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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022170032
(43)【公開日】2022-11-10
(54)【発明の名称】表面保護フィルムおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20221102BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221102BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221102BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20221102BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J133/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021075880
(22)【出願日】2021-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 智美
(72)【発明者】
【氏名】新見 洋人
(72)【発明者】
【氏名】積田 幸衣
(72)【発明者】
【氏名】山口 和哉
(72)【発明者】
【氏名】林 益史
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA37B
4F100AD11B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25C
4F100AK42A
4F100AT00D
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA22B
4F100CB05C
4F100EH46B
4F100EJ91D
4F100GB41
4F100JG01B
4F100JG03
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JL06
4F100JL14D
4F100JN01A
4J004AA10
4J004AA14
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA04
4J004DB02
4J004FA08
4J040EF001
4J040JA09
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA17
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】表面保護フィルムおよび光学部品を提供する。
【解決手段】表面保護フィルム10は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルム1と、基材フィルム1の一方の面に形成された帯電防止剤層2と、基材フィルム1の、帯電防止剤層2とは反対側の面に形成された粘着剤層3と、を備える。帯電防止剤層2は、導電性ポリマーを含む第1層2aと、第1層2aに対して基材フィルム1とは反対側に設けられ、ナノカーボンを含む第2層2bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性を有する樹脂からなる基材フィルムと、
前記基材フィルムの一方の面に形成された帯電防止剤層と、
前記基材フィルムの、前記帯電防止剤層とは反対側の面に形成された粘着剤層と、
を備え、
前記帯電防止剤層は、
導電性ポリマーを含む第1層と、
前記第1層に対して前記基材フィルムとは反対側に設けられ、ナノカーボンを含む第2層と、
を備える、表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の、前記基材フィルムとは反対側に、剥離フィルムが貼合された、請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤からなる、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の表面保護フィルムが貼合された、光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルム、等の光学用フィルム、及びそれを用いたディスプレイなどの光学製品を、製造、搬送する際には、該光学用フィルムの表面に表面保護フィルムを貼合して、後工程における表面の汚れや傷付きを防止することがなされている。製品である光学用フィルムの外観検査は、表面保護フィルムを剥がして、再び、貼合する手間を省いて作業効率を高めるため、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま行うこともある。
【0003】
従来から、基材フィルムの片面に粘着剤層を設けた表面保護フィルムが、光学製品の製造工程において、光学製品の表面への傷や汚れの付着を防止するために、一般的に使用されている。表面保護フィルムは、微粘着力の粘着剤層を介して光学用フィルムに貼合される。粘着剤層を微粘着力とするのは、使用済みの表面保護フィルムを光学用フィルムの表面から剥離して取り除くときに、容易に剥離でき、且つ、粘着剤が、被着体である製品の光学用フィルムに付着して残留しないようにする(いわゆる、糊残りの発生を防ぐ)ためである。
【0004】
表面保護フィルムとしては、基材フィルムの、粘着剤層とは反対の面に、帯電防止層を設けたものが多く使用されている。表面保護フィルムの表面に帯電防止層を設けることにより、光学製品の製造工程において、表面保護フィルムを貼合した光学製品の搬送中やハンドリング時に発生する静電気を抑えている。これにより、環境中の塵や埃の吸着を防止し、表面保護フィルムを光学用フィルムに貼合したまま外観検査しやすくしている。また、用済み後の表面保護フィルムを、液晶表示パネルに組み込んである偏光板や位相差板から剥離除去するときに、著しい剥離帯電を抑えて、ドライバーICなどの回路を破壊してしまうことも抑えている。
【0005】
表面保護フィルムの表面の帯電防止層には、各種の界面活性剤(ノニオン、カチオン、アニオン、両性界面活性剤)やイオン性基含有ポリマーなどを配合した層、金属または金属酸化物の蒸着や、金属または金属酸化物の粒子を配合した層などの提案がある。
界面活性剤やイオン性基含有ポリマーなどを配合した帯電防止層は、環境中の湿度の影響を受けやすく湿度が高い環境では、帯電防止効果が高いが、湿度が低い環境下では、帯電防止性能が著しく悪化する課題がある。一方、金属や金属酸化物の粒子を添加した帯電防止層は、環境中の湿度の影響は受けにくいが、透明性が出しにくく、光学製品、特に、表面保護フィルムを貼合した状態で検査を行う用途には使用できない。環境中の湿度の影響を受けにくく、かつ、透明性を有する帯電防止層として、インジウム錫酸化物(ITO)やアンチモン錫酸化物(ATO)などの金属酸化物を蒸着した帯電防止層が挙げられるが、蒸着のためのコストが非常に高いという課題がある。
【0006】
特許文献1には、ポリエステルフィルムの片面に帯電防止層を設け、その層の上に汚れ防止層を設け、そしてその反対面に微粘着層を設けた表面保護フィルムが開示されている。帯電防止層は、チオフェンおよび/またはチオフェン誘導体を重合して得られる導電性重合体を含む。しかし、前記導電性重合体を使用して帯電防止層を形成した場合、時間の経過と共に、酸化劣化や光劣化に伴う表面抵抗率の上昇(劣化)等の問題が生じる課題がある。
【0007】
このような経時での表面抵抗率の上昇(劣化)を解決するため、特許文献2には、帯電防止層が、ポリアニリンスルホン酸、及び、ポリアニオン類によりドープされているポリチオフェン類、並びに、バインダを含有する表面保護フィルムが提案されている。この表面保護フィルムは、帯電防止層に、ポリアニリンスルホン酸を併用することで、経時での表面抵抗率の上昇(劣化)を抑えられるとしているが、ポリアニリンにより黄色から緑色に着色する虞があり、光学部品には使用しにくい。
【0008】
特許文献3には、透明性(全光線透過率)が良好で、基材に対する帯電防止層の接着性が良好な帯電防止フィルムとして、ナノカーボンとポリマーとを含有する導電層を更に有し、前記帯電防止フィルムの表面抵抗率が、1×1011Ω/□以下である帯電防止フィルムが提案されている。しかし、この帯電防止フィルムは、帯電防止剤として、カーボンナノチューブなどのナノカーボンを使用しているため、経時で表面抵抗値の上昇は小さいものの、湿熱環境下(例えば60℃、関係湿度90%の条件など)におかれた場合に、表面抵抗値が上昇(劣化)する課題がある。
【0009】
特許文献4には、ポリチオフェンと導電性フィラーとを含む熱硬化型帯電防止コーティング剤が提案されている。この熱硬化型帯電防止コーティング剤は、経時的にも表面抵抗率の変化が少ない。しかし、この熱硬化型帯電防止コーティング剤は、温度が高い湿熱状態(温度60℃、関係湿度90%の条件など)におかれた場合に、表面抵抗値が上昇(劣化)する課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-026817号公報
【特許文献2】再表2018-012545号公報
【特許文献3】特開2012-166452号公報
【特許文献4】特開2016-216714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一態様は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面抵抗値の上昇が起こりにくい表面保護フィルムおよび光学部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、透明性を有する樹脂からなる基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面に形成された帯電防止剤層と、前記基材フィルムの、前記帯電防止剤層とは反対側の面に形成された粘着剤層と、を備え、前記帯電防止剤層は、導電性ポリマーを含む第1層と、前記第1層に対して前記基材フィルムとは反対側に設けられ、ナノカーボンを含む第2層と、を備える、表面保護フィルムを提供する。
【0013】
前記表面保護フィルムは、前記粘着剤層の、前記基材フィルムとは反対側に、剥離フィルムが貼合されていてもよい。
【0014】
前記粘着剤層は、アクリル系粘着剤からなることが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様は、前記表面保護フィルムが貼合された、光学部品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様は、表面抵抗値の上昇が起こりにくい表面保護フィルムおよび光学部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の表面保護フィルムを示した断面図である。
図2】実施形態の表面保護フィルムに剥離フィルムを貼合した剥離フィルム付き表面保護フィルムを示した断面図である。
図3】本発明の光学部品の、実施例の1つを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に基づいて、本発明を詳しく説明する。
図1は、実施形態の表面保護フィルムを示した断面図である。図1に示すように、実施形態に係わる表面保護フィルム10は、基材フィルム1の一方の表面(図1において上面)に、帯電防止剤層2が形成されている。基材フィルム1の、帯電防止剤層2とは反対側の面(図1において下面)には、粘着剤層3が形成されている。
【0019】
[基材フィルム]
基材フィルム1としては、透明性及び可撓性を有する樹脂からなる基材フィルムが用いられる。これにより、表面保護フィルム10を、被着体である光学部品に貼合した状態で、光学部品の外観検査を行うことができる。基材フィルム1として用いる、基材フィルム1は、好適には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルで形成されたフィルム(ポリエステルフィルム)が用いられる。ポリエステルフィルムのほか、必要な強度を有し、かつ光学適性を有するものであれば、他の樹脂からなるフィルムも使用可能である。基材フィルム1は、無延伸フィルムであってもよいし、一軸または二軸延伸されたフィルムであってもよい。また、延伸フィルムの延伸倍率、および、延伸フィルムの結晶化に伴い形成される軸方法の配向角度は、特定の値に制御してもよい。
【0020】
「透明」とは、例えば、測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、全波長域における厚さ方向の透過率の平均値として算出される可視光透過率が50%以上(好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上)であることを意味する。光透過率は、JIS K 7375:2008に規定される「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠して測定することができる。
【0021】
基材フィルム1の厚みは、特に限定はないが、例えば、12~100μm程度の厚みが好ましく、20~50μm程度の厚みであれば取り扱い易く、より好ましい。
また、必要に応じて、基材フィルム1の表面に、コロナ放電による表面改質、アンカーコート剤の塗付などの易接着処理を施してもよい。
【0022】
[帯電防止剤層]
帯電防剤層2は、導電性ポリマーを含む第1層2aと、ナノカーボンを含む第2層2bとが基材フィルム1側から順に積層されて構成されている。第2層2bは、第1層2aに対して基材フィルム1とは反対側(図1において上側)に設けられている。
【0023】
導電性ポリマーを含む層は、時間の経過と共に、酸化劣化または光劣化に伴う表面抵抗率の上昇(劣化)等の可能性があるが、表面保護フィルム10では、第1層2aの表面(基材フィルム1とは反対側の面)に、ナノカーボンを含む第2層2bを設けることで、導電性ポリマーを含む第1層2aの酸化劣化または光劣化の課題を克服している。
【0024】
ナノカーボンを含む層は、湿熱環境下(例えば60℃、関係湿度90%の条件など)におかれた場合の表面抵抗値上昇(劣化)の可能性があるが、表面保護フィルム10では、第2層2bと基材フィルム1との間にある第1層2aの帯電防止効果により、湿熱環境下での第2層2bの劣化の課題も克服している。
【0025】
第1層2aに用いられる導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールおよびそれらの誘導体などが挙げられる。
ポリアニリン及びその誘導体としては、ポリアニリン(アルドリッチ社製)、ポリアニリン(エレラルダイン塩)(アルドリッチ社製)、OMEGACON(登録商標)D1033W、OMEGACON(登録商標)NW-D102MT、OMEGACON(登録商標)NW-F102ET、OMEGACON(登録商標)NW-F101MEK(以上、日産化学工業社製)、アクアパス(登録商標)01X(三菱化学社製)、ポリアニリントルエン溶液PANT(化研産業社製) などを入手することができる。
【0026】
ポリチオフェン及びその誘導体としては、市販品として、3,4-ethylenedioxythiophene(BAYTRON(登録商標)MV2)、3,4-polyethylenedioxythiopene/polystyrenesulfonate(BAYTRON(登録商標)P、BAYTRON(登録商標)C)、BAYTRON(登録商標)FE、BAYTRON(登録商標)MV2、BAYTRON(登録商標)P 、BAYTRON(登録商標)PAG、B AYTRON(登録商標)PHC V4、BAYTRON(登録商標)PHS、BAYTRON(登録商標)PH、BAYTRON(登録商標)PH500 、BAYTRON(登録商標)PH510(以上、シュタルク社製)、SEPLEGYDA(登録商標)AS-Q、SEPLEGYDA(登録商標)AS-D、SEPLEGYDA(登録商標)AS-H(以上、信越ポリマー社製)、導電コートS-983、導電コートS-495、導電コートS-948(以上、中京油脂社製)、Denatron P-502RG、Denatron P-560ST、Denatron P-500NT、Denatron P-200HC、Denatron P-800SL(以上、ナガセケムテック社製)、PED500(化研産業社製)などを入手することができる。
【0027】
ポリピロール及びその誘導体としては、ポリピロール(アルドリッチ社製)、SSPY(化研産業社製)などを入手することができる。
【0028】
導電性ポリマーとしては、帯電防止性と着色性(色味)の点で、ポリチオフェンが好ましい。ポリチオフェンとしては、ポリエチレンオキシチオフェンが好ましく、特に、ポリエチレンジオキシチオフェン(polyethylenedioxythiophene;PEDOT)が良い。ポリエチレンジオキシチオフェンは、ドーパント(dopant)としてポリスチレンスルホン酸(PSS)をドープすることが好ましい。PSSをドープしたポリエチレンジオキシチオフェンは、水によく溶ける性質を持ち、耐熱性、耐湿性及びUV安定性が非常に優れるという長所を持つ。
【0029】
導電性ポリマーは、1種類で使用しても、複数種類を併用してもよい。また、基材フィルム1への帯電防止剤の塗工性、帯電防止剤層の基材フィルムへの密着性、帯電防止剤層の皮膜強度、皮膜の耐久性(耐摩耗性や耐溶剤性など)を向上する目的で、導電性ポリマーに、バインダー樹脂、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤(濡れ性改良剤)、密着性向上剤などを添加しても良い。
【0030】
第1層2aを形成するには、導電性ポリマーを単体で皮膜化するよりも、バインダー樹脂を添加した導電性ポリマーを皮膜化するのが好ましい。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂には、必要に応じて、これらの樹脂を架橋(硬化ともいう)させるために架橋剤を加えても良い。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
【0031】
基材フィルム1に第1層2aを形成する方法は、公知の方法でよい。例えば、基材フィルム1に、帯電防止剤の入った塗料(帯電防止剤とバインダー樹脂を含有した塗料)を、公知の塗工方法によって塗工する。形成した塗膜を加熱や紫外線照射により固化することによって、第1層2aを形成することができる。塗工方法としては、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどがある。
【0032】
第2層2bに用いられるナノカーボンとしては、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、フラーレンなどが挙げられる。カーボンナノチューブには、単層CNTと多層CNTがある。単層CNT、多層CNT、グラフェン、フラーレンは、いずれも帯電防止の機能は優れているが、単層CNT、グラフェン、フラーレンは高価なため、多層CNTが使用しやすい。第2層2bは、第1層2aが空気に曝されるのを防ぐ目的で、第1層2aの表面に形成される。これにより、第1層2aが直接空気に曝されることがなくなる為、第1層2aが酸化劣化しにくくなる。
【0033】
ナノカーボンは、単体では皮膜強度が出ないため、バインダー樹脂や分散剤などを添加して塗料化して使用するのが好ましい。また、ナノカーボンには、帯電防止剤の塗工性、帯電防止剤層の密着性(第1層2aに対する密着性)、帯電防止剤層の皮膜強度、皮膜の耐久性(耐摩耗性や耐溶剤性など)を向上する目的で、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤(濡れ性改良剤)、密着性向上剤などを添加しても良い。
【0034】
ナノカーボンは、1種類を使用してもよいし、複数の種類を併用してもよい。バインダー樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂には、必要に応じて、これらの樹脂を架橋(硬化ともいう)させるために架橋剤を加えても良い。架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。
【0035】
第2層2bを形成するには、帯電防止剤用の塗料として市販されている塗料を使用しても良い。市販品としては、Denatron C-300、Denatron CD-001(以上、ナガセケムテック社製)、コルコートCS-3002、コルコートCS-3202(以上、コルコート社製)などが挙げられる。
【0036】
第1層2aの表面に第2層2bを形成する方法は、公知の方法でよい。例えば、第1層2aの表面に、ナノカーボンを含有した塗料(ナノカーボンとバインダー樹脂を含有した塗料)を、公知の塗工方法を使用して塗工する。形成した塗膜を加熱や紫外線照射により固化することによって、第2層2bを形成することができる。塗工方法としては、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどがある。
【0037】
第1層2aと第2層2bの厚さは特に限定されない。第1層2aの厚さは、導電性ポリマーとバインダー樹脂の量により定められる。第2層2bの厚さは、ナノカーボンとバインダー樹脂の量により定められる。第1層2aと第2層2bの厚さは、第1層2aと第2層2bとを積層した状態で、表面固有抵抗値が10の7乗(10)~10の9乗(10)程度になるように調整すればよい。
【0038】
[粘着剤層]
粘着剤層3は、被着体の表面に接着し、用済み後に簡単に剥がせ、かつ、被着体を汚染しにくい特性を持つことが好ましい。粘着剤層3に使用する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などの粘着剤などが挙げられる。粘着剤としては、ポリエチレン酢酸ビニル樹脂などの接着性樹脂も使用できる。なかでも特に、アクリル系粘着剤、およびウレタン系粘着剤が好適である。
【0039】
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー(アクリル樹脂組成物)に架橋剤を添加した粘着剤が好ましい。メタ)アクリル系ポリマーは、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどの主モノマーと、アクリロニトリル、酢酸ビニル、メチルメタクリレート、エチルアクリレートなどのコモノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N-メチロールメタクリルアミドなどの官能性モノマーと、を共重合したポリマーが好ましい。(メタ) アクリル系ポリマーを構成するモノマー組成は、(メタ)アクリル系モノマーが50%以上であることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマーが100%でもよい。
【0040】
架橋剤は、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋させる。架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、金属キレート化合物などが挙げられる。架橋剤の添加量は、(メタ)アクリル系ポリマーの種類、重合度、官能基量などを考慮して決めればよい。架橋剤の添加量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、架橋剤0.5~1.0質量部程度とするのが好ましい。
【0041】
ウレタン系粘着剤としては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を含むポリウレタン系樹脂が好ましい。ポリウレタン系樹脂は、粘着性や濡れ性、被着体汚染性等を考慮して選べばよい。ポリオール成分、ポリイソシアネート成分は特に制限されない。ポリウレタン系樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0042】
ポリオール成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。これらのポリオール成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
ポリイソシアネート成分としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ジイソシアネートの多量体などが用いられる。これらのポリイソシアネート成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
ポリウレタン系粘着剤の市販品としては、サイアバイン(登録商標)SH-101、SH -101M、SP-205、SP-220(トーヨーケム(株)製)、アラコート(登録商標)FT100、FT200(荒川化学工業(株)製)、UN1175、UN1176(大同化成工業(株)製)などが挙げられる。粘着剤層は、ポリウレタン系粘着剤を架橋または硬化させてなるものでもよい。
【0045】
粘着剤層3には、必要に応じて、架橋反応を促進するために架橋触媒を添加剤として添加してもよい。粘着剤層3には、必要に応じて、基材フィルム1と粘着剤との密着性を向上させるためにシランカップリング剤などの密着性向上剤を添加剤として添加してもよい。粘着剤層3には、必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加してもよい。
【0046】
粘着剤層3の厚みは、特に限定はされないものの、例えば、5~40μm程度が好ましく、10~30μm程度がより好ましい。また、表面保護フィルムの被着体の表面に対する剥離速度0.3m/minでの粘着力(低速粘着力)は、0.3N/25mm以下が好ましく、0.2N/25mm以下であることが更に好ましい。また、剥離速度30m/minの時の粘着力(高速粘着力)は、0.8N/25mm以下であることが好ましい。高速粘着力が0.8N/25mmを超えると、用後保護フィルムを剥がす際の作業性が悪くなる虞がある。粘着力の調整には、粘着剤組成の変更、硬化剤の添加量の調整、粘着付与剤や粘着力調整剤の添加量調整など、公知の方法を用いることができる。これらの方法により、粘着剤層3の粘着力を所定の粘着力に合わせればよい。
【0047】
基材フィルム1の表面に粘着剤層3を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。具体的には、リバースコーティング、コンマコーティング、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティングなどの、公知の塗工方法を使用することができる。
【0048】
図2は、表面保護フィルム10に剥離フィルム4を貼合した剥離フィルム付き表面保護フィルム11を示した断面図である。図2に示すように、剥離フィルム4としては、公知の剥離フィルムを用いればよい。剥離フィルム4としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムやフッ素フィルムなどを、フィルム単体で用いても良い。剥離フィルム4は、樹脂フィルムを離型剤(剥離剤ともいう)で処理した剥離フィルムでもよい。樹脂フィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)などのポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが挙げられる。離型剤としては、シリコーン樹脂、長鎖アルキル基含有樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。中でも、PETフィルムにシリコーン系離型剤を処理した剥離フィルムが好適である。
剥離フィルムの厚さは特に制限されないが、作業性とコスト面から12~38μm厚の剥離フィルムを用いることが多い。
【0049】
基材フィルム1に粘着剤層3を形成する方法、及び、粘着剤層3に剥離フィルム4を貼合する方法は、公知の方法で行えばよく、特に限定されない。具体的には、(1)基材フィルム1の片面に、粘着剤層3を形成するための樹脂組成物を塗布、乾燥し粘着剤層3を形成した後に、粘着剤層3に剥離フィルム4を貼合する方法、(2)剥離フィルム4の表面に、粘着剤層3を形成するための樹脂組成物を塗布・乾燥し粘着剤層3を形成した後に、粘着剤層3に基材フィルム1を貼合する方法などが挙げられるが、いずれの方法を用いても良い。
【0050】
図3は、本発明の光学部品の実施例を示した断面図である。図3は、表面保護フィルム10が貼合された光学部品20を示している。図3に示すように、剥離フィルム付き表面保護フィルム11(図2参照)は、剥離フィルム4が剥がされて粘着剤層3が表出した状態となる。この表面保護フィルム(図1参照)は、粘着剤層3によって、被着体である光学部品5に貼合される。
【0051】
光学部品としては、偏光板、位相差板、レンズフィルム、位相差板兼用の偏光板、レンズフィルム兼用の偏光板などの光学用フィルムが挙げられる。このような光学部品は、液晶表示パネルなどの液晶表示装置、各種計器類の、光学系装置等の構成部材として使用される。また、光学部品としては、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、タッチパネル用透明導電性フィルムなどの、光学用フィルムも挙げられる。
【0052】
実施形態の光学部品によれば、表面保護フィルムを、被着体である光学部品(光学用フィルム)に貼合した状態にて、表面保護フィルム表面に、帯電防止剤層がある。そのため、光学部品の搬送時や取り扱い時に発生する静電気を低く抑えることができる。よって、工程中の塵や埃など異物の原因となる物質の吸着が抑制され、欠点の少ない光学部品を得ることができる。また、表面保護フィルムを光学部品から剥離除去するとき、剥離帯電圧を低く抑制することができるので、ドライバーIC、TFT素子、ゲート線駆動回路などの回路部品を破壊するおそれが少ない。よって、例えば、液晶表示パネル等を製造する工程での生産効率を高め、生産工程の信頼性を保つことができる。
実施形態の表面保護フィルムは、外気曝露や湿熱環境下でも表面の帯電防止剤層の表面抵抗値が上昇(劣化)するのを抑えることができるため、上記効果が経時で変化しにくいことから、産業上の利用価値が大である。
【実施例0053】
次に、実施例により、本発明をさらに説明する。
(実施例1)
導電性ポリマーを含む帯電防止剤組成物として、ポリチオフェン系帯電防止剤(シュタルク社製BAYTRON(登録商標)PAG)と、アクリル樹脂(高松油脂社製ペスレジン(登録商標)SWX-079R)と、メチル化メラミン架橋剤(日本カーバイド工業社製ニカラック(登録商標)MW-30HM)とを、固形分質量比率30/100/10で含む帯電防止剤Aを調製した。
【0054】
ナノカーボンを含む帯電防止剤組成物として、カーボンナノチューブ分散液(ナガセケムテックス社製デナトロン(登録商標)CD-100)と、アクリル樹脂(高松油脂社製ペスレジン(登録商標)SWX-079R)と、メチル化メラミン架橋剤(日本カーバイド工業社製ニカラック(登録商標)MW-30HM)とを、固形分質量比率10/100/10で含む帯電防止剤Bを調製した。
【0055】
2-エチルヘキシルアクリレート80質量部と、ブチルアクリレート10質量部と、メトキシポリエチレングリコール(400)メタクリレート7質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート3質量部との共重合体からなる粘着剤を調製した。この粘着剤は、アクリル系粘着剤である。この粘着剤の40%酢酸エチル溶液100質量部に対して、帯電防止剤としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド0.3質量部、および、イソシアネート系硬化剤として「東ソー(株)製コロネート(登録商標)HX」2質量部を添加し、撹拌・混合して粘着剤組成物1を得た。
【0056】
帯電防止剤Aを、水/エタノール(水/エタノールの質量比50/50)にて10倍に希釈して第1塗料を得た。第1塗料を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、基材フィルム)の表面に、乾燥後の厚さが0.15μmになるように塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥した。これにより、第1層を形成した。
【0057】
帯電防止剤Bを、水/エタノール(水/エタノールの質量比50/50)にて10倍に希釈して第2塗料を得た。第2塗料を、第1層の表面に、乾燥後の厚さが0.05μmになるように塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて1分間乾燥した。これにより、第2層を形成した。
以上の工程により、基材フィルム(PETフィルム)/第1層(帯電防止剤A)/第2層(帯電防止剤B)がこの順で積層された帯電防止フィルムを得た。
【0058】
PETフィルムの、帯電防止剤層が積層されていない面に、粘着剤組成物1を、アプリケーターを用いて、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、120℃の熱風循環式オーブンにて3分間乾燥した。これにより、粘着剤層を形成した。
【0059】
粘着剤層の表面に、シリコーン系剥離剤で処理した剥離フィルム(25μm厚)(三菱ケミカル社製ダイヤホイル(登録商標)MRF-25)を貼合して、剥離フィルム付きの表面保護フィルムを得た。得られた剥離フィルム付きの表面保護フィルムに40℃で3日間エージングを行い、実施例1の表面保護フィルムを得た。
【0060】
(実施例2)
第1層の厚さ及び第2層の厚さを、両方とも0.1μmにした以外は実施例1と同様にして、実施例2の表面保護フィルムを作製した。
【0061】
(実施例3)
第1層の厚さを0.05μmにしたこと、および、第2層の厚さを0.15μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の表面保護フィルムを作製した。
【0062】
(実施例4)
粘着剤および硬化剤以外は実施例2と同様にして、実施例4の表面保護フィルムを作製した。
粘着剤としては、アクリル系粘着剤の代わりに、ウレタン系粘着剤(荒川化学工業社製アラコート(登録商標)FT200)を用いた。硬化剤としては、「東ソー(株)製コロネート(登録商標)HX」2質量部の代わりに「荒川化学工業社製アラコート(登録商標)CL2503(硬化剤不揮発分の含有率は40質量%)」5.7質量部を用いた。
【0063】
(実施例5)
アクリル樹脂(高松油脂社製ペスレジン(登録商標)SWX-079R)の代わりに、ポリエステル樹脂(東洋紡製バイロナール(登録商標)MD-1480)を用いた以外は実施例2と同様にして、実施例5の表面保護フィルムを作製した。
【0064】
(比較例1)
第1層の厚さを0.2μmにしたこと、および、第2層がないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0065】
(比較例2)
第1層がないこと、および、第2層の厚さを0.2μmにしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0066】
(比較例3)
2層構造の帯電防止剤層の代わりに単層構造の帯電防止剤層を有すること以外は実施例2と同様にして、比較例3の表面保護フィルムを作製した。
単層構造の帯電防止剤層は、帯電防止剤Aと帯電防止剤Bを固形分質量比率50/50になるように混合した帯電防止剤を、乾燥後の厚さが0.2μmになるよう塗工することによって形成した。
【0067】
(比較例4)
第1層と第2層との位置を逆にした以外は実施例2と同様にして、比較例4の表面保護フィルムを得た。
【0068】
(比較例5)
第1層および第2層がない以外は実施例1と同様にして、比較例5の表面保護フィルムを作製した。
【0069】
以下、評価試験の方法および結果について示す。
(表面保護フィルムの表面固有抵抗値の測定方法)
表面保護フィルム表面の表面固有抵抗値(Ω/□)は、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。
【0070】
(耐湿熱性の評価方法)
表面保護フィルムを温度60℃、関係湿度90%の条件に所定の期間(1日または30日)放置した後、温度23℃、関係湿度50%の条件に1時間放置した。表面保護フィルム表面の表面固有抵抗値(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。
【0071】
(耐曝露性の評価方法)
表面保護フィルムを温度23℃、関係湿度50%の条件に、表面を空気に曝した状態で、所定の期間(1日または30日)放置した。表面保護フィルム表面の表面固有抵抗値(Ω/□)を、高性能高抵抗率計(三菱化学アナリテック社製ハイレスタ(登録商標)-UP)を用いて、印加電圧100V、測定時間30秒の条件にて測定した。
【0072】
〈表面保護フィルムの低速粘着力の測定方法〉
TACフィルムを偏光子保護フィルムに用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、引張試験機を用いて0.3m/分の剥離速度で180°の方向に、表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを低速粘着力(N/25mm)とした。
【0073】
〈表面保護フィルムの高速粘着力の測定方法〉
TACフィルムを偏光子保護フィルムに用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分30mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離したときの強度を測定し、これを高速粘着力(N/25mm)とした。
【0074】
〈表面保護フィルムの剥離帯電圧の測定方法〉
TACフィルムを偏光子保護フィルムに用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に1日間保管した。その後、高速剥離試験機(テスター産業製)を用いて毎分30mの剥離速度で表面保護フィルムを剥離しながら、前記偏光板表面の表面電位を、表面電位計(キーエンス(株)製)を用いて10ms毎に測定したときの、表面電位の絶対値の最大値を、剥離帯電圧(kV)とした。
【0075】
〈表面保護フィルムの表面汚染性の確認方法〉
TACフィルムを偏光子保護フィルムに用いた偏光板を、ガラス板の表面に、貼合機を用いて貼合した。その後、偏光板の表面に、幅25mmに裁断した表面保護フィルムを貼合した後、23℃×50%RHの試験環境下に3日間保管した。その後、表面保護フィルムを剥がし、偏光板の表面の汚染性を目視にて観察した。表面汚染性の判定基準として、偏光板に汚染移行が無かった場合を「○」(Good)とし、偏光板に汚染移行が確認された場合を「×」(No Good)とした。
【0076】
実施例1~5及び比較例1~5の表面保護フィルムについて、測定結果を表1~表3に示した。表1~表3において、「CNT」は、第1層と第2層との合計厚さに対する第2層の厚さの比率を示す。「PEDOT」は、第1層と第2層との合計厚さに対する第1層の厚さの比率を示す。「CNT/PEDOT(Mix)」は、単層構造の帯電防止剤層を採用した場合において、帯電防止剤(混合物)中の帯電防止剤Bと帯電防止剤Aとの混合比率を示す。「100(50/50)」は、帯電防止剤Aと帯電防止剤Bの固形分質量比率がいずれも50%であることを意味する。
【0077】
「帯電防止剤層積層順逆」は、第1層と第2層との積層順を示す。「○」は、基材フィルムと第1層と第2層との積層順が「基材フィルム/第2層/第1層」の順であることを示す。
「アクリル樹脂」における「○」は、第1層および第2層のバインダー樹脂がアクリル樹脂であることを示す。「ポリエステル樹脂」における「○」は、第1層および第2層のバインダー樹脂がポリエステル樹脂であることを示す。
「アクリル粘着剤」における「○」は、粘着剤としてアクリル系粘着剤を使用したことを示す。「ウレタン粘着剤」における「○」は、粘着剤としてウレタン系粘着剤を使用したことを示す。表面固有抵抗値の1.0E+09は、1.0×10の9乗を表す。1.0E+13<は、測定装置(高性能高抵抗率計)の測定限度(1.0×10の13乗)を超えて、オーバーレンジになっていることを表す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
表1~表3に示した測定結果から、以下のことが分かる。
実施例1~5の表面保護フィルムは、外気曝露および湿熱環境下でも帯電防止剤層の表面抵抗値が上昇(劣化)しなかった。
一方、帯電防止剤層が第1層(導電性ポリマーを含む)のみで形成された比較例1では、外気に曝露された際に、帯電防止剤層の表面抵抗値の上昇(劣化)が見られた。
帯電防止剤層が第2層(ナノカーボンを含む)のみで形成された比較例2では、湿熱環境下で表面の帯電防止剤層の表面抵抗値の上昇(劣化)が見られた。
帯電防止剤層が2層構造ではなく、帯電防止剤A,Bの混合物からなる単層構造である比較例3では、湿熱環境下で帯電防止剤層の表面抵抗値がわずかに上昇(劣化)した。外気曝露環境下では表面の帯電防止剤層の表面抵抗値の上昇(劣化)が大きくなった。
帯電防止剤層を積層する順番を実施例1~5と逆にした比較例4では、外気曝露環境および湿熱環境下で表面の帯電防止剤層の表面抵抗値の上昇(劣化)が見られた。
帯電防止剤層を設けなかった比較例5では、表面保護フィルムの表面抵抗値が高いため、工程中で静電気が発生しやすいことが推測される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
実施形態の表面保護フィルムは、例えば、偏光板、位相差板、レンズフィルム、などの光学用フィルム、その他、各種の光学部品等の生産工程などにおいて、該光学部品等に貼合して表面を保護するために用いることができる。実施形態の表面保護フィルムは、外気曝露や湿熱環境下でも表面の帯電防止剤層の表面抵抗値の上昇(劣化)を抑えることができる。実施形態の表面保護フィルムは、光学製品の製造工程において、表面保護フィルムを貼合した光学製品の搬送中やハンドリング時に発生する静電気を抑えて、環境中の塵や埃の吸着を少なくすることができる。実施形態の表面保護フィルムは、用済み後の表面保護フィルムを、液晶表示パネルに組み込んである偏光板や位相差板から剥離除去するときに、著しい剥離帯電を抑えることができるため、ドライバーICなどの回路を破壊するおそれが少ない。そのため、生産工程の歩留まりを向上させることができ、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0083】
1…基材フィルム、2…帯電防止剤層、2a…第1層、2b…第2層、3…粘着剤層、4…剥離フィルム、5…被着体(光学部品)、10…表面保護フィルム、11…剥離フィルム付き表面保護フィルム、20…光学部品。
図1
図2
図3