヤーの平均線径が300nm以下であることにより、より低温での接合が可能となる。なお、酸化銅ナノワイヤーの平均線径は、以下の平均アスペクト比と同様の方法で測定することができる。
【0017】
発明の一実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーの線径に対する長さの平均アスペクト比は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、20以上であることが特に好ましい。線径に対する長さの平均アスペクト比が2以上であることにより、より低温での接合が可能となり、接合強度の高い接合層が得られやすくなる。酸化銅ナノワイヤーの線径に対する長さの平均アスペクト比の上限値は特に限定されず、100以下であってもよい。酸化銅ナノワイヤーは、粉砕処理が施される場合、その平均アスペクト比がより小さい値となるが、その場合であっても2以上であることが好ましい。なお、酸化銅ナノワイヤーの平均アスペクト比は、走査電子顕微鏡(SEM)画像の画像解析によって任意の5本について線径及び長さを測定してアスペクト比を算出し、その平均値とすることができる。
【0018】
(金属材料)
本実施形態においては、金属材料は、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む。上述したように、母体金属材料を一定の条件下で加熱することにより、母体金属材料の表面から成長するように酸化銅ナノワイヤーの形成が起こるが、金属材料とは、酸化銅ナノワイヤー以外の部分を意味する。本発明の一実施形態においては、金属材料は、少なくとも一部が酸化された(例えばその表面に薄膜状の酸化被膜が形成された)金属銅であり、金属銅及び酸化銅を含む。酸化銅には、酸化第一銅及び酸化第二銅からなる群から選択される少なくとも一種が含まれる。金属材料中の金属銅の割合は、0~50質量%が好ましく、0~30質量%がより好ましく、0~10質量%がさらに好ましい。金属材料中の酸化銅の割合は、50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましい。金属材料に含まれる酸化第二銅と酸化第一銅との割合は、5:5~10:0であり、好ましくは7:3~10:0であり、より好ましくは9:1~10:0である。金属材料に含まれる金属銅、酸化第二銅、酸化第一銅の割合は、X線回折装置を用いて測定することができる。
【0019】
金属材料の形状は特に限定されず、粒子状、板状、棒状、薄膜、フレーク状であってもよく、前記の形状のものが粉砕された粉砕物であってもよい。本発明の一実施形態においては、金属材料は、微粒子であることが好ましい。微粒子であることにより、体積に対する表面積が大きくなることで、より低温での接合が可能となる。
金属材料の平均粒径としては、特に限定されず、0.01μm以上10μm以下のもの、1μm以上100μm以下のもの、3μm以上500μm以下のもの等を用いることができる。なお、金属材料の平均粒径は、SEM画像を用いた画像解析によって金属材料10個の粒径を測定し、その平均値とすることができる。
金属材料が球状でない場合は、金属材料に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺と短辺の平均値をその金属材料の粒径とし、金属材料10個の粒径の平均値を平均粒径とする。
【0020】
(接合材料)
本発明の一実施形態においては、接合材料は、酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料とを含む。酸化銅ナノワイヤーと金属材料とを含むことにより、低温(例えば400℃以下の加熱焼結温度)で接合可能であって、高い接合強度を得ることが可能な接合材料となっている。
【0021】
接合材料に含まれる酸化銅ナノワイヤーと金属材料との割合は、0.1:9.9~5:5であることが好ましい。接合材料に含まれる酸化銅ナノワイヤーと金属材料との割合として、SEM画像を用いた画像解析によって算出される推定値を用いることができる。
【0022】
また、接合材料には、溶媒や、例えばバインダーとしての役割を果たすオリゴマー成分、樹脂成分、有機溶剤(固形分の一部を溶解又は分散していてよい)、界面活性剤、増粘剤又は表面張力調整剤等の任意成分を添加してもよい。かかる任意成分としては、特に限定されない。
【0023】
任意成分のうちの溶媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを使用可能であり、例えば炭化水素及びアルコール等が挙げられる。
【0024】
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、環状炭化水素及び脂環式炭化水素等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
脂肪族炭化水素としては、例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トリデカン、メチルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0026】
環状炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0027】
更に、脂環式炭化水素としては、例えば、リモネン、ジペンテン、テルピネン、ターピネン(テルピネンともいう。)、ネソール、シネン、オレンジフレーバー、テルピノレン、ターピノレン(テルピノレンともいう。)、フェランドレン、メンタジエン、テレベン、ジヒドロサイメン、モスレン、イソテルピネン、イソターピネン(イソテルピネンともいう。)、クリトメン、カウツシン、カジェプテン、オイリメン、ピネン、テレビン、メンタン、ピナン、テルペン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0028】
また、アルコールは、OH基を分子構造中に1つ以上含む化合物であり、脂肪族アルコール、環状アルコール及び脂環式アルコールが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、OH基の一部は、本発明の効果を損なわない範囲でアセトキシ基等に誘導されていてもよい。
【0029】
脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘプタノール、オクタノール(1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール等)、デカノール(1-デカノール等)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコール等の飽和又は不飽和C6-30脂肪族アルコール等が挙げられる。
【0030】
環状アルコールとしては、例えば、クレゾール、オイゲノール等が挙げられる。
【0031】
更に、脂環式アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール、テルピネオール(α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール(モノテルペンアルコール等)、ジヒドロターピネオール、ミルテノール、ソブレロール、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ソブレロール、ベルベノール等が挙げられる。
【0032】
本実施形態の接合材料に溶媒を含有させる場合の含有量は、粘度などの所望の特性によって調整すれば良く、1~30質量%であるのが好ましい。溶媒の含有量が1~30質量%であれば、接合材料として使いやすい範囲で粘度を調整する効果を得ることができる。溶媒のより好ましい含有量は1~20質量%であり、更に好ましい含有量は1~15質量%である。
【0033】
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ブロックドイソシアネート等のポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂又はテルペン系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
有機溶剤としては、上記の溶媒として挙げられたものを除き、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、重量平均分子量が200以上1000以下の範囲内であるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量が300以上1000以下の範囲内であるポリプロピレングリコール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、グリセリン又はアセトン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
増粘剤としては、例えば、クレイ、ベントナイト又はヘクトライト等の粘土鉱物、例えば、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂又はブロックドイソシアネート等のエマルジョン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム又はグアーガム等の多糖類等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
また、上記有機成分とは異なる界面活性剤を添加してもよい。多成分溶媒系の金属コロイド分散液においては、乾燥時の揮発速度の違いによる被膜表面の荒れ及び固形分の偏りが生じ易い。本実施形態の接合用組成物に界面活性剤を添加することによってこれらの不利益を抑制し、均一な導電性被膜を形成することができる接合用組成物が得られる。
【0037】
本実施形態において用いることのできる界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れを用いることができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。少量の添加量で効果が得られるので、フッ素系界面活性剤が好ましい。
【0038】
本発明の一実施形態においては、接合材料には、金属材料の表面に酸化銅ナノワイヤーが形成され、酸化銅ナノワイヤーと金属材料とが一体となった構造のものが含まれる。母体金属材料の形状や加熱条件により、金属材料が酸化銅ナノワイヤーにより被覆された構造となることもある。本実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーの平均密度は、加熱条件によって異なるが、10本/μm2~50本/μm2であることが好ましく、20本/μm2~50本/μm2であることがより好ましい。酸化銅ナノワイヤーの密度とは、金属材料表面の単位面積あたりの酸化銅ナノワイヤーの本数を意味する。酸化銅ナノワイヤーの平均密度は、SEM画像による画像解析によって、複数箇所における単位面積あたりの酸化銅ナノワイヤーの本数を測定し、算出された平均値とする。
【0039】
他の実施形態においては、酸化銅ナノワイヤーと金属材料とが一体となった構造のものは粉砕処理を施されており、接合材料中には、酸化銅ナノワイヤーと金属材料とが分離し、それぞれ別個の構造体として含まれている。
【0040】
また、本実施形態における接合材料を用いて接合した場合、接合強度の高い接合層を得ることができるが、そのせん断接合強度は、せん断接合強度測定装置(4000ボンドテスター、Nordson Dage製)を用いて測定することができる。本実施形態における接合材料を用いて、φ10mm×5mmtのCuチップとφ3mm×2mmtのCuチップとを加熱焼結した場合(接合面積7mm2)のせん断接合強度は、20MPa以上であることが好ましく、22MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることがさらに好ましい。せん断接合強度の上限は特に限定されないが、60MPa以下であることが好ましい。
【0041】
なお、本実施形態における接合材料を加熱焼結することにより形成される接合層は、導電性を有している。したがって、本実施形態の接合材料は、接合用途だけに限られず、例えば配線材料としての利用も可能である。
【0042】
(接合材料の製造方法)
本実施形態の接合材料の製造方法は、母体金属材料の表面に酸化銅ナノワイヤー形成させるために、金属銅を含有する母体金属材料を酸素含有雰囲気下、250~550℃で1時間を超えて加熱することを含む。
【0043】
本実施形態においては、母体金属材料として、少なくともその表面が金属銅で被覆された構造体を用いることができる。また、その形状は特に限定されず、粒子状、板状、棒状、薄膜、フレーク状であってもよい。本発明の一実施形態においては、母体金属材料は、微粒子であることが好ましい。微粒子であることにより、体積に対する表面積が大きくなることで、より低温での接合が可能となる。
母体金属材料の平均粒径としては、0.01μm以上10μm以下のもの、1μm以上100μm以下のもの、3μm以上300μm以下のものを用いることができる。母体金属材料の平均粒径は、SEM画像を用いた画像解析によって平均粒径として測定できる。
母体金属材料が球状でない場合は、母体金属材料に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺と短辺の平均値をその母体金属材料の粒径とし、複数の母体金属材料の粒径の平均値を平均粒径とする。
【0044】
酸素含有雰囲気中に含まれる酸素濃度としては、1%以上99%以下が好ましく、5%以上95%以下がより好ましく、10%以上90%以下がさらに好ましい。酸素含有雰囲気中の酸素以外の気体としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の不活性ガスを用いることができる。また、酸素を約15~25%含有する大気下での加熱であってもよい。
【0045】
加熱温度としては、250~550℃が好ましく、250~400℃がより好ましく、250~350℃がさらに好ましい。250℃以上で加熱することにより一定以上の速度で酸化銅ナノワイヤーを形成することが可能となり、550℃以下で加熱することにより酸化銅ナノワイヤーの形成不全を抑制することができる。
【0046】
加熱時間としては、1時間を超えることが好ましく、1~6時間がより好ましく、3~6時間がさらに好ましい。1時間を超えて加熱することにより形成される酸化銅ナノワイヤーの長さが一定以上となる。
【0047】
加熱時の気圧は、特に限定されないが、大気圧下(標準気圧)での加熱であってもよく、0.95~1.2atmもしくは1~10atmの気圧下での加熱であってもよい。
【0048】
本発明の一実施形態においては、接合材料の製造方法は、母体金属材料を加熱する工程の前に、母体金属材料と溶媒とを混合する工程をさらに有する。本実施形態においては、母体金属材料を加熱する前に溶媒と混合し、接合される部材の間に塗布してから加熱することで、酸化銅ナノワイヤーの形成及び接合材料の製造が、接合が行われるその場で行われることとなる。
【0049】
本発明の別の実施形態においては、接合材料の製造方法は、母体金属材料を加熱する工程の後に、加熱した母体金属材料を粉砕する工程と、得られた粉砕物と溶媒を混合する工程とをさらに有する。本実施形態においては、金属材料の表面に酸化銅ナノワイヤーが形成されたものの粉砕物及び溶媒を含む接合材料が製造されることとなる。
【0050】
(接合方法)
本実施形態における接合方法は、酸化銅ナノワイヤーと、金属銅及び酸化銅からなる群から選択される少なくとも一種を含む金属材料と、を含む接合材料を、還元雰囲気下で加熱焼結する、又は還元剤と混合した後に加熱焼結する工程を含む接合方法である。接合材料中の酸化銅ナノワイヤーが還元されることにより、低温での焼結接合が可能となる。
【0051】
還元雰囲気下で行う場合、水素、ギ酸、一酸化炭素等を含む還元性ガスを還元剤として用いることができる。接合する部材間に接合材料を塗布し、還元性ガス雰囲気下で加熱することで、接合材料中の酸化銅ナノワイヤーが還元されると共に、接合材料が焼結し、部材同士を接合することができる。
【0052】
還元剤を接合材料と混合して用いる場合、還元剤としてアルコール類、カルボン酸類、ケトン等の還元性のある有機系還元剤を用いることができる。還元剤と混合した接合材料を、接合する部材間に塗布し、加熱することで接合材料中の酸化銅ナノワイヤーが還元されると共に、接合材料が焼結し、部材同士を接合することができる。
【0053】
加熱焼結の温度としては、400℃以下、250℃以上400℃以下、280℃以上370℃以下、もしくは290℃以上320℃以下が挙げられる。加熱焼結の温度が400℃以下であれば、例えば基板とチップの加熱接合時の熱的損傷が抑制されたり、加熱冷却後の残留応力の観点から好ましい。
【0054】
加熱焼結時間としては、5分以上90分以下、10分以上80分以下、もしくは10分以上70分以下が挙げられる。
【0055】
二つの部材を接合する場合、二つの部材の間に接合材料を塗布し、加熱焼結することで接合するが、加圧することなく接合することも可能であり、加圧しながら接合することも可能である。加圧する場合の圧力としては、0.5MPa以上20MPa以下、0.8MPa以上13MPa以下、もしくは0.9MPa以上12MPa以下とすることができる。
【実施例0056】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は実施例等の内容に何ら限定されるものではない。
【0057】
実施例等で用いた各種原料は以下の通りである。
(1)母体金属材料
・平均粒径5μmの銅粒子(Cu-HWQ、福田金属製)
(2)溶媒
・テルピネオール混合異性体(キシダ化学社製)
(3)還元剤
・ギ酸ガス
・PEG1000(和光純薬製)
・コハク酸(和光純薬製)
・グリセリン(和光純薬製)
・H2ガス
【0058】
実施例および比較例の接合材料についての各種特性の評価方法は以下の通りである。
(1)酸化銅ナノワイヤーの平均線径・酸化銅ナノワイヤーの平均アスペクト比
酸化銅ナノワイヤーの平均線径、酸化銅ナノワイヤーの平均アスペクト比を、走査電子顕微鏡(S-4800、日立ハイテク社製)を用いて測定した。酸化銅ナノワイヤーの平均長さ、平均線径、平均アスペクト比は、それぞれの試料について10箇所測定し、その算術平均値を用いた。
【0059】
(2)せん断接合強度の測定
φ10mm×5mmtのCuチップとφ3mm×2mmtのCuチップとの間にそれぞれの接合材料を150μmの厚みで塗布し、加熱焼結を行い、せん断接合強度測定装置(4000ボンドテスター、Nordson Dage社製)を用いて接合面積7mm2の場合についてせん断接合強度の測定を行った。
【0060】
[実施例1]
平均粒径5μmの銅粒子(Cu-HWQ、福田金属製)と溶媒(テルピネオール混合異性体(和光純薬製))とを混合し、ペースト状の接合材料前駆体を用意した。その後、φ10mm×5mmtのCuチップにメタルマスクにより150μmの厚みで塗布し、その上にφ3mm×2mmtのCuチップを乗せ、焼結前接合体を得た(接合面積7mm
2)。この焼結前接合体を大気下において300℃、4時間加熱した。この300℃、4時間加熱した銅粒子の表面を電子顕微鏡で観察すると、
図1のように酸化銅ナノワイヤーが銅粒子の半径方向外側に向かって形成されているのが観察された。この酸化銅ナノワイヤーの線径及び平均アスペクト比を任意の10箇所において測定すると、平均線径は約30nm、平均アスペクト比は10.8であった。この酸化銅ナノワイヤーを含む焼結前接合体を加熱接合装置にて、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件で加熱焼結することで接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は27.1MPaであった。
【0061】
[実施例2]
実施例1と同様の接合材料前駆体と焼結前接合体を用意した。この焼結前接合体を大気下において500℃、1時間加熱した。この銅粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約70nm、平均アスペクト比は7.6であった。この酸化銅ナノワイヤーを含む焼結前接合体を加熱接合装置にて、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件で加熱焼結することで接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は23.8MPaであった。
【0062】
[実施例3]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気中で350℃、4時間加熱した。この銅粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は17.8であった。この酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を乳鉢で粉砕し、粉末状とした。この粉砕粉末を電子顕微鏡で観察すると、
図3のように酸化銅ナノワイヤーが銅粒子又は酸化銅粒子の周辺に分散されていることが観察された。この粉砕粉末を実施例1と同じ溶媒と混合し、ペースト状の接合材料とした。この後、実施例1と同様の手順でCuチップにペーストを塗布し、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件にて接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は28.5MPaであった。
【0063】
[実施例4]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気中で250℃、8時間加熱した。この銅粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約20nm、平均アスペクト比は6.5であった。この酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を乳鉢で粉砕し、粉末状とした。この粉砕粉末を実施例1と同じ溶媒と混合し、ペースト状の接合材料とした。この後、実施例1と同様の手順でCuチップにペーストを塗布し、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件にて接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は27.1MPaであった。
【0064】
[実施例5]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気中で500℃、2時間加熱した。この銅粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約80nm、平均アスペクト比は6.8であった。この酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を乳鉢で粉砕し、粉末状とした。この粉砕粉末を実施例1と同じ溶媒と混合し、ペースト状の接合材料とした。この後、実施例1と同様の手順でCuチップにペーストを塗布し、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件にて接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は26.3MPaであった。
【0065】
[実施例6]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを酸素90%、アルゴン10%ガス雰囲気中で300℃、4時間加熱した。この銅粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は10.2であった。この酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を乳鉢で粉砕し、粉末状とした。この粉砕粉末を実施例1と同じ溶媒と混合し、ペースト状の接合材料とした。この後、実施例1と同様の手順でCuチップにペーストを塗布し、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件にて接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は27.8MPaであった。
【0066】
[実施例7]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを酸素10%、アルゴン90%ガス雰囲気中で300℃、4時間加熱した。この銅粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は9.4であった。この酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を乳鉢で粉砕し、粉末状とした。この粉砕粉末を実施例1と同じ溶媒と混合し、ペースト状の接合材料とした。この後、実施例1と同様の手順でCuチップにペーストを塗布し、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件にて接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は26.3MPaであった。
【0067】
[実施例8]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気下において350℃、4時間加熱した。この加熱した銅粒子の表面を電子顕微鏡で観察すると、同粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は16.4であった。この加熱された銅粒子を還元作用のあるポリエチレングリコール1000(PEG1000、和光純薬製)と混合し、ペースト状の接合材料とした。このペーストを接合装置にて、大気下、加熱温度350℃、保持時間15分、加圧10MPaで接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は22.5MPaであった。
【0068】
[実施例9]
実施例8と同様に、酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を還元作用のあるコハク酸(和光純薬製)とテルピネオール混合異性体(和光純薬製)を混合し、ペースト状の接合材料とした。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は18.3であった。このペーストを接合装置にて、実施例8と同じ条件で接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は20.9MPaであった。
【0069】
[実施例10]
実施例8と同様に、酸化銅ナノワイヤーが形成された銅粒子を還元作用のあるグリセリン(和光純薬製)と混合し、ペースト状の接合材料とした。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は17.4であった。このペーストを接合装置にて、実施例8と同じ条件で接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は21.6MPaであった。
【0070】
[実施例11]
φ10mm×5mmtのCuチップとφ3mm×2mmtのCuチップを大気下において、350℃、4時間で加熱した。それぞれのCuチップの表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていた。酸化銅ナノワイヤーの平均線径は約30nm、平均アスペクト比は21.2であった。加熱したCuチップ同士を直接重ね合わせて、加熱接合装置にて、水素ガス雰囲気、加熱温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaにて接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は28.1MPaであった。
【0071】
[比較例1]
実施例1と同様の接合材料前駆体と焼結前接合体を用意した。この焼結前接合体を加熱接合装置にて、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件で加熱焼結することで接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は7.5MPaであった。
【0072】
[比較例2]
実施例1と同様の接合材料前駆体と焼結前接合体を用意した。この焼結前接合体を大気下において300℃、0.5時間加熱した。この焼結前接合体を加熱接合装置にて、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件で加熱焼結することで接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は16.0MPaであった。
【0073】
[比較例3]
実施例1と同様の接合材料前駆体と焼結前接合体を用意した。この焼結前接合体を大気下において600℃、0.5時間加熱した。この焼結前接合体を加熱接合装置にて、ギ酸雰囲気、温度300℃、保持時間1時間、加圧1MPaの条件で加熱焼結することで接合を行った。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は12.5MPaであった。
【0074】
[比較例4]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気下において600℃、30分間加熱した。この600℃、30分間加熱した銅粒子の表面を電子顕微鏡で観察すると、同粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていなかった(
図2)。この加熱された銅粒子を実施例3と同様の手順で乳鉢粉砕し、ペースト化、塗布、接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は14.2MPaであった。
【0075】
[比較例5]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気下において200℃、4時間加熱した。この加熱した銅粒子の表面を電子顕微鏡で観察すると、同粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーが形成されていなかった。この加熱された銅粒子を実施例3と同様の手順で乳鉢粉砕し、ペースト化、塗布、接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は12.0MPaであった。
【0076】
[比較例6]
実施例1と同様の銅粒子を用意し、それを大気下において600℃、30分間加熱した。この加熱した銅粒子の表面を電子顕微鏡で観察すると、同粒子の表面には酸化銅ナノワイヤーは形成されていなかった。この加熱された銅粒子を用いて実施例8と同様にペースト状の接合材料とした。このペーストを接合装置にて、同じ条件で接合を実施した。この後、せん断接合強度測定装置にてせん断接合強度を測定したところ、接合強度は10.6MPaであった。
【0077】
各実施例、比較例で得られた接合材料の各種特性についての評価試験結果を表1に示した。
【0078】
【0079】
表1に示した結果から以下のことが明らかになった。
酸化銅ナノワイヤーを含んでいない接合材料を使用した比較例1~3と比較すると、同じ銅粒子、焼結条件を用いて接合しているにも関わらず、実施例1の接合材料では高い接合強度が得られた。これは、形成された酸化銅ナノワイヤーが還元焼結時の焼結助剤として働き、焼結性を向上させた影響と考えられる。
酸化銅ナノワイヤーを含んでいない接合材料を使用した比較例4と比較すると、同じ銅粒子を用い、同じ焼結条件で接合しているにも関わらず、実施例3の接合材料では比較例4と比較して2倍近く高い接合強度が得られた。
酸化銅ナノワイヤーを含んでいない接合材料を使用した比較例6と比較すると、同じ銅粒子を用い、同じ焼結条件で接合しているにも関わらず、実施例8の接合材料では比較例6と比較して2倍以上高い接合強度が得られた。