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  • 特開-ドライエッチング装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022169999
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】ドライエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20221102BHJP
【FI】
H01L21/302 101D
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075800
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】堤 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】隣 嘉津彦
(72)【発明者】
【氏名】田代 征仁
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004BB14
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB28
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA16
5F004DA17
5F004DA18
5F004DA23
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
(57)【要約】
【課題】シャワープレートの変更を必要とせずに、励起されたエッチングガスの生成条件を変化させることなく、エッチング対象物表面での励起されたエッチングガスの濃度分布の調整が可能なドライエッチング装置EMを提供する。
【解決手段】真空チャンバ1内でエッチング対象物Swに対向配置される、複数の第1噴出口4aが設けられた第1シャワープレート4と、真空チャンバ内と隔絶されて第1シャワープレートの各第1噴出口に接する空間Spに励起されたエッチングガスを供給するガス供給手段5,6とを備える。上記空間Spが複数個に区画され、これら区画された各空間S1,S2に、流量制御された不活性ガスの導入を可能とする不活性ガス導入手段51,52,71,72,71a,72aを更に設け、空間毎に導入される不活性ガスの流量制御により各空間へのエッチングガスの分配割合を調整自在とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内でエッチング対象物に対向配置される、複数の第1噴出口が設けられた第1シャワープレートと、真空チャンバ内と隔絶されて第1シャワープレートの各第1噴出口に接する空間に励起されたエッチングガスを供給するガス供給手段とを備えるドライエッチング装置において、
前記空間が複数個に区画され、これら区画された各空間に、流量制御された不活性ガスの導入を可能とする不活性ガス導入手段を更に設け、空間毎に導入される不活性ガスの流量制御により各空間へのエッチングガスの導入量の割合を調整自在としたことを特徴とするドライエッチング装置。
【請求項2】
前記ガス供給手段のガス供給管が接続される前記真空チャンバの上壁部に筒状壁が設けられると共に筒状壁の下端に前記第1シャワープレートが設けられ、
筒状壁内で第1シャワープレートの上方に第2シャワープレートが更に設けられて、第1シャワープレートと第2シャワープレートと両シャワープレートの間に介在される仕切部材とにより前記各空間が画成され、
第2シャワープレートに複数の第2噴出口が設けられて、これら第2噴出口を通して各空間に同等の流量で励起されたエッチングガスが供給されるように構成したことを特徴とする請求項1記載のドライエッチング装置。
【請求項3】
前記不活性ガス導入手段は、第2シャワープレートに設けた不活性ガス通路と、この不活性ガス通路に連通し、各空間の第2シャワープレートへの投影面に開口する複数の第3噴出口とを備え、各第3噴出口を通して各空間に不活性ガスが導入されることを特徴とする請求項2記載のドライエッチング装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドライエッチング装置であって、真空チャンバ内に第1シャワープレートに正対させてエッチング対象物を保持するステージを備え、ステージ周囲に等方排気通路が設けられるものにおいて、
前記区画された各空間は、第1シャワープレートを中心とした同心円に沿って設けられることを特徴とするドライエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のドライエッチング装置は例えば特許文献1で知られている。このものは、真空チャンバを備え、真空チャンバ内には、シリコン基板や、表面にシリコン酸化物膜が形成されたものをエッチング対象物(以下、「基板」ともいう)とし、基板がそのエッチング面を上方に設けた姿勢で設置されるステージと、ステージ上の基板に対向配置される、複数の噴出口が設けられたシャワープレートと、エッチングガスのガス供給手段とを備える。シャワープレートは、真空チャンバ内と隔絶させてこの真空チャンバの上壁部に形成した筒状壁の下端に配置されている。ガス供給手段は、筒状壁内の空間に連通するガス供給管を備え、ガス供給管には、マイクロ波プラズマ生成用のアプリケータが介在され、アプリケータによりエッチング対象物に応じたエッチングガスをプラズマ化(励起)し、この励起されたエッチングガスがシャワープレートの各噴出口に接する筒状壁内の空間に供給される。
【0003】
上記ドライエッチング装置は、一般に、ステージ周囲に等方排気通路が設けられ、シャワープレートの各噴出口から基板に向けて噴出されたエッチングガスは、基板表面で反応して消費された後、等方排気通路を経て真空チャンバ外へと排気される。このことから、シャワープレートに設ける噴出口の数、各噴出口の口径や各噴出口の配列などは、通常、エッチング対象物とエッチングガスとの反応が基板全面に亘って略均等に生じるように設計される(言い換えると、基板表面でのエッチングガスの濃度分布に勾配をつけている)。一方、エッチング対象物を所定形状にエッチングするために必要なエッチングガスの消費量(基板表面での必要なエッチングガスの濃度分布)は、エッチング対象物の種類によってかわる。このような場合、噴出口の数、各噴出口の口径や各噴出口の配列などが相違する複数枚のシャワープレートを用意し、エッチング対象物の種類に応じて、真空チャンバ内に配置される部品としてのシャワープレートを使い分けることが考えられるが、これでは、装置の使い勝手が悪い。
【0004】
他方で、シャワープレートの各噴出口に接する空間を複数個に区画すると共に、アプリケータの下流側でガス供給管を複数に分岐し、これら分岐したガス分岐管にマスフローコントローラなどの流量調整手段を介在させ、これら区間された空間毎に、夫々流量調整された励起されたエッチングガスを供給し、基板表面でのエッチングガスの濃度分布を調整することが考えられる。然し、このような構成では、いずれかの流量調整手段での流量調整に起因したコンダクタンスの変化によりアプリケータ内の圧力が変動し、励起されたエッチングガスの生成条件が変わってしまうという問題を招来する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-16139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、シャワープレートの変更を必要とせずに、励起されたエッチングガスの生成条件を変化させることなく、エッチング対象物表面での励起されたエッチングガスの濃度分布の調整が可能なドライエッチング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内でエッチング対象物に対向配置される、複数の第1噴出口が設けられた第1シャワープレートと、真空チャンバ内と隔絶されて第1シャワープレートの各第1噴出口に接する空間に励起されたエッチングガスを供給するガス供給手段とを備える本発明のドライエッチング装置は、前記空間が複数個に区画され、これら区画された各空間に、流量制御された不活性ガスの導入を可能とする不活性ガス導入手段を更に設け、空間毎に導入される不活性ガスの流量制御により各空間へのエッチングガスの導入量の割合を調整自在としたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、真空雰囲気の真空チャンバ内でエッチング対象物をエッチングする際に、不活性ガス導入手段によって、区画された空間毎に所定流量で不活性ガスを導入する(空間毎に不活性ガスの分圧を変えておく)。そして、ガス供給手段によって、励起されたエッチングガスを供給する。このとき、各空間に夫々接する上流空間に達したエッチングガスは、各空間内における不活性ガスの分圧に応じた所定流量で各空間へと夫々導入される(流入する)。例えば、不活性ガスの分圧の最も低い空間に導入されるエッチングガスの導入量を基準導入量とすると、比較的不活性ガスの分圧の高い空間には、基準導入量より少ない流量でエッチングガスが導入され、分圧が高くなるのに従い、より少ない流量でエッチングガスが導入されることになる(即ち、上流空間に達したエッチングガスの各空間へのエッチングガスの導入量の割合(上流空間に達したエッチングガスの分配割合)が調整される)。このようにして各空間に導入されたエッチングガスは、真空チャンバ内の圧力(具体的には、シャワープレートとエッチング対象物との間のエッチング空間の圧力)との差により各第1噴出口を通してエッチング対象物に向けて噴出され、このとき、基板表面でのエッチングガスの濃度分布は、各空間に導入されるエッチングガスの量に応じたものとなる。
【0009】
このように本発明では、各空間内に導入する不活性ガスの分圧に応じて、空間毎にそこへのエッチングガスの導入量を調整し、この調整されたエッチングガスを、各第1噴出口を通してエッチング対象物に向けて噴出するため、第1シャワープレートを第1噴出口の数、各第1噴出口の口径や各第1噴出口の配列などが相違する他のものに変更することなく、エッチング対象物表面での励起されたエッチングガスの濃度分布の調整が可能である。しかも、例えば、アプリケータによりエッチングガスをプラズマ化(励起)し、この励起されたエッチングガスを第1シャワープレートの各第1噴出口に通して導入する場合でも、アプリケータ内の圧力に変動をもたらすものでもないため、励起されたエッチングガスの生成条件が変わってしまうといった不具合も生じない。
【0010】
本発明において、前記ガス供給手段のガス供給管が接続される前記真空チャンバの上壁部に筒状壁が設けられると共に筒状壁の下端に前記第1シャワープレートが設けられ、筒状壁内で第1シャワープレートの上方に第2シャワープレートが更に設けられて、第1シャワープレートと第2シャワープレートと両シャワープレートの間に介在される仕切部材とにより前記各空間が画成され、第2シャワープレートに複数の第2噴出口が設けられて、これら第2噴出口を通して各空間に同等の流量で励起されたエッチングガスが供給される構成を採用することができる。これによれば、各空間へのエッチングガスの導入量の割合を精度よく調整でき、有利である。
【0011】
ここで、各空間は、第1シャワープレートの第1噴出口を通してエッチング空間と常時連通しているため、各空間に不活性ガスを導入する際に偏って不活性ガスが導入されると、空間内に圧力むらが生じて、エッチングガスの導入量を調整できない虞がある。本発明においては、前記不活性ガス導入手段は、第2シャワープレートに設けた不活性ガス通路と、この不活性ガス通路に連通し、各空間の第2シャワープレートへの投影面に開口する複数の第3噴出口とを備え、各第3噴出口を通して各空間に不活性ガスが導入されることが好ましい。これによれば、エッチングガスの導入方向と同方向から複数の第3噴出口を通して不活性ガスが導入されることで、空間内での圧力むらの発生が可及的に抑制でき、有利である。
【0012】
また、真空チャンバ内に第1シャワープレートに正対させてエッチング対象物を保持するステージを備え、ステージ周囲に等方排気通路が設けられるような場合には、例えば、前記区画された各空間は、第1シャワープレートを中心とした同心円に沿って設けられることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のドライエッチング装置の構成を模式的に説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、エッチング対象物を、シリコン基板やその表面にシリコン酸化物膜が成膜されたもの(以下、「基板Sw」ともいう)とし、基板Swを励起されたエッチングガスによりエッチングする場合を例に、本発明のドライエッチング装置の実施形態について説明する。以下において、上、下といった方向を示す用語は、ドライエッチング装置の設置姿勢で示す図1を基準とする。
【0015】
図1を参照して、ドライエッチング装置EMは、真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1の下壁11内面には、支持体Ioを介して、エッチング面を上方に向けた姿勢で基板Swが設置される円筒状のステージ2が設けられている。なお、ステージ2には、静電チャック用の電極が埋設されてもよく、電極に電圧を印加したときの静電気力により基板Swを吸着保持することもできる。ステージ2の外周面と真空チャンバ1の側壁内面との間の隙間には、円盤状の仕切板3が設けられている。仕切板3には、上下方向に貫通する排気孔31が環状に沿って設けられ、排気孔31により等方排気通路が構成される。また、真空チャンバ1の下壁11には排気口11aが形成され、排気口11aにはドライポンプやターボ分子ポンプ等により構成される真空ポンプユニットPuからの排気管12が接続されている。これにより、真空チャンバ1内を所定圧力に真空排気できるだけでなく、後述するように、励起されたエッチングガスを、第1シャワープレート4を介してこのシャワープレート4と基板Swとの間の処理空間1aに導入すると、エッチングガスが、基板Sw周囲に略均等に導かれて等方排気通路31を経て真空チャンバ1外へと排気される。
【0016】
真空チャンバ1の上壁部13には、中心線Cl上に位置させてガス導入口13aが設けられ、ガス導入口13aの下方には、基板Swに向けてエッチングガスを噴出する第1シャワープレート4が設けられる。第1シャワープレート4上面の外周縁部には、上方に向けて起立する筒状壁41が形成され、筒状壁41の上面と真空チャンバ1の上壁部13内面との間に、第1シャワープレート4と同等の輪郭を持つ第2シャワープレート5を介在させた状態で、真空チャンバ1の上壁部13内面に、その中心を中心線Cl上に位置させて第1シャワープレート4が取り付けられている。これにより、第1及び第2の両シャワープレート4,5で真空チャンバ1内と隔絶されて後述の第1シャワープレート4の各第1噴出口4aに接する空間Spが画成される。
【0017】
真空チャンバ1の上壁部13内面には、ガス導入口13aに連通する漏斗状のくぼみ13bが形成され、第2シャワープレート5を取り付けると、上壁部13内面と第2シャワープレート5の上面との間にエッチングガスの拡散空間Sdが画成されるようにしている。また、筒状壁41内で第1シャワープレート4の上面と第2シャワープレート5の下面との間には、仕切部材42が設けられ、空間Spが互いに隔絶された複数の空間Sp1,Sp2に区画されている。本実施形態では、説明の便宜上、仕切部材42をその孔軸を中心軸Clに一致させて第1シャワープレート4と第2シャワープレート5との間に介在させた円筒状部材とし、基板Swの中央領域に対面する第1空間S1と第1空間S1周囲の第2空間S2とに分けることとする。
【0018】
ガス導入口13aには、アプリケータ6が介設されたガス供給管61が接続されている。アプリケータ6としては公知のものが利用できるため、特に詳細には図示しないが、アプリケータ6には、第1のガスを供給するガス源(図示省略)からのガス管62と、マイクロ波発生装置に通じる導波管63とが接続されている。ガス供給管61には、第2のガスを供給するガス源(図示省略)からのガス管64が接続されている。第1のガスはエッチング対象物に応じて適宜選択され、例えば、アンモニア、水素ガス等の水素元素を含むガス(水素含有ガス)を主ガスとして少なくとも1種含み、アルゴンガス等の希ガス、酸素ガスや窒素ガス等が必要に応じて添加されたものを用いることができる。第2のガスはエッチング対象物に応じて適宜選択され、例えば、CHF、CF、SFやNF等から選択される少なくとも1種のフッ素系ガスを主ガスとして含み、アルゴンガス等の希ガス、水素ガス、酸素ガスや窒素ガス等が必要に応じて添加されたものを用いることができる。アプリケータ6に流量制御された第1のガスを導入し、マイクロ波を照射することで、第1のガスがプラズマ化され水素ラジカルを生成する。この水素ラジカルがガス供給管61で第2のガスと混合されることで反応し、励起されたエッチングガスを生成する。励起されたエッチングガスはガス導入口13aを介して拡散空間Sdに導かれる。
【0019】
第1シャワープレート4には、上下方向に貫通する複数の第1噴出口4aが設けられ、第1噴出口4aの数、各第1噴出口4aの口径や各第1噴出口4aの配列は、特に制限はなく、主たるエッチング対象物を基準に適宜設計される。一方、第2シャワープレート5にもまた、上下方向に貫通する複数の第2噴出口5aが設けられ、これら第2噴出口5aを通して、拡散空間Sdに導かれたエッチングガスが第1及び第2の各空間S1,S2内に同等の流量で導入されるようにしている。本実施形態では、第2シャワープレート5とアプリケータ6とガス供給管61とでガス供給手段が構成される。更に、第2シャワープレート5には、第2噴出口5aを避けて、その外周面の所定位置からその内方に向けてのびる第1不活性ガス通路51と第2不活性ガス通路52とが設けられている。第1不活性ガス通路51は、第1空間S1の第2シャワープレート5への投影面に開口するように設けた複数の第3噴出口53に連通する一方で、第2不活性ガス通路52は、第2空間S2の第2シャワープレート5への投影面に開口するように設けた複数の第3噴出口54に連通し、各第3噴出口53,54を通して、エッチングガスの導入方向と同等の方向から第1空間S1及び第2空間S2に流量制御された不活性ガスが夫々導入されて分圧を高めることができるようにしている。第3噴出口53,54の数、第3噴出口53,54の口径や各第3噴出口53,54の配列は、不活性ガスを夫々導入したときに、第1空間S1または第2空間S2内で圧力むらが生じないように適宜設定される。第1及び第2の各不活性ガス通路51,52には、図示省略の不活性ガスのガス源に通じる第1及び第2の各不活性ガス導入管71,72が夫々接続され、第1及び第2の各不活性ガス導入管71,72にはマスフローコントローラ71a,72aが夫々介設されている。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス等の希ガスや窒素ガスを用いることができる。本実施形態では、各不活性ガス通路51,52と、第3噴出口53,54と、各不活性ガス導入管71,72と、マスフローコントローラ71a,72aとで不活性ガス導入手段が構成される。
【0020】
上記ドライエッチング装置EMは、図示省略する公知のマイクロコンピュータ、シーケンサやメモリ等を備えた制御手段を備え、制御手段により、アプリケータ6の稼働や真空ポンプユニットPuの稼働等を統括制御するほか、マスフローコントローラ71a,72aの稼働を制御している。以下、上記ドライエッチング装置EMを用いたエッチング方法について説明する。
【0021】
エッチングを行う前に、実験やシミュレーションにより、表面材料やエッチング形状が異なる基板Swの種類毎に、基板Sw表面での励起されたエッチングガスの最適な濃度分布と、その最適な濃度分布を実現するために第1及び第2の各空間S1,S2に導入する不活性ガスの流量との相関関係を予め取得し、取得した相関関係を制御手段のメモリに格納しておく。
【0022】
真空ポンプユニットPuを作動させて真空チャンバ1内を真空排気した状態で、図外の搬送ロボットを用いて基板Swをステージ2上に設置する。処理空間1aが所定圧力に達すると、基板Swの種類に応じた各空間S1,S2への不活性ガスの流量をメモリから読み込み、マスフローコントローラ71a,72aを夫々制御し、第1及び第2の各空間S1,S2毎に流量制御した不活性ガス(例えば窒素ガス)を夫々導入することで、各空間S1,S2毎に不活性ガスの分圧を変えておく。一方、アプリケータ6にガス管62からの第1のガスを導入し、導入された第1のガスに導波管63からマイクロ波を照射して水素ラジカルを発生させる。この水素ラジカルとガス管64からの第2のガスをガス供給管61にて混合し、励起されたエッチングガスを生成する(励起ステップ)。
【0023】
このように励起ステップで励起されたエッチングガスは、ガス供給管61から拡散空間Sdに導かれた後、各第2噴出口5aを通って第1及び第2の各空間S1,S2へと導入される。このとき、第1及び第2の各空間S1,S2へと導入されるエッチングガスの導入量は、上記不活性ガス導入ステップで制御された第1及び第2の各空間S1,S2における不活性ガスの分圧に応じたものとなる。即ち、不活性ガス分圧が低い第1空間S1に導入されるエッチングガスの導入量を基準導入量とすると、不活性ガス分圧が高い第2空間S2には、基準導入量より少ない流量でエッチングガスが導入される。これにより、拡散空間Sdに導入されたエッチングガスの第1及び第2の各空間S1,S2へのエッチングガスの導入量の割合(エッチングガスの分配割合)が調整される。上記分配割合調整ステップで第1及び第2の各空間S1,S2に導入されたエッチングガスは、真空チャンバ1内の圧力(具体的には、処理空間1aとの差圧)により、各第1噴出口4aを通して基板Swに向けて噴出され、このとき、基板Sw表面でのエッチングガスの濃度分布は、各空間S1,S2に導入されるエッチングガスの量に応じたものとなる。
【0024】
以上の実施形態によれば、第1及び第2の各空間S1,S2内に導入する不活性ガスの分圧に応じて、空間S1,S2毎にその空間S1,S2へのエッチングガスの導入量を調整し、導入量が調整されたエッチングガスを、各第1噴出口4aを通して基板Swに向けて噴出する構成を採用したため、基板Swの種類に応じて基板Sw表面での励起されたエッチングガスの濃度分布を調整することができる。その上、第1シャワープレート4を、第1噴出口4aの数、各第1噴出口4aの口径や各第1噴出口4aの配列などが相違する他の第1シャワープレートに変更する必要がない。しかも、アプリケータ6で励起されたエッチングガスをその下流側でマスフローコントローラ等の流量制御手段により流量調整しないため、アプリケータ6内の圧力に変動をもたらすものでもなく、励起されたエッチングガスの生成条件が変わってしまうといった不具合も生じない。また、第2シャワープレート5の各第2噴出口5aを通して第1及び第2の各空間S1,S2に同等の流量で励起されたエッチングガスが供給されるため、各空間S1,S2へのエッチングガスの導入量の割合を精度よく調整することができる。その上、第2シャワープレート5の各第3噴出口53,54を通してエッチングガスの導入方向と同方向から第1及び第2の各空間S1,S2に不活性ガスが導入されることで、空間S1,S2内での圧力むらの発生が可及的に抑制でき、有利である。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変形することができる。上記実施形態では、各第1噴出口4aに接する空間Spを同心状に拡がる2個の空間S1,S2に区画した場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、同心状に拡がる3個以上の空間に区画してもよく、また、格子状に複数の空間に区画してもよい。また、上記実施形態では、各第3噴出口53,54を通して各空間S1,S2にその上方から不活性ガスを導入する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、各空間S1,S2の形状や容積等から各空間S1,S2内で圧力むらが発生し難いような場合には、各空間S1,S2への不活性ガスの導入方法は処理空間1aへの影響を与えない範囲内で任意であり、例えば各空間S1,S2にその側方や下方から不活性ガスを導入してもよい。
【符号の説明】
【0026】
EM…ドライエッチング装置、Sw…基板(エッチング対象物)、Sp…各第1噴出口に接する空間、S1…第1空間、S2…第2空間、1…真空チャンバ、2…ステージ、31…排気孔(等方排気通路)、4…第1シャワープレート、4a…第1噴出口、41…筒状壁、42…仕切部材、5…第2シャワープレート(ガス供給手段の構成要素)、5a…第2噴出口、51…第1不活性ガス通路(不活性ガス通路の構成要素),52…第2不活性ガス通路(不活性ガス通路の構成要素)、53,54…第3噴出口、6…アプリケータ(ガス供給手段の構成要素)、61…ガス供給管(ガス供給手段の構成要素)、71…第1不活性ガス導入管(不活性ガス導入手段の構成要素)、72…第2不活性ガス導入管(不活性ガス導入手段の構成要素)、71a,72a…マスフローコントローラ(不活性ガス導入手段の構成要素)。
図1